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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G02B |
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管理番号 | 1341938 |
異議申立番号 | 異議2017-700604 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-06-14 |
確定日 | 2018-05-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6045161号発明「偏光板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6045161号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について、訂正することを認める。 特許第6045161号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6045161号の請求項1、2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成24年3月7日に特許出願されたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年11月25日:特許権の設定登録 平成28年12月14日:特許掲載公報発行 平成29年 6月14日:特許異議の申立て(特許異議申立人鶴谷裕二) 平成29年 8月16日:取消理由通知書 平成29年10月16日:訂正請求書及び意見書 平成29年10月24日:通知書(訂正請求があった旨の通知) 平成29年11月30日:意見書(特許異議申立人) 平成29年12月25日:取消理由通知書(決定の予告) 平成30年 2月27日:訂正請求書及び意見書 平成30年 3月 5日:通知書(訂正請求があった旨の通知) 平成30年 4月 3日:意見書(特許異議申立人) 第2 本件訂正請求について 平成30年2月27日付け訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲について、以下のとおり訂正することを求めるものである。 なお、平成29年10月16日付け訂正請求書によりなされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 1 訂正請求の内容 本件訂正は、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正する以下のとおりのものである。 (1)訂正事項1 特許権者は、本件特許の請求項1に、「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法」とあったものを、「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法(但し、偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光子の吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除する場合を除く。)」(下線は合議体が付した。以下同じ。)と訂正することを請求する。 本件特許の請求項1の記載を引用する請求項2についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許権者は、本件特許の請求項1に、「第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムは、」とあったものを、「第1の透明保護フィルムは環状オレフィン系樹脂フィルム、第2の透明保護フィルムはトリアセチルセルロースフィルムであり、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムは、」と訂正することを請求する。 本件特許の請求項1の記載を引用する請求項2についても同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許権者は、本件特許の請求項1に、「偏光子の両側の端部から外側に向けて存在する接着剤の」とあったものを、「偏光子の両側の端部から外側に向けて、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、偏光子を介することなく、接着剤により貼り合わされている」と訂正することを請求する。 本件特許の請求項1の記載を引用する請求項2についても同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許権者は、本件特許の請求項1に、「10≦w≦60、を満足する」とあったものを、「10≦w≦60、を満足し、第1の透明保護フィルムの幅(mm)および第2の透明保護フィルムの幅(mm)が、偏光子の幅(mm)に接着剤(a3)の幅wを加えた長さよりも長くなっており、」と訂正することを請求する。 本件特許の請求項1の記載を引用する請求項2についても同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許権者は、本件特許の請求項1に、「ことを特徴とする偏光板の製造方法」とあったものを、「偏光子の両面に第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムを同時に貼り合わせることを特徴とする偏光板の製造方法」と訂正することを請求する。 本件特許の請求項1の記載を引用する請求項2についても同様に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法」を「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法(但し、偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光子の吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除する場合を除く。)」と訂正するものであって、平成29年12月25日付け取消理由通知書(決定の予告)における引用発明(引用例3(甲3:特開2006-227604号公報))との差異を明確にするために、引用発明の一部の特定事項を除いたもの、所謂除くクレームであり、「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法」について、「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光子の吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除する場合を除く」ものに限定するものである。また、請求項1の記載を引用する請求項2についても同様である。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項1の「第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムは、」を「第1の透明保護フィルムは環状オレフィン系樹脂フィルム、第2の透明保護フィルムはトリアセチルセルロースフィルムであり、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムは、」と訂正するものであり、本件特許の明細書【0059】、【0060】及び【0063】の記載に基づいて、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムの材料が特定されていないものから、材料を特定するものに限定するものである。また、請求項1の記載を引用する請求項2についても同様である。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項1の「偏光子の両側の端部から外側に向けて存在する接着剤の」を「偏光子の両側の端部から外側に向けて、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、偏光子を介することなく、接着剤により貼り合わされている」と訂正するものであり、本件特許の明細書【0018】の記載に基づいて、偏光子の両側の端部から外側において、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、接着剤により貼り合わされているか否か特定されていないものから、「第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、偏光子を介することなく、接着剤により貼り合わされている」ものに限定するものである。また、請求項1の記載を引用する請求項2についても同様である。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項1の「10≦w≦60、を満足する」を「10≦w≦60、を満足し、第1の透明保護フィルムの幅(mm)および第2の透明保護フィルムの幅(mm)が、偏光子の幅(mm)に接着剤(a3)の幅wを加えた長さよりも長くなっており、」と訂正するものであり、第1の透明保護フィルムの幅(mm)、第2の透明保護フィルムの幅(mm)、偏光子の幅(mm)及び接着剤(a3)の幅wの関係が特定されていないものから、本件特許の明細書【0018】及び図1、図3の記載に基づいて、「第1の透明保護フィルムの幅(mm)および第2の透明保護フィルムの幅(mm)が、偏光子の幅(mm)に接着剤(a3)の幅wを加えた長さよりも長くなって」いるものに限定するものである。また、請求項1の記載を引用する請求項2についても同様である。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項1の「ことを特徴とする偏光板の製造方法」を「偏光子の両面に第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムを同時に貼り合わせることを特徴とする偏光板の製造方法」と訂正するものであり、長尺の偏光板を製造する方法において、偏光子の両面に第1の透明保護フィルムと第2の透明保護フィルムをそれぞれ貼り合わせる際に、どのように貼り合わせるかが特定されていないものから、本件特許の明細書の【0059】の記載に基づいて、「偏光子の両面に第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムを同時に貼り合わせる」ものに限定するものである。