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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1341820
審判番号 不服2017-8915  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-20 
確定日 2018-07-05 
事件の表示 特願2012- 97122「医用画像診断装置及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開、特開2012-225927〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月20日(パリ条約による優先権主張 2011年4月21日、米国)の出願であって、平成28年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年4月15日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年8月18日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年3月15日付けで、平成28年10月21日に提出された手続補正書でした手続補正について却下の決定がなされ、同日付で拒絶査定がなされたのに対し、同年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりに補正された。(下線は補正箇所を示す。)
「【請求項1】
被検体を囲む円周の中心に対して180度を超え360度未満の角度である第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む第1検出器と、
前記第1検出器に対向する180度未満の角度である第2角度の範囲に、前記円周の円周方向及び前記円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む第2検出器と、
前記第1検出器から第1イベントデータを収集し、前記第2検出器から第2イベントデータを収集し、該第1イベントデータと該第2イベントデータとをイベントデータの処理を行うデータ処理部に送信するデータ収集部と
を備え、
前記第1検出器のエネルギーウィンドウと前記第2検出器のエネルギーウィンドウとは異なる、医用画像診断装置。」

(2)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の、平成28年4月15日に提出された手続補正書でした手続補正により補正された請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む第1検出器と、
前記第1検出器に対向する第2角度の範囲に、前記円周方向及び前記円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む第2検出器と、
前記第1検出器から第1イベントデータを収集し、前記第2検出器から第2イベントデータを収集し、該第1イベントデータと該第2イベントデータとをイベントデータの処理を行うデータ処理部に送信するデータ収集部と
を備え、
前記第1検出器のエネルギーウィンドウと前記第2検出器のエネルギーウィンドウとは異なる、医用画像診断装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された第1角度の範囲について「180度を超え360度未満の角度である第1角度の範囲」に、第2角度の範囲について「180度未満の角度である第2角度の範囲」に限定する事項を含むものであり、いわゆる限定的減縮を目的とする補正を含むといえることから、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1)補正発明
補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である米国特許第6455856号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、当審訳において、以下の「引用発明」に関連する箇所に下線を付した。
(1a)「ABSTRACT
A gamma camera includes first and second detectors. The first detector is located beneath a patient receiving surface. The second detector is located above the patient receiving surface. The second detector is movable between operating and retracted positions.」(ABSTRACT1?5行)
(当審訳:要約
ガンマカメラは、第1及び第2の検出器を含む。第1検出器は、被検体受入れ面の下に配置される。第2検出器は、被検体受入れ面の上に配置される。第2検出器は、作動位置と後退位置との間で可動である。)

(1b)「Positron emission tomography (PET) scanners typically include ring of radiation sensitive detectors surrounding a central examination region. Positron annihilation events occurring within the examination region generate 511 keV gamma ray pairs travelling in opposite directions along a line of coincidence. Coincident gamma ray pairs detected by the ring of detectors are used to generate a human readable image indicative of the positron annihilation events.
More recently, gamma cameras capable of detecting both single photon radiation and positron annihilation events have been introduced. 」(1欄23?34行)
(当審訳:陽電子放射断層撮像(PET)スキャナは、典型的には、中央検査領域を囲む放射線感応検出器のリングを含むものである。検査領域内で発生した陽電子消滅イベントは、同時計測線に沿って互いに反対方向に進む511keVのガンマ線を生成する。検出器のリングによって検出される同時に発生するガンマ線は、陽電子消滅イベントが示す人間の読影可能な画像を生成するのに使用される。
より最近では、単一光子放射と陽電子消滅イベントの両方を検出することが可能なガンマカメラが導入されている。)

(1c)「DRAWING
・・・
FIG.1 is a perspective view of a gamma camera according to the present invention.
FIG.2 is a perspective view of the upper and lower gamma camera detectors.
・・・
FIG.10 illustrates the imaging physics geometry of a gamma camera.」(4欄17?36行)
(当審訳:図面
・・・
図1は、本発明に係るガンマカメラの斜視図である。
図2は、上下のガンマ・カメラ検出器の斜視図である。
・・・
図10は、ガンマカメラの幾何学的模式図である。)

