• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B22F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B22F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B22F
管理番号 1341948
異議申立番号 異議2017-700495  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-18 
確定日 2018-05-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6030186号発明「銅合金粉末、積層造形物の製造方法および積層造形物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6030186号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3?5〕、2、6、7、8について訂正することを認める。 特許第6030186号の請求項1、3?6、8に係る特許を維持する。 特許第6030186号の請求項2、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6030186号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成27年5月13日の出願であって、平成28年10月28日に特許権の設定登録がされ、同年11月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成29年5月18日に特許異議申立人 竹内裕〔申立番号01〕(以下、「申立人1」という。)より特許異議の申立てがなされ、同年5月24日に特許異議申立人 稲垣仁美〔申立番号02〕(以下、「申立人2」という。)より特許異議の申立てがなされ、当審において同年7月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月28日に意見書の提出及び訂正請求があり、その訂正請求に対して、同年11月13日に申立人1から意見書(以下、「意見書1-1」という。)が提出され、同年11月14日に申立人2から意見書(以下、「意見書2-1」という。)が提出され、さらに、当審において同年12月22日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年3月2日に意見書の提出及び訂正請求があり、その訂正請求に対して、同年4月5日に申立人2から意見書(意見書2-2」という。)が提出され、同年4月11日に申立人1から意見書(以下、「意見書1-2」という。)が提出されたものである。
なお、特許権者である株式会社ダイヘン及び地方独立行政法人大阪産業技術研究所をまとめて「特許権者ら」という。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年3月2日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項1?7のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。
(1) 訂正事項1
請求項1に「クロムおよび珪素の少なくともいずれかを0.10質量%以上1.00質量%以下含有し、前記クロムおよび前記珪素の合計量が1.00質量%以下であり、残部が銅からなる」とあるのを、「クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなり、ジルコニウムを含有しない」に訂正する(請求項1を引用する請求項4、5も同様に訂正する。)。

(2) 訂正事項2
請求項2を削除する。

(3) 訂正事項3
請求項3に「前記珪素を0.10質量%以上0.60質量%以下含有し、前記残部が前記銅からなる、請求項1に記載の銅合金粉末」とあるのを、「積層造形用の銅合金粉末であって、
珪素を0.21質量%以上0.55質量%以下含有し、残部が銅からなる、銅合金粉末」に訂正する(請求項3を引用する請求項4、5も同様に訂正する。)。

(4) 訂正事項4
請求項4に「請求項1?3のいずれか1項に記載の」とあるのを「請求項1または請求項3に記載の」に訂正する(請求項4を引用する請求項5も同様に訂正する。)。

(5) 訂正事項5
請求項6に「前記銅合金は、クロムおよび珪素の少なくともいずれかを0.10質量%以上1.00質量%以下含有し、前記クロムおよび前記珪素の合計量が1.00質量%以下であり、残部が銅からなり、
前記銅合金の理論密度に対する相対密度が96%以上100%以下であり」とあるのを、「前記銅合金は、クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなり、ジルコニウムを含有しないクロム含有銅合金であり、
前記クロム含有銅合金の理論密度に対する相対密度が96%以上100%以下であり」に訂正する。

(6) 訂正事項6
請求項7を削除する。

(7) 訂正事項7
請求項8に「前記銅合金は、前記珪素を0.10質量%以上0.60質量%以下含有し、前記残部が前記銅からなる珪素含有銅合金であり、
前記珪素含有銅合金の理論密度に対する相対密度が96%以上100%以下であり、
導電率が26%IACS以上である、請求項6に記載の積層造形物」とあるのを、「銅合金から構成される積層造形物であって、
前記銅合金は、珪素を0.21質量%以上0.55質量%以下含有し、残部が銅からなる珪素含有銅合金であり、
前記珪素含有銅合金の理論密度に対する相対密度が96%以上100%以下であり、
導電率が26%IACS以上である、積層造形物」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、銅合金粉末の組成を「クロムおよび珪素」から「クロム」のみに、及び、「クロム」の含有量を「0.51質量%超0.94質量%以下」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0058】の【表1】には、クロムを0.51質量%、酸素を0.04質量%含有し、残部が銅である金属粉末A2、及び、クロムを0.94質量%、酸素を0.05質量含有し、残部が銅である金属粉末A3が記載され、同【0027】には、「金属粉末は、Cu、Cr、Siの他に、不純物元素を含有することもある。・・・不純物元素としては、たとえば酸素(O)、リン(P)等が挙げられる。不純物元素の含有量は、たとえば0.10質量%未満でもよいし、0.05質量%未満でもよい。」と記載されているから、本件明細書には、クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなる銅合金粉末が記載されているといえる。
また、「ジルコニウムを含有しない」との訂正については、訂正前の請求項1に係る発明が、申立人2が提出した甲第1の1号証に記載された発明と重なる(以下の第5の1(2)の取消理由1-2参照。)ために、当該重なりのみを除くものであって、実質的に、いわゆる「除くクレーム」とする訂正であると認められるから、当該訂正は、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、新規事項の追加に該当しない。
以上のとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当しないものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3) 訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項3について、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しないものとするとともに、銅合金粉末における珪素の含有量を「0.1質量%以上0.60質量%以下」から「0.21質量%以上0.55質量%以下」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、珪素を含有する銅合金粉末について、本件明細書の【0058】の【表1】には、珪素を0.21質量%、酸素を0.01質量%、リンを0.01質量%含有し、残部が銅からなる金属粉末B1、珪素を0.55質量%、酸素を0.03質量%、リンを0.01質量%未満含有し、残部が銅からなる金属粉末B2が記載され、同【0027】には、「金属粉末は、Cu、Cr、Siの他に、不純物元素を含有することもある。・・・不純物元素としては、たとえば酸素(O)、リン(P)等が挙げられる。不純物元素の含有量は、たとえば0.10質量%未満でもよいし、0.05質量%未満でもよい。」と記載されているから、本件明細書には、珪素を0.21質量%以上0.55質量%以下含有し、残部が銅からなる、銅合金粉末が記載されているといえる。
したがって、訂正事項3による訂正は、新規事項の追加に該当しない。
以上のとおり、訂正事項3による訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当しないものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4) 訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正事項2に伴い、引用請求項から請求項2を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5) 訂正事項5
訂正事項5による訂正は、銅合金粉末の組成を「クロムおよび珪素」から「クロム」のみに、及び、「クロム」の含有量を「0.51質量%超0.94質量%以下」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件明細書の【0058】の【表1】には、クロムを0.51質量%、酸素を0.04質量%含有し、残部が銅である金属粉末A2、及び、クロムを0.94質量%、酸素を0.05質量含有し、残部が銅である金属粉末A3が記載され、同【0027】には、「金属粉末は、Cu、Cr、Siの他に、不純物元素を含有することもある。・・・不純物元素としては、たとえば酸素(O)、リン(P)等が挙げられる。不純物元素の含有量は、たとえば0.10質量%未満でもよいし、0.05質量%未満でもよい。」と記載されているから、本件明細書には、クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなるクロム含有銅合金粉末が記載されているといえる。
また、同【0076】の【表6】には、金属粉末A2を用いて製造した積層構造物が記載されており、同【0079】の【表7】には、金属粉末A3を用いて製造した積層構造物が記載されている。ここで、これら積層構造物を構成する銅合金は、金属粉末A2又はA3と同一の組成を有するものであることは自明の事項である。
そうすると、本件明細書には、クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなるクロム含有銅合金から構成される積層造形物が記載されているといえる。
さらに、「ジルコニウムを含有しない」との訂正については、訂正前の請求項1に係る発明が、申立人2が提出した甲第1の1号証に記載された発明と重なるために、当該重なりのみを除くものであって、いわゆる「除くクレーム」とする訂正であると認められるから、当該訂正は、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項5による訂正は、新規事項の追加に該当しない。
以上のとおり、訂正事項5による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当しないものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6) 訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7) 訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、請求項8について、請求項間の引用関係を解消して、請求項6の記載を引用しないものとするとともに、銅合金における珪素の含有量を「0.1質量%以上0.60質量%以下」から「0.21質量%以上0.55質量%以下」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、珪素を含有する銅合金粉末について、本件明細書の【0058】の【表1】には、珪素を0.21質量%、酸素を0.01質量%、リンを0.01質量%含有し、残部が銅からなる金属粉末B1、珪素を0.55質量%、酸素を0.03質量%、リンを0.01質量%未満含有し、残部が銅からなる金属粉末B2が記載され、同【0027】には、「金属粉末は、Cu、Cr、Siの他に、不純物元素を含有することもある。・・・不純物元素としては、たとえば酸素(O)、リン(P)等が挙げられる。不純物元素の含有量は、たとえば0.10質量%未満でもよいし、0.05質量%未満でもよい。」と記載されている。
さらに、同【0082】の【表8】には、金属粉末B1を用いて製造した積層構造物が記載されており、同【0085】の【表9】には、金属粉末B2を用いて製造した積層構造物が記載されている。ここで、これら積層構造物を構成する銅合金は、金属粉末B1又はB2と同一の組成を有するものであることは自明の事項である。
そうすると、本件明細書には、珪素を0.21質量%以上0.55質量%以下含有し、残部が銅からなる、珪素含有銅合金から構成される積層造形物が記載されているといえる。
したがって、訂正事項7による訂正は、新規事項の追加に該当しない。
以上のとおり、訂正事項7による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当しないものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8) 一群の請求項について
ア 訂正前の請求項2?5は、それぞれ請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1?5は、一群の請求項である。
そして、前記(2)における検討によれば、請求項2に係る訂正は認められるものであるところ、特許権者らから、訂正後の請求項2について訂正が認められるときは、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項2は、請求項1とは別の訂正単位とすることを認める。
なお、特許権者らから、訂正後の請求項3について訂正が認められるときは、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったが、訂正後の請求項4と請求項5は、いずれも請求項1又は3を引用しており、引用関係を解消する訂正がなされていないから、訂正後の請求項3は、請求項1とは別の訂正単位として扱うことはできない。

イ 訂正前の請求項7、8は、それぞれ請求項6を引用するものであるから、訂正前の請求項6?8は、一群の請求項である。
そして、前記(6)、(7)における検討によれば、請求項7、8に係る訂正は認められるものであるところ、特許権者らから、訂正後の請求項7、8について訂正が認められるときは、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項6、7、8について、それぞれ別の訂正単位とすることを認める。

