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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02F
管理番号 1341831
審判番号 不服2017-14788  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-04 
確定日 2018-07-24 
事件の表示 特願2015-523296「油冷通路を有するピストンおよびその構成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月23日国際公開、WO2014/015311、平成27年9月10日国内公表、特表2015-526632、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)7月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年7月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月19日付け:拒絶理由通知書
平成29年3月30日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年5月31日付け :拒絶査定
平成29年10月4日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成29年5月31日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

本願の請求項1ないし3、6ないし13、15及び17ないし19に係る発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項4、5、14及び16に係る発明は、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
1.特開2011-38414号公報
2.実願昭48-133982号(実開昭50-77605号)のマイクロフィルム
3.実願昭61-25742号(実開昭62-138850号)のマイクロフィルム
4.米国特許出願公開第2010/0275861号明細書

第3 本願発明
本願の請求項1ないし19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明19」という。)は、平成29年3月30日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
内燃機関のためのピストンであって、
上側燃焼面と、下冠領域を包囲する環状の冷却空洞とを有するピストン本体を備え、外壁が前記上側燃焼面から懸架し、環状リングベルト領域が前記上側燃焼面に隣接して前記外壁に形成され、前記リングベルト領域は、その中に形成された少なくとも1本のリング溝を有し、さらに、
前記少なくとも1本のリング溝から前記冷却空洞に連続的に延在する少なくとも1本の油路を備え、前記少なくとも1本の油路は、前記少なくとも1本のリング溝から径方向内方に懸架する第1の部分と、前記第1の部分から直接前記冷却空洞に径方向内方に上昇する第2の部分とを有し、
前記冷却空洞は底面を有し、前記少なくとも1本の油路は、前記底面を通って延在し、
前記少なくとも1本の油路は、前記底面から上方に延在する管状部材を含む、ピストン。
【請求項2】
前記底面は、前記少なくとも1本の油路に沿ってその中を延在する座ぐりを有し、前記管状部材は、前記座ぐりに固定される、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記管状部材は、前記底面との一体構造の材料片である、請求項1に記載のピストン。
【請求項4】
前記ピストン本体は、下側部品に固定された上側部品を含み、前記少なくとも1本の油路は、前記下側部品に形成される、請求項1に記載のピストン。
【請求項5】
前記冷却空洞から前記下冠領域に延在する油ポートをさらに含む、請求項1に記載のピストン。
【請求項6】
前記ピストン本体は、一体構造の材料片である、請求項1に記載のピストン。
【請求項7】
前記第2の部分は、前記外壁を通って前記冷却空洞内へと延在する貫通孔として形成され、前記外壁に隣接して前記貫通孔に配置されたプラグをさらに含む、請求項1に記載のピストン。
【請求項8】
前記第1および第2の部分は交点において互いに交差し、前記プラグは、前記交点と前記外壁との間にある、請求項7に記載のピストン。
【請求項9】
前記第1の部分は、前記外壁の周りに延在する環状溝として形成される、請求項1に記載のピストン。
【請求項10】
前記第2の部分は、前記外壁を通って前記冷却空洞内へと延在し、前記第1の部分と交差する貫通孔として形成される、請求項9に記載のピストン。
【請求項11】
ピストンを構成する方法であって、
上側燃焼面と、下冠領域を包囲する環状の冷却空洞とを有するピストン本体を形成することを含み、外壁は、前記上側燃焼面から懸架する環状リングベルト領域を含み、さらに、
前記リングベルト領域にリング溝を形成することと、
前記リング溝から径方向内方に懸架する油路の第1の部分と、前記第1の部分から前記冷却空洞に径方向内方に上昇する第2の部分とを形成することによって、前記リング溝から前記冷却空洞に連続的に延在する少なくとも1本の油路を形成することと、
前記冷却空洞の底面を通って延在する前記油路を形成することと、
前記冷却空洞の前記底面から上方に延在する管状部材を有する前記油路の一部分を形成することとを含む、方法。
【請求項12】
前記冷却空洞の前記底面へと延在する座ぐりに前記管状部材を固定することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記底面との一体構造の材料片として形成された突起を通って延在する前記管状部材を形成することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上側部品を下側部品に固定することによって前記ピストン本体を形成することをさらに含み、前記上側部品および前記下側部品は前記冷却空洞に接し、前記少なくとも1本の油路は、完全に前記下側部品に形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ピストン本体を一体構造の材料片として形成することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却空洞から前記下冠領域に延在する油ポートを形成することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記外壁を通って前記冷却空洞へと延在する貫通孔として前記第2の部分を形成することをさらに含み、前記外壁に隣接して前記貫通孔にプラグを配置することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記外壁の外周縁の周りに延在する環状溝として前記第1の部分を形成することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記外壁を通って前記冷却空洞へと延在し、前記第1の部分と交差する貫通孔として前記第2の部分を形成することをさらに含む、請求項18に記載の方法。」