(1d)上記FIG.1(図1)、FIG.2(図2)及びFIG.10(図10)として、以下の図面が記載されている。


(1e)「DESCRIPTION
With reference to FIG. 1, a gamma camera 10 includes a lower gantry 12 and an upper detector 13. The lower gantry includes a object or patient support 14 having a curved object receiving surface 22. The patent(当審注:「patient」の誤記) support 14 is disposed between support pedestals 16a, 16b. Pertinent operator interface devices 20b, 20b such as monitors or other displays and operating controls may be mounted to one or both of the pedestals 16a, 16b or in another convenient location. Associated with the patient support 14 is a lower detector 18 and an injection and monitoring device 20. The upper 13 and lower 18 detectors each have radiation sensitive faces which receiving gamma radiation from an examination region 30. The lower detector 18 is mounted below the object receiving surface 22. While FIG. 1 depicts the upper detector 13 in its operating position, the upper detector is movable into storage unit 24 as generally depicted by arrow 26 so that the upper detector 13 may be retracted as needed, for example when not in use or for object ingress and egress.」(4欄44?63行)
(当審訳:図1を参照すると、ガンマカメラ10は、下部架台12と上部検出器13を含む。下部ガントリは、被検体を受け入れる面22がある被検体又は患者の支持部材14を含む。患者の支持部材14は、支持脚16a、16bとの間に配置される。モニタまたは他のディスプレイとコントローラーなどの適切なオペレータインタフェースデバイス20b、20bは、支持脚16a、16bの一方又は両方、さらには他の都合のよい位置に取付けられてよい。患者の支持部14に付随して下部検出器18、薬剤注入装置および監視装置20は配置される。上部検出器13と下部検出器18は、検査領域30からのガンマ放射線を受け取る放射線感応面を有する。下部検出器18は、被検体を受け入れる面22の下方に取り付けられている。図1において上部検出器13が作動位置に描かれている一方で、一般に矢印26によって示されるように、上部検出器13は待機ユニット24まで可動とされ、例えば、作動していない時で被検体の出入りのために、上部検出器13は後退させることができる。」

(1f)「Turning to FIG. 2, the lower detector 18 has a curvature corresponding to the curvature of the patient receiving surface 22. The lower detector 18 includes a sheet of scintillating material 32 such as sodium iodide (Nal). Radiation interacts with the scintillator 32 to produce scintillations or flashes of light. An array of photodetectors 34 such as photomultiplier tubes (PMTs) in optical communication with the scintillator 32 converts the flashes of light into electrical signals for further processing. In an embodiment suited to both positron coincidence (511 keV) and single photon imaging, the scintillating crystal 32 is approximately 30 mm (1.18 inch) thick.
The upper detector 13 includes a plurality (six in the illustrated embodiment) of discrete detector portions 36 disposed in an arc about the examination region 30. In one embodiment, the each detector portion 36 is 80 cm (31.5 inch) long by 15 cm (5.9 inch) wide. The arc preferably subtends an angle about the examination region 30 of at least 45 degrees.
Turning now to FIG. 3, each of the detectors 36 includes a planar, multi-layer (three in the disclosed embodiment) scintillating material 38 such as Nal. The layers are of varying thickness and arranged so that relatively thinner layers are disposed relatively closer to the examination region 30. In the illustrated embodiment, the thinnest layer 38a has a thickness of 6 mm (0.24 inch) and is located nearest the subject, the thickest layer 38c has a thickness of 12 mm (0.48 inch) and is located furthest therefrom, and a layer 38b having a thickness of 8 mm (0.31 inch) is located therebetween.」(4欄66行?5欄28行)
(当審訳:図2を参照すると、下部検出器18は、被検体受入れ面22の曲率に対応する曲率を有する。下部検出器18は、ヨウ化ナトリウム(NaI)等のシンチレーション材料32の層を含む。放射線はシンチレータ32と相互作用して、シンチレーションまたはの閃光を生成する。シンチレータ32と光学的に連結する光電子増倍管(PMT)のような光検出器34のアレイは、さらなる処理のためフラッシュ光を電気信号に変換する。陽電子一致(511 keV)および単一光子撮像の双方に好適な実施形態では、シンチレーション結晶32は、厚さが約30mm(1.18インチ)である。
上部検出器13は、検査領域30の周りに円弧状に配置された離散的な検出器部分36を複数(図示例では6)含む。一実施形態では、各検出器部分36は15cm(5.9インチ)幅×長さ80cm(31.5インチ)である。円弧は、好ましくは、少なくとも45度の観察領域30回りの角度を画定する。
ここで図3を参照すると、検出器部分36の各々は、NaIのような平面多層(開示された実施形態では3個)のシンチレーション材料38を含む。各層は変化する厚さを有しており、比較的薄い層は検査領域30に相対的に近く配置されている。図示された形態では、最も薄い層38aが6mm(0.24インチ)の厚さを有し、被検体の最も近くに配置され、最も厚い層38cが12mm(0.48インチ)の厚さを有し、そこから最も遠くに配置され、8mm(0.31インチ)の厚さを有する層38bがそれらの間に配置される。)