(9) なお、本件においては、全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、3?5〕、2、6、7、8について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?8に係る発明(以下、「本件発明1?8」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
積層造形用の銅合金粉末であって、
クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなり、ジルコニウムを含有しない、銅合金粉末。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
積層造形用の銅合金粉末であって、
珪素を0.21質量%以上0.55質量%以下含有し、残部が銅からなる、銅合金粉末。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の銅合金粉末を含む粉末層を形成する第1工程と、
前記粉末層において、所定位置の前記銅合金粉末を固化させることにより、造形層を形成する第2工程と、を含み、
前記第1工程と前記第2工程とを順次繰り返し、前記造形層を積層することにより、積層造形物を製造する、積層造形物の製造方法。
【請求項5】
前記積層造形物を熱処理する熱処理工程をさらに含む、請求項4に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項6】
銅合金から構成される積層造形物であって、
前記銅合金は、クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなり、ジルコニウムを含有しないクロム含有銅合金であり、
前記クロム含有銅合金の理論密度に対する相対密度が96%以上100%以下であり、
導電率が26%IACS以上である、積層造形物。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
銅合金から構成される積層造形物であって、
前記銅合金は、珪素を0.21質量%以上0.55質量%以下含有し、残部が銅からなる珪素含有銅合金であり、
前記珪素含有銅合金の理論密度に対する相対密度が96%以上100%以下であり、
導電率が26%IACS以上である、積層造形物。」

第4 申立理由の概要
1 申立人1は、以下の申立理由1-1?1-3によって請求項1?8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
なお、申立人1による特許異議申立書を「申立書1」といい、申立人1が提出した「甲第1号証?甲第8号証」を、「甲1-1?甲1-8」という。

(1) 申立理由1-1:特許法第29条第1項第3号又は第2項(申立書1の15頁11行?17頁最下行、21頁5行?25頁5行)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、甲1-1又は甲1-2に記載された発明であるか、甲1-1又は甲1-2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するにもかかわらずなされたものであるか、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2) 申立理由1-2:特許法第29条第2項
(2a) 申立理由1-2a(申立書1の18頁1行?19頁8行、25頁6?13行)
本件特許の請求項4、5に係る発明は、甲1-1又は甲1-2に記載された発明と、周知技術、甲1-3に記載された事項、又は甲1-4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2b) 申立理由1-2b(申立書1の19頁9行?21頁3行、25頁14行?26頁下から6行)
本件特許の請求項6、7に係る発明は、甲1-1に記載された発明及び甲1-5?甲1-7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2c) 申立理由1-2c(申立書1の26頁下から5行?27頁3行)
本件特許の請求項8に係る発明は、甲1-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2d) 申立理由1-2d(申立書1の27頁4行?28頁13行)
本件特許の請求項6?8に係る発明は、甲1-1に記載された発明又は甲1-2に記載された発明と、甲1-3に記載された事項又は甲1-4に記載された事項、又は、甲1-1に記載された発明又は甲1-2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(3) 申立理由1-3(申立書1の28頁14行?29頁4行)
本件特許の請求項1?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、請求項1?8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

[証拠方法]
甲1-1:特公平5-20491号公報
甲1-2:国際公開2009/084645号
甲1-3:特開2002-249804号公報
甲1-4:特開平10-88201号公報
甲1-5:特開平5-217473号公報
甲1-6:特開昭60-50161号公報
甲1-7:特開平4-154018号公報
甲1-8:古河電工ホームページ 銅及び銅合金製品 製品種別 線、[online]、インターネット<https://www.furukawa.co.jp/copper/japanese/sort_string.htm>

2 申立人2は、以下の申立理由2-1?2-3によって請求項1?8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
なお、申立人2による特許異議申立書を「申立書2」といい、申立人2が提出した甲第1の1号証?甲第5号証を甲2-1の1?甲2-5という。

(1) 申立理由2-1:特許法第29条第1項
(1a) 申立理由2-1a(申立書2の12頁下から2行?17頁下から6行、27頁20行?29頁17行、33頁10行?34頁4行、36頁2行?下から5行、38頁6行?40頁6行、40頁下から3行?42頁18行)
本件特許の請求項1、2、4、6、7に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明であるから、請求項1、2、4、6、7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(1b) 申立理由2-1b(申立書2の12頁下から2行?17頁下から6行、27頁20行?29頁17行、33頁10行?34頁4行、36頁2行?下から5行、38頁6行?40頁6行、40頁下から3行?42頁18行)
甲2-1の1の研究成果に関する口頭発表がなされたため(甲2-1の3)、甲2-1の1に記載された発明は本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(以下、「公知発明」という。)となったものであるところ、本件特許の請求項1、2、4、6、7に係る発明は、公知発明であるから、請求項1、2、4、6、7に係る特許は、特許法第29条第1項第1号の規定に違反してなされたものである。

(1c) 申立理由2-1c(申立書2の17頁下から5行?25頁下から3行、29頁18行?32頁21行)
本件特許の請求項1に係る発明は、甲2-2、甲2-3又は甲2-4に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(1d) 申立理由2-1d(申立書2の34頁5?21行)
本件特許の請求項2に係る発明は、甲2-2に記載された発明であるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(1e) 申立理由2-1e(申立書2の35頁8?13行)
本件特許の請求項3に係る発明は、甲2-3に記載された発明であるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(2) 申立理由2-2(特許法第29条第2項)
(2a) 申立理由2-2a(申立書2の32頁22行?33頁8行)
本件特許の請求項1に係る発明は、甲2-2、甲2-3又は甲2-4に記載された発明、及び、甲2-1の1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2b) 申立理由2-2b(申立書2の34頁22行?35頁6行)
本件特許の請求項2に係る発明は、甲2-2に記載された発明及び甲2-1の1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2c) 申立理由2-2c(申立書2の35頁14行?最下行)
本件特許の請求項3に係る発明は、甲2-3に記載された発明及び甲2-1の1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2d) 申立理由2-2d(申立書2の25頁下から2行?27頁18行、36頁下から4行?38頁4行)
本件特許の請求項4、5に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明及び甲2-5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2e) 申立理由2-2e(申立書2の40頁7?23行)
本件特許の請求項6に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明及び甲2-4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2f) 申立理由2-2f(申立書2の50頁9?11行)
本件特許の請求項7に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2g) 申立理由2-2g(申立書2の42頁20行?44頁17行)
本件特許の請求項8に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明及び甲2-3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(3) 申立理由2-3(申立書2の44頁18行?48頁最下行)
本件特許の請求項1?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、請求項1?8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

[証拠方法]
甲2-1の1:D.Q.Zang, Z.H.Liu, C.K.Chua,「Investigation on forming process of copper alloys via Selective Laser Melting」, High Value Manufacturing, 2014年, ISBN978-1-138-00137-4
甲2-1の2:CRC Press社インターネット販売ページの出力物
甲2-1の3:「Advanced Reserch in Virtual and Rapid Prototyping」(2013年)のプログラム
甲2-2:特開平4-95318号公報
甲2-3:特開2010-13726号公報
甲2-4:特開2005-314806号公報
甲2-5:特開2014-129597号公報

第5 取消理由の概要
1 請求項1?8に係る特許に対して平成29年7月27日付けで特許権者らに通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1-1) 取消理由1-1
(1-1a) 取消理由1-1a(前記申立理由1-3を採用。)
本件特許の請求項1?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。その理由は、申立書1の28頁14行?29頁4行に記載のとおりである。
よって、請求項1?8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

(1-1b) 取消理由1-1b(前記申立理由2-3を採用。)
本件特許の請求項1?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。その理由は、申立書2の44頁18行?48頁最下行(ただし、45頁下から4行の「クロム含有量」は「珪素含有量」と読み替える。)に記載のとおりである。
よって、請求項1?8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

(2) 取消理由1-2(前記申立理由2-1aを採用。)
本件特許の請求項1、2、4、6、7に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明である。その理由は、申立書2の12頁下から2行?17頁下から6行、27頁20行?29頁17行、33頁10行?34頁4行、36頁2行?下から5行、38頁6行?40頁6行、40頁下から3行?42頁18行に記載のとおりである。
よって、請求項1、2、4、6、7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、取り消されるべきものである。

(3) 取消理由1-3(前記の申立理由2-2dを採用。)
本件特許の請求項4、5に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明及び甲2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。その理由は、申立書2の25頁下から2行?27頁18行、36頁下から4行?38頁4行に記載のとおりである。
よって、請求項4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。

2 平成29年9月28日の訂正請求により訂正された請求項2、7に係る特許に対して平成29年12月22日付けで特許権者らに通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1) 取消理由2-1
本件特許の請求項2、7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないし、また、明確でない。その理由は申立人2が提出した平成29年11月14日付け意見書9頁15行?10頁19行(ただし、10頁5行の「再現し」は、「再現性」と読み替える。)に記載のとおりである。
よって、請求項2、7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

第6 甲号証の記載
1 申立人1が提出した甲号証の記載
(1-1) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲1-1には、「銅-クロム系合金製品の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(1-1a) 「1 少なくともCrを0.1?1.5%含有し残部がCuよりなる組成の急冷合金粉末を、回転駆動されている駆動壁面と固定されている固定壁面との間に形成される管路内に連続的に供給し、
前記駆動壁面との摩擦力によつて前記管路内を移動する前記合金粉末を、前記管路の終端部に設けられた押出しダイスによつて連続的に棒状体または線状体として押出し、その後
前記棒状体または線状体を冷間加工することによつて耐軟化性に優れた製品を得る、銅-クロム系合金製品の製造方法。
2 前記合金粉末は、Ag,Sn,Al,Si,Mg,Zr,Feからなる群から選ばれた1または2以上の元素を合計で0?1%を含有している、特許請求の範囲第1項に記載の銅-クロム系合金製品の製造方法。」(1頁1欄2?17行)

(1-1b) 「この発明は、銅-クロム系合金からなり、かつ耐軟化性に優れた製品を得るための製造方法に関し、特に、たとえば抵抗溶接器に用いられる電極チツプを製造するための方法に関する。」(1頁2欄5?8行)