第4 引用例、引用発明、引用技術
1 引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開2011-38414号公報(以下「引用例1」という。)には、「内燃機関用ピストン」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。以下同様。)

ア 「【0013】
以下、本発明を適用した内燃機関用ピストンの実施例について説明する。
実施例の内燃機関用ピストン(以下単に「ピストン」と称する。)は、例えば自動車等の車両の走行用動力源として用いられるディーゼルエンジン等の筒内噴射エンジンのシリンダ内に挿入され、コンロッドを介してクランクシャフトに接続されている。
【0014】
ピストン1は、例えばアルミニウム系合金を鍛造又は鋳造によって成型した後に、所定の機械加工を施すことによって製作されている。ピストン1は、冠部10、スカート20、トップリング溝30、セカンドリング溝40、サードリング溝50、トップリングランド60、セカンドリングランド70、サードリングランド80、クーリングチャンネル90、油路100等を備えて一体に形成されている。
【0015】
冠部10は、ピストン1における図示しないシリンダヘッド側の部分である。シリンダヘッドは、シリンダのクランクシャフト側とは反対側の端部に設けられ、燃焼用空気を導入する吸気ポート、既燃ガスを排出する排気ポート、各ポートを開閉するバルブ及びその駆動機構、コモンレール(蓄圧室)に貯留された燃料を噴射するインジェクタ等を備えている。
冠部10は、冠面11、燃焼室12等を備えている。
冠面11は、ピストン10(審決注:「ピストン1」の誤記)のシリンダヘッド側の端面であって、ほぼ平面状に形成されている。
燃焼室12は、冠面11の中央部をクランク側へ凹ませて形成されている。燃焼室12は、図示しないインジェクタから噴射される燃料が自己着火して燃焼を開始する部分である。」

イ 「【0017】
トップリング溝30、セカンドリング溝40、サードリング溝50は、冠部10における外周面を、内径側に凹ませて形成した周方向溝であって、シリンダヘッド側(冠面11側)から順次配列されている。
トップリング溝30には、図示しないトップリングが収容される。
セカンドリング溝40には、図2乃至図4に示すセカンドリングR(本発明にいうピストンリング)が収容される。セカンドリング溝40には、図2に示すように、ヘッド側面部41、クランク側面部42が設けられる。ヘッド側面部41及びクランク側面部42は、ほぼ平面状に形成されるとともに、平行に配置され相互に対向している。ヘッド側面部41とクランク側面部42との間隔は、セカンドリングRの厚みよりも大きく設定され、その結果セカンドリングRは、ピストン1に対してその往復方向(各図における上下方向)にほぼ沿って相対変位が可能となっている。
また、クランク側面部42には、後述する油路100のオイル供給孔101が設けられる。
サードリング溝50には、図示しないオイルリング(サードリング)が収容される。」