(1g)「Turning to FIG. 9, a detector interface 110 processes the electrical signal from the upper 13 and lower 18 detectors to determine the position and energy of detected events. The detector interface 110 includes a coincidence processor for determining whether detected events are indicative of positron annihilation events. More particularly, the coincidence processor determines whether events are detected an upper detector portion 36 and the lower detector 18 within a coincidence time window. One or more of the detector portions 36 and respective scintillator layers 38a, 38b, 38c may be selectively disabled and enabled. Data indicative of valid events is stored for further processing by the image processor 112.」(6欄49?61行)
(当審訳:図9を参照すると、検出器インタフェース110は、検出されたイベントの位置およびエネルギーを決定するために、上部検出器13及び下部検出器18からの電気信号を処理する。検出器インタフェース110は、検出されたイベントが陽電子消滅イベントを示すか否かを決定するための同時プロセッサを含む。より詳細には、同時プロセッサは、イベントが上部検出器36及び下部検出器18で同時計測時間範囲内で検出されたか否かを判定する。検出器素子36の一つ又は複数及びシンチレータ層38a、38b、38cを選択的に無効化にしたり有効にしたりすることができる。有効なイベントであることが示されたデータは、画像処理部112によるさらなる処理のために記憶される。)

(イ)引用発明について
a 上記摘記(1d)の図2及び図10から、円弧状の上部検出器13は、弧状の下部検出器18に対向して配置されていることが見て取れる。

b 上記摘記(1d)の図1から、矢印26によって示される上部検出器13の可動の方向が、上部検出器13の円周の円周方向であることが見て取れる。

c 引用発明
上記a及びbを踏まえ、上記摘記(1a)?(1g)を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「下部検出器18と上部検出器13を含むガンマカメラを有する陽電子放射断層撮像(PET)スキャナであって、
弧状の下部検出器18は、被検体受入れ面22の曲率に対応する曲率を有し、
円弧状の上部検出器13は、下部検出器18に対向して配置され、上部検出器13の円周の円周方向に可動であり、
前記下部検出器18は、厚さが約30mm(1.18インチ)であるシンチレーション結晶32の層及びシンチレータ32と光学的に連結する光電子増倍管(PMT)のような光検出器34のアレイを含むものであり、
前記上部検出器13は、複数の検出器部分36を含み、検出器部分36の各々は、最も薄い層38aが6mm(0.24インチ)の厚さを有し、被検体の最も近くに配置され、最も厚い層38cが12mm(0.48インチ)の厚さを有し、そこから最も遠くに配置され、8mm(0.31インチ)の厚さを有する層38bがそれらの間に配置される平面多層のシンチレーション材料38を含むものであり、
検出されたイベントの位置およびエネルギーを決定するために、上部検出器13及び下部検出器18からの電気信号を処理する、検出器インタフェース110を有する、
陽電子放射断層撮像(PET)スキャナ。」(以下「引用発明」という。)

イ 引用文献3
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-23718号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(3a)「【0024】
そして、コンピュータ19は合計数CTXと合計数CT1が一致した時の拡大エネルギー区域ewをγ線検出器5のエネルギーウインド部17の所定エネルギー幅と決定し、制御信号をエネルギーウインド部17へ送り、エネルギーウインド部17の所定エネルギー幅を拡大エネルギー区域ewにセットする。なお、γ線検出器4のエネルギーウインド部16の所定エネルギー幅は元のままである。このようにして、γ線検出器4,5同士の感度差に応じてエネルギーウインド部17における所定エネルギー幅を予め調節しγ線検出信号の通過許容範囲を広げておくのである。以上の所定エネルギー幅調節動作の流れを図7のフロー図に纏めて示す。」