(1-1c) 「「少なくともCrを含有」するのは、Crが耐軟化性に対して良好な影響をもたらすからである。Cr含有量を「0.1?1.5%」としたのは、0.1%未満であるならば耐軟化性に対して効果がなく、1.5%を越えれば耐軟化性に対する効果が飽和するからである。「残部がCr(当審注:「Cu」の誤記である。)」であるのは、Cuが良好な導電性を有するからである。」(2頁3欄18?24行)

(1-1d) 「合金粉末は、好ましくは、Crに加えて、Ag,Sn,Al,Si,Mg,Zr,Feからなる群から選ばれた1または2以上の元素を合計で0?1%含有する。なぜなら、これらの元素の付加は、強度や耐軟化性等を向上させる効果があるからである。」(2頁3欄40?44行)

(1-2) 本件特許に係る出願の出願日前に公知となった甲1-2には、「導電性ペースト用銅粉及び導電性ペースト」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(1-2a) 「[0011] すなわち、本発明の導電性ペースト用銅粉は、粒子内部にSiを0.1atm%?10atm%含有することを特徴とする。」

(1-2b) 「[0017] 本発明の導電性ペースト用銅粉は粒度微細ながら耐酸化性に優れ、かつ導電性のバランスも取れている。さらには形状や粒度のバラツキが小さく、低含有酸素濃度であるので、スクリーン印刷アディティブ法による導体回路形成用や、積層セラミックコンデンサの外部電極用等の各種電気的接点部材用の導電性ペーストの導電材料等に極めて良好に適用することができる。」

(1-2c) 「[0026] また、本発明に係る導電性ペースト用銅粉は、Si/P(atm比)が好ましくは4?200、より好ましくは10?100である。P/Siの比がこのような範囲であると、粒度微細、耐酸化性、高導電性、形状や粒度のバラツキが小、低含有酸素濃度であるという特徴のバランスが取りやすい。」

(1-2d) 「[0033] また、本発明に係る導電性ペースト用銅粉は、さらにNi、Al、Ti、Fe、Co、Cr、Mg、Mn、Mo、W、Ta、In、Zr、Nb、B、Ge、Sn、Zn、Bi等のうちの少なくとも一種以上の元素成分を加えることにより、融点を低下させて焼結性を向上させること等をはじめとする、導電性ペーストに求められる諸特性向上効果を上げることができる。これら元素の銅に対する添加量は、添加する元素の種類に応じた導電特性やその他の各種特性等から適宜設定されるが、通常、0.001質量%?2質量%程度である。」

(1-2e) 「[0042] さらに、Si成分に加え、P成分が加わると、アトマイズ時の溶湯の表面張力を小さくすることができ、粒子形状の均整化や溶湯中の脱酸素化が有効に行えるものと推測される。P成分の添加は、Si成分と同様、溶融した銅にP成分を母合金、又は化合物の形態で、所定量添加すれば良い。」

(1-2f) 「[0061] [表2]



(1-3) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲1-3には、「立体物造形方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(1-3a) 「【0022】図2はその金属粉末1の拡大断面図である。金属粉末1は骨格金属2を有し、骨格金属2は、外径30?50μm程度の球形または方形であり、拡散(濃度差により物質が浸透する現象)性を有する低融点の金属、あるいは低融点の金属を含む合金(以下、被覆金属という)3で薄く被覆されている。被覆金属3は接合用であり、被覆厚さは、例えば5?10μm程度である。
【0023】被覆金属3としては、例えばSn、P、Zn、Si、B等が単体あるいは合金(例えば、CuNiSnP、NiSiB等)で使用され、融点が低い程レーザ焼結時の処理速度を早くすることができるが、200?1000℃が実用レベルの融点となる。
【0024】骨格金属2としては、Cu、Ni、Fe等が単体あるいは合金として使用される。微粉金属である骨格金属2は一般には高圧液体アトマイズ法、ガスアトマイズ法により製造され、低融点金属は、骨格金属にメッキ、スパッタ、蒸着等により被覆される。
【0025】なお、低融点金属を骨格金属に被覆するのではなく、5?10μmの微粉末とし、混合して使用することもできる。」

(1-3b) 「【0028】図4は例えばSinterstation2500(米国DTM社商標)を使用した選択的レーザ焼結装置5の概略図であり、図5?図9は異なる工程におけるその部分断面図である。図4及び図5?図9によりこの選択的レーザ焼結装置5を使用した焼結状況を説明する。
【0029】図4において、10,10は金属粉末収納箱であり、金属粉末供給ピストン10a,10bは図5?図9に示すように金属粉末収納箱10,10内の底部に上下動可能に収納されている。グリーンパート用ピストン11は金属粉末収納箱10,10の間に位置し、図5?図9に示すようにシリンダ容器30内に上下動可能に収納されている。金属粉末収納箱10,10とシリンダ容器30間には床部31が設けられ、ワーク面12を形成している。図4では図示の便宜上シリンダ容器30と床部31は省略している。
【0030】まず、図5に示すように、第一層目の形成に先立ち金属粉末供給用ピストン10aを上昇させて金属粉末収納箱内10の金属粉末1を一層の厚みに相当する分だけ上方に押し出す。次に、図6に示すように、金属粉末散布用ローラ9を図示右方向に移動させて、ワーク面12に第一層目の厚みhに相当する金属粉末1の層を形成する。次いで、図7に示すように、制御用コンピュータ6から送られる造形物の第一層目の輪切りデータに基づいた制御信号により、レーザ光源6からのレーザ光13をスキャニングミラー8を介してワーク面12に照射し、第一層目の断面相当部分の金属粉末1を選択的に焼結して、造形物の第一層14aの造形が完了する。制御用コンピュータ6からの制御信号により、ワーク面12の断面相当位置においてのみレーザ光13が照射されるように、スキャニングミラー8の位置と連動してレーザ光13がON-OFFされる。
【0031】次に、第二層目の造形作業につき説明する。まず、グリーンパート用ピストン11を造形物の第二層の厚みに相当する高さ分だけ下降させてワーク面12に凹部(図示せず)を形成する。次いで、金属粉末供給用ピストン10bを上昇させて金属粉末収納箱内10の金属粉末1を一層の厚みに相当する分だけ上方に押し出した後、図8に示すように、金属粉末散布用ローラ9を図示左方向に移動させて、ワーク面12に第二層目の厚みhに相当する金属粉末1の層を形成する。この作業により、先に形成された凹部が埋められる。その後、図9に示すように、制御用コンピュータ6から送られる造形物の第一層目の輪切りデータに基づいた制御信号により、レーザ光源6からのレーザ光13をスキャニングミラー8を介してワーク面12に照射し、第二層目の断面相当部分の金属粉末1を選択的に焼結して、造形物の第二層14bの造形が完了する。既に造形が完了している第一層14aと第二層14bは、第二層相当部形成時のレーザ光照射により相互に焼結されて一体化される。
【0032】制御用コンピュータ6からの制御信号により、以後、造形物の輪切りデータの数だけ、金属粉末供給用ピストン10a,10bの上昇、グリーンパート用ピストン11の下降、金属粉末散布用ローラ9の移動による金属粉末層の形成、及びレーザ光による金属粉末1の選択的焼結を繰り返し、例えば図15に示すような所望する造形物のグリーンパート15を製作する。
・・・
【0035】グリーンパート15を作成した後、グリーンパート15を加熱炉内に設置し加熱工程を経て中実の造形物を作成する(図1の工程104,105,106)。」

(1-3c) 「【図1】



(1-4) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲1-4には、「レーザ応用粉体成形加工方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(1-4a) 「【請求項1】 任意な内外輪郭形状を有する固形状の成形体を粉体の圧粉とレーザ光の照射と焼結により成形加工する方法であって、供給された粉体を圧粉する第1の手順と、前記物体を多数層(N層)に分割した第1層の前記輪郭形状に対応する領域にレーザ光の照射を行なう第2の手順と、全体を圧縮する第3の手順と、圧縮された第1層上に粉体を供給し圧粉する第4の手順と、第2層の前記輪郭形状に対応する領域にレーザ光の照射を行なう第5の手順と、全体を圧縮する第6の手順を行ない、更にその上に粉体を供給し圧粉し、順次第3層から最終層(N層)までレーザ光の照射,圧縮,粉体供給,圧粉を繰返し行ない、不要の周辺の粉体を除去してレーザ加工された中間成形体を取り出して焼結し成形体を作ることを特徴とするレーザ応用粉体成形加工方法。」

(1-4b) 「【0007】また、粉体材料が、細粒子のFe,Cu,Ni,Cr,Co,Zn,Sn,W等の金属粉体,セラミックス粉体,プラスチック粉体のうちの1つ又は混合からなることを特徴とする。また、細粒子の粉体が非球形状のものからなり、前記焼結が、使用された粉体材料のうちの最高融点以下の温度で行なわれ、粉体材料が、バインダー及び溶媒を含まないものであることを特徴とする。」

(1-5) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲1-5には、「電極材料の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(1-5a) 「【請求項1】 銅の溶湯中に酸素含有量が0.1%以下のクロムを投入し、得られた合金溶湯をアトマイズ法により粉末化し、得られた銅-クロム合金粉末を加熱成形することを特徴とする電極材料の製造方法。」

(1-5b) 「【0024】次に、得られた成形体を真空炉(真空圧:5×10^(-5)Torr)中において1050℃で30分間加熱し、焼結させた。このようにして得られた焼結体の充填率は(理論密度に対する比)は95%であり、導電率は50%IACS、酸素含有量は0.15%以下であった。なお、焼結の温度、時間を調節することにより、銅マトリクス中のクロムの粒径をコントロールすることができる。」

(1-6) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲1-6には、「拡散浸透処理による表面硬化層を有するCu合金部材」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(1-6a) 「この発明は、部材本体によつて高強度、並びにすぐれた熱および電気伝導性が確保され、一方部材表面部に拡散浸透処理により形成され、かつCrとAlのほう化物が分散した高靭性の表面硬化層によつてすぐれた耐食性と耐摩耗性が確保され、したがつて、これらの特性が要求される連続鋳造鋳型や、急冷凝固により箔や微粉末を製造するのに用いられる冷却ロール、さらに接点およびバルブなどとして用いるのに適したCu合金部材に関するものである。」(2頁左上欄5?14行)

