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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1341825
審判番号 不服2017-12324  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-21 
確定日 2018-07-05 
事件の表示 特願2016- 20453「遊技台」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-107118〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月4日に特許出願された特願2013-209205号の一部を平成28年2月5日に新たに特許出願したものであって、平成28年9月30日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年12月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年5月16日付け(発送日:平成29年5月23日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成29年8月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、これに対して平成29年10月18日付けで前置報告がなされたものである。

第2 平成29年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成29年8月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の補正を含むものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
補正前(平成28年12月1日付け手続補正)の
「【請求項1】
A 開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段を備えた遊技台であって、
B 前記可変入球手段は、遊技球を検出可能な検出手段が設けられた手段であり、
C 前記可変入球手段は、遊技球が転動可能な転動領域が設けられた手段であり、
前記転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が前記検出手段により検出されるまでに転動する領域のことであり、
D 前記可変入球手段は、前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた手段であり、
E 前記転動領域は、第一の傾斜面が設けられた領域であり、
前記第一の傾斜面は、前記転動領域において前記方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能に構成されており、
F 前記検出手段は、前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段である、
ことを特徴とする遊技台。」
から、補正後(本件補正である平成29年8月21日付け手続補正)の
「【請求項1】
A 開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段を備えた遊技台であって、
B 前記可変入球手段は、遊技球を検出可能な検出手段が設けられた手段であり、
C 前記可変入球手段は、遊技球が転動可能な転動領域が設けられた手段であり、
前記転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が前記検出手段により検出されるまでに転動する領域のことであり、
D 前記可変入球手段は、前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた手段であり、
E’ 前記転動領域は、第一の傾斜面が設けられた領域であり、
前記第一の傾斜面は、前記転動領域において前記方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能であり、
F’ 前記検出手段は、前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段であり、
A-1 前記開閉手段は、板状の扉部材であり、
前記扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている、
ことを特徴とする遊技台。」
へ補正された(記号は分節のため合議体が付した。下線は補正箇所を示す。)。

2.補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、補正前の請求項1において、
「前記開閉手段は、板状の扉部材であり、
前記扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている、」
という事項を追加する補正である。

(2)補正の目的について
本件補正は、「開閉手段」について、その形状を「板状の扉部材であり」と特定するとともに、扉部材の厚み方向正面側の構造について、「扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている」という事項を追加する補正である。
ところで、上記補正前、すなわち平成28年12月1日付け手続補正時、の請求項1について、同日付け意見書の「(2)補正について」の「本願請求項について」には、「本願請求項のベース(前提)になる実施形態は、原出願の明細書の段落「1257」?「1740」や図157?図204に記載の<<実施形態2>>(特に、段落「1430」?「1434」や図178?図180に記載の<遊技球の転動ルート>)です。」という記載があり、さらに、上記補正前の請求項1には、遊技球を検出可能な検出手段が設けられ、遊技球が転動可能な転動領域が設けられた可変入球手段に関し、検出手段及び転動領域についての発明特定事項が記載されている。
そうすると、補正前の請求項1に記載された発明は、遊技球の転動ルートに関し、可変入球手段の検出手段や転動領域についての事項を特定することで、審判請求人が同日付け意見書の「(3)本願が特許されるべき理由について」において、
「本願発明によれば、
「可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長くすることができる場合がある。
また、第一の傾斜面によって遊技球を転動領域の上流側に誘導可能にするとともに、転動領域の下流側に、遊技球が左右方向に進入可能な検出手段を設けているため、可変入球手段に進入してきた遊技球が、下流側の検出手段に一気に集中してしまうようなことがなく、一旦、上流側に誘導した遊技球を下流側の検出手段に円滑に進入させることができ、球詰まりを防止できる場合がある」
という顕著な効果を得ることができます。」
と主張するような、「可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長く」し、かつ「球詰まりを防止する」という課題を解決するためのものである。

一方、補正後の請求項1に記載される発明は、平成29年8月21日付け審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)本願発明について」において、
「このような構成をとることにより、本願発明は、
「可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長くすることができる場合がある。
また、第一の傾斜面によって遊技球を転動領域の上流側に誘導可能にするとともに、転動領域の下流側に、遊技球が左右方向に進入可能な検出手段を設けているため、可変入球手段に進入してきた遊技球が、下流側の検出手段に一気に集中してしまうようなことがなく、一旦、上流側に誘導した遊技球を下流側の検出手段に円滑に進入させることができ、球詰まりを防止できる場合がある。
また、開閉手段は、板状の扉部材であり、扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられているため、扉部材の正面に装飾用のシール等を貼り付ける場合に、位置決めを容易に行うことができる場合がある」といった顕著な効果を有します。」
と記載されるように、補正前の請求項1に記載された発明と同様に「可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長く」し、かつ「球詰まりを防止する」という課題を解決するためのものであることに加えて、「扉部材の正面に装飾用のシール等を貼り付ける場合に、位置決めを容易に行う」という別の課題を解決するためのものである。

そうすると、補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明が解決しようとする課題が同一であるということはできず、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号、第3号、第4号に規定する請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものではない。

(3)小括
したがって、本件補正は特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件
本件補正については、上記2.の補正の適否において示したとおりであるが、仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物
(1-1)刊行物1
前置報告書において提示された、本願出願遡及日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2012-147877号公報(以下、「刊行物1」という)には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ。)

(ア) 「【0008】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の遊技機は、
遊技盤面(盤面板200の前面)に形成される遊技領域(7)に遊技球を発射することにより遊技が行われ、遊技球が入賞しやすい開状態と入賞しないまたは入賞しにくい閉状態とに変化する可変入賞装置(第1可変入賞球装置23)を備えた遊技機(パチンコ遊技機1)であって、
前記可変入賞装置は、
該可変入賞装置に進入した遊技球が排出される排出路(排出路707)と、
前記排出路に向けて傾斜した誘導底面(誘導底面706a)と、
内部を通過した遊技球を検出するための検出開口(通過孔23B)を有する平板状(本体23A)に形成され、該検出開口を前記誘導底面による誘導方向に向けて設置される検出手段(第1カウントスイッチ23a)と、を有し、
前記検出手段は、前記誘導底面に対し交差する方向に起立させた状態で、前記誘導底面(誘導底面706aの下流側端縁部706b)と前記検出開口(通過孔23Bにおける上流側の開口下端縁23C)との間に遊技球の直径寸法(P)より狭い空隙(空隙L12)が生じるように設置される(図39(b)参照)、
ことを特徴としている。
・・・
【0012】
本発明の手段4に記載の遊技機は、請求項1または手段1?3のいずれかに記載の遊技機であって、
前記検出手段(第1カウントスイッチ23a)よりも下流側に設けられ、該検出手段により検出された遊技球を検出可能な下流側検出手段(第3入賞確認スイッチ23b)と、
前記検出手段から出力された第1の検出信号と前記下流側検出手段から出力された第2の検出信号とにもとづいて、前記可変入賞装置への入賞異常を判定する異常判定手段(遊技制御用マイクロコンピュータ156がスイッチ正常/異常チェック処理を行う部分)と、
前記異常判定手段により入賞異常と判定されたことにもとづいて所定のエラー状態に移行させる移行手段(遊技制御用マイクロコンピュータ156がスイッチ正常/異常チェック処理のステップS139を行う部分)と、を備え、
前記可変入賞装置(第1特別可変入賞球装置23)は、所定条件が成立したこと(例えば、大当り遊技状態が発生したこと)にもとづいて該可変入賞装置に遊技球が入賞しやすい開放状態と入賞しないまたは入賞しにくい閉止状態とに可動する可動部材(大入賞口扉704)及び前記可動部材の駆動制御を行う駆動制御手段(遊技制御用マイクロコンピュータ156)を備え、
前記異常判定手段は、前記検出手段にて検出された遊技球数と前記下流側検出手段にて検出された遊技球数との差が所定の閾値(例えば、15)を超えたときに前記入賞異常が生じたと判定し(遊技制御用マイクロコンピュータ156は、ステップS138においてスイッチ用カウンタの値が15以上である場合に、セキュリティ信号上方タイマに240秒をセットする)、
前記駆動制御手段は、所定数の遊技球の入賞にもとづき閉止条件が成立する場合、所定数の遊技球が前記検出手段にて検出されたとき、該所定数の遊技球が前記下流側検出手段にて検出されていなくても前記可動部材を前記閉止状態に駆動する制御を実行する(遊技制御用マイクロコンピュータ156は、ラウンド遊技において第1カウントスイッチ23aにより8球目の遊技球が検出されたときにソレノイド21を励磁して大入賞口扉704を閉止する、図11参照)、
ことを特徴としている。」