ウ 「【0019】
クーリングチャンネル90は、冠部10の内部に形成され、ピストン1のクランク側に設けられた図示しないオイルジェット(オイル噴射手段)から噴射される潤滑用のオイルが流されるオイル流路である。クーリングチャンネル90は、ピストン1の周方向にほぼ沿って伸びるとともに、オイルジェットから噴射されるオイルが吹き込まれる図示しない開口が設けられている。
クーリングチャンネル90は、図2等に示すように、セカンドリング溝40の溝底部と隣接して配置されている。
【0020】
油路100は、クーリングチャンネル90の下部から、セカンドリング溝40の内部にオイルを供給する通孔である。
油路100は、クーリングチャンネル90の下部からピストン1の径方向にほぼ沿って外径側へ伸び、中間に設けられた屈曲部からシリンダヘッド側へ立ちあげられ、その上端部に設けられたオイル供給孔101によってセカンドリング溝40と連通している。
油路100のセカンドリング溝40側の端部であるオイル供給孔101は、セカンドリング溝40のクランク側面部42に設けられている。
図2に示すように、ピストン1にセカンドリングRを組み込んでシリンダC内に挿入した状態において、リングRの内径側の端部(内周縁部)は、オイル供給孔101のピストン1内径側の端部に対して、距離DだけシリンダCの中心側に配置されるようになっている。
【0021】
次に、実施例のピストン1における油路100を用いたピストン-シリンダ間へのオイル供給について説明する。
ピストン1が上死点側から下死点側へ移動する速度が低下して下死点において一旦停止し、その後上死点側への移動を開始する際には、図3に示すように、セカンドリングRは、慣性力によってセカンドリング溝40のクランク側面部42に押し付けられ、はり付いた状態となっている。このとき、油路100のオイル供給孔101は、セカンドリングRによって実質的に閉塞された状態となっている。
【0022】
また、エンジンの膨張行程において、燃焼ガス圧力が高まっている場合にも、セカンドリングRのシリンダヘッド側の面部に作用する燃焼ガスの圧力によって、セカンドリングRは図3に示すようにセカンドリング溝40のクランク側面部42に押し付けられた状態となっている。このときも油路100のオイル供給孔101は、セカンドリングRによって実質的に閉塞された状態となっている。
さらに、エンジンの圧縮工程及び排気工程においても、燃焼用空気又は既燃ガスの圧力及びセカンドリングRとシリンダC壁面との摺動抵抗によってセカンドリング溝40のクランク側面部42に押し付けられ、オイル供給孔101は閉塞される。
【0023】
一方、ピストン1が下死点側から上死点側へ移動する速度が低下して上死点において一旦停止し、その後下死点側への移動を開始する際には、図4に示すように、セカンドリングRは、慣性力によってセカンドリング溝40のヘッド側面部41に押し付けられ、はり付いた状態となっている。このとき、セカンドリングRとオイル供給孔101との間には隙間が形成され、オイルジェットからクーリングチャンネル90を経由して油路100に流入したオイルは、図4に破線矢印で図示したように、オイル供給孔101からセカンドリング溝40を経てピストン1の外周面とシリンダCの内面との間に供給される。
また、過給器による過給圧が比較的低い場合における吸気行程においても、セカンドリングRは、シリンダC壁面との摺動抵抗によってセカンドリング溝40のヘッド側面部41に押し付けられ、オイル供給孔101は開放されオイルの供給が行われる。」

エ 図1の図示内容からみて、冠部10における外周面は、冠面11から懸架するものであることが分かる。

オ 上記ア(特に段落【0014】)、イ(特に段落【0017】)及び図1の図示内容からみて、トップリング溝30、セカンドリング溝40、サードリング溝50、トップリングランド60、セカンドリングランド70及びサードリングランド80が形成された部位は、冠面11に隣接して形成されるといえる。

カ 上記ウ(特に段落【0019】)及び図1の図示内容からみて、クーリングチャンネル90は環状であるといえる。

キ 上記ウ(特に段落【0020】)及び図2の図示内容からみて、油路100は、クーリングチャンネル90からピストン1の外径側へ伸び、中間に設けられた屈曲部からシリンダヘッド側へ立ちあげられ、セカンドリング溝40と連通するものであることが分かる。このことを、セカンドリング溝40を基準にしてみると、油路100は、セカンドリング溝40から下方へ伸び屈曲部から内径側へ伸びて、クーリングチャンネル90と連通するものとなる。そうすると、油路100は、セカンドリング溝40から下方へ伸び屈曲部から内径側へ伸びている外側の部分と、この外側の部分からクーリングチャンネル90と接続するまでの内側の部分とを有するといえる。

ク 図1の図示内容からみて、クーリングチャンネル90が底面を有することが分かる。

上記アないしク及び図1ないし図4の図示内容を総合すると、引用例1には、「ピストン」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「内燃機関用ピストンであって、
冠面11と、周方向にほぼ沿って伸びる環状のクーリングチャンネル90とを有するピストン1を備え、冠部10における外周面が前記冠面11から懸架し、トップリング溝30、セカンドリング溝40、サードリング溝50、トップリングランド60、セカンドリングランド70及びサードリングランド80が形成された部位が前記冠面11に隣接して前記冠部10における外周面に形成され、前記トップリング溝30、セカンドリング溝40、サードリング溝50、トップリングランド60、セカンドリングランド70及びサードリングランド80が形成された部位は、その中に形成されたセカンドリング溝40を有し、さらに、
前記セカンドリング溝40から前記クーリングチャンネル90に通孔する油路100を備え、前記油路100は、前記セカンドリング溝40から下方へ伸び屈曲部から内径側へ伸びている外側の部分と、前記外側の部分から直接前記クーリングチャンネル90に向かう内側の部分とを有し、
前記クーリングチャンネル90は底面を有する、ピストン。」