また、請求項1の記載を引用する請求項2についても同様である。 (6)上記(1)ないし(5)のとおりであるから、請求項1、2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (7)訂正における一群の請求項の存否 訂正事項1ないし5に係る、訂正前の請求項1、2について、請求項2は請求項1の記載を引用するものであって、請求項1、2は一群の請求項であり、訂正事項1ないし5によって記載が訂正される請求項1に連動して請求項2が訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1、2に対応する訂正後の請求項1、2は、一群の請求項である。 (8)小括 上記(1)ないし(7)のとおり、本件訂正請求による訂正事項1ないし5は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とし、同条第4項の規定に適合し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について本件訂正が認められるから、請求項1、2に係る特許は本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項1、2に係る発明をそれぞれ「本件発明1」、「本件発明2」といい、本件発明1及び本件発明2を総称して「本件発明」という。)。 【請求項1】 偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法(但し、偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光子の吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除する場合を除く。)であって、 第1の透明保護フィルムは環状オレフィン系樹脂フィルム、第2の透明保護フィルムはトリアセチルセルロースフィルムであり、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムは、第1の透明保護フィルムの寸法変化率(%)をL1、第2の透明保護フィルムの寸法変化率をL2(%)としたときに、寸法変化率の差(L1-L2)の絶対値が0.10以上を満足し、 かつ、偏光子の幅は、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムの幅以下であって、偏光子の幅方向において、偏光子の両側の端部から外側に向けて、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、偏光子を介することなく、接着剤により貼り合わされている幅w(mm)が、10≦w≦60、を満足し、第1の透明保護フィルムの幅(mm)および第2の透明保護フィルムの幅(mm)が、偏光子の幅(mm)に接着剤(a3)の幅wを加えた長さよりも長くなっており、 偏光子の両面に第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムを同時に貼り合わせることを特徴とする偏光板の製造方法。 【請求項2】 第1の透明保護フィルムの幅と第2の透明保護フィルムの幅が異なることを特徴とする請求項1記載の偏光板の製造方法。 第4 特許異議の申立てについて 1 特許異議の申立ての概要 (1)理由1:本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 よって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 ア 本件訂正前の請求項1又は2に係る発明(以下、それぞれ「訂正前発明1」、「訂正前発明2」という。)が解決しようとする課題は、偏光子を介することなく、接着剤によって透明保護フィルムが拘束されていることが原因で生じるカールを抑制することであるが、訂正前発明1又は2では、透明保護フィルムを貼り合わせている部分の接着剤が、偏光子を介さないことの特定はされていない。 よって、訂正前発明1又は2では、本件の発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっており、サポート要件を満たさない。 イ 訂正前発明1又は2において、「寸法変化率」を一義的に特定できず不明である。 よって、訂正前発明1又は2は明確でない。 (2)理由2:本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 ア 上記(1)アのとおり、訂正前発明1及び2には、本件特許の明細書で課題としている端部のカールが発生し得ない態様を含むものとなっている。したがって、そもそも課題を有しない場合に、本件特許の明細書の記載を参酌しても、課題を解決するように訂正前発明1及び2を実施することができない。 イ 上記(1)イのとおり、本件特許の明細書の記載等を参酌しても、「寸法変化率」の測定方法を一義的に特定することができない。したがって、本件特許の明細書の記載を参酌しても、「寸法変化率の差(L1-L2)」の絶対値が0.10以上を満足し」を満たす発明を実施することができない。 (3)理由3:訂正前発明1又は2は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1ないし8に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 引用例1:特開2004-117482号公報(甲1) 引用例2:特開2008-107499号公報(甲2) 引用例3:特開2006-227604号公報(甲3) 引用例4:特開2006-88651号公報(甲4) 引用例5:国際公開第2011/125957号(甲5) 引用例6:特開2008-203400号公報(甲6) 引用例7:実願昭61-47028号(実開昭62-158423号)のマイクロフィルム(甲7) 引用例8:特開2002-174729号公報(甲8) ア 引用例1に記載された発明に基づく進歩性欠如 引用例3には、偏光フィルムの幅を保護フィルムの幅より狭くすることが、引用例5には、保護フィルムの端部に接着剤を塗布しない未塗布部を設けることが、引用例6には、透明保護層の組み合わせとしてTACフィルムとノルボルネン系樹脂フィルムの組み合わせが、それぞれ記載されており、引用例1に記載された発明において、訂正前発明1のようにすることは、当業者が引用例3、5及び6に記載された事項に基づいて適宜なし得たことである。また、訂正前発明2の限定事項のようになすことは引用例7に記載されているように当業者が適宜なし得る設計的事項である。 イ 引用例3に記載された発明に基づく進歩性欠如 引用例5には、上記アで述べた事項が、引用例8には、透明保護層の組み合わせとして、「TACフィルム」と「TACフィルム」との組み合わせよりも、「TACフィルム」と「熱可塑性ノルボルネン系樹脂フィルム」の組み合わせの方が高温高湿下での劣化が小さい偏光板が得られることが、それぞれ記載されており、引用例3に記載された発明において、訂正前発明1のようにすることは、当業者が引用例5及び8に記載された事項に基づいて適宜なし得たことである。訂正前発明2については上記アと同様である。 ウ 引用例4に記載された発明に基づく進歩性欠如 引用例3、5又は8には、上記ア及びイで述べた事項が記載されており、引用例4に記載された発明において、訂正前発明1のようにすることは、当業者が引用例3、5及び8に記載された事項に基づいて適宜なし得たことである。訂正前発明2については上記アと同様である。 2 平成29年12月25日付け取消理由通知(決定の予告)の概要 (1)理由1(特許法第36条第6項第2号)について 本件特許の明細書には、「寸法変化率」の測定方法に関しての記載があるものの、寸法aを測定した後に、寸法bを測定する条件について、「80℃の環境下に24時間投入した」と記載されているのみで、その湿度が不明である。 一方、透明保護フィルムの寸法変化量が、投入される環境の湿度によって異なることが技術常識(例.引用例2(甲2:特開2008-107499号公報)の【0475】、【0477】参照。)である。また、本件特許の出願日時点で、「寸法変化率」の測定方法として、標準的な測定方法があったことが技術常識でもなく、「80℃の環境下」の記載のように、湿度の記載がない寸法変化率の測定が、「乾燥状態」での寸法変化率の測定を意味することが当業者にとって常識であったとも認められない。 してみると、本件特許の明細書の記載を参酌しても、平成29年10月16日付け訂正請求書でなされた訂正による請求項1に係る発明(以下「第1訂正発明1」といい、同様に請求項2に係る発明を「第1訂正発明2」という。)の「寸法変化率」の測定方法を一義的に定めることができず、第1訂正発明1の「寸法変化率の差(L1-L2)の絶対値が0.10以上を満足」する範囲を特定できない。 したがって、第1訂正発明1及び2は明確でない。 よって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)理由2(特許法第29条第2項)について 引用例3(特開2006-227604号公報(甲3))には、偏光フィルムの幅を保護フィルムの幅より狭くすることが、引用例5(国際公開第2011/125957号(甲5))には、保護フィルムの端部に接着剤を塗布しない未塗布部を設けることが、引用例6(特開2008-203400号公報(甲6))及び引用例8(特開2002-174729号公報(甲8))には、透明保護層の組み合わせとしてTACフィルムとノルボルネン系樹脂フィルムの組み合わせが、それぞれ記載されており、引用例3に記載された発明において、第1訂正発明1のようにすることは、当業者が引用例5、6及び8に記載された事項に基づいて適宜なし得たことである。第1訂正発明2についても同様である。 したがって、第1訂正発明1、2は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例3に記載された発明及び引用例5、6及び8に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 当合議体の判断 1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について (1)理由1(特許法第36条第6項第2号)について ア 本件特許の明細書には、本件発明の「寸法変化率」について、以下の記載がある。 (ア)「【背景技術】 【0002】 ・・・略・・・ 【0004】 透明保護フィルムは乾燥段階において寸法変化が生じやすい。しかし、上記のように、一般的な偏光板を製造方法では、偏光子に接着剤を用いて透明保護フィルムを貼り合わせた後に、乾燥工程が施される。この乾燥工程において、透明保護フィルム等に寸法変化が生じて、偏光板にカールが発生すると、連続的な偏光板の製造工程において、偏光板を走行性が悪くなることが問題となっていた。特に、偏光子の両面に貼り合わせる透明保護フィルムの寸法変化率が異なる場合には、カールが発生しやすく、作業効率を低下させていた。」 (イ)「【0055】 <寸法変化率の測定> 透明保護フィルムを10cm×10cmに切り出して、60℃、90%R.H.の環境下に1時間投入したものの寸法をa(cm)として。その後に、80℃の環境下に24時間投入したものの寸法をb(cm)とした。そして、下記の計算式にて寸法変化率を算出した。 寸法変化率(%)={(a-b)/a}×100 なお、寸法変化率は、偏光板に用いた際に幅方向にあたる寸法変化率を評価した。」 イ 上記ア(イ)のとおり、本件特許の明細書には、「寸法変化率」の測定方法に関しての記載があるものの、寸法aを測定した後に、寸法bを測定する条件について、「80℃の環境下に24時間投入した」と記載されているのみで、その湿度が不明である。 しかしながら、「60℃、90%R.H.の環境下」のように、加熱とともに湿度を一定に維持させるということは、恒温層内に前記環境に水蒸気を供給するというような特別の操作が必要となり、「80℃の環境下」のように、湿度が記載されていない場合、特定の湿度を維持するための水蒸気の供給などの操作を行わず、温度のみを一定に維持させるものと理解できる。このように、湿度を維持しない状態で、高温である状態を維持すると、フィルムから水分が蒸発し、蒸発した水分がさらに恒温槽から排出され、その結果、恒温槽内部の湿度は低くなり、乾燥状態となるといえる。 また、上記ア(ア)の記載に鑑みれば、乾燥することにより透明保護フィルの寸法変化が生じやすいことは技術常識であるといえ、該技術常識に基づけば、フィルムの寸法変化率を測定するということは、「60℃、90%R.H.の環境下」に投入されたフィルムのように、水分が存在している状態のフィルムの寸法に比べ、水分が蒸発した後のフィルムの寸法がどの程度変化しているかを把握するためのものであると理解できる。 また、上記ア(ア)によれば、本件発明は、「乾燥工程」において発生する寸法変化を原因とするカールに着目しているのであるから、寸法変化率を定義する際、寸法aの取得時の環境が湿度90%、すなわち多湿状態としていることを踏まえ、寸法bを取得する環境は(高温下の)乾燥状態であると理解できる。そうすると、本件発明の寸法変化率の記載に関し、本件特許の明細書における「80℃の環境下に24時間投入した」との記載は、「乾燥状態」の条件を意味するものであり、このような乾燥状態において、寸法変化後の寸法を測定し、寸法変化率を特定できるものである。 したがって、本件特許の明細書の記載を参酌すれば、本件発明の「寸法変化率」の測定方法を一義的に定めることができ、本件発明1の「寸法変化率の差(L1-L2)の絶対値が0.10以上を満足」する範囲を特定することができる。 ウ 以上のとおりであるから、本件発明1、2は明確である。 (2)理由2(特許法第29条第2項)について ア 引用例3 特許異議申立人が提出した甲第3号証であり、本件特許の出願前に頒布され、上記取消理由通知(決定の予告)で引用例3として引用された刊行物である特開2006-227604号公報(以下同じく「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも一軸延伸が施されて得られ、当該一軸延伸の方向に吸収軸を有する偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを貼り合わせる偏光板の製造方法において、 保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光フィルムの吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除することを特徴とする偏光板の製造方法。 【請求項2】 切除前の偏光フィルムの幅が、貼り合わせる保護フィルムの幅よりも広いことを特徴とする請求項1記載の偏光板の製造方法。 【請求項3】 切除前の偏光フィルムの幅が、1300mm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板の製造方法。 【請求項4】 切除後の偏光フィルムの幅が、保護フィルムの幅と同じかまたは狭いことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の偏光板の製造方法。 【請求項5】 偏光フィルムの端辺を切除するときの切除割合{(切除部分の幅の合計/偏光フィルムの全体幅)×100}が1%?8%であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の偏光板の製造方法。 【請求項6】 偏光フィルムが、ポリビニルアルコール系フィルムを二色性物質で染色し、かつ偏光吸収軸方向に3?7倍一軸延伸することにより得られたものであることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の偏光板の製造方法。 【請求項7】 保護フィルムが、トリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の偏光板の製造方法。 【請求項8】 偏光板の有効幅が1200mm以上であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の偏光板の製造方法。 【請求項9】 請求項1?8のいずれかに記載の製造方法により得られた偏光板。 【請求項10】 有効幅1200mm以上であることを特徴とする請求項9記載の偏光板。 【請求項11】 請求項9または10記載の偏光板を含む光学フィルム。 【請求項12】 請求項9もしくは10記載の偏光板、または請求項11記載の光学フィルムを有する画像表示装置。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)等の画像表示装置に使用する偏光板の製造方法、さらには、この製造方法により得られた偏光板、この偏光板を有する光学フィルム、さらにはこれらを有する画像表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 画像表示装置、特に液晶表示装置に使用する偏光板は、明るく、色の再現性が良い画像を提供するために、高い透過率と高い偏光度および、面内均一性を兼ね備えることが要求されている。このような偏光板は一般に、ポリビニルアルコール(PVA)系等のポリマーフィルムをヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色して偏光フィルムとした後、この偏光フィルムの両面に、トリアセチルセルロース(TAC)等のポリマーフィルムからなる保護フィルムを貼り合わせることにより製造されている。 【0003】 近年では、画像表示装置の大型化に伴い、偏光板に対しても大型化が求められている。偏光板の大型化に対しては従来、幅広の原反フィルムを用いること(例えば、特許文献1参照。)等の方法が試みられている。ところがこれらの方法だけでは、従来の偏光フィルムの製造工程において、従来の比較的幅の狭いフィルムを用いた場合よりも、幅方向における光学特性のばらつきが生じやすくなり、これにより高性能な偏光板として使用することのできる範囲(有効幅)が狭くなるため、偏光板の大型化が妨げられるという問題を有している。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明では上記問題点に鑑み、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを貼り合わせた偏光板において、有効幅を広げ、大型の偏光板が得られる偏光板の製造方法を提供することを目的とする。さらには、この製造方法により得られた偏光板や、この偏光板を有する光学フィルム、および前記偏光板または前記光学フィルムを有する画像表示装置を提供することを目的とする。」 (エ)「【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討したところ、偏光フィルムに保護フィルムを貼り合わせた偏光板では、その吸収軸方向、すなわち、偏光フィルムの製造工程における一軸延伸方向と略平行な端辺付近にスジ状のムラ等の不具合が発生しやすいことが分かった。そして、前記のような端辺に生じるスジ状ムラ等により光学特性における不具合が生じること、またこれは偏光フィルムを製造する際の一軸延伸により生じる幅方向端辺と中央部分の厚みの差に起因するものであることを見出し、さらにこのような偏光フィルムに保護フィルムを貼り合わせると不具合部分がより広がることを見出し、以下に示す偏光板の製造方法により本発明を完成するに至った。 【0006】 本発明は、少なくとも一軸延伸が施されて得られ、当該一軸延伸の方向に吸収軸を有する偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを貼り合わせる偏光板の製造方法であって、保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光フィルムの吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除することを特徴とする。」 (オ)「【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 本発明による偏光板の製造方法は、少なくとも一軸延伸が施されて得られ、当該一軸延伸の方向に吸収軸を有する偏光フィルムの少なくとも片端辺(吸収軸方向と略平行な端辺)を切除した後、前記偏光フィルムの少なくとも片面に、保護フィルムを貼り合わせる。偏光フィルム端辺の切除は、得られた偏光フィルムに対して保護フィルムを貼り合わせる前に行うことにより本発明の効果が得られる。本発明者らは、保護フィルムを貼り合わせた後に偏光板端辺に生じる不具合は、偏光フィルムの幅方向厚さが、中央部よりも端辺になるにしたがって厚くなることに起因することを見出している。