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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B65B |
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管理番号 | 1341997 |
異議申立番号 | 異議2017-700807 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-08-25 |
確定日 | 2018-06-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6099470号発明「PTP包装方法およびPTP包装機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6099470号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。 特許第6099470号の請求項2?4に係る特許を維持する。 特許第6099470号の請求項1に係る特許についての申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6099470号(以下「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成25年4月22日を出願日とする出願であって、平成29年3月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年8月25日に特許異議申立人平賀博(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、平成29年11月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月9日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、平成30年2月9日に申立人から、意見書が提出されたものである。 第2 訂正の請求 1.訂正について 平成30年1月9日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6099470号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)は、以下の請求項1?3に係る訂正と請求項4に係る訂正からなる。 2.請求項1?3に係る訂正 (1)訂正の内容 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 イ.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記成型装置の上流側に、容器フィルムを加熱する加熱装置を設け、 前記加熱装置は、前記容器フィルムの幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記ポケット部を形成する領域よりも弱くすることを特徴とする請求項1に記載のPTP包装機。」とあるのを、 「複数のポケット部と、長手方向の一方の端部に前記ポケット部が形成されない余剰フィルム部分とを備えたPTP包装体を製造するPTP包装機であって、 容器フィルムに前記ポケット部を成型する成型装置と、 その成型装置の下流側に配置され、前記ポケット部に製品を供給する製品供給領域と、 その製品供給領域の下流側に配置され、前記容器フィルムに蓋フィルムを覆うとともに、それらを熱シールして密封するシール装置を備え、 前記成型装置の上流側に、前記容器フィルムを加熱する加熱装置を設け、 前記成型装置は、横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型するようにし、 前記加熱装置は、前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の前記蓋フィルムと前記熱シールする領域よりも弱くすることを特徴とするPTP包装機。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)(下線部は、訂正箇所を示す。以下同じ。) なお、詳述すると、訂正事項2は、以下の訂正事項2-1?訂正事項2-4からなる。 (ア)訂正事項2-1 特許請求の範囲の請求項2に、「・・・を特徴とする請求項1に記載のPTP包装機。」と請求項1を引用していた記載を、請求項1を引用しない独立形式の記載に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。) (イ)訂正事項2-2 特許請求の範囲の請求項2に、 「容器フィルムに前記ポケット部を成型する成型装置と、 その成形装置の下流側に配置され、前記ポケット部に製品を供給する製品供給領域と、 その被包装物供給領域の下流側に配置され、前記容器フィルムに蓋フィルムを覆うとともに、それらを熱シールして密封するシール装置を備え、」(請求項1の特定事項)とあるのを、 「容器フィルムに前記ポケット部を成型する成型装置と、 その成型装置の下流側に配置され、前記ポケット部に製品を供給する製品供給領域と、 その製品供給領域の下流側に配置され、前記容器フィルムに蓋フィルムを覆うとともに、それらを熱シールして密封するシール装置を備え、」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。) (ウ)訂正事項2-3 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記成型装置は、横に並んだPTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型するようにした」(請求項1の特定事項)、「前記成型装置の上流側に、容器フィルムを加熱する加熱装置を設け、」とあるのを、それぞれ 「前記成型装置は、横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型するようにし、」、「前記成型装置の上流側に、前記容器フィルムを加熱する加熱装置を設け、」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。) (エ)訂正事項2-4 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記加熱装置は、前記容器フィルムの幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記ポケット部を形成する領域よりも弱くすること」とあるのを、 「前記加熱装置は、前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の前記蓋フィルムと前記熱シールする領域よりも弱くすること」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。) (2)訂正の適否 ア.一群の請求項について 訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1?3について、請求項2及び3は請求項1を直接あるいは間接的に引用するから、訂正前の請求項1?3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 イ.訂正事項1について (ア)訂正の目的について 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること、並びに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ.訂正事項2について ウ-1.訂正事項2-1について (ア)訂正の目的 訂正事項2-1は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式の請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること、並びに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2-1は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項2-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ-2.訂正事項2-2について (ア)訂正の目的 訂正事項2-2は、訂正前の請求項2(請求項1の特定事項)の「その成形装置」、「その被包装物供給領域」が、「容器フィルムに前記ポケット部を成型する成型装置と、その成形装置の下流側に配置され、前記ポケット部に製品を供給する製品供給領域と、その被包装物供給領域の下流側に配置され、」の記載において、それぞれ直前の「成型装置」、「製品供給領域」を指すことは明らかであり、それらの誤記を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又誤訳の訂正を目的とするものである。 (イ)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること、並びに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2-2は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1及び明細書の【0012】の「容器フィルムに前記ポケット部を成型する成型装置と、その成形装置の下流側に配置され、前記ポケット部に製品を供給する製品供給領域と、その被包装物供給領域の下流側に配置され、」の記載に基づくものであり、「その成形装置」、「その被包装物供給領域」が、それぞれ直前の「成型装置」、「製品供給領域」を指すことは明らかであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項2-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ-3.