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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1341871
審判番号 不服2017-14594  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-02 
確定日 2018-07-24 
事件の表示 特願2013-172263「情報処理装置、情報処理方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 2日出願公開、特開2015- 41264、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月22日の出願であって、平成29年1月16日付けで拒絶理由が通知され、同年3月24日付けで手続補正がされたが、同年6月29日付けで拒絶査定がされ、それに対して同年10月2日に拒絶査定不服の審判請求がされ、同時に手続補正がされ、同年11月27日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(平成29年6月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-27940号公報
2.特開2011-170796号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年10月2日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-6は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表示部に表示されたファイルを示すオブジェクトに対し、タッチ操作をすることによりその操作が示す処理を行う情報処理装置であって、
タッチした部分の位置を検出するタッチ検出部と、
前記タッチ検出部の検出結果からタッチ面積を算出するタッチ面積算出部と、
前記オブジェクト上において、前記タッチ面積が所定面積以上の第1のタッチと、所定面積未満の第2のタッチとを検出した場合に、コピー操作として判定する操作判定部と、
前記操作判定部により前記コピー操作と判定されたとき、前記オブジェクト上において検出されたタッチのうち、第1のタッチ又は第2のタッチがオブジェクトの外に移動してタッチアップしたことを検出する検出部と、
前記検出部により、タッチアップを検出した場合には、前記タッチアップした位置に前記オブジェクトをコピーして表示する処理を実行する操作処理実行部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記操作判定部は、前記タッチ検出部がタッチダウン又はタッチアップを検出したときに、タッチされている部分の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記操作処理実行部は、前記検出部により、タッチアップを検出した場合には、前記オブジェクトのデータを所定のフォルダにコピーすることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記操作判定部は、前記オブジェクト上において、更に前記第1のタッチ又は第2のタッチを検出することで、3つ以上のタッチを検出した場合に、コピー禁止モードとして判定することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
表示部に表示されたファイルを示すオブジェクトに対し、タッチ操作をすることによりその操作が示す処理を行う情報処理方法であって、
タッチした部分の位置を検出するタッチ検出ステップと、
前記タッチ検出ステップの検出結果からタッチ面積を算出するタッチ面積算出ステップと、
前記オブジェクト上において、前記タッチ面積が所定面積以上の第1のタッチと、所定の面積未満の第2のタッチとを検出した場合に、コピー操作として判定する操作判定ステップと、
前記操作判定ステップにより前記コピー操作と判定されたとき、前記オブジェクト上において検出されたタッチのうち、第1のタッチ又は第2のタッチがオブジェクトの外に移動してタッチアップしたことを検出するタッチアップ検出ステップと、
前記タッチアップ検出ステップにより、タッチアップを検出した場合には、前記タッチアップした位置に前記オブジェクトをコピーして表示する処理を実行する操作処理実行ステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータに、請求項5の情報処理方法の各ステップを実行させるためのプログラム。」

第4 引用文献・引用発明
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審により注目する点に付与した。以下、同様である。)。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを有した電子機器に関する。」

「【0027】
タッチパネル15,17は、タッチパネルドライバ202により制御される。タッチパネルドライバ202には、接触検出部203、操作検出部204、及びモード設定部205が設けられている。
【0028】
接触検出部203は、ユーザの操作によるタッチパネル15,17に対する接触を検出して、接触位置の座標データを検出する。接触検出部203は、タッチパネル15,17に対して同時に複数の位置において接触されている場合に、この複数の位置の座標データを検出することができる。
【0029】
操作検出部204は、接触検出部203により検出された接触位置のデータをもとに、処理モードを指定する特定の操作を検出する。処理モードとしては、例えばLCD14,16において表示されたオブジェクトに対する移動やコピーなどがある。操作検出部204は、接触検出部203により接触が検出された位置に、移動やコピーの対象とするオブジェクト(フォルダやアイコン等)が存在し、特定の操作があったことが判定された場合に、同オブジェクトに対する処理の処理モードが指定されたものと判定する。なお、操作出部204は、接触検出部203により接触が検出された位置にオブジェクトが存在するかを、OS200に問い合わせて判定することができるものとする。
【0030】
操作検出部204には、操作判定部204a、時間判定部204b、接触面積判定部204c、移動領域判定部204d、圧力判定部204eが含まれる。
【0031】
操作判定部204aは、タッチパネル15,17に接触されている第1の位置と第2の位置とを、LCD14,16に表示されたオブジェクトに対応する位置に移動させ、第1の位置と第2の位置の移動先における距離を特定範囲内に含まれるようにする操作を判定する。例えば、表示されたオブジェクトに対応する位置において、オブジェクトを摘むような操作をすることで、処理モードを指定することができる。」