これに伴い本発明は、偏光フィルムの少なくとも片端辺を切除することで、保護フィルム貼り合わせ時の貼着不良を抑制できることを見出したものである。 【0015】 前記偏光フィルム端辺の切除は、前記の通り、偏光フィルムの幅が貼り合わせる保護フィルムの幅と同じかまたは狭くなるように切除することが好ましい。切除後の偏光フィルムの幅が保護フィルムの幅より広いと、偏光フィルムが保護フィルムよりもはみ出た部分からの水分の吸収および発散が多くなる。そのため、偏光フィルムが劣化しやすくなる不具合や、はみ出た偏光フィルムにより製造装置を汚染する不具合が生じやすくなるため好ましくない。 【0016】 フィルム幅方向の全体長さに対する偏光フィルム端辺の切除割合{(切除部分の幅の合計/偏光フィルムの全体幅)×100}としては、偏光フィルムの精密かつ高倍率の延伸や、その他の製造工程により生じる端辺の不具合、および、得られた偏光フィルムの幅方向長さ、光学特性および端辺の不具合の状態によって適宜決定すれば良いが、通常、1%?8%程度が好ましく、2%?7%程度がより好ましく、5?6%程度が最適である。この切除割合が多すぎると大型の偏光板が得られず、切除割合が少なすぎると、前記のような偏光フィルムの不具合要因を十分に除去できないため本発明の効果が得られにくい。 【0017】 前記偏光フィルム端辺の切除には、切断刃やレーザー等の公知の切断方法を用いれば良く、限定されるものではないが、長尺フィルムを用いて一連の流れの中で端辺を切除する場合には、丸刃や皿刃等の切断刃を用いて、フィルムの搬送速度に応じて切除する工程を設けることが好ましい。また、切除後の端材または切りくずについては、巻き取るかまたは吸引することにより、除去する工程を設けることが好ましい。このような切除後の端材または切りくずを除去する工程を設けない場合、偏光フィルムの搬送を阻害する等、悪影響を及ぼすことがある。 【0018】 前述の通り、切除後の偏光フィルムの幅は、貼り合わせる保護フィルムの幅と同じかまたは狭くなるようにする偏光フィルムを切除することが好ましい。保護フィルムの有効活用の点からすれば、切除後の偏光フィルムの幅は、貼り合わせる保護フィルムの幅と同じであるのが好ましい。一方、偏光フィルムと保護フィルムの貼り合わせが容易である点からは、切除後の偏光フィルムの幅が、保護フィルムの幅より狭くなるようにするのが好ましい。ただし、切除後の偏光フィルムの幅が、保護フィルムの幅よりあまり狭くすぎると、保護フィルムを有効に活用できないため、切除後の偏光フィルムの幅は、保護フィルムの幅よりも、75mm以下、さらには50mm以下、さらには30mm以下、さらには20mm以下の範囲で狭くなるようにするのが好ましい。このように、切除後の偏光フィルムの幅と、保護フィルムの幅を制御することで、前述の事項(切除前の偏光フィルムの幅は、保護フィルムの幅よりも広いものが好ましい)と併せて、保護フィルムの有効活用ができる。 【0019】 偏光フィルムに貼り合わせる保護フィルムとしては、偏光フィルムの保護を目的とし、特に限定されるものではないが、透明性、機械的強度、熱安定性、等方性等に優れるものが好ましい。保護フィルムの厚さは一般に500μm以下であり、1?300μm程度が好ましく、5?100μm程度のものがより好ましく用いられる。また、偏光特性や耐久性および接着特性向上等の点より、保護フィルム表面に表面処理を施しても良い。例えば、アルカリ溶液を用いて保護フィルム表面をケン化処理することにより接着特性を向上させることができる。 【0020】 保護フィルムを形成する材料としては、透光性を有するポリマーフィルムであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。また、側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂、および側鎖に置換または非置換フェニル基とニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂フィルム等を用いることもできる。さらには、保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。これらの中でも接着性や光学特性の良好なセルロース系ポリマーや、耐湿性および光学特性の良好なシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン系ポリマーフィルムが好ましい。 【0021】 偏光フィルムの両面に保護フィルムを貼り合わせる場合、その片面ごとにそれぞれ異なる特性を有する保護フィルムを貼り合わせても良い。その特性としては、フィルムの透湿度、厚み、材質、光透過率、引張り弾性率および光学機能層の有無等が挙げられる。 【0022】 前記偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせる際には粘着層または接着層を介して貼り合わせることが好ましい。粘着層または接着層を形成する、粘着剤や接着剤は、乾燥時に透光性を有する層を用途に応じて適宜採用することができるが、偏光フィルムに保護フィルムを貼り合わせる場合、接着剤を用いることが好ましい。 【0023】 接着層を形成する接着剤および接着処理方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることができる。このような接着剤からなる接着層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。前記接着剤におけるビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。またポリビニルアルコール系樹脂には、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などの水溶性架橋剤を含有することができる。特に偏光フィルムとしてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。さらには、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が耐久性を向上させる点からより好ましい。」 (カ)「【実施例】 【0059】 以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。 【0060】 実施例1 厚さ80μm、幅方向長さ2700mmのポリビニルアルコール(PVA)フィルム((株)クラレ製、重合度2400)を用いて、張力を保ったまま30℃の純水中に60秒間浸漬し、30℃の0.3重量%ヨウ素水溶液中で3倍まで延伸した後、60℃、4重量%ホウ酸かつ3重量%ヨウ化カリウムの水溶液中で累積した延伸倍率が6倍になるように延伸し、30℃、3.5重量%ヨウ化カリウム水溶液中に10秒間浸漬した後、フィルムの張力を保ったまま30℃で4分間乾燥して、幅方向長さ1340mmの偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの幅方向両端辺を、それぞれ端辺から40mmずつ切除し、幅方向長さ1260mmの偏光フィルムを得た。切除後の偏光フィルムの両面に、幅方向長さ1330mmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製:TDY80UL)を、完全ケン化ポリビニルアルコール5%水溶液を主成分とする接着剤を用いて貼り合わせ、70℃で4分間乾燥することにより偏光板を得た。 【0061】 実施例2 厚さ75μm、幅方向長さ3100mmのポリビニルアルコール(PVA)フィルム((株)クラレ製、重合度2400)を用いて、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製し幅方向長さ1540mmの偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの幅方向両端辺を、それぞれ端辺から40mmずつ切除し、幅方向長さ1460mmの偏光フィルムを得た。切除後の偏光フィルムの両面に、幅方向長さ1475mmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製:TDY80UL)を、完全ケン化ポリビニルアルコール5%水溶液を主成分とする接着剤を用いて貼り合わせ、70℃で4分間乾燥することにより偏光板を得た。 【0062】 比較例1 厚さ80μm、幅方向長さ2550mmのPVAフィルム((株)クラレ製、重合度2400)を用いて、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製し、幅方向長さ1266mmの偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの端辺を切除することなく、その両面に実施例1と同様にしてTACフィルムを貼り合わせ、偏光板を得た。 【0063】 比較例2 厚さ80μm、幅方向長さ2950mmのPVAフィルム((株)クラレ製、重合度2400)を用いて、実施例2と同様にして偏光フィルムを作製し、幅方向長さ1464mmの偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの端辺を切除することなく、その両面に実施例2と同様にしてTACフィルムを貼り合わせ、偏光板を得た。 【0064】 比較例3 厚さ80μm、幅方向長さ2950mmのPVAフィルム((株)クラレ製、重合度2400)を用いて、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製し、幅方向長さ1464mmの偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの端辺を切除することなく、その両面に実施例1と同様にしてTACフィルムを貼り合わせ、偏光板を作製した。しかしながら、貼り合わせ直後の端辺にTACフィルムの浮きや剥がれが生じ、さらに、フィルム搬送用のロールに、はみ出した偏光フィルムに起因する汚染が生じ、有効な偏光板が得られなかった。」 (キ)上記(ア)ないし(カ)から、引用例3には、偏光板の製造方法に関する実施例1について、次の発明が記載されているものと認められる。 