• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
管理番号 1341992
異議申立番号 異議2017-700472  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-15 
確定日 2018-06-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6025312号発明「偏光子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6025312号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6025312号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6025312号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る発明についての出願は、平成23年8月23日に特許出願され、平成28年10月21日に特許権の設定登録がされ、同年11月16日に特許掲載公報が発行された。そして、その後、その請求項1に係る特許について、平成29年5月15日に特許異議申立人伊藤範子(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年7月3日付けで取消理由が通知され、同年9月21日に意見書の提出がなされ、同年12月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成30年2月22日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年4月3日に特許異議申立人により意見書の提出がなされものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年2月22日になされた訂正請求による訂正(以下、当該訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正するものであって、その内容は以下の訂正事項のとおりである(下線は、当合議体が付したものである。)。

(訂正事項)
特許請求の範囲の請求項1に、「前記第2ガイドロールは、湾曲度(弧高/ロール面長)が0.01?0.02の拡幅ロールであることを特徴とする偏光子の製造方法。
X/Y≧0.65 (1)
(式中、Xはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから第2ガイドロールに接触するまでの搬送距離であり、Yはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから出浴するまでの搬送距離である。)」と記載されているのを、
「前記第2ガイドロールは、湾曲度(弧高/ロール面長)が0.01?0.02の拡幅ロールであり、
前記ポリビニルアルコール系フィルムが前記拡幅ロールから離れる位置が、下記式(2)を満たすように前記拡幅ロールを配置することを特徴とする偏光子の製造方法。
X/Y≧0.65 (1)
(式中、Xはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから第2ガイドロールに接触するまでの搬送距離であり、Yはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから出浴するまでの搬送距離である。)
-40°≦θ≦40° (2)
(式中、θは、拡幅ロールの軸方向における弧高が最大になる位置において、拡幅ロールに接触しているフィルムの出口側接点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Aと、拡幅ロールの弧高が最大になる点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Bとの交差角である。ただし、交差角は、直線Bを基準としてフィルムの進行方向に対して順方向の場合を+とし、逆方向の場合を-とする。)」と訂正する。

2 訂正の適否
上記訂正事項による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0037】?【0045】の記載に基づいて、「前記拡幅ロール」を、「前記ポリビニルアルコール系フィルムが前記拡幅ロールから離れる位置が」、「-40°≦θ≦40° (2)
(式中、θは、拡幅ロールの軸方向における弧高が最大になる位置において、拡幅ロールに接触しているフィルムの出口側接点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Aと、拡幅ロールの弧高が最大になる点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Bとの交差角である。ただし、交差角は、直線Bを基準としてフィルムの進行方向に対して順方向の場合を+とし、逆方向の場合を-とする。)」で定義される「式(2)を満たすように」「配置」されたものに限定する訂正である。
したがって、上記訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項1について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正が認められるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも膨潤処理、染色処理、及び架橋処理を施す偏光子の製造方法において、
前記膨潤処理は、処理浴中に少なくとも第1ガイドロール及び下記式(1)を満たすように第2ガイドロールを設置して延伸倍率1.6?2.4倍で延伸する処理であり、
前記第2ガイドロールは、湾曲度(弧高/ロール面長)が0.01?0.02の拡幅ロールであり、
前記ポリビニルアルコール系フィルムが前記拡幅ロールから離れる位置が、下記式(2)を満たすように前記拡幅ロールを配置することを特徴とする偏光子の製造方法。
X/Y≧0.65 (1)
(式中、Xはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから第2ガイドロールに接触するまでの搬送距離であり、Yはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから出浴するまでの搬送距離である。)
-40°≦θ≦40° (2)
(式中、θは、拡幅ロールの軸方向における弧高が最大になる位置において、拡幅ロールに接触しているフィルムの出口側接点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Aと、拡幅ロールの弧高が最大になる点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Bとの交差角である。ただし、交差角は、直線Bを基準としてフィルムの進行方向に対して順方向の場合を+とし、逆方向の場合を-とする。)」

2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1に対して、平成29年12月22日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)は、概略以下のとおりである。

(1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明であるから、本件特許の本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)取消理由2(特許法第29条第2項)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(引用例等一覧)
引用例1:特開2007-226035号公報(甲第1号証)

