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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03M 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03M |
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管理番号 | 1341793 |
審判番号 | 不服2015-21679 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-07 |
確定日 | 2018-07-02 |
事件の表示 | 特願2014-130367「データ変換のシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日出願公開、特開2014-197896〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2008年7月30日を国際出願日とする出願である特願2011-521079号の一部を,平成24年12月19日に新たな特許出願とした特願2012-276347号の一部を,さらに平成26年6月25日に新たな特許出願としたものであって,平成27年8月19日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年12月7日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされ,当審において,平成29年3月27日付けで拒絶理由が通知され,同年5月31日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され,同年10月20日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年12月27日付けで意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は,平成29年5月31日付け手続補正(以下,「補正」という。)により補正された特許請求の範囲における,請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるべきものであり,そのうち請求項1の記載は次のとおりである。(下線部は補正箇所を示す。) 「 【請求項1】 アナログAC信号に対して非線形データ変換を実行するデータ変換(translation)システム(100)であって, 前記アナログAC信号を受け取る入力と, 非線形変換された(non-linearly translated)量子化されたアナログAC信号を出力する出力と, 前記入力および前記出力に結合され,前記アナログAC信号を受け取り,前記非線形変換された信号を作成するために所定の伝達関数を使用して前記アナログAC信号を非線形変換し,前記所定の伝達関数が,所定の基準点に関して,前記非線形変換された信号を生成し,前記所定の伝達関数が,前記所定の基準点からの垂直距離に関連して,前記アナログAC信号の振幅のアナログ値を二者択一的に,且つ非線形的に,圧縮又は増幅するように構成されるものであり,前記非線形変換された信号を前記出力に転送(transfer)するように構成された処理システム(104)と を含み, 増幅利得が,前記所定の基準点からの垂直距離に従って非線形的に変化し得,且つ,増幅の結果を量子化し, 圧縮の程度が,前記所定の基準点からの垂直距離に従って非線形的に変化し得,且つ,圧縮の結果を量子化し, 非線形的に変換され,量子化された信号を出力し, 前記所定の基準点からの垂直距離が増加するにつれて,前記入力されたアナログAC信号の振幅の増幅利得が減少し,前記圧縮の程度が増加し,前記前記所定の基準点からの,前記アナログAC信号の入力レベルの増加につれて減少することにより,それにより,領域の長さであって,当該領域中で前記非線形変換されたアナログAC信号のレベルが変化せずに維持される領域の長さが,前記所定の基準点からの垂直距離が長くなるにつれて,より長くなる, データ変換システム(100)。」 第3 平成29年10月20日付け最後の拒絶理由の概要 当審において通知した平成29年10月20日付け最後の拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は以下のとおりである。 「1.平成29年5月31日付けでした手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 2.(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3.(進歩性)(略) 記 1.理由1(新規事項)について (1)請求項1について (中略) 上記請求項1の記載からみて,データ変換システム(100)は,アナログAC信号が入力され,入力されたアナログAC信号が非線形的に変換され,さらに量子化され,量子化されたアナログAC信号を出力するもの,すなわち,非線形的な変換は,アナログAC信号に対して行われるものと解される。 一方,発明の詳細な説明には,図3-図7とともに,「ディジタル化されたAC信号に対して非線形データ変換を実行する変換システム100」(【0033】)が記載されている。そして,図5に「前記変換システム100の入力でのAC信号」が記載されるところ,「このAC信号は,すでにディジタル化されているものとすることができ,あるいは,その代わりに,いくつかの実施形態では,変換の前に変換システム100によってディジタル化されるものとすることができる。」(【0043】)と記載されており,この記載からみても,非線形的な変換はディジタル化されたAC信号に対して行われるものといえ,この点は,補正前の請求項1の記載とも整合する。 そうすると,補正後の請求項1において,非線形的な変換は,アナログAC信号に対して行われるものとする点は,出願時の明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。 よって,請求項1についての平成29年5月31日付け手続補正書による補正は,新規事項を追加するものである。 (2)請求項5について(略) 2.理由2(サポート要件)について 請求項1に係る発明は,上記理由1と同様の理由により,発明の詳細な説明に記載したものでない。 (以下略) 3.理由3(進歩性)について (略)」 第4 当審の判断 1.平成29年12月27日で提出された意見書における主張 当審拒絶理由の理由1(特許法第17条の2第3項)及び理由2(特許法第36条第6項第1号)に対する請求人の主張は,以下のとおりである。 「2.1 理由1(新規事項)および理由2(サポート要件)について 本願明細書の以下の部分には,アナログAC信号をサポートする記載が存在します: 「[0043] 図5に,変換システム100の入力でのAC信号を示す。このAC信号は,振幅および周期を含む時間変動する信号を含む。このAC信号は,既にディジタル化されているものとすることができ,あるいは,その代わりに,いくつかの実施形態では,変換の前に変換システム100によってディジタル化されるものとすることができる。」 <引用終わり> 「既にディジタル化されているものとすることができ」及び「いくつかの実施形態では,変換の前に変換システム100によってディジタル化されるものとすることができる」は,原則として,入力信号がアナログ信号であることを示します。」 