2 引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された実願昭48-133982号(実開昭50-77605号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、「ピストン」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「これに対し本考案では第2図に例示するように、そのオイルリング溝部又はこの下部よりピストン内部(10)へ明けられる潤滑油逃し穴(2)を、ピストン外周から内面に対し、ピストン頂部方向にのみ向くように明けたものである。第4図に例示したものは、前記潤滑油逃し穴(2)を、オイルリング溝の下部に明けたものを示しており、このさいオイルリング溝部には逃し穴(2)の必要位置から分岐穴(6)により連通させ、このさい逃し穴(2)の不要部分はビス(7)等で塞ぐようにする。
本考案のような潤滑油逃し穴(2)を設けることにより、オイルリング溝部において、下方又は水平の穴がピストン内部(10)と通じていないため、ピストン(9)が下降時、ピストン内部(10)に相対的に下から上への空気流れを生じても、同逃し穴(2)は風圧を受けることがないので、潤滑油逃し穴(2)内に溜つた潤滑油がピストン(9)の外周部へ噴出することは全くないと共に、又ピストン(9)が下降時に、その加速度によりピストンの潤滑油逃し穴(2)内に溜つた潤滑油とピストン(9)との間に相対的に流れを生じ、逃し穴(2)を通つてピストン内部(10)へ潤滑油が流出するのである。
即ちこれを更に詳述すると、第3図(I)はピストン(9)の下降行程を、又同図(II)はピストン(9)の上昇行程を夫々示しているが、同図(I)のピストン下降行程時、オイルリング(3)がシリンダライナ(8)の壁に付着した潤滑油を掻き落すのであるが、ピストン(9)のスピードが大であるため、オイルリング(3)の下部に溜つた潤滑油(4)の圧力は相当大きくなる。しかし本考案の逃し穴(2)によれば、潤滑油(4)は慣性によりピストン内部(10)へ流入するため、同逃し穴(2)内に負圧を生じ、オイルリング(3)下部に溜つた潤滑油(4)は、矢印(5)のように好適に逃し穴(2)内に吸引流入され、従つてオイルリング(3)が掻き落した潤滑油(4)は、リング下部に溜ることなく速かに逃し穴(2)を通じて、ピストン内部に確実円滑に逃げ出すので、従来の最大の問題点であるオイルアツプを防止できるのである。」(明細書第3ページ第3行ないし第5ページ第1行)

イ 「又第4図のようにこの逃し穴(2)をオイルリング溝部の下方に明けた場合には、その作用効果は基本的には同様であるが、この構造によればピストン(9)の上昇行程時、潤滑油逃し穴(2)は、その分岐孔(6)をオイルリング(3)の下部で塞ぐことになるので、逃し穴(2)内に溜つている潤滑油がピストン外周部へ出てくるのを防ぐことになり、更に本考案の効果を増すことが可能である。」(明細書第5ページ第7行ないし第14行)

ウ 上記ア及び第4図の記載からみて、分岐穴(6)は、オイルリング溝部からピストンの内側下方に向かうように設けられることが分かる。

エ 上記ア及び第4図の記載からみて、潤滑油逃し穴(2)は、分岐穴(6)から、ピストンの内側上方に向かうように穿けたものであることが分かる。

上記アないしエ及び図1ないし図4の図示内容を総合すると、引用例2には、次の技術(以下「引用技術2」という。)が記載されている。

「ピストン(9)において、オイルリング溝部からピストンの内側下方に向かう分岐穴(6)と、分岐穴(6)から、ピストンの内側上方に向かう潤滑油逃し穴(2)とを有する技術。」

3 引用例3について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された実願昭61-25742号(実開昭62-138850号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、「内燃機関のピストン」に関して、図面(特に図2参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「そこで前記各々の不具合を解消するものとして本出願人は既に実願昭60-182790号のピストン(第2図参照)を提案している。前記考案は、冷却空洞の下壁がオイルリング溝よりも下方に位置する内燃機関のピストンにおいて、オイルリング溝の下縁部に形成したオイル溜り溝と冷却空洞とを連通するパイプを設け、そのパイプの冷却空洞側の開口面をピストンの軸線に平行に形成したものである。しかし前記考案では別体のパイプを連通孔に取付ける作業を必要とするため、製造工程を複雑にする不具合がある。」(明細書第3ページ第14行ないし第4ページ第4行)