「【0033】
接触面積判定部204cは、タッチパネル15,17に接触されている位置がLCD14,16に表示されたオブジェクトに対応する位置であり、接触面積を規定値以上とする操作、あるいは接触面積の増加率が規定値以上する操作を判定する。
【0034】
移動領域判定部204dは、タッチパネル15,17に対して、LCD14,16に表示されたオブジェクトに対応する第1の位置が接触され、接触された状態のまま第1の位置を同じタッチパネルの予め設定された特定範囲内の第2の位置に移動させる操作、いわゆるドラッグ操作によりオブジェクトを特定範囲内にまで移動させる操作を判定する。
・・・中略・・・
【0036】
モード設定部205は、操作検出部204によって検出された操作に応じて処理モードを設定する。例えば、操作検出部204によって検出された操作がオブジェクトの移動のための操作である場合には移動モードを設定する。モード設定部205は、処理モードが設定された後に検出されるタッチパネル15,17に対する操作に応じて、OS200(あるいはアプリケーションプログラム201)に対して処理モード応じた処理の実行を要求する。」

「【0041】
本実施形態におけるパーソナルコンピュータ10では、次に説明する第1?第5の方法により処理モード(移動モード)を設定して、フォルダ(ファイル)を移動する処理を実行することができる。ただし、本実施形態におけるパーソナルコンピュータ10は、第1?第5の何れか1つの方法により処理モードを設定できるようにしても良いし、任意の組合せによる2以上の方法により処理モードを設定できるようにしても良い。
【0042】
(1)オブジェクトをつまむ操作により処理モードを設定する方法(第1の方法)。
図4は、第1の方法により処理モードを設定する処理を示すフローチャートである。図5は、LCD14に表示されたフォルダを表すアイコンAの一例を示している。
・・・中略・・・
【0051】
移動モードが設定された後、タッチパネル15,17に対する接触が接触検出部203により検出されると(ステップA5、Yes)、OS200は、接触検出部203により検出された位置に、移動モードが設定されたアイコンAの表示位置を移動させる処理を実行する(ステップA6)。例えば、アイコンAに対して移動モードが設定された後、タッチパネル17に対して指が接触されると、タッチパネル17の接触位置に対応するLCD16の表示位置にアイコンAを移動させる。」

「【0064】
(3)オブジェクトを選択する操作によるタッチパネルへの接触面積に基づいて処理モードを設定する方法(第3の方法)。
図12は、第3の方法により処理モードを設定する処理を示すフローチャートである。
【0065】
ユーザは、例えばLCD14に表示されたアイコンの位置に合わせて、タッチパネル15に接触したものとする。接触検出部203は、タッチパネル15に対する接触を検出する(ステップC1、Yes)。
【0066】
接触面積判定部204cは、接触検出部203により検出された位置にオブジェクトが存在するかをOS200に問い合わせる。ここで、オブジェクトが存在していることがOS200により通知されると、接触面積判定部204cは、例えば一定時間毎(例えば0.5秒毎)にタッチパネル15に接触されている面積を検出する(ステップC2)。
【0067】
接触面積判定部204cは、ここで検出された接触面積を記録しておく(ステップC3)。そして、接触面積判定部204cは、今回検出された接触面積と、前回の検出により記録された接触面積(初期値は0)とを比較して、接触面積の増加率を算出する(ステップC4)。
【0068】
増加率が予め決められた規定値以上でない場合(ステップC5、No)、接触面積判定部204cは、接触検出部203によりタッチパネル15への接触が検出されていれば(ステップC6、Yes)、前述と同様にして、一定時間毎に接触面積の検出と増加率の算出を繰り返して実行する(ステップC2?C6)。
【0069】
例えば、LCD14に表示されたアイコンを選択するために指先によってタッチパネル15に接触した場合、図13(A)に示すように、接触面積Aは狭くなる。その後、指の腹をタッチパネル15に押しつけることにより、図13(B)に示すように、接触面積Bは広くなる。
【0070】
モード設定部205は、接触面積判定部204cによって、タッチパネル15に対する接触面積の増加率が規定値以上となったことが判別されると、接触位置に対応するオブジェクト(アイコン)に対する移動モードを設定する(ステップC7)。
【0071】
OS200は、モード設定部205により移動モードが設定されたことをユーザが認識できるように、LCD14に表示されたオブジェクト(アイコン)の表示形態(例えば、表示色)を変更する。
【0072】
以下、移動モードが設定された後の処理(ステップC7?C9)については、第1の方法において説明したステップA4?A6と同様の処理を実行するものとして詳細な説明を省略する。
【0073】
このようにして、第3の方法では、処理対象とするオブジェクト(アイコン等)に対して、最初の接触時の面積より広い面積で接触するように接触状態を変化させるだけで移動モードを設定することができる。以下、第1の方法と同様の操作性を提供することが可能である。
【0074】
なお、前述した説明では、タッチパネル15に対する接触面積の増加率が規定値以上である場合に移動モードを設定しているが、単純に、タッチパネル15に対する接触面積が規定値以上である場合に、移動モードを設定するようにしても良い。」