(1-6b) 「(a) Cr
Cr成分は、素地中に、凝固時に初晶Crとして析出し、また熱処理によつて微細な析出Crとして存在して、Cuのもつ良好な熱および電気伝導性を損なうことなく部材の強度および耐熱性を高める作用をもつが、その含有量が0.2%未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方15%を越えて含有させると、部材の熱および電気伝導度が急激に劣化するようになるほか、延性も低下するようになることから、その含有量を0.25?15%と定めた。」(2頁左下欄最下行?右下欄10行)

(1-6c) 「

」(3頁)

(1-7) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲1-7には、「銅-クロム電極材料の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(1-7a) 「上記電極13,14を作製する電極材料は次のようにして製作される。
先ず、粒径100?60μmに80%が分布するCr粉末と粒径50μm以下に80%が分布するCu粉末とを、Cr25重量%、Cu75重量%となるようにそれぞれ秤量して混合し、その混合粉1を第1図(a)に示すように、内径80mmのアルミナ容器2内に250g充填する。
次に、第1図(b)に示すように、直径75mmの円盤状スタンプ5により混合粉1を20kgで加圧し、粉体の水平充填を行うと共に、混合粉1の外周部に突状にエツジ6を形成する。なお、充填加圧力は、10kg以上容器耐久強度までであるが、好ましくは20?50kgである。
次いで、上記容器2を真空炉内に入れ、10^(-4)Torrの真空中で脱ガスしつつあるいは不活性ガス中で1130℃に1時間加熱保持する。加熱中Cuが溶けるため、第1図(c)に示すようにスケルトン1aは大きく収縮したものとなる。図中、6aはスケルトン1a外周部のエッジである。
このスケルトン1a上に第1図(d)に示すように溶浸用銅3を置く。溶浸用銅3としては、スケルトン1aの径の80%未満の直径の丸棒(あるいは円板)とし、その量は、スケルトン1aの空隙を埋めるのに十分な量とする。ここでは、粒径50μm以下のものが80%分布するCu粉末の焼結体であって、直径が35mm、厚さが8mmで重量が70gのものを採用した。
スケルトン1a上に溶浸用銅3を置いた状態で、10^(-4)Torrの真空中においてあるいは不活性ガス中において1130℃に1時間加熱保持し、Cuをスケルトンaの空隙に溶浸させた。スケルトン1aの周囲にエッジ6aがあるので、Cuが周囲にはみ出すことがなく、内部に巣も存在しない緊密な電極材料が得られた。例えば、密度比98%のものが得られる。」(3頁右下欄最下行?4頁右上欄最下行)

(1-7b) 「H. 発明の効果
本発明に係るCu-Cr電極材料の製造方法によればCu粉末における粒径及び粒度分布を規定し、自然流填した後、Cuを溶浸あるいは焼結と溶浸を行うようにしたので、均一で巣のない緻密なCu-Cr電極材料が得られる。」(5頁右上欄5?11行)

(1-8) 甲1-8には、「銅合金製品 製品種別 線」に関して、次の記載がある。
(1-8a) 「



2 申立人2が提出した甲号証の記載
(2-1の1) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲2-1の1には「Investigation on forming process of copper alloys via Selective Laser Melting」(標題)(当審訳:選択的レーザ溶融による銅合金の形成プロセスに関する研究)に関して、次の記載がある(なお、下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
(2-1の1a) 「

」(285頁5?11行)
(当審訳:要約:この研究では、選択的レーザ溶融(SLM)プロセスのためにUNS C18400銅合金が選択された。C18400は、熱的に析出硬化可能な銅合金であり、良好な熱的及び電気的伝導率を有する。レーザ出力800Wの均一なレーザビーム、走査速度600mm/s、ハッチ間隔0.1mm、層厚さ0.05mm及びベースプレート予熱温度100℃との条件を用いて、相対密度が96.74%のSLMによるC18400のサンプルが作製された。その微細構造の特徴が示され、その形成プロセスが調査された。適切な形成パラメータを用いて、厚さが異なる(0.4mmから3mm)複数の薄壁を有する部品が作製された。緻密化挙動及び微細構造についても取り組まれた。)

(2-1の1b) 「

」(285頁左欄3?20行)
(当審訳:銅合金は、優れた熱的及び電気的伝導性を有することから広く用いられている。銅合金は、際立った機械特性を有し、コストが低廉である(Gu及びShen、2006;Gu及びShen、2006;Gu及びShen、2006)。したがって、銅基合金はポピュラーであり、鋳物のホットスポットを効果的に低減又は排除可能なツール挿入物のための選択肢として好まれる。選択的レーザ焼結(SLS)や選択的レーザ溶融(SLM)等の付加製造(AM)プロセスは、粉末粒子を部分的又は完全に溶融することにより、3D銅部品の作製に適用された(Tang,Lohら、2003;Zhu,Luら、2003;Jhabvala,Boillatら、2010;Delgado,Ciuranaら、2011)。さらに、この技術は、部品を直接製造することができ、少量生産においてコスト効果が高い。Fe基合金及びAl基合金の選択的レーザ溶融への適用について、すでにいくつかの研究がなされている(Liu,Chuaら、2010;Liu,Chuaら、2012;Liu,Chuaら、2012)。)

(2-1の1c) 「

」(286頁左欄3?22行)
(当審訳:この実験で用いられた機械は、ドイツSLM Solutions GmbH社製のSLM250HLであった。この改良された機械は2種類のレーザを備え、そのうち1つはGaussianビームプロファイル(集束ビーム径80μm)を有し、最大レーザ出力は400Wである。他方のレーザ装置は均一ビームプロファイル(集束ビーム径730μm)を有し、最大レーザ出力は1kWである。本プロジェクトにおいて、ガスアトマイズで生成された平均粒子径12μmの球形状のC18400粉末(図1参照)が用いられた。C18400の化学組成は、表1に示される。単一表面実験の結果によれば、C18400銅合金の形成窓を構築するために、下記の形成パラメータ(表2及び表3参照)を用いることができる。層厚さは50μmに固定される。試験片のハッチ間隔は、0.05mmから0.15mmまでの間(Gaussianレーザ源)及び0.1mmから0.2mmまでの間(均一レーザ源)からそれぞれ選択された。相対密度の評価及び微細構造の調査のための試験片の寸法は、10mm×10mm×10mmの立方体であった。)

(2-1の1d) 「

」(286頁左欄)
(当審訳:表1.C18400粉末の化学組成、すべての数値の単位は質量%である。)

(2-1の1e) 「

」(287頁右欄21?23行)
(当審訳:図5は、異なる形成パラメータを用いて選択的レーザ溶融により作製されたサンプルの多孔性を、光学顕微鏡を用いて示すものである。)

(2-1の1f) 「

」(288頁左欄3?9行)
(当審訳:均一な分布のレーザ源を用いた場合、図5dに示されるように、細孔の量は、図5bの場合に比べて減少した。これは、レーザビームの中央から端にかけて、粉末を減少させることなくレーザ入力を照射することにより、レーザ源の均一な分布が、Cuの大きな熱伝導率を補償することができたためであった。測定された相対密度は96.74%であった。)

(2-1の3) 「Advanced Research in Virtual and Rapid Prototyping」のプログラムである甲2-1の3には、次の記載がある。
(2-1の3a) 「


(当審訳:2013年10月3日木曜日)

(2-1の3b) 「


(当審訳:選択的レーザ溶融による銅合金の形成プロセスに関する研究
D.Q.Zang,Z.H.Liu及びC.K.Chua)

(2-2) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲2-2には、「電気接点材料及びその製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(2-2a) 「本発明に係る電気接点材料は、クロム(Cr)含有量が5?20重量%の銅(Cu)-Cr合金で、平均粒径2?20μmのCr微粒子がCuマトリックス中に均一に分散した組織を有するものであり、平均粒径5μm以下のCr微粒子均一に分散されたCu-Cr合金粉末を焼結して得られるものである。」(1頁右下欄下から3行?2頁左上欄4行)

(2-2b) 「第1表には、Cuに対するCrの混合割合(0.5?30重量%)、溶解条件(雰囲気、溶解温度)等を変えてガスアトマイズ法によりCu-Cr合金溶湯を霧状に微細化して、Cu-Cr合金粉末を得た結果を示す。」(3頁左上欄下から3行?右上欄2行)


(2-2c) 「

」(3頁左下欄)

(2-3) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲2-3には、「導電性ペースト用銅粉及び導電性ペースト」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(2-3a) 「【0001】
本発明は、導電性ペースト用銅粉及びそれを用いた導電性ペーストに関し、特に、スクリーン印刷アディティブ法による導体回路形成用や積層セラミックコンデンサの外部電極用等の各種電気的接点部材用の導電性ペーストの導電材料等に好適な銅粉とそれを用いた導電性ペーストに関する。」

(2-3b) 「【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性ペースト用銅粉は粒度微細ながら耐酸化性に優れ、かつ導電性のバランスも取れている。さらには形状や粒度のバラツキが小さく、低含有酸素濃度であるので、スクリーン印刷アディティブ法による導体回路形成用や、積層セラミックコンデンサの外部電極用等の各種電気的接点部材用の導電性ペーストの導電材料等に極めて良好に適用することができる。」

(2-3c) 「【0022】
なお、本発明に係る導電性ペースト用銅粉に含まれているSi成分は、粒子内部の金属相中に一様に分布しているのが好ましく、合金成分として粒子内部に存在するものと推測される。」

(2-3d) 「【0049】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
(実施例1)
ガスアトマイズ装置(日新技研(株)製、NEVA-GP2型)のチャンバ及び原料溶解室内を窒素ガスで充填した後、溶解室内にあるカーボン坩堝で原料を加熱溶解して溶融物とした(電気銅を溶解した溶湯中に、金属ケイ素(日本金属化学工業(株)製NIKSIL)を1.77g添加して、800gの溶湯とし、充分に攪拌混合)。その後、溶湯を口径φ1.5mmのノズルから1250℃、3.0MPaで噴霧して、ケイ素を粒子内部に含む銅粉を得た。しかる後、53μmテストシーブで篩い、篩下品を最終的な銅粉とした。得られた銅粉の特徴を表2に示す。
【0050】
(実施例2?4)
金属ケイ素添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、銅粉を得た。」