イ 図2の図示内容からみて、冷却空洞の内壁から内側にパイプが延在することが分かる。

上記ア及びイ並びに図2の図示内容を総合すると、引用例3には、次の技術(以下「引用技術3」という。)が記載されている。

「ピストン1cにおいて、オイルリング溝3と冷却空洞Sとを連通するパイプを設け、パイプが冷却空洞の内壁から内側に延在する技術。」

4 引用例4について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された米国特許出願公開第2010/0275861号明細書(以下「引用例4」という。)には、「ピストン」に関して、図面(特に、FIG.1ないしFIG.3参照。)とともに次の事項が記載されている。なお、仮訳は、引用例4のパテントファミリーである特表2012-526237号公報を参考にした。

ア 「[0012] Referring in more detail to the drawings, FIGS. 1-3 illustrate a piston 10 constructed in accordance with one presently preferred aspect of the invention. The piston 10 has a piston body 12 extending along a central axis 14 along which the piston body reciprocates within a cylinder bore (not shown). The piston body 12 includes an upper crown portion 16 having an upper combustion wall 18 , represented here, by way of example and without limitation, as providing a recessed combustion bowl 20 , against which combustion forces directly act in the cylinder bore, thereby providing a location for extreme heat generation. As referenced in FIGS. 2 and 3 , the upper crown portion 16 has at least one, and shown here as a pair of annular upper ribs, referred to hereafter as an upper inner rib 22 and upper outer rib 24 , depending from the upper combustion wall 18 to respective free ends 26 , 28 . The piston body 12 further includes a lower crown portion 30 having at least one, and shown here as a pair of annular lower ribs, referred to hereafter as a lower inner rib 32 and lower outer rib 34 , extending to respective free ends 36 , 38 arranged in alignment for engagement with the free ends 26 , 28 of the upper ribs. The lower crown portion 30 further includes an inner gallery floor 62 provided by an annular flange 40 extending radially inwardly and upwardly from the lower inner rib 32 toward the upper combustion wall 18 and a pair of pin bosses 42 , 44 depending generally from the flange 40 to provide a pair of wrist pin bores 43 , 45 aligned along a pin axis 41 for receipt of a wrist pin 49 with a space 46 provided between the pin bosses 42 , 44 for receipt of a small end of a connecting rod 47 . The annular flange 40 has an upper annular free edge 48 that extends generally into the upper crown portion 16 in axially spaced relation with the upper combustion wall 18 , wherein the free edge 48 is contoured to provide an optimal oil flow beneath the upper combustion wall 18 such that optimal cooling results without “cooking” the oil.
[0013] The upper crown portion 16 is formed having an annular outer oil gallery pocket 50 extending from the inner and outer rib free ends 26 , 28 upwardly into an upper ring belt region 52 and an annular inner oil gallery pocket 54 extending from the inner free end 26 and upwardly beneath the combustion bowl 20 . The lower crown portion 30 is formed, such as in a casting or forging process from steel or other metal, having an annular outer oil gallery pocket 56 extending from the inner and outer rib free ends 36 , 38 downwardly into a lower ring belt region 58 and an annular inner oil gallery pocket 60 extending from the inner free end 36 and the flange free edge 48 downwardly to the valley or floor 62 , wherein the floor 62 is raised axially relative to a floor 63 of the outer oil gallery pocket 56 . Upon attaching the upper crown portion 16 to the lower crown portion 30 , an annular outer oil gallery, represented here as a substantially closed outer oil gallery 64 , and an inner or central oil gallery 66 is formed. The outer oil gallery 64 is bounded by the outer ribs 24 , 34 and inner ribs 22 , 32 , while the central oil gallery 66 is formed and bounded in part by the flange 40 , wherein the flange 40 extends radially inwardly from the outer oil gallery 64 to its free edge 48 . To