3 取消理由1(特許法第29条第1項第3号)及び取消理由2(特許法第29条第2項)についての判断
(1) 引用例1に記載された事項
引用例1には、以下の事項が記載されている。(下線部は、当合議体が付したものである。以下、同じ。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系フィルムに、染色工程、延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法において、
ポリビニルアルコール系フィルムは、原反幅が2300mm以上であり、
染色工程の前に、洗浄工程(1)を有し、
当該洗浄工程(1)では、第1ピンチロールから搬送されるフィルムは、少なくとも第1および第2ガイドロールを通過させて、洗浄浴に浸漬するとともに、第2ピンチロールに導いて、第1ピンチロールと第2ピンチロールの周速差を利用して、延伸倍率が1.2?2.9倍の範囲で延伸しながら洗浄を行い、
かつ、第1ガイドロールと第2ガイドロールは、いずれも洗浄浴中に設置され、かつ第1ガイドロールと第2ガイドロールとの間のフィルムのパスライン長(a)は50cm以上に調整されており、かつ、
少なくとも第2ガイドロールは、面長2300mm以上のエキスパンダーロールを用いることを特徴とする偏光子の製造方法。
・・・(中略)・・・
【請求項7】
洗浄工程(1)は、膨潤工程を兼ねていることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の偏光子の製造方法。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子の製造方法および当該製造方法により得られた偏光子に関する。また本発明は当該偏光子を用いた偏光板、光学フィルム、さらには当該偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。さらには、偏光子の製造方法における洗浄工程に用いられる洗浄槽を有する洗浄装置、さらには、洗浄装置を組み合わせた洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、パソコン、TV、モニター、携帯電話、PDA等に使用されている。従来、液晶表示装置等に用いる偏光子としては高透過率と高偏光度を兼ね備えていることから、染色処理されたポリビニルアルコール系フィルムが用いられている。当該偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムを、浴中にて、膨潤、染色、架橋、延伸することにより製造される。また前記偏光子は、通常、その片面または両面にトリアセチルセルロース等の保護フィルムが接着剤を用いて貼合された偏光板として用いられている。
【0003】
近年では、LCDの大型化に伴いそれに使用される偏光板のサイズも大型化している。LCDのサイズの大型化は著しく65インチのサイズの製品化も実施されている。また展示会では、80インチサイズのものも作られており、今後は65インチ以上のLCDの販売も予想される。これらLCDの大型化に伴い、それに使用する偏光子の特性向上、品質向上、生産効率の向上等のために、その製造装置も大型化している。また、液晶パネルの大型化や液晶パネルの高輝度化、高品位化に伴い、偏光子には、高透過率、高偏光度等の光学特性の他に、染色の均一性が求められている。
【0004】
偏光子を、ポリビニルアルコール系フィルムを湿式延伸して製造する場合には、偏光子の製造工程は、ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程に大きく分けられる。実際には、延伸工程に関しては、膨潤工程、染色工程、架橋工程のどの工程においても同時に延伸していることが多く、延伸工程と他の各工程とを区分することができない場合が多い。また、膨潤工程、染色工程、架橋工程の前後には、それぞれ洗浄浴を設けて洗浄工程を施す場合がある。さらに、架橋工程後には、品質を安定させる為に、ヨウ化化合物水溶液による洗浄工程を設けることがある。
【0005】
しかしながら、偏光子の製造装置が大型化すると、各種問題が発生する。例えば、偏光子の製造にあたり、ポリビニルアルコール系フィルムを湿式延伸工程において、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸浴中で搬送または延伸する際に、ポリビニルアルコール系フィルムが流れ方向に折れ重なり(フィルム折れ)が発生する。特に、延伸浴中のガイドロール通過時や延伸浴の両側間にあるピンチロールの通過時には、フィルム折れの部分がロールに押し付けられて、その重なり部に、フィルム折れの型が付いて、その部分に直線のスジ状の折れ跡が残ったり、その部分が直線上に染色のスジとして現れたり、さらには、ポリビニルアルコール系フィルムが折れ重なった状態になったまま偏光子になって、その部分が不良(欠点)となる問題が発生する。
【0006】
ポリビニルアルコール系フィルムのフィルム折れは、フィルム幅が1m程度のものではあまり発生しないが、フィルム幅が広くなるほど発生しやすくなる。特にフィルム幅が2.5mを超えると発生しやすくなり、3m幅を超えるとその発生頻度は高くなり、製品歩留まりを落とす原因となる。また、延伸浴の長さが長くなるほど、フィルムの折れの発生頻度は高くなる。
【0007】
前記フィルム折れは、偏光子の製造工程において、最初にポリビニルアルコール系フィルムを水溶液中に入れる洗浄工程または膨潤工程において発生し易い。
【0008】
ポリビニルアルコール系フィルムの延伸浴中およびガイドロールでの折れ重なりを改善する方法としては、延伸浴の温度を低くして、ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤量を小さくしたり、延伸浴での延伸倍率を大きくしたりすることで幅収縮させることで改善することができる。例えば、膨潤工程において、ポリビニルアルコール系フィルムに3倍程度の延伸を施すと、フィルム折れはかなり改善することができる。一方、延伸倍率を小さくするとフィルム折れの発生頻度がかなり多くなる。一般的に、偏光子の光学特性を良くするためには、膨潤工程でのポリビニルアルコール系フィルムの延伸倍率は小さく設定される。そのため、最初にポリビニルアルコール系フィルムを水溶液中に入れる洗浄工程または膨潤工程では、延伸倍率が小さくてもポリビニルアルコール系フィルムのフィルム折れや折れ重なりが発生しない方法が求められている。特に、フィルム折れは、液晶表示装置の大型化に伴って、偏光板のサイズも大型化し、偏光板に用いる偏光子の製造装置も大型化しているため、この問題は大きな問題となっている。
【0009】
例えば、20%膨張する1m幅のポリビニルアルコール系フィルムを、膨潤浴において1.2倍延伸で膨潤させると、前記フィルムは、第1ピンチロールを通過し、膨潤浴中に入り、第1ガイドロール、第2ガイドロールを通過して、第2ピンチロールを出るまでに、幅方向に20cm広がって1.2mとなる。つまり、前記フィルムの両端は、左右10cmずつ広がる必要がある。第1ガイドロールにおいて、前記フィルムの幅は1mであるが、第2ガイドロールを経て膨潤浴から出るときには1.2mになっていなければ、フィルム折れが発生することになる。偏光子の製造では、通常、延伸倍率を1.2倍より高くして幅収縮をさせることにより、フィルム折れが入らないようにしている。しかし、偏光子の大型化が要求され、フィルム幅3m以上のものを使用すると、20%の膨張で、幅方向に60cm(左右30cm)に膨張して広がるため、フィルム折れが生じやすく、ポリビニルアルコール系フィルムにフィルム折れが生じないようにすることは、フィルム幅1mのものを使用するときよりも困難である。それを改善するためには、フィルム幅1mのポリビニルアルコール系フィルムの場合よりも延伸倍率を高くして幅収縮をさせる必要がある。しかし、膨潤浴での延伸倍率を高くすると、得られる偏光子の幅が狭くなるため延伸倍率を高くすることは好ましくなく、さらに膨潤浴での延伸倍率を高くすると光学特性(透過率と偏光度の関係)が悪くなる。また、膨潤浴で延伸倍率を低くした時の方が、延伸倍率を高くしたときよりも光学特性(同透過率において偏光度が高こと)が良好になる傾向があることからも、延伸倍率を高くし難い。
【0010】
前記問題に対して、膨潤工程において、その洗浄浴に適用するガイドロールとして、エキスパンダーロールやベンドロールを用いることが提案されている(特許文献1,2,3)。ガイドロールとして、エキスパンダーロール等を用いることで、前記問題をある程度は改善することができるものの、その改善効果は十分ではなかった。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、フィルム折れの問題を生じることなく、ポリビニルアルコール系フィルムから、光学特性の良好な偏光子を製造する方法を提供することを目的とする。
・・・(中略)・・・
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光子の製造方法等により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、ポリビニルアルコール系フィルムに、染色工程、延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法において、
ポリビニルアルコール系フィルムは、原反幅が2300mm以上であり、
染色工程の前に、洗浄工程(1)を有し、
当該洗浄工程(1)では、第1ピンチロールから搬送されるフィルムは、少なくとも第1および第2ガイドロールを通過させて、洗浄浴に浸漬するとともに、第2ピンチロールに導いて、第1ピンチロールと第2ピンチロールの周速差を利用して、延伸倍率が1.2?2.9倍の範囲で延伸しながら洗浄を行い、
かつ、第1ガイドロールと第2ガイドロールは、いずれも洗浄浴中に設置され、かつ第1ガイドロールと第2ガイドロールとの間のフィルムのパスライン長(a)は50cm以上に調整されており、かつ、
少なくとも第2ガイドロールは、面長2300mm以上のエキスパンダーロールを用いることを特徴とする偏光子の製造方法、に関する。
【0016】
・・・(中略)・・・
【0021】
前記偏光子の製造方法において、洗浄工程(1)は、膨潤工程を兼ねることができる。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0041】
本発明の偏光子の製造方法では、染色工程前の洗浄工程(膨潤工程前)または膨潤工程において、広幅のポリビニルアルコール系フィルムに、フィルム折れ発生しやすいことから、これらの洗浄工程における各条件を制御することで、前記問題の発生を抑えて、光学特性の良好な偏光子を製造している。
【0042】
染色工程前の洗浄工程では、延伸倍率が1.2?2.9倍の小さい範囲になるように制御することで、得られる光学特性が損なわれないようにしている。一方、延伸倍率が小さいと、ポリビニルアルコール系フィルムは、水に膨潤して幅が大きくなって、ガイドロールによりフィルム折れが発生しやすいが、本発明では、当該洗浄工程において用いられる、第1ピンチロールと第2ピンチロールの間に設置される、第1ガイドロールと第2ガイドロールの間隔に関して、搬送されるフィルムが、洗浄浴と接触する長さ(パスライン長)を50cm以上に設定するとともに、第2ガイドロールとして、エキスパンダーロールを用いることで、これらの問題を抑えている。」

エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
・・・(中略)・・・
【0057】
以下、本発明の偏光子の製造方法における洗浄工程(1)および洗浄工程(2)ならびにそれらに用いる装置を、図面を参酌しながら説明する。
【0058】
洗浄工程(1)は、例えば、図1乃至図5に示す洗浄装置により行われる。図1乃至図5では、搬送されるフィルムf(ポリビニルアルコール系フィルム)は、第1ピンチロール21、次いで、第1ガイドロール11および第2ガイドロール21を通過させて、洗浄浴Bに浸漬するとともに、第2ピンチロール22に導かれる。また、フィルムfは、第1ピンチロール21と第2ピンチロール22の周速差を利用して、延伸しながら洗浄される。第1ピンチロール21にはガイドロール31が、第2ピンチロール22にはガイドロール32が、対向して設けられている。洗浄浴Bは、洗浄層A内に含有される。
【0059】
洗浄工程(1)では、洗浄浴Bは、通常、水、蒸留水、純水が用いられる。当該洗浄浴B(浴液)は、主成分が水であれば、界面活性剤やヨウ化カリウム等のヨウ化化合物等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。洗浄浴ではポリビニルアルコール系フィルムから当該フィルムに添加しているグリセリンや界面活性剤等の添加剤が溶け出すので、その濃度が高くならないようにすることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0060】
また、洗浄工程(1)では、ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤のムラを無くすために、洗浄浴B内の温度分布を幅方向で小さくすることが好ましい。一方、流れ方向(フィルム搬送方向)に関しては、幅方向の温度分布が一定であれば、温度勾配があっても特に問題はない。かかる観点から、洗浄浴の温度は、通常、20?45℃程度に調整するのが好ましい。さらには、25?40℃であるのが好ましい。なお、膨欄ムラがあるとその部分が染色工程において染色のムラになるため膨潤ムラは発生させないようにする。浸漬時間は通常10?300秒間程度、好ましくは20?240秒間の範囲である。十分な膨潤を施すため、ポリビニルアルコール系フィルムが浸漬されてから、第2ガイドロールまでの時間は、12秒間以上でるのが好ましく、生産性の面からは120秒間以下であるのが好ましい。
【0061】
洗浄工程(1)では、延伸倍率1.2?2.9倍の範囲で前記延伸が行われる。前記延伸倍率は、光学特性を満足させるとともに、フィルム折れを制御するため、1.3?2.6倍、さらには1.5?2.6倍、さらには2.0?2.4倍にするのが好ましい。
【0062】
また、洗浄工程(1)では、少なくとも第2ガイドロール11は、エキスパンダーロールを用いる。エキスパンダーロールの面長は、ポリビニルアルコール系フィルムの原反幅以上となるように、2300mm以上のものが用いられる。通常、エキスパンダーロールの面長は、ポリビニルアルコール系フィルムの膨張率は通常1.5倍以下であり、原反フィルムの1.5倍以下にするのが一般的である。エキスパンダーロールによれば、フィルムfが膨潤して飽和に達する前に、エキスパンダーロールを通過しても、フィルムfの折れの発生は抑えられる。そのため、エキスパンダーロールを通過する時にフィルムfが飽和状態になっている必要はない。
【0063】
エキスパンダーロールは、図6の断面図に示すように、彎曲した形状のロールである。エキスパンダーロールの面長をL、高さをhとした場合に、弧高(彎曲度)=h/Lは、0.005?0.10、好ましくは0.01?0.06である。弧高が小さくなると、フィルム折れ防止効果が小さくなる傾向があり、逆に弧高が大きくなり過ぎると、フィルムにシワが入りやすくなる。そのため、エキスパンダーロールの設置の角度も若干の調整が必要になる場合がある。
【0064】
・・・(中略)・・・
【0065】
図1では、第1ガイドロール11と第2ガイドロール12は、いずれも洗浄浴B中に設置され、かつ第1ガイドロール11と第2ガイドロール12との間のフィルムのパスライン長(a)は50cm以上に調整されている。パスライン長(a)が50cm未満ではフィルム折れやシワの発生を十分に抑えられない。パスライン長(a)は、第1ガイドロール11とフィルムfの最終接触点と第2ガイドロール12とフィルムfの最始接触点である。パスライン長(a)は1m以上が好ましく、さらには1.5m以上、さらには2m以上であるのが好ましい。一方、パスライン長(a)は10m以上に長くすることができるが、長くすると装置が大きくなるのみで、特に利点がなく、通常、パスライン長(a)は、10m以下とするのが好ましい。なお、第1ガイドロール11は、フラットロールであってもよく、エキスパンダーロールであってもよい。
【0066】
また、洗浄浴Bにフィルムfが浸漬されてから第1ガイドロール11に接触するまでのパスライン長(x)の距離は、30cm以下とするのが好ましい。さらには、20cm以下、さらには10cm以下とするのが好ましい。前記パスライン長(x)が30cmを超える場合には、第1ガイドロール11を通過するときにフィルムfに、フィルム折れや折れ重なりが発生し易くなる。第1ガイドロール11にエキスパンダーロールを使用すると、フィルム折れの発生は、フラットロールを用いた場合よりも発生しなくなる。
【0067】
図2では、第1ガイドロール11は洗浄浴B外に、第2ガイドロール12は洗浄浴B中に設置されている。また第1ガイドロール11と第2ガイドロール12との間においてフィルムが洗浄浴に浸漬されているパスライン長(b)は50cm以上に調整されている。ガイドロール通過時にシワや折れが入るのは、フィルムfが水によって膨潤し急激に体積膨潤するため、その体積膨潤する過程でガイドロールに触れると体積膨潤し広がろうとするフィルムfの障害となり折れが発生するが、図2の第1ガイドロール11は、洗浄浴B中にないため、第1ガイドロール11でのフィルム折れの発生はない。すなわち、ガイドロールを浴中に入れなければフィルムfの急激な膨潤は発生しないためフィルム折れは発生しない。図2では、前記パスライン長(b)が50cm以上に調整されている。
【0068】
パスライン長(b)が50cm未満ではフィルム折れやシワの発生を十分に抑えられない。パスライン長(b)は、フィルムfが、洗浄浴Bに最初に接触した点と第2ガイドロール12とフィルムfの最始接触点である。パスライン長(b)は、1m以上が好ましく、さらには1.5m以上、さらには2cm以上であるのが好ましい。一方、パスライン長(a)は10m以上に長くすることができるが、長くすると装置が大きくなるのみで、特に利点がなく、通常、パスライン長(b)は、10m以下とするのが好ましい。なお、図2において、第1ガイドロール11は、フラットロールであってもよく、エキスパンダーロールであってもよい。
【0069】
図2の第1ガイドロール11は、第1ガイドロール11の最下面と、洗浄浴Bの液面の距離(c)が0.1?30cmであるが好ましい。前記距離(c)を小さくすることで第1ガイドロール11から、第2ガイドロール12(エキスパンダーロール)までの、洗浄浴B中でのパスライン長(b)が長くなるため、洗浄槽Aの長さを有効に使うことが可能となる。前記距離(c)を大きくすると、第1ガイドロール11と第2ガイドロール12(エキスパンダーロール)の間が短くなって、洗浄浴B中に浸漬するパスライン長(b)が短くなり、フィルムfの浸漬時間が短くなり、浴長を有効的に使うことができず好ましくない。前記距離(c)は、0.1?20cm、さらに0.1?10cmであるのが好ましい。
【0070】
図1、図2では、第1ピンチロールと第2ピンチロールの間に設けられているガイドロールは、第1ガイドロール11と第2ガイドロール(エキスパンダーロール)の2本のみであり、メンテナンス等も少なく経済的である。」