「厚さ80μm、幅方向長さ2700mmのポリビニルアルコール(PVA)フィルム((株)クラレ製、重合度2400)を用いて、張力を保ったまま30℃の純水中に60秒間浸漬し、30℃の0.3重量%ヨウ素水溶液中で3倍まで延伸した後、60℃、4重量%ホウ酸かつ3重量%ヨウ化カリウムの水溶液中で累積した延伸倍率が6倍になるように延伸し、30℃、3.5重量%ヨウ化カリウム水溶液中に10秒間浸漬した後、フィルムの張力を保ったまま30℃で4分間乾燥して、幅方向長さ1340mmの偏光フィルムを得、 得られた偏光フィルムの幅方向両端辺を、それぞれ端辺から40mmずつ切除し、幅方向長さ1260mmの偏光フィルムを得、 得られた偏光フィルムの両面に、幅方向長さ1330mmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製:TDY80UL)を、完全ケン化ポリビニルアルコール5%水溶液を主成分とする接着剤を用いて貼り合わせ、70℃で4分間乾燥することにより偏光板を得る、 偏光板の製造方法。」(以下「引用発明」という。) イ 引用例5 特許異議申立人が提出した甲第5号証であり、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用例5として引用された国際公開第2011/125957号(以下同じく「引用例5」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「技術分野 [0001] 本発明は、積層フィルムの製造方法および偏光板の製造方法に関する。」 (イ)「[0016] 〔第1の実施形態〕 図1は、本発明の偏光板の製造方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。本実施形態の偏光板の製造方法は、基材フィルムの一方の表面上にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を形成して積層フィルムとする樹脂層形成工程(S10)が存在する。この工程には、ポリビニルアルコール系樹脂溶液を塗布する塗布工程と塗布した樹脂溶液から溶媒を乾燥させて積層フィルムとする乾燥工程が含まれる。塗布工程においては、基材フィルムの幅方向の両端から内側にそれぞれ0.5cm以上の領域において前記溶液を塗布しない未塗布部分を設ける。未塗布部分は、好ましくは、基材フィルムの両端から内側にそれぞれ20cm以下である。 [0017] その後、基材フィルムを切断することにより上記未塗布部分を除去する除去工程(S20)を施す。基材フィルムの切断位置は、未塗布部分が全て含まれるように切除される位置であれば限定されることはなく、たとえば、基材フィルム上の樹脂溶液が塗布されている塗布部分と、未塗布部分との境界部分で切断してもよいし、塗布部分において切断することにより未塗布部分の全てと塗布部分の一部が含む部分が除去されるように切断してもよい。具体的に、基材フィルムの幅方向の両端から内側にそれぞれ0.5cmの領域においてポリビニルアルコール系樹脂溶液を塗布しない未塗布部分を設け、他の領域はポリビニルアルコール系樹脂溶液を塗布した場合について例示して説明する。この場合、基材フィルムの切断位置は、基材フィルムの幅方向の両端から内側にそれぞれ0.5cm以上の位置であれば特に限定されない。 [0018] 次に、未塗布部分を除去した積層フィルムに一軸延伸処理を施し延伸フィルムとする延伸工程(S30)を施す。一軸延伸処理の延伸倍率は5倍超であることが好ましい。5倍超とすることにより、所望の偏光性能を有する偏光板を作製することができる。またこのような高い偏光性能を有する偏光板を得るために高倍率で一軸延伸を行なう場合に、反り返りの問題が顕著となり、したがって反り返りを抑制できるという本発明の効果が顕著となるからである。また、一軸延伸は、比較的厚みが減少しにくい延伸方法である自由端縦一軸延伸が好ましい。 [0019] その後、樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成する染色工程(S40)がある。この工程を終え偏光子層を備えるフィルムを偏光性積層フィルムと呼ぶ。すなわち、本実施形態のS10?S40までの工程により偏光性積層フィルムを得る製造方法は、本発明に係る偏光性積層フィルムの製造方法である。 [0020] その後、上述の偏光性積層フィルムの偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合して多層フィルムを得る貼合工程(S50)、さらに、多層フィルムから基材フィルムを剥離する剥離工程(S60)が設置される。これらの工程を経て偏光板が作製される。 [0021] 本実施形態では、塗布工程において未塗布部分を設けていることにより、ポリビニルアルコール系樹脂塗布層の乾燥工程において、基材フィルムの反り返り現象を防止することができる。以下、かかる反り返り現象の防止原理について考察する。 [0022] まず、樹脂塗布層を基材フィルムの表面全体とした場合に、反り返りが生じる原理を推察し、図2(a)に推察した反り返り原理を説明する図を模式的に表す。一方、樹脂塗布層を未塗布部分を設けて形成した場合に、反り返りが抑制される原理を推察し、図2(b)に推察した原理を説明する図を模式的に表す。図2(a)に示すように、樹脂塗布層11を基材フィルム10の表面全体に設けた場合は、乾燥工程において樹脂塗布層11に大きな収縮力が働き、ライン張力によって基材フィルム10の端部が折れ込みやすくなると推察される。一方、図2(b)に示すように、基材フィルム上の端部に樹脂塗布層11を形成しない未塗布部分を設けることにより、乾燥工程においても、基材フィルム10の端部付近で収縮力が働かず、折れ込みが発生しにくくなると推察される。したがって、未塗布部分を大きく取れば取るほど折り込み発生の抑制の効果はより顕著になってくる。しかしながら、未塗布部分を大きく取ることは有効幅が狭くなってしまうことになるので、生産効率が低下してしまうことから、実質的に未塗布部分は基材フィルムの両端からそれぞれ20cm以下が好ましく、さらに10cm以下がより好ましい。 [0023] 以上の通り、本実施形態によると、基材フィルムの端部に未塗布部分を設けることにより乾燥工程を経ても基材フィルムの折れ込みが発生しにくい。しかしながら、未塗布部分は、波打ちを生じさせやすい。波打ちは、例えば、延伸工程において積層フィルムの破断を生じさせることがある。本実施形態では、延伸工程前に未塗布部分を除去する除去工程(S20)を実行するので、延伸工程において波打ちに起因する積層フィルムの破断が生じることを防ぐことができる。また、仮に波打ちが発生しても、波打ちが除去されるので、除去工程(S20)後には巻き姿の良好なロールが得られる。」 (ウ)「[図2] 」 (エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、引用例5には、以下の事項が記載されているものと認められる。 「偏光板の製造方法において、 基材フィルムの一方の表面上にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を形成して積層フィルムとする樹脂層形成工程(S10)を含み、 該工程には、ポリビニルアルコール系樹脂溶液を塗布する塗布工程と塗布した樹脂溶液から溶媒を乾燥させて積層フィルムとする乾燥工程が含まれ、 塗布工程においては、基材フィルムの幅方向の両端から内側にそれぞれ0.5cm以上の領域において前記溶液を塗布しない未塗布部分を設けること。」(以下「引用例5の記載事項」という。) ウ 引用例6 特許異議申立人が提出した甲第6号証であり、本件特許の出願前に頒布され、上記取消理由通知で引用例6として引用された刊行物である特開2008-203400号公報(以下同じく「引用例6」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 透明保護層(A)と偏光子と透明保護層(B)をこの順に有する偏光板と、該透明保護層(A)の該偏光子と反対側または該透明保護層(B)の該偏光子と反対側に配置された表面保護フィルムとを有し、該透明保護層(A)と該透明保護層(B)とが互いに異なる種類の透明保護層である、表面保護フィルム付偏光板。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、表面保護フィルム付偏光板、液晶セルの少なくとも一方の側にその表面保護フィルム付偏光板を有する表面保護フィルム付液晶パネル、および、その表面保護フィルム付偏光板を少なくとも1枚含む、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。」 (ウ)「【背景技術】 【0002】 液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性材料からなる偏光子の両面に、トリアセチルセルロースなどを用いた透明保護層(偏光子保護フィルム)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せたものが用いられている。 【0003】 しかしながら、トリアセチルセルロースは耐湿熱性が十分でなく、トリアセチルセルロースフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を高温または高湿下において使用すると、偏光度や色相等の偏光板の性能が低下するという欠点がある。またトリアセチルセルロースフィルムは斜め方向の入射光に対して位相差を生じる。かかる位相差は、近年、液晶ディスプレイの大型化が進むにしたがって、顕著に視野角特性に影響を及ぼすようになっている。 【0004】 上記透明保護層として、トリアセチルセルロース以外の熱可塑性樹脂等により形成した層を有するものが提案されている(特許文献1-4参照)。 【0005】 このように、異なった光学特性を有する透明保護層がいくつか提案されている。このため、偏光子の両面に配置させる透明保護層として、それぞれ異なった種類の透明保護層を採用すれば、従来にない特異な光学特性を発現できる可能性がある。 【0006】 ところが、偏光子の両面にそれぞれ異なった種類の透明保護層を配置した場合、得られる偏光板にカールが発生してしまうという問題が生じることが判明した。カールが発生した偏光板は、液晶セルへの貼り付けが困難になるという問題等を有する。」 (エ)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、偏光子の両面にそれぞれ異なった種類の透明保護層を配置してもカールの発生が十分に抑制される偏光板を提供すること、そのような偏光板を用いた高品位の液晶パネル、および画像表示装置を提供すること、にある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の表面保護フィルム付偏光板は、透明保護層(A)と偏光子と透明保護層(B)をこの順に有する偏光板と、該透明保護層(A)の該偏光子と反対側または該透明保護層(B)の該偏光子と反対側に配置された表面保護フィルムとを有し、該透明保護層(A)と該透明保護層(B)とが互いに異なる種類の透明保護層である。 【0009】 好ましい実施形態においては、上記透明保護層(A)が、(メタ)アクリル系樹脂層、ポリイミド系樹脂層、およびノルボルネン系樹脂層から選ばれる少なくとも1種から構成されてなる。 【0010】 好ましい実施形態においては、上記透明保護層(B)がトリアセチルセルロースフィルムである。 【0011】 好ましい実施形態においては、上記表面保護フィルムが、曲げ弾性率が5000MPa以上のフィルムである。 【0012】 好ましい実施形態においては、上記表面保護フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである。 【0013】 好ましい実施形態においては、上記偏光子から見て上記表面保護フィルムと反対側の最外層に粘着剤層を有する。 【0014】 本発明の別の局面によれば、表面保護フィルム付液晶パネルが提供される。この表面保護フィルム付液晶パネルは、液晶セルの少なくとも一方の側に本発明の表面保護フィルム付偏光板を有する。 本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、本発明の偏光板を少なくとも1枚含む。」 (オ)「【0102】 〔実施例1〕 製造例1で得られた偏光子の一方の面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカ製、商品名:KC4UYW、厚み40μm)を、もう一方の面に、特開2006-171464号公報に記載のラクトン環含有アクリル系樹脂フィルム(厚み40μm)を、ラミネートロールを用いて貼り合わせて、積層体(1-1)を得た。このとき、貼り合わせ面に、製造例3で得られた接着剤水溶液(A)を塗工し、貼り合わせ後に乾燥した。 得られた積層体(1-1)のラクトン環含有アクリル系樹脂フィルム面に放電量70w・min/m^(2)にてコロナ処理を施し、製造例2で得られた粘着剤層を積層して、積層体(1-2)を得た。 さらに、上記で得られた積層体(1-2)のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム面に、曲げ弾性率が8000MPaの粘着剤層付ポリエチレンテレフタレート系フィルム(日東電工製、PPF-100T)を積層して、偏光板(1)を得た。 偏光板(1)についての評価結果を表1に示す。 【0103】 〔比較例1〕 粘着剤層付ポリエチレンテレフタレート系フィルム(日東電工製、PPF-100T)を積層しなかった以外は実施例1と同様に行い、偏光板(C1)を得た。 偏光板(C1)についての評価結果を表1に示す。実施例1の結果と比較すると、カール量が大きく、パネル貼り合わせの評価が悪いことが判る。 【0104】 〔実施例2〕 ラクトン環含有アクリル系樹脂フィルムに代えて、ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製、商品名:ゼオノア)の二軸延伸フィルム(厚み:40μm、面内位相差Re=55nm、厚み方向位相差Rth=151nm、Nz係数=2.2)を用い、接着剤水溶液(A)の代わりに製造例4で得られた接着剤水溶液(B)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、偏光板(2)を得た。 偏光板(2)についての評価結果を表1に示す。 【0105】 〔比較例2〕 粘着剤層付ポリエチレンテレフタレート系フィルム(日東電工製、PPF-100T)を積層しなかった以外は実施例2と同様に行い、偏光板(C2)を得た。 偏光板(C2)についての評価結果を表1に示す。実施例2の結果と比較すると、カール量が大きく、パネル貼り合わせの評価が悪いことが判る。 【0106】 【表1】 」 (カ)上記(ア)ないし(オ)からみて、引用例6には、以下の事項が記載されているものと認められる。 「偏光子の一方の面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを、もう一方の面に、ノルボルネン系樹脂の二軸延伸フィルムを、ラミネートロールを用いて貼り合わせて、積層体を得たこと。」(以下「引用例6の記載事項」という。) エ 引用例7 特許異議申立人が提出した甲第7号証であり、本件特許の出願前に頒布され、上記取消理由通知で引用例7として引用された刊行物である実願昭61-47028号(実開昭62-158423号)のマイクロフィルム(以下同じく「引用例7」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「2.実用新案登録請求の範囲 1 .偏光フィルムの両面に保護層を設けてなる偏光板において、保護層の少なくとも1層を偏光フィルムよりも大判とし、これを用いて液晶表示素子を形成した場合に、その液晶表示部分の端部における曲げ応力の集中を緩和する余白部を設けたことを特徴とする偏光板。」(1頁3行ないし9行) (イ)「第1C図は本考案の他の実施例を示したものである。この偏光板P2は、片面における保護層1のみが偏光フィルム2よりも大判とされたものである。」(4頁1行ないし4行) (ウ)「 考案の効果 本考案によれば、偏光フィルムより大判の保護層を設けて余白部を有する偏光板としたので、液晶表示部分よりも保護層の一部がはみだした液晶表示素子を構成することが可能となる。その結果、液晶表示素子とこれに連携する回路との接続を容易かつ確実に行うことが可能となる。」(7頁4行ないし10行) (エ)「 」 (オ)上記(ア)ないし(エ)に記載された事項を以下「引用例7の記載事項」という。 オ 引用例8 特許異議申立人が提出した甲第8号証であり、本件特許の出願前に頒布され、上記取消理由通知で引用例8として引用された刊行物である特開2002-174729号公報(以下同じく「引用例8」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】一軸延伸され、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの一方の面に、非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる保護フィルムが貼合されており、他方の面には、上記非晶性ポリオレフィン系樹脂とは異なる樹脂からなる保護フィルムが貼合されていることを特徴とする偏光板。 【請求項2】非晶性ポリオレフィン系樹脂とは異なる樹脂からなる保護フィルムの単位幅あたりの弾性率が、非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる保護フィルムの単位幅あたりの弾性率よりも大きい請求項1に記載の偏光板。 【請求項3】非晶性ポリオレフィン系樹脂とは異なる樹脂が、セルロースアセテート系樹脂である請求項1又は2に記載の偏光板。 【請求項4】非晶性ポリオレフィン系樹脂が、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂である請求項1?3のいずれかに記載の偏光板。 【請求項5】請求項1?4のいずれかに記載の偏光板の非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる保護フィルム側に粘着剤層が設けられていることを特徴とする粘着剤付き偏光板。 【請求項6】請求項1?5のいずれかに記載の偏光板の、非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる保護フィルムが液晶セル側となるように配置することを特徴とする、該偏光板の液晶表示装置への使用。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、偏光フィルムの両面に保護フィルムが貼合された偏光板、さらに粘着剤層が設けられた粘着剤付き偏光板、及びそれらの液晶表示装置への使用に関するものである。」 (ウ)「【0022】 【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、偏光板の単体透過率及び偏光度は、以下の方法で測定した。 ・・・略・・・ 【0028】実施例1 厚み75μm 、重合度2,400、ケン化度99.9%以上のポリビニルアルコールフィルムを、乾式で延伸倍率5倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、水100重量部あたりヨウ素を0.03重量部及びヨウ化カリウムを5重量部それぞれ含有する28℃の水溶液に60秒間浸漬した。次いで、緊張状態を保ったまま、水100重量部あたりホウ酸を8.0重量部及びヨウ化カリウムを6.8重量部それぞれ含有する温度71℃のホウ酸水溶液に300秒間浸漬した。その後、28℃の純水で10秒間水洗した。水洗後のフィルムを50℃で600秒間乾燥して、偏光フィルムを得た。 【0029】この偏光フィルムの片面には、表面にケン化処理を施した厚み80μm のトリアセチルセルロースフィルムを、もう一方の面には、厚み51μm の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを、それぞれ接着剤を介して貼合し、偏光板とした。トリアセチルセルロースフィルムの単位幅あたりの引張弾性率は、24kgf/mmであった。一方、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの単位幅あたりの引張弾性率は、12kgf/mmであった。 【0030】この偏光板の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム側にアクリル系粘着剤を塗布して、粘着剤付き偏光板とした。そして、その吸収軸が長辺に対して45度となるよう、250mm×180mmの長方形に偏光板を切り取った。この偏光板2枚を透明なガラス板の両面にそれぞれクロスニコルとなるように、かつ粘着剤層がガラス面側となるように貼合した。この両面偏光板貼合ガラス板につき、一方の面からの光を他方の面で目視観察した。ガラス板の両面に偏光板を貼合した部分は均一に黒く見え、光漏れは観察されなかった。この偏光板が貼合されたガラス板を80℃の乾熱条件下で500時間放置した後、目視で観察したところ、偏光板各辺の中心付近における光漏れ(白ヌケ)は比較的小さかった。 