facilitate cooling the piston 10 , one or more oil flow passages are provided in the lower ribs 32 , 34 and/or the flange 40 . For example, as shown in FIGS. 1 and 2 , a pair of oil passages 68 extend through the lower inner rib 32 generally along the pin bore axis 41 , and as shown in FIG. 3 , a pair of oil passages 70 extend through the lower inner rib 32 generally transverse to the pin bore axis 41 to bring the outer oil gallery into fluid communication with the central oil gallery 66 . The oil passages 68 , 70 ascend from a lower most portion of the outer oil gallery 64 to the floor 62 of the inner oil gallery pocket 60 . Further, as shown in FIG. 4 , a pair of respective inlet and outlet oil flow openings 72 , 73 extend through the lower most floor 63 of the outer oil gallery pocket 56 in diametrically opposed relation to one another generally 45 degrees from the axis 41 . As such, oil from the crankcase is able to flow upwardly into the outer oil gallery 64 through the inlet opening 72 , whereupon the oil is circulated about the outer oil gallery 64 and channeled inwardly through the oil flow passages 68 , 70 into the partially open central oil gallery 66 . Further, oil can flow downwardly out of the outer oil gallery 64 through the outlet opening 73 . In addition, to facilitate flow of the oil from the central oil gallery 66 to the wrist pin/connecting rod joint region, as shown in FIG. 2 , a pair of oil passages 74 extend through the flange 40 , wherein the passages 74 descend from the floor 62 of the inner oil gallery pocket 62 radially inwardly to the space 46 between the pin bosses 42 , 44 . The oil passages 74 are represented here as extending generally along the direction of the pin bore axis 41 .」
[仮訳:[0012] 図面をより詳細に参照して、図1?図3は、発明の1つの現在好ましい局面にしたがって構成されたピストン10を示す。ピストン10は、中心軸14に沿って延在するピストン本体12を有し、ピストン本体は中心軸14に沿ってシリンダボア(図示せず)内で往復運動する。ピストン本体12は、上部燃焼壁18を有する上部クラウン部分16を含み、上部燃焼壁18は、ここでは例として、限定することなく、くぼませた燃焼ボウル20を与えるものとして表され、シリンダボア内で燃焼ボウル20に対して燃焼力が直接作用し、それによって極度の発熱のための場所を提供する。図2および図3に記載されているように、上部クラウン部分16は、少なくとも1つ、ここで示されているのは一対の環状上部リブを有し、以下、上部内側リブ22および上部外側リブ24と称し、上部燃焼壁18からそれぞれの自由端26,28に垂下する。ピストン本体12はさらに下部クラウン部分30を含み、下部クラウン部分30は、少なくとも1つ、ここで示されているのは一対の環状下部リブを有し、以下、下部内側リブ32および下部外側リブ34と称し、上部リブの自由端26,28との係合のために整列して配置されているそれぞれの自由端36,38まで延在する。下部クラウン部分30はさらに、下部内側リブ32から上部燃焼壁18に向かって径方向内方かつ上方に延在する環状フランジ40によってもたらされる内側孔床62と、概ねフランジ40から垂下して一対のリストピンボア43,45をもたらす一対のピンボス42,44とを含み、リストピンボア43,45は、リストピン49を受取るためにピン軸41に沿って整列され、連接ロッド47の小端を受取るために、空間46がピンボス42,44の間に設けられる。環状フランジ40は、上部燃焼壁18と軸方向に離間された関係で、概ね上部クラウン部分16に延在する上部環状自由縁48を有し、自由縁48は、油を「煮る」ことなく最適な冷却が生じるように、上部燃焼壁18の下に最適な油流を提供するように形作られる。
[0013] 上部クラウン部分16は、内側および外側リブ自由端26,28から上部リングベルト領域52へと上方に延在する環状外側油孔ポケット50と、内側自由端26から燃焼ボウル20の下に上方に延在する環状内側油孔ポケット54とを有して形成される。下部クラウン部分30は、鋼もしくは他の金属から鋳造または鍛造処理などで形成され、内側および外側リブ自由端36,38から下部リングベルト領域58へと下方に延在する環状外側油孔ポケット56と、内側自由端36およびフランジ自由縁48から谷もしくは床62へと下方に延在する環状内側油孔ポケット60とを有し、床62は、外側油孔ポケット56の床63に対して軸方向に高くなっている。上部クラウン部分16を下部クラウン部分30に取付けると、ここでは実質的に閉じられた外側油孔64として表わされる環状外側油孔と、内側または中心油孔66とが形成される。外側油孔64は、外側リブ24,34および内側リブ22,32によって囲まれ、中心油孔66は、フランジ40によって形成され、かつ部分的に囲まれ、フランジ40は、外側油孔64からその自由縁48まで径方向内方に延在する。ピストン10の冷却を促進するため、1つ以上の油流通路が下部リブ32,34および/またはフランジ40に設けられる。たとえば、図1および図2に示されるように、一対の油通路68が概ねピンボア軸41に沿って下部内側リブ32を通って延在し、図3に示されるように、一対の油通路70が概ねピンボア軸41を横切って下部内側リブ32を通って延在し、外側油孔を中心油孔66と流体連通させる。油通路68,70は、外側油孔64の最も下側部分から内側油孔ポケット60の床62まで上昇する。さらに、図4に示されるように、一対のそれぞれ入口および出口油流開口部72,73は、軸41から概ね45度で互いに正反対の関係で、外側油孔ポケット56の最も下側の床63を通って延在する。そのため、クランク室からの油が、入口開口部72を通って外側油孔64へと上方に流れることができ、油はその後、外側油孔64の周りを循環し、油流通路68および70を通って、部分的に開かれた中心油孔66へと内方に運ばれる。さらに、油は出口開口部73を通って外側油孔64から下方に流れることができる。また、中心油孔66からリストピン/連接ロッド継手領域への油の流れを促進するために、図2に示されるように、一対の油通路74がフランジ40を通って延在し、通路74は、内側油孔ポケット62の床62からピンボス42,44の間の空間46へと径方向内方に降下する。油通路74は、ここでは、概ねピンボア軸41の方向に沿って延在するものとして表わされる。]