オ 「【実施例】
【0115】
以下に本発明を実施例および比較例をあげて具体的に説明する。
【0116】
各例で用いた材料、各浴の構成は、以下の通りである。
【0117】
ポリビニルアルコールフィルムとして、(株)クラレ製の9P75RSを用いた。幅は3mであった。平均重合度2400,ケン化度99.9モル%であった。
【0118】
第1浴(膨潤浴)には、水を用いた。温度は30℃に調整して用いた。
第2浴(染色浴)には、ヨウ化カリウムの2重量%水溶液を調製した後に、ヨウ素を、ヨウ素:ヨウ化カリウム=1:40の重量比の割合で入れた染色浴を用いた。これにより、得られる偏光子の透過率は43.5%となるように調整される。染色浴は、温度が30℃になるように調整した。
第3浴(架橋浴)には、ほう酸を4重量%、ヨウ化カリウムを2重量%含有する水溶液を用いた。温度は35℃に調整した。
第4浴(架橋浴)には、ほう酸を4重量%、ヨウ化カリウムを2重量%含有する水溶液を用いた。温度は60℃に調整した。
第5浴(洗浄浴)には、ヨウ化カリウムを5重量%含有する水溶液を用いた。温度は30℃に調整した。第5浴の浴長は3mである。
【0119】
エキスパンダーロールは、洗浄工程(1)に用いた製造装置では、面長3.6m、弧高(轡曲度)=0.02である。洗浄工程(2)に用いた製造装置では、面長3m、弧高(轡曲度)=0.025である。
【0120】
実施例1
(洗浄工程(1):膨潤工程)
上記ポリビニルアルコール系フィルムを、図1に示す洗浄装置(洗浄槽中には、上記第1浴が仕込まれている)に搬送した。当該洗浄装置において、第2ガイドロールとしてエキスパンダーロールを用いた。他のガイドロールはいずれもフラットロールである。パスライン長(a)は50cmとした。第1浴(膨潤浴)にフィルムが浸漬されてから第1ガイドロールに接触するまでのパスライン長(x)は5cmであった。搬送されたポリビニルアルコールフィルムは、第1浴に浸漬し、膨潤させながら、延伸倍率2倍で、一軸延伸した。なお、第2ガイドロールまでの浸漬時間は16秒間であった。
【0121】
(染色工程)
次いで、ポリビニルアルコールフィルムを搬送し、第2浴(染色浴)に、53秒間浸漬して、染色しながら、延伸倍率1.4倍(総延伸倍率2.8倍)で、一軸延伸した。
【0122】
(架橋工程)
次いで、ポリビニルアルコールフィルムを搬送し、第3浴(架橋浴)に、28秒間浸漬して、架橋しながら、延伸倍率1.4倍(総延伸倍率3.92倍)で、一軸延伸した。さらに、第4浴(架橋浴)に、66秒間浸漬して、架橋しながら、延伸倍率1.54倍(総延伸倍率6.03倍)で、一軸延伸した。
【0123】
(洗浄工程(2))
次いで、ポリビニルアルコール系フィルムを、図2に示す洗浄装置(洗浄槽中には、上記第5浴が仕込まれている)に搬送した。当該洗浄装置において、第1ガイドロールおよび第2ガイドロールとしてエキスパンダーロールを用いた。他のガイドロールはいずれもフラットロールである。パスライン長(b)は60cmとした。第1ガイドロールの最下面と第5浴(洗浄浴)の液面の距離(c)は5cmとした。搬送されたポリビニルアルコールフィルムは、第5浴に15秒間浸漬し、膨潤させながら、延伸倍率0.995倍(総延伸倍率6倍)で、一軸延伸した。
【0124】
(乾燥工程)
次いで、35℃で、3分間乾燥して、水分率を26重量%に調整した偏光子を得た。
【0125】
(偏光板)
得られた偏光子の両面に、ケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた後、75℃で10分間乾燥して、偏光板を得た。
【0126】
・・・(中略)・・・
【0133】
実施例4
実施例1において、洗浄工程(1)に用いた洗浄装置のパスライン長(a)を400cmに変更したこと、洗浄工程(2)に用いた洗浄装置のパスライン長(b)を200cmに変更したこと、架橋工程における第4浴(架橋浴)での延伸倍率を1.42倍(総延伸倍率5.57倍)に変更したこと、洗浄工程(2)での延伸倍率を1.08倍(総延伸倍率6倍)に変更したこと以外は、実施例1と同条件で偏光子を作製し、また偏光板を作製した。なお、洗浄工程(1)における、第2ガイドロールまでの浸漬時間は110秒間であった。
【0134】
・・・(中略)・・・
【0180】
実施例および比較例の偏光子の製造方法において、洗浄工程(1)の第1浴および洗浄工程(2)の第5浴の第2ガイドロールまたは第2ピンチロールの部分にて、ポリビニルアルコールフィルムのフィルム折れが発生しているか否か目視確認した。フィルム折れが発生していない場合を「○」、発生している場合を「×」とした。また偏光板1枚を観察して、偏光子の折れた跡(延伸した方向の直線状のスジ)の確認を、偏光子が折れ重なっているか否かを透過観察および反射観察により確認した。偏光子の折れを確認できない場合を「○」、発生している場合を「×」とした。これらの結果を、表1乃至5に示す。なお、表中、F:フラットロール、Ex:エキスパンダーロール、である。
【0181】
【表1】

*1:膨潤時間が短いため、膨潤が不均一になって、フィルムにシワが入っている。
【0182】
・・・(中略)・・・
【0186】
ポリビニルアルコールフィルムのフィルム折れ(折れ重なり)の代表例を図7A(写真1)、図7B(写真2)に示す。図7Aは、比較例4において第1浴での第2ピンチロールにおけるフィルム折れを示す。図7Bは、比較例10において、第1浴での第2ピンチロールにおけるフィルム折れを示す。
【0187】
図8A乃至図8Dは、偏光板を観察して、偏光子が折れたものおよび折れた跡の代表例を示す写真である。図8A乃至図8Cは、偏光板を透過状態で観察して、フィルム折れを見つけた場合である。図8Dは、偏光子に折れた跡がついているだけであるので、偏光板を透過状態で確認しても折れ跡は確認できなかったが、偏光板に、蛍光等反射状態で確認できたものである。図8Aは比較例5で得られた偏光板、図8Bは比較例11で得られた偏光板、図8Cは比較例6で得られた偏光板図8Dは比較例16で得られた偏光板、である。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明の偏光子の製造方法における、洗浄工程(1)または(2)に用いられる、製造装置の概略の一例である。
【図2】本発明の偏光子の製造方法における、洗浄工程(1)または(2)に用いられる、製造装置の概略の一例である。
・・・(中略)・・・
【図6】本発明の偏光子の製造方法に用いる、エキスパンダーロールの説明図である。
【図7A】比較例4において第1浴での第2ピンチロールにおけるフィルム折れを示す写真である。
【図7B】比較例10において第1浴での第2ピンチロールにおけるフィルム折れを示す写真である。
【図8A】比較例5で得られた偏光板について、透過状態で確認した折れ跡の写真である。
【図8B】比較例11で得られた偏光板について、透過状態で確認した折れ跡の写真である。
【図8C】比較例6で得られた偏光板について、透過状態で確認した折れ跡の写真である。
【図8D】比較例16で得られた偏光板について、反射状態で確認した折れ跡の写真である。
【符号の説明】
【0189】
11 第1ガイドロール
12 第2ガイドロール
13 第3ガイドロール
21 第1ピンチロール
22 第2ピンチロール
a 第1ガイドロールと第2ガイドロールの間のフィルムのパスライン長
b 第1ガイドロールと第2ガイドロールの間でフィルムが洗浄浴に浸漬されているパスライン長
c 第1ガイドロールの最下面と、洗浄浴の液面の高さの距離
A 洗浄層
B 洗浄浴」

カ 「【図1】



キ 「【図2】



ク 「【図6】



ケ 「【図8A】



コ 「【図8B】



サ 「【図8C】



シ 「【図8D】



ス 段落【0116】?【0117】の記載によれば、実施例1で用いられている「ポリビニルアルコール系フィルム」は、「幅3m」の「(株)クラレ製の9P75RS」である。

セ 段落【0065】の記載、段落【0058】の「図1乃至図5では、フィルムf(ポリビニルアルコール系フィルム)・・・」という記載及び図1によれば、「実施例1」の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」で用いる「図1に示す洗浄装置(洗浄槽中には、上記第1浴が仕込まれている)」においては、「第1ガイドロール11」と「第2ガイドロール12」は、いずれも「第1浴」中に設置されたものである。
そうすると、「実施例1」の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」で用いる「図1に示す洗浄装置(洗浄槽中には、上記第1浴が仕込まれている)」においては、「搬送される」「ポリビニルアルコール系フィルム」「は、第1ピンチロール21、次いで、第1ガイドロール11および第2ガイドロール12を通過」(当合議体注:「第2ガイドロール21」は「第2ガイドロール12」の誤記である。)して、「第1浴」「に浸漬」される「とともに、第2ピンチロール22に導かれ」、「第2ピンチロール22にはガイドロール32が」「対向して設けられ」ている。
また、「パスライン長(a)」は、「第1ガイドロール11とポリビニルアルコール系フィルムの最終接触点と第2ガイドロール12とポリビニルアルコール系フィルムの最始接触点」との間の長さとして定義されるものである。

ソ 段落【0067】の記載、段落【0058】の記載及び図2によれば、「実施例1」の「(洗浄工程(2))」において用いる「図2に示す洗浄装置(洗浄槽中には、上記第5浴が仕込まれている)」においては、第1ガイドロール11は「第5浴」外に、第2ガイドロール12は「第5浴」中に設置されたものである。また、「パスライン長(b)」は、「ポリビニルアルコール系フィルムが、第5浴に最初に接触した点と第2ガイドロール12とポリビニルアルコール系フィルムの最始接触点」との間の長さとして定義されるものである。

タ 段落【0133】の実施例4についての記載によれば、「実施例4」は、「実施例1」において、「洗浄工程(1)」での「パスライン長(a)」を「400cm」に変更したこと、「洗浄工程(2)」での「パスライン長(b)」を「200cm」に変更したこと、「架橋工程」における「第4浴(架橋浴)」での「延伸倍率」を「1.42倍(総延伸倍率5.57倍)」に変更したこと、「洗浄工程(2)」での「延伸倍率」を「1.08倍(総延伸倍率6倍)」に変更したこと以外は、「実施例1と同条件で偏光子を作製し」たものである。また、「実施例4」においては、「洗浄工程(1)」における、「第2ガイドロールまでの浸漬時間」は「110秒間」である。

チ 段落【0119】の記載によれば、実施例1の「洗浄工程(1)」においては、「エキスパンダーロール」は、「面長3.6m、弧高(轡曲度)=0.02であ」り、「洗浄工程(2)」においては、「エキスパンダーロール」は、「面長3m、弧高(轡曲度)=0.025である」。

ツ 上記ア?チと実施例についての記載(段落【0118】及び【0120】?【0124】)によれば、引用例1には、実施例4の偏光子の製造方法として、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。)。

「(洗浄工程(1):膨潤工程)、(染色工程)、(架橋工程)、(洗浄工程(2))及び(乾燥工程)からなる偏光子の製造方法であって、
前記(洗浄工程(1):膨潤工程)は、
ポリビニルアルコール系フィルムとして、幅3mの(株)クラレ製の9P75RSを用い、
上記ポリビニルアルコール系フィルムを、洗浄装置(洗浄槽中には、第1浴が仕込まれ、第1浴(膨潤浴)には、水を用い、温度は30℃に調整して用いた。)に搬送し、当該洗浄装置において、第1ガイドロール11と第2ガイドロール12は、いずれも第1浴中に設置され、
搬送されるポリビニルアルコール系フィルムは、第1ピンチロール21、次いで、第1ガイドロール11および第2ガイドロール12を通過して、第1浴に浸漬されるとともに、第2ピンチロール22に導かれ、第2ピンチロール22にはガイドロール32が対向して設けられ、
第2ガイドロール12としてエキスパンダーロールを用い、第1ガイドロール11とポリビニルアルコール系フィルムの最終接触点と第2ガイドロール12とポリビニルアルコール系フィルムの最始接触点との間の長さであるパスライン長(a)は400cmとし、第1浴(膨潤浴)にフィルムが浸漬されてから第1ガイドロール11に接触するまでのパスライン長(x)は5cmであり、搬送されたポリビニルアルコールフィルムは、第1浴に浸漬し、膨潤させながら、延伸倍率2倍で、一軸延伸し、エキスパンダーロールは、面長3.6m、弧高(轡曲度)=0.02であり、第2ガイドロールまでの浸漬時間は110秒間とするものであり、
前記(染色工程)は、
次いで、ポリビニルアルコールフィルムを搬送し、第2浴(染色浴)に、53秒間浸漬して、染色しながら、延伸倍率1.4倍(総延伸倍率2.8倍)で、一軸延伸するものであり、
前記(架橋工程)は、
次いで、ポリビニルアルコールフィルムを搬送し、第3浴(架橋浴)に、28秒間浸漬して、架橋しながら、延伸倍率1.4倍(総延伸倍率3.92倍)で、一軸延伸し、さらに、第4浴(架橋浴)に、66秒間浸漬して、架橋しながら、延伸倍率1.42倍(総延伸倍率5.57倍)で、一軸延伸するものである、
偏光子の製造方法。」

(2) 本件訂正発明と引用例1発明との対比・判断
ア 一致点及び相違点
本件訂正発明と引用例1発明とを対比する。
(ア) 引用例1発明の「ポリビニルアルコール系フィルム」は、本件訂正発明の「ポリビニルアルコール系フィルム」に相当する。

(イ) 引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」は、「搬送されたポリビニルアルコールフィルム」を、「第1浴に浸漬し、膨潤させながら、延伸倍率2倍で、一軸延伸」している。
してみると、引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」は、本件訂正発明の「膨潤処理」に相当する。
また、引用例1発明における「(洗浄工程(1):膨潤工程)」は、本件訂正発明の「延伸する処理」に相当し、その「延伸倍率」は「2倍」である。
そうすると、引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」と、本件訂正発明の「膨潤処理」とは、「延伸倍率1.6?2.4倍で延伸する処理」である点で共通する。

(ウ) 引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」においては、「第1ガイドロール11と第2ガイドロール12は、いずれも第1浴中に設置」されている。
引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」において第1浴中に設置されている「第1ガイドロール11」及び「第2ガイドロール12」は、それぞれ本件訂正発明の「第1ガイドロール」及び「第2ガイドレール」に相当する。
引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」の「第1浴」は、本件訂正発明の「処理浴」に相当する。
そうすると、引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」と、本件訂正発明の「膨潤処理」とは、「処理浴中に少なくとも第1ガイドロール及び第2ガイドロールを設置して」いる点で共通する。

(エ) 引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」においては、「第2ガイドロールとしてエキスパンダーロールを用い」、「エキスパンダーロールは、面長3.6m、弧高(轡曲度)=0.02であ」る。
してみると、引用例1発明の「エキスパンダーロール」は、本件訂正発明の「拡幅ロール」に相当する。
引用例1発明の「弧高(彎曲度)」は、本件訂正発明の「彎曲度(弧高/ロール面長)」に相当する(引用例1の段落【0063】の「エキスパンダーロールの面長をL、高さをhとした場合に、弧高(彎曲度)=h/Lは、0.005?0.10、好ましくは0.01?0.06である。」という記載からも確認できる。)。
そうすると、引用例1発明の「エキスパンダーロール」を用いた「第2ガイドロール」と、本件訂正発明の「第2ガイドロール」とは、「彎曲度(弧高/ロール面長)が0.10?0.02の拡幅ロール」である点で共通する。

(オ) 上記(イ)?(エ)より、引用例1発明の「(洗浄工程(1):膨潤工程)」と、本件訂正発明の「膨潤処理」とは、「処理浴中に少なくとも第1ガイドロール及び第2ガイドロールを設置して」「延伸倍率1.6?2.4倍で延伸する処理であり」、「前記第2ガイドロールは、湾曲度(弧高/ロール面長)が0.01?0.02の拡幅ロールである」という構成を備える点で共通する。

(カ) 引用例1発明の「(染色工程)」は、「ポリビニルアルコールフィルムを搬送し、第2浴(染色浴)に、53秒間浸漬して、染色し」ている。
してみると、引用例1発明の「(染色工程)」は、本件訂正発明の「染色処理」に相当する。

(キ) 引用例1発明の「(架橋工程)」は、「ポリビニルアルコールフィルムを搬送し、第3浴(架橋浴)に、28秒間浸漬して、架橋し」、「さらに、第4浴(架橋浴)に、66秒間浸漬して、架橋し」ている。
してみると、引用例1発明の「(架橋工程)」は、本件訂正発明の「架橋処理」に相当する。

(ク) 引用例1発明の「偏光子」は、本件訂正発明の「偏光子」に相当し、引用例1発明の「偏光子の製造方法」は、本件訂正発明の「偏光子の製造方法」に相当する。
上記(ア)、(イ)、(カ)及び(キ)より、引用例1発明と、本件訂正発明とは、「ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも膨潤処理、染色処理、及び架橋処理を施す偏光子の製造方法」である点で共通する。

(ケ) 上記(ア)?(ク)より、本件訂正発明と引用例1発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。

(一致点)
「ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも膨潤処理、染色処理、及び架橋処理を施す偏光子の製造方法において、
前記膨潤処理は、処理浴中に少なくとも第1ガイドロール及び第2ガイドロールを設置して延伸倍率1.6?2.4倍で延伸する処理であり、
前記第2ガイドロールは、湾曲度(弧高/ロール面長)が0.01?0.02の拡幅ロールである、
偏光子の製造方法。」

(相違点1)
本件訂正発明においては、「前記膨潤処理は」、「式(1)を満たすように第2ガイドロールを設置して」いるのに対して、
引用例1発明においては、「(洗浄工程(1):膨潤工程)」(「膨潤処理」)は、「第1ガイドロール11とポリビニルアルコール系フィルムの最終接触点と第2ガイドロール12とポリビニルアルコール系フィルムの最始接触点との間の長さであるパスライン長(a)は400cmとし、第1浴(膨潤浴)にフィルムが浸漬されてから第1ガイドロール11に接触するまでのパスライン長(x)は5cmであり」、「第2ガイドロールまでの浸漬時間は110秒間であ」るものの、式(1)を満たすように第2ガイドロールを設置しているかどうか不明である点。
なお、式(1)は次のものである。
X/Y≧0.65 (1)
(式中、Xはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから第2ガイドロールに接触するまでの搬送距離であり、Yはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから出浴するまでの搬送距離である。)

(相違点2)
本件訂正発明においては、「前記ポリビニルアルコール系フィルムが前記拡幅ロールから離れる位置が、式(2)を満たすように前記拡幅ロールを配置」しているのに対して、
引用例1発明においては、「前記ポリビニルアルコール系フィルムが前記拡幅ロールから離れる位置が、式(2)を満たすように前記拡幅ロールを配置」しているのかどうか不明である点。
なお、式(2)は次のものである。
-40°≦θ≦40° (2)
(式中、θは、拡幅ロールの軸方向における弧高が最大になる位置において、拡幅ロールに接触しているフィルムの出口側接点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Aと、拡幅ロールの弧高が最大になる点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Bとの交差角である。ただし、交差角は、直線Bを基準としてフィルムの進行方向に対して順方向の場合を+とし、逆方向の場合を-とする。)

イ 相違点についての判断
事案に鑑み上記相違点2について検討する。
(ア) 引用例1発明では、「搬送されるポリビニルアルコール系フィルムは、第1ピンチロール21、次いで、第1ガイドロール11および第2ガイドロール12を通過して、第1浴に浸漬されるとともに、第2ピンチロール22に導かれ、第2ピンチロール22にはガイドロール32が対向して設けられ」ているものの、「第2ガイドロール12」の後に配置される「第2ピンチロール22」(及び第2ピンチロール22に対向して設けられる「ガイドロール32」)と「第2ガイドロール12」との具体的な位置関係は特定されておらず、また、「面長3.6m、弧高(轡曲度)=0.02」の「エキスパンダーロール」である「第2ガイドロール12」の最大の孤高となる点もどのような向きに配置されているか不明である(引用例1の実施例1(段落【0120】?【0125】)、実施例4の記載(【0133】)、【表1】(【0181】)、図1等からも把握することはできない。)。
そうしてみると、仮に、拡幅ロールにおける「抱き角」が一般的に30?90°とすることが技術常識(例えば、甲第3号証(特開平9-118461号公報)(以下、「引用例3」という。)の段落【0017】参照。)であったとしても、引用例1発明においては、(どのような向きに配置されているか不明な)当該「エキスパンダーロール(拡幅ロール)の孤高が最大となる点」と「エキスパンダーロール(拡幅ロール)の中心点」とを結んだ「直線B」を「基準」として、当該「直線B」と「エキスパンダーロール(拡幅ロール)に接触しているフィルム出口側接点」と「エキスパンダーロール(拡幅ロール)の中心点」とを結んだ「直線A」との交差角によって定義される「θ」も、当然どのような角度となっているのかは不明である。
そうすると、引用例1発明において、「-40°≦θ≦40°」を満たすように「第2ガイドロール12」(拡幅ロール)が配置されているということはできないから、上記相違点2は実質的な相違点を構成する。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明は、引用例1に記載された発明であるとはいえない。

