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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 B32B |
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管理番号 | 1341935 |
異議申立番号 | 異議2017-700664 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-07-05 |
確定日 | 2018-05-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6079773号発明「シート積層装置およびシート積層方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6079773号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲図面のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕、10について、訂正することを認める。 特許第6079773号の請求項1?10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第6079773号の請求項1?10に係る特許についての出願は、2013年3月13日(優先権主張2012年3月30日)を国際出願とする出願であって、平成29年1月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人平賀博により特許異議の申立てがされ、当審において同年11月21日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である差出日不明につき平成30年1月25日受付で意見書の提出及び訂正の請求がなされ、当審において同年2月7日付けで特許異議申立人に対して通知書を通知し、その指定期間内である同年3月7日付けで意見書の提出がなされたものである。 第2.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「前記ステージ上の前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、」を、 「押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体の第1の辺の一部を前記押圧面による前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、」(下線は審決で付した。以下同じ。)と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の 「前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接した第1の上方ポジションとの間で、」を、 「前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1の 「前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させることと、」を、 「前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ、前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させることと、」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10の 「前記ステージ上の前記シート積層体の第1の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、」を、 「押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体の第1の辺の一部を前記押圧面による前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、」(下線は審決で付した。以下同じ。)と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項10の 「前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接した第1の上方ポジションとの間で、」を、 「前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、」と訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10の 「前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させることと、」を、 「前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ、前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させることと、」と訂正する。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1、及び4について 訂正事項1、及び4は、第1のクランプ装置に関して、具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1、及び4は、願書に添付した明細書(段落【0024】、【0026】、【0031】、【0038】)、及び図面(図2、3、5A、5F)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2、及び5について 訂正事項2、及び5は、第1の上方ポジションの位置に関して、具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2、及び5は、願書に添付した明細書(段落【0024】、【0032】、【0033】、【0035】)、及び図面(図2、3、5D、9)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3、及び6 訂正事項3、及び6は、第1の搬送ハンドラを移動させる際の第1のクランプ装置の位置に関して、具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3、及び6は、願書に添付した明細書(段落【0024】、【0032】、【0033】、【0035】)、及び図面(図2、3、5D、9)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)一群の請求項について これらの訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 また、訂正後の請求項1?9は、一群の請求項である。