上記ア及びFIG.1ないしFIG.3の記載を総合すると、引用例4には、次の2つの技術(以下、それぞれ「引用技術4a」及び「引用技術4b」という。)が記載されている。

〔引用技術4a〕
「ピストン10において、ピストン本体12は、下部クラウン部分30に取り付けられた上部クラウン部分16を含み、油通路68、70が下部クラウン部分30の下部内側リブ32を通って延在する技術。」

〔引用技術4b〕
「ピストン10において、外側油孔64を中心油孔66と流体連通させる油通路68、70を含む技術。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「内燃機関用ピストン」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「内燃機関のためのピストン」に相当し、以下同様に、「冠面11」は「上側燃焼面」に、「周方向にほぼ沿って伸びる環状のクーリングチャンネル90」は「環状の冷却空洞」に、「ピストン1」は「ピストン本体」に、「冠部10における外周面」は「外壁」に、「トップリング溝30、セカンドリング溝40、サードリング溝50、トップリングランド60、セカンドリングランド70及びサードリングランド80が形成された部位」は「環状リングベルト領域」に、「通孔する」は「連続的に延在する」に、「下方へ伸び屈曲部から内径側へ伸びている外側の部分」は「径方向内方に懸架する第1の部分」に、「底面」は「底面」にそれぞれ相当する。
引用発明における「セカンドリング溝40」と本願発明1における「少なくとも1本のリング溝」は、「1本のリング溝」という限りで共通する。
引用発明における「油路100」と本願発明1における「少なくとも1本の油路」は、「1本の油路」という限りで共通する。
引用発明における「前記外側の部分から直接前記クーリングチャンネル90に向かう内側の部分」は、本願発明1における「前記第1の部分から直接前記冷却空洞に径方向内方に上昇する第2の部分」と、「前記第1の部分から直接前記冷却空洞に径方向内方に向かう第2の部分」という限りで共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

〔一致点〕
「内燃機関のためのピストンであって、
上側燃焼面と、環状の冷却空洞とを有するピストン本体を備え、外壁が前記上側燃焼面から懸架し、環状リングベルト領域が前記上側燃焼面に隣接して前記外壁に形成され、前記リングベルト領域は、その中に形成された1本のリング溝を有し、さらに、
前記1本のリング溝から前記冷却空洞に連続的に延在する1本の油路を備え、前記1本の油路は、前記1本のリング溝から径方向内方に懸架する第1の部分と、前記第1の部分から直接前記冷却空洞に径方向内方に向かう第2の部分とを有し、
前記冷却空洞は底面を有する、ピストン。」

〔相違点1〕
本願発明1においては、「環状の冷却空洞」は、「下冠領域を包囲する」ものであるのに対して、
引用発明においては、「周方向にほぼ沿って伸びる環状のクーリングチャンネル90」は、下冠領域を包囲するか明らかでない点。

〔相違点2〕
本願発明1においては、油路を構成する「第2の部分」は、第1の部分から直接冷却空洞に径方向内方に「上昇する」ものであるのに対して、
引用発明においては、油路100を構成する「内側の部分」は、径方向内方に「向かう」ものであるものの、径方向内方に上昇するものではない点。

〔相違点3〕
本願発明1においては、「少なくとも1本の油路」は冷却空洞の「前記底面を通って延在し」、「前記底面から上方に延在する管状部材を含む」のに対して、
引用発明においては、「油路100」は、クーリングチャンネル90の底面を通って延在するものではなく、底面から上方に延在する管状部材を含むものでもない点。