2.特許法第17条の2第3項についての当審の判断 本願の明細書には,以下の事項が記載されている。 「【0033】 図3に,本発明の実施形態に従って,ディジタル化されたAC信号に対して非線形データ変換を実行する変換システム100を示す。変換システム100は,1つまたは複数の入力101および1つまたは複数の出力102を含む。変換システム100は,ディジタル化されたAC信号を入力101で受け取り,変換された信号を出力102で出力する。変換された信号を,たとえばオプトカプラ115を介する伝送など,伝送媒体を介する伝送のためにより効率的であり便利な形に変換することができる。しかし,他の伝送媒体が,企図され,この明細書および特許請求の範囲の範囲に含まれる。」 「【0034】 変換システム100を,ディジタル化されたAC信号を受け取り,所定の伝達関数を使用することによってディジタル化されたAC信号を非線形変換して,変換された信号部分を作成し,変換された信号部分を転送するように構成することができる。変換システム100は,所定の基準点に関して,ディジタル化されたAC信号を変換することができる。変換システム100は,基準点からの垂直距離(すなわち,電圧)など,所定の基準点からの距離に関して,ディジタル化されたAC信号を変換することができる。」 「【0036】 変換システム100は、処理システム104およびストレージ(図示せず)を含むことができる。処理システム104は、変換ルーチン110、ディジタル化AC信号ストレージ111(または、信号部分など、ディジタル化されたAC信号の少なくとも一部のストレージ)、および所定の伝達関数112を含むことができる。所定の伝達関数112は、ディジタル化されたAC信号またはその信号部分を処理し、信号部分の非線形変換を実行するのに使用される(下の議論を参照されたい)。」 「【0038】 この伝達関数は、入力波形の全体的な形状を変更せずに、特定の値または領域を調整することによるなど、ディジタル化されたAC信号を変更する。この伝達関数は、ディジタル化されたAC信号を変換する数学関数を含むことができる。代替案では、この伝達関数は、本質的にディジタルフィルタである、ディジタル化されたAC信号によって乗算される一連の係数を含むことができる。ディジタル化されたAC信号は、ディジタル化されたAC信号の転送を改善するため、および転送の効率を改善するために変換される。データ変換は、帯域幅を制限することによって伝送の質を高める。データ変換は、位相情報を維持し、有利なことに、帯域幅を減らしながら位相情報を維持する。データ変換は、ディジタル化されたAC信号の圧縮と増幅との両方によってこれを達成する。」 「【0043】 図5に,変換システム100の入力でのAC信号を示す。このAC信号は,振幅および周期を含む時間変動する信号を含む。このAC信号は,既にディジタル化されているものとすることができ,あるいは,その代わりに,いくつかの実施形態では,変換の前に変換システム100によってディジタル化されるものとすることができる。」 上記【0033】,【0034】の記載からみて,図3の実施形態では,変換システム100について,ディジタル化したAC信号が入力すること,前記ディジタル化されたAC信号に対して非線形変換(非線形データ変換)を実行すること,変換された信号を転送することが記載されている。 そうすると,意見書で補正の根拠として引用した段落【0043】の「既にディジタル化されているものとすることができ」は,入力信号がディジタル化されたAC信号であると解されるから,上記段落【0033】,【0034】の記載と整合するものであるが,補正後の請求項1とは整合していない。 さらに,意見書で補正の根拠として引用した段落【0043】の「いくつかの実施形態では,変換の前に変換システム100によってディジタル化されるものとすることができる」という記載において,「変換の前」の「変換」が「非線形変換」のことであることが明らかであるから,上記「変換の前に変換システム100によってディジタル化される」は,「非線形変換の前に変換システム100によってディジタル化される」と言い換えることができるので,変換システム100に入力する信号はアナログAC信号であり,前記変換システム100において非線形変換の前に前記アナログAC信号はディジタル化したAC信号に変換され,該ディジタル化したAC信号に対して非線形変換を実行するものと解される。 そうすると,段落【0043】の記載から,請求人が意見書で主張するとおり,変換システム100の入力信号がアナログ信号であることまではいえるものの,アナログAC信号に対して非線形変換を行うことは記載されていない。 また,段落【0036】の「所定の伝達関数112は、ディジタル化されたAC信号またはその信号部分を処理し、信号部分の非線形変換を実行するのに使用される」の記載によれば,変換システム100の構成要素である「所定の伝達関数112」は,「ディジタル化されたAC信号」の非線形変換に使用されることしか開示がないこと,及び,段落【0038】の「ディジタル化されたAC信号は,ディジタル化されたAC信号の転送を改善するため,および転送の効率を改善するために変換される。データ変換は,帯域幅を制限することによって伝送の質を高める。」という発明の効果は,ディジタル化されたAC信号をデータ変換(非線形変換)することによるものであること,に照らしても,本願発明において,非線形変換する対象をアナログAC信号とすることは,想定していない事項といえる。 したがって,補正後の請求項1において,アナログAC信号に対して非線形変換を行う点は,出願当初の明細書,特許請求の範囲又は図面の記載を当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。 よって,依然として,当審で通知した特許法第17条の2第3項についての拒絶理由は解消していない。 3.特許法第36条第6項第1号についての当審の判断 上記「2.特許法第17条の2第3項について」の理由のとおり,アナログAC信号に対して非線形変換を実行することは,発明の詳細な説明に記載されていない事項であるから,依然として,当審で通知した特許法第36条第6項第1号についての拒絶理由は解消していない。 第4 むすび 以上のとおり,この出願は,特許法第17条の2第3項及び特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができないものである。 したがって,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-02-02 |
結審通知日 | 2018-02-05 |
審決日 | 2018-02-20 |
出願番号 | 特願2014-130367(P2014-130367) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
WZ
(H03M)
P 1 8・ 537- WZ (H03M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 北村 智彦 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 吉田 隆之 |
発明の名称 | データ変換のシステムおよび方法 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 中村 彰吾 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 竹内 茂雄 |