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?9〕、10について訂正を認める。 第3.特許異議の申立てについて 1.本件特許発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?10に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明10」という。)。 「【請求項1】 複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、 周辺部に切り欠き部が設けられた第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能であり、前記ステージに対して上下移動可能に構成され、少なくともシートの周辺の一部が前記切り欠き部で露出した状態で該シートを保持可能な第1の搬送ハンドラと、 押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体の第1の辺の一部を前記押圧面による前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置と、 前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接した第2の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第2のクランプ装置と、 前記第2のクランプ装置で前記ステージ上のシート積層体の前記第2の辺の一部を押圧した状態で前記第1のクランプ装置を前記第1の上方ポジションへ移動させることと、 前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ、前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させることと、 前記第1の搬送ハンドラを前記ステージに向けて下降させて前記第2のクランプ装置で押圧されている前記シート積層体の上に前記第1のシートを積層することと、 前記第1のクランプ装置を前記ステージに向けて下降させて前記第1のシートの周辺部を前記ステージへ向けて押圧することと、を前記第1のクランプ装置、前記第2のクランプ装置および前記第1の搬送ハンドラに実行させる制御部と、を備えているシート積層装置。 【請求項2】 前記制御部は、前記第1の搬送ハンドラを前記待機ポジションまで移動させ終える前に、前記第1のクランプ装置を前記第1の上方ポジションへ移動させ終えるように、前記第1の搬送ハンドラおよび前記第1のクランプ装置を制御する、請求項1に記載のシート積層装置。 【請求項3】 前記制御部は、前記第1の搬送ハンドラの下降と前記第1のクランプ装置の下降とを同時に行わせる、請求項1または2に記載のシート積層装置。 【請求項4】 前記制御部は、前記第1の搬送ハンドラを下降させた後に、前記第1のクランプ装置を下降させる、請求項1または2に記載のシート積層装置。 【請求項5】 前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する少なくとも一つの角に前記切り欠き部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート積層装置。 【請求項6】 前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する一対の角にそれぞれ前記切り欠き部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート積層装置。 【請求項7】 前記シート積層体の表面に垂直な方向から見て、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する切り欠き部は、前記第1のクランプ装置の一辺と向き合っている、請求項5または6に記載のシート積層装置。 【請求項8】 前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する一つの辺に前記切り欠き部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート積層装置。 【請求項9】 前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する一つの辺に複数の前記切り欠き部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート積層装置。 【請求項10】 複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、 周辺部に切り欠き部が設けられた第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能であり、前記ステージに対して上下移動可能に構成され、少なくともシートの周辺の一部が前記切り欠き部で露出した状態で該シートを保持可能な第1の搬送ハンドラと、 押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体の第1の辺の一部を前記押圧面による前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置と、 前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接した第2の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第2のクランプ装置と、を備えたシート搬送装置を用いたシート積層方法であって、 前記第2のクランプ装置で前記ステージ上のシート積層体の前記第2の辺の一部を押圧した状態で前記第1のクランプ装置を前記第1の上方ポジションへ移動させることと、 前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ、前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させることと、 前記第1の搬送ハンドラを前記ステージに向けて下降させ、前記第2のクランプ装置で押圧されている前記シート積層体の上に前記第1のシートを積層することと、 前記第1のクランプ装置を前記ステージに向けて下降させ、前記第1のシートの周辺部を前記ステージへ向けて押圧することと、を含むシート積層方法。」 2.