【0031】次に、上述の方法で得た粘着剤付き偏光板を、その粘着剤層がガラス面側となるようにガラス板の片面に貼合し、単体透過率と偏光度を測定した。その後、温度60℃、相対湿度90%の湿熱雰囲気下で500時間放置し、単体透過率と偏光度を測定した。そして、単体透過率と偏光度の変化を次式により算出し、結果を表1に示した。 【0032】単体透過率変化=〔試験後の単体透過率(%)〕-〔試験前の単体透過率(%)〕 偏光度変化=〔試験後の偏光度(%)〕-〔試験前の偏光度(%)〕 ・・・略・・・ 【0035】比較例3 偏光フィルムの両面にトリアセチルセルロースフィルムを貼合して偏光板とした以外は、実施例1と同様の評価を行った。このとき、粘着剤はトリアセチルセルロースフィルムの任意の1面にだけ塗布した。この粘着剤付き偏光板をガラス板の両面に貼合し、目視観察したところ、ガラス板の両面に偏光板を貼合した部分は均一に黒く見え、光漏れは観察されなかった。この偏光板が貼合されたガラス板を80℃の乾熱条件下で500時間放置した後、目視で観察したところ、偏光板各辺の中心付近における光漏れ(白ヌケ)は実施例1のサンプルよりも大きく、また比較例2のサンプルよりも大きくなっていた。さらに、ここで作製した粘着剤付き偏光板をガラス板の片面に貼合し、実施例1と同様の方法で湿熱試験前後の単体透過率と偏光度の変化を調べ、その結果を表1に示した。 【0036】 【表1】 」 (エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、引用例8には、以下の事項が記載されているものと認められる。 「偏光フィルムの片面には、表面にケン化処理を施した厚み80μm のトリアセチルセルロースフィルムを、もう一方の面には、厚み51μm の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを、それぞれ接着剤を介して貼合した、偏光板。」(以下「引用例8の記載事項」という。) カ 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「偏光フィルム」、「接着剤」、「偏光板」及び「偏光板の製造方法」は、それぞれ本件発明1の「偏光子」、「接着剤」、「偏光板」及び「偏光板の製造方法」に相当する。また、引用発明の「偏光フィルム」の両面に接着剤を用いて貼り付けられた両「トリアセチルセルロース(TAC)フィルム」は、それぞれ本件発明1の「第1の透明保護フィルム」、「第2の透明保護フィルム」に相当する。 (イ)引用発明は、まず、厚さ80μm、幅方向長さ2700mmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを用いて偏光フィルムを得て、該偏光フィルムの幅方向両端辺を切除し、得られた偏光フィルムの両面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼り合わせて、偏光板を製造しているものであるが、偏光フィルム又は偏光板を長さ方向に切除する工程を有しないことから、引用発明の「偏光板の製造方法」により製造される偏光板は長尺であることが明らかである。そうすると、引用発明は、本件発明1の「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法」との構成を備える。 (ウ)引用発明において、「偏光フィルム」(偏光子)が幅方向長さ1260mmであり、両「トリアセチルセルロース(TAC)フィルム」(第1の透明保護フィルム又は第2の透明保護フィルム)が幅方向長さ1330mmであるから、引用発明は、本件発明の「偏光子の幅は、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムの幅以下である」との構成を備える。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、本件発明1と引用発明とは、 「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法であって、 偏光子の幅は、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムの幅以下である、 偏光板の製造方法。」である点(以下「一致点」という。)で一致し、次の点で相違する。 ・相違点1 偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法において、 本件発明1では、「偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光子の吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除する場合を除く」ものであるのに対し、 引用発明では、偏光フィルム(偏光子)の両面に、幅方向長さ1330mmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製:TDY80UL)を、完全ケン化ポリビニルアルコール5%水溶液を主成分とする接着剤を用いて貼り合わせる前に、偏光フィルム(偏光子)の幅方向両端辺を、それぞれ端辺から40mmずつ切除している点。 ・相違点2 本件発明1では、「第1の透明保護フィルムは環状オレフィン系樹脂フィルム、第2の透明保護フィルムはトリアセチルセルロースフィルムであり、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムは、第1の透明保護フィルムの寸法変化率(%)をL1、第2の透明保護フィルムの寸法変化率をL2(%)としたときに、寸法変化率の差(L1-L2)の絶対値が0.10以上を満足し」ているのに対し、 引用発明では、偏光フィルム(偏光子)の両面に貼り合わされた保護フィルムがいずれもトリアセチルセルロース(TAC)フィルムであり、前記寸法変化率の差の絶対値が0である蓋然性が高く、0.10以上を満足しているとはいえない点。 ・相違点3 本件発明1では、「偏光子の幅方向において、偏光子の両側の端部から外側に向けて、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、偏光子を介することなく、接着剤により貼り合わされている幅w(mm)が、10≦w≦60、を満足し、第1の透明保護フィルムの幅(mm)および第2の透明保護フィルムの幅(mm)が、偏光子の幅(mm)に接着剤(a3)の幅wを加えた長さよりも長くなっている」のに対し、 引用発明では、偏光フィルム(偏光子)の両面に貼り合わされたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルム)が、偏光フィルム(偏光子)を介することなく、接着剤により貼り合わされている幅w(mm)が明らかでなく、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの幅が偏光フィルムの幅に接着剤の幅を加えた長さよりも長くなっているかどうかが明らかでない点。 ・相違点4 本件発明1では、「偏光子の両面に第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムを同時に貼り合わせる」のに対し、 引用発明では、偏光フィルム(偏光子)の両面にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルム)を同時に貼り合わせるのかどうかが明らかでない点。 キ 本件発明1についての判断 上記相違点1について検討する。 (ア)引用例3の【0005】及び【0006】(上記(2)ア(エ))には、課題を解決するための手段として、「偏光フィルムに保護フィルムを貼り合わせた偏光板では、その吸収軸方向、すなわち、偏光フィルムの製造工程における一軸延伸方向と略平行な端辺付近にスジ状のムラ等の不具合が発生しやすいことが分かった。そして、前記のような端辺に生じるスジ状ムラ等により光学特性における不具合が生じること、またこれは偏光フィルムを製造する際の一軸延伸により生じる幅方向端辺と中央部分の厚みの差に起因するものであることを見出し、さらにこのような偏光フィルムに保護フィルムを貼り合わせると不具合部分がより広がることを見出し」、「保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光フィルムの吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除すること」したものであることが記載されている。そして、請求項1には、当該事項が発明特定事項として記載されている。 (イ)上記(ア)からみて、引用発明において、偏光フィルム(偏光子)の両面に、幅方向長さ1330mmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製:TDY80UL)を、完全ケン化ポリビニルアルコール5%水溶液を主成分とする接着剤を用いて貼り合わせる前に、偏光フィルム(偏光子)の幅方向両端辺を、それぞれ端辺から40mmずつ切除することは必須の事項であると理解できる。 (ウ)そうすると、引用発明において、引用例3に比較例1ないし3として挙げられているように、上記相違点1に係る本件発明1の構成を採用することには阻害要因があるというべきである。 (エ)よって、引用発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たものではない。 (オ)以上のとおりであるから、相違点2ないし4の容易想到性について検討するまでもなく、本件発明1は、引用例3に記載された発明、引用例6、8の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 ク 本件発明2について 上記キのとおり、本件発明1が、引用例3に記載された発明、引用例6、8の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件発明2も同様に、引用例3に記載された発明、引用例6、8の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について (1)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について ア 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前発明1又は2では、透明保護フィルムを貼り合わせている部分の接着剤が、偏光子を介さないことの特定はされていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっており、特許法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)を満たさないと主張しているが、本件訂正により、「偏光子の両側の端部から外側に向けて、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、偏光子を介することなく、接着剤により貼り合わされている」と訂正されたものであるから、かかる主張は理由がない。 