(3b)「【0033】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、この発明の多検出器型シングルフォトンECT装置によれば、γ線検出器同士の感度差に応じてエネルギーウインド手段における所定エネルギー幅を予め調節しγ線検出信号の通過許容範囲を広げておいて、実際の撮影動作中、γ線検出器同士の感度差に起因するγ線投影データの欠落が阻止されるよう構成されているので、微妙な変化も捉えられる正確なRI分布断層撮影像を得ることができる。」

(3)引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比する。
a 検出器素子について
補正発明の「第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子」について、本願明細書に「例えば、一実施形態では、第1検出器素子のそれぞれは、光電子増倍管と、第1厚み及び第1画素表面領域(pixel surface area)を有するシンチレーション結晶とを含むが、その一方で、第2検出器素子のそれぞれは、第1厚みと異なる第2厚みと、第1画素表面領域と異なる第2画素表面領域とを有するシンチレーション結晶を有する。」(【0069】)と記載されているように、具体的には、厚み、画素表面領域等が異なるシンチレーション結晶を含むものを「異なる種類」としている。
してみれば、引用発明の「厚さが約30mm(1.18インチ)であるシンチレーション結晶32の層を含むものであ」る「下部検出器18」と、「複数の検出器部分36を含み、検出器部分36の各々は、最も薄い層38aが6mm(0.24インチ)の厚さを有し、被検体の最も近くに配置され、最も厚い層38cが12mm(0.48インチ)の厚さを有し、そこから最も遠くに配置され、8mm(0.31インチ)の厚さを有する層38bがそれらの間に配置される平面多層のシンチレーション材料38を含むものであ」る「上部検出器13」とは、異なる種類の検出器素子を含むものといえる。
そして、「下部検出器18」は「シンチレータ32と光学的に連結する光電子増倍管(PMT)のような光検出器34のアレイを含むもの」であり、上記図2においても、光検出器34が複数あることから、検出器素子も複数あるものといえる。また、「上部検出器13」については、「複数の検出器部分36を含」むものであるから、「複数の」「検出器素子を含む」ものであることは明かである。

b 第1検出器について
上記aを踏まえれば、引用発明の「厚さが約30mm(1.18インチ)であるシンチレーション結晶32の層及びシンチレータ32と光学的に連結する光電子増倍管(PMT)のような光検出器34のアレイを含むもので」、「被検体受入れ面22の曲率に対応する曲率を有」する「弧状の下部検出器18」と、補正発明の「被検体を囲む円周の中心に対して180度を超え360度未満の角度である第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む第1検出器」とは、「被検体を囲む弧状に配置され、複数の第1検出器素子を含む第1検出器」の点で共通する。

c 第2検出器について
引用発明の「複数の検出器部分36を含み、検出器部分36の各々は、最も薄い層38aが6mm(0.24インチ)の厚さを有し、被検体の最も近くに配置され、最も厚い層38cが12mm(0.48インチ)の厚さを有し、そこから最も遠くに配置され、8mm(0.31インチ)の厚さを有する層38bがそれらの間に配置される平面多層のシンチレーション材料38を含むもので」、「下部検出器18に対向して配置され、上部検出器13の円周の円周方向に可動であ」る「円弧状の上部検出器13」と、補正発明の「前記第1検出器に対向する180度未満の角度である第2角度の範囲に、前記円周の円周方向及び前記円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む第2検出器」とは、「前記第1検出器に対向し、円周方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む第2検出器」の点で共通する。