取消理由の概要 当審において、訂正前の請求項1、及び10に係る特許に対して平成29年11月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)特許法第36条第6項第1、2号について ア.訂正前の請求項1、及び10の「前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させること」との記載は、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないから、訂正前の請求項1、及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ.訂正前の請求項1、及び10の「第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジション」との記載は、明確でないから、訂正前の請求項1、及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)特許法第36条第4項第1号について ア.訂正前の本件特許発明1、及び10においては、第1の搬送ハンドラをステージに向けて下降させた際、第1のクランプ装置と第1のシートとが干渉して、第1のシートが破損しうるものが包含されているが、当業者が、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、上記のようなものを実施することはできないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ.第1のクランプ装置8が、シート積層体12を押圧した状態で、図5(B)のように右方向に移動させると、シート積層体12の最上面のシートが損傷してしまい、発明の詳細な説明には、当業者が、本件特許発明1等の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないといえるから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3.判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア.特許法第36条第6項第1、2号について (ア)上記「2.(1)ア.」について 本件特許発明1、及び10は、「・・・第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置」、及び「前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させる」と特定され、つまり第1のクランプ装置が上方ポジションに位置するとき、第1の搬送ハンドラが保持するシートの上面であって切り欠き部で露出された面と、押圧面とが対向する位置関係となることが示されているから、第1の搬送ハンドラをステージに向けて下降させた際、第1のクランプ装置と第1のシートとが干渉して、第1のシートが破損することはない。 してみると、本件特許発明1、及び10は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではない。 なお、特許異議申立人平賀博は、「本件発明1においては、「切り欠き部」の形状や位置についても何ら特定していない」(特許異議申立書12頁4?5行)と主張しているが、本件特許発明1は、切り欠き部に関して、「少なくともシートの周辺の一部が前記切り欠き部で露出した状態で該シートを保持可能な第1の搬送ハンドラ」、「前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置」と特定されており、切り欠き部は、第1の搬送ハンドラを切り欠いた、すなわち、第1の搬送ハンドラの一部を切り取って、シートを保持とした場合、少なくともシートの周辺の一部が露出した状態となる形状であり、また切り欠き部は、第1の搬送ハンドラが待機ポジションであって、第1のクランプ装置が第1の上方ポジションであるとき、切り欠き部で露出されたシートの上面と第1のクランプ装置の押圧面とが対向する位置関係となる第1のクランプ装置の位置に形成されたものであることは明らかであるから、上記の主張は理由がない。 (イ)上記「2.(1)イ.」について 本件特許発明1、及び10は、「・・・第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置」と特定され、つまり第1の搬送ハンドラが、待機ポジションにあるとき、第1のクランプ装置は、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持するシートの上面であって切り欠き部で露出された面と、押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションにあるから、待機ポジションの第1の搬送ハンドラと上方ポジションの第1のクランプ装置との位置関係は明確である。 してみると、本件特許発明1、及び10は、明確である。 イ.特許法第36条第4項第1号について 本件特許発明1、及び10は、上記「ア.(イ)」のとおり、第1の搬送ハンドラが、待機ポジションにあるとき、第1のクランプ装置は、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持するシートの上面であって切り欠き部で露出された面と、押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションにあるから、第1の搬送ハンドラをステージに向けて下降させた際、第1のクランプ装置と保持されている第1のシートとは干渉することはなく、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 なお、図7に記載の実施例は、本件特許発明1、及び10に包含されるものであるから、上記のとおり、切り欠き部26と第1のクランプ装置8及び第2のクランプ装置9とが干渉したり、第1の(第2の)搬送ハンドラが下降したときに、保持されているシートがせん断されたり折曲げられることはない。 また、一般にシート積層装置において、シート積層体を押圧し、シート間に挟まれたクランプ装置をシート積層体から引き抜く際、シートがめくれない程度にクランプ装置を上げて退避させることは、技術常識(例えば、乙1号証(特開2010-212018号公報)の段落【0037】、【0038】、及び図8(b)、(c)、乙2号証(特開2012-221715号公報)の段落【0052】、【0053】、及び図19、並びに乙3号証(特開2009-32544号公報)の段落【0022】、【0023】、及び図1?3参照。以下「技術常識」という。)である。 してみると、当業者は、本件特許明細書及び図面の記載された発明の実施の説明と上記技術常識とに基づいて、本件特許発明1、及び10を実施することができるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア.特許異議申立人平賀博は、図7に記載の実施例において、切り欠き部26の幅と第1のクランプ装置8及び第2のクランプ装置9の各幅とが同一であるから、第1の(第2の)搬送ハンドラに切り欠き部26と第1のクランプ装置8及び第2のクランプ装置9とが干渉する等の事態が起こり得るから、どのような切り欠き部やクランプ装置でよいというわけではなく、限られた位置、大きさ、形状の関係を有している筈であって、訂正前の請求項1、及び10に係る発明は、サポート要件に違反している旨(特許異議申立書14頁22行?15頁5行)主張している。 しかしながら、図7に記載の実施例において、切り欠き部26の幅と第1のクランプ装置8及び第2のクランプ装置9の各幅とが同一とする理由は不明であるが、図7に記載の実施例は、本件特許発明1、及び10に包含されるものであって、本件特許発明1、及び10は、「・・・第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置」、「前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させる」、「前記第1の搬送ハンドラを前記ステージに向けて下降させて前記第2のクランプ装置で押圧されている前記シート積層体の上に前記第1のシートを積層する」、及び「前記第1のクランプ装置を前記ステージに向けて下降させて前記第1のシートの周辺部を前記ステージへ向けて押圧する」と特定され、つまり第1のクランプ装置が上方ポジションに位置するとき、第1の搬送ハンドラが保持する第1のシートの上面であって切り欠き部で露出された面と、押圧面とが対向する位置関係となり、そして、前記第1の搬送ハンドラをステージに向けて下降させてシート積層体の上に前記第1のシートを積層し、前記第1のクランプ装置を前記ステージに向けて下降させて前記第1のシートの周辺部を前記ステージへ向けて押圧するのであるから、当然切り欠き部の幅は、第1のクランプ装置の幅よりも大きい幅を備えているといえる。 また、第2のクランプ装置についても同様のことがいえる。 したがって、上記の主張は理由がない。 イ.特許異議申立人平賀博は、訂正前の請求項1、及び10に係る発明において、「第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接した第1の上方ポジション」と規定されているが、この「近接した」なる文言が何を意味するのか、また、どこからどこまでが「近接」したことになるのか不明確である旨(特許異議申立書15頁12?16行)主張している。 しかしながら、本件特許発明1、及び10は、「・・・第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置」と特定され、つまり「近接」とは、第1の上方ポジションの第1のクランプ装置が、待機ポジションの第1の搬送ハンドラの近くにあることを意味することは明らかである。 また、近接の具体的な範囲は、第1のクランプ装置や第1の搬送ハンドラ等の大きさの設定等により、適宜決定されるにすぎないものであるから、本件特許発明1、及び10において、近接の具体的な範囲を特定していないからといって、その記載が明確性を欠くことにはならないから、本件特許発明1、及び10は明確である。 したがって、上記の主張は理由がない。 ウ.特許異議申立人平賀博は、訂正前の請求項1、及び10に係る発明は、「前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させる」といった具合に、「第1の搬送ハンドラ」を移動させるのに「?まで」という文言を2回記載し、「待機ポジション」と、「前記シートと前記第1のクランプ装置とが対向する位置」とが同じ位置を意味するのか否かが定かでなく、しかも、両者の位置関係が不明である旨(特許異議申立書15頁17?27行)主張している。 しかしながら、本件特許発明1、及び10は、「・・・第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置」と特定され、つまり第1の搬送ハンドラが待機ポジションに位置するときに、第1のクランプ装置は、第1の押圧ポジションから、前記待機ポジションに接近し、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションに移動することになるから、上記の発明特定事項を踏まえれば、「待機ポジション」と、「前記シートと前記第1のクランプ装置とが対向する位置」とが同じ位置を意味することは明らかであって、本件特許発明1、及び10は明確である。 したがって、上記の主張は理由がない。 エ.特許異議申立人平賀博は、訂正前の請求項1、及び10に係る発明は、「・・・前記第1のクランプ装置を前記第1の上方ポジションへ移動させる」とあるが、発明の実施形態を参照すると、「・・・さらに、矢印の方向のように、第1のクランプ装置8を所定の高さまで上昇させ、図中左方向に移動させる(図5C参照)。」(段落【0032】)と記載されているが、「第1の上方ポジション」が、「第1のクランプ装置8を所定の高さまで上昇させ」た位置を指すのか、それとも、図5Cに示されるように図中左方向に移動させた位置を指すのか、不明である旨(特許異議申立書15頁28行?16頁5行)主張している。 しかしながら、本件特許発明1、及び10は、「・・・第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置」と特定され、つまり第1のクランプ装置の上方ポジションとは、第1の搬送ハンドラが待機ポジションに位置するときに、第1のクランプ装置の第1の押圧ポジションの上方であって、前記待機ポジションに接近し、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる位置であるから、「第1の上方ポジション」が、図5Cに示されるように図中左方向に移動させた位置であることは明らかであって、本件特許発明1、及び10は明確である。 