イ 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前発明1又は2が解決しようとする課題は、透明保護フィルムが偏光子の端部から外側に向けて75mm超の幅で存在する場合にのみ生じる課題であると理解できるところ、第1の透明保護フィルムの幅および第2の透明保護フィルムの幅が、偏光子の幅に接着剤の幅wを加えた長さと同じ場合、透明保護フィルムが偏光子の端部から外側に向けた幅は、接着剤の幅wの上限60mmを超えることができないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっており、特許法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)を満たさないと主張している。しかしながら、本件訂正により、「第1の透明保護フィルムの幅(mm)および第2の透明保護フィルムの幅(mm)が、偏光子の幅(mm)に接着剤(a3)の幅wを加えた長さよりも長くなっており、」と訂正されたものであるとともに、透明保護フィルムが偏光子の端部から外側に向けた幅が75mm超で存在する場合にのみ生じる課題であるとも認められないから、かかる主張は理由がない。 (2)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について ア 上記(1)アのとおり、本件訂正により、透明保護フィルムを貼り合わせている部分の接着剤が、偏光子を介さないことの特定がなされ、端部のカールが発生し得ない態様を含まないとなったから、本件特許の明細書の記載を参酌すれば、課題を解決するように本件発明を実施することができるものである。 イ 上記1(1)のように、「寸法変化率」を一義的に特定することができると解されるから、本件特許の明細書の記載を参酌すれば、「寸法変化率の差(L1-L2)の絶対値が0.10以上を満足し」を満たす発明を実施できるものである。 (3)引用例1に記載された発明に基づく進歩性欠如について ア 引用例1には、その請求項1の記載からみて、以下の発明が記載されている。 「偏光板の製造方法において、 偏光子の両面に貼りあわせる2枚の透明保護フィルムのうち、1枚の透明保護フィルムを偏光子と貼りあわせた後に、残りの片面にもう1枚の透明保護フィルムを貼りあわせる、 偏光板の製造方法。」(以下「引用例1発明」という。) イ 引用例1発明は、引用例1の【0002】ないし【0005】に記載されているように、偏光板の製造方法におけるカールの問題点を解決するために、偏光子の両面に、透明保護フィルムを順次貼り合わせることにより、前記問題点を解決したものである。 そうすると、引用例1発明において、本件発明1の「偏光子の両面に第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムを同時に貼り合わせる」という構成を採用し得ないから、引用例1は、主引用例になり得ないものである。 してみると、引用例1発明において、本件発明1及び2の構成となすことは当業者が容易になし得たものではない。 (4)引用例4に記載された発明に基づく進歩性欠如について ア 引用例4には、その【0050】、【0051】、【0058】、【0066】、【0070】、【0074】、図1、図2及び図5の記載からみて、以下の発明が記載されている。 「偏光子の両面に、幅方向に余長部を有し、偏光子の幅より大きい保護フィルムを接着液を用いて貼合する偏光板の製造方法であって、 偏光子の両側に保護フィルムをそれぞれ配し、該偏光子を保護フィルムで挟み込んだ状態にし、保護フィルムの両端側に向かって流れようとする余分な接着液を、余長部の範囲内で堰き止める、 偏光板の製造方法。」(以下「引用例4発明」という。) イ 本件発明1と引用例4発明とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 ・相違点5 本件発明1では、「第1の透明保護フィルムは環状オレフィン系樹脂フィルム、第2の透明保護フィルムはトリアセチルセルロースフィルムであり、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムは、第1の透明保護フィルムの寸法変化率(%)をL1、第2の透明保護フィルムの寸法変化率をL2(%)としたときに、寸法変化率の差(L1-L2)の絶対値が0.10以上を満足」するのに対し、 引用例4発明では、そのような構成を有していない点。 ・相違点6 本件発明1では、「偏光子の幅方向において、偏光子の両側の端部から外側に向けて、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、偏光子を介することなく、接着剤により貼り合わされている幅w(mm)が、10≦w≦60、を満足し、第1の透明保護フィルムの幅(mm)および第2の透明保護フィルムの幅(mm)が、偏光子の幅(mm)に接着剤(a3)の幅wを加えた長さよりも長くなって」いるのに対し、 引用例4発明では、そのような構成を有していない点。 ウ 相違点5について (ア)引用例4には、その【0070】に、保護フィルムを形成する材料として、トリアセチルセルロースやポリオレフィン系ポリマーの例示がなされ、【0074】に、偏光子の両面に設ける保護フィルムは、異なるポリマー材料を用いてもよいことが記載されている。 (イ)引用例8の記載事項(上記1(2)オ(エ))は、偏光フィルムの片面には、表面にケン化処理を施した厚み80μm のトリアセチルセルロースフィルムを、もう一方の面には、厚み51μm の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを、それぞれ接着剤を介して貼合したものである。しかしながら、引用例4には、何を目的として、偏光子の両面に設ける保護フィルムに異なるポリマー材料を用いるのか明示されていないため、引用例8の記載事項のように、トリアセチルセルロースフィルム及び熱可塑性ノルボルネン系樹脂フィルムの組み合わせを選択する動機はない。そして、本件発明は、偏光子の両面に配される透明保護フィルムの寸法変化率の絶対値が所定値以上であるという、カールの発生を前提とするものであり、このことを考慮すれば、引用例8の記載事項に基づいても、当業者は、引用例4発明において、あえてカールが発生しやすい選択をしようとしないものである。 (ウ)以上のとおりであるから、相違点6の容易想到性について検討するまでもなく、本件発明1は、引用例4に記載された発明及び引用例8の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 エ してみると、引用例4発明において、本件発明1及び2の構成となすことは当業者が容易になし得たものではない。 (5)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立理由によって請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせて長尺の偏光板を製造する方法(但し、偏光子の一方の面に接着剤を介して第1の透明保護フィルムを、他方の面に接着剤を介して第2の透明保護フィルムを貼り合わせる前に、偏光子の吸収軸方向と略平行な端辺の少なくとも片端辺を切除する場合を除く。)であって、 第1の透明保護フィルムは環状オレフィン系樹脂フィルム、第2の透明保護フィルムはトリアセチルセルロースフィルムであり、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムは、第1の透明保護フィルムの寸法変化率(%)をL1、第2の透明保護フィルムの寸法変化率をL2(%)としたときに、寸法変化率の差(L1-L2)の絶対値が0.10以上を満足し、 かつ、偏光子の幅は、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムの幅以下であって、偏光子の幅方向において、偏光子の両側の端部から外側に向けて、第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムが、偏光子を介することなく、接着剤により貼り合わされている幅w(mm)が、10≦w≦60、を満足し、第1の透明保護フィルムの幅(mm)および第2の透明保護フィルムの幅(mm)が、偏光子の幅(mm)に接着剤(a3)の幅wを加えた長さよりも長くなっており、 偏光子の両面に第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムを同時に貼り合わせることを特徴とする偏光板の製造方法。 【請求項2】 第1の透明保護フィルムの幅と第2の透明保護フィルムの幅が異なることを特徴とする請求項1記載の偏光板の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-04-25 |
出願番号 | 特願2012-50551(P2012-50551) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B) P 1 651・ 536- YAA (G02B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 早川 貴之、渡▲辺▼ 純也、廣田 健介 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 河原 正 |
登録日 | 2016-11-25 |
登録番号 | 特許第6045161号(P6045161) |
権利者 | 日東電工株式会社 |
発明の名称 | 偏光板の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人ユニアス国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |