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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09B
管理番号 1341978
異議申立番号 異議2017-700733  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-25 
確定日 2018-06-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6124424号発明「顔料着色剤組成物及び顔料分散剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6124424号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]、[7、8]について訂正することを認める。 特許第6124424号の請求項1ないし4、6ないし8に係る特許を維持する。 特許第6124424号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6124424号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成24年3月28日に出願された特願2012-74712号の一部を平成27年9月18日に新たな特許出願としたものであって、平成29年4月14日に特許権の設定登録がされ、同年5月10日にその特許公報が発行され、その後、その請求項1?8に係る発明の特許に対して、同年7月25日に、特許異議申立人 平川 弘子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年1月10日付けで取消理由の通知及び審尋がされ、その指定期間内である同年3月15日に意見書、回答書の提出及び訂正の請求があり、特許異議申立人から同年4月19日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?24のとおりである。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1を「顔料、液媒体、前記顔料の分散安定性を向上させるための色素誘導体及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gで、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、
前記色素誘導体が、前記アミノ基とイオン結合し得る酸性である官能基を有し、
前記顔料の平均粒子径が10?150nmであり、
前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部で、且つ、前記色素誘導体の含有量が5?100質量部である
ことを特徴とする顔料着色剤組成物。」(訂正箇所に下線を付した。以下同様。)とする。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項5を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項6を「前記顔料の平均粒子径が20?50nmであり、且つ、カラーフィルター用着色剤である請求項1?4のいずれか1項に記載の顔料着色剤組成物。」とする。

(4)訂正事項4
訂正前の【0088】の「(合成例4:AC-4)」を「(参考合成例4:AC-4)」とする。

(5)訂正事項5
訂正前の【0089】の「(合成例5:AC-5)
合成例4で使用したと同様の反応容器に、BzCl50.8g、及びPGM50.8gを用いたこと以外は、前述の合成例4の場合と同様にして、」を「(合成例5:AC-5)
参考合成例4で使用したと同様の反応容器に、BzCl50.8g、及びPGM50.8gを用いたこと以外は、前述の参考合成例4の場合と同様にして、」とする。

(6)訂正事項6
訂正前の【0094】の表1の「表1:合成例1?5で得られたポリマーの組成及び物性」を「表1:合成例1?3、5及び参考合成例4で得られたポリマーの組成及び物性」とし、表の1行目の「合成例4」を「参考合成例4」とする。

(7)訂正事項7
訂正前の【0097】の「(実施例1?6、比較例1及び2:顔料着色剤組成物)」を「(実施例1?4、6、参考例5、比較例1及び2:顔料着色剤組成物)」とする。

(8)訂正事項8
訂正前の【0101】の表4の1行目の「実施例5」を「参考例5」とする。

(9)訂正事項9
訂正前の【0103】の表5の1行目の「実施例5」を「参考例5」とする。

(10)訂正事項10
訂正前の【0104】の「表5に示すように、実施例1?6の顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径は、いずれも50nm以下であり、微細化された顔料が十分に微分散されていることが確認された。また、実施例1?6の顔料分散液のいずれも、初期の粘度は9mPa・s以下であった。さらに、初期の粘度と保存後の粘度を比較すると、粘度変化が極めて小さいことが分かる。以上より、実施例1?6の顔料分散液は十分な分散安定性を有することが明らかとなった。」を「表5に示すように、実施例1?4、6及び参考例5の顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径は、いずれも50nm以下であり、微細化された顔料が十分に微分散されていることが確認された。また、実施例1?4、6及び参考例5の顔料分散液のいずれも、初期の粘度は9mPa・s以下であった。さらに、初期の粘度と保存後の粘度を比較すると、粘度変化が極めて小さいことが分かる。以上より、実施例1?4、6及び参考例5の顔料分散液は十分な分散安定性を有することが明らかとなった。」とする。

(11)訂正事項11
訂正前の【0107】の「(実施例7?9:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)」を「(実施例7、8及び参考例9:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)」とする。

(12)訂正事項12
訂正前の【0108】の表6の1行目の「実施例9」を「参考例9」とし、11行目の「実施例5」を「参考例5」とする。

(13)訂正事項13
訂正前の【0109】の「実施例9」を「参考例9」とする。

(14)訂正事項14
訂正前の【0113】の「実施例7?9」を「実施例7、8及び参考例9」とする。

(15)訂正事項15
訂正前の【0114】の表7の4行目の「実施例9」を「参考例9」とする。

(16)訂正事項16
訂正前の【0115】の「表7に示したように、実施例7の赤色顔料インク-1、実施例8の緑色顔料インク-1、及び実施例9の青色顔料インク-1を用いて製造したガラス基板では、いずれも短時間で露光部の塗膜が溶解するとともに、溶解残渣(膜状のカス)が生ずることなく、良好な現像性を示した。なお、溶解せずに残存した塗膜の端部(エッジ)を顕微鏡で観察したところ、いずれもシャープであることが確認できた。すなわち、実施例7?9の顔料着色剤組成物(顔料インク)をカラーフィルターの製造に用いれば、現像時間を短縮することができることが確認され、その生産性の向上が期待される。」を「表7に示したように、実施例7の赤色顔料インク-1、実施例8の緑色顔料インク-1、及び参考例9の青色顔料インク-1を用いて製造したガラス基板では、いずれも短時間で露光部の塗膜が溶解するとともに、溶解残渣(膜状のカス)が生ずることなく、良好な現像性を示した。なお、溶解せずに残存した塗膜の端部(エッジ)を顕微鏡で観察したところ、いずれもシャープであることが確認できた。すなわち、実施例7、8及び参考例9の顔料着色剤組成物(顔料インク)をカラーフィルターの製造に用いれば、現像時間を短縮することができることが確認され、その生産性の向上が期待される。」とする。

(17)訂正事項17
訂正前の【0116】の「実施例7?9」を「実施例7、8及び参考例9」とする。

(18)訂正事項18
訂正前の【0119】の「実施例10?12」を「実施例10、11及び参考例12」とする。

(19)訂正事項19
訂正前の【0120】の表8の1行目の「実施例12」を「参考例12」とする。

(20)訂正事項20
訂正前の【0122】の表9の1行目の「実施例12」を「参考例12」とする。

(21)訂正事項21
訂正前の【0123】の「実施例10?12」を「実施例10、11及び参考例12」とする。

(22)訂正事項22
訂正事項【0124】の「(実施例13?15:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)
実施例10?12で得たそれぞれの顔料分散液を用い、表10に示す各成分を表10に示す量(部)で配合し、混合機で十分混合して、カラーレジストである各色のカラーフィルター用顔料着色剤組成物(顔料インク)を得た。」を「(実施例13、14及び参考例15:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)
実施例10、11及び参考例12で得たそれぞれの顔料分散液を用い、表10に示す各成分を表10に示す量(部)で配合し、混合機で十分混合して、カラーレジストである各色のカラーフィルター用顔料着色剤組成物(顔料インク)を得た。」とする。

(23)訂正事項23
訂正前の【0125】の表10の1行目の「実施例15」を「参考例15」とし、7行目の「実施例12」を「参考例12」とする。

(24)訂正事項24
訂正前の【0126】の「実施例13?15で得たそれぞれのカラーフィルター用顔料着色剤組成物を用い、以下のようにしてガラス基板を作製した。まず、シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。実施例13の「赤色顔料インク-2」を300rpmで5秒間の条件でガラス基板上にスピンコートした。そして、80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の光量で露光し、赤色ガラス基板を製造した。また、上記と同様に、実施例14の「緑色顔料インク-2」、及び実施例15の「青色顔料インク-2」をそれぞれ用いたこと以外は、上記の赤色ガラス基板を製造した場合と同様にして、緑色ガラス基板及び青色ガラス基板を製造した。」を「実施例13、14及び参考例15で得たそれぞれのカラーフィルター用顔料着色剤組成物を用い、以下のようにしてガラス基板を作製した。まず、シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。実施例13の「赤色顔料インク-2」を300rpmで5秒間の条件でガラス基板上にスピンコートした。そして、80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の光量で露光し、赤色ガラス基板を製造した。また、上記と同様に、実施例14の「緑色顔料インク-2」、及び参考例15の「青色顔料インク-2」をそれぞれ用いたこと以外は、上記の赤色ガラス基板を製造した場合と同様にして、緑色ガラス基板及び青色ガラス基板を製造した。」とする。

(25)訂正事項25
訂正前の請求項7を「構造中に活性水素基を有する顔料、酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料を分散させるための高分子分散剤を主成分として含有してなる顔料分散剤であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gで、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であることを特徴とする顔料分散剤。」

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的要件の適否について
ア 訂正事項1、2、25について
訂正事項1は、請求項1の顔料着色剤組成物に含有される高分子分散剤のAのポリマーブロックの酸価の下限を訂正前よりさらに限定するとともに、顔料着色剤組成物に含有される顔料100質量部に対する、高分子分散剤及び色素誘導体の含有量比の上下限を限定したものであり、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、請求項を削除するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項25は、請求項7の顔料分散剤に含有される高分子分散剤のAのポリマーブロックの酸価の下限を訂正前よりさらに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項3について
訂正事項2に伴い訂正前の請求項5が削除されたため引用する請求項の番号の不整合を解消したものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

ウ 訂正事項4?24について
明細書に記載された【0088】の特許請求の範囲の記載との関係で不整合のあった合成例4を参考合成例4とするもの、及びそれにともなって合成例4と関連した実施例を参考例にしたものであって、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(2)新規事項の有無について
訂正事項1、25の高分子分散剤のAのポリマーブロックの酸価の下限である「62.2」は、合成例2のAのポリマーブロックの酸価の数値として記載されており、訂正事項1の顔料着色剤組成物に含有される顔料100質量部に対する、高分子分散剤及び色素誘導体の含有量比の上下限の限定は、訂正前の請求項5に記載されたものである。
また、訂正事項2の請求項の削除やそれに伴う引用する請求項の番号の不整合の解消(訂正事項3)、特許請求の範囲の特定との関係で、明細書の実施例を参考例とすること(訂正事項4?24)は、新規事項といえないことは明らかである。

(3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1?25に関連する事項は、明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮し、明瞭でない記載の釈明をしたものといえるから、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものとはいえない。

3 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?6について、請求項2?6はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?6に対応する訂正後の請求項1?6は、一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。
また、訂正事項25に係る訂正前の請求項7?8について、請求項8は請求項7を引用しているものであって、訂正事項25によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項7?8に対応する訂正後の請求項7?8は、一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

4 明細書の訂正に係る請求項について
明細書に関する訂正事項4?24は、いずれも、訂正前の一群の請求項である請求項1?6,又は一群の請求項である請求項7?8に関する訂正であり、一群の請求項に係る全てについて行われたものである。

5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の[1?6],[7,8]についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?4,6,7,8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明4」,「本件発明6」,「本件発明7」,「本件発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4,6,7,8に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】
顔料、液媒体、前記顔料の分散安定性を向上させるための色素誘導体及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gで、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、
前記色素誘導体が、前記アミノ基とイオン結合し得る酸性である官能基を有し、
前記顔料の平均粒子径が10?150nmであり、
前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部で、且つ、前記色素誘導体の含有量が5?100質量部であることを特徴とする顔料着色剤組成物。
【請求項2】
前記A-Bブロックコポリマーのアミン価が、47.5?134.1mgKOH/gである請求項1に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項3】
前記Aブロックの酸価が、62.2?107.5mgKOH/gである請求項1又は2に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項4】
前記色素誘導体の酸性である官能基が、スルホン酸基である請求項1?3のいずれか1項に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記顔料の平均粒子径が20?50nmであり、且つ、カラーフィルター用着色剤である請求項1?4のいずれか1項に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項7】
構造中に活性水素基を有する顔料、酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料を分散させるための高分子分散剤を主成分として含有してなる顔料分散剤であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gで、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であることを特徴とする顔料分散剤。
【請求項8】
前記A-Bブロックコポリマーのアミン価が、47.5?134.1mgKOH/gである請求項7に記載の顔料分散剤。

第4 取消理由
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。

(1ア)訂正前の請求項7,8に係る特許は、当該請求項に係る発明が、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(1イ)訂正前の請求項1?8に係る特許は、当該請求項に係る発明が、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2?5号証に記載の事項に基いて、又は甲第2号証に記載された発明及び下記甲第1,3?5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(1ウ)訂正前の請求項1?8に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(1エ)訂正前の請求項1?6に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)甲号証
甲第1号証:特開2012-32767号公報
甲第2号証:国際公開第2011/129078号
甲第3号証:特開2010-72293号公報
甲第4号証:カラーフィルターのプロセス技術とケミカルス、市村國宏、2006年1月31日 初版 第79?86頁
甲第5号証:特開2001-220520号公報

2 当審が通知した取消理由の概要
(1)訂正前の請求項1?8に係る特許に対して平成30年1月10日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由1:請求項1?6に係る発明は、請求項1の「顔料の平均粒子径が10?150nmである」との記載、請求項6の「顔料の平均粒子径が20?50nmであり」との記載は平均粒子径がどの概念を選択して規定しているのか不明確であり、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

理由2:請求項1?8に係る発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物3?5に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

理由3:請求項1?8に係る発明は、刊行物2に記載された発明、及び刊行物3?5に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)引用刊行物
刊行物1:特開2012-32767号公報(甲第1号証)
刊行物2:国際公開第2011/129078号(甲第2号証)
刊行物3:特開2010-72293号公報(甲第3号証)
刊行物4:カラーフィルターのプロセス技術とケミカルス、市村國宏、2006年1月31日 初版 第79?86頁(甲第4号証)
刊行物5:特開2001-220520号公報(甲第5号証)

なお、刊行物3?5は、本件発明の出願日時点での技術常識を示すものである。

第5 当審の判断
当審は、本件発明1?4,6?8は、当審の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
さらに、訂正前の請求項5に係る特許は、訂正により削除されているので、申立てを却下する。

当審が通知した取消理由の判断

1 理由1(特許法第36条第6項第2項)について

(1)取消理由通知において、訂正前の請求項1?6の「顔料の平均粒子径」の平均粒子径の概念が不明確であると通知したところ、平成30年3月15日付け意見書において、特許権者は、「明細書の段落【0065】記載のとおり、「透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して求める」ことで得た値であり、数平均粒子径である。
実施例で得た顔料粉末についての平均粒子径は、具体的には、透過型電子顕微鏡(商品名:H7100、日立製作所製)を使用して顔料粒子を撮影し、任意に選択した10個程度の顔料粒子の平均値として測定、及び、算出するという簡易な方法で測定した値である。」
と主張し、本件発明の「顔料の平均粒子径」の概念が数平均粒子径であること、及び具体的な測定方法を説明している。
この説明は、明細書の【0065】の「透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して求める」との記載に合致していること、技術常識を示す甲第4号証の文献においても、第82頁に顔料の微粒子化の程度を「光透過性(高輝度),高コントラスト化には顔料の微粒子化や粒度分布の均一化が最も有効な方法であり,実際にCF用途には30?60nm程度の大きさに微細化調製された顔料が使用されている。」と平均粒子径の測定方法を特に明示せずに平均粒子径の数値範囲が記載されていることを考慮すると、請求項1の「顔料の平均粒子径が10?150nmである」との記載、請求項6の「顔料の平均粒子径が20?50nmであり」との記載に、測定法の明示がないからといって、第三者に不測の不利益を与えるほどの不明確な点はないといえる。
そして、本件明細書の背景技術の【0004】の「しかしながら、液晶カラーテレビジョン用のカラーフィルターについては、例えば、色濃度、光透過性、及びコントラスト比等のカラー表示性能(画素の性能)をより向上させることが要求されており、従来技術では十分に対応できていない。このような要求に対しては、使用する顔料の粒子径を小さくして超微粒子化することで、画素の性能を改良しようとする傾向にある。しかしながら、超微粒子化された顔料は、超微粒子化されない顔料と同じ質量であっても粒子個数が増加しているので、表面積も拡大している。このため、従来の技術では、超微粒子化した顔料の分散安定性を十分に維持することが困難である。」との記載から明らかなように、本件発明の平均粒子径の数値範囲は、従来技術でも知られた程度のものあるともいえる。

(2)したがって、上記の点において、請求項1?4,6に係る発明が不明確であるとはいえず、取消理由1は解消している。

2 理由2及び理由3について(特許法第29条第2項)について

(1)引用刊行物(再掲)
刊行物1:特開2012-32767号公報(甲第1号証)
刊行物2:国際公開第2011/129078号(甲第2号証)
刊行物3:特開2010-72293号公報(甲第3号証)
刊行物4:カラーフィルターのプロセス技術とケミカルス、市村國宏、2006年1月31日 初版 第79?86頁(甲第4号証)
刊行物5:特開2001-220520号公報(甲第5号証)

なお、刊行物3?5は、本件発明の出願日時点での技術常識を示すものである。

(2)刊行物の記載
ア 刊行物1
本件出願日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物1には以下の記載がある。

(1a)「【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)顔料を含む着色剤、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰り返し単位(2)と、酸性基を有する繰り返し単位(3)を含み、前記繰り返し単位(1)以外の繰り返し単位の合計に対する、前記繰り返し単位(2)の共重合割合が75質量%以上であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.0?1.9である共重合体、及び
(C)架橋剤
を含有することを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
【化1】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、・・・又は-NR^(5)R^(6)(但し、R^(5)及びR^(6)は、相互に独立に、水素原子又は炭化水素基を示し、R^(5)及びR^(6)が互いに結合して飽和複素環を形成してもよい。)を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化2】

〔式(2)において、
R^(7)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(8)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕
【請求項2】
前記(B)共重合体において、前記繰り返し単位(1)以外の繰り返し単位の合計に対する、前記繰り返し単位(2)の共重合割合が75?99質量%であり、かつ前記繰り返し単位(3)の共重合割合が1?20質量%である、請求項1に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
【請求項3】
前記(B)共重合体が前記繰り返し単位(1)を有するAブロックと、前記繰り返し単位(2)及び前記繰り返し単位(3)を有するBブロックとを含むブロック共重合体である、請求項1又は2に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
【請求項4】
前記(B)共重合体の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.0?1.7である、請求項1?3のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用着色組成
物。
【請求項5】
更に(D)バインダー樹脂(但し、前記(B)成分を除く。)を含有する、請求項1?4のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
【請求項6】
更に(E)光重合開始剤を含有する、請求項1?5のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
【請求項7】
着色剤として更に染料を含むものである、請求項1?6のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された着色層を備えてなるカラーフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルタを具備する表示素子。
【請求項10】
次の成分(a1)、(B)及び(F);
(a1)顔料、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰り返し単位(2)と、酸性基を有する繰り返し単位(3)を含み、前記繰り返し単位(1)以外の繰り返し単位の合計に対する、前記繰り返し単位(2)の共重合割合が75質量%以上であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.0?1.9である共重合体、及び
(F)溶媒
を含有することを特徴とするカラーフィルタ用顔料分散液。
【化3】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、・・・又は-NR^(5)R^(6)(但し、R^(5)及びR^(6)は、相互に独立に、水素原子又は炭化水素基を示し、R^(5)及びR^(6)が互いに結合して飽和複素環を形成してもよい。)を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化4】

〔式(2)において、
R^(7)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(8)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用着色組成物、カラーフィルタ及び表示素子に関わり、より詳しくは、透過型あるいは反射型のカラー液晶表示素子、固体撮像素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等に用いられるカラーフィルタに有用な着色層の形成に用いられる着色組成物、当該着色組成物を用いて形成された着色層を備えるカラーフィルタ、並びに当該カラーフィルタを具備する表示素子に関する。」(下線は当審にて追加。以下同様。)

(1b)「【0013】
更に、本発明は、次の成分(a1)、(B)及び(F);
(a1)顔料、
上記(B)共重合体、及び
(F)溶媒
を含有することを特徴とするカラーフィルタ用顔料分散液を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカラーフィルタ用着色組成物は、色度特性に優れ、現像性及び保存安定性にも優れる。本発明の着色組成物を用いれば、コントラストの高い各色画素を有するカラーフィルタを得ることができる。
しがたって、本発明のカラーフィルタ用着色組成物は、カラー液晶表示素子用カラーフィルタ、固体撮像素子の色分解用カラーフィルタ、有機EL表示素子用カラーフィルタ、電子ペーパー用カラーフィルタを始めとする各種のカラーフィルタの作製に極めて好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
カラーフィルタ用着色組成物
以下、本発明のカラーフィルタ用着色組成物(以下、単に「着色組成物」という。)の構成成分について説明する。
【0016】
-(A)着色剤-
本発明の着色組成物は、(A)着色剤として(a1)顔料を含有する。(a1)顔料としては特に限定されるものではなく、有機顔料、無機顔料のいずれでもよい。本発明において(a1)顔料は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。もちろん、有機顔料と無機顔料を混合して使用することもできる。」

(1c)「【0049】
(B)共重合体の酸価は、保存安定性の観点から、好ましくは5?70mgKOH/g、より好ましくは10?55mgKOH/g、特に好ましくは15?45mgKOH/gである。ここで、本発明において「酸価」とは、共重合体溶液の溶媒を除いた不揮発分1gを中和するのに必要なKOHのmg数であり、具体的には、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものをいう。
また、(B)共重合体のアミン価は、保存安定性の観点から、好ましくは10?200mgKOH/g、より好ましくは30?170mgKOH/g、特に好ましくは50?150mgKOH/gである。ここで、本発明において「アミン価」とは、共重合体溶液の溶媒を除いた不揮発分1gを中和するのに必要な酸と当量のKOHのmg数であり、具体的には、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものをいう。
【0050】
(B)共重合体は、繰り返し単位(1)?繰り返し単位(3)を有する限り、特に限定されるものではないが、分散性をより高める点から、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有さず、繰り返し単位(1)を有するAブロックと、繰り返し単位(1)を有さず、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有するBブロックとを含む、ブロック共重合体であることが好ましい。該ブロック共重合体は、A-Bブロック共重合体又はB-A-Bブロック共重合体であることが好ましい。この場合、Aブロック/Bブロックの共重合比(質量比)は、5/95?70/30が好ましく、10/90?60/40がより好ましく、15/85?40/60が特に好ましい。」

(1d)「【0130】
<(B)共重合体の合成>
以下、「(B)共重合体の合成」に使用する原料の略称は、次のとおりである。
THF :テトラヒドロフラン
EEMA:メタクリル酸1-エトキシエチル
MA :メタクリル酸
nBMA:ノルマルブチルメタクリレート
MMA :メタクリル酸メチル
AIBN:2,2'-アゾビスイソブチロニトリル
DAMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
PME-200:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製)
【0131】
合成例1
反応容器にTHF600.30g、塩化リチウム(3.63質量%濃度THF溶液)10.80g、ジフェニルエチレン3.84gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム9.60g(15.36質量%濃度ヘキサン溶液)を加え、10分間熟成した。
次に、nBMA103.84g、EEMA13.45gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後15分反応を継続した。そしてガスクロマトグラフィー(以下、GCと略す)を測定し、モノマーの消失を確認した。
次に、DMMA32.25gを滴下し、滴下後30分反応継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.42gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体の50質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液220gを、160℃に加温し3時間熟成させた。その後、40質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液に調整した。このようにして、DAMA由来の繰り返し単位を有するAブロックと、MA及びnBMA由来の繰り返し単位を有するBブロックからなるブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を「共重合体(B-1)」とする。
【0132】
合成例2
反応容器にTHF55.7g、塩化リチウム(4.54質量%濃度THF溶液)4.65g、ジフェニルエチレン0.45gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム1.22g(15.36質量%濃度ヘキサン溶液)を加え、10分間熟成した。
次に、EEMA1.66g、nBMA9.9g、MMA4.14gの混合液を120分かけて滴下し、滴下後15分反応を継続した。そしてGCを測定し、モノマーの消失を確認した。
次に、DMMA3.96gを滴下し、滴下後30分反応継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール0.41gを加えて反応を停止した。
得られた前駆体ポリマーの25質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液65.64g中に水16.44gを加え、100℃に加温し8時間反応させた。水分を留去し、40質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液に調整した。このようにして、DAMA由来の繰り返し単位を有するAブロックと、MA、nBMA及びMMA由来の繰り返し単位を有するBブロックからなるブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を「共重合体(B-2)」とする。」

(1e)「【0142】
【表1】


(1f)「【0144】
調製例2?8及び比較調製例1?7
調製例1において、着色剤、(B)共重合体及び溶媒の種類及び量を表2に示すように変更した以外は調製例1と同様にして、顔料分散液(A-2)?(A-15)を調製した。
【0145】
<顔料分散液の評価>
得られた顔料分散液の粘度を、E型粘度計(東京計器製)を用いて測定した。また、得られた着色剤分散液を遮光ガラス容器に充填し、密閉状態で23℃にて14日間静置した後、E型粘度計(東京計器製)を用いて再度粘度を測定した。そして、調製直後の粘度に対する14日間保存後の粘度の増加率を算出し、増加率が5%未満の場合を「A」、5%以上10%未満の場合を「B」、10%以上の場合を「C」として評価した。評価結果を表2に示す。
【0146】
【表2】

【0147】
表2中、「G58」とはC.I.ピグメントグリーン58を、「Y150」とはC.I.ピグメントイエロー150を、「B15:6」とはC.I.ピグメントブルー15:6、「V23」とはC.I.ピグメントバイオレット23を、「Y179」とは有機染料であるC.I.ソルベントイエロー179を、「PGMEA」とはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、「PGME」とはプロピレングリコールモノメチルエーテルを、それぞれ意味する。」

イ 刊行物2
本件出願日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物2には以下の記載がある。
(2a)「3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む重合体からなるブロック鎖(A)と、ポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位及び酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体からなるブロック鎖(B)とを含有することを特徴とする共重合体。」(特許請求の範囲[請求項1])

(2b)「【発明の詳細な説明】 新規共重合体
本発明は、分散剤として有用な新規な共重合体に関する。」

(2c)「実施例2
[0080](重合工程)
1000mLフラスコにTHF695.92g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)13.83gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)9.29gを加え、10分間熟成した。
次に、EEMA8.47g、nBMA71.15g、PEGMA31.16gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後30分間反応を継続した。そしてGC・GPC(移動相THF、DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した。
次にDMMA45.39gを滴下し、滴下後30分反応継続した。そしてGC・GPC(移動相DMF)を測定しモノマーの消失を確認した後、メタノール3.21gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が5610、分子量分布が1.10、組成比がDMMA-[nBMA/PEGMA/EEMA]=29-[46/20/5]重量%の共重合体であることを確認した。

[0081](脱保護工程)
得られた共重合体の50重量%濃度のPGMEA溶液213gを、160℃に加温し3.5時間熟成させた。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が4800、分子量分布が1.12、組成比がDMMA-[nBMA/PEGMA/MA]=30-[47/20/3]重量%の共重合体であることを確認した。」(実施例2)

(2d)「実施例4
[0084](重合工程)
1000mLフラスコにTHF683.03g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)11.92gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)8.32gを加え、10分間熟成した。
続いてMMA5.06gを添加し、5分間反応を継続した。そしてGC測定でモノマーの消失を確認後、一部をサンプリングしてGPC測定(移動相DMF)を行ったところ、分子量311(3.10量体)の重合体が生成していた。
次に、EEMA9.68g、EHMA22.0g、nBMA22.09g、MMA41.60g、BzMA16.83g、PEGMA13.75gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後30分間、反応を継続した。そしてGC・GPC(移動相THF、DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した。
次にDMMA42.06gを滴下し、滴下後30分間、反応を継続した。そしてGC・GPC(移動相DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール4.48gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が6980、分子量分布が1.10、組成比がDMMA-[MMA/nBMA/EHMA/PEGMA/BzMA/EEMA]=24-[27/13/13/8/10/5]重量%の共重合体であることを確認した。

(脱保護工程) 得られた前駆体ポリマーの50重量%濃度のPGMEA溶液212.32gを、160℃に加温し4時間反応させた。 得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が5300、分子量分布が1.13、組成比がDMMA-[MMA/nBMA/EHMA/PEGMA/BzMA/MA]=25-[28/13/13/8/10/3]重量%の共重合体であることを確認した。」

(2e)「[0087] 上記実施例1?4及び比較例1で得られた共重合体溶液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの40重量%溶液とした後、これらを顔料分散剤として用いて、以下の顔料分散液を調製した。
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36とC.I.ピグメントイエロー150との60/40(質量比)混合物15質量部、顔料分散剤として上記実施例1?4及び比較例1で得られたいずれかの共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を10質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル20質量部を用いて、ビーズミルにより12時間混合・分散して顔料分散液を調製した。
その結果、実施例1?4で得られた共重合体を用いて調製された顔料分散液は、鮮やかな緑色を示し、23℃で2週間保管した後も、調製直後と変わらぬ粘度値を示した。一方、比較例1で得られた共重合体を用いて調製された顔料分散液は、鮮やかな緑色を示したが、23℃で2週間保管した後、粘度値が調製直後対比で9%増加した。」

(2f)「実施例1
[0078](重合工程)
1000mLフラスコにテトラヒドロフラン(以下、THFと略すことがある)594.35g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)10.98gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム7.89g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、10分間熟成した。
次に、メタクリル酸1-エトキシエチル(以下、EEMAと略すことがある)4.04g、メタクリル酸n-ブチル(以下、nBMAと略すことがある)61.33g、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(PME-200 日油株式会社製)(以下、PEGMAと略すことがある)26.19gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後30分反応を継続した。そしてガスクロマトグラフィー(以下、GCと略す)・ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)(移動相THF、DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した。
次にメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(以下、DMMAと略すことがある)39.71gを滴下し、滴下後30分反応継続した。そして、GC・GPC(移動相DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.21gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が5260、分子量分布が1.09、組成比がDMMA-[nBMA/PEGMA/EEMA]=30-[47/20/3]重量%の共重合体であることを確認した。
[0079](脱保護工程)
得られた前駆体ポリマーの50重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略すことがある)溶液200gを、160℃に加温し3時間反応させた。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が5140、分子量分布が1.08、組成比がDMMA-[nBMA/PEGMA/MA]=31-[47/20/2]重量%の共重合体であることを確認した(MAは、メタクリル酸を表す)。
・・・
[実施例3]
【0082](重合工程)
1000mLフラスコにTHF578.66g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)11.20gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)7.34gを加え、10分間熟成した。
続いて、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略すことがある)4.30gを添加し、5分間反応を継続した。そして、GC測定でモノマーの消失を確認後、一部をサンプリングしてGPC測定(移動相DMF)を行ったところ、分子量293(2.92量体)の重合体が生成していた。
次に、EEMA4.52g、メタクリル酸2-エチルヘキシル(以下、EHMAと略すことがある)19.80g、nBMA19.50g、MMA36.48g、メタクリル酸ベンジル(以下、BzMAと略すことがある)15.03g、PEGMA11.99gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後30分間反応を継続した。そしてGC・GPC(移動相THF、DMF)を測定しモノマーの消失を確認した。
次にDMMA36.98gを滴下し、滴下後30分間、反応を継続した。そしてGC・GPC(移動相DMF)を測定しモノマーの消失を確認した後、メタノール3.21gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が6780、分子量分布が1.08、組成比がDMMA-[MMA/nBMA/EHMA/PEGMA/BzMA/EEMA]=25-[28/13/13/8/10/3]重量%の共重合体であることを確認した。
[0083](脱保護工程)
得られた共重合体の50重量%濃度のPGMEA溶液200gを、160℃に加温し3時間反応させた。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が6120、分子量分布が1.10、組成比がDMMA-[MMA/nBMA/EHMA/PEGMA/BzMA/MA]=25-[28/13/14/8/10/2]重量%の共重合体であることを確認した。」

ウ 刊行物3
本件出願前に頒布された刊行物であると認められる刊行物3には以下の記載がある。
(3a)「【0017】
<カラーフィルタ用着色組成物>
本発明のカラーフィルタ用着色組成物は、平均一次粒子径が10nm?40nmであるポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンとC.I.ピグメントイエロー150とからなる有機顔料(A)、一般式(I)で表される繰り返し単位と(メタ)アクリル酸を由来とする繰り返し単位とを含む共重合体(B)、重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)、及び有機溶剤(E)を含有することを特徴とする。
以下、本発明のカラーフィルタ用着色組成物を構成する各成分について、詳細に説明する。」

(3b)「【0027】
本発明のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンは、平均一次粒子径が10nm?40nmであるものを用いることを要する。
この範囲の平均一次粒子径のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンを用いることにより、分散性安定性や着色力に優れるカラーフィルタ用着色組成物が得られることから、この組成物を用いることで、輝度が高く、コントラストの高い画素部を形成することができる。」

(3c)「【0042】
本発明のカラーフィルタ用着色組成物においては、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンとC.I.ピグメントイエロー150とを組み合わせて用いる。組み合わせて用いるC.I.ピグメントイエロー150の平均一次粒子径も10nm?40nmであることが好ましい。このような平均一次粒子径を有するC.I.ピグメントイエロー150は、従来公知の方法、例えば、ニーダーや連続式の微粒化装置でソルトミリングを行うことによって、容易に得ることができる。
【0043】
本発明におけるポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンとC.I.ピグメントイエロー150との併用割合は、質量換算で、前記ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン100部当たり、C.I.ピグメントイエロー150が10部?100部とすることが好ましく、更に好ましくは15部?90部、最適には20部?80部である。
【0044】
〔共重合体(B)〕
本発明のカラーフィルタ用着色組成物は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位と(メタ)アクリル酸を由来とする繰り返し単位とを含む共重合体(B)を含有する。
この共重合体(B)は、優れた顔料分散効果を発揮するため、本発明の着色組成物中において顔料の凝集を防ぎ、顔料が微細に分散した状態を維持する働きをする。この凝集防止効果は乾燥させた塗布膜中でも発揮され、現像時の残渣の低減に寄与する。また、アルキレンオキシ部位は現像液との親和性が高く、非露光部の基板界面との密着性を下げることにより、現像時の残渣の更なる低減に寄与する。
本発明のカラーフィルタ用着色組成物における共重合体(B)の含有量は、有機顔料の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部?200質量部、更に好ましくは20質量部?100質量部である。」

(3d)「【0075】
〔色素誘導体(G)〕
本発明のカラーフィルタ用着色組成物には、分散後の顔料の再凝集を防止する効果を有する色素誘導体(G)を添加することが好ましい。
色素誘導体(G)の含有量は、有機顔料の合計100質量部に対して、好ましくは0.001質量部?40質量部、更に好ましくは1質量部?30質量部である。
【0076】
色素誘導体は、有機色素に塩基性又は酸性の置換基を導入した化合物である。有機色素には、一般に色素とは呼ばれていない淡黄色の芳香族多環化合物、例えば、ナフタレン、アントラキノン、アクリドン等も含まれる。色素誘導体としては、特開63-305173号公報、特公昭57-15620号公報、特公昭59-40172号公報、特公昭63-17102号公報、特公平5-9469号公報、特開平9-176511公報等に記載されているものを使用でき、これらは単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。」

(3e)「【0084】
また、色素誘導体が有する酸性基として具体的には、スルホン酸基、テレフタル酸モノアミドメチル基等が挙げられる。
スルホン酸基は、アルミニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム等の金属や、アミンと塩を形成していてもよい。
特に、酸性基を有する色素誘導体のアルミニウム塩は、処理顔料の分散効果が大きいため好適に用いられる。」

エ 刊行物4
本件出願前に頒布された刊行物であると認められる刊行物4には以下の記載がある。
(4a)「光の散乱強度は粒子径の6乗に比例し,粒子の屈折率にも影響されると考えられている。つまり,高透過(高輝度),高コントラスト化には顔料の微粒子化や粒度分布の均一化が最も有効な方法であり,実際にCF用途には30?60nm程度の大きさに微細化調整された顔料が使用されている。」(82頁表1下4?7行)

(4b)「樹脂は構造中の官能基による顔料表面との酸塩基相互作用によって吸着する。しかしながら,有機顔料の表面は無極性に近く,樹脂吸着を促進し安定化させるためには分散剤の配合が必要とされる。上述の例では,高分子分散剤にシナジストを組み合わせた設計となっている。シナジストは顔料表面と分散剤や樹脂などの分散媒体との親和性を高めるためのもので,顔料表面に強固に吸着するアンカー部と分散媒体に親和性を有する極性部とからなり,顔料表面に吸着し表面を極性化する。シナジストには各種活性剤や顔料誘導体が用いられるが,特に,使用する顔料の類似構造体に極性基を導入したものや,それに準じた構造のものが優れ,極性によって酸性タイプ(カルボン酸基やスルホン酸基など),塩基性タイプ(アミノ基など),中性タイプがある。
図6に顔料誘導体の基本構造を示した。

[A]-(X)-(P)
A:有機顔料の基本骨格(アンカー部)
X:連結部(-CH_(2)-)(-SO_(2)-)(-CO-)
直接結合、その他
P:極性基(Polar Group・酸性基、塩基性基、中性基)
図6 顔料誘導体の基本構造

これらのシナジストや各種の分散剤は,顔料分散時に配合して使用することもできるが,表面処理剤として顔料に直接処理した方が有利な場合も多く,ケースに応じた使い方がされている。」(83頁図6及び図6下1?6行)

オ 刊行物5
本件出願日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物5には以下の記載がある。
(5a)「【0035】以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、部とは重量部を、%とは重量%をそれぞれ示す。また、顔料の一次粒子径は、透過型電子顕微鏡で観察して測定し、比表面積はBET法で測定した。実施例に先立ち、実施例で用いた色素誘導体を表1に示す。
【0036】
【表1】



(5b)「【0038】[実施例1]DPP顔料(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガジンDPP REDBO」、C.I.Pigment RED254)152部、色素誘導体(a)8部、塩化ナトリウム1600部、およびジエチレングリコール190部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、60℃で10時間混練した。つぎにこの混合物を3リットルの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして塩化ナトリウムおよび溶剤を除いた後、80℃で1昼夜乾燥し、156.8部のカラーフィルタ用顔料(一次粒子径30?40nm、比表面積80m^(2)/g)を得た。
・・・
【0040】[実施例3]色素誘導体(a)を色素誘導体(c)に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行い156.0部のカラーフィルタ用顔料(一次粒子径30?40nm、比表面積80m^(2)/g)を得た。」

(3)刊行物に記載された発明
ア 刊行物1に記載された発明
(ア) 摘記(1a)には、請求項1に「(A)顔料を含む着色剤、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰り返し単位(2)と、酸性基を有する繰り返し単位(3)を含み、・・・、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.0?1.9である共重合体、及び
(C)架橋剤
を含有する・・・カラーフィルタ用着色組成物。
【化1】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、・・・又は-NR^(5)R^(6)(但し、R^(5)及びR^(6)は、相互に独立に、水素原子又は炭化水素基を示し、R^(5)及びR^(6)が互いに結合して飽和複素環を形成してもよい。)を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化2】

〔式(2)において、
R^(7)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(8)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕」が記載され、請求項3には、
「前記(B)共重合体が前記繰り返し単位(1)を有するAブロックと、前記繰り返し単位(2)及び前記繰り返し単位(3)を有するBブロックとを含むブロック共重合体である・・・請求項1又は2に記載のカラーフィルタ用着色組成物」が記載されている。
そして、その特許請求の範囲の記載に対応した具体例の記載として、上記摘記(1d)には、ブロック共重合体の合成例として、「<(B)共重合体の合成>
以下、「(B)共重合体の合成」に使用する原料の略称」
「THF :テトラヒドロフラン
EEMA:メタクリル酸1-エトキシエチル
MA :メタクリル酸
nBMA:ノルマルブチルメタクリレート
MMA :メタクリル酸メチル
AIBN:2,2'-アゾビスイソブチロニトリル
DAMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
PME-200:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製)」を記載した上で、
「合成例1
反応容器にTHF600.30g、塩化リチウム(3.63質量%濃度THF溶液)10.80g、ジフェニルエチレン3.84gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム9.60g(15.36質量%濃度ヘキサン溶液)を加え、10分間熟成した。
次に、nBMA103.84g、EEMA13.45gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後15分反応を継続した。そしてガスクロマトグラフィー(以下、GCと略す)を測定し、モノマーの消失を確認した。
次に、DMMA32.25gを滴下し、滴下後30分反応継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.42gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体の50質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液220gを、160℃に加温し3時間熟成させた。その後、40質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液に調整した。このようにして、DAMA由来の繰り返し単位を有するAブロックと、MA及びnBMA由来の繰り返し単位を有するBブロックからなるブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を「共重合体(B-1)」とする。」と記載されている(BブロックをX1ブロック、AブロックをY1ブロックとする)。

さらに、摘記(1e)には、合成例1の共重合体B-1がMA 5質量部、nBMA73質量部、DAMA 22質量部から形成され、Mw/Mnが1.21、Mw8500、酸価33、アミン価79であることが示されている。
そして、ブロック共重合体(B-1)のMwは8500であり、Mw/Mnが1.21であるから、Mnは7025である。
X1ブロックとY1ブロックとの質量比は78(=5+73):22であるので、各ブロックのMnはX1ブロックが5479(=7025×(78/100))であり、Y1ブロックが1545(=7025×(22/100))であると計算できる。
また、X1ブロックは、MA 5質量部とnBMA 73質量部から構成され、MAの分子量が86.09g/molであるから、X1ブロックの酸価は、41.8(=(5/(5+73))/86.09×1000×56.11)mgKOH/gと計算できる。
Y1ブロックは、DAMAのみから構成されており、DAMAの分子量は157.21g/molであるから、Y1ブロックのアミン価は、356.9(=(22/22)/157.21×1000×56.11)mgKOH/gと計算できる。

したがって、刊行物1には、具体的記載として、「メタクリル酸(MA)及びノルマルブチルメタクリレート(nBMA)由来の繰り返し単位を有するX1ブロックと、ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するY1ブロックとからなり、
X1ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、X1ブロックの酸価が41.8mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が5479であり、
Y1ブロックは、ジメチルアミノエチルメタクリレートを構成成分とし、
Y1ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が1545であり、
Y1ブロックのみにジメチルアミノエチルメタクリレートが含まれており、
X1-Y1ブロック共重合体中のY1ブロックの含有量が22質量%であり、
X1-Y1ブロック共重合体中のMw/Mnが1.21、アミン価が79mgKOH/gであるブロック共重合体(B-1)」に係る発明(以下「刊行物1-1発明」という。)が開示されているといえる。

(イ) また、特許請求の範囲の記載に対応した具体例の記載として、上記摘記(1d)には、ブロック共重合体の合成例として、「合成例2
反応容器にTHF55.7g、塩化リチウム(4.54質量%濃度THF溶液)4.65g、ジフェニルエチレン0.45gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム1.22g(15.36質量%濃度ヘキサン溶液)を加え、10分間熟成した。
次に、EEMA1.66g、nBMA9.9g、MMA4.14gの混合液を120分かけて滴下し、滴下後15分反応を継続した。そしてGCを測定し、モノマーの消失を確認した。
次に、DMMA3.96gを滴下し、滴下後30分反応継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール0.41gを加えて反応を停止した。
得られた前駆体ポリマーの25質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液65.64g中に水16.44gを加え、100℃に加温し8時間反応させた。水分を留去し、40質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液に調整した。このようにして、DAMA由来の繰り返し単位を有するAブロックと、MA、nBMA及びMMA由来の繰り返し単位を有するBブロックからなるブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を「共重合体(B-2)」とする。」と記載されている(BブロックをX2ブロック、AブロックをY2ブロックとする)。

さらに、摘記(1e)には、合成例2の共重合体B-2が、MA 5質量部、MMA 23質量部、nBMA50質量部、DAMA 22質量部から形成され、Mw/Mnが1.19、Mw8100、酸価33、アミン価79であることが示されている。
そして、ブロック共重合体(B-2)のMwは8100であり、Mw/Mnが1.19であるから、Mnは6807である。
X2ブロックとY2ブロックとの質量比は78(=5+23+50):22であるので、各ブロックのMnはX2ブロックが5309(=6807×(78/100))であり、Y2ブロックが1497(=6807×(22/100))であると計算できる。
また、X2ブロックは、MA 5質量部とMMA 23質量部とnBMA 73質量部から構成され、MAの分子量が86.09g/molであるから、X2ブロックの酸価は、41.8(=(5/(5+23+50))/86.09×1000×56.11)mgKOH/gと計算できる。
Y2ブロックは、DAMAのみから構成されており、DAMAの分子量は157.21g/molであるから、Y2ブロックのアミン価は、356.9(=(22/22)/157.21×1000×56.11)mgKOH/gと計算できる。

したがって、刊行物1には、具体的記載として、「メタクリル酸、ノルマルブチルメタクリレート及びメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を有するX2ブロックと、ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するY2ブロックとからなり、
X2ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、X2ブロックの酸価が41.8mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が5309であり、
Y2ブロックは、ジメチルアミノエチルメタクリレートを構成成分とし、
Y2ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が1497であり、
Y2ブロックのみにジメチルアミノエチルメタクリレートが含まれており、
X2-Y2ブロック共重合体中のY2ブロックの含有量が22質量%であり、
X2-Y2ブロック共重合体中のMw/Mnが1.19、アミン価が79mgKOH/gであるブロック共重合体(B-2)」に係る発明(以下「刊行物1-2発明」という。)が開示されているといえる。

(ウ) さらに、刊行物1には、摘記(1e)摘記(1f)に、顔料分散液の調製例1に関して、着色剤としてC.I.ピグメントグリーン58 9質量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 64.5質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル 8質量部、合成例1の共重合体B-1(MA 5質量部、nBMA73質量部、DAMA 22質量部から形成され、Mw/Mnが1.21、Mw8500、酸価33、アミン価79であるもの)溶液(不揮発成分=40質量%)12.5質量部を含むことが示されている。
そして、前述のとおり、各ブロックのMnはX1ブロックが5479であり、Y1ブロックが1545、X1ブロックの酸価は、41.8mgKOH/gと計算でき、Y1ブロックのアミン価は、356.9と計算できるので、具体的記載として、
「着色剤としてC.I.ピグメントグリーン58 9質量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、
溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、
[メタクリル酸(MA)及びノルマルブチルメタクリレート(nBMA)由来の繰り返し単位を有するX1ブロックと、ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するY1ブロックとからなり、
X1ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、X1ブロックの酸価が41.8mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が5479であり、
Y1ブロックは、ジメチルアミノエチルメタクリレートを構成成分とし、
Y1ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が1545であり、
Y1ブロックのみにジメチルアミノエチルメタクリレートが含まれており、
X1-Y1ブロック共重合体中のY1ブロックの含有量が22質量%であり、
X1-Y1ブロック共重合体中のMw/Mnが1.21、アミン価が79mgKOH/gであるブロック共重合体(B-1)] 5(=12.5×0.4)質量部を含有する顔料分散液」に係る発明(以下「刊行物1-3発明」という。)が記載されている。

(エ) また、摘記(1e)摘記(1f)に、顔料分散液の調製例2に関して、着色剤としてC.I.ピグメントグリーン58 9質量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 67質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル 8質量部、合成例2の共重合体B-2(MA 5質量部、MMA 23質量部、nBMA50質量部、DAMA 22質量部から形成され、Mw/Mnが1.19、Mw8100、酸価33、アミン価79であるもの)溶液(不揮発成分=40質量%)10質量部を含むことが示されている。
そして、前述のとおり、各ブロックのMnはX2ブロックが5309であり、Y1ブロックが1497、X2ブロックの酸価は、41.8mgKOH/gと計算でき、Y2ブロックのアミン価は、356.9と計算できるので、具体的記載として、
「着色剤としてC.I.ピグメントグリーン58 9質量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、
溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、
[メタクリル酸、ノルマルブチルメタクリレート及びメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を有するX2ブロックと、ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するY2ブロックとからなり、
X2ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、X2ブロックの酸価が41.8mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が5309であり、
Y2ブロックは、ジメチルアミノエチルメタクリレートを構成成分とし、
Y2ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が1497であり、
Y2ブロックのみにジメチルアミノエチルメタクリレートが含まれており、
X2-Y2ブロック共重合体中のY2ブロックの含有量が22質量%であり、
X2-Y2ブロック共重合体中のMw/Mnが1.19、アミン価が79mgKOH/gであるブロック共重合体(B-2)] 4(=10×0.4)質量部を含有する顔料分散液」(以下「刊行物1-4発明」という。)、

イ 刊行物2に記載された発明
(ア) 摘記(2a)には、請求項1に「3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む重合体からなるブロック鎖(A)と、ポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位及び酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体からなるブロック鎖(B)とを含有することを特徴とする共重合体」が記載され、摘記(2b)には、分散剤として有用な新規な共重合体に関すると記載されている。
そして、その特許請求の範囲の記載に対応した具体例の記載として、摘記(2c)には、ブロック共重合体の実施例として、「実施例2
[0080](重合工程)
1000mLフラスコにTHF695.92g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)13.83gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)9.29gを加え、10分間熟成した。
次に、EEMA8.47g、nBMA71.15g、PEGMA31.16gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後30分間反応を継続した。そしてGC・GPC(移動相THF、DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した。
次にDMMA45.39gを滴下し、滴下後30分反応継続した。そしてGC・GPC(移動相DMF)を測定しモノマーの消失を確認した後、メタノール3.21gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が5610、分子量分布が1.10、組成比がDMMA-[nBMA/PEGMA/EEMA]=29-[46/20/5]重量%の共重合体であることを確認した。

[0081](脱保護工程)
得られた共重合体の50重量%濃度のPGMEA溶液213gを、160℃に加温し3.5時間熟成させた。 得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が4800、分子量分布が1.12、組成比がDMMA-[nBMA/PEGMA/MA]=30-[47/20/3]重量%の共重合体であることを確認した。」と記載されている(nBMA/PEGMA/MAからなるブロックをX3ブロック、DMMAからなるブロックをY3ブロックとする)。

そして、ブロック共重合体(DMMA-[nBMA/PEGMA/MA]=30-[47/20/3])のMwは4800であり、Mw/Mnが1.21であるから、Mnは4286である。
X3ブロックとY3ブロックとの質量比は70(=47+20+3):30であるので、各ブロックのMnはX3ブロックが3000(=4286×(70/100))であり、Y3ブロックが1286(=4286×(30/100))であると計算できる。
また、X3ブロックは、nBMA 47質量部とPEGMA20質量部とMA 5質量部から構成され、MAの分子量が86.09g/molであるから、X3ブロックの酸価は、27.9(=(3/(47+20+3))/86.09×1000×56.11)mgKOH/gと計算できる。
Y3ブロックは、DAMAのみから構成されており、DAMAの分子量は157.21g/molであるから、Y3ブロックのアミン価は、356.9(=(30/30)/157.21×1000×56.11)mgKOH/gと計算できる。
ブロック共重合体中のY3ブロックの含有率は30質量%であり、Y3ブロックのアミン価は356.9mgKOH/gであるので、ブロック共重合体のアミン価は、107.1(356.9×(30/100))mgKOH/gと計算できる。

したがって、刊行物2には、具体的記載として、「メタクリル酸n-ブチル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸由来の繰り返し単位を有するX3ブロックと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰り返し単位を有するY3ブロックとからなり、
X3ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、
X3ブロックの酸価が27.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が3000であり、
Y3ブロックは、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを構成成分とし、
Y3ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ数平均分子量が1286であり、
Y3ブロックのみにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが含まれており、
X3-Y3ブロック共重合中のY3ブロックの含有量が30質量%であり、
X3-Y3ブロック共重合中の分子量分布が1.12、アミン価が107.1mgKOH/gであるブロック共重合体」に係る発明(以下「刊行物2-1発明」という。)が開示されているといえる。

(イ) また、特許請求の範囲の記載に対応した具体例の記載として、上記摘記(2d)には、ブロック共重合体の合成例として、「実施例4
[0084](重合工程)
1000mLフラスコにTHF683.03g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)11.92gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)8.32gを加え、10分間熟成した。
続いてMMA5.06gを添加し、5分間反応を継続した。そしてGC測定でモノマーの消失を確認後、一部をサンプリングしてGPC測定(移動相DMF)を行ったところ、分子量311(3.10量体)の重合体が生成していた。 次に、EEMA9.68g、EHMA22.0g、nBMA22.09g、MMA41.60g、BzMA16.83g、PEGMA13.75gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後30分間、反応を継続した。そしてGC・GPC(移動相THF、DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した。
次にDMMA42.06gを滴下し、滴下後30分間、反応を継続した。そしてGC・GPC(移動相DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール4.48gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が6980、分子量分布が1.10、組成比がDMMA-[MMA/nBMA/EHMA/PEGMA/BzMA/EEMA]=24-[27/13/13/8/10/5]重量%の共重合体であることを確認した。

(脱保護工程) 得られた前駆体ポリマーの50重量%濃度のPGMEA溶液212.32gを、160℃に加温し4時間反応させた。 得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が5300、分子量分布が1.13、組成比がDMMA-[MMA/nBMA/EHMA/PEGMA/BzMA/MA]=25-[28/13/13/8/10/3]重量%の共重合体であることを確認した。」と記載されている(MMA/nBMA/EHMA/PEGMA/BzMA/MAからなるブロックをX4ブロック、DMMAからなるブロックをY4ブロックとする)。

そして、ブロック共重合体(DMMA-[MMA/nBMA/EHMA/PEGMA/BzMA/MA]=25-[28/13/13/8/10/3])のMwは5300であり、Mw/Mnが1.13であるから、Mnは4690である。
X4ブロックとY4ブロックとの質量比は75(=28+13+13+8+10+3):25であるので、各ブロックのMnはX4ブロックが3518(=4690×(75/100))であり、Y4ブロックが1173(=4690×(35/100))であると計算できる。
また、X4ブロックは、MMA 28質量部、nBMA 13質量部、EHMA 13質量部、PEGMA8質量部、BzMA10質量部とMA 3質量部から構成され、MAの分子量が86.09g/molであるから、X4ブロックの酸価は、26.1(=(3/(28+13+13+8+10+3))/86.09×1000×56.11)mgKOH/gと計算できる。
Y4ブロックは、DAMAのみから構成されており、DAMAの分子量は157.21g/molであるから、Y4ブロックのアミン価は、356.9(=(25/25)/157.21×1000×56.11)mgKOH/gと計算できる。
ブロック共重合体中のY4ブロックの含有率は25質量%であり、Y4ブロックのアミン価は356.9mgKOH/gであるので、ブロック共重合体のアミン価は、89.2(356.9×(25/100))mgKOH/gと計算できる。

したがって、具体的記載として、「メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸由来の繰り返し単位を有するX4ブロックと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰り返し単位を有するY4ブロックとからなり、
X4ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、
X4ブロックの酸価が26.1mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が3518であり、
Y4ブロックは、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを構成成分とし、
Y4ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ数平均分子量が1173であり、
Y4ブロックのみにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが含まれており、
X4-Y4ブロック共重合中のY4ブロックの含有量が25質量%であり、
X4-Y4ブロック共重合中の分子量分布が1.13、アミン価が89.2mgKOH/gであるブロック共重合体」に係る発明(以下「刊行物2-2発明」という。)が開示されているといえる。

(ウ) 刊行物2には、摘記(2e)に、実施例2で得られた共重合体溶液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの40重量%溶液とした後、これを顔料分散剤として用いて、顔料としてC.I.ピグメントグリーン36とC.I.ピグメントイエロー150との60/40(質量比)混合物15質量部、顔料分散剤として実施例2で得られた共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40重量%溶液を10質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル20質量部を用いて、ビーズミルにより12時間混合・分散して顔料分散液を調製したことが記載されている。
そして、前述のとおり、各ブロックのMnはX3ブロックが3000であり、Y1ブロックが1286、X3ブロックの酸価が27.9mgKOH/gと、Y1ブロックのアミン価は、356.9mgKOH/gと、ブロック共重合体のアミン価は、107.1mgKOH/gと計算できるので、刊行物2には、具体的記載として、「着色剤としてC.I.ピグメントグリーン36 9量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、
溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、
[メタクリル酸n-ブチル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸由来の繰り返し単位を有するX3ブロックと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰り返し単位を有するY3ブロックとからなり、
X3ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、
X3ブロックの酸価が27.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が3000であり、
Y3ブロックは、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを構成成分とし、
Y3ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ数平均分子量が1286であり、
Y3ブロックのみにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが含まれており、
X3-Y3ブロック共重合中のY3ブロックの含有量が30質量%であり、
X3-Y3ブロック共重合中の分子量分布が1.12、アミン価が107.1mgKOH/gであるブロック共重合体] 4(=10×0.4)質量部を含有する顔料分散液」に係る発明(以下「刊行物2-3発明」という。)が開示されているといえる。

(エ) 刊行物2には、摘記(2e)に、実施例4で得られた共重合体溶液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの40重量%溶液とした後、これを顔料分散剤として用いて、顔料としてC.I.ピグメントグリーン36とC.I.ピグメントイエロー150との60/40(質量比)混合物15質量部、顔料分散剤として実施例4で得られた共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40重量%溶液を10質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル20質量部を用いて、ビーズミルにより12時間混合・分散して顔料分散液を調製したことが記載されている。
そして、前述のとおり、各ブロックのMnはX4ブロックが3518であり、Y1ブロックが1173、X4ブロックの酸価が26.1mgKOH/gと、Y4ブロックのアミン価は、356.9mgKOH/gと、ブロック共重合体のアミン価は、89.2mgKOH/gと計算できるので、刊行物2には、具体的記載として、「着色剤としてC.I.ピグメントグリーン36 9量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、
溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、
[メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸由来の繰り返し単位を有するX4ブロックと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰り返し単位を有するY4ブロックとからなり、
X4ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、
X4ブロックの酸価が26.1mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が3518であり、
Y4ブロックは、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを構成成分とし、
Y4ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ数平均分子量が1173であり、
Y4ブロックのみにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが含まれており、
X4-Y4ブロック共重合中のY4ブロックの含有量が25質量%であり、
X4-Y4ブロック共重合中の分子量分布が1.13、アミン価が89.2mgKOH/gであるブロック共重合体] 4(=10×0.4)質量部を含有する顔料分散液」に係る発明(以下「刊行物2-4発明」という。)が開示されているといえる。

(4)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)刊行物1-3発明との対比・判断
a 対比
本件発明1と刊行物1-3発明とを対比すると、刊行物1-3発明の「着色剤として」の「C.I.ピグメントグリーン58」及び「C.I.ピグメントイエロー150」、「溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」、「ブロック共重合体(B-1)」、「顔料分散液」は、それぞれ、「色素」「液溶媒」「高分子分散剤」「油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物」に該当する。
また、刊行物1-3発明の「メタクリル酸及びノルマルブチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するX1ブロックと、ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するY1ブロックとからなり」は、本件発明の「高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり」に相当し、
刊行物1-3発明の「X1ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、」「数平均分子量が5479であり」は、本件発明1の「Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、」「且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり」に該当し、
刊行物1-3発明の「Y1ブロックは、ジメチルアミノエチルメタクリレートを構成成分とし、Y1ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が1545であり」は、本件発明1の「Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり」に該当する。
また、刊行物1-3発明の「Y1ブロックのみにジメチルアミノエチルメタクリレートが含まれており、」は、本件発明1の「Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、」に相当し、
刊行物1-3発明の「X1-Y1ブロック共重合体中のY1ブロックの含有量が22質量%であり、X1-Y1ブロック共重合体中のMw/Mnが1.21・・・である」ことは、本件発明1の「A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり」に該当する。
また、刊行物1-3発明の「着色剤としてピグメントグリーン58 9量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、・・・ブロック共重合体(B-1)が5質量部」は、本件発明1の顔料に相当する着色剤15(9+6)質量部に本件発明1の高分子分散剤に相当するブロック共重合体(B-1)が5質量部含有されていることになることから、本件発明1の「前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部で」に該当する。

したがって、本件発明1と刊行物1-3発明とは、「顔料、液媒体、及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、
前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部である顔料着色剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gであるのに対して、刊行物1-3発明は、X1ブロックの酸価が41.8mgKOH/gである点

相違点2:本件発明1は、顔料の分散安定性を向上させるための色素誘導体を有しているのに対して、刊行物1-3発明は、色素誘導体を有していない点

相違点3:本件発明1は、「色素誘導体が、高分子分散剤のアミノ基とイオン結合し得る酸性である官能基を有し」ていると特定されているのに対し、刊行物1-3発明は、そのような特定がない点

相違点4:本件発明1は、顔料の平均粒子径が10?150nmであることが特定されているのに対して、刊行物1-3発明は、顔料の平均粒子径が特定されていない点

相違点5:本件発明1は、「顔料100質量部に対する、」「色素誘導体の含有量が5?100質量部である」ことが特定されているのに対し、刊行物1-3発明は、色素誘導体を含有していない点

b 相違点の判断
以下、相違点について検討する。
(a)相違点1について
刊行物1には、【0049】【0050】には、3種の繰り返し単位を有する(B)共重合体に関する一般的記載として、「【0049】
(B)共重合体の酸価は、保存安定性の観点から、好ましくは5?70mgKOH/g、より好ましくは10?55mgKOH/g、特に好ましくは15?45mgKOH/gである。ここで、本発明において「酸価」とは、共重合体溶液の溶媒を除いた不揮発分1gを中和するのに必要なKOHのmg数であり、具体的には、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものをいう。
また、(B)共重合体のアミン価は、保存安定性の観点から、好ましくは10?200mgKOH/g、より好ましくは30?170mgKOH/g、特に好ましくは50?150mgKOH/gである。ここで、本発明において「アミン価」とは、共重合体溶液の溶媒を除いた不揮発分1gを中和するのに必要な酸と当量のKOHのmg数であり、具体的には、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものをいう。
【0050】
(B)共重合体は、繰り返し単位(1)?繰り返し単位(3)を有する限り、特に限定されるものではないが、分散性をより高める点から、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有さず、繰り返し単位(1)を有するAブロックと、繰り返し単位(1)を有さず、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有するBブロックとを含む、ブロック共重合体であることが好ましい。該ブロック共重合体は、A-Bブロック共重合体又はB-A-Bブロック共重合体であることが好ましい。この場合、Aブロック/Bブロックの共重合比(質量比)は、5/95?70/30が好ましく、10/90?60/40がより好ましく、15/85?40/60が特に好ましい。」と記載されているが、。繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有さず、繰り返し単位(1)を有するAブロックと、繰り返し単位(1)を有さず、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有するBブロックとを含む、ブロック共重合体であることが好ましいことやAブロック/Bブロックの共重合比に関する記載はあるものの、相違点1に関する、刊行物1-3発明の、合成例1で使用した特定のモノマーで定義したX1ブロックの酸価をどのようにするべきかの直接の記載はない。
刊行物1-3発明は、合成例1として、特定のモノマー原料を特定の割合で、特定の共重合条件で形成したブロック共重合体製造に係る記載によって認定できる発明であって、例えば、あるモノマー成分の割合を変更した場合、当業者がそれ以外の成分の割合や共重合条件は変えずにそのまま共重合体を製造する動機付けはない。
また、刊行物1-3発明は、合成例1において、記載されたブロック共重合体のMw/Mnが1.21であることを前提にMnを計算によって数値を出して、最終的に発明を認定しているのであるから、たとえ刊行物1-3発明の顔料分散液において、Bブロックの酸価を変更するためにBブロックの割合を変更したとしても、刊行物1の【0142】の表1から共重合体の酸価が変化すると共重合体のMw/Mnの値が変化するのが読み取れ(摘記(1e))、一定であるとはいえないのであるから、Bブロックの酸価を変更した場合、Mnが算出できず、X1やY1のMnが算出できないことになるといえる。
したがって、当業者といえども、本件発明1のように、X1ブロックの酸価を62.2?150mgKOH/gと特定することは、容易に想到するとはいえない。

また、色素誘導体に関する刊行物3、顔料誘導体に関する刊行物4、色素誘導体に関する刊行物5の技術常識を考慮しても、相違点1が容易に想起できない技術的事項であることにかわりはない。

(b)効果について
本件発明1は、顔料の分散安定性を向上させるための色素誘導体および高分子分散剤を含有する顔料着色剤組成物として、高分子分散剤としてのA-Bブロックコポリマーの構成成分モノマ、モノマー割合、Aブロックの酸価、Bブロックのアミン価、各ブロックの平均分子量、分散度、色素誘導体官能基の種類、顔料の平均粒子径を特定することによって、超微粒子化した顔料の微分散と分散安定性に優れ、低粘度で長期保存安定性に優れ、塗布特性、現像性に優れ、色濃度、光透過性、コントラスト等の光学的特性に優れるという効果を両立して得ており(表1?表10)、当業者の予測を超えるものであるといえる。

(c)その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1-3発明及び技術常識から当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(d)本件発明1は、刊行物1-3発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。

(イ)刊行物1-4発明との対比・判断
a 対比・判断
本件発明1と刊行物1-4発明とを対比すると、刊行物1-4発明の「着色剤として」の「C.I.ピグメントグリーン58」及び「C.I.ピグメントイエロー150」、「溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」、「ブロック共重合体(B-2)」、「顔料分散液」は、それぞれ、「色素」「液溶媒」「高分子分散剤」「油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物」に該当する。
また、刊行物1-4発明の「メタクリル酸、ノルマルブチルメタクリレート及びメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を有するX2ブロックと、ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するY2ブロックとからなり」は、本件発明の「高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり」に相当し、
刊行物1-4発明の「X2ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、」「且つ、数平均分子量が5309であり」は、本件発明1の「Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、」「且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり」に該当し、刊行物1-4発明の「Y2ブロックは、ジメチルアミノエチルメタクリレートを構成成分とし、Y2ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が1497であり、」は、本件発明1の「Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり」に該当する。
また、刊行物1-4発明の「Y2ブロックのみにジメチルアミノエチルメタクリレートがふくまれており、」は、本件発明1の「Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、」に相当し、
刊行物1-4発明の「X2-Y2ブロック共重合体中のY2ブロックの含有量が22質量%であり、X2-Y2ブロック共重合体中のMw/Mnが1.19・・・である」ことは、本件発明1の「A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり」に該当する。
また、刊行物1-4発明の「着色剤としてC.I.ピグメントグリーン58 9質量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部」本件発明1の顔料に相当する着色剤15(9+6)質量部に本件発明1の高分子分散剤に相当するブロック共重合体(B-2)が4質量部含有されていることになることから、本件発明1の「前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部で」に該当する。

本件発明1と刊行物1-4発明との一致点・相違点は、本件発明1と刊行物1-3発明との一致点・相違点と同様であり、上記(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明1は、刊行物1-4発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)刊行物2-3発明との対比・判断
a 対比
本件発明1と刊行物2-3発明とを対比すると、刊行物2-3発明の「顔料として」の「C.I.ピグメントグリーン36」及び「C.I.ピグメントイエロー150」、「溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」、「ブロック共重合体」、「顔料分散液」は、それぞれ、「色素」「液溶媒」「高分子分散剤」「油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物」に該当する。
また、刊行物2-3発明の「メタクリル酸n-ブチル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸由来の繰り返し単位を有するX3ブロックと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰り返し単位を有するY3ブロックとからなり」は、本件発明の「高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり」に相当し、
刊行物2-3発明の「X3ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、」「且つ、数平均分子量が3000であり、」は、本件発明1の「Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、」「且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり」に該当し、刊行物2-3発明の「Y3ブロックは、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを構成成分とし、Y3ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ数平均分子量が1286であり、」は、本件発明1の「Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり」に該当する。
また、刊行物2-3発明の「Y3ブロックのみにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが含まれており、」は、本件発明1の「Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、」に相当し、
刊行物2-3発明の「X3-Y3ブロック共重合中のY3ブロックの含有量が30質量%であり、X3-Y3ブロック共重合中の分子量分布が1.12、・・・である」ことは、本件発明1の「A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり」に該当する。
また、刊行物2-3発明の「着色剤としてC.I.ピグメントグリーン36 9質量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、・・・を含有」し、「ブロック共重合体」「4」「質量部を含むこと」は、は、本件発明1の顔料に相当する着色剤15(9+6)質量部に、本件発明1の高分子分散剤に相当するブロック共重合体が4質量部含有されていることになることから、本件発明1の「前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部で」に該当する。

したがって、本件発明1と刊行物2-3発明とは、「顔料、液媒体、及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、
前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部である顔料着色剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1’:本件発明1は、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gであるのに対して、刊行物2-3発明は、X3ブロックの酸価が27.9mgKOH/gである点

相違点2’:本件発明1は、顔料の分散安定性を向上させるための色素誘導体を有しているのに対して、刊行物2-3発明は、色素誘導体を有していない点

相違点3’:本件発明1は、「色素誘導体が、高分子分散剤のアミノ基とイオン結合し得る酸性である官能基を有し」ていると特定されているのに対し、刊行物2-3発明は、そのような特定がない点

相違点4’:本件発明1は、顔料の平均粒子径が10?150nmであることが特定されているのに対して、刊行物2-3発明は、顔料の平均粒子径が特定されていない点

相違点5’:本件発明1は、「顔料100質量部に対する、」「色素誘導体の含有量が5?100質量部である」ことが特定されているのに対し、刊行物2-3発明は、色素誘導体を含有していない点

b 相違点の判断
以下、相違点について検討する。
(a)相違点1’について
刊行物2には、[0065]に、共重合体中のブロック鎖(A)、ブロック鎖(B)以外の含有しうるブロック鎖に関して、「本発明の共重合体は、ブロック鎖(A)及び(B)以外に、他の重合体からなるブロック鎖を有していてもよい。」と記載され、[0066]の共重合体中のブロック鎖(A)とブロック鎖(B)の比に関する一般的記載として、「 本発明の共重合体中のブロック鎖(A)とブロック鎖(B)の比は、特に制限はないが、重量%比で、10?40対90?60、好ましくは、15?35対85?65である。また、共重合体中の酸性基を有する繰り返し単位の含有割合は、0.5?20重量%、好ましくは、1?15質量%である。」と記載されているが、これは、3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む重合体からなるブロック鎖(A)とポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位の少なくとも1種と酸性基を有するとされるブロック鎖(B)の比にすぎず、相違点1’に関する、刊行物2-3発明の、実施例2で使用した特定のモノマーで定義したX1ブロックの酸価をどのようにするべきかの直接の記載はない。
刊行物2-3発明は、実施例2として、特定のモノマー原料を特定の割合で、特定の共重合条件で形成したブロック共重合体製造に係る記載によって認定できる発明であって、例えば、あるモノマーの成分割合を変更した場合、当業者がそれ以外の成分の割合や共重合条件は変えずにそのまま共重合体を製造する動機付けはない。
また、刊行物2-3発明は、実施例2において、得られた共重合体のMw/Mnが1.12であることを前提にMnを計算によって数値を出して、最終的に発明を認定しているのであるから、たとえ刊行物2-3発明の顔料分散液において、ブロック鎖(B)の酸価を変更するためにブロック鎖(B)の割合を変更したとしても、刊行物2の実施例間で酸の割合が変化して共重合体の酸価が変化すると共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の値が変化するのが読み取れ(実施例1?4摘記(2d)摘記(2f))、一定であるとはいえないのであるから、(B)ブロックの酸価を変更した場合、Mnが算出できず、X3やY3のMnが算出できないことになるといえる。
したがって、当業者といえども、本件発明1のように、X1ブロックの酸価を62.2?150mgKOH/gと特定することは、容易に想到するとはいえない。

また、色素誘導体に関する刊行物3、顔料誘導体に関する刊行物4、色素誘導体に関する刊行物5の技術常識を考慮しても、相違点1’が容易に想起できない技術的事項であることにかわりはない。

(c)その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物2-3発明及び技術常識から当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(d)したがって、本件発明1は、刊行物2-3発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(エ)刊行物2-4発明との対比・判断
a 対比・判断
本件発明1と刊行物2-4発明とを対比すると、刊行物2-4発明の「顔料として」の「C.I.ピグメントグリーン36」及び「C.I.ピグメントイエロー150」、「溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」、「ブロック共重合体」、「顔料分散液」は、それぞれ、「色素」「液溶媒」「高分子分散剤」「油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物」に該当する。
また、刊行物2-4発明の「メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸由来の繰り返し単位を有するX4ブロックと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰り返し単位を有するY4ブロックとからなり、」は、本件発明の「高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり」に相当し、
刊行物2-4発明の「X4ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、X4ブロックの酸価が26.1mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が3518であり、」は、本件発明1の「Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの酸価が20?150mgKOH/gで、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり」に該当し、
刊行物2-4発明の「Y4ブロックは、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを構成成分とし、Y4ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ数平均分子量が1173であり、」は、本件発明1の「Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり」に該当する。
また、刊行物2-4発明の「Y4ブロックのみにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが含まれており、」は、本件発明1の「Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、」に相当し、
刊行物2-4発明の「X4-Y4ブロック共重合中の分子量分布が1.13、・・・である」ことは、本件発明1の「A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり」に該当する。
また、刊行物2-4発明の「着色剤としてC.I.ピグメントグリーン36 9質量部及びC.I.ピグメントイエロー150 6質量部、・・・を含有」し、「ブロック共重合体」「4」「質量部を含むこと」は、は、本件発明1の顔料に相当する着色剤15(9+6)質量部に、本件発明1の高分子分散剤に相当するブロック共重合体が4質量部含有されていることになることから、本件発明1の「前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部で」に該当する。

したがって、本件発明1と刊行物2-4発明とは、「顔料、液媒体、及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、
前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部である顔料着色剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1”:本件発明1は、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gであるのに対して、刊行物2-4発明は、X3ブロックの酸価が26.1mgKOH/gである点

相違点2”:本件発明1は、顔料の分散安定性を向上させるための色素誘導体を有しているのに対して、刊行物2-4発明は、色素誘導体を有していない点

相違点3”:本件発明1は、「色素誘導体が、高分子分散剤のアミノ基とイオン結合し得る酸性である官能基を有し」ていると特定されているのに対し、刊行物2-4発明は、そのような特定がない点

相違点4”:本件発明1は、顔料の平均粒子径が10?150nmであることが特定されているのに対して、刊行物2-4発明は、顔料の平均粒子径が特定されていない点

相違点5”:本件発明1は、「顔料100質量部に対する、」「色素誘導体の含有量が5?100質量部である」ことが特定されているのに対し、刊行物2-4発明は、色素誘導体を含有していない点

上記相違点1”?5”について検討するに、相違点1”は相違点1’同様の相違点であり、上記(ウ)で検討したのと同様の理由により、本件発明1は、刊行物2-4発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(オ)小括
本件発明1は、刊行物1又は2に記載された発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

イ 本件発明2?4,6について
本件発明2は、本件発明1において、さらにA-Bブロックコポリマーのアミン価を特定したもの、本件発明3は、本件発明1において、さらにAブロックの酸価の上限を特定したもの、本件発明4は、本件発明1において、さらに色素誘導体の酸性である官能基をスルホン酸基に特定したもの、本件発明6は、本件発明1において、さらに顔料の平均粒子径の上下限を限定し、顔料の用途をカラーフィルター用着色剤に特定したものである。
したがって、いずれの発明も、アで検討のとおり、少なくとも刊行物1-3発明又は刊行物1-4発明との対比において、相違点1,刊行物2-3発明との対比において、相違点1’,刊行物2-4発明との対比において、相違点1”を有しており、色素誘導体に関する刊行物3、顔料誘導体に関する刊行物4、色素誘導体に関する刊行物5の技術常識を考慮しても、上記各相違点が容易に想起できない技術的事項であることにかわりはないため、刊行物1又は2に記載された発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いてから当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

ウ 本件発明7について
(ア)刊行物1-1発明との対比・判断
a 対比
本件発明7と刊行物1-1発明とを対比すると、刊行物1-1発明の「メタクリル酸及びノルマルブチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するX1ブロックと、ジメチルアミノエチルメタクリレート由来の繰り返し単位を有するY1ブロックとからなり」は、本件発明7の「高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり」に相当し、
刊行物1-1発明の「X1ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、」「且つ、数平均分子量が5479であり」は、本件発明7の「Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、」「且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり」に該当し、
刊行物1-1発明の「Y1ブロックは、ジメチルアミノエチルメタクリレートを構成成分とし、Y1ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が1545であり」は、本件発明7の「Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり」に該当する。
また、刊行物1-1発明の「Y1ブロックのみにジメチルアミノエチルメタクリレートが含まれており、」は、本件発明7発明の「Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、」に相当し、
刊行物1-1発明の「X1-Y1ブロック共重合体中のY1ブロックの含有量が22質量%であり、X1-Y1ブロック共重合体中のMw/Mnが1.21・・・である」ことは、本件発明7の「A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり」に該当し、刊行物1-1発明の「ブロック共重合体(B-1)」は、本件発明7の「高分子分散剤」に相当する。

したがって、本件発明7と刊行物1-1発明とは、「90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下である高分子分散剤」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点7-1:本件発明7は、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gであるのに対し、刊行物1-1発明においては、X1ブロックの酸価が41.8mgKOH/gである点

相違点7-2:本件発明7は、構造中に活性水素基を有する顔料、酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料を分散させるための高分子分散剤を主成分として含有してなる顔料分散剤であるのに対して、刊行物1-1発明は、そのような特定を有していない点
b 相違点の判断
以下、相違点について検討する。
(a)相違点7-1について
刊行物1には、【0049】【0050】には、3種の繰り返し単位を有する(B)共重合体に関する一般的記載として、「【0049】
(B)共重合体の酸価は、保存安定性の観点から、好ましくは5?70mgKOH/g、より好ましくは10?55mgKOH/g、特に好ましくは15?45mgKOH/gである。ここで、本発明において「酸価」とは、共重合体溶液の溶媒を除いた不揮発分1gを中和するのに必要なKOHのmg数であり、具体的には、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものをいう。
また、(B)共重合体のアミン価は、保存安定性の観点から、好ましくは10?200mgKOH/g、より好ましくは30?170mgKOH/g、特に好ましくは50?150mgKOH/gである。ここで、本発明において「アミン価」とは、共重合体溶液の溶媒を除いた不揮発分1gを中和するのに必要な酸と当量のKOHのmg数であり、具体的には、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものをいう。
【0050】
(B)共重合体は、繰り返し単位(1)?繰り返し単位(3)を有する限り、特に限定されるものではないが、分散性をより高める点から、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有さず、繰り返し単位(1)を有するAブロックと、繰り返し単位(1)を有さず、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有するBブロックとを含む、ブロック共重合体であることが好ましい。該ブロック共重合体は、A-Bブロック共重合体又はB-A-Bブロック共重合体であることが好ましい。この場合、Aブロック/Bブロックの共重合比(質量比)は、5/95?70/30が好ましく、10/90?60/40がより好ましく、15/85?40/60が特に好ましい。」と記載されているが、。繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有さず、繰り返し単位(1)を有するAブロックと、繰り返し単位(1)を有さず、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を有するBブロックとを含む、ブロック共重合体であることが好ましいことやAブロック/Bブロックの共重合比に関する記載はあるものの、相違点1に関する、刊行物1-1発明の、合成例1で使用した特定のモノマーで定義したX1ブロックの酸価をどのようにするべきかの直接の記載はない。
刊行物1-1発明は、合成例1として、特定のモノマー原料を特定の割合で、特定の共重合条件で形成したブロック共重合体製造に係る記載によって認定できる発明であって、例えば、あるモノマー成分割合を変更した場合、当業者がそれ以外の成分の割合や共重合条件は変えずにそのまま共重合体を製造する動機付けはない。
また、刊行物1-1発明は、合成例1において、記載されたブロック共重合体のMw/Mnが1.21であることを前提にMnを計算によって数値を出して、最終的に発明を認定しているのであるから、たとえ刊行物1-1発明の顔料分散液において、Bブロックの酸価を変更するためにBブロックの割合を変更したとしても、刊行物1の【0142】の表1から共重合体の酸価が変化すると共重合体のMw/Mnの値が変化するのが読み取れ(摘記(1e))、一定であるとはいえないのであるから、Bブロックの酸価を変更した場合、Mnが算出できず、X3やY3のMnが算出できないことになるといえる。
したがって、当業者といえども、本件発明7のように、X3ブロックの酸価を62.2?150mgKOH/gと特定することは、容易に想到するとはいえない。

また、色素誘導体に関する刊行物3、顔料誘導体に関する刊行物4、色素誘導体に関する刊行物5の技術常識を考慮しても、相違点1が容易に想起できない技術的事項であることにかわりはない。

(b)効果について
本件発明7は、顔料の分散安定性を向上させるための高分子分散剤を主成分として含有する顔料分散剤として、高分子分散剤のA-Bブロックコポリマーの構成成分モノマ、モノマー割合、各ブロックの割合、Aブロックの酸価、Bブロックのアミン価、各ブロックの平均分子量、分散度を特定することによって、超微粒子化した顔料の微分散と分散安定性に優れ、低粘度で長期保存安定性に優れ、塗布特性、現像性に優れ、色濃度、光透過性、コントラスト等の光学的特性に優れるという効果を両立して得ており(表1?表10)、当業者の予測を超えるものであるといえる。

(c)本件発明7は、刊行物1-1発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いてから当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(イ)刊行物1-2発明との対比・判断
本件発明7と刊行物1-2発明との一致点・相違点は、本件発明7と刊行物1-1発明との一致点・相違点と同様であり、上記(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明7は、刊行物1-2発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いてから当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)刊行物2-1発明との対比・判断
a 対比
本件発明7と刊行物2-1発明とを対比すると、刊行物2-3発明の「ブロック共重合体」、「顔料分散液」は、それぞれ、「高分子分散剤」「油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物」に該当する。
また、刊行物2-1発明の「メタクリル酸n-ブチル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸由来の繰り返し単位を有するX3ブロックと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰り返し単位を有するY3ブロックとからなり」は、本件発明7の「高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり」に相当し、
刊行物2-1発明の「X3ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、」「且つ、数平均分子量が3000であり、」は、本件発明7の「Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、」「且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり」に該当し、刊行物2-1発明の「Y3ブロックは、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを構成成分とし、Y3ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ数平均分子量が1286であり、」は、本件発明7の「Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり」に該当する。
また、刊行物2-1発明の「Y3ブロックのみにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが含まれており、」は、本件発明7の「Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、」に相当し、
刊行物2-1発明の「X3-Y3ブロック共重合中のY3ブロックの含有量が30質量%であり、X3-Y3ブロック共重合中の分子量分布が1.12、・・・である」ことは、本件発明7の「A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり」に該当する。

相違点7-1’:本件発明7は、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gであるのに対し、刊行物2-1発明においては、X3ブロックの酸価が27.9mgKOH/gである点

相違点7-2’:本件発明7は、構造中に活性水素基を有する顔料、酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料を分散させるための高分子分散剤を主成分として含有してなる顔料分散剤であるのに対して、刊行物2-1発明は、そのような特定を有していない点

b 相違点の判断
以下、相違点について検討する。
(a)相違点7-1’について
この相違点は、ア(ウ)bの相違点1’と同様で、ア(ウ)bの相違点1’で検討したとおり、当業者といえども容易に想到するとはいえない。
したがって、本件発明7は、刊行物2-1発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いてから当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(エ)刊行物2-2発明との対比・判断
a 対比
本件発明7と刊行物2-2発明とを対比すると、刊行物2-2発明の「ブロック共重合体」、「顔料分散液」は、それぞれ、「高分子分散剤」「油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物」に該当する。
また、刊行物2-2発明の「メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸由来の繰り返し単位を有するX4ブロックと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の繰り返し単位を有するY4ブロックとからなり、」は、本件発明7の「高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり」に相当し、
刊行物2-2発明の「X4ブロックは、メタクリル酸を構成成分とし、X4ブロックの酸価が26.1mgKOH/gであり、且つ、数平均分子量が3518であり、」は、本件発明7の「Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの酸価が20?150mgKOH/gで、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり」に該当し、
刊行物2-2発明の「Y4ブロックは、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを構成成分とし、Y4ブロックのアミン価が356.9mgKOH/gであり、且つ数平均分子量が1173であり、」は、本件発明7の「Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり」に該当する。
また、刊行物2-2発明の「Y4ブロックのみにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが含まれており、」は、本件発明7の「Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、」に相当し、
刊行物2-2発明の「X4-Y4ブロック共重合中の分子量分布が1.13、・・・である」ことは、本件発明7の「A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり」に該当する。

相違点7-1”:本件発明7は、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gであるのに対し、刊行物2-1発明においては、X4ブロックの酸価が26.1mgKOH/gである点

相違点7-2”:本件発明7は、構造中に活性水素基を有する顔料、酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料を分散させるための高分子分散剤を主成分として含有してなる顔料分散剤であるのに対して、刊行物2-1発明は、そのような特定を有していない点

b 相違点の判断
以下、相違点について検討する。
(a)相違点7-1”について
この相違点は、ア(エ)bの相違点1”と同様で、ア(エ)bの相違点1”で検討したとおり、当業者といえども容易に想到するとはいえない。
したがって、本件発明7は、刊行物2-2発明及び刊行物3から5記載の技術的事項に基いてから当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

エ 本件発明8について
本件発明8は、本件発明7において、さらにA-Bブロックコポリマーのアミン価を特定したものである。
したがって、本件発明8も、ウで検討のとおり、少なくとも刊行物1-1発明又は刊行物1-2発明との対比において、相違点7-1,刊行物2-1発明との対比において、相違点7-1’,刊行物2-2発明との対比において、相違点7-1”を有しており、刊行物1又は2に記載された発明及び刊行物3から5記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(7)特許異議申立人の主張についての検討
ア 特許異議申立人は、平成30年4月19日付け意見書5?6頁において、甲第1号証のX1ブロックの酸価が41.8mgKOH/gであるX1-Y1ブロック共重合体又はX2-Y2ブロック共重合体において、【0050】の(B)共重合体のAブロックとBブロックの共重合体比の記載をもとに計算からX1又はX2ブロックの酸価を62.2?107.5mgKOH/gに変更することは容易に想到する旨主張している。
しかしながら、刊行物1に記載された合成例1又は2に基づくX1-Y1ブロック共重合体又はX2-Y2ブロック共重合体を含む発明は、それぞれの合成例において、特定のモノマー原料を特定の割合で、特定の共重合条件で形成したブロック共重合体製造に係る記載によって認定できる発明であるから、あるモノマー成分割合を変更した場合、当業者がそれ以外の成分の割合いや共重合条件は変えずにそのまま共重合体を製造するとはいえない。
また、発明を認定した合成例において、ブロック共重合体のMw/Mnが特定の値であることを前提にMnを計算によって数値を出して、最終的に発明を認定しているところ、刊行物1に記載された顔料分散液において、Bブロックの酸価を変更するためにBブロックの割合を変更し、共重合体の酸価が変化すると共重合体のMw/Mnの値が変化するのが読み取れ、一定であるとはいえないのであるから、Bブロックの酸価を変更した場合のMnが算出できず、X1やY1又はX2-Y2のMnが算出できないことになるといえる。
したがって、単に一般的記載として、ブロック共重合体の重合体比の記載があるからといって、当業者といえども、X1ブロック又はX2ブロックの酸価を62.2?150mgKOH/gと特定することは、容易に想到するとはいえないことは前述のとおりであり、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

イ 特許異議申立人は、平成30年4月19日付け意見書7?10頁において、特許権者が、平均粒子径の測定方法とその発明特定事項の位置付けを説明したのに対して、恣意的に粒子を選択したりする等の測定条件によっては規定する数値範囲が変化する旨主張している。
しかしながら、透過型電子顕微鏡で平均粒子径を測定する場合に選択する粒子をはじめとする測定条件は、恣意的にならないように設定することが前提であり、技術常識であるといえるから、前述のとおり、カラーフィルタ用の顔料に関する技術常識を示す文献においても必ずしも詳細な測定条件を示さず、本件発明に含まれる数値範囲を提示していることからも理解できるように、「顔料の平均粒子径が10?150nmであり」との特定が第三者に不測の不利益を与えるような不明確性を有しているとまではいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

取消理由で採用しなかった特許異議申立人理由について

1 特許異議申立人は、訂正前の請求項1又は7に係る発明がBブロックのアミン価が100?400mgKOH/gと特定されているのに対して、実施例といえる合成例5のアミン価が124.9 mgKOH/gのもので作成した実施例6の顔料着色剤組成物の粘度が、比較例であるといえる合成例4(Bブロックのアミン価が21.4mgKOH/g)のもので作成した実施例5よりも粘度が大きいことを指摘し、合成例1?3のアミン価が356.9 mgKOH/gのものだけでは、Bブロックのアミン価が100?400mgKOH/gの範囲まで裏付けられているとはいえない旨主張している。
しかしながら、実施例6のものがわずかに粘度が大きいとしても、比較例1の流動性がなく測定不能になったものとの比較で物性を論じており、初期粘度が小さく、初期粘度及び保存後粘度の変化も小さい分散安定性に優れたものとして記載されていることは、【0104】の記載からも明らかで、粘度の点で、アルカリ現像性に問題のある比較例2より若干劣るとしても実施例6も本件発明1?7に対応する実施例として、特許請求の範囲を裏付けるものといえる。
したがって、実施例として、アミン価が124.9 mgKOH/gのもの(合成例5,実施例6)や356.9 mgKOH/gのもの(合成例1?3、実施例1?4)が存在しているのであるから、それらの範囲に近似したBブロックのアミン価が100?400mgKOH/gの範囲は裏付けられているといえる。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
なお、特許権者は、Bブロックのアミン価が特許請求の範囲外の実施例5を参考例5と訂正している。

2 特許異議申立人は、訂正前の請求項7又は8に係る発明が甲第1号証(刊行物1)又は甲第2号証(刊行物2)に記載された発明であるとして、特許法第29条第1項第3号に関する理由を申し立てているので検討する。
訂正後の特許請求の範囲に記載された本件発明7又は8に関し、刊行物1-1発明又は刊行物1-2発明との対比で認定した相違点7-1(55頁)、刊行物2-1発明との対比で認定した相違点7-1’(58頁)、刊行物2-2発明との対比で認定した相違点7-1”(60頁)はいずれも前述のとおり実質的相違点であるので、特許異議申立人の特許法第29条第1項第3号に関する主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、請求項1?4,6?8に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、他に請求項1?4,6?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項5に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項5に係る特許に関する申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
顔料着色剤組成物及び顔料分散剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤として有用な、その構造中にカルボキシル基とアミノ基を有する新規なアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを提供する技術に関する。さらに詳しくは、上記A-Bブロックコポリマーからなる高分子分散剤を含む顔料着色剤組成物、該組成物を用いたカラーフィルターの着色剤、上記顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤、該高分子分散剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の情報化機器の急速な発展に伴い、情報化機器の情報表示部材として液晶カラーディスプレーが多岐にわたって使用されている。液晶カラーディスプレーの用途としては、例えば、テレビジョン、プロジェクター、パーソナル・コンピューター、モバイル情報機器、モニター、カーナビゲーション、携帯電話、電子計算機、及び電子辞書等の表示画面;情報掲示板、案内掲示板、機能表示板、及び標識板等のディスプレー;デジタルカメラやビデオカメラ等の撮影画面等を挙げることができる。液晶カラーディスプレーには、通常、カラーフィルターが搭載されている。このカラーフィルターは、精細性、色濃度、光透過性、及びコントラスト性等の画像性能の色彩特性、並びに光学特性に優れたものであることが要求されている。
【0003】
従来のカラーフィルターの三原色画素に使用されるカラーフィルター用の着色剤(以下、「カラーフィルター用カラー」とも記す)には、顔料とともに分散安定剤が使用されている。分散安定剤としては、(a)通常「シナジスト」と称される、顔料に類似した骨格を有するとともに、この骨格にスルホン酸基等の酸性基が導入された色素誘導体(以下、「色素誘導体」を単に「シナジスト」とも記す)と、(b)このシナジストの酸性基と対になるアミノ基を有する塩基性ポリマー型の顔料分散剤を組み合わせたもの、が用いられる場合が多い(例えば、特許文献1参照)。このような(a)シナジストと(b)塩基性ポリマー型の顔料分散剤とを組み合わせて使用することによって、有機溶媒中における顔料の分散安定性を向上させることができる。さらには、得られる顔料インキの粘度を下げ、インクの長期保存安定性を向上させることができる。
【0004】
しかしながら、液晶カラーテレビジョン用のカラーフィルターについては、例えば、色濃度、光透過性、及びコントラスト比等のカラー表示性能(画素の性能)をより向上させることが要求されており、従来技術では十分に対応できていない。このような要求に対しては、使用する顔料の粒子径を小さくして超微粒子化することで、画素の性能を改良しようとする傾向にある。しかしながら、超微粒子化された顔料は、超微粒子化されない顔料と同じ質量であっても粒子個数が増加しているので、表面積も拡大している。このため、従来の技術では、超微粒子化した顔料の分散安定性を十分に維持することが困難である。
【0005】
超微粒子化した顔料の分散安定性を向上させる方法として、酸性基を有するシナジストと顔料分散剤の使用量を増加させる方法がある(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、シナジストと顔料分散剤の使用量を増加させると、顔料濃度が相対的に低下するので、色濃度(画素の高色濃度)が低下してしまう。すなわち、画素を高色濃度化して適切な画素塗膜組成とするために必要となる顔料含有率を高めるといった要求と、顔料の分散安定性とを両立したインクを提供することは非常に困難である。
【0006】
また、顔料濃度の相対的な低下を抑制する方法として、顔料分散剤の分子構造をブロック型とする方法がある(例えば、特許文献3参照)。これに使用される顔料分散剤の構造は、溶剤溶解性部と顔料吸着部に分離していて、顔料吸着部にアミノ基を有する塩基性の顔料分散剤を用いている。この顔料分散剤は、顔料吸着部が局所的に存在し、顔料に対して強固に吸着し、顔料を超微分散化させることができる。しかしながら、この顔料分散剤は、溶剤溶解性部に酸性基を有していないので、アルカリ現像液にはほとんど溶解しない。このため、塩基性の顔料分散剤は、現像時間が長い、或いは画素エッジがシャープではない等、現像性を低下させる原因となっており、実用的でないものもあった。
【0007】
この問題の解決方法として、顔料分散剤中に酸性基を導入し、アルカリ現像液に溶け易くする方法が考えられる。しかしながら、塩基性基を有する分子中に酸性基を導入しようとしても、重合時に酸性基と塩基性基がイオン結合してしまい、有機溶媒中で顔料分散剤が分子内や分子間でゲル化してしまうなどの問題が発生し、直接合成することは困難であり、製造上の課題がある。
【0008】
ここで、塩基性基、酸性基を有するブロックコポリマーの合成方法として、グループトランスファー重合法を使用し、テトラヒドロピラニル基で保護されたメタクリレートを用いて、ブロックコポリマーを重合後、脱保護することにより塩基性基及び、酸性基を有するブロックコポリマーの合成方法が開発されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、この方法では特殊な重合開始化合物を用いたり、且つ重合制御が煩雑であったり、工程が多くなるなどの問題点があった。
【0009】
このような状況下、近年、リビングラジカル重合によるブロックコポリマーの製造方法が開発されている。また、そのような製造方法を利用した、構造や分子量を容易に制御しうる重合方法が種々開発されている。具体的には、以下に列挙した方法等が幅広く研究開発されている。
・アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するニトロキサイド法(Nitroxide mediated polymerization:NMP法)(非特許文献1参照)
・銅、ルテニウム、ニッケル、鉄等の重金属と、これらの重金属と錯体を形成するリガンドとを使用し、ハロゲン化合物を開始化合物として用いて重合する原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization:ATRP法)(特許文献5及び6、非特許文献2参照)
・ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物等を開始化合物として使用するとともに、付加重合性モノマーとラジカル開始剤を使用して重合する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(Reversible addition-fragmentation chain transfer:RAFT法)(特許文献7参照)、及びMacromolecular Design via Interchange of Xanthate(MADIX法)(特許文献8参照)
・有機テルル、有機ビスマス、有機アンチモン、ハロゲン化アンチモン、有機ゲルマニウム、ハロゲン化ゲルマニウム等の重金属を用いる方法(Degenerative transfer:DT法)(特許文献9、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9-176511号公報
【特許文献2】特開2001-240780号公報
【特許文献3】特開2003-49110号公報
【特許文献4】特開平6-136311号公報
【特許文献5】特表2000-500516号公報
【特許文献6】特表2000-514479号公報
【特許文献7】特表2000-515181号公報
【特許文献8】国際公開第1999-05099号
【特許文献9】特開2007-277533号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chemical Review(2001)101,p3661
【非特許文献2】Chemical Review(2001)101,p3689
【非特許文献3】Journal of American Chemical Society(2002)124,p2874、同(2002)124,p13666、同(2003)125,p8720
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の特許文献5?9及び非特許文献1?3に記載の方法によれば、樹脂の構造や分子量を容易に制御することができる。しかしながら、リビングラジカル重合においては、以下に挙げる実用上の問題がある。例えば、NMP法では、テトラメチルピペリジンオキシドラジカルを使用するが、100℃以上の高温条件下で重合することが必要とされる。また、重合率を上げるには、溶剤を使用せずにモノマー単独で重合する必要がある。このため、重合条件がさらに厳しくなる。さらに、メタクリレート系モノマーを用いた場合には、重合が進行しないといった問題もある。なお、重合温度を下げたり、メタクリレート系モノマーを重合させたりすることも可能ではあるが、特殊なニトロキシド化合物を用いることが必要になる。
【0013】
また、ATRP法では、重金属を使用する必要がある。このため、重合後には微量といえども重金属をポリマーから除去し、ポリマーを精製する必要がある。また、ポリマーを精製して生じた排水や廃溶剤中には、環境への負荷が高い重金属が含まれているので、重金属を除去して浄化する必要がある。なお、触媒として銅を使用するATRP法では、酸素による触媒の失活を防止すべく、不活性ガス下で重合する必要がある。第二錫化合物やアスコルビン酸等の還元剤を添加して触媒の失活を防ぐ方法もある。しかしながら、還元剤を添加するだけでは重合が途中で停止してしまう可能性があるので、重合雰囲気から酸素を十分除去することが必須となる。さらに、アミン化合物をリガンドとして錯体を形成させて重合する方法では、重合系に酸性物質が存在すると錯体の形成が阻害されてしまうので、酸基を有する付加重合性モノマーを重合させることは困難である。なお、ATRAP法によってポリマー中に酸基を導入するには、保護基で酸基を保護したモノマーを重合し、重合後に保護基を脱離させる必要がある。このため、酸基をポリマーブロックに導入することは容易なことではない。以上の通り、ATRP法においては銅等の重金属を使用するので、重合後にこれらの重金属を除去し、ポリマーを精製することが必要である。また、重金属とリガンドの錯体形成を阻害する酸が存在すると重合が進行しないので、ATRP法では、酸基を有するモノマーを直接重合することができないといった問題がある。
【0014】
また、RAFT法及びMADIX法では、先ずジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物などの特殊な化合物を合成しておき、合成したこれらの化合物を使用する必要がある。また、これらの特殊な化合物は硫黄系の化合物であるので、得られるポリマーには硫黄系の不快な臭気が残りやすく、着色されている場合もある。このため、得られたポリマーから臭気や着色を除去する必要がある。
【0015】
さらに、DT法では、ATRP法と同様に重金属を使用する必要がある。このため、得られたポリマーから重金属を除去する必要があるとともに、発生した重金属を含む廃水を浄化しなければならないといった問題がある。
【0016】
本発明の目的は、顔料の微分散が可能で、保存安定性がよい、高分散性を与える優れたな高分子分散剤、該分散剤を使用した顔料着色剤組成物、さらには、当該高分子分散剤を製造する技術を提供することにある。本発明の目的は、特に、高分子分散剤を、カラーフィルター製造時に行われるアルカリ現像で、アルカリ溶解するアルカリ可溶性バインダーとして作用するものとし、これによって上記現像特性を達成したカラーフィルター用の顔料着色剤組成物の提供を可能にし、しかも該組成物をカラーフィルター用の着色剤として使用した場合に、液晶カラーテレビジョンなどの情報表示機器に装備されるカラーフィルターに要求される、画素の色の高濃度化、高精細性、高コントラスト性などの光学的特性に十分に対応でき、さらにカラーフィルター用の着色剤にした場合に要求される塗布特性、保存性安定性などの特性も向上させることができる優れた高分子分散剤を提供することにある。上記したように、カラーフィルター用の顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤を、アルカリ現像でき、アルカリ可溶性バインダーとして作用するものにできれば、カラーフィルター膜の形成に必要なアルカリ可溶性の樹脂分を減らすことができるので、この点からも、上記した特性を満足する高分子分散剤、さらにはこれを用いた顔料着色剤組成物、該組成物を用いた着色剤の提供が要望される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記した従来技術を解決すべく鋭意研究を行った結果、上記した本発明が目的とする種々の特性を有する高分子分散剤の提供を可能にできる、下記の構成のアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを見出して本発明に至った。すなわち、本発明者らは、ポリマー構造を、アニオン性のAポリマーブロックと、カチオン性のBポリマーブロックからなるA-Bブロック型とした中で、溶媒可溶性鎖であるAポリマーブロックと、吸着性鎖であるBポリマーブロックとからなるA-Bブロック型とし、さらに、Aポリマーブロックにカルボキシル基を有するメタクリレート系モノマー、特にメタクリル酸に由来する構成単位を含ませ、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位を含ませることで、当該A-Bブロックコポリマーは、Aポリマーブロックが溶媒可溶性鎖として機能するとともに、Bポリマーブロックが吸着性鎖として機能するものになり、本発明の所期の目的を達成できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0018】
より具体的に述べれば、本発明者らは、先述した従来の課題を解決すべく鋭意研究した結果、高分子分散剤として、溶媒溶解鎖であり且つアルカリ現像に作用するメタクリル酸由来のカルボキシル基を有するAポリマーブロックと、顔料吸着性を有するアミノ基を有するBポリマーブロックを有するアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを見出し、該構成のコポリマーが、顔料、好ましくは顔料表面に酸性基を有する色素誘導体で処理された顔料(以下、これらを顔料等とも呼ぶ)の優れた分散剤として機能し、顔料等が超微粒子化させたものであっても微分散させることができ、この結果、低粘度で長期安定性を保持し、顔料の高含有率を保つことができる顔料着色剤組成物の提供が可能になることを見出した。また、A-Bブロックコポリマーを上記構成としたことで、高分子分散剤自体にアルカリ現像性が発現し、現像速度の調整やシャープなエッジ画素を得ることができるという現像性を向上させた顔料着色剤組成物が得られ、さらに、この顔料着色剤組成物を使用したカラーフィルター用カラーを使用することで、画素の色濃度を向上させつつ、透過率やコントラスト比などの光学的特性、現像性が優れたカラーフィルターの画素形成が可能になることを見出した。
【0019】
上記したように、先述した本発明の目的は、下記の本発明の構成によって達成される。
本発明は、顔料、液媒体及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物であって、(1)当該高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、(2)Aブロックは、少なくともメタクリル酸を構成成分とし、酸価が10?150mgKOH/gであり、且つAのポリマーブロックの数平均分子量が3,000?20,000であり、(3)Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とし、アミン価が50?400mgKOH/gであり、且つBのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000であり、A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、(4)A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分量/数平均分子量)が1.6以下であることを特徴とする顔料着色剤組成物を提供する。
【0020】
上記した顔料着色剤組成物の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
前記顔料の平均粒子径が10?150nmであること;さらに、酸性である官能基を有する色素誘導体を含有してなること;前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部で、且つ前記色素誘導体の含有量が5?100質量部であることが挙げられる。
【0021】
本発明は、別の実施形態として、上記した、顔料100質量部に対する、高分子分散剤の含有量が10?100質量部で、且つ色素誘導体の含有量が5?100質量部である顔料着色剤組成物を使用してなることを特徴とするカラーフィルター用着色剤を提供する。
【0022】
本発明は、別の実施形態として、高分子分散剤を主成分として含有する顔料分散剤であって、(1)当該高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、(2)Aブロックは、少なくともメタクリル酸を構成成分とし、酸価が10?150mgKOH/gであり、且つAのポリマーブロックの数平均分子量が3,000?20,000であり、(3)Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とし、アミン価が50?400mgKOH/gであり、且つBのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000であり、A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、(4)A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分量/数平均分子量)が1.6以下である、ことを特徴とする顔料分散剤を提供する。
【0023】
本発明は、別の実施形態として、上記した高分子分散剤の製造方法であって、少なくともメタクリル酸を構成成分とするAのポリマーブロックを重合後、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを重合してBのポリマーブロックを生成してアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを得ることを特徴とする高分子分散剤の製造方法を提供する。
【0024】
上記した高分子分散剤の製造方法の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
前記重合方法が、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、リン系化合物、窒素系化合物、酸素系化合物又は炭化水素系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を触媒として使用するリビングラジカル重合法の可逆連鎖移動触媒重合方法(RTCP)であること;前記リン系化合物が、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物及びフォスフィネート系化合物であり、前記窒素系化合物が、イミド系化合物及びヒダントイン系化合物であり、酸素系化合物が、フェノール系化合物であり、炭化水素系化合物が、ジフェニルメタン系化合物及びシクロアルケン系化合物であること;重合温度が20?50℃であることである。
【発明の効果】
【0025】
先にも述べた通り、本発明によれば、下記の特有の構造を有するA-Bブロックコポリマーを高分子分散剤として利用することで、種々の効果が得られる。本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは、Aポリマーブロックが、分散媒体に対する相溶性を有するポリマーブロックであり、且つ酸性基を有し、一方のBポリマーブロックはアミノ基を有するポリマーブロックである。その構造中のBポリマーブロックのアミノ基が、顔料の構造中の強い酸性基と強固にイオン結合するので、上記構造のアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは顔料に着実に吸着する。このため、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを用いることで、顔料が樹脂にて処理された樹脂処理顔料を容易に得ることができる。このため、上記構造のアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを用いることで、微粒子化された顔料を高度に微分散させることができるとともに、塗布特性及び長期保存安定性に優れた顔料着色剤組成物を調製できる。本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーの用途としては、イオン交換樹脂等の様々なものが考えられるが、本発明のように顔料分散剤とすることが特に好適である。すなわち、本発明の顔料分散剤は、上記のアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを主成分として含有するので、その塗布特性及び長期保存安定性に優れ、さらに、Aポリマーブロック中に酸性基を有するので、これを用いることでアルカリ現像性に優れる顔料着色剤組成物の提供を可能とする。
【0026】
本発明によれば、低い粘度が長期間安定に保持され得る、塗布特性及び長期保存安定性に優れた顔料着色剤組成物が提供される。該顔料着色剤組成物は、塗料、インク、コーティング剤、文具、トナー、プラスチック等に利用できるが、なかでも、カラーフィルター用の着色剤として特に好適である。すなわち、本発明によって提供される顔料着色剤組成物をカラーフィルター用の着色剤として用いると、画素の色濃度、精細性、コントラスト性、及び透明性等の光学的特性に優れた、液晶カラーテレビジョン等の情報表示機器に装備されるカラーフィルターの提供が可能になる。そして、本発明によって提供される顔料着色剤組成物を用いれば、アルカリ現像の際の現像性に優れたカラーフィルター用レジストの提供が可能になる。
【0027】
本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは、重金属化合物の使用を必須とせず、また、ポリマーの精製が必須でなく、特殊な化合物を合成する必要がない、簡便な製造方法によって得ることができる。より具体的には、上記アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは、市場にある比較的安価な材料を用いるだけで、目的物であるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを容易に製造することができる。さらに、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは、以下に列挙した利点がある製造方法によって提供されるので、この点からも、顔料着色剤組成物や、これを用いた着色剤の工業的な利用が図れる。重合条件が穏和であり、従来のラジカル重合方法と同様の条件で重合することができる。すなわち、まず、従来のラジカル重合設備が使用可能であるので、特殊な設備が不要であり、しかも、重合中に、酸素、水、及び光の影響をそれほど受けない。また、使用するモノマーや溶媒なども精製する必要がなく、様々な官能基を有するモノマーを使用することができる。このため、所望する様々な官能基をポリマー中に導入することができる。このことは、酸性基及び塩基性基を有するモノマーを使用できることを意味し、さらには、重合率も非常に高いので、本発明で必須とするアニオンカチオン性A-Bブロックポリマーを、大量且つ容易に製造することができることを意味しており、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを利用した各種製品の工業化が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の詳細について、本発明を実施するための好ましい形態を例に挙げて説明する。本発明の顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤に用いられる、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは、メタクリレート系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上含む、Aポリマーブロック及びBポリマーブロックからなるA-Bブロック型のコポリマーである。そして、Aポリマーブロックは、少なくともカルボキシル基を有するメタクリレート系モノマーであるメタクリル酸を構成成分とし、Bポリマーブロックに、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位を含む。以下、アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーのことを「A-Bブロックコポリマー」とも記す。
【0029】
本発明を特徴づけるA-Bブロックコポリマーは、A-Bブロック型のコポリマーである。そして、該コポリマーは、顔料着色剤組成物を構成する高分子分散剤として用いた場合、下記のように挙動すると考えられる。まず、Aポリマーブロックは、分散させる媒体に、溶解又は相溶する機能を示すブロックであると考えられる。一方、Bポリマーブロックは、その構造中にアミノ基を有するため、これらが顔料、或いは酸性基含有色素誘導体で処理された顔料に結合して吸着する機能を示すと考えられる。顔料とBポリマーブロックとの吸着は、例えば、顔料の構造中の活性水素基(水酸基、アミド基、カルボキシル基、ウレタン基等)と、アミノ基との水素結合、或いは酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料の酸性基と、アミノ基とのイオン結合によるものと推測される。上記したように、本発明を特徴づけるA-Bブロック型のコポリマーは、その特有の構造と作用によって、微粒子化された顔料の表面にBポリマーブロックがイオン結合等で吸着するとともに、Aポリマーブロックが、分散媒体に溶解又は相溶し、且つ、Aポリマーブロックの立体的反発や電気的反発で顔料の凝集を防止する。このため、上記A-Bブロックコポリマーを使用したことで、本発明によって、微粒子化された顔料を高度に微分散させることができるようになるとともに、塗布特性及び長期保存安定性に優れた顔料着色剤組成物を調製することができたものと考えられる。なお、以降、単に「顔料」というときは、(i)顔料自体、及び(ii)酸性基含有色素誘導体で表面処理された顔料のいずれをも意味する。
【0030】
下記に、本発明を特徴づけるA-Bブロックコポリマーについて詳細に説明する。本発明で使用するA-Bブロックコポリマーは、メタクリレート系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上、好ましくは95質量%以上含むものであり、さらに好ましくは、メタクリレート系モノマーに由来する構成単位100%からなるものである。後述するが、該アニオンカチオン性ブロックコポリマーの好適な製造方法(重合方法)では、モノマーとしてメタクリレート系モノマーを用いることが特に好ましい。これに対し、後述する製造方法において、スチレン等のビニル系モノマー、アクリレート系モノマー、及びビニルエーテル系モノマーなどを用いた場合は、重合末端に結合したヨウ素が安定化しすぎてしまい、解離させるのに加温する必要がある、或いは解離しないなどの不都合が生ずる可能性があるので好ましくない。このため、メタクリレート系モノマー以外のモノマーを多量に用いた場合は、本発明において目的とする特有の構造にならない、或いは分子量分布が広がってしまうなどの不具合が生ずる可能性がある。ただし、メタクリレート系モノマー以外のモノマーであっても、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
【0031】
(Aポリマーブロック)
Aポリマーブロックを構成するために用いられるメタクリレート系モノマーとしては、少なくともメタクリル酸を用いればよく、それ以外は従来公知のものを用いることができ、特に限定されない。具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-メチルプロパンメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、シクロデシルメチルメタクリレート、トリシクロデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどの(シクロ)アルキルメタクリレート;フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなどのアリールメタクリレート;アリルメタクリレートなどのアルケニルメタクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノラウリルエーテルメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートなどのグリコールモノアルキルエーテル系メタクリレート;
【0032】
グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメタクリレート、メタクリロイロキシエチルグリシジルエーテル、メタクリロイロキシエトキシエチルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有メタクリレート;(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレート、及びこれらの化合物のイソシアネート基をε-カプロラクトン、MEKオキシム、及びピラゾールなどでブロックしたイソシアネート基含有メタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート、オキセタニルメチルメタクリレートなどの環状メタクリレート;オクタフルオロオクチルメタクリレート、テトラフルオロエチルメタクリレートなどのハロゲン元素含有メタクリレート;2-(4-ベンゾキシー3-ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート、2-(2’-ヒドロキシー5-メタクリロイロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールなどの紫外線を吸収するメタクリレート;トリメトキシシリル基やジメチルシリコーン鎖を持ったケイ素原子含有メタクリレートなどを挙げることができる。また、これらのモノマーを重合して得られるオリゴマーの片末端に(メタ)アクリル基を導入して得られるマクロモノマーなどを用いることができる。
【0033】
ただし、アミノ基を有するメタクリレートは、Bポリマーブロックにのみ導入し、Aポリマーブロックに用いてはならない。Aポリマーブロックの構成成分としてアミノ基を有するメタクリレートを用いると、顔料分散時に、Aポリマーブロック及びBポリマーブロックの両方が顔料に吸着してしまい、顔料を安定に分散させることができなくなってしまう。
【0034】
先に述べたように、Aポリマーブロックは、少なくともメタクリル酸を構成成分とすることを要するが、下記に挙げるような、メタクリル酸以外のカルボキシル基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位を含むものであってもよい。これらもカルボキシル基が導入されたものであるので、Aポリマーブロックは、アルカリで中和することでイオン化して水に溶解するようになる。このため、本発明を特徴づけるA-Bブロックコポリマーは、カラーフィルターの製造工程におけるアルカリ現像において好適に用いることができる。本発明において、上記Aポリマーブロックの形成に用いることができるメタクリル酸以外のカルボキシル基含有メタクリレート系モノマーの具体例としては、例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルに無水フタル酸などの酸無水物を反応して得られるメタクリレート;グリシジルメタクリレートにフタル酸を反応させた水酸基とカルボキシル基を有するメタクリレートなどが挙げられる。本発明では、Aポリマーブロックの形成に、カルボキシル基含有メタクリレート系モノマーの中でも、分子量が小さく、重合性が高いメタクリル酸を用いることを必須としたが、その理由は、メタクリル酸を用いると、カルボキシル基含有メタクリレート系モノマーが重合せずに残存してしまうなどの不具合が生じにくくなるからである。
【0035】
本発明を特徴づけるA-BブロックコポリマーのAポリマーブロックの酸価は10?150mgKOH/gであることを要し、20?100mgKOH/gであることがさらに好ましい。Aポリマーブロックの酸価が上記の数値範囲内であると、例えば、カラーフィルターの製造工程におけるアルカリ現像に好適な成分として用いることができる。Aポリマーブロックの酸価が10mgKOH/g未満であると、アルカリで中和した場合であっても溶解しない又は溶解速度が遅くなる。一方、Aポリマーブロックの酸価が150mgKOH/g超えると、露光硬化部分の親水性までもが向上してしまって耐水性が低下してしまい、形成される画素が乱雑になってしまう場合がある。
【0036】
本発明を特徴づけるA-BブロックコポリマーのAポリマーブロックは、その数平均分子量(Mn)が3,000?20,000であることを要するが、4,000?15,000であることがさらに好ましい。Aポリマーブロックの数平均分子量が4,000未満であると、顔料に吸着したアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーのうち、Aポリマーブロックの立体的反発が作用せず、安定性に欠ける場合がある。一方、Aポリマーブロックの数平均分子量が20,000超えると、分散媒体に溶解又は相溶する部分が多くなるので、粘度が過度に上昇したり、現像性が低下したりする場合がある。
【0037】
本発明を特徴づけるA-BブロックコポリマーのAポリマーブロックの分子量分布(PDI=重量平均分子量/数平均分子量)は、1.6以下であることが好ましいが、1.5以下であることがさらに好ましい。後述する、アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーの製造方法を規定する本発明の高分子分散剤の製造方法によれば、このような狭い分子量分布のアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを適宜に製造することができる。また、Aポリマーブロックの分子量分布(PDI)が1.6超えると、数平均分子量が3,000未満の成分や、20,000を超える成分を多く含むことにつながるので、その安定性が低下したり、アルカリ現像に対する現像性が低下したり、粘度が過度に上昇したりする場合があるので好ましくない。本発明においては、上記数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)を、ポリスチレンを標準物質とするGPC(GelPermeationChromatography)にて測定した。
【0038】
(Bポリマーブロック)
本発明を特徴づけるA-BブロックコポリマーのBポリマーブロックを構成するために用いられるアミノ基を有するメタクリレート系モノマーとしては、従来公知のものを挙げることができ、特に限定されない。また、使用されるアミノ基の形態としては、第1級、第2級、第3級、及び、第4級アンモニウム塩の形で使用される。
【0039】
第1級アミノ基を有するメタクリレートの具体例としては、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチルメタクリレート、第2級アミノ基を有するメタクリレートとしては、イソプロピルアミノエチルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、第3級アミノ基を有するメタクリレートとしては、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ジエチルアミノエチルメタクリレート、2-ジブチルアミノエチルメタクリレート、2-ジシクロヘキシルアミノエチルメタクリレート、第4級アンモニウム塩を有するメタクリレートとしては、2-ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩、2-ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド塩などを挙げることができる。さらに、これらアミノ基を有するメタクリレート系モノマーは、前述のAポリマーブロックの形成材料として列挙したものの中から選ばれる1種以上のモノマーと併用させてもよい。
【0040】
また、第4級アンモニウム塩を有するメタクリレートを重合して、Bポリマーブロックを形成するだけでなく、第3級のアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを用いて、第3級アミノ基を有するポリマーブロックを調製した後、このアミノ基に有機ハロゲン化物を反応させて第4級アンモニウム塩を生成させ、第4級アンモニウム塩を有するBポリマーブロックを製造してもよい。有機ハロゲン化物の具体例としては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジルなどが挙げられ、特に限定はない。
【0041】
本発明を特徴づけるA-BブロックコポリマーのBポリマーブロックの平均分子量は500?8,000であることを要し、1,000?6,000であることがさらに好ましい。なお、Bポリマーブロックの平均分子量は、A-Bブロックコポリマーの数平均分子量から、Aポリマーブロックの数平均分子量を差し引いた値で表される。Bポリマーブロックの平均分子量が500未満であると、顔料に対する吸着力が弱く、安定性に欠ける場合がある。一方、Bポリマーブロックの平均分子量が8,000を超えると、吸着力が大きすぎるために、顔料の粒子同士で吸着してしまい、同様に安定性に欠ける場合がある。
【0042】
本発明を特徴づけるA-BブロックコポリマーのBポリマーブロックのアミン価は50?400mgKOH/gであることを要し、100?360mgKOH/gであることがさらに好ましい。Bポリマーブロックのアミン価が50mgKOH/g未満であると、顔料への吸着性が不足する場合がある。一方、Bポリマーブロックのアミン価が400mgKOH/g超えると、顔料に吸着する部分が過剰になるため、顔料がむしろ凝集してしまう場合がある。
【0043】
本発明を特徴づけるA-Bブロックコポリマー中のBポリマーブロックの含有量は、5?50質量%であることを要し、10?40質量%であることがさらに好ましい。Bポリマーブロックの含有量が5質量%未満であると、顔料に吸着する部分が小さすぎるために脱離しやすく、顔料の分散性が低下する傾向にある。一方、Bポリマーブロックの含有量が50質量%超えると、分散媒に溶解又は相溶する部分であるAポリマーブロックの含有量が相対的に少なくなるので、分散安定性が低下する傾向にある。
【0044】
以上より、A-Bブロックコポリマーの数平均分子量は、3,500?28,000であることが好ましく、5,000?21,000であることがさらに好ましい。本発明においては、A-Bブロックコポリマーの分子量分布(PDI)は1.6以下であることを要するが、1.5以下であることがさらに好ましい。本発明者らの検討によれば、PDIが1.6を超えると、得られる顔料分散剤の分散性能が不良となってしまう。
【0045】
本発明を特徴づけるA-Bブロックコポリマーは、様々な用途に適用することが期待される。具体的には、顔料分散剤、樹脂処理顔料用の樹脂成分として好適に用いることができる。本発明では、高分子分散剤として用い、特に、これと顔料及び液媒体を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物として用い、さらに、該組成物を使用してなるカラーフィルター用着色剤として利用する。
【0046】
<アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーの製造方法>
本発明の高分子分散剤の製造方法は、上記した特定の構成のアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを製造することを特徴とする。該方法では、少なくともメタクリル酸を構成成分とするAのポリマーブロックを重合後、アミノ基を有するメタクリレート系モノマーを重合してBのポリマーブロックを生成してアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを製造するが、好適には重合開始化合物及び触媒の存在下、メタクリレート系モノマーを含有するモノマー成分をリビングラジカル重合する工程(重合工程)を含む。そして、当該重合工程が、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、リン系化合物、窒素系化合物、酸素系化合物又は炭化水素系化合物の少なくとも1種を触媒として使用するリビングラジカル重合法である可逆連鎖移動触媒重合方法(RTCP)であることが好ましい。
【0047】
前記重合工程は、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、メタクリレート系モノマーを含有するモノマー成分をリビングラジカル重合によって重合する工程である。その中で、重合開始化合物となる有機ヨウ化物に熱や光を与えると、ヨウ素ラジカルが解離する。そして、ヨウ素ラジカルが解離した状態でモノマーが挿入された後、直ちにヨウ素ラジカルがポリマー末端ラジカルと再度結合して安定化し、停止反応を防止しながら重合反応が進行する。
【0048】
上記で用いる有機ヨウ化物の具体例としては、2-アイオド-1-フェニルエタン、1-アイオド-1-フェニルエタンなどのアルキルヨウ化物;2-シアノ-2-アイオドプロパン、2-シアノ-2-アイオドブタン、1-シアノ-1-アイオドシクロヘキサン、2-シアノ-2-アイオド-2,4-ジメチルペンタン、2-シアノ-2-アイオド-4-メトキシ-2,4-ジメチルペンタンなどのシアノ基含有ヨウ化物;などを挙げることができる。さらに、上記に限定されず、ヨウ素とアゾ化合物とを反応させて得られる有機ヨウ化物を使用することもできる。
【0049】
上記で使用する有機ヨウ化物は、市販品も含め、そのまま添加してもよいが、従来公知の方法で調製したものを使用することもできる。また、重合系内へヨウ素を添加し、当該系内にて調製することも好ましい方法である。例えば、アゾ化合物であるアゾビスイソブチロニトリルとヨウ素とを重合系内へ添加し、調製することで、重合開始化合物となる有機ヨウ化物が得られ、重合反応を行うこともできる。上記で使用できるアゾ化合物の例としては、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルロピオネート)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)などが挙げられる。
また、上記の有機ヨウ化物中のヨウ素が臭素又は塩素などのハロゲン原子に置換した有機ハロゲン化物に、第4級アンモニウムアイオダイドやヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物塩を反応させ、ハロゲン交換させることでも重合開始化合物となる有機ヨウ化物を得ることができる。
【0050】
前記重合工程では、有機ヨウ化物である重合開始化合物とともに、当該重合開始化合物のヨウ素を引き抜くことができる触媒を使用する。触媒としては、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物などのリン系化合物;イミド系化合物、ヒダントイン系化合物などの窒素系化合物;フェノール系化合物などの酸素系化合物;ジフェニルメタン系化合物、シクロアルケン系化合物などの炭化水素系化合物を用いることが好ましく、その他、シクロペンタジエン系化合物、マロノニトリル、マロン酸ジエステル系化合物が使用できる。なお、これらの触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
リン系化合物の具体例としては、三ヨウ化リン、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネートなどを挙げることができる。窒素系化合物の具体例としては、スクシンイミド、2,2-ジメチルスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、N-アイオドスクシンイミド、ヒダントインなどを挙げることができる。酸素系化合物の具体例としては、フェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t-ブチルフェノール、カテコール、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエンなどを挙げることができる。炭化水素系化合物の具体例としては、シクロヘキサジエン、ジフェニルメタン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどを挙げることができる。
【0052】
この触媒の使用量(モル数)は、重合開始化合物の使用量(モル数)未満とすることが好ましい。触媒の使用量(モル数)が多すぎると、重合が制御されすぎてしまい、重合が進行しにくくなる場合がある。また、リビングラジカル重合の際の温度(重合温度)は20?50℃とすることが好ましい。重合温度が高すぎると、重合末端のヨウ素がメタクリル酸によって分解してしまい、末端が安定せずにリビング重合とならない場合がある。低すぎるとラジカルが発生しにくく重合が進まない。
【0053】
また、重合工程においては、通常、ラジカルを発生しうる重合開始剤を添加する。重合開始剤としては、従来公知のアゾ系開始剤や過酸化物系開始剤が使用される。なお、上記の重合温度の範囲で十分にラジカルが発生する重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマーに対して0.001?0.1モル倍とすることが好ましく、0.002?0.05モル倍とすることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量が少なすぎると重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、重合開始剤の使用量が多すぎると、リビングラジカル重合反応ではない通常のラジカル重合反応が副反応として進行してしまう場合がある。
【0054】
上記したリビングラジカル重合は、有機溶剤を使用しないバルク重合であってもよいが、有機溶剤を使用する溶液重合とすることが好ましい。有機溶剤としては、重合開始化合物、触媒、モノマー成分、及び重合開始剤などの成分を溶解しうるものであることが好ましい。有機溶剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。ヘキサン、オクタン、デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;
【0055】
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤の他、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチルなどを挙げることができる。なお、これらの有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
溶液重合する場合において、重合液の固形分濃度(モノマー濃度)は5?80質量%とすることが好ましく、20?60質量%とすることがさらに好ましい。重合液の固形分濃度が5質量%未満であると、モノマー濃度が低すぎて重合が完結しない場合がある。一方、重合液の固形分濃度が80質量%超又はバルク重合であると、重合液の粘度が高すぎてしまい、撹拌が困難になって重合収率が低下する傾向にある。リビングラジカル重合は、モノマーがなくなるまで行うことが好ましい。具体的には、重合時間は0.5?48時間とすることが好ましく、実質的には1?24時間とすることがさらに好ましい。また、重合雰囲気は特に限定されず、通常の範囲内で酸素が存在する雰囲気であっても、窒素気流雰囲気であってもよい。また、重合に使用する材料(モノマーなど)は、蒸留、活性炭処理、又はアルミナ処理などにより不純物を除去したものを用いてもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。さらに、遮光下で重合を行ってもよいし、ガラスなどの透明容器中で重合を行ってもよい。
【0057】
本発明の製造方法においては、A-Bブロックコポリマーの重合順序は、(i)Aポリマーブロックを構成するモノマーを重合してAポリマーブロックを形成した後、(ii)Bポリマーブロックを構成するモノマーを添加してさらに重合することを要す。Bポリマーブロックを構成するモノマーを先に重合すると、重合が完結せずにアミノ基を有するモノマーが反応系内に残存する場合がある。このような場合、アミノ基を有するモノマーがAポリマーブロックに導入されてしまう場合がある。これに対して、Aポリマーブロックを構成するモノマーを先に重合すれば、重合が完結せずにモノマーが反応系内に残存した場合であっても、得られるA-Bブロックコポリマーの構成成分の90質量%以上が(メタ)アクリレート系モノマーとなるようにBポリマーブロックを導入すれば、A-Bブロックコポリマーを容易に得ることができ、且つ、Bポリマーブロックのみにアミノ基を導入することができる。なお、本発明においては、好ましくは重合率50%以上、さらに好ましくは重合率80%以上、特に好ましくは重合率100%となるまでAポリマーブロックを構成するモノマーを重合してAポリマーブロックを形成した後、Bポリマーブロックを構成するモノマーを添加してBポリマーブロックを形成すればよい。
【0058】
本発明の製造方法においては、重合開始化合物の使用量を調整することによって、得られるA-Bブロックコポリマーの分子量を制御することができる。具体的には、重合開始化合物のモル数に対して、モノマーのモル数を適切に設定することで、任意の分子量のA-Bブロックコポリマーを得ることができる。例えば、重合開始化合物を1モル使用し、分子量100のモノマーを500モル使用して重合した場合、「1×100×500=50,000」の理論分子量を有するA-Bブロックコポリマーを得ることができる。すなわち、A-Bブロックコポリマーの理論分子量を、下記式で算出することができる。なお、上記の「分子量」は、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)のいずれをも含む概念である。
[A-Bブロックコポリマーの理論分子量]=
[重合開始化合物1モル]×[モノマー分子量]×[モノマーのモル数/重合開始化合物のモル数]
【0059】
なお、重合工程においては、二分子停止や不均化の副反応を伴う場合があるので、上記の理論分子量を有するA-Bブロックコポリマーが得られない場合がある。A-Bブロックコポリマーは、これらの副反応が起こらずに得られたものであることが好ましい。ただし、カップリングによって得られるA-Bブロックコポリマーの分子量が多少大きくなっても、重合反応が途中で停止して得られるA-Bブロックコポリマーの分子量が多少小さくなってもよい。また、重合率は100%でなくてもよい。さらに、重合を一旦終了した後、重合開始化合物や触媒を添加して、残存するモノマーを消費させて重合を完結させてもよい。すなわち、A-Bブロックコポリマーが生成していればよい。
【0060】
得られたA-Bブロックコポリマーは、重合開始化合物に由来するヨウ素原子が結合した状態のままであってもよいが、ヨウ素原子を脱離させることが好ましい。ヨウ素原子をA-Bブロックコポリマーから脱離させる方法としては、従来公知の方法であれば特に限定されない。具体的には、A-Bブロックコポリマーを加熱したり、酸やアルカリで処理したりすればよい。また、A-Bブロックコポリマーをチオ硫酸ナトリウムなどで処理してもよい。脱離したヨウ素は、活性炭やアルミナなどのヨウ素吸着剤で処理して除去するとよい。
【0061】
<顔料分散剤及び顔料着色剤組成物>
本発明の顔料分散剤は、前述のアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを主成分として含有するものである。なお、顔料分散剤は、実質的にアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーからなるものであることが好ましい。また、本発明の顔料着色剤組成物は、この顔料分散剤と、顔料と液媒体とを含有してなる。この場合に使用する顔料の粒径は、その用途によっても異なり、特に限定されないが、例えば、その平均粒子径が10?150nmである微細なものを用いた場合に、特に顕著な効果が得られる。本発明を特徴づけるA-Bブロックコポリマーは、そのアミノ基含有ブロックコポリマーの構造中(Bポリマーブロック中)のアミノ基が、酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料の酸性基と強固に結合し、このBポリマーブロックが顔料に吸着することで、顔料の分散性を高める作用を発揮する。すなわち、本発明の顔料分散剤は、この作用によって上記したような微細な粒径の顔料を良好に分散させる成分であるので、分散させる顔料の種類については特に限定はない。
【0062】
(顔料)
顔料としては、有機顔料、無機顔料、金属粉末又は微粒子などの金属系顔料、無機フィラーなどを用いることができる。有機顔料及び無機顔料の具体例としては、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ・チオインジゴ顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、カーボンブラック顔料、複合酸化物系黒色顔料、酸化鉄ブラック顔料、酸化チタン系黒色顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料、及び酸化チタン系顔料からなる群より選択される、赤色、緑色、青色、黄色、橙色、紫色、黒色、及び白色顔料を挙げることができる。金属系顔料の具体例としては、銅粉末、アルミフレークなどを挙げることができる。また、無機フィラーの具体例としては、マイカ系顔料、天然鉱物、シリカなどを挙げることができる。
【0063】
なお、カラーフィルター用の顔料としては、有機顔料やブラックマトリックス用無機顔料を用いることが好ましい。赤色顔料としては、カラーインデックス(以下、C.I.)ピグメントレッド(PR)56、58、122、166、168、176、177、178、224、242、254、255を挙げることができる。緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン(PG)7、36、58、ポリ(14?16)ブロム銅フタロシアニン、ポリ(12?15)ブロム化-ポリ(4?1)クロル化銅フタロシアニンを挙げることができる。青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:1、15:3、15:6、60、80などを挙げることができる。
【0064】
また、上記のカラーフィルター用の顔料に対する補色顔料又は多色型の画素用顔料として、以下のものを挙げることができる。黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー(PY)12、13、14、17、24、55、60、74、83、90、93、126、128、138、139、150、154、155、180、185、216、219、紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット(PV)19、23を挙げることができる。また、ブラックマトリックス用の黒色顔料としては、C.I.ピグメントブラック(PBK)6、7、11、26、銅・マンガン・鉄系複合酸化物を挙げることができる。
【0065】
本発明で使用する顔料は、その平均粒子径が10?150nmのものであることが好ましく、平均粒子径が20?80nmの顔料を用いることがより好ましい。また、特に、本発明の顔料着色剤組成物をカラーフィルター用の着色剤とする場合は、その構成に、平均粒子径が20?50nmの顔料を用いることが好ましい。このように微粒子化された顔料を分散させて得られる本発明の顔料着色剤組成物は、高透明性及び高コントラスト性を有するカラーフィルターを製造しうる着色剤として特に好適である。平均粒子径が10nm未満では、顔料が1次粒子以下となり、耐光性、耐熱性など諸物性が悪化してしまう。一方、150nmを超えると、透明性、コントラスト性が悪化してしまう。尚、顔料の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して求めることができる。また、本発明の顔料着色剤組成物には、微粒子化された顔料を安定的して高度に微分散させることが可能な顔料分散剤(アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマー)が含有されている。このため、本発明の顔料着色剤組成物は、上記のような極めて微細な顔料が良好な状態で分散されており、しかも長期保存安定性にも優れたものである。なお、顔料着色剤組成物に含有される顔料の割合は、顔料着色剤組成物の全体を100質量%とした場合に5?40質量%であることが好ましく、10?30質量%であることがさらに好ましい。少なすぎると、顔料に対する吸着量が足らず十分に安定的に顔料分散できない。多すぎると、顔料分散に寄与しない顔料分散剤が多くあり、顔料着色剤組成物の液粘度が高くなり再凝集などを起こすことがある。
【0066】
(色素誘導体)
本発明の顔料着色剤組成物には、顔料分散剤に用いる本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマー中のアミノ基とイオン結合させて吸着させるために、さらに、酸性官能基を有する酸性の色素誘導体を含有させることが好ましい。この色素誘導体は、色素骨格に酸性官能基が導入されたものである。色素骨格としては、本発明の顔料着色剤組成物を構成している顔料と同一又は類似の骨格、該顔料の原料となる化合物と同一又は類似の骨格が好ましい。色素骨格の具体例としては、アゾ系色素骨格、フタロシアニン系色素骨格、アントラキノン系色素骨格、トリアジン系色素骨格、アクリジン系色素骨格、ペリレン系色素骨格などを挙げることができる。
【0067】
色素骨格に導入される酸性官能基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基が好ましい。なお、合成の都合上、及び、酸性度の強さからスルホン酸基が好ましい。また、酸性官能基は、色素骨格に直接結合していてもよいが、アルキル基やアリール基などの炭化水素基;エステル、エーテル、スルホンアミド、ウレタン結合を介して色素骨格に結合していてもよい。
【0068】
本発明の顔料着色剤組成物中の本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーの含有量は、顔料100質量部に対して10?100質量部であることが好ましく、10?50質量部であることがさらに好ましい。アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーの含有量が10質量部未満であると、顔料の分散性が不十分になる場合があるので好ましくない。一方、アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーの含有量が100質量部超えると、分散に寄与しない樹脂が生成する場合があるので好ましくない。また、必要に応じて顔料着色剤組成物中に含有させる色素誘導体の含有量は、顔料100質量部に対して5?100質量部であることが好ましく、10?30質量部であることがさらに好ましい。色素誘導体の含有量が5質量部未満であると、顔料の表面を覆う酸性基が少なくなるので、顔料分散剤の吸着が不十分になる場合がある。一方、色素誘導体の含有量が100質量部超であると、色素誘導体の色が出やすくなってしまい、目的とする色相にならない場合がある。特に、本発明の顔料着色剤組成物をカラーフィルター用の着色剤として用いる場合は、さらに顔料着色剤組成物中に上記した範囲内で、色素誘導体が含有されたものであることが好ましい。
【0069】
(アルカリ現像性ポリマー)
本発明の顔料着色剤組成物は、前述のアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを顔料分散剤として使用し、顔料、及び必要に応じて用いられる色素誘導体を液媒体に分散して得られるものである。なお、顔料着色剤組成物をカラーフィルター用の着色剤として用いる場合には、上記したように色素誘導体を含み、さらにアルカリ現像性ポリマーを添加したものを用いることができる。しかし、本発明で顔料分散剤として用いるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは、その構造中に、少なくともメタクリル酸に由来するカルボキシル基を有するので、この場合は中和してイオン化して水に可溶性となる。すなわち、本発明の顔料着色剤組成物は、アルカリ現像性ポリマーを添加しなくてもアルカリ現像可能であり、本発明は、このことを特徴の一つとしている。
【0070】
本発明において、さらに添加してもよいアルカリ現像性ポリマーは、その構造中にカルボキシル基などの酸基を有し、アルカリ水溶液で酸基が中和されて水に可溶性となって現像できるものである。
【0071】
アルカリ現像性ポリマーとしては、不飽和結合基などの感光性基を有する感光性樹脂や、非感光性樹脂を用いることができる。感光性樹脂の具体例としては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂、及び不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などを挙げることができる。非感光性樹脂の具体例としては、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン-マレイン酸エステル系共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体などを挙げることができる。これらのアルカリ現像性ポリマーは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、顔料着色剤組成物中のアルカリ現像性バインダーの含有量は、顔料100質量部に対して5?300質量部であることが好ましく、10?100質量部であることがさらに好ましい。
【0072】
また、本発明の顔料着色剤組成物に、さらに、グリシジル基又はイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを反応して得られる不飽和結合基含有ブロックコポリマーを含有させることも好ましい態様である。この不飽和結合基含有ブロックコポリマーは、光硬化して膜を形成しうる成分である。このため、カラーフィルターの画素の強度(耐性)を向上させることができる。また、画素のエッジをシャープに形成できるとともに、形成される画素の溶剤耐性を向上させることができる。なお、不飽和結合基含有ブロックコポリマー中の不飽和結合基は、アクリル基又はメタクリル基が好適である。これらの不飽和結合基は、従来公知の方法で不飽和結合基含有ブロックコポリマー中に導入される。
【0073】
油性の顔料分散液である本発明の顔料着色剤組成物を構成する液媒体には、下記に例示するような有機溶剤が使用できる。すなわち、例えば、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶剤;ブタノールなどのアルコール系溶剤;酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコール系エステル又はエーテル溶剤;N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;エチレンカーボネート、プロピオンカーボネートなどのカーボネート系溶剤などの有機溶剤を挙げることができる。これらの有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
本発明の顔料着色剤組成物には、さらに、従来公知の添加剤を添加してもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、光重合開始剤などを挙げることができる。また、反応性希釈剤として、メタクリレートやアクリレートなどの不飽和結合を有するモノマーを添加してもよい。
【0075】
(顔料着色剤組成物の製造方法)
本発明の顔料着色剤組成物を製造するに際しては、各成分を一度に配合してもよく、また、個別に配合してもよい。なお、顔料の原料化合物を顔料化して顔料とする際、或いは顔料を微細化する際に色素誘導体を添加することが好ましい。これにより、色素誘導体の作用でその表面が塩基性となった顔料(表面処理顔料)を得ることができる。さらに、後述する樹脂処理顔料を用いる場合には、樹脂処理顔料に液媒体やアルカリ現像性ポリマーなどの成分を添加して分散させる。なお、必要に応じて他の顔料分散剤を添加してもよい。
【0076】
顔料を分散させる方法は従来公知の方法であればよく、特に限定されない。顔料を分散させるために用いる装置の具体例としては、縦型・横型メディアミル、サンドミル、アトライター、マイクロフルイダイザー、超音波分散機、三本ロールなどを挙げることができる。これらの装置を使用して、顔料が所定の平均粒子径となるまで分散させることが好ましい。
【0077】
顔料を微細化させる段階で、本発明を特徴づける顔料分散剤(アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマー)を使用することもできる。この場合における具体的な方法は、顔料の混練中にアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを添加し、混練によって、アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーの塩基性基を顔料にイオン結合させ、顔料分散剤を顔料に吸着させるようにする。顔料の混練方法としては、特に限定されない。具体的には、ニーダー、押出機、ボールミル、二本ロール、三本ロール、フラッシャーなどの従来公知の混練機を使用し、常温又は加熱条件下、通常0.5?60時間、好ましくは1?12時間混練する。また、必要に応じて、顔料を微細化するためのメディアとして炭酸塩や塩化物塩などの塩を併用することが好ましい。用いる塩の量は、顔料に対して好ましくは1?30質量倍、さらに好ましくは2?20質量倍である。少なすぎると十分に顔料を微細化することができない。一方、多すぎると不経済であり実用的ではない。
【0078】
また、本発明の顔料着色剤組成物を製造する場合、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの粘性を有する有機溶剤を併用し、潤滑性を付与することが好ましい。アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは、これらの粘性を有する有機溶剤に溶解するので、アニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーが析出することなく、顔料を微細化することができる。粘性を有する有機溶剤の使用量は、混練物の粘度に応じて調整すればよい。このようにして得られた樹脂処理顔料は、脱塩後、水ペーストとしてもよいし、粉砕して粉末としてもよい。また、得られた樹脂処理顔料は、液媒体に分散させて顔料分散体とすることができる。
【0079】
本発明の顔料着色剤組成物は、様々な物品の着色剤として使用することができる。例えば、グラビアインキ、オフセットインキ、UVインクジェットインクなどとして用いることができる。本発明の顔料着色剤組成物は、特に低粘度化と顔料の高微細化が可能であるとともに、長期保存安定性が良好であることから、カラーフィルター用の着色剤(カラーフィルター用顔料着色剤組成物)として好適である。
【実施例】
【0080】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下、文中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0081】
(合成例1:AC-1)
還流管、ガス導入装置、温度計、及び撹拌装置を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGM」と記す)230部、ヨウ素4.1部、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(以下、「V-70」と記す)19.7部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と記す)57.6部、ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と記す)57.6部、2-エチルヘキシルメタクリレート(以下、「EHMA」と記す)28.8部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=3?5)(以下、「PME200」と記す)28.8部、ベンジルメタクリレート(以下、「BzMA」と記す)14.4部、メタクリル酸(以下、「MAA」と記す)20部、及び3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(以下、「BHT」と記す)0.9部を仕込んだ。窒素を流しながら40℃で7時間重合し、Aポリマーブロックの溶液を得た。固形分から算出したAポリマーブロックの重合率は94.3%であった。また、GPCにて測定したMnは4,900、PDIは1.24、ピークトップの分子量は6,000であった。さらに、酸価は62.4mgKOH/gであった。上記におけるMn及びPDIは、先に説明した条件のGPCにて測定した値である。他の例においても同様である。
【0082】
次いで、上記で得たAポリマーブロックの溶液を40℃に保ったまま、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、「DMAEMA」と記す)126部、V-70を2.5部、及び、PGM126部の混合液を添加した。そして、同温度で4時間重合して、Bポリマーブロックを形成した。次に、窒素の流通を停止した後、80℃に加温して、ポリマー鎖の末端に結合したヨウ素を遊離させることにより、A-Bブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。なお、ヨウ素の遊離については、ポリマー溶液が褐色透明の液体となったことにより判断した。
【0083】
上記で得たA-Bブロックコポリマーの溶液の固形分は、49.4%であった。また、固形分から算出したBポリマーブロックの重合率は、ほぼ100%であった。また、A-BブロックコポリマーのMnは8,900、PDIは1.41、ピークトップ分子量は12,600であり、酸価は38.8mgKOH/gで、アミン価は134.1mgKOH/gあった。上記におけるMn及びPDIは、先に説明した条件のGPCにて測定した値である。他の例においても同様である。また、BポリマーブロックのMnは4,000であった。得られたA-Bブロックコポリマーを「AC-1」と称する。上記したBポリマーブロックのMnは、「A-BブロックコポリマーのMn」-「AポリマーブロックのMn」より算出した値である。他の例においても同様である。
【0084】
(合成例2:AC-2)
合成例1で使用したと同様の反応容器を用いて、PGM280部、ヨウ素3.6部、V-70を17.7部、MMA77.7部、BMA77.7部、EHMA38.8部、PME200を38.8部、BzMA19.4部、MAA27.0部、及びBHT0.9部を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、Aポリマーブロックの溶液を得た。固形分から算出したAポリマーブロックの重合率は、90.1%であった。また、AポリマーブロックのMnは7,000、PDIは1.36、ピークトップ分子量は9,500、酸価は62.2mgKOH/gであった。
【0085】
次いで、上記で得たAブロックポリマー溶液を用い、DMAEMA126部、V-70を2.5部、及びPGM126部の混合液を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、Bポリマーブロックを形成し、A-Bブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたA-Bブロックコポリマーの溶液の固形分は、48.5%であり、固形分から算出したBポリマーブロックの重合率はほぼ100%であった。また、A-BブロックコポリマーのMnは10,900、PDIは1.43、ピークトップ分子量は15,500であり、酸価は42.9mgKOH/gで、アミン価は110.2mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは3,900であった。得られたA-Bブロックコポリマーを「AC-2」と称する。
【0086】
(合成例3:AC-3)
合成例1で使用したと同様の反応容器を用いて、PGM303部、ヨウ素3.6部、V-70を17.7部、MMA77.7部、BMA77.7部、EHMA38.8部、PME200を38.8部、BzMA19.4部、MAA50.0部、及びBHT1.0部を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、Aポリマーブロックの溶液を得た。固形分から算出したAポリマーブロックの重合率は90.4%であった。また、AポリマーブロックのMnは7,400、PDIは1.35、ピークトップ分子量は10,200、酸価は107.5mgKOH/gであった。
【0087】
次いで、上記で得たAブロックポリマー溶液を用い、DMAEMA62.8部、V-70を1.3部、及びPGM62.8部の混合液を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にしてBポリマーブロックを形成し、A-Bブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたA-Bブロックコポリマーの溶液の固形分は、48.9%であり、固形分から算出したBポリマーブロックの重合率はほぼ100%であった。また、A-BブロックコポリマーのMnは9,500、PDIは1.40、ピークトップ分子量は13,500であり、酸価は88.8mgKOH/gで、アミン価は61.2mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは2,100であった。得られたA-Bブロックコポリマーを「AC-3」と称する。
【0088】
(参考合成例4:AC-4)
還流管、温度計、及び撹拌装置を取り付けた500mLセパラブルフラスコに合成例2で得たAC-2を300g仕込み、70℃に加温した。そして、予め別容器に調製しておいた、ベンジルクロリド(以下、「BzCl」と記す)67.6g、及びPGM67.6gを含有する溶液を、上記の500mLセパラブルフラスコ中に1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で3時間反応させ、第4級アンモニウム塩を含有するA-Bブロックコポリマーの溶液を得た。得られたA-Bブロックコポリマーの溶液の固形分は50.2%であった。また、A-BブロックコポリマーのMnは12,500、PDIは1.44であり、酸価は34.7mgKOH/gで、アミン価は、8.5mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは、5,500であった。得られたポリマーを「AC-4」と称する。
【0089】
(合成例5:AC-5)
参考合成例4で使用したと同様の反応容器に、BzC150.8g、及びPGM50.8gを用いたこと以外は、前述の参考合成例4の場合と同様にして、A-Bブロックコポリマーの溶液を得た。得られたA-Bブロックコポリマーの溶液の固形分は50.0%であった。また、A-BブロックコポリマーのMnは11,700、PDIは1.43であり、酸価は37.3mgKOH/gで、アミン価は、47.5mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは、4,700であった。得られたポリマーを「AC-5」と称する。
【0090】
(比較合成例1:HA-1)
まず、MMA77.7部、BMA77.7部、EHMA38.8部、PME200を38.8部、BzMA19.4部、MAA27部、DMAEMA126部とともに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル7.5部、及び連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン6部を溶解し、モノマー配合溶液を調製した。次いで、還流管、温度計、及び撹拌装置を取り付けた1LセパラブルフラスコにPGM300部を投入し、80℃に加温した。そして、先に調製したモノマー配合溶液を、上記の1Lセパラブルフラスコ中に1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で5時間重合させて、ランダム構造を有するポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は49.7%であった。また、得られたポリマーのMnは6,100、PDIは1.96であり、酸価は43.3mgKOH/gで、アミン価は109.4mgKOH/gであった。得られたポリマーを「HA-1」と称する。
【0091】
(比較合成例2:HA-2)
合成例1で使用したと同様の反応容器に、PGM154部、ヨウ素3.6部、V-70を17.7部、MMA46.8部、BMA46.8部、EHMA23.6部、PME200を23.6部、BzMA13.3部、及びBHT0.9部を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、酸価を有さないAポリマーブロックの溶液を得た。固形分から算出したAポリマーブロックの重合率は95.6%であった。また、AポリマーブロックのMnは4,700、PDIは1.23、ピークトップ分子量は5,800であった。
【0092】
次いで、上記で得たAポリマーブロックの溶液を40℃に保ったまま、DMAEMA95部、V-70を1.9部、及びPGM95部の混合液を添加した。そして、同温度で4時間重合して、Bポリマーブロックを形成し、A-Bブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたA-Bブロックコポリマー溶液の固形分は、48.3%であった。また、A-BブロックコポリマーのMnは8,500、PDIは1.41、ピークトップ分子量は12,100であり、アミン価は134.5mgKOH/gであった。また、BポリマーブロックのMnは3,800であった。得られたA-Bブロックコポリマーを「HA-2」と称する。
【0093】
上記の各合成例で得られたポリマーの組成及び物性を表1?3に示した。なお、表1中の「DMAEMA・BzCl」は、DMAEMAとBzClの第4級アンモニウム塩を略記したものである。
【0094】