d データ収集部について
陽電子放射断層撮像(PET)は、上記摘記(1b)に記載されているように、陽電子消滅イベントを検出器で検出するものであるから、上部検出器13及び下部検出器18とも、「イベント」についての「データを収集し」ているものであある。
してみれば、引用発明の「検出されたイベントの位置およびエネルギーを決定するために、上部検出器13及び下部検出器18からの電気信号を処理する、検出器インタフェース110」は、補正発明の「前記第1検出器から第1イベントデータを収集し、前記第2検出器から第2イベントデータを収集し、該第1イベントデータと該第2イベントデータとをイベントデータの処理を行うデータ処理部」に相当し、そして、引用発明も「検出器インタフェース110」に「上部検出器13及び下部検出器18」で検出した「イベント」についてのデータを収集して「電気信号」で送信するための補正発明の「データ収集部」に相当するものがあるといえる。

e 医用画像診断装置について
引用発明の「陽電子放射断層撮像(PET)スキャナ」は、摘記(1b)に「陽電子消滅イベントが示す人間の読影可能な画像を生成するのに使用される」と記載されているとおり、補正発明の「医用画像診断装置」に相当するものである。

してみれば、補正発明と引用発明とは、
(一致点)
「被検体を囲む弧状に配置され、複数の第1検出器素子を含む第1検出器と、
前記第1検出器に対向し、円周方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む第2検出器と、
前記第1検出器から第1イベントデータを収集し、前記第2検出器から第2イベントデータを収集し、該第1イベントデータと該第2イベントデータとをイベントデータの処理を行うデータ処理部に送信するデータ収集部と
を備える、
、医用画像診断装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
第1検出器と第2検出器について、補正発明では「被検体を囲む円周の中心に対して180度を超え360度未満の角度である第1角度の範囲に配置され」た「第1検出器」と「第1検出器に対向する180度未満の角度である第2角度の範囲に」「配置され」た「第2検出器」であり、「第2検出器」は「被検体を囲む円周」の円周方向に可動であるのに対し、引用発明では「弧状の下部検出器18」と「下部検出器18に対向して配置され」た「円弧状の上部検出器13」であり、「円弧状の上部検出器13」は「上部検出器13の円周」の円周方向に可動である点。

(相違点2)
第1検出器と第2検出器とが、補正発明では「エネルギーウィンドウ」が「異なる」ものであるのに対し、引用発明では不明である点。

(4)相違点についての判断
ア 相違点1について
まず、補正発明の「第1検出器」と「第2検出器」とを備えた医用画像診断装置(具体的には、本願明細書の【0013】等に記載されているようにPETスキャナである。)は、被検体を囲む円周に沿って、180度を超え360度未満の角度である第1角度の範囲に配置される第1検出器と、180度未満の角度である第2角度の範囲に配置される第2検出器とで合わせてどの方向をもおおむね均等にカバーすることができ、どの方向においても、一定の検出精度を保つことができるための構成であると認められる。ここで、陽電子放射断層撮像(PET)装置において、検出のデッドスペースをなくすために検出器をリング状(360°)に配置することは本出願前周知であり、引用発明において、デッドスペースをなくすため、「円弧状の上部検出器13」と「弧状の下部検出器18」を、「弧状の下部検出器18」とそれに対向する「円弧状の上部検出器13」を合わせて被検体の周囲にリング状(360°)になるように配置することは当業者が容易に想起し得たことである。
そして、その際、具体的構成として、弧状の下部検出器18を中心角が180度を超え360度未満を満たす角度に、円弧状の上部検出器13の角度の範囲を下部検出器18に対向する中心角が180度未満を満たす角度にして、互いにデッドスペースを埋め合わせるように、上部検出器13を下部検出器18の円周の中心に対して配置することは当業者において設計事項にすぎない。さらに、上記ように設計された構成では、上部検出器13の可動の円周方向は下部検出器18の円周の円周方向すなわち「被検体を囲む円周」の円周方向となる。

なお、補正発明における「被検体を囲む円周の中心」とは、本願明細書の【0014】に「第1検出器の横断方向は、円周の中心(すなわち、この第1検出器によって確定されるPETスキャナの中心軸線)に対して、180度以上360度未満の角度の範囲である。」と記載されているとおり、「第1検出器10の円周の中心」のことである。この点、下記の(4)のエで記載するとおり、平成29年10月4日に提出された上申書において、請求人も「請求項1に記載の『被検体を囲む円周の中心』とは『第1検出器10の円周の中心』であることは、当業者には明らかです。」と述べている。したがって、上記「下部検出器18の円周の中心」とは、「第1検出器10の円周の中心」のことであり、補正発明における「被検体を囲む円周の中心」に相当するものである。