(2-3e) 「【0054】
【表1】



(2-3f) 「【0060】
【表2】



(2-4) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲2-4には、「高硬度で高導電性を有するナノ結晶銅金属及びナノ結晶銅合金の粉末、高硬度・高強度で高導電性を有する強靱なナノ結晶銅又は銅合金のバルク材並びにそれらの製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(2-4a) 「【請求項2】
銅合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる銅合金粉末であって、その合金元素がベリリウム、クロム、ジルコニウム、チタン、銀、コバルト、ニッケル、亜鉛、鉄、カドミウム、マンガン、アルミニウム、モリブデン、バナジウム、タングステン、ニオブ、タンタル、リン、ケイ素又はホウ素から選ばれるいずれか1つ以上からなり、これらの合金元素が1つの場合には、その濃度が銅合金粉末の0.05?40質量%を含有し、また合金元素が2つ以上の場合には、その合計濃度が0.05?45質量%含有して、前記ナノ結晶銅合金粉末がこれらの合金元素による固溶強化と2?1000nmサイズレベルまでの結晶粒微細化強化されてなることを特徴とする高硬度で高導電性を有するナノ結晶銅合金粉末。」

(2-4b) 「【0020】
実施例3:
銅(Cu)、ベリリウム(Be)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、又はクロム(Cr)の元素状混合粉末から、ボールミルを用いたメカニカルアロイング(MA)(雰囲気:アルゴンガス/MA時間:200h)処理により、Cu_(97.7)Be_(2)Co_(0.3)(質量%)、Cu_(99.85)Zr_(0.15)(質量%)及びCu_(99.35)Cr_(0.65)(質量%)組成の銅合金粉末をつくった。
次いで、この3種類の合金粉末を前期実施例2と同様にして600℃にて熱間圧延加工を施し、これを水冷して得られた固化成形体試料の平均結晶粒径d、ビッカース硬さHv、引張り強さσ_(B)及び伸びδは表3のとおりである。
表3からみて、本発明によれば、前記の固化成形体は、いずれも銅の高導電性を大きく損なうことなく、強さと伸びを兼ね備えた超高張力鋼をしのぐ極めて優れた強度特性を有するものとなることが解る。
【表3】

*[(a)Cu_(97.7)Be_(2)Co_(0.3)(質量%)、(b)Cu_(99.85)Zr_(0.15)(質量%)及び(c)Cu_(99.35)Cr_(0.65)(質量%)メカニカルアロイング(MA)試料の熱間固化成形体の平均結晶粒径d、導電率%IACS*、引張り強さσ_(B)及び伸びδ]
*International Annealed Copper Standard」

(2-5) 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲2-5には、「レーザ付加製造法により金属部品を製造する方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(2-5a) 「【0024】
本発明の1実施形態では前記付加製造法は、選択的レーザ溶解法(SLM)、選択的レーザ焼結法(SLS)または電子ビーム融解法(EBM)のいずれかであり、粉末体の金属ベース材料を用いる。
【0025】
特に、前記SLM法またはSLS法またはEBM法は、
a)前記製品の3次元モデルを生成し、その後、スライス分割プロセスを行って断面を計算するステップと、
b)次に、計算した前記断面を機器制御ユニット(15)へ供給するステップと、
c)処理に必要な前記ベース材料の粉末を準備するステップと、
d)基板上に、または、既に処理された粉末層上に、一定かつ均等な厚さの粉末層(12)を設けるステップと、
e)前記制御ユニット(15)に記憶されている3次元モデルに従い、前記製品の断面に対応してエネルギービーム(14)を走査することにより溶解を行うステップと、
f)形成された前記断面の上表面を1層の厚さ(d)だけ下降させるステップと、
g)前記3次元モデルにおける最後の断面に達するまで、前記ステップd)?f)を繰り返すステップと、
h)オプションとして、前記3次元製品(11)の熱処理を行うステップと
を有し、
前記ステップe)において、
・特定の所望の2次結晶粒配向を実現するため、連続する各層間において、または1層の特定の各領域(島)間において、走査ベクトルが相互に垂直になるように、前記エネルギービームを走査する、
または、
・2次結晶粒配向が特定の配向にならないように、連続する各層間において、または1層の特定の各領域(島)間において、走査ベクトル相互間の角度がランダムになるように、前記エネルギービームを走査する。」

第7 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 取消理由1-1(特許法第36条第6項第1号)について
ア 取消理由1-1の概要
(ア) 取消理由1-1において引用した、申立人1による申立書1の28頁14行?29頁4行の概要は以下のとおりである(以下、「取消理由1-1a」という。)。
発明の詳細な説明には、クロム及び珪素の両方を含有する銅合金粉末の実施例及び比較例は一切なく、クロムと珪素の両方を含み、かつ、クロムと珪素を併せて1.0質量%以下含有した場合の効果は全く開示されておらず不明であるから、請求項1?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(イ) 取消理由1-1において引用した、申立人2による申立書2の44頁18行?48頁最下行の概要は以下のとおりである(以下、次のa、bをまとめて「取消理由1-1b」という。)。
a 発明の詳細な説明の【表5】?【表7】から、銅合金粉末中のクロム含有量が小さくなるに従い、引張強さは小さくなる傾向があることがわかるため、訂正前の請求項1におけるクロム含有量の下限値0.10質量%付近では、金属粉末A1(クロム含有量0.22質量%)よりも引張強さが小さくなるはずであるから、「引張強さが概ね195Pa以上」(【0021】)との機械強度が得られない可能性があるため、訂正前の請求項1に係る発明は、「機械強度及び導電率を両立できる」(【0005】)との課題(以下、「本件課題」という。)を解決することはできない。
また、訂正前の請求項2、6、7に係る発明、及び、訂正前の請求項1又は2を引用する請求項4、5に係る発明も同様である。

b 発明の詳細な説明の【表8】?【表9】から、銅合金粉末中の珪素含有量が小さくなるに従い、引張強さが小さくなるとともに、導電率が大きくなる傾向があることがわかるため、訂正前の請求項1における珪素含有量の下限値0.10質量%付近では、金属粉末B1(珪素含有量0.21質量%)よりも引張強さが小さくなるはずであるから、「引張強さが概ね195Pa以上」(【0021】)との機械強度が得られない可能性があり、また、請求項1における珪素含有量の上限値1.00質量%付近では、金属粉末B2(珪素含有量0.55質量%)よりも導電率が小さくなるはずであるから、「導電率が26%IACS以上」(【0024】)との導電率が得られない可能性があるため、訂正前の請求項1に係る発明は、上記課題を解決することはできない。
また、訂正前の請求項3、8に係る発明、及び、訂正前の請求項1又は3を引用する請求項4、5に係る発明も同様である。

イ 判断
本件訂正請求による訂正によって、請求項2、7は削除されたので、本件発明1、3?6、8について検討する。

(ア) 取消理由1-1aについて
本件訂正請求による訂正によって、本件発明1、3?6、8は、いずれも、クロムと珪素の両方を含むものではなく、クロム又は珪素のいずれか一方を含むものとなったから、取消理由1-1aは解消している。

(イ) 取消理由1-1bについて
本件明細書には以下の記載がある。
「【0076】
【表6】


「【0079】
【表7】


「【0082】
【表8】


「【0086】
【表9】


本件発明1、6におけるクロムの含有量の下限値(0.51質量%)の実施例は、上記【表6】に記載されており、また、同上限値(0.94質量%)の実施例は、上記【表7】に記載されており、これら【表6】、【表7】によれば、クロムの含有量が0.51質量%超0.94質量%以下の範囲であれば、「機械強度及び導電率を両立できる」との本件課題を解決できるものと認められる。
また、本件発明3、8における珪素の含有量の下限値(0.21質量%)は、いずれも上記【表8】に記載されており、また、同上限値(0.55質量%)は、いずれも上記【表9】に記載されており、これら【表8】、【表9】によれば、珪素の含有量が0.21質量%以上0.55質量%以下の範囲であれば、上記本件課題を解決できるものと認められる。
さらに、請求項1又は3を引用する本件発明4、5も同様の理由により上記本件課題を解決できるものと認められる。
したがって、取消理由1-1bは解消している。

(2) 取消理由1-2、1-3(特許法第29条第1項第3号及び第2項)について
ア 取消理由1-2、1-3の概要
取消理由1-2、1-3において採用した、申立人2による申立書2の12頁下から2行?17頁下から6行、25頁下から2行?29頁17行、33頁10行?34頁4行、36頁2行?40頁6行、40頁下から3行?42頁18行の主張の概要は以下のとおりである。
請求項1、4、6に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明であり、また、請求項4、5に係る発明は、甲2-1の1に記載された発明及び甲2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 判断
(ア) 甲2-1の1に記載された発明
甲2-1の1の前記(2-1の1a)?(2-1の1f)によれば、甲2-1の1には、以下の2つの発明が記載されていると認められる。

「選択的溶融プロセスによる3D銅部品用銅合金粉末であって、
銅を98.37-98.12質量%、Crを0.5-1.2質量%、Siを0.1質量%未満、Zrを0.03-0.3質量%、Feを0.08未満、他の成分を0.2質量%未満含有する、銅合金粉末。」(以下、「甲2-1の1A発明」という。)

「銅合金粉末を用いた選択的溶融プロセスによる3D銅部品であって、
前記銅合金粉末は、銅を98.37-98.12質量%、Crを0.5-1.2質量%、Siを0.1質量%未満、Zrを0.03-0.3質量%、Feを0.08質量%未満、他の成分を0.2質量%未満含有し、
相対密度が96.74%である、3D銅部品」(以下、「甲2-1の1B発明」という。)

(イ) 本件発明1、4の新規性について
本件発明1と甲2-1の1A発明とを対比すると、ジルコニウムについて、本件発明1は「含有しない」のに対し、甲2-1の1A発明は「0.03-0.3質量%・・・含有し」ている点で少なくとも相違するから、本件発明1は、甲2-1の1A発明であるとはいえない。
また、本件発明4は、請求項1の発明特定事項を全て有しているから、同様の理由により、本件発明4は、甲2-1の1A発明であるとはいえない。