(イ) また、偏光板の製造法における膨潤処理・処理浴において用いられる「第2拡幅ロール」に関し、「拡幅ロールの軸方向における弧高が最大になる位置において、拡幅ロールに接触しているフィルムの出口側接点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Aと、拡幅ロールの弧高が最大になる点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Bとの交差角」を「θ(ただし、交差角は、直線Bを基準としてフィルムの進行方向に対して順方向の場合を+とし、逆方向の場合を-とする。)」として、「-40°≦θ≦40°」を満たすように「拡幅ロール」を配置することは、引用例3及び引用例2には記載も示唆もされておらず、また、本件特許の出願時に技術常識であったともいえない。
例えば、引用例3の段落【0017】には、「一般のウェブをエキスパンダー等で使用する場合」に「拡幅ロールにかかる角度」「θ」を「30度から90度の範囲」とすることは記載されているものの、上記の「エキスパンダーロール(拡幅ロール)の孤高が最大となる点」と「エキスパンダーロール(拡幅ロール)の中心点」とを結んだ「直線B」を基準として、当該「直線B」と「直線A」との交差角によって定義される当該「θ」を、「-40°≦θ≦40°」とすることは記載も示唆もされていない。
同様に、甲第2号証(特開2005-227650号公報)(以下、「引用例2」という。)の段落【0048】及び【図3】には、実施例1の偏光フィルムの製造方法として、「拡幅ロールの接触角」「α」として、「曲率半径R:1813mm、孤高H:25mm」「第2拡幅ロール」の「α」を「1.5rad」(約86°)になる位置に配置することが記載されているものの、「第2拡幅ロールの孤高が最大となる点」と「第2拡幅ロールの中心点」とを結んだ「直線B」を基準として、当該「直線B」と「直線A」との交差角によって定義される「θ」を「-40°≦θ≦40°」とすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件訂正発明は、上記相違点2に係る式(2)を満たすことにより、「フィルム2に保持効果又は緩和効果が付与されており、フィルム2の幅方向の収縮力が減少するため、折れ、皺、及びスジ等の発生を効果的に抑制することができ」、「十分な皺伸ばし効果が得られる」ものである(本件特許の願書に添付した明細書の段落【0038】、【0039】及び【0045】の記載参照。)。
そうしてみると、引用例1発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(ウ) 特許異議申立人の意見について
a 特許異議申立人は、平成30年4月3日に提出した意見書の「(4)相違点2の同一性又は容易想到性」「ア.引用例1発明(実施例4)における交差角θについて」(同意見書14頁2行?15頁1行)において、[図X]を示すと共に、「引用例1発明(実施例4、図1)では、第2ガイドロールとしてエキスパンダーロール12の下端から左方向から水平にフィルムが侵入して接触し、該フィルムは所定の抱き角(α)を持って拡張されて浴面に向けて出て行く様になっている。この関係を図示すると共に、・・・・交差角をθで示すと下図Xの様になる。」、「ここで、エキスパンダーロールとしての通常の抱き角(α=30?90°)(甲第3号証ご参照)を考慮すると、引用例1発明における直線A,Bの交差角θは、θ=-|90-α|=-30?0°となり、こうした交差角(-30?0°)が引用例1発明に実質的に記載されているといえる。」、「この交差角の範囲は、相違点2に係る構成要件が特定する範囲(-40°?+40°)に包含されることから、相違点2は実質的な相違点を構成せず、従って引用例1発明に照らして新規性がない。」旨主張している。
しかしながら、上記(ア)で述べたとおり、「エキスパンダーロール」としての通常の抱き角(α=30?90°)を考慮したとしても、引用例1発明においては、「第2拡幅ロールの孤高が最大となる点」と「第2拡幅ロールの中心点」とを結んだ「直線B」を「基準」として、当該「直線B」と「直線A」との交差角によって定義される「θ」がどのような角度となるのか不明であるから、上記相違点2は実質的な相違点を構成する。
よって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

b また、特許異議申立人は同意見書の「(4)相違点2の同一性又は容易想到性」「イ.相違点2の容易想到性」(同意見書15頁2行?16頁11行)において、「甲第2号証の実施例1は、第2拡幅ロールとして図中の3を備えており、この図中の3における拡幅ロールと走行フィルムとの関係は上図Xと同等である。ここで実施例1では「その接触角αが1.5rad」であるとされ、・・・この接触角α(抱き角)が1.5rad(即ち約86°・・・)であることから、甲第2号証での交差角は、θ=-|90-α|=14°となる。」、「そうすると、引用例1発明の第2ガイドロールにおいてその交差角が示されていないとしても、同様の工程で同様の目的で使用される甲第2号証の第2拡幅ロールを参考に、同様の交差角とすることは通常の事であって、何ら困難性はない。」旨主張している。
しかしながら、上記(イ)で述べたとおり、引用例2には、「第2拡幅ロールの孤高が最大となる点」と「第2拡幅ロールの中心点」とを結んだ「直線B」を基準として、当該「直線B」と「直線A」との交差角によって定義される「θ」を「-40°≦θ≦40°」とすることは記載も示唆もされておらず、また、本件特許の出願時に技術常識であったともいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

4 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由(引用例2を主引用例とする進歩性欠如)について
上記3(2)イ(イ)で述べたとおり、引用例1及び引用例2のいずれにも、偏光板の製造法における膨潤処理・処理浴において用いられる「第2拡幅ロール」に関し、「拡幅ロールの軸方向における弧高が最大になる位置において、拡幅ロールに接触しているフィルムの出口側接点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Aと、拡幅ロールの弧高が最大になる点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Bとの交差角」を「θ(ただし、交差角は、直線Bを基準としてフィルムの進行方向に対して順方向の場合を+とし、逆方向の場合を-とする。)」として、「-40°≦θ≦40°」を満たすように「拡幅ロール」を配置することは、記載も示唆もされていない。また、当該事項が、本件特許の出願時に技術常識であったともいえない。
よって、本件訂正発明は、引用例2に記載された発明及び引用例1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立の理由によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも膨潤処理、染色処理、及び架橋処理を施す偏光子の製造方法において、
前記膨潤処理は、処理浴中に少なくとも第1ガイドロール及び下記式(1)を満たすように第2ガイドロールを設置して延伸倍率1.6?2.4倍で延伸する処理であり、
前記第2ガイドロールは、湾曲度(弧高/ロール面長)が0.01?0.02の拡幅ロールであり、
前記ポリビニルアルコール系フィルムが前記拡幅ロールから離れる位置が、下記式(2)を満たすように前記拡幅ロールを配置することを特徴とする偏光子の製造方法。
X/Y≧0.65 (1)
(式中、Xはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから第2ガイドロールに接触するまでの搬送距離であり、Yはポリビニルアルコール系フィルムが処理浴に入浴してから出浴するまでの搬送距離である。)
-40°≦θ≦40° (2)
(式中、θは、拡幅ロールの軸方向における孤高が最大になる位置において、拡幅ロールに接触しているフィルムの出口側接点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Aと、拡幅ロールの孤高が最大になる点と拡幅ロールの中心点とを結んだ直線Bとの交差角である。ただし、交差角は、直線Bを基準としてフィルムの進行方向に対して順方向の場合を+とし、逆方向の場合を-とする。)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-24 
出願番号 特願2011-181599(P2011-181599)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 113- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植野 孝郎渡▲辺▼ 純也  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 河原 正
鉄 豊郎
登録日 2016-10-21 
登録番号 特許第6025312号(P6025312)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 偏光子の製造方法  
代理人 特許業務法人ユニアス国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