ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23D 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23D 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23D |
---|---|
管理番号 | 1341941 |
異議申立番号 | 異議2017-700885 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-09-19 |
確定日 | 2018-05-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6101412号発明「油性食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6101412号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6101412号の請求項1?3、5?8に係る特許を維持する。 特許第6101412号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6101412号の請求項1?8に係る特許についての出願は、2016年9月21日(優先権主張 2015年9月29日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年9月19日に特許異議申立人村瀬典子により特許異議の申立てがなされ、当審において平成29年11月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月29日に訂正の請求及び意見書の提出がされ、その後、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、特許異議申立人に当該訂正の請求に対して意見書を提出する機会を与えたが、意見書が提出されなかったものである。 第2 訂正の請求についての判断 1.訂正の内容 平成30年1月29日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6101412号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?8について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1に「LOLの含有量に対するL2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)の質量比((L2M+LM2)/LOL)が、0.7?5であり、」とあるのを、「LOLの含有量に対するL2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)の質量比((L2M+LM2)/LOL)が、0.7?3であり、」と訂正する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4の何れか1項」とあるのを、「請求項1?3の何れか1項」と訂正する。 (訂正事項4) 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5の何れか1項」とあるのを、「請求項1?3、および、5の何れか1項」と訂正する。 2.訂正の適否 (訂正事項1について) ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、油脂中のLOLの含有量に対するL2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)の質量比((L2M+LM2)/LOL)について、「0.7?3」にその範囲を狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0015】の「本発明の油性食品中の油脂は、上記LOLの含有量に対する上記L2Mと上記LM2の合計含有量(L2M+LM2)の質量比((L2M+LM2)/LOL)が、0.7?5である。(L2M+LM2)/LOLは、好ましくは0.8?3であり、より好ましくは0.8?1.5であり、さらに好ましくは0.9?1.2である。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (訂正事項2について) ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (訂正事項3及び4について) ア 訂正の目的 上記訂正事項3及び4は、上記訂正事項2の請求項4の削除に伴い、訂正前の請求項5及び6において、請求項4を引用するものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項3及び4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項3及び4は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?8〕についての訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?8に係る発明(以下「本件発明1?8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 油脂中に、LOL、L2MおよびLM2を含み、LOLの含有量に対するL2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)の質量比((L2M+LM2)/LOL)が、0.7?3であり、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、0.3?3である、油性食品。 ただし、L、O、M、LOL、L2M、LM2は、以下を意味する。 L:炭素数16?24の飽和脂肪酸 O:オレイン酸 M:炭素数6?10の脂肪酸 LOL:グリセロールの、1位および3位にL、2位にOが結合したトリアシルグリセロール L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール 【請求項2】 前記L2Mおよび前記LM2を構成するMの全量に占める、カプリン酸の含有量が20質量%以上である、請求項1に記載の油性食品。 【請求項3】 前記油脂中の、前記、LOL、L2MおよびLM2の合計含有量(LOL+L2M+LM2)が、10?100質量%である、請求項1または2に記載の油性食品。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記油脂中の、ココアバターの含有量が50質量%以下である、請求項1?3の何れか1項に記載の油性食品。 【請求項6】 前記油性食品がチョコレートである、請求項1?3、および、5の何れか1項に記載の油性食品。 【請求項7】 油脂中に、ノンテンパー型チョコレートに使用されるハードバターを、5?75質量%含む、請求項6に記載の油性食品。 【請求項8】 油脂中に、ラウリン系油脂および/または液体油を、5?80質量%含む、請求項6に記載の油性食品。」 第4 当審の判断 1.取消理由の概要 平成29年11月27日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。 なお、当該取消理由通知は、特許異議申立書に記載された全ての特許異議の申立ての理由を含んでいる。 (1)特許法第29条第1項第3号及び第2項について 本件発明1?3、5?8は、甲第1号証に記載された発明であるか、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)特許法第36条第4項第1号について 本件特許明細書は、本件発明4の油脂結晶の長面間隔について、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、請求項4及び請求項4を引用する請求項5?8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 甲第1号証:特開2015-82999号公報 甲第2号証:藤田哲、食用油脂-その利用と油脂食品、株式会社 幸書房、2000年4月5日、p.109-112、155-158 甲第3号証:加藤秋男、パーム油・パーム核油の利用、株式会社 幸書房、1990年7月31日、p.76-77 2.