(ウ) 本件発明6の新規性について
本件発明6と甲2-1の1Bに記載された発明とを対比すると、ジルコニウムについて、本件発明6は「含有しない」のに対し、甲2-1の1B発明は「0.03-0.3質量%・・・含有し」ている点で少なくとも相違するから、本件発明6は、甲2-1の1B発明であるとはいえない。

(エ) 本件発明4、5の進歩性について
前記(イ)の検討によれば、本件発明4と甲2-1の1A発明とは、ジルコニウムについて、本件発明4は「含有しない」のに対し、甲2-1の1A発明は「0.03-0.3質量%・・・含有し」ている点で少なくとも相違する。
そこで検討するに、甲2-1の1A発明の銅合金粉末は、ジルコニウムを0.03?0.3重量%含有しているところ、甲2-1の1には、ジルコニウムを含まないようにすることは記載も示唆もされていないから、甲2-1の1A発明において、ジルコニウムを含まないようにすることの動機付けがあるとはいえない。
また、甲2-5には、甲2-1の1A発明において、ジルコニウムを含まないようにすることの動機付けについて、何ら記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明4は、甲2-1の1A発明及び甲2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明5は、請求項4の発明特定事項を全て有しているから、同様の理由により、本件発明5は、甲2-1の1A発明及び甲2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 小括
以上から、本件発明1、4、6は、甲2-1の1に記載された発明ではなく、また、本件発明4、5は、甲2-1の1に記載された発明及び甲2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 取消理由2-1(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について
取消理由2-1は請求項2、7に係る特許を対象とするものであるところ、本件訂正請求による訂正によって請求項2、7は削除されたため、請求項2、7に係る特許は存在しなくなったから、当該取消理由2-1は解消している。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 本件発明1、3に対する申立理由1-1、申立理由2-1c、申立理由2-1e、申立理由2-2a、申立理由2-2c(特許法第29条第1項第3号及び第2項)についてまとめて検討する。

ア 本件発明1、3が用途発明であるか否かについて
申立人1は、申立書1の22頁下から7行?25頁2行において、申立人2は、申立書2の29頁下から2行?30頁15行において、いずれも、本件発明1、3は、用途発明ではない旨主張している。
しかし、本件明細書の【0017】?【0019】には、本件発明の実施形態に至った経緯として、純銅粉末を用いた積層造形物は、多数の空隙を有しており、元材に対して密度が大幅に低下(当然機械強度も低下)し、さらに導電率も大幅に低下していたため、各条件を変更して物性の改善を試みたが、純銅を用いる限り、条件を固定しても、仕上がり物性が安定せず、機械強度及び導電率を両立することはできなかったので、銅合金について検討し、その結果、特定の合金組成を有する銅合金粉末を用いることにより、積層造形物において、機械強度及び導電率を両立できることが見出されたと記載されている。
そうすると、本件発明1、3に係る銅合金粉末は、「積層造形物において、機械強度及び導電率を両立する」という属性を有するものといえる。
ここで、申立人1及び申立人2が提出したいずれの証拠をみても、上記属性については、記載も示唆もされていないし、特定の合金組成を有する銅合金粉末を積層造形物にした場合に、上記属性を有することが、本件特許出願時において、当業者に知られていたともいえないから、本件発明1、3は、特定の合金組成を有する銅合金粉末の未知の属性を発見したものであるといえる。
そして、本件発明1、3は、当該属性により、特定の合金組成を有する銅合金粉末が、新たな用途、すなわち、積層造形への使用に適することを見いだしたことに基づく発明であるといえる。
したがって、本件発明1、3は、用途発明であると認められるから、申立人1及び申立人2の上記主張は採用できない。

イ 前記アで検討したように、本件発明1、3は、用途発明であるところ、甲1-1、甲1-2、甲2-2?甲2-4のいずれにも、銅合金粉末が、積層造形用であることは、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1、3は、甲1-1発明、甲1-2発明、甲2-2発明?甲2-4発明のいずれの発明であるともいえない。

ウ また、前記アの検討によれば、本件発明1、3は、積層造形物において、機械強度及び導電率を両立できるようにするために、銅合金粉末を特定の合金組成にしたものであるといえるところ、甲1-1、甲1-2、甲2-2?甲2-4のいずれにも、特定の合金組成の銅合金粉末が、積層造形物において、機械強度及び導電率を両立できることは記載も示唆もされていないから、甲1-1発明、甲1-2発明、甲2-2発明?甲2-4発明のいずれの発明についても、積層造形物とすることの動機付けは存在しないし、仮に、動機付けが存在したとしても、積層造形物に用いた場合に、機械強度及び導電率を両立できるとの効果が予測可能であったとはいえない。
したがって、甲1-1発明、甲1-2発明、甲2-2発明?甲2-4発明のいずれの発明においても、積層造形用とすることは、当業者にとって容易になし得るものとはいえない。

エ 申立人2は、申立書2の32頁22行?33頁8行、34頁22行?35頁6行において、甲2-2発明?甲2-4発明に係る銅合金粉末を、甲2-1の1の教示(銅合金粉末を積層造形に用いる)に倣って、積層造形用の銅合金粉末として利用することで、本件発明1に想到することは当業者にとって容易であったというべきであり、また、甲2-2発明に係る銅合金粉末を、甲2-1の1の教示(銅合金粉末を積層造形に用いる)に倣って、積層造形用の銅合金粉末として利用することで、本件発明2に想到することは当業者にとって容易であったというべきである旨主張している。
しかし、前記ウで検討したように、甲2-2発明?甲2-4発明のいずれの発明についても、積層造形用とすることの動機付けは存在しないし、仮に、動機付けが存在したとしても、積層造形物に用いた場合に、機械強度及び導電率を両立できるとの効果が予測可能であったとはいえないから、甲2-1の1に記載されている銅合金粉末を積層造形に用いるとの事項を参酌したとしても、甲2-2発明?甲2-4発明のいずれの発明においても、積層造形用とすることは、当業者にとって容易になし得るものとはいえない。
したがって、申立人2の上記主張は採用できない。

オ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、3は、甲1-1、甲1-2、甲2-2?甲2-4に記載された発明のいずれの発明であるとはいえないし、また、本件発明1、3は、甲1-1又は甲1-2に記載された発明に基づいて、又は、甲2-2、甲2-3又は甲2-4に記載された発明、及び、甲2-1の1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2) 本件発明4、5に対する申立理由1-2a(特許法第29条第2項)について
本件発明4、5について、申立人1は、申立書1の25頁6?13行において、本件発明4に係る積層造形法は、本件特許出願時において、周知の積層造形法であって、また、甲1-3及び甲1-4に開示される事項からも容易に想到できた積層造形法であり、また、本件発明1、3に係る銅合金粉末は、甲1-1や甲1-2に開示される銅合金粉末と同一であるから、本件発明4?5は、甲1-1又は甲1-2と、甲1-3又は甲1-4に開示される事項を組み合わせることで、又は、甲1-1又は甲1-2と周知の積層造形法を組み合わせることで、当業者が容易に想到できた発明である旨主張している。
しかし、前記(1)ア、イで検討したように、本件発明1、3は、甲1-1発明又は甲1-2発明であるとはいえないし、前記(1)ウで検討したように、甲1-1発明又は甲1-2発明を、積層造形用とすることの動機付けは存在しないから、甲1-1発明又は甲1-2発明に、甲1-3又は甲1-4に開示される積層造形法、又は周知の積層造形法を組み合わせる動機付けも存在しないし、仮に、動機付けが存在したとしても、積層造形法に適用した場合に、機械強度及び導電率を両立できるとの効果が予測可能であったとはいえない。
したがって、本件発明4、5は、甲1-1発明又は甲1-2発明と、甲1-3又は甲1-4に開示される事項を組み合わせることで、又は、甲1-1発明又は甲1-2発明と周知の積層造形法を組み合わせることで、当業者が容易に想到できた発明であるとはいえない。
よって、申立人1の上記主張は採用できない。

(3) 本件発明6に対する申立理由1-2b、申立理由2-2e(特許法第29条第2項)について
ア 申立人1は、申立書1の25頁14行?26頁下から6行において、本件発明6の結果物である銅合金の構成は全て、甲1-1及び甲1-5?甲1-7に開示又は示唆されているといえ、また、Crの数値範囲に臨界的な意義は認められないので、本件発明6は、甲1-1及び甲1-5?甲1-7に開示される事項から容易に想到できた発明である旨主張している。
しかし、前記(1)ウで検討したように、甲1-1発明を積層造形用とすることの動機付けは存在しないから、甲1-1発明を積層造形物とする動機付けも存在しないし、仮に、動機付けが存在したとしても、積層造形物とした場合に、機械強度及び導電率を両立できるとの効果が予測可能であったとはいえない。
また、甲1-5?甲1-7のいずれにも、積層造形物の相対密度及び導電率は記載されていない。
したがって、本件発明6は、甲1-1発明及び甲1-5?甲1-7に開示される事項から容易に想到できた発明であるとはいえない。
よって、申立人1の上記主張は採用できない。

イ 申立人2は、申立書2の40頁7?23行において、本件発明6の合金組成を有する甲2-4の銅合金から得られる造形物は、26%IACS以上の導電率を有し得るから、甲2-4の記載事項を甲2-1の1発明の積層造形物に適用することで、本件発明6に想到することは当業者にとって容易であったというべきである旨主張している。
しかし、本件発明6の導電率は、積層構造物の導電率であるところ、甲2-4の前記(2-4b)によれば、甲2-4の銅合金から得られる造形物の導電率は、熱間圧延加工を施した造形物の導電率であって、積層造形物の導電率ではないから、甲2-4の記載事項を甲2-1の1発明の積層造形物にそのまま適用することはできないし、また、仮に、甲2-4の記載事項を甲2-1の1発明の積層造形物に適用したとしても、その積層構造物の導電率が26%IACS以上となるとは必ずしもいえない。
したがって、甲2-4の記載事項を甲2-1の1発明の積層造形物に適用することで、本件発明6に想到することは当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、申立人2の上記主張は採用できない。