(イ) 「【0299】
(第1特別可変入賞球装置)
次に、本実施例の第1特別可変入賞球装置の構造について、図面にもとづいて説明する。図32は、(a)は第1特別可変入賞球装置を示す分解斜視図、(b)はベースカバーの裏面を示す斜視図である。図33は、(a)(b)は第1特別可変入賞球装置の内部構造を示す斜視図である。図34は、第1特別可変入賞球装置を示す分解斜視図である。図35は、同じく第1特別可変入賞球装置を示す分解斜視図である。図36は、第1特別可変入賞球装置を示す平面図である。図37は、(a)(b)は大入賞口扉の駆動機構を示す左右側面図である。図38は、図36のJ-J断面図である。図39は、(a)は第1カウントスイッチを示す図、(b)は図38の要部拡大段面図である。図40は、(a)は第1カウントスイッチが誘導底面に対し平行に離れた場合、(b)は第1カウントスイッチが誘導底面に対し傾倒して離れた場合を示す説明図である。図41は、(a)は第1カウントスイッチが誘導底面より上方に位置する場合、(b)は第1カウントスイッチが誘導底面より下方に位置する場合を示す説明図である。
【0300】
図32?図33に示すように、第1特別可変入賞球装置23は、箱状に形成された第1大入賞ユニット700と、該第1大入賞口23cの周囲を装飾する装飾パネル701(図1参照)と、から構成されている。第1大入賞ユニット700の前面には、第2大入賞口24cより開口が大きい横長長方形状の第1大入賞口23cが形成されているとともに、装飾パネル701が、該装飾パネル701に形成された大入賞口用開口701aに第1大入賞口23cを臨ませるように取り付けられている。また、装飾パネル701における大入賞口用開口701aの左右側部には側壁701bが突設されている。
【0301】
第1大入賞ユニット700は、透光性を有する合成樹脂材により上面が開口する箱状に形成されたベース本体702と、ベース本体702の開口を開閉可能な大きさを有し、透光性を有する合成樹脂材により下面が開口する箱状に形成されたベースカバー703と、から構成され、両者を組み付けることにより中空状の箱体が形成される。そして第1大入賞ユニット700の内部には、第1大入賞口23cを開閉可能とする大入賞口扉704を駆動する開閉機構705が設けられているとともに、第1大入賞口23cから進入してきた入賞球を誘導する入賞球誘導路706が形成されている。
【0302】
入賞球誘導路706は、ベース本体702に、その前面に形成される横長の第1大入賞口23cの右側部から左側部に向けて第1大入賞口23cに沿うように延設されている。入賞球誘導路706の左側部には、第1カウントスイッチ23aが設置される凹溝725(図35参照)が形成されているとともに、その左側、つまり下流側には、排出路707が後向きに延設され、その後端には排出口707bが形成されている。また、この排出口707bからは排出樋708が下方に垂下されているとともに、その途中には第4入賞確認スイッチ23bが配設されている。
【0303】
このように、第1大入賞口23cに進入した入賞球は、入賞球誘導路706、第1カウントスイッチ23a、排出路707を流下した後、排出口707bから第1大入賞ユニット700の外部に排出された後、排出樋708を流下する。尚、入賞球誘導路706における第1カウントスイッチ23aの詳細な配設構造に関しては後述する。」

(ウ) 「【0317】
次に、入賞球誘導路706及び排出路707と、これら入賞球誘導路706と排出路707との間に形成された凹溝725に設置される第1カウントスイッチ23aと、の詳細に関して、図38?図40にもとづいて説明する。
【0318】
図38に示すように、第1大入賞口23cに沿って延設される入賞球誘導路706は、図38中左側、つまり排出路707に向けて漸次下方に傾斜する傾斜面状に形成され、遊技球を転動により流下させる誘導底面706aを有している。そしてこの誘導底面706aの下流側端部には、凹溝725が前後方向、つまり入賞球誘導路706を横切る方向に向けて形成され、さらにこの凹溝725よりも下流側には、排出路707が後方に向けて延設されている。
・・・
【0321】
一方、第1カウントスイッチ23aは、図39(a)に示すように、細長の平板部材からなる本体23Aと、本体23Aの一端側に形成された遊技球の通過孔23Bと、から構成される近接スイッチであり、通過孔23Bを通過した遊技球を検出可能とされている。通過孔23Bは略円形に形成され、直径L1は遊技球の直径P(約11mm)よりも若干大寸とされている(L1>P)。
【0322】
このように構成された第1カウントスイッチ23aは、図33に示すように、本体23Aは入賞球誘導路706の下流側端部に横切るように配設される。具体的には、第1カウントスイッチ23aは、図39(b)に示すように、通過孔23Bの開口(検出開口)中心に対して垂直な垂線Xが誘導底面706aに対しほぼ平行をなすとともに誘導底面706aの幅方向の略中央位置に配置されるように配置される。つまり、誘導底面706aに対して交差する方向に起立させた起立姿勢で配置される。」

また、刊行物1の図面には以下の点について看取できる。すなわち、
(エ) 刊行物1の図35には、大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704aの左側(長手方向で回転軸704bが露見している側)に、左側・後側(短手方向で回転軸704bが露見している側)が上方に、右側・前側が下方に向く傾斜面が形成されていることが、また、刊行物1の図36には、大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704aの左側に、当該傾斜面が形成されていることが、それぞれ看取できる。
(オ) 刊行物1の図36には、大入賞口扉704が開いた状態における大入賞扉704を構成する板部材704aから入賞球誘導路706の誘導底面706aを経て、第1カウントスイッチ23a、排出路707を通過し、排出口707bへ向かう矢印が看取できる。
(カ) 刊行物1の図36には、入賞球誘導路706の背面側に、横長のLED基板710に3つの大入賞口LED710aが配設され、該背面側のうち、真ん中の大入賞口LED710aの左斜め前の入賞球誘導路706には、前方向に対して凸状の部位が形成されていることが看取できる。

(キ) (ア)の【0008】には「請求項1に記載の遊技機は、・・・可変入賞装置・・・23・・・を備えた遊技機・・・1」と記載され、【0012】には「請求項1・・・に記載の遊技機であって、・・・前記可変入賞装置・・・23・・・は、・・・大当り遊技状態が発生したこと・・・にもとづいて該可変入賞装置に遊技球が入賞しやすい開放状態と入賞しないまたは入賞しにくい閉止状態とに可動する可動部材(大入賞口扉704)・・・を備え」と記載され、また、【0008】に記載される遊技機と【0012】に記載される遊技機は「請求項1に記載の遊技機」という同じ遊技機であることから、刊行物1には、
「可変入賞装置23を備えた遊技機1」であって、「前記可変入賞装置23は、大当り遊技状態が発生したことにもとづいて該可変入賞装置に遊技球が入賞しやすい開放状態と入賞しないまたは入賞しにくい閉止状態とに可動する可動部材(大入賞口扉704)を備え」ることが記載されているといえる。

(ク) (イ)の【0300】?【0303】には「可変入賞球装置23は、・・・第1大入賞ユニット700と、・・・装飾パネル701・・・と、から構成され・・・第1大入賞ユニット700の前面には、・・・第1大入賞口23cが形成され、第1大入賞ユニット700は、・・・ベース本体702と、・・・ベースカバー703と、から構成され、・・・第1大入賞ユニット700の内部には、第1大入賞口23cを開閉可能とする大入賞口扉704を駆動する開閉機構705が設けられているとともに」「第1大入賞口23cから進入してきた入賞球を誘導する入賞球誘導路706が形成され」「入賞球誘導路706は、ベース本体702に、その前面に形成される横長の第1大入賞口23cの右側部から左側部に向けて第1大入賞口23cに沿うように延設され」「入賞球誘導路706の左側部には、第1カウントスイッチ23aが設置される凹溝725・・・が形成され」「その左側、つまり下流側には、排出路707が後向きに延設され、その後端には排出口707bが形成されて」「第1大入賞口23cに進入した入賞球は、入賞球誘導路706、第1カウントスイッチ23a、排出路707を流下した後、排出口707bから第1大入賞ユニット700の外部に排出され」と記載されており、さらに、(オ)から、「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する板部材704aから入賞球誘導路706の誘導底面706aを経て、第1カウントスイッチ23a、排出路707を通過し、排出口707bを向かう矢印が看取できる」が、この矢印は、上記記載の「第1大入賞口23cに進入した入賞球は、入賞球誘導路706、第1カウントスイッチ23a、排出路707を流下した後、排出口707bから第1大入賞ユニット700の外部に排出され」るにあたって、「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する板部材704aから入賞球誘導路706の誘導底面706aを経」るという、第1入賞口23cに進入した入賞球の経路を示すものといえる。
そうすると、刊行物1には
「可変入賞球装置23は、第1大入賞ユニット700と、装飾パネル701と、から構成され、第1大入賞ユニット700の前面には、第1大入賞口23cが形成され、第1大入賞ユニット700は、ベース本体702と、ベースカバー703と、から構成され、第1大入賞ユニット700の内部には、第1大入賞口23cを開閉可能とする大入賞口扉704を駆動する開閉機構705が設けられているとともに、
第1大入賞口23cから進入してきた入賞球を誘導する入賞球誘導路706が形成され、入賞球誘導路706は、ベース本体702に、その前面に形成される横長の第1大入賞口23cの右側部から左側部に向けて第1大入賞口23cに沿うように延設され、入賞球誘導路706の左側部には、第1カウントスイッチ23aが設置される凹溝725が形成され、その左側、つまり下流側には、排出路707が後向きに延設され、その後端には排出口707bが形成されて、第1大入賞口23cに進入した入賞球は、大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する板部材704aから入賞球誘導路706の誘導底面706aを経て、第1カウントスイッチ23a、排出路707を流下した後、排出口707bから第1大入賞ユニット700の外部に排出され」ることが記載されているといえる。