したがって、上記の主張は理由がない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、 周辺部に切り欠き部が設けられた第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能であり、前記ステージに対して上下移動可能に構成され、少なくともシートの周辺の一部が前記切り欠き部で露出した状態で該シートを保持可能な第1の搬送ハンドラと、 押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体の第1の辺の一部を前記押圧面により前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置と、 前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接した第2の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第2のクランプ装置と、 前記第2のクランプ装置で前記ステージ上のシート積層体の前記第2の辺の一部を押圧した状態で前記第1のクランプ装置を前記第1の上方ポジションへ移動させることと、 前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ、前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させることと、 前記第1の搬送ハンドラを前記ステージに向けて下降させて前記第2のクランプ装置で押圧されている前記シート積層体の上に前記第1のシートを積層することと、 前記第1のクランプ装置を前記ステージに向けて下降させて前記第1のシートの周辺部を前記ステージへ向けて押圧することと、を前記第1のクランプ装置、前記第2のクランプ装置および前記第1の搬送ハンドラに実行させる制御部と、 を備えているシート積層装置。 【請求項2】 前記制御部は、前記第1の搬送ハンドラを前記待機ポジションまで移動させ終える前に、前記第1のクランプ装置を前記第1の上方ポジションへ移動させ終えるように、前記第1の搬送ハンドラおよび前記第1のクランプ装置を制御する、請求項1に記載のシート積層装置。 【請求項3】 前記制御部は、前記第1の搬送ハンドラの下降と前記第1のクランプ装置の下降とを同時に行わせる、請求項1または2に記載のシート積層装置。 【請求項4】 前記制御部は、前記第1の搬送ハンドラを下降させた後に、前記第1のクランプ装置を下降させる、請求項1または2に記載のシート積層装置。 【請求項5】 前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する少なくとも一つの角に前記切り欠き部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート積層装置。 【請求項6】 前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する一対の角にそれぞれ前記切り欠き部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート積層装置。 【請求項7】 前記シート積層体の表面に垂直な方向から見て、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する切り欠き部は、前記第1のクランプ装置の一辺と向き合っている、請求項5または6に記載のシート積層装置。 【請求項8】 前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する一つの辺に前記切り欠き部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート積層装置。 【請求項9】 前記第1の搬送ハンドラが前記退避ポジションから前記待機ポジションへ移動する方向を移動方向と定義したときに、前記第1の搬送ハンドラの前記移動方向の前方側に位置する一つの辺に複数の前記切り欠き部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート積層装置。 【請求項10】 複数のシートが積層されて成るシート積層体を載置するステージと、 周辺部に切り欠き部が設けられた第1の搬送ハンドラであって、前記ステージの上方に位置する待機ポジションと前記待機ポジションから退避した退避ポジションとの間を移動可能であり、前記ステージに対して上下移動可能に構成され、少なくともシートの周辺の一部が前記切り欠き部で露出した状態で該シートを保持可能な第1の搬送ハンドラと、 押圧面を備え、前記ステージ上の前記シート積層体の第1の辺の一部を前記押圧面により前記ステージに向けて押圧する第1の押圧ポジションと、前記第1の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接し、かつ、前記待機ポジションに位置する前記第1の搬送ハンドラが保持する前記シートの上面であって前記切り欠き部で露出された面と、前記押圧面とが対向する位置関係となる第1の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第1のクランプ装置と、 前記ステージ上の前記シート積層体の前記第1の辺とは異なる第2の辺の一部を前記ステージに向けて押圧する第2の押圧ポジションと、前記第2の押圧ポジションの上方であって前記待機ポジションに近接した第2の上方ポジションとの間で、移動可能に構成された第2のクランプ装置と、を備えたシート搬送装置を用いたシート積層方法であって、 前記第2のクランプ装置で前記ステージ上のシート積層体の前記第2の辺の一部を押圧した状態で前記第1のクランプ装置を前記第1の上方ポジションへ移動させることと、 前記ステージを挟んで前記第1のクランプ装置とは反対側の方向から、前記ステージの上方の前記待機ポジションまで、第1のシートを保持した前記第1の搬送ハンドラを移動させ、前記第1の搬送ハンドラの前記切り欠き部で露出した前記シートと前記第1の上方ポジションに位置する前記第1のクランプ装置とが対向する位置まで前記第1の搬送ハンドラを移動させることと、 前記第1の搬送ハンドラを前記ステージに向けて下降させ、前記第2のクランプ装置で押圧されている前記シート積層体の上に前記第1のシートを積層することと、 前記第1のクランプ装置を前記ステージに向けて下降させ、前記第1のシートの周辺部を前記ステージへ向けて押圧することと、 を含むシート積層方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-04-25 |
出願番号 | 特願2014-507383(P2014-507383) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B) P 1 651・ 851- YAA (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 清水 晋治 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 黒瀬 雅一 |
登録日 | 2017-01-27 |
登録番号 | 特許第6079773号(P6079773) |
権利者 | 日本電気株式会社 |
発明の名称 | シート積層装置およびシート積層方法 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 机 昌彦 |