(4) 本件発明8に対する申立理由1-2c、申立理由2-2g(特許法第29条第2項)について
ア 申立人1は、申立書1の26頁下から5行?27頁3行において、甲1-1には、Siを合計で0?1%含有している銅合金粉末の銅合金が記載されており、甲1-1発明に係る該銅合金は電極チップとして使用できるので、導電性も26%IACS以上である蓋然性が高いものであり、その製造方法から相対密度も高いと考えられるので、本件発明8に係る銅合金の構成は、甲1-1に開示され、また、導電率や相対密度も甲1-1に示唆されているから、本件発明8は、甲1-1から当業者であれば容易に想到できた発明である旨主張している。
しかし、前記(3)アで検討したように、甲1-1発明を積層造形物とする動機付けは存在しないし、仮に、動機付けが存在したとしても、積層造形物とした場合に、機械強度及び導電率を両立できるとの効果が予測可能であったとはいえない。
また、甲1-1には、甲1-1発明を積層造形物とした際の導電率や相対密度は、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明8は、甲1-1発明から当業者であれば容易に想到できた発明であるとはいえない。
よって、申立人1の上記主張は採用できない。

イ 申立人2は、申立書2の42頁20行?44頁17行において、甲2-1の1発明における積層造形用材料であるクロム銅合金粉末の代替材料として、公知の他の銅合金粉末を採用することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎないから、当業者であれば、甲2-1の1発明における積層造形用材料であるクロム銅合金粉末の代替材料として、甲2-3記載の珪素含有銅合金粉末を採用することは容易であったといわざるを得ず、その構造物の相対密度及び導電率は、本件発明8の相対密度及び導電率を充足する蓋然性が極めて高いから、甲2-3記載事項を甲2-1の1発明の積層構造物に採用することで、本件発明8とすることは当業者にとって容易であったというべきである旨主張している。
しかし、甲2-3の前記(2-3a)?(2-3c)によれば、甲2-3記載の珪素含有銅合金粉末は、導電性ペースト用であり、粒度微細ながら耐酸化性に優れ、かつ導電性のバランスも取れているものであって、積層造形用ではなく、機械強度と導電率の両立を要求されるものでもないから、甲2-3記載の珪素含有銅合金粉末を、甲2-1の1発明における積層造形用材料であるクロム銅合金粉末の代替材料とする動機付けは存在しないし、仮に、動機付けが存在したとしても、積層造形物とした場合に、機械強度及び導電率を両立できるとの効果が予測可能であったとはいえない。
したがって、甲2-3記載事項を甲2-1の1発明の積層構造物に採用することで、本件発明8とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、申立人2の上記主張は採用できない。

(5) 本件発明6?8に対する申立理由1-2d(特許法第29条第2項)について
申立人1は、申立書1の27頁4行?28頁13行において、本件明細書の【0019】には、「特定の合金組成を有する銅合金粉末を用いることにより、積層造形物において、機械強度および導電率を両立できることが見出された。」と記載されているところ、同【0031】、【0033】、【0042】の記載からは、特定の合金組成を備えたいわゆる通常粉と呼ばれる粒径の銅合金粉末さえ使用すれば、周知の積層造形法で造形した積層造形物であっても機械強度及び導電率を両立した銅合金になることが示唆されており、本件発明に係る合金組成を備える銅合金粉末が開示されている、甲1-1及び甲1-2の銅合金粉末を、甲1-3や甲1-4に開示される積層造形法や周知の積層造形法で製造すれば、該積層造形物は、機械強度及び導電率を両立した積層造形物になると推測され、相対密度が96%以上100%以下、導電率が26%IACS以上を満たす銅合金となる蓋然性が高いから、本件発明6、8は、甲1-1発明又は甲1-2発明と、甲1-3又は甲1-4に開示される事項を組み合わせることで、又は、甲1-1発明又は甲1-2発明と周知の積層造形法を組み合わせることで、当業者が容易に想到できた旨主張している。
しかし、前記(2)で検討したように、甲1-1発明又は甲1-2発明に、甲1-3又は甲1-4に開示される積層造形法、又は周知の積層造形法を組み合わせる動機付けは存在しないし、仮に、動機付けが存在したとしても、積層造形法に適用した場合に、機械強度及び導電率を両立できるとの効果が予測可能であったとはいえないから、本件発明6、8は、甲1-1発明又は甲1-2発明と、甲1-3又は甲1-4に開示される事項を組み合わせることで、又は、甲1-1発明又は甲1-2発明と周知の積層造形法を組み合わせることで、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって、申立人1の上記主張は採用できない。

(6) 本件発明1、4、6に対する申立理由2-1b(特許法第29条第1項第1号)について
甲2-1の3の前記(2-1の3a)、(2-1の3b)によれば、2013年10月3日木曜日に、甲2-1の1と同じ標題である「選択的レーザ溶融による銅合金の形成プロセスに関する研究」についての口頭発表が行われたといえるものの、その発表内容については不明であるから、当該口頭発表において、甲2-1の1A発明及び甲2-1の1B発明が公然知られた発明となったとはいえない。
仮に、甲2-1の1A発明及び甲2-1の1B発明が公然知られた発明であるとしても、前記1(2)イ(イ)、(ウ)で検討したのと同様の理由により、本件発明1、4、6は公然知られた発明であるとはいえない。

3 意見書1-1における申立人1の主張について
(1) 本件発明1の進歩性について
申立人1は、意見書1-1の1頁下から8行?4頁1行において「甲2-1の1には、請求項1記載の発明の効果及び解決しようとする課題が記載されている」(2頁下から4?3行)ことを前提として、訂正後のクロムの数値範囲に臨界的な意義を見出せないから、請求項1記載の発明は依然として進歩性を備えないし、請求項1記載の発明がジルコニウムを含有しないことにより、甲2-1の1に比して際立った優れた効果を有するかどうかは全く不明であり、請求項1記載の発明が前記数値範囲以外の構成上の相違によって進歩性が肯定されることはない旨主張している。
しかし、本件発明の効果及び解決しようとする課題である「機械強度及び導電率の両立」とは、具体的には、本件明細書の【0020】?【0024】において定義されている(a)?(c)の条件を満たすことであって、甲2-1の1の前記(2-1の1f)には、上記(a)?(c)の条件のうち、(b)の条件に対応する相対密度についての記載はあるものの、(a)及び(c)の条件については、何ら記載も示唆もされていないから、甲2-1の1には、本件発明の効果及び解決しようとする課題が記載されているとはいえず、申立人1の上記主張は、その前提において誤っており採用できない。

(2) 本件発明1の実施可能要件違反及び明確性違反について
申立人1は、意見書1-1の4頁11行?5頁6行において、本件明細書には、不純物の除去方法については全く記載されていないし、C18400のジルコニウムは0.03?0.3質量%であって、本件発明が含有してもよいとされている不純物の含有量と重複しており、不可避的にジルコニウムが混入した可能性もあるから、不可避的にジルコニウムが混入していた場合に、どのようにすればジルコニウムを除去して、請求項1の「ジルコニウムを含有しない銅合金粉末」を製造できるのか本件明細書に全く記載がないから、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないし、また、「ジルコニウムを含有しない銅合金粉末」であるかどうかを第三者がどのように判別すればよいかも本件明細書には記載されていないから、請求項1記載の発明の技術的範囲の外延は不明確である旨主張している。
確かに、本件発明1において、不可避的にジルコニウムが混入する可能性は否定できないが、銅合金には、ジルコニウムが不可避的に混入することが技術常識であることを示す証拠が提示されてはいないから、本件明細書に、不可避的に混入したジルコニウムの除去方法が記載されていないからといって、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないとまではいえない。
また、本件明細書の【0027】の記載からすると、請求項1に係る発明の銅合金粉末は、添加元素及び不可避不純物元素のどちらか一方又は両方を含有し得るものであるところ、請求項1には、「ジルコニウムを含有しない」と記載されているから、本件発明1の銅合金粉末には、ジルコニウムは、添加元素としても、不可避不純物元素としても含有されていないとするのが相当である。
したがって、本件発明1は明確でないとはいえない。
よって、申立人1の上記主張は採用できない。

(4) 本件発明4?6について
意見書1-1の7頁4行?8頁17行における申立人1の主張は、前記(1)?(3)において検討した本件発明1についての主張に基づくものであるから、前記(1)?(3)で検討したのと同様の理由により採用できない。

4 意見書1-2における申立人1の主張について
(1) 本件発明1の進歩性について
申立人1は、意見書1-2の1頁12行?2頁18行において、甲2-1の1発明との相違点は、ジルコニウムを含有するかしないかの1点のみであるところ、甲1-8に示す、クロムを有し、ジルコニウムを含有しない銅合金粉末UNS 18200はC18400(甲2-1の1発明)に近いコード番号を有しており、一般にコード番号が近い材料は似た性質を示すことから、甲2-1の1にC18400が積層造形用の銅合金粉末として有効であることが開示されていれば、クロムを含有し、ジルコニウムを含有しない銅合金粉末を選択してその効果を確認することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないし、加えて、「ジルコニウムを含有しないとの限定は、新たな技術的事項を導入しないものである」(訂正請求書6頁4行)から、請求項1の銅合金粉末と甲2-1の1に開示されるC18400はクロムの含有量が重複していること、及び、申立人1の申立書1及び意見書1-1で述べた理由により、クロム含有量の数値範囲に臨界的な意義はないから、本件発明1の銅合金粉末の効果はC18400(甲2-1の1発明)に比して格別な効果であるとはいえず、本件発明1は当業者であれば甲2-1の1に開示される事項から容易に想到できたといえる旨主張している。
しかし、前記1(2)イ(エ)で検討したように、甲2-1の1A発明において、ジルコニウムを含まないようにすることの動機付けがあるとはいえない。
また、甲1-8の前記(1-8a)によれば、銅合金粉末UNS 18200は、ジルコニウムを含有していないものの、クロムの含有量は1.0質量%であって、0.51質量%超0.94質量%以下の範囲内のものではないから、甲1-8の記載から、本件発明1の組成(特に、クロムの含有量)を導き出すことはできない。
したがって、申立人1の上記主張は採用できない。