(ケ) また、(ウ)の【0321】?【0322】には「第1カウントスイッチ23aは、・・・細長の平板部材からなる本体23Aと、本体23Aの一端側に形成された遊技球の通過孔23Bと、から構成される近接スイッチであり、通過孔23Bを通過した遊技球を検出可能とされ」「第1カウントスイッチ23aは、・・・本体23Aは入賞球誘導路706の下流側端部に横切るように・・・誘導底面706aに対して交差する方向に起立させた起立姿勢で配置され」と記載されており、(イ)の【302】の「第1カウントスイッチ23aが設置される凹溝725が形成され、」との記載と合わせると、刊行物1には、「第1カウントスイッチ23aは、細長の平板部材からなる本体23Aと、本体23Aの一端側に形成された遊技球の通過孔23Bと、から構成される近接スイッチであり、通過孔23Bを通過した遊技球を検出可能とされ、本体23Aは入賞球誘導路706の下流側端部に横切るように、誘導底面706aに対して交差する方向に起立させた起立姿勢で凹溝725に配置され」ることが記載されているといえる。

(コ) さらに、(エ)から、刊行物1には、大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704aの左側に、左側・後側が上方に、右側・前側が下方に向く傾斜面が形成されていることが記載されているといえ、(カ)から、刊行物1には、入賞球誘導路706の背面側に、横長のLED基板710に3つの大入賞口LED710aが配設され、該背面側のうち、真ん中の大入賞口LED710aの左斜め前には、前方向に対して凸状の部位が形成されていることが記載されているといえる。

上記の記載事項(ア)?(ウ)、図面の記載事項(エ)?(カ)及び認定事項(キ)?(コ)から、刊行物1には、
「a 可変入賞装置23を備えた遊技機1であって、前記可変入賞装置23は、大当り遊技状態が発生したことにもとづいて該可変入賞装置に遊技球が入賞しやすい開放状態と入賞しないまたは入賞しにくい閉止状態とに可動する可動部材(大入賞口扉704)を備え、(認定事項(キ))
可変入賞球装置23は、第1大入賞ユニット700と、装飾パネル701と、から構成され、第1大入賞ユニット700の前面には、第1大入賞口23cが形成され、第1大入賞ユニット700は、ベース本体702と、ベースカバー703と、から構成され、第1大入賞ユニット700の内部には、第1大入賞口23cを開閉可能とする大入賞口扉704を駆動する開閉機構705が設けられているとともに、(認定事項(ク))
c、f’ 第1大入賞口23cから進入してきた入賞球を誘導する入賞球誘導路706が形成され、入賞球誘導路706は、ベース本体702に、その前面に形成される横長の第1大入賞口23cの右側部から左側部に向けて第1大入賞口23cに沿うように延設され、入賞球誘導路706の左側部には、第1カウントスイッチ23aが設置される凹溝725が形成され、その左側、つまり下流側には、排出路707が後向きに延設され、その後端には排出口707bが形成されて、第1大入賞口23cに進入した入賞球は、大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する板部材704aから入賞球誘導路706の誘導底面706aを経て、第1カウントスイッチ23a、排出路707を流下した後、排出口707bから第1大入賞ユニット700の外部に排出されるものであり、(認定事項(ク))
b、f’ 第1カウントスイッチ23aは、細長の平板部材からなる本体23Aと、本体23Aの一端側に形成された遊技球の通過孔23Bと、から構成される近接スイッチであり、通過孔23Bを通過した遊技球を検出可能とされ、本体23Aは入賞球誘導路706の下流側端部に横切るように、誘導底面706aに対して交差する方向に起立させた起立姿勢で凹溝725に配置され、(認定事項(ケ))
a-1、e’ 大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704aの左側に、左側・後側が上方に、右側・前側が下方に向く傾斜面が形成されており、(認定事項(コ)))
d 入賞球誘導路706の背面側に、横長のLED基板710に3つの大入賞口LED710aが配設され、該背面側のうち、真ん中の大入賞口LED710aの左斜め前には、前方向に対して凸状の部位が形成されている、(認定事項(コ))
遊技機1」

という発明(記号a?d、e’、f’、a-1は本件補正発明のA?D、E’、F’、A-1に対応させて合議体が付した。以下、「刊行物1発明」という。)が開示されていると認める。

(1-2)刊行物2
前置報告書において提示された、本願出願遡及日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-329466号公報(以下、「刊行物2」という)には以下の事項が記載されている。

(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、手前側に開閉する開閉部材を有する可変入賞装置、或いは側方に開閉する羽根部材を有する役物装置を備えた遊技機に関し、更に詳しくは、前記開閉部材、或いは羽根部材が不正に開かれるのを構造的に防止した遊技機に関するものである。
・・・
【0004】
そして、図6及び図7に示されるように、可変入賞装置A’の開閉部材D’の表面(前面)には、装飾用のシールSが貼り付けられることがある。開閉部材D’の表面には、開閉部材D’に対するシールSの貼付けの際の位置合わせを主目的とし、併せてシールSの剥がれ防止を兼ねて、全周に亘って凹部26が設けられ、この結果として、開閉部材D’の周縁部は中央部よりも僅かに高くなって、両部の間に段差部が形成されることが多い。」

上記(ア)の記載から、刊行物2には「手前側に開閉する開閉部材を有する可変入賞装置を備えた遊技機において、可変入賞装置A’の開閉部材D’の表面(前面)には、開閉部材D’に対するシールSの貼付けの際の位置合わせを主目的とし、全周に亘って凹部26が設けられ、この結果として、開閉部材D’の周縁部は中央部よりも僅かに高くなっていること」が記載されているものと認められる(以下、「刊行物2記載の事項」という)。

(2)本件補正発明と刊行物1発明との対比

本件補正発明と刊行物1発明とを対比する。(下記(A)?(F’)は本件補正発明の上記分節にあわせて付した。)

(A) 刊行物1発明における「該可変入賞装置に遊技球が入賞しやすい開放状態と入賞しないまたは入賞しにくい閉止状態とに可動する大入賞口扉704」を備えた「可変入賞装置23」について、「大入賞口扉704」が可動することで「第1大入賞口23c」が「開閉可能」となり、「可変入賞装置23」を構成する「第1大入賞ユニット700」に形成された「第1大入賞口23cから」「入賞球」が「進入して」くることから、刊行物1発明における「該可変入賞装置に遊技球が入賞しやすい開放状態と入賞しないまたは入賞しにくい閉止状態とに可動する大入賞口扉704」は、本件補正発明における「動作により遊技球が進入可能な」「開閉手段」に、刊行物1発明における該「大入賞口扉704」を備えた「可変入賞装置23」及び該「可変入賞装置23を備えた遊技機1」は、本件補正発明における「開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段」及び該「可変入球手段を備えた遊技台」に、それぞれ相当する。

(A-1) 刊行物1発明における「大入賞口扉704」を構成する「横長平板形状の板部材704a」は、「板状の扉部材」であるという点で本件補正発明の「開閉手段」と共通する。

(B) 刊行物1発明における「本体23Aと、本体23Aの一端側に形成された遊技球の通過孔23Bと、から構成される」「第1カウントスイッチ23a」は、「通過孔23Bを通過した遊技球を検出可能」であることから、本件補正発明の「遊技球を検出可能な検出手段」に相当する。また、刊行物1発明において、「第1大入賞口23cに進入した入賞球は、入賞球誘導路706、第1カウントスイッチ23a、排出路707を流下した後、排出口707bから第1大入賞ユニット700の外部に排出される」のであるから、「第1カウントスイッチ23a」は「第1大入賞ユニット700」の内部に設けられていることは明らかであり、「第1大入賞ユニット700」を構成要素とする「可変入賞装置23」に設けられていることも明らかである。
そうすると、刊行物1発明における「第1カウントスイッチ23a」を設けた「可変入賞装置23」は、本件補正発明の「遊技球を検出可能な検出手段が設けられた」「可変入球手段」に相当する。