イ 相違点2について
上記引用文献3に記載されているように、ガンマ線を検出する複数の検出器において、それらの感度差に応じて、エネルギーウィンドウを異ならせて、正確な画像を得ることは優先日前周知技術であり、陽電子放射断層撮像(PET)においても使用される技術であることも本出願前周知(例えば、特開2009-85683号公報参照)なことである。
してみれば、引用発明において、上部検出器13と下部検出器18とのエネルギーウィンドウをそれらの感度差に応じてを異ならせることは当業者が容易なし得たことである。

ウ 補正発明の効果について
上記相違点1に基づく効果として、本願明細書に「ツーハーフスキャナの分割比率は、必ずしも等しくない。例えば、第1検出器10は、第1検出器10の円周の中心に対して、180度以上360度未満の広い範囲の角度をカバーするように配置される。一方、第2検出器20は、180度未満の角度をカバーするように配置される。この場合、第2検出器20は、被検体の幅や被検体パレットの幅などに鑑みて、例えば30度以上の範囲をカバーするように配置されるのが望ましい。このように、被検体パレットの周りにより大きな開口部を提供するために、異なる比率を実施することもできる。図6に示すように、LORは、この新しい形状によっても、やはり全て捕獲される。」(【0052】)と記載されているが、いわゆるデッドスペースをなくすように配置することによる効果であり、当業者が予期し得る効果である。
また、上記相違点2に基づく効果として、本願明細書に「エネルギーウィンドウ調整は、2つのタイプの検出器の感度を調節する際の重要な要因である。」(【0066】)と記載されているが、この効果も当業者が予期し得る効果である。

エ 請求人の主張
請求人は、前置報告に対して平成29年10月4日に上申書を提出しており、前置報告で「被検体を囲む円周の中心」が不明確であると指摘したのに対し、「請求項1に記載の]『被検体を囲む円周の中心』とは『第1検出器10の円周の中心』であることは、当業者には明らかです。」と主張した上で、
新規性/進歩性について本願発明の説明
補正後の請求項1に係る発明は、『被検体を囲む円周の中心に対して180度を超え360度未満の角度である第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む第1検出器と、前記第1検出器に対向する180度未満の角度である第2角度の範囲に、前記円周の円周方向及び前記円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む第2検出器』という構成を含みます。このような構成によれば、被検体を囲む円周に沿って、180度を超え360度未満の角度である第1角度の範囲に配置される第1検出器と、180度未満の角度である第2角度の範囲に配置される第2検出器とで合わせてどの方向をもおおむね均等にカバーすることができ、どの方向においても、一定の検出精度を保つことができます。さらに、データ収集部を設けることとし、また、第1検出器のエネルギーウィンドウと第2検出器のエネルギーウィンドウとを異ならせることにより、検出器のコストの低減と、検出器の検出精度の維持を、高いレベルで両立させることができます。」(下線は当審で付与した。)と主張しているが、上記(4)相違点についての判断は、「被検体を囲む円周の中心」を「第1検出器10の円周の中心」と解したものであり、上記上申書の主張によって、上記判断が変わるものではない。

(5)小括
したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成28年4月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:米国特許第6455856号明細書
引用文献2:(略)
引用文献3:特開平11-23718号公報(新たに引用された文献;周知技術を示す文献)
引用文献4:(略)
具体的には、本願発明について、検出器に応じてエネルギーウィンドウを異ならせることは、引用文献3等に記載されるように周知であるから、文献1に記載されるような第1検出器及び第2検出器を備える医用画像診断装置において、それぞれのエネルギーウィンドウを異ならせることは当業者が容易に発明することができたものとしている。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び3並びにその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討したとおり、補正発明から限定事項が削除された発明であり、その補正発明が、上記第2の[理由]2(2)?(5)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2018-04-26 
結審通知日 2018-05-08 
審決日 2018-05-21 
出願番号 特願2012-97122(P2012-97122)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01T)
P 1 8・ 575- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田邉 英治関根 裕  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 医用画像診断装置及び制御方法  
代理人 特許業務法人虎ノ門知的財産事務所  
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