「【0095】
なお、前述した第1?第5の方法は、アイコンに対して移動モードを設定するための方法として説明しているが、第1?第5の方法のそれぞれに対応して、異なる処理モードが設定されるようにしても良い。例えば、第1の方法による操作がされた場合には移動モードを設定し、第2の方法による操作がされた場合にはコピーモードを設定する。他の方法に対しても、別の処理モードが設定されるようにする。この場合、何れの方法に対して、何れの処理モードが設定されるかを、例えばユーティリティプログラムによる処理によって、ユーザの指定によって予め設定できるようにしても良い。」

以上の記載(特に下線部)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
[引用発明]
「接触検出部203、操作検出部204、及びモード設定部205が設けられているタッチパネルを有したパーソナルコンピュータ10であって、
接触検出部203は、ユーザの操作によるタッチパネル15,17に対する接触を検出して、接触位置の座標データを検出し、タッチパネル15,17に対して同時に複数の位置において接触されている場合に、この複数の位置の座標データを検出することができ、
操作検出部204は、操作判定部204a、時間判定部204b、接触面積判定部204c、移動領域判定部204d、圧力判定部204eが含まれ、接触検出部203により検出された接触位置のデータをもとに、処理モードを指定する特定の操作を検出し、処理モードとしては、例えばLCD14,16において表示されたオブジェクトに対する移動やコピーなどがあり、接触検出部203により接触が検出された位置に、移動やコピーの対象とするオブジェクト(フォルダやアイコン等)が存在し、特定の操作があったことが判定された場合に、同オブジェクトに対する処理の処理モードが指定されたものと判定するものであり、
接触面積判定部204cは、タッチパネル15,17に接触されている位置がLCD14,16に表示されたオブジェクトに対応する位置であり、接触面積を規定値以上とする操作、あるいは接触面積の増加率が規定値以上する操作を判定するものであり、
ユーザは、LCD14に表示されたアイコンの位置に合わせて、タッチパネル15に接触したものとすると、接触検出部203は、タッチパネル15に対する接触を検出し、接触面積判定部204cは、接触検出部203により検出された位置にオブジェクトが存在するかをOS200に問い合わせ、オブジェクトが存在していることがOS200により通知されると、接触面積判定部204cは、例えば一定時間毎(例えば0.5秒毎)にタッチパネル15に接触されている面積を検出し、 接触面積判定部204cは、検出された接触面積を記録し、今回検出された接触面積と、前回の検出により記録された接触面積(初期値は0)とを比較して、接触面積の増加率を算出し、モード設定部205は、接触面積判定部204cによって、タッチパネル15に対する接触面積の増加率が規定値以上となったことが判別されると、接触位置に対応するオブジェクト(アイコン)に対する移動モードを設定し、
移動モードが設定された後、タッチパネル15,17に対する接触が接触検出部203により検出されると、OS200は、接触検出部203により検出された位置に、移動モードが設定されたオブジェクト(アイコン)の表示位置を移動させる処理を実行し、
タッチパネル15に対する接触面積の増加率が規定値以上である場合に移動モードを設定するのではなく、単純に、タッチパネル15に対する接触面積が規定値以上である場合に、移動モードを設定するようにしても良く、移動モードを設定するのではなく、コピーモードを設定するようにしても良い、パーソナルコンピュータ10。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0030】
図6は、図5のステップS507における2本の指での操作に関する詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS601において、タッチ状態検出部113は、検出している2本の指のタッチが、同一の動画オブジェクトをタッチしているものであるか否かを判定する。この処理では、動画オブジェクトが複数のフレーム画像から構成されている場合は、2本の指がこれらのフレーム画像の何れかにタッチしているか否かを判定する。この判定の結果、同一の動画オブジェクトをタッチしている場合はステップS602へ進み、同一の動画オブジェクトをタッチしていない場合はステップS611へ進む。
【0031】
ステップS602においては、タッチ状態検出部113は、検出している2本の指のタッチが解除されることなく、タッチ位置の移動があったか否かを判定する。この判定の結果、タッチ位置の移動があった場合はステップS603へ進み、タッチ位置の移動がなかった場合は処理を終了して図6の処理を抜け、図5のステップS508へ進む。
・・・中略・・・
【0034】
次に、ステップS605において、タッチ状態検出部113による検出に基づいて全体制御部114は、2本の指によりタッチされている移動後の2つの位置の縦方向の距離が、閾値B以上となったか否かを判定する。この判定の結果、閾値B以上となった場合はステップS606へ進み、閾値B未満である場合は処理を終了し、図5のステップS508へ進む。
【0035】
ステップS606においては、2本の指でタッチしている動画オブジェクトが示す実際の動画データをコピーする。すなわち、記録媒体アクセス部111は、ステップS601でタッチしていた動画オブジェクトが示す動画データを複製して記録媒体120に記録する。この際、複製される動画データは、複製前の動画の全範囲とする。このように、同一の動画オブジェクトを2本の指でタッチし、タッチした2本の指を縦方向に広げる操作をするだけで、ユーザーがタッチした動画オブジェクトが示す動画データを簡単にコピーすることができる。そして、ステップS606の処理を終えると処理を終了し、図5のステップS508へ進む。」