(C) 刊行物1発明において、「第1大入賞口23cに進入した入賞球は、大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する板部材704aから入賞球誘導路706の誘導底面706aを経て、第1カウントスイッチ23a、排出路707を流下した後、排出口707bから第1大入賞ユニット700の外部に排出される」ものであるから、「入賞球」は「可変入賞装置23」に備えられた「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する板部材704a」や、「可変入賞装置23」に「形成され」た「入賞球誘導路706の誘導底面706a」、さらには「第1カウントスイッチ23a」を流下することで「第1カウントスイッチ23a」に「検出」されるということができる。
そうすると、刊行物1発明における「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する板部材704a」を備え、「誘導底面706a」を含む「入賞球誘導路706が形成され」た「可変入賞装置23」は、本件補正発明の「遊技球が転動可能な転動領域が設けられた」「可変入球手段」であって、「転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が前記検出手段により検出されるまでに転動する領域」に相当する。

(D) 刊行物1発明における「入賞球誘導路706の背面側に、横長のLED基板710に3つの大入賞口LED710aが配設され、該背面側のうち、真ん中の大入賞口LED710aの左斜め前には、前方向に対して凸状の部位が形成されている」ことについて、該「凸状の部位」は「入賞球誘導路706」に設けられていることから、入賞球誘導路706に進入した入賞球の進行方向を変化させることが可能なことは明らかである。
そうすると、刊行物1発明における該「凸状の部位」は本件補正発明の「転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段」に相当し、刊行物1発明の「凸状の部位」が「入賞球誘導路706の背面側に」設けられた「可変入賞装置23」は、本件補正発明の「前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた」「可変入球手段」に相当する。

(E’) 刊行物1発明における「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704aの左側に、左側・後側が上方に、右側・前側が下方に向く傾斜面が形成されて」いることについて、上記(C)において認定したように、該「板部材704a」は本件補正発明の「転動領域」の一部に相当するが、該「板部材704aの左側」に「形成されて」いる「傾斜面」は、左側・後側が上方に、右側・前側が下方に向くことから、遊技球を板部材704aや入賞球誘導路706の右側、すなわち入賞球が流下する第1カウントスイッチ23aや排出路707とは反対側である上流側、に誘導することが可能であるということができる。
そうすると、刊行物1発明における「板部材704aの左側に、左側・後側が上方に、右側・前側が下方に向く傾斜面が形成されて」いる「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704a」は、本件補正発明の「第一の傾斜面が設けられた領域」である「転動領域」と、「前記第一の傾斜面は、前記転動領域において上流側に遊技球を誘導可能であ」る点で共通する。

(F’) 刊行物1発明における、「第1カウントスイッチ23a」の「本体23Aは入賞球誘導路706の下流側端部に横切るように、誘導底面706aに対して交差する方向に起立させた起立姿勢で凹溝725に配置され」、「凹溝725」の「左側、つまり下流側には、排出路707が後向きに延設され」ていることから、入賞球誘導路706の左側を下流側、すなわち進行方向、としたときに、後向きに延設された排出路707は、入賞球誘導路706の進行方向に対して右向きに延設されているといえる。
そうすると、刊行物1発明における「第1カウントスイッチ23a」は、入賞球誘導路706の下流側において設けられ、該カウントスイッチ23aを流下した遊技球は、その後入賞球誘導路706の進行方向に対して右側に延設された排出路707を流下するものであり、本件補正発明と同様に「遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた」といえる。
以上のことから、刊行物1発明における該「第1カウントスイッチ23a」は、本件補正発明の「前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた」「検出手段」に相当する。

(A)?(F’)から、本件補正発明と刊行物1発明は
「開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段を備えた遊技台であって、
前記可変入球手段は、遊技球を検出可能な検出手段が設けられた手段であり、
前記可変入球手段は、遊技球が転動可能な転動領域が設けられた手段であり、
前記転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が前記検出手段により検出されるまでに転動する領域のことであり、
前記可変入球手段は、前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた手段であり、
前記転動領域は、第一の傾斜面が設けられた領域であり、
前記第一の傾斜面は、前記転動領域において上流側に遊技球を誘導可能であり、
前記検出手段は、前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段であり、
前記開閉手段は、板状の扉部材である、
遊技台。」
で一致する。

一方、両者は以下の点で一応相違する。

(相違点1)
可変入球手段に遊技球を進入可能とするための動作を行う、板状の扉部材である開閉手段について、本件補正発明は「扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている」のに対して、刊行物1発明における板部材704aは、厚み方向正面側がどのような形状で形成されているか不明である点。

(相違点2)
転動領域に設けられ、前記転動領域において上流側に遊技球を誘導可能である第一の傾斜面に関して、本件補正発明における「第一の傾斜面」は「転動領域において方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能である」のに対して、刊行物1発明の「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704aの左側に形成された、前側が下方に、後側が上方に傾く傾斜面」は、遊技球を入賞球誘導路706の背面側に形成された凸状の部位よりも上流側に遊技球を誘導可能であるかどうかは特定されていない点。

(3)相違点に対する判断
相違点1について、刊行物2に記載されているのは、「手前側に開閉する開閉部材を有する可変入賞装置を備えた遊技機において、可変入賞装置A’における開閉部材D’の表面(前面)には開閉部材D’に対するシールSの貼り合わせの際の位置合わせを主目的とし、全周に亘って凹部26が設けられ、この結果として、開閉部材D’の周縁部は中央部よりも僅かに高くなって」いることであるが、この記載から、刊行物2記載の開閉部材D’においては、「開閉部材D’の表面中央部を基準として、表面上部を含む表面周縁部に凸部が設けられていることで表面中央部より僅かに高くなっている」ということもできる。
そして、該「開閉部材D’の表面中央部を基準として、表面上部を含む表面周縁部に凸部が設けられていることで表面中央部より僅かに高くなっている」ことは、本件補正発明の「可変入球手段に遊技球を進入可能とするための動作を行う、板状の扉部材である開閉手段」が「扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている」と同じ構成を有するものといえ、さらに、上記刊行物2記載の事項は、「開閉部材D’に対するシールSの貼り合わせの際の位置合わせを主目的とし」ており、本件明細書【1428】に「このような突出部を形成することで、正面294に装飾用のシール等を貼り付ける場合に、位置決めを容易に行うことができる場合がある」と記載されていることから、本件補正発明が「扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている」という構成をとることにより得られる効果と同様の効果を奏するものといえる。
そうすると、刊行物2記載の事項は、上記相違点1に係る本件補正発明の「前記開閉手段は、板状の扉部材であり、前記扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている」ことに相当する。
ここで、上記刊行物1発明と上記刊行物2記載の事項は、いずれも遊技機の可変入賞装置において手前側に開閉する扉として機能する開閉可能な部材であるという点で共通するものであり、刊行物1発明において刊行物2記載の事項を適用するだけの動機付けは存在するといえる。
したがって、上記刊行物1発明において、上記刊行物2記載の事項を適用することで、上記相違点1に係る本件補正発明の構成をとることは、当業者が適宜なし得たものである。
また、上記刊行物1発明において上記刊行物2記載の事項を適用することで、本件補正発明と同様に「装飾用のシール等を貼り付ける場合に、位置決めを容易に行うことができる場合がある」という効果を奏することは当業者ならば予測し得た程度のものにすぎない。

相違点2について、刊行物1発明は「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704aの左側に、左側・後側が上方に、右側・前側が下方に向く傾斜面が形成されて」いる構成をとることで、遊技球を上流側に誘導することが可能であるが、この構成をとることで、遊技球が下流側に一気に集中せず上流にも転動して長い時間かけて第1カウントスイッチ23aや排出路707を流下することが可能であることは自明である。そうすると、板部材704aの左側の傾斜面を通過する遊技球が、より長い時間かけて第1カウントスイッチ23aや排出路707をさらに円滑に流下するために、すなわち、より上流側に遊技球を誘導するために、転動領域において方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能な程度にすることは、遊技機において、遊技球を所望の方向に誘導するための慣用手段の適用にすぎない。
また、本件明細書には、
「【1435】
本例に係る遊技台(例えば、パチンコ機100)は、開閉手段(例えば、図180(a)に示す扉部材234a)の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段を備えた遊技台であって、前記可変入球手段は、遊技球を検出可能な検出手段(例えば、図180(e)に示す入球センサ264)が設けられた手段であり、前記可変入球手段は、遊技球が転動可能な転動領域(例えば、図180(a)に示す下面274や背面290)が設けられた手段であり、前記転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が前記検出手段により検出されるまでに転動する領域のことであり、前記可変入球手段は、前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段(例えば、図180(a)に示す誘導凸部262a1)が設けられた手段であり、前記転動領域は、第一の傾斜面が設けられた領域であり、前記第一の傾斜面(例えば、図180(a)に示す第2誘導斜面290h)を転動する遊技球は、前記転動領域において前記方向変化手段よりも上流に誘導可能に構成されている、ことを特徴とする遊技台である。
【1436】
本例に係る遊技台によれば、可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長くすることができる場合がある。」
という記載があることから、本件補正発明の第一の傾斜面を「転動領域において方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能に構成」したことにより得られる効果は、「可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長くすることができる場合がある」というものであり、本件補正発明も、刊行物1発明も、「転動領域に設けられ、前記転動領域において上流側に遊技球を誘導可能である第一の傾斜面」を構成したことにより得られる効果に違いはない。