取消理由についての判断 (1)本件発明1に係る新規性及び進歩性について ア 甲1発明 引用例1の実施例2(【0033】?【0039】)には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「エステル交換油脂2(構成脂肪酸中の、炭素数6?10の脂肪酸の含有量37.1%、炭素数6の構成脂肪酸の含有量0%、炭素数10の構成脂肪酸の含有量26.0%、パルミチン酸の含有量53.2%、ステアリン酸の含有量2.7%):34.0%、ココアバター:4.0%、ココアパウダー:18.18%、粉糖(砂糖):43.27%、レシチン:0.5%及び香料:0.05%を原材料とするチョコレート。」 イ 対比 甲1発明のエステル交換油脂2は、甲第1号証の【0033】の記載によると、ランダムエステル交換により作成されたものであるから、ランダムエステル交換後の結合脂肪酸の分布が確率的な分布に変化し、そのトリグリセリド組成が計算できることから、エステル交換油脂2中のL2M、LM2が算出できる。そして、甲2号証(p111 表13.2)によると、ココアバター中のLOL含有量は83質量%であり、甲第1号証(【0023】)によると、ココアパウダーには11質量%の油脂(ココアバター)が含まれている。これらを考慮して、甲1発明のチョコレート中のL2M、LM2及びLOLの含有量を算出することができ、その結果、(L2M+LM2)/LOLが5.1、L2M/LM2が1.1と算出できる。 そうすると、本件発明1と甲1発明とを対比するに、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「油脂中に、LOL、L2MおよびLM2を含み、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、0.3?3である、油性食品。 ただし、L、O、M、LOL、L2M、LM2は、以下を意味する。 L:炭素数16?24の飽和脂肪酸 O:オレイン酸 M:炭素数6?10の脂肪酸 LOL:グリセロールの、1位および3位にL、2位にOが結合したトリアシルグリセロール L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール」 <相違点1> LOLの含有量に対するL2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)の質量比((L2M+LM2)/LOL)が、本件発明1では、「0.7?3」であるのに対して、甲1発明では、5.1である点。 ウ 当審の判断 上記相違点は、実質的な相違点であるから、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。 また、甲1発明において、(L2M+LM2)/LOLを調整する動機付けは、存在しないから、甲1発明において、(L2M+LM2)/LOLを0.7?3とすることを当業者が容易になし得たとはいえない。 したがって、本件発明1が、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 特許異議申立人の主張について、 特許異議申立人は、甲1発明において、エステル交換油脂2に換えて、エステル交換油脂1、3又は4を用いることが容易である旨主張するが、仮に、エステル交換油脂2に換えて、エステル交換油脂1、3又は4を用いたとしても、(L2M+LM2)/LOLは0.7?3の範囲とならないから、当該主張は採用できない。 特許異議申立人は、甲第1号証の「比較例1」に記載のチョコレートにおいて、ココアバター以外の油脂をエステル交換油脂1?4に換えることが容易である旨主張するが、チョコレートにおいて、油脂としてエステル交換油脂を採用するならば、ココアバターを含めてエステル交換油脂に換えると考えることが自然であり、ココアバターを除いた油脂のみをエステル交換油脂とする動機付けはないから、当該主張は採用できない。 (2)本件発明2、3、5?8の新規性及び進歩性について 本件発明2、3、5?8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付した発明であるから、少なくとも、上記(1)ウと同じ理由で、本件発明2、3、5?8は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、取消理由に記載した取消理由によっては、請求項1?3、5?8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?3、5?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項4に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項4に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 油脂中に、LOL、L2MおよびLM2を含み、LOLの含有量に対するL2MとLM2の合計含有量(L2M+LM2)の質量比((L2M+LM2)/LOL)が、0.7?3であり、LM2の含有量に対するL2Mの含有量の質量比(L2M/LM2)が、0.3?3である、油性食品。 ただし、L、O、M、LOL、L2M、LM2は、以下を意味する。 L:炭素数16?24の飽和脂肪酸 O:オレイン酸 M:炭素数6?10の脂肪酸 LOL:グリセロールの、1位および3位にL、2位にOが結合したトリアシルグリセロール L2M:グリセロール1分子に2分子のLと1分子のMが結合したトリアシルグリセロール LM2:グリセロール1分子に1分子のLと2分子のMが結合したトリアシルグリセロール 【請求項2】 前記L2Mおよび前記LM2を構成するMの全量に占める、カプリン酸の含有量が20質量%以上である、請求項1に記載の油性食品。 【請求項3】 前記油脂中の、前記、LOL、L2MおよびLM2の合計含有量(LOL+L2M+LM2)が、10?100質量%である、請求項1または2に記載の油性食品。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記油脂中の、ココアバターの含有量が50質量%以下である、請求項1?3の何れか1項に記載の油性食品。 【請求項6】 前記油性食品がチョコレートである、請求項1?3、および、5の何れか1項に記載の油性食品。 【請求項7】 油脂中に、ノンテンパー型チョコレートに使用されるハードバターを、5?75質量%含む、請求項6に記載の油性食品。 【請求項8】 油脂中に、ラウリン系油脂および/または液体油を、5?80質量%含む、請求項6に記載の油性食品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-05-07 |
出願番号 | 特願2017-503640(P2017-503640) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(A23D)
P 1 651・ 121- YAA (A23D) P 1 651・ 536- YAA (A23D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 千葉 直紀 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 藤原 直欣 |
登録日 | 2017-03-03 |
登録番号 | 特許第6101412号(P6101412) |
権利者 | 日清オイリオグループ株式会社 |
発明の名称 | 油性食品 |
代理人 | 引地 進 |
代理人 | 引地 進 |