(2)判断
事案に鑑み、先ず、上記相違点2及び3について検討する。
ア 相違点2について
上記「第4」の「1 ウ」の特に段落【0023】からみて、引用発明における油路100は、クーリングチャンネル90からピストン1の外周面とシリンダCの内面との間へオイルを供給するためのものである。
他方、上記「第4」の「2 ア」の「オイルリング(3)がシリンダライナ(8)の壁に付着した潤滑油を掻き落す」(明細書第4ページ第9行及び第10行)及び「オイルリング(3)下部に溜った潤滑油(4)は、矢印(5)のように好適に逃し穴(2)内に吸引流入され、従ってオイルリング(3)が掻き落した潤滑油(4)は、リング下部に溜ることなく速かに逃し穴(2)を通じて、ピストン内部に確実円滑に逃げ出す」(明細書第4ページ第15行ないし第20行)からみて、引用技術2の分岐穴(6)及び潤滑油逃し穴(2)は、シリンダライナ(8)の壁に付着した潤滑油をピストン内部に逃がすためのものである。すなわち、引用発明における油路100は、シリンダの内面にオイルを供給するためのものであるのに対し、引用技術2における分岐穴(6)及び潤滑油逃し穴(2)は、逆にオイルをピストン内部に逃がすためのものであり、両者は、前提とする機能が異なる。
また、上記「第4」の「2 ア」の「オイルリング溝部において、下方又は水平の穴がピストン内部(10)と通じていないため、ピストン(9)が下降時、ピストン内部(10)に相対的に下から上への空気流れを生じても、同逃し穴(2)は風圧を受けることがないので、潤滑油逃し穴(2)内に溜った潤滑油がピストン(9)の外周部へ噴出することは全くないと共に、又ピストン(9)が下降時に、その加速度によりピストンの潤滑油逃し穴(2)内に溜った潤滑油とピストン(9)との間に相対的に流れを生じ、逃し穴(2)を通ってピストン内部(10)へ潤滑油が流出するのである。」(明細書第3ページ第15行ないし第4ページ第5行)からみると、引用技術2は、潤滑油逃し穴(2)内に溜った潤滑油をピストン(9)の外周部へ噴出させずに、ピストン内部(10)へ流出させることを課題とするものである。上述したとおり、引用発明は、引用技術2とオイルの流れの向きが逆であるから、引用技術2の上記課題を内在するものではない。
そうすると、引用技術2における分岐穴(6)及び潤滑油逃し穴(2)とは前提とする機能が異なり、かつ引用技術2における上記課題を内在するものではない引用発明の油路100に、引用技術2の分岐穴(6)及び潤滑油逃し穴(2)の構成を適用する動機付けは見出せない。
また、引用技術3、4a及び4bも、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を開示又は示唆するものではないから、引用発明に引用技術2ないし4bを適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできない。
したがって、引用発明及び引用技術2、又は引用発明及び引用技術2ないし4bに基いて、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

イ 相違点3について
本願発明1は、「管状部材76が貯留された油の上を延在するため、冷却空洞40の床面66に沿ったいずれかの油溜まりは、油路50を通って戻るように流れることはできない」(段落【0030】)ようにすることを技術的課題として、油路を、冷却空洞の「前記底面を通って延在し」、「前記底面から上方に延在する管状部材を含む」構成とするものである。
他方、引用技術3は、「ピストン1cにおいて、オイルリング溝3と冷却空洞Sとを連通するパイプを設け、パイプが冷却空洞の内壁から内側に延在する技術」であるが、油路が冷却空洞の底面を通って延在しておらず、また、パイプが底面から上方に延在していない。すなわち、引用技術3は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とは相違する。さらに、引用例3には、冷却空洞の床面の油溜まりが、油路を通って逆流することを防止するとの技術的課題又は作用効果を開示又は示唆する記載はない。
そうすると、引用発明に引用技術3を適用しても、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
また、引用技術2、4a及び4bも、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を開示又は示唆するものではないから、引用発明に引用技術2ないし4bを適用しても、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできない。。
したがって、引用発明及び引用技術3、又は引用発明及び引用技術2ないし4bに基いて、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

したがって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明及び引用技術2ないし4bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用技術2ないし4bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明11ないし19について
本願発明11ないし19は、「ピストンを構成する方法」に関する発明であり、「前記リング溝から径方向内方に懸架する油路の第1の部分と、前記第1の部分から前記冷却空洞に径方向内方に上昇する第2の部分とを形成することによって、前記リング溝から前記冷却空洞に連続的に延在する少なくとも1本の油路を形成することと、前記冷却空洞の底面を通って延在する前記油路を形成することと、前記冷却空洞の前記底面から上方に延在する管状部材を有する前記油路の一部分を形成すること」との構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用技術2ないし4bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし19は、いずれも、引用発明及び引用技術2ないし4bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-05 
出願番号 特願2015-523296(P2015-523296)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 麻乃  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 金澤 俊郎
粟倉 裕二
発明の名称 油冷通路を有するピストンおよびその構成方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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