したがって、刊行物1発明において、「大入賞口扉704が開いた状態における大入賞口扉704を構成する横長平板形状の板部材704aの左側に形成された、前側が下方に、後側が上方に傾く傾斜面」について、遊技球を入賞球誘導路706の背面側に形成された凸状の部位よりも上流側に遊技球を誘導可能であるようにすることは、進入した遊技球が検出手段を通過するまでの所要時間をどのように設定すべきかという課題を解決するための具体化手段における微差にすぎない程度のものということができ、相違点2は実質的な相違点ではない。

(4)小括
以上のとおり、本件補正発明は、上記刊行物1発明及び刊行物2記載の事項に基づき当業者が容易になし得たものということができるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は平成29年8月21日付け審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)本願発明について」において、本件補正発明と先願発明との対比において、以下の主張を行っている。

「<本願発明の説明>
補正後の新請求項1に係る発明(本願発明)の特徴点は、
「開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段を備えた遊技台であって、
前記可変入球手段は、遊技球を検出可能な検出手段が設けられた手段であり、
前記可変入球手段は、遊技球が転動可能な転動領域が設けられた手段であり、
前記転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が前記検出手段により検出されるまでに転動する領域のことであり、
前記可変入球手段は、前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた手段であり、
前記転動領域は、第一の傾斜面が設けられた領域であり、
前記第一の傾斜面は、前記転動領域において前記方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能であり、
前記検出手段は、前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段であり、
前記開閉手段は、板状の扉部材であり、
前記扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている」ことです。
このような構成により、本願発明は、
「可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長くすることができる場合がある。
また、第一の傾斜面によって遊技球を転動領域の上流側に誘導可能にするとともに、転動領域の下流側に、遊技球が左右方向に進入可能な検出手段を設けているため、可変入球手段に進入してきた遊技球が、下流側の検出手段に一気に集中してしまうようなことがなく、一旦、上流側に誘導した遊技球を下流側の検出手段に円滑に進入させることができ、球詰まりを防止できる場合がある。
また、開閉手段は、板状の扉部材であり、扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられているため、扉部材の正面に装飾用のシール等を貼り付ける場合に、位置決めを容易に行うことができる場合がある」
といった顕著な効果を有します。
本願発明は、先願1や従来技術からは把握することのできない構成、顕著な効果を有し、先願1に係る発明と実質同一の範囲を超えることになったものと確信致します。」

しかしながら、上記「(3)相違点に対する判断」において示した通り、上記刊行物1発明において、上記刊行物2記載の事項を適用することで、上記相違点1に係る本件補正発明の「前記開閉手段は、板状の扉部材であり、前記扉部材の上部には、厚み方向正面側に突出する凸部が設けられている」構成をとることは、当業者が適宜なし得たものであり、上記刊行物1発明において上記刊行物2記載の事項を適用することで、本件補正発明と同様に「扉部材の正面に装飾用のシール等を貼り付ける場合に、位置決めを容易に行うことができる場合がある」という効果を奏することは当業者ならば予測し得た程度のものにすぎない。

したがって、審判請求人の主張は採用できない。

(6)独立特許要件に関するむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-9に係る発明は、平成28年12月1日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1.において記載した次のとおりのものである。
「【請求項1】
A 開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段を備えた遊技台であって、
B 前記可変入球手段は、遊技球を検出可能な検出手段が設けられた手段であり、
C 前記可変入球手段は、遊技球が転動可能な転動領域が設けられた手段であり、
前記転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が前記検出手段により検出されるまでに転動する領域のことであり、
D 前記可変入球手段は、前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた手段であり、
E 前記転動領域は、第一の傾斜面が設けられた領域であり、
前記第一の傾斜面は、前記転動領域において前記方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能に構成されており、
F 前記検出手段は、前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段である、
ことを特徴とする遊技台。」

2.拒絶理由通知の概要
原査定の拒絶の理由である、平成28年9月30日付け拒絶理由通知は、本願請求項1-9に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないというものである。

3.先願明細書等
原査定の拒絶の理由において提示された、本願出願遡及日前に出願された特願2012-080226号(特開2013-208256号公報参照)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ。)

(ア) 「【0008】
本発明は、
(1)遊技盤の遊技領域に設けられたセンター役物よりも右側に遊技球を流下させることが可能であり、前記センター役物の下方であって前記遊技領域の左右方向中央よりも右側に入賞装置が設けられた遊技機であって、前記入賞装置は、前記遊技球が入賞可能な入賞口と、前記入賞口の左右方向中央よりも左奥側に形成された排出口と、前記入賞口から排出口に向けて順次幅が狭くなるように形成され、前記入賞口に入賞した遊技球を排出するための排出経路と、を有することを特徴とする遊技機;
(2)前記入賞口に前記遊技球を入賞しやすくする開位置と、前記遊技球を入賞させないようにする閉位置との間で開閉可能な開閉部材を備え、前記開閉部材は、該開閉部材が開位置に位置する時に前記遊技球が転動する転動面を有し、前記転動面上には、前記排出経路に向けて前記遊技球を案内する案内路が形成されていることを特徴とする上記(1)記載の遊技機;
(3)前記転動面には、前記排出経路に向けて前記案内路の幅が順次狭くなるようにリブが形成されている上記(2)記載の遊技機;
(4)前記入賞口の奥側であって前記排出経路と隣接する位置に配置され、前記開閉部材を開閉駆動するプランジャを左右方向に移動させて前記開閉部材を開閉駆動する駆動手段を備えたことを特徴とする上記(2)又は(3)記載の遊技機;
(5)前記排出経路は、前記入賞口から前記排出口に向けて下り傾斜していることを特徴とする上記(1)?(4)のいずれかに記載の遊技機;
を要旨とする。」

(イ) 「【0013】
本実施の形態に係る遊技機1の外観構成を図1に基づいて説明する。遊技機1は、機体の外郭を構成する縦長方形の外枠2を備えている。この外枠2の開口前面側には、縦長方形の中枠3が着脱自在に組み付けられている。中枠3は、全体的に合成樹脂材料を用いて成形されており、内部に遊技盤12等を取り付けることができるように構成されている。
・・・
【0016】
遊技領域16は、外レール14と内レール15との間を通過した遊技球が流下するように形成された領域であり、遊技盤12において外レール14の内側(外レール14と内レール15とが対向配置されている箇所においては、内レール15の内側)に形成されている。遊技球は、これら外レール14と内レール15との間を通過した後に、遊技領域16の上部から下部に向けて流下するように構成されている。
【0017】
遊技領域16には、センター役物17のほかに、普通入賞装置18、始動入賞装置19、大入賞装置20等の各種入賞装置が設けられている。
・・・
【0021】
大入賞装置20は、始動入賞装置19の下方に設けられた第1大入賞装置21と、始動入賞装置19の右方、すなわち遊技領域16においてセンター役物17の下方であって遊技領域16の左右方向中央よりも右側に設けられた第2大入賞装置22とから構成されている。」

(ウ) 「【0022】
・・・図3に示すように、第2大入賞装置22は、前側に装飾部材31が取り付けられており、この装飾部材31に開口する開口部32(図4参照)が形成されている箇所に、開閉部材33が配置されている。開閉部材33は、大入賞口34を開閉するためのもので、通常は図3(a)に示すように大入賞口34を閉じて遊技球を入賞させないようにする閉位置に位置している。そして、遊技機1が大当たり状態となって大入賞口34を開放する場合には、図3(b)に示すように、大入賞口34を開いて遊技球を入賞しやすくする開位置に移動するように構成されている。
・・・

(エ) 「【0026】
また、下ケース部材36は、大入賞口34の奥側であって、該大入賞口34の左右方向中央よりも左側に排出口51が形成されている。排出口51は、下ケース部材36の底面に開口形成されており、下ケース部材36の下方に設けられている排出路(図示せず)へ遊技球を排出することができるように形成されている。
【0027】
また、下ケース部材36には、大入賞口34から排出口51に向けて排出経路52が形成されている。排出経路52は、該排出経路52の左側に立設された第1壁部53と、該排出経路52の右側に立設された第2壁部54との間に形成されており、大入賞口34に入賞した遊技球のうち、大入賞口34の左側から入賞した遊技球を第1壁部53が排出口51に向けて排出経路52を案内し、大入賞口34の右側から入賞した遊技球を第2壁部54が排出口51に向けて排出経路52を案内するように構成されている。また、排出経路52は、第2壁部54が形成されている側から第1壁部53が形成されている側に向けて下り傾斜するように形成されている。また、排出経路52は、該排出経路52の高さ方向の位置が大入賞口34の底面よりも下側に位置する場所には、排出経路52の底面から大入賞口34の底面に向けてリブ52aが形成されている。
【0028】
図5に示すように、第2壁部54は、大入賞口34の右側から排出口51の右側に向けて立設するように形成されている。ここで、大入賞口34の左右方向の大きさと排出口51の左右方向の大きさは、大入賞口34の方が排出口51よりも大きくなるように形成されており、排出経路52は、大入賞口34から排出口51に向けて順次幅が狭くなるように形成されている。なお、本実施の形態では、前後方向に対する第2壁部54の傾斜角が複数個所において異なるように形成されているが、第2壁部54は大入賞口34から排出口51に向けて直線状に形成してもよいし、これ以外の形状に形成してもよい。」

(オ) 「【0037】
開閉部材33は、大入賞口34を開閉するためのものである。この開閉部材33は図7(a)に示す奥側の面が転動面75となるように形成されている。
・・・
【0039】
転動面75は、開閉部材33が開位置に位置する時に、遊技領域16を流下する遊技球が転動して大入賞口34に入賞しやすくするためのもので、この転動面75上には案内路77が形成されている。案内路77は、転動面75上を転動する遊技球を大入賞口34や排出経路52へ向けて案内するためのものである。なお、本実施の形態では、案内路77は、該案内路77の手前側から、該案内路77の後側に位置する排出経路52に向けての左右方向の幅が順次狭くなるように第1リブ78及び第2リブ79が形成されている。第1リブ78は、転動面75の左側において、転動面75よりも高さ方向の位置が高くなるように形成されている。また、この第1リブ78は、転動面75の先端75aから基端75bに向けて、転動面75に対する高さが順次高くなるように形成されている。第2リブ79は、転動面75の右側において、該転動面75よりも高さ方向の位置が高くなるように形成されている。また、第2リブ79は、転動面75の先端75aから基端75bへ行くにつれて、順次左方向へ延出し、かつ転動面75に対する高さが順次高くなるように形成されている。
・・・
【0042】
本実施の形態に係る遊技機1によれば、図8に示すように、開閉部材33に転動面75を形成しておき、大入賞口34を開く位置に開閉部材33が位置している場合には、遊技球は転動面75上を転動しながら大入賞口34に入賞する。このとき、開閉部材33の転動面75上には案内路77が形成されており、案内路77には、第1リブ78と第2リブ79とが形成されている。ここで、第2リブ79は、転動面75の右側において、転動面75の前側から後側へ行くにつれて順次左方向へ延出するように形成されているので、遊技領域16を流下して転動面75上に落下する遊技球の方向を滑らかに転動面75上を転動する遊技球の向かうS方向やT方向へ変えることができる。したがって、転動面75上を転動する遊技球が大入賞口34に入賞する際に遊技球同士がぶつかり合って球詰まりを発生させることなく、スムーズに遊技球を大入賞口34に入賞させることが可能になる。」

(カ) (イ)の【0013】、【0016】、【0017】、【0021】には「遊技機1は、・・・外枠2を備え・・・外枠2の開口前面側には、・・・中枠3が・・・組み付けられ・・・中枠3は、・・・内部に遊技盤12等を取り付けることができるように構成され」「遊技領域16は、・・・遊技盤12・・・に形成され」「遊技領域16には、センター役物17・・・大入賞装置20・・・が設けられ」「大入賞装置20は、・・・センター役物17の下方であって遊技領域16の左右方向中央よりも右側に設けられた第2大入賞装置22とから構成され」という記載があることから、先願明細書等には「遊技機1は、外枠2を備え、外枠2の開口前面側には、中枠3が組み付けられ、中枠3は、内部に遊技盤12等を取り付けることができるように構成され、遊技領域16は、遊技盤12に形成され、遊技領域16には、センター役物17、大入賞装置20が設けられ、大入賞装置20は、センター役物17の下方であって遊技領域16の左右方向中央よりも右側に設けられた第2大入賞装置22とから構成され」ることが記載されているといえる。
そして、この記載と(ア)の「遊技盤の遊技領域に設けられたセンター役物・・・の下方であって前記遊技領域の左右方向中央よりも右側に入賞装置が設けられた遊技機」という記載と対応させると、先願明細書等には
「遊技盤12の遊技領域16に設けられたセンター役物17の下方であって、前記遊技領域16の左右方向中央よりも右側に第2大入賞装置22が設けられた遊技機1」
が記載されているといえる。

(キ) (ウ)には「第2大入賞装置22は、・・・開閉部材33が配置され・・・開閉部材33は、大入賞口34を開閉するためのもので、通常は・・・大入賞口34を閉じて遊技球を入賞させないようにする閉位置に位置し・・・遊技機1が大当たり状態となって大入賞口34を開放する場合には、・・・大入賞口34を開いて遊技球を入賞しやすくする開位置に移動するように構成され」という記載があることから、先願明細書等には「第2大入賞装置22は、開閉部材33が配置され、開閉部材33は、大入賞口34を開閉するためのもので、通常は大入賞口34を閉じて遊技球を入賞させないようにする閉位置に位置し、遊技機1が大当たり状態となって大入賞口34を開放する場合には、大入賞口34を開いて遊技球を入賞しやすくする開位置に移動するように構成され」ることが記載されているといえる。
そして、この記載と(ア)の「前記入賞装置は、前記遊技球が入賞可能な入賞口」「を有する」「前記入賞口に前記遊技球を入賞しやすくする開位置と、前記遊技球を入賞させないようにする閉位置との間で開閉可能な開閉部材を備え」と対応させると、先願明細書等には、
「前記第2大入賞装置22は遊技球が入賞可能な大入賞口34を有し、前記第2大入賞装置22に遊技球を入賞しやすくする開位置と、前記遊技球を入賞させないようにする閉位置との間で開閉可能な開閉部材33を備え」
ることが記載されているといえる。

(ク) (エ)の【0026】には「大入賞口34の奥側であって、該大入賞口34の左右方向中央よりも左側に排出口51が形成され」、【0027】には「大入賞口34から排出口51に向けて排出経路52が形成され」「大入賞口34の左側から入賞した遊技球を第1壁部53が排出口51に向けて排出経路52を案内し、大入賞口34の右側から入賞した遊技球を第2壁部54が排出口51に向けて排出経路52を案内するように構成され」、【0028】には、「第2壁部54は、大入賞口34の右側から排出口51の右側に向けて立設するように形成され・・・、排出経路52は、大入賞口34から排出口51に向けて順次幅が狭くなるように形成され・・・第2壁部54の傾斜角が複数個所において異なるように形成され」という記載があることから、先願明細書等には、
「大入賞口34の奥側であって、該大入賞口34の左右方向中央よりも左側に排出口51が形成され、
大入賞口34から排出口51に向けて排出経路52が形成され、
大入賞口34の左側から入賞した遊技球を第1壁部53が排出口51に向けて排出経路52を案内し、大入賞口34の右側から入賞した遊技球を第2壁部54が排出口51に向けて排出経路52を案内するように構成され、第2壁部54は、大入賞口34の右側から排出口51の右側に向けて立設するように形成され、排出経路52は、大入賞口34から排出口51に向けて順次幅が狭くなるように形成され、第2壁部54の傾斜角が複数個所において異なるように形成され」
ることが記載されているといえる。

(ケ) (オ)の【0037】には「開閉部材33は・・・奥側の面が転動面75となるように形成され」、【0039】には「転動面75は、開閉部材33が開位置に位置する時に、遊技領域16を流下する遊技球が転動して大入賞口34に入賞しやすくするためのもので、・・・転動面75上には案内路77が形成され・・・案内路77は、転動面75上を転動する遊技球を大入賞口34や排出経路52へ向けて案内するためのものであ」り「第1リブ78は、転動面75の左側において、転動面75よりも高さ方向の位置が高くなるように形成され・・・第1リブ78は、転動面75の先端75aから基端75bに向けて、転動面75に対する高さが順次高くなるように形成され」という記載があることから、先願明細書等には、
「開閉部材33は、奥側の面が転動面75となるように形成され、転動面75は、開閉部材33が開位置に位置する時に、遊技領域16を流下する遊技球が転動して大入賞口34に入賞しやすくするためのもので、転動面75上には案内路77が形成され、案内路77は、転動面75上を転動する遊技球を大入賞口34や排出経路52へ向けて案内するためのものであり、第1リブ78は、転動面75の左側において、転動面75よりも高さ方向の位置が高くなるように形成され、第1リブ78は、転動面75の先端75aから基端75bに向けて、転動面75に対する高さが順次高くなるように形成され」ていることが記載されているといえる。

(コ) (オ)の【0039】には「第2リブ79は、転動面75の先端75aから基端75bへ行くにつれて、順次左方向へ延出し、」という記載が、【0042】には「第2リブ79は、転動面75の右側において、転動面75の前側から後側へ行くにつれて順次左方向へ延出するように形成されているので、遊技領域16を流下して転動面75上に落下する遊技球の方向を滑らかに・・・S方向やT方向へ変えることができる」という記載があり、かつ図8(a)には、第2リブ79が順次左方向へ延出していること、S方向やT方向とは排出経路52の排出口51方向であることが看取できることに加えて、第1リブ78が順次右方向へ延出するよう形成されていることが看取できる。
ここで、第2リブ79が左方向へ延出するよう形成されているので、転動面75上の案内路77に落下する遊技球の方向を左に変えていることは明らかであるが、これが排出経路52の排出口51方向であることから、第2リブ79は遊技球を排出経路52の下流方向へ変えるものといえる。
そうすると、第1リブ78が順次右方向へ延出するよう形成されているということは、第2リブ79とは反対に、遊技球を右方向に変えるものであり、遊技球を排出経路52の上流方向へ変えるものということができる。

以上のことから、先願明細書等には、
「第1リブ78が順次右方向へ延出するよう形成されており、遊技球を排出経路52の上流方向へ変えるものである」
ことが記載されているものといえる。

上記(ア)?(オ)の記載事項、及び上記(カ)?(コ)の認定事項から、先願明細書等には、
「遊技盤12の遊技領域16に設けられたセンター役物17の下方であって、前記遊技領域16の左右方向中央よりも右側に第2大入賞装置22が設けられた遊技機1において、(認定事項(カ)))
前記第2大入賞装置22は遊技球が入賞可能な大入賞口34を有し、前記第2大入賞装置22に遊技球を入賞しやすくする開位置と、前記遊技球を入賞させないようにする閉位置との間で開閉可能な開閉部材33を備え、(認定事項(キ))
大入賞口34の奥側であって、該大入賞口34の左右方向中央よりも左側に排出口51が形成され、
大入賞口34から排出口51に向けて排出経路52が形成され、
大入賞口34の左側から入賞した遊技球を第1壁部53が排出口51に向けて排出経路52を案内し、大入賞口34の右側から入賞した遊技球を第2壁部54が排出口51に向けて排出経路52を案内するように構成され、
第2壁部54は、大入賞口34の右側から排出口51の右側に向けて立設するように形成され、排出経路52は、大入賞口34から排出口51に向けて順次幅が狭くなるように形成され、第2壁部54の傾斜角が複数個所において異なるように形成され、(認定事項(ク))
開閉部材33は、奥側の面が転動面75となるように形成され、転動面75は、開閉部材33が開位置に位置する時に、遊技領域16を流下する遊技球が転動して大入賞口34に入賞しやすくするためのもので、転動面75上には案内路77が形成され、案内路77は、転動面75上を転動する遊技球を大入賞口34や排出経路52へ向けて案内するためのものであり、第1リブ78は、転動面75の左側において、転動面75よりも高さ方向の位置が高くなるように形成され、第1リブ78は、転動面75の先端75aから基端75bに向けて、転動面75に対する高さが順次高くなるように形成され、(認定事項(ケ))
第1リブ78が順次右方向へ延出するよう形成されており、遊技球を排出経路52の上流方向へ変えるものである、(認定事項(コ))
遊技機1」
という発明(以下、「先願発明」という)が記載されているものと認められる。

4.本願発明と先願発明との対比

本願発明と先願発明とを対比する。(下記(A)、(C)?(E)は本願発明の上記分節にあわせて付した。)

(A) 先願発明における「遊技球が入賞可能な大入賞口34を有し、前記第2大入賞装置22に遊技球を入賞しやすくする開位置と、前記遊技球を入賞させないようにする閉位置との間で開閉可能な開閉部材33」は、本願発明における「動作により遊技球が進入可能な」「開閉手段」に、先願発明における該「開閉部材33を備え」た「第2大入賞装置22」及び該「第2大入賞装置22が設けられた遊技機1」は、本願発明の「開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段」及び該「可変入球装置を備えた遊技台」に、それぞれ相当する。

(C) 先願発明における「開閉部材33」の「奥側の面」に形成された「転動面75上に」「形成され」た「案内路77」、及び「大入賞口34から排出口51に向けて」「形成され」た「排出経路52」は、遊技球を転動させて大入賞口34から排出口51に向けて案内するための領域ということができる。
そうすると、先願発明における「案内路77」、及び「排出経路52」を有する「第2大入賞装置22」は、本願発明の「遊技球が転動可能な転動領域が設けられた」「可変入球手段」に相当し、「前記転動領域」は「前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が転動する領域」である点で共通する。

(D) 先願発明における「大入賞口34の右側から入賞した遊技球を」「排出口51に向けて排出経路52を案内するように構成され」た「第2壁部54」は、「大入賞口34の右側から排出口51の右側に向けて立設するように形成され」「第2壁部54の傾斜角が複数個所において異なるように形成され」ていることから、大入賞口34の右側から入賞した遊技球は、排出口51に向けて排出経路52を案内される際に、第2壁部54の複数箇所において異なるように形成された傾斜角によって、その方向を変化させることが可能であるということができるから、先願発明における「傾斜角が複数個所において異なるように形成」された「第2壁部54」は、本願発明における「転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段」に相当する。
そして、先願発明における上記「第2壁部54」を備えた「第2大入賞装置22」は、本願発明における「前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた」「可変入球手段」に相当する。

(E) 先願発明における「第1リブ78」は、「転動面75の左側において、転動面75よりも高さ方向の位置が高くなるように形成され、第1リブ78は、転動面75の先端75aから基端75bに向けて、転動面75に対する高さが順次高くなるように形成され」ており、かつ「順次右方向へ延出するよう形成されており、遊技球を排出経路52の上流方向へ変える」ことから、本願発明における「第一の傾斜面」と、「前記転動領域において上流側に遊技球を誘導可能に構成されている」で共通する。
また、先願発明における該「第1リブ78」が形成された「転動面75」は、本願発明における該「第一の傾斜面」が設けられた領域である「前記転動領域」に相当する。

(A)、(C)?(E)より、本願発明と先願発明は、
「開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段を備えた遊技台であって、
前記可変入球手段は、遊技球が転動可能な転動領域が設けられた手段であり、
前記転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が転動する領域のことであり、
前記可変入球手段は、前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた手段であり、
前記転動領域は、第一の傾斜面が設けられた領域であり、
前記第一の傾斜面は、前記転動領域において上流側に遊技球を誘導可能に構成されている、
遊技台。」
という点で一致する。

一方、両者は以下の点で一応相違する。

(相違点1)
転動領域に設けられ、前記転動領域において上流側に遊技球を誘導可能である第一の傾斜面に関して、本願発明における「第一の傾斜面」は「転動領域において方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能である」のに対して、先願発明の「転動面75の先端75aから基端75bに向けて、転動面75に対する高さが順次高くなるように」「転動面75の左側において」「形成された」「第1リブ78」は、遊技球を、排出経路52のうち、第2壁部54の傾斜角が異なるように形成された場所よりも上流側に遊技球を誘導可能であるかどうかは特定されていない点。(上記の対比(E)より)

(相違点2)
本願発明は、「可変入球手段に」、「遊技球を検出可能な」「前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段である」「検出手段」を設けたのに対して、先願発明はそのような特定がなされていない点。(本願発明の(B)(F))

(相違点3)
開閉手段を介して可変入球手段に進入した遊技球が転動する領域である転動領域について、本願発明は「前記検出手段により検出されるまでに転動する領域」であるのに対して、先願発明は「転動面75上に形成された案内路77」及び「大入賞口34から排出口51に向けて順次幅が狭くなるように形成ている排出経路52」である点。(上記の対比(C)より)

5.相違点に対する判断
上記相違点について検討する。

相違点1について、上記「第2 平成29年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」における「(3)相違点に対する判断」での相違点2についての判断と同様に、先願発明は「第1リブ78が順次右方向へ延出するよう形成されており、遊技球を排出経路52の上流方向へ変えるものである」構成をとることで、遊技球を上流側に誘導することが可能である、すなわち、この構成をとることで、遊技球が長い時間かけて排出経路52を移動することが可能であることは自明である。そうすると、案内路77の左側に形成された第1リブ78を通過しようとする遊技球が、より長い時間かけて移動するように、できるだけ上流側に遊技球を誘導するにあたり、案内路77において第2壁部54の傾斜角が異なるように形成された場所よりも上流側に遊技球を誘導可能な程度にすることは、遊技機において、遊技球を所望の方向に誘導するための慣用手段の適用にすぎない。
また、上記「(3)相違点に対する判断」における相違点2についての判断と同様に、本願発明の第一の傾斜面を「転動領域において方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能に構成」したことにより得られる効果は、「可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長くすることができる場合がある」というものであって、本願発明も、先願発明も、「転動領域に設けられ、前記転動領域において上流側に遊技球を誘導可能である第一の傾斜面」を構成したことにより得られる効果に違いはない。
したがって、先願発明において、「転動面75の左側において」「転動面75の先端75aから基端75bに向けて、転動面75に対する高さが順次高くなるように形成され」た「第1リブ78」を、遊技球を、排出経路52のうち、第2壁部54の傾斜角が異なるように形成された場所よりも上流側に遊技球を誘導可能であるようにすることは、進入した遊技球が検出手段を通過するまでの所要時間をどのように設定すべきかという課題を解決するための具体化手段における微差にすぎない程度のものということができ、相違点1は実質的な相違点ではない。

相違点2について、「遊技球を検出可能な検出手段」を、「転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように」「可変入球手段に」設けることは、可変入球手段における周知慣用の技術にすぎない(例えば、上記「第2 平成29年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」における「(1-1)刊行物1」である特開2012-147877号公報では、「(2)本件補正発明と刊行物1発明との対比」における(F’)において認定したように、「第1カウントスイッチ23a」が入賞球誘導路706の下流側において設けられ、該カウントスイッチ23aを流下した遊技球は、その後入賞球誘導路706の進行方向に対して右側に延設された排出路707を流下するものが開示されており、遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられたといえる。
また、特開2011-92301号公報の【0167】?【0168】には「また、図27に示すように、大入賞口ユニット650は、仕切り壁656の延びる方向・・・と略直交に交差する方向Yに延びる内壁部657と、内壁部657を利用して形成されている送球路658と、を備えている。・・・仕切り壁656と内壁部657との間に、大入賞口スイッチ215が位置している。そして、大入賞口スイッチ215は、仕切り壁656と交差する方向Yに延びている。このため、仕切り壁656に沿って大入賞口スイッチ215の方向に進行する遊技球は、その進行方向を変更することなく大入賞口スイッチ215により入賞検出される。大入賞口スイッチ215により入賞検出された遊技球は、内壁部657にぶつかって進行方向を変え、送球路658を下流に向けて進行する。すなわち、遊技球は、内壁部657にぶつかると、その進行方向を、送球路658に沿って方向Yの奥側向きに変え」と記載されており、大入賞口スイッチ215の方向に進行する遊技球は、大入賞口スイッチ215により入賞検出され、内壁部657にぶつかると、進行方向を略直交に交差する方向に変えるといえる、すなわち、遊技球が大入賞口スイッチ215に向かう方向を下流方向とすると、大入賞口スイッチ215により検出された遊技球は、遊技球が左右方向に進入するといえる。)。
そうすると、先願発明において、「遊技球を検出可能な検出手段」を、本願発明のように「前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段である」ように構成することは、検出手段を可変入賞装置の中でどの位置に配置するかについての具体化手段における微差にすぎず、かつ当該構成をとることにより得られる効果は「球詰まりを防止できる」というものにすぎず、先願明細書【0007】に記載されている、先願発明の「本発明は・・・入賞装置における遊技球の排出をスムーズに行う」という課題から見て新たな効果を奏するものでもない。
したがって、上記相違点2もまた課題解決のための具体化手段における微差にすぎず、実質的な相違点ではない。

また、相違点3について、開閉手段を介して可変入球手段に進入した遊技球が転動する領域である転動領域について、先願発明では「転動面75上に形成された案内路77」及び「大入賞口34から排出口51に向けて順次幅が狭くなるように形成ている排出経路52」が転動領域であるところ、それ以後も遊技球は転動をし続け、遊技球を検出するための検出手段が設けられた部分に至ることから、遊技球が検出されるまでに転動する領域も含めて当然に転動領域であるということができ、上記相違点3も実質的な相違点ではない。

以上のことから、本願発明は、先願発明と実質的に同一の発明であるといえる。

6.審判請求人の主張について
審判請求人は平成28年12月1日付け意見書の「(3)本願が特許されるべき理由について」において以下のように主張している。

「<本願発明>
本願の請求項1に係る発明(本願発明)の特徴点は、
「(A)開閉手段の動作により遊技球が進入可能な可変入球手段を備えた遊技台であって、
(B)前記可変入球手段は、遊技球を検出可能な検出手段が設けられた手段であり、
(C)前記可変入球手段は、遊技球が転動可能な転動領域が設けられた手段であり、
(D)前記転動領域とは、前記開閉手段を介して前記可変入球手段に進入した遊技球が前記検出手段により検出されるまでに転動する領域のことであり、
(E)前記可変入球手段は、前記転動領域を転動する遊技球の方向を変化させることが可能な方向変化手段が設けられた手段であり、
(F)前記転動領域は、第一の傾斜面が設けられた領域であり、
(G)前記第一の傾斜面は、前記転動領域において前記方向変化手段よりも上流側に遊技球を誘導可能に構成されており、
(H)前記検出手段は、前記転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段である」
ことです。
本願発明によれば、
「可変入球手段に進入してきた遊技球が転動領域を転動して検出手段を通過するまでにかかる時間をより長くすることができる場合がある。
また、第一の傾斜面によって遊技球を転動領域の上流側に誘導可能にするとともに、転動領域の下流側に、遊技球が左右方向に進入可能な検出手段を設けているため、可変入球手段に進入してきた遊技球が、下流側の検出手段に一気に集中してしまうようなことがなく、一旦、上流側に誘導した遊技球を下流側の検出手段に円滑に進入させることができ、球詰まりを防止できる場合がある」
という顕著な効果を得ることができます。

<本願発明と引用発明の対比>
・・・本願の出願人は、旧請求項1の内容に、先願1には記載や示唆の無い発明特定事項(H)を追加する補正を行いました。この発明特定事項(H)や、発明特定事項(G)等によって特定される技術思想は、「第一の傾斜面によって遊技球を転動領域の上流側に誘導可能にするとともに、転動領域の下流側に、遊技球が左右方向に進入可能な検出手段を設ける」といった技術思想であり、本願発明特有のものです。
本願発明は、このような特有の技術思想を備えることから、「可変入球手段に進入してきた遊技球が、下流側の検出手段に一気に集中してしまうようなことがなく、一旦、上流側に誘導した遊技球を下流側の検出手段に円滑に進入させることができ、球詰まりを防止できる場合がある」といった、先願1に記載の発明からは得ることができない顕著な効果を有します。
先願1には、本願発明に係る「第一の傾斜面」を示唆する記載があると認められますが、本願発明に係る「検出手段」はもとより、「検出手段が、転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けられた手段である」といった記載や示唆は一切ありません。」

当該主張について検討するに、上記「5.相違点に対する判断」において示したように、遊技台の可変入球手段において、遊技球を検出可能な検出手段を、転動領域の下流側において遊技球が左右方向に進入可能となるように設けることは、遊技台において周知慣用技術にすぎない。
さらに、「可変入球手段に進入してきた遊技球が、下流側の検出手段に一気に集中してしまうようなことがなく、一旦、上流側に誘導した遊技球を下流側の検出手段に円滑に進入させることができ、球詰まりを防止できる場合がある」という効果は、遊技球が検出手段により検出されるまでの可変入球手段に設けられた転動領域の構成である、本願発明の構成C、D、Eによって既に奏するものであり、上記の周知慣用技術を適用することによって得られる効果は、上記効果の範囲において想定しうる程度のものにすぎず、格別に新たな効果を奏するものとはいえない。
そして、上記「4.本願発明と先願発明との対比」において示したとおり、本願発明の構成C、D、Eに相当する構成は、先願発明においても備えられているか、そうでなくても先願発明との実質的な相違点にかかる構成ではないことから、本願発明が先願発明と比して格別に新たな効果を奏するものということはできない。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張は採用できない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と実質的に同一の発明であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願遡及日時点において、その出願人が先願発明の出願人と同一であるともいえないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2018-05-07 
結審通知日 2018-05-08 
審決日 2018-05-22 
出願番号 特願2016-20453(P2016-20453)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 川崎 優
濱野 隆
発明の名称 遊技台  
代理人 佐原 雅史  
代理人 横田 一樹  

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