【0095】

【0096】

【0097】
(実施例1?4、6、参考例5、比較例1及び2:顔料着色剤組成物)
(a)顔料の微細化処理
カラーフィルター用の顔料として、PR254、PG58、PY138、PY150、PB15:6、及びPV23を準備し、以下に示す方法で微細化処理を行なった。それぞれの顔料を100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を、加圧蓋を装着したニーダーに仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した。そして、加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm^(2)で内容物を押さえ込みながら、7時間混練及び摩砕処理を行って摩砕物を得た。得られた摩砕物を、2%硫酸3,000部に投入し、1時間撹拌処理した。撹拌終了後、ろ過して、塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗し、次いで、乾燥及び粉砕して顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は、いずれも約30nmであった。
【0098】
(b)顔料着色剤組成物の調製
表4に示した各成分を表4に示した量(部)で配合し、ディゾルバーで2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して顔料着色剤組成物(顔料分散液)を調製した。なお、表4中、「シナジスト1」は下記構造式(1)、「シナジスト2」は下記構造式(2)でそれぞれ表される、いずれもスルホン酸基を有する色素誘導体である。また、表4中の「アクリル樹脂」は、モノマー組成がBzMA/MAA=80/20(質量比)であり、GPC測定によるMnが5,500、PDIが2.02であるもの(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMAc」と記す)溶液(固形分濃度:30%))を使用した。
【0099】

【0100】

【0101】

【0102】
<顔料着色剤組成物の評価(1)>
実施例及び比較例で得られた顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径の測定結果、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で3日間放置した後の粘度(保存後の粘度)の測定結果を表5に示した。
【0103】

【0104】
表5に示すように、実施例1?4、6及び参考例5の顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径は、いずれも50nm以下であり、微細化された顔料が十分に微分散されていることが確認された。また、実施例1?4、6及び参考例5の顔料分散液のいずれも、初期の粘度は9mPa・s以下であった。さらに、初期の粘度と保存後の粘度を比較すると、粘度変化が極めて小さいことが分かる。以上より、実施例1?4、6及び参考例5の顔料分散液は十分な分散安定性を有することが明らかとなった。
【0105】
これに対して、比較例1の顔料分散液は、実施例1の顔料分散液と比較した場合、顔料の平均粒子径が大きく、十分に微分散されていないことが分かる。さらに、保存後の粘度が大きく増加していることから、分散安定性も不十分であることが分かる。これは、比較例1で分散剤として使用したポリマーの構造がランダム構造であることによると考えられる。すなわち、分散剤のポリマー構造がブロックではなくランダム構造であると、ポリマーの顔料吸着部が非局在化してしまうため、十分に分散剤が顔料に吸着できず分散性に劣るものとなり、また、ポリマーの溶剤溶解部の立体効果もほとんどないため、顔料同士の反発力が得られず再凝集し易く、保存安定性も極めて悪いものになったと考えられる。
【0106】
一方、比較例2の顔料分散液は、実施例1とほぼ同等の分散性能を有していた。比較例2で顔料分散剤として使用したポリマーは、Aブロックに酸価がないものであるものの、その構造はブロックであることから、ブロック構造を有するポリマーであれば、酸価がないものであっても十分な顔料分散性能を示すことが確認された。
【0107】
(実施例7、8及び参考例9:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)
表6に示す各成分を表6に示す量(部)で配合し、混合機で十分混合して、カラーレジストである各色のカラーフィルター用顔料着色剤組成物(顔料インク)を得た。なお、表6中の「感光性アクリル樹脂ワニス」は、BzMA/MAA共重合物にメタクリル酸グリシジルを反応させて得られたアクリル樹脂を含むワニスである。このアクリル樹脂は、Mnが6,000、PDIが2.38であり、酸価が110mgKOH/gであった。また、「TMPTA」はトリメチロールプロパントリアクリレートを示し、「HEMPA」は2-ヒドロキシエチル-2-メチルプロピオン酸を示し、「DEAP」は2,2-ジエトキシアセトフェノンを示す。
【0108】

【0109】
次いで、上記で得たインクを用いて、以下の方法でガラス基板を作製した。まず、シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットし、実施例7の「赤色顔料インク-1」を300rpmで5秒間の条件で、上記ガラス基板上にスピンコートした。そして、80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm^(2)の光量で露光し、赤色ガラス基板を製造した。同様にして、実施例8の「緑色顔料インク-1」、及び参考例9の「青色顔料インク-1」をそれぞれ用い、緑色ガラス基板及び青色ガラス基板を製造した。
【0110】
上記で得た各色のガラス基板(カラーガラス基板)は、いずれも優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、いずれのカラーガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
【0111】
(比較例3:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)
「AC-3」に代えて、「HA-2」を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、比較用黄色顔料分散液を調製した。これを「黄色顔料分散液-3」と称す。
【0112】
そして、比較例2の「赤色顔料分散液-3」及び上記で得た「黄色顔料分散液-3」を用いたこと以外は、前述の実施例7の場合と同様にして、比較例3の赤色顔料インクを調製した。そして、調製した赤色顔料インクを用い、先の実施例の場合と同様にして比較用の赤色ガラス基板を製造した。
【0113】
<カラーフィルター用顔料着色剤組成物としての評価(1)>
(アルカリ現像性試験)
実施例7、8、参考例9及び比較例3、4の顔料インクを用いて製造したカラーガラス基板のそれぞれに、0.1Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を5秒ごとにスポットした。そして、「何秒後に塗膜の露光部が溶解するか」について、目視することにより、アルカリ現像特性を確認した。その結果を表7に示した。
【0114】

【0115】
表7に示したように、実施例7の赤色顔料インク-1、実施例8の緑色顔料インク-1、及び参考例9の青色顔料インク-1を用いて製造したガラス基板では、いずれも短時間で露光部の塗膜が溶解するとともに、溶解残渣(膜状のカス)が生ずることなく、良好な現像性を示した。なお、溶解せずに残存した塗膜の端部(エッジ)を顕微鏡で観察したところ、いずれもシャープであることが確認できた。すなわち、実施例7、8及び参考例9の顔料着色剤組成物(顔料インク)をカラーフィルターの製造に用いれば、現像時間を短縮することができることが確認され、その生産性の向上が期待される。
【0116】
これに対して、表7に示したように、比較例3の赤色顔料インクを用いて製造したガラス基板では、溶解時間が非常に長くなった。現像時間が長くなった原因としては、顔料分散剤が、アルカリ現像に不適であったためと考えられる。すなわち、顔料分散剤として使用した「HA-2」はA-Bブロック構造であるものの、その構造中に酸性基がないので、アルカリ溶解し難かったためと考えられる。以上より、実施例7、8及び参考例9の顔料インクを使用して形成した塗膜は、アルカリ現像性に優れることが判明した。
【0117】
(参考例1?3:樹脂処理した顔料粉末の調製)
顔料としてPR254を100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を、加圧蓋を装着したニーダーに仕込んだ。そして、ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した。次いで、「AC-1」を81.0部添加し、加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm^(2)で内容物を押さえ込みながら、7時間混練及び摩砕処理を行って摩砕物を得た。得られた摩砕物を、2%硫酸3,000部に投入し、1時間撹拌処理した。撹拌終了後、ろ過して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗し、次いで、乾燥及び粉砕して、参考例1の赤色の顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は30nmであった。
【0118】
参考例1で使用したPR254を、PG58に代えたこと以外は、上記の参考例1と同様にして、参考例2の緑色の顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は35nmであった。また、参考例1で使用したPR254を、PB15:6に代えたこと、及び「AC-1」を「AC-4」に代えたこと以外は、上記の参考例1と同様にして、参考例3の青色の顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は30nmであった。
【0119】
(実施例10、11及び参考例12:顔料着色剤組成物)
参考例1?3で作製したそれぞれの樹脂処理した顔料粉末を用い、表8に示す各成分を表8に示す量(部)で配合し、ディゾルバーで2時間撹拌した。そして、顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して、それぞれの顔料着色剤組成物(顔料分散液)を調製した。
【0120】

【0121】
<顔料着色剤組成物の評価(2)>
上記で得たそれぞれの顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径の測定結果、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で3日間放置した後の粘度(保存後の粘度)の測定結果を、表9にまとめて示した。
【0122】

【0123】
表9に示したように、実施例10、11及び参考例12の顔料着色剤組成物(顔料分散液)は、初期及び保存後の粘度が良好であった。以上より、本発明の顔料分散剤は、顔料を微細化する際に添加して用いた場合であっても、十分な顔料分散性を発揮可能であることが確認された。
【0124】
(実施例13、14及び参考例15:カラーフィルター用顔料着色剤組成物)
実施例10、11及び参考例12で得たそれぞれの顔料分散液を用い、表10に示す各成分を表10に示す量(部)で配合し、混合機で十分混合して、カラーレジストである各色のカラーフィルター用顔料着色剤組成物(顔料インク)を得た。
【0125】

【0126】
実施例13、14及び参考例15で得たそれぞれのカラーフィルター用顔料着色剤組成物を用い、以下のようにしてガラス基板を作製した。まず、シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。実施例13の「赤色顔料インク-2」を300rpmで5秒間の条件でガラス基板上にスピンコートした。そして、80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm^(2)の光量で露光し、赤色ガラス基板を製造した。また、上記と同様に、実施例14の「緑色顔料インク-2」、及び参考例15の「青色顔料インク-2」をそれぞれ用いたこと以外は、上記の赤色ガラス基板を製造した場合と同様にして、緑色ガラス基板及び青色ガラス基板を製造した。
【0127】
<カラーフィルター用顔料着色剤組成物としての評価(2)>
得られた各色のガラス基板(カラーガラス基板)は、いずれも色相調整を行っていないので、確実なフィルター色相とはいえない。しかしながら、いずれのカラーガラス基板も優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、いずれのカラーガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の活用例としては、特にカラーフィルター用の着色剤として有用な顔料着色剤組成物が挙げられ、これによって多様な用途に用いられている液晶カラーディスプレーの画像性能の向上や経済性の向上に寄与できるので、その利用が期待される。より具体的には、本発明を特徴づけるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーは、顔料分散剤として優れた特性を有し、特に超微粒子化した顔料の微分散と分散安定性を可能にする。すなわち、経済的に簡便な方法で製造が可能な本発明で規定する新規なアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーを用いれば、低粘度で長期保存安定性に優れた顔料着色剤組成物を調製することができる。そして、この顔料着色剤組成物(顔料インク)は、塗布特性や現像性に優れているので、精細性、色濃度、光透過性、及びコントラスト性等の光学的特性に優れたカラーフィルターを製造するための材料として有用である。このようにして製造されたカラーフィルターを備えた画素表示装置は、精細性、色濃度、光透過性、及びコントラスト性等の画像性能に優れているため、工業上の利用が期待される。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、液媒体、前記顔料の分散安定性を向上させるための色素誘導体及び高分子分散剤を含有してなる油性の顔料分散液である顔料着色剤組成物であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gで、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であり、
前記色素誘導体が、前記アミノ基とイオン結合し得る酸性である官能基を有し、
前記顔料の平均粒子径が10?150nmであり、
前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が10?100質量部で、且つ、前記色素誘導体の含有量が5?100質量部であることを特徴とする顔料着色剤組成物。
【請求項2】
前記A-Bブロックコポリマーのアミン価が、47.5?134.1mgKOH/gである請求項1に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項3】
前記Aブロックの酸価が、62.2?107.5mgKOH/gである請求項1又は2に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項4】
前記色素誘導体の酸性である官能基が、スルホン酸基である請求項1?3のいずれか1項に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記顔料の平均粒子径が20?50nmであり、且つ、カラーフィルター用着色剤である請求項1?4のいずれか1項に記載の顔料着色剤組成物。
【請求項7】
構造中に活性水素基を有する顔料、酸性顔料又は酸性基含有色素誘導体で処理された顔料を分散させるための高分子分散剤を主成分として含有してなる顔料分散剤であって、
前記高分子分散剤が、90質量%以上のメタクリレート系モノマーで構成された、アニオン性のAブロック、及びカチオン性のBブロックからなるアニオンカチオン性A-Bブロックコポリマーであり、
Aブロックは、少なくともメタクリル酸を含むメタクリレート系モノマーを構成成分としてなる、前記メタクリル酸由来のカルボキシル基を有し、Aのポリマーブロックの酸価が62.2?150mgKOH/gで、且つ、数平均分子量が3,000?20,000の鎖であり、
Bブロックは、少なくともアミノ基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とした、アミン価が100?400mgKOH/gで、且つ、Bのポリマーブロックの平均分子量が500?8,000の鎖であり、Bポリマーブロックのみにアミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位が含まれており、
A-Bブロックコポリマー中のBブロックの含有量が5?50質量%であり、
A-Bブロックコポリマーの分子量の分布を示す分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下であることを特徴とする顔料分散剤。
【請求項8】
前記A-Bブロックコポリマーのアミン価が、47.5?134.1mgKOH/gである請求項7に記載の顔料分散剤。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-21 
出願番号 特願2015-184737(P2015-184737)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C09B)
P 1 651・ 121- YAA (C09B)
P 1 651・ 537- YAA (C09B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福山 則明  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 瀬良 聡機
冨永 保
登録日 2017-04-14 
登録番号 特許第6124424号(P6124424)
権利者 国立大学法人京都大学 大日精化工業株式会社
発明の名称 顔料着色剤組成物及び顔料分散剤  
代理人 岡田 薫  
代理人 菅野 重慶  
代理人 竹山 圭太  
代理人 岡田 薫  
代理人 菅野 重慶  
代理人 近藤 利英子  
代理人 近藤 利英子  
代理人 近藤 利英子  
代理人 菅野 重慶  
代理人 竹山 圭太  
代理人 竹山 圭太  
代理人 岡田 薫  
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