「【0054】
(コピーの例)
次に、実際のコピーの方法について説明する。図8は、図3のインデックス表示されたオブジェクトの中からコピーの対象として1つの動画オブジェクトが選択され、図6のステップS606においてコピーする手順の一例を示す図である。図8(a)においては、1つのサムネールで表現された動画コンテンツ803が親指801及び人差し指802の2つの指でタッチされ、さらに2本の指の間隔が広がっていく動作を示している。その結果、コピーされた動画オブジェクトのサムネール804が表示される。なお、この時点で指が離れた場合は動画データがコピーされないものとし、親指801と人差し指802との距離が前述した閾値Bを超えた状態で指が離れることによりサムネール805が分離し、動画データがコピーされる。」

以上の記載(特に下線部)によれば、引用文献2には、以下の技術的事項(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「2本の指のタッチが、同一の動画オブジェクトをタッチしている場合に、2本の指のタッチが解除されることなく、タッチ位置の移動があった場合は、2本の指によりタッチされている移動後の2つの位置の距離が閾値Bを超えた状態で指が離れることにより2本の指でタッチしている動画オブジェクトが示す実際の動画データをコピーする。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「LCD14,16において表示されたオブジェクト」、「移動やコピーの対象とするオブジェクト(フォルダやアイコン等)」は、本願発明1の「表示部に表示されたファイルを示すオブジェクト」に相当し、引用発明は「接触検出部203により検出された位置に、移動モードが設定されたオブジェクト(アイコン)の表示位置を移動させる処理を実行する」から、引用発明の「パーソナルコンピュータ10」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「表示部に表示されたファイルを示すオブジェクトに対し、タッチ操作をすることによりその操作が示す処理を行う情報処理装置」に相当する。

イ 引用発明の「接触検出部203」は、「ユーザの操作によるタッチパネル15,17に対する接触を検出して、接触位置の座標データを検出し、タッチパネル15,17に対して同時に複数の位置において接触されている場合に、この複数の位置の座標データを検出する」から、本願発明1の「タッチした部分の位置を検出するタッチ検出部」に相当する。

ウ 引用発明の「接触面積判定部204c」は、「一定時間毎(例えば0.5秒毎)にタッチパネル15に接触されている面積を検出」しているから、本願発明1の「前記タッチ検出部の検出結果からタッチ面積を算出するタッチ面積算出部」に相当するといえる。

エ 引用発明の「モード設定部205」は、「接触面積判定部204cによって、タッチパネル15に対する接触面積の増加率が規定値以上となったことが判別されると、接触位置に対応するオブジェクト(アイコン)に対する移動モードを設定」するものであって、「タッチパネル15に対する接触面積が規定値以上である場合に、移動モードを設定するようにしても良く、移動モードを設定するのではなく、コピーモードを設定するようにしても良い」ものであるから、本願発明1の「前記オブジェクト上において、前記タッチ面積が所定面積以上の第1のタッチと、所定面積未満の第2のタッチとを検出した場合に、コピー操作として判定する操作判定部」と、「前記オブジェクト上において、タッチ面積が所定面積以上のタッチを検出した場合に、コピー操作として判定する操作判定部」である点では共通するといえる。