(2) 請求項1の訂正要件違反について
申立人1は、意見書1-2の2頁19行?3頁5行において、特許権者らが、平成29年9月28日付け意見書の6頁6行?9頁6行で述べているとおりに、ジルコニウムを含有すれば積層造形物の電気抵抗が増大して導電率が低下して26%IACS以上の導電率を有する蓋然性は低くなるが、ジルコニウムを含有しなければ積層造形物の26%IACS以上の導電率を実現できるから、請求項1記載の発明はC18400(甲2-1の1発明)に比して進歩性を有する旨主張するのであれば、訂正事項1に係る「ジルコニウムを含有しない」なる訂正は、新たな技術的事項の導入である旨主張している。
しかし、前記第2の2(1)で検討したように、訂正事項1に係る「ジルコニウムを含有しない」なる訂正は、新たな技術的事項を導入するものではないから、申立人1の上記主張は採用できない。

(3) 本件発明4?6の進歩性について
意見書1-2の3頁6行?4頁11行における申立人1の主張は、前記(1)において検討した本件発明1についての主張に基づくものであるから、前記(1)で検討したのと同様の理由により採用できない。

(4) 請求項6の訂正要件違反について
意見書1-2の4頁12?21行における申立人1の主張は、前記(2)において検討した請求項1の訂正についての主張に基づくものであるから、前記(2)で検討したのと検討したのと同様の理由により採用できない。

5 意見書2-1における申立人2の主張について
(1) 本件発明1、6の進歩性について
申立人2は、意見書2-1の2頁21行?6頁下から3行において、
(i)乙1及び乙2を参照しても、甲2-1の1記載のC18400粉末により作製された積層造形物の導電率が、本件発明1によって得られる26%IACSよりも低い蓋然性が高いとはいえないこと、
(ii)甲2-1の1の積層造形物の製造の再現性は、本件発明1と同程度と考えられること、
(iii)銅合金粉末又は銅合金において、導電率を高めるためにジルコニウム等の不純物を低減させることは当業者にとって設計的事項にすぎないこと、
を根拠として、訂正発明1は、甲2-1の1記載の銅合金粉末から出発して、当業者が容易に到達することができたものであり、同様に、本件発明6は、甲2-1の1記載の銅合金粉末又は積層造形物から出発して、当業者が容易に到達することができたものである旨主張している。
しかし、前記1(2)イ(エ)で検討したように、甲2-1の1には、ジルコニウムを含まないようにすることの動機付けがあるとはいえないから、本件発明1、6は、甲2-1の1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、このことは、上記(i)?(iii)の主張の適否に左右されるものではない。
したがって、申立人2の上記主張は採用できない。

(2) 本件発明1、6の明確性要件違反について
申立人2は、意見書2-1の9頁1?14行において、特許権者らによる訂正請求書の6頁の訂正事項1についての主張を鑑みれば、銅合金粉末は、表1の金属粉末、すなわち、クロム、酸素、銅以外を含まないと解釈すべきである一方、特許明細書の【0027】では、添加元素、不純物元素を含んでもよい旨の記載があり、特に、添加元素について、具体的な粉末が明細書中に記載されていない以上、本件発明1、6は、添加元素として、ジルコニウム以外も含み得るものか否か明確でない旨主張している。
しかし、特許明細書の【0027】の記載によれば、本件発明1、6は、ジルコニウム以外の添加元素を含み得るものであることは明らかであるから、申立人2の上記主張は採用できない。

(3) 本件発明3、8の明確性要件違反について
申立人2は、意見書2-1の10頁20行?最下行において、特許権者らは「表1の記載から金属粉末A2およびA3がジルコニウムを含有しないことは明らかである。」と述べている一方で、訂正後の請求項3では、B1及びB2の数値を使用しているにもかかわらず、ジルコニウムなどの添加元素に関する記載はなく、上記特許権者らの主張からすれば、請求項3においてもジルコニウムを含め、Si、O、P、Cu以外の元素は含まれないことは自明であるが、本件発明3、8は、本件明細書の【0027】の記載に基づけば、添加元素を含み得る記載となっており、特許を受けようとする発明が明確でない旨主張している。
しかし、本件明細書の【0027】の記載によれば、本件発明3、8は、実施例に記載されている元素以外の添加元素を含み得るものであることは明らかであるから、申立人2の上記主張は採用できない。

6 意見書2-2における申立人2の主張について
(1) 申立人2は、意見書2-2の1頁9行?最下行において、特許権者らが以下の立場1、2をとっていることを前提に主張をしている。
立場1:本件明細書の【0058】(【表1】の金属粉末A2、A3)の記載から「ジルコニウムを含有しない」(訂正事項1)との発明特定事項が導き出せる(訂正請求書6頁)。
立場2:訂正後の請求項1の「残部が銅からなり」の表現が、本件明細書の【0027】のとおり、例えば酸素のような銅以外の不純物元素を含むことを許容するものとして解釈する。
以下、上記立場1、2を前提とする申立人2の主張について検討する。

ア 本件発明1、6の明確性要件違反について(意見書2-2の2頁1行?15行)
申立人2は、特許権者らは、本件実施例の金属粉末A2及びA3から「ジルコニウムを含有しない」との事項を導き出すために、「Cu(残部)」との記載を、“銅以外の不純物元素を含有せず、銅のみによって残部が形成される”という意味に狭く解釈する(立場1)一方、訂正後の請求項1の「残部が銅からなり」の表現については、本件明細書の【0027】の記載に従って、“Oのような銅以外の不純物元素を含むことを許容する”との広い解釈を維持しており(立場2)、双方の解釈に不整合が生じているため、訂正後の請求項1に係る発明において「ジルコニウムを含有しない」ことに争いはないとしても、「残部が銅からな」るとの発明特定事項が、ジルコニウム以外の不純物元素(例えば、酸素)の含有を許容するものであるか否かが不明である旨主張している。
しかし、本件明細書の【0058】の【表1】において、金属粉末A2及びA3は、O(酸素)を含んでおり、当該O(酸素)は、同【0027】の記載からすると、不純物元素であるといえる。
そうすると、本件発明1の「ジルコニウムを含有しない」との事項は、ジルコニウム以外の不純物元素(例えば、酸素)を含むことを排除するものではない。
以上から、本件発明1の「残部が銅からなる」との発明特定事項は、ジルコニウム以外の不純物元素(例えば、酸素)の含有を許容するものであることは明らかである。
したがって、申立人2の上記主張は採用できない。

イ 請求項1、6の訂正要件違反について(意見書2-2の2頁16行?3頁10行)
申立人2は、立場2では、ジルコニウム以外の他の任意の不純物元素が含有される態様も包含していることになるが、特許権者が訂正の根拠とする金属粉末A2、A3は、Cr及びOと「Cu(残部)」とからなる金属粉末であり、Cr、O及びCu以外には、ジルコニウムを含むあらゆる不純物元素が含まれていないものであるから、金属粉末A2、A3の実施例から、“Cr、O及びCu以外に、ジルコニウムを含むあらゆる不純物元素が含まれていない”との発明特定事項を導き出すことは可能かもしれないが、「ジルコニウムを含有しない」(=ジルコニウム以外の他の不純物元素の含有は許容する)との発明特定事項を本件明細書から導き出すことはできない旨主張している。
しかし、前記第2の2(1)で検討したように、訂正事項1に係る「ジルコニウムを含有しない」なる訂正は、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、前記アで検討したように、本件発明1の「残部が銅からなる」との発明特定事項は、ジルコニウム以外の不純物元素(例えば、酸素)の含有を許容するものであることは明らかである。
したがって、申立人2の上記主張は採用できない。

ウ 本件発明1、6のサポート要件違反について(意見書2-2の3頁11?22行)
申立人2は、立場2では、ジルコニウム以外の他の任意の不純物元素が含有される態様をも包含していることになる一方、金属粉末A2及びA3の実施例を含めて本件明細書のいずれの箇所においても、“Cr、O及びCuを含有するとともに(ジルコニウムは含有しないが)ジルコニウム以外の他の任意の不純物元素を含有した金属粉末”については何ら記載されておらず、本件発明1は本件明細書に記載されたものではない旨主張している。
しかし、前記アで検討したように、金属粉末A2及びA3のO(酸素)は不純物元素であるから、本件明細書には、ジルコニウム以外の任意の不純物元素を含有する金属粉末が記載されているといえる。
したがって、申立人2の上記主張は採用できない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立理由によっては、請求項1、3?6、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3?6、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求による訂正によって請求項2、7に係る特許は存在しなくなったので、当該請求項2、7に係る特許については、特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形用の銅合金粉末であって、
クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなり、
ジルコニウムを含有しない、銅合金粉末。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
積層造形用の銅合金粉末であって、
珪素を0.21質量%以上0.55質量%以下含有し、残部が銅からなる、銅合金粉末。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の銅合金粉末を含む粉末層を形成する第1工程と、
前記粉末層において、所定位置の前記銅合金粉末を固化させることにより、造形層を形成する第2工程と、を含み、
前記第1工程と前記第2工程とを順次繰り返し、前記造形層を積層することにより、積層造形物を製造する、積層造形物の製造方法。
【請求項5】
前記積層造形物を熱処理する熱処理工程をさらに含む、請求項4に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項6】
銅合金から構成される積層造形物であって、
前記銅合金は、クロムを0.51質量%超0.94質量%以下含有し、残部が銅からなり、ジルコニウムを含有しないクロム含有銅合金であり、
前記クロム含有銅合金の理論密度に対する相対密度が96%以上100%以下であり、
導電率が26%IACS以上である、積層造形物。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
銅合金から構成される積層造形物であって、
前記銅合金は、珪素を0.21質量%以上0.55質量%以下含有し、残部が銅からなる珪素含有銅合金であり、
前記珪素含有銅合金の理論密度に対する相対密度が96%以上100%以下であり、
導電率が26%IACS以上である、積層造形物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-11 
出願番号 特願2015-97974(P2015-97974)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B22F)
P 1 651・ 537- YAA (B22F)
P 1 651・ 113- YAA (B22F)
P 1 651・ 536- YAA (B22F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 河本 充雄
金 公彦
登録日 2016-10-28 
登録番号 特許第6030186号(P6030186)
権利者 株式会社ダイヘン 地方独立行政法人大阪産業技術研究所
発明の名称 銅合金粉末、積層造形物の製造方法および積層造形物  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