オ 引用発明の「接触検出部203」は、「移動モードが設定された後、タッチパネル15,17に対する接触」を検出するものであり、「検出された位置に、移動モードが設定されたオブジェクト(アイコン)の表示位置を移動させる処理」が実行され、また、「移動モードを設定するのではなく、コピーモードを設定するようにしても良い」ものであるから、引用発明の「接触検出部203」は、本願発明1の「前記操作判定部により前記コピー操作と判定されたとき、前記オブジェクト上において検出されたタッチのうち、第1のタッチ又は第2のタッチがオブジェクトの外に移動してタッチアップしたことを検出する検出部」と、「前記操作判定部により前記コピー操作と判定されたとき、オブジェクトの外においてタッチを検出する検出部」である点では共通するといえる。

カ 引用発明の「OS200」は、「接触検出部203により検出された位置に、移動モードが設定されたオブジェクト(アイコン)の表示位置を移動させる処理を実行」しており、「移動モードを設定するのではなく、コピーモードを設定するようにしても良い」ものであるから、本願発明1の「前記検出部により、タッチアップを検出した場合には、前記タッチアップした位置に前記オブジェクトをコピーして表示する処理を実行する操作処理実行部」と、「前記検出部により、タッチを検出した場合には、前記タッチした位置に前記オブジェクトをコピーして表示する処理を実行する操作処理実行部」である点では共通するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「表示部に表示されたファイルを示すオブジェクトに対し、タッチ操作をすることによりその操作が示す処理を行う情報処理装置であって、
タッチした部分の位置を検出するタッチ検出部と、
前記タッチ検出部の検出結果からタッチ面積を算出するタッチ面積算出部と、
前記オブジェクト上において、タッチ面積が所定面積以上のタッチを検出した場合に、コピー操作として判定する操作判定部と、
前記操作判定部により前記コピー操作と判定されたとき、オブジェクトの外においてタッチを検出する検出部と、
前記検出部により、タッチを検出した場合には、前記タッチした位置に前記オブジェクトをコピーして表示する処理を実行する操作処理実行部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

(相違点1)
「操作判定部」は、本願発明1では、「前記オブジェクト上において、前記タッチ面積が所定面積以上の第1のタッチと、所定面積未満の第2のタッチとを検出した場合に、コピー操作として判定」するものであるのに対し、引用発明では、タッチパネル15に対する接触面積が規定値以上である場合に、コピーモードを設定するものであり、上記のような構成ではない点。

(相違点2〉
「検出部」、「操作処理実行部」は、本願発明1では、「前記操作判定部により前記コピー操作と判定されたとき、前記オブジェクト上において検出されたタッチのうち、第1のタッチ又は第2のタッチがオブジェクトの外に移動してタッチアップしたことを検出する」ものであり、「前記検出部により、タッチアップを検出した場合には、前記タッチアップした位置に前記オブジェクトをコピーして表示する処理を実行する」ものであるのに対し、引用発明では、コピーモードが設定された後、タッチパネルに対する接触を検出し、検出された位置に、コピーモードが設定されたオブジェクト(アイコン)をコピーする処理を実行しており、上記のような構成でない点。

(2)判断
上記相違点1、2について併せて検討する。
引用文献2には、「2本の指のタッチが、同一の動画オブジェクトをタッチしている場合に、2本の指のタッチが解除されることなく、タッチ位置の移動があった場合は、2本の指によりタッチされている移動後の2つの位置の距離が閾値Bを超えた状態で指が離れることにより2本の指でタッチしている動画オブジェクトが示す実際の動画データをコピーする」という技術的事項が記載されているが、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成は記載されておらず、示唆されてもいない。
また、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成が、本願出願日前に周知技術であったとはいえない。
(なお、前置報告書において引用された引用文献(特開2009-294857号公報)には、オブジェクト404を、2本の指402と別の1本の指403で選択し、ユーザは2本の指402によってオブジェクト404を選択した状態を保持したまま、別の1本の指403でドラッグを行い、ドラッグしていた別の1本の指403をマルチタッチスクリーン206から離し、1本の指403が離された位置にオブジェクト404のコピー405が配置されることが記載されているが、維持された指示位置の数(2本の指)と移動した指示位置の数(別の1本の指)とに基づいて、実行すべき処理を決定するものであって、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成は記載されておらず、示唆されてもいない。)

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1の請求項1を引用するものであって、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明5、6について
本願発明5、6は、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-09 
出願番号 特願2013-172263(P2013-172263)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 山田 正文
千葉 輝久
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法及びプログラム  
代理人 藤本 英介  
代理人 神田 正義  
代理人 宮尾 明茂  
代理人 馬場 信幸  

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