訂正事項2-3について (ア)訂正の目的 訂正事項2-3は、訂正前の請求項2の「前記成型装置は、横に並んだPTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型するようにした」(請求項1の特定事項)の「PTP包装体」、「前記成型装置の上流側に、容器フィルムを加熱する加熱装置を設け、」の「容器フィルム」が何を指すかそれぞれ不明瞭であったものを、その前に記載されたものであることを明瞭にするために、「前記PTP包装体」、「前記容器フィルム」とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること、並びに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2-2は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2、明細書の【0012】及び【0013】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項2-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ-4.訂正事項2-4について (ア)訂正の目的 訂正事項2-4は、訂正前の請求項2の「前記加熱装置は、前記容器フィルムの幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記ポケット部を形成する領域よりも弱くすること」の「前記容器フィルムの幅方向中央部位」及び「前記ポケット部を形成する領域」が何を示すか不明瞭だったものを、それぞれ、「前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位」、「前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の前記蓋フィルムと前記熱シールする領域」と明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること、並びに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2-4は、願書に添付した明細書の【0031】の「例えば、図8に示すように、加熱装置15の上部,下部加熱板15a,15bの幅方向中央部位に搬送方向に沿って伸びる凹溝15cを形成する。これにより、上下の加熱板15aで容器フィルム10を挟み込んだ際に、凹溝15cに対向するフィルム部位は加熱板15aに非接触となり加熱されず、熱膨張しない。よって、成型装置16を通過後の容器フィルム10は、図9に示すように、ポケット部10aを形成する左右の領域(ハッチングで示す)は加熱されて熱膨張し、その後に収縮するが、中央領域R2は元々熱膨張をほとんどせずに、安定した状態を保つ。係る中央領域R2は、最終的なPTP包装体における余剰フィルム部分となるため、後段のシール装置20におけるシール処理時に斜め方向のストレスによる歪みを受けにくくなり、よりきれいなPTP包装体を製造することができる。」との記載(下線部は当審で付与。)、図8及び図9に基づくもので、それらの記載及び図示内容から、「前記容器フィルムの幅方向中央部位」が「前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位」である点、「前記ポケット部を形成する領域」が「前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の前記蓋フィルムと前記熱シールする領域」である点が読み取れるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項2-4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 エ.小括 したがって、請求項1?3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1?4号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項[1-3]について訂正を認める。 3.請求項4に係る訂正 (1)訂正の内容 訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4に、 「複数のポケット部と、長手方向の一方の端部に前記ポケット部が形成されない余剰フィルム部分とを備えたPTP包装体を製造するPTP包装方法であって、 横に並んだPTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向して配置した状態で、前記PTP包装体を製造することを特徴とするPTP包装方法。」とあるのを、 「複数のポケット部と、長手方向の一方の端部に前記ポケット部が形成されない余剰フィルム部分とを備えたPTP包装体を製造するPTP包装方法であって、 横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向して配置した状態で、前記PTP包装体を製造するものであり、 容器フィルムに、横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型する成型行程と、 その成型行程を行う前に、前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の後行程で熱シールする領域よりも弱くするように前記容器フィルムを加熱する行程を備えることを特徴とするPTP包装方法。」に訂正する。 (2)訂正の適否 ア.訂正の目的について 訂正事項3は、PTP包装方法について、「容器フィルムに、横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型する成型行程」と、「その成型行程を行う前に、前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の後行程で熱シールする領域よりも弱くするように前記容器フィルムを加熱する行程」とを追加するもので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること、並びに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、成型行程については、願書に添付した明細書の【0028】の「これにより、この成型装置16にて成型処理が施され、通過した容器フィルム10は、図6に示すように、成型装置16の凹部16c′に対向する位置にポケット部10aが成型される。そして、最終的に個々のPTP包装体を構成するフィルム部位は、図6中、二点鎖線で示す領域となる。・・・平坦な余剰フィルム部分10bは、容器フィルム10の中央側の凹部未形成領域R1に形成する。これにより、横に並んだPTP包装体の余剰フィルム部分10bを内側に対向して配置した状態で、PTP包装体を製造する。」 との記載、加熱行程については、同明細書の【0031】の「例えば、図8に示すように、加熱装置15の上部,下部加熱板15a,15bの幅方向中央部位に搬送方向に沿って伸びる凹溝15cを形成する。これにより、上下の加熱板15aで容器フィルム10を挟み込んだ際に、凹溝15cに対向するフィルム部位は加熱板15aに非接触となり加熱されず、熱膨張しない。よって、成型装置16を通過後の容器フィルム10は、図9に示すように、ポケット部10aを形成する左右の領域(ハッチングで示す)は加熱されて熱膨張し、その後に収縮するが、中央領域R2は元々熱膨張をほとんどせずに、安定した状態を保つ。係る中央領域R2は、最終的なPTP包装体における余剰フィルム部分となるため、後段のシール装置20におけるシール処理時に斜め方向のストレスによる歪みを受けにくくなり、よりきれいなPTP包装体を製造することができる。」との記載、並びに図8及び図9に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ.小括 したがって、請求項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項4について訂正を認める。 4.まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1?4号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項2?4に係る発明(以下「本件発明2?4」という。)は、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項2】 複数のポケット部と、長手方向の一方の端部に前記ポケット部が形成されない余剰フィルム部分とを備えたPTP包装体を製造するPTP包装機であって、 容器フィルムに前記ポケット部を成型する成型装置と、 その成型装置の下流側に配置され、前記ポケット部に製品を供給する製品供給領域と、 その製品供給領域の下流側に配置され、前記容器フィルムに蓋フィルムを覆うとともに、それらを熱シールして密封するシール装置を備え、 前記成型装置の上流側に、前記容器フィルムを加熱する加熱装置を設け、 前記成型装置は、横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型するようにし、 前記加熱装置は、前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の前記蓋フィルムと前記熱シールする領域よりも弱くすることを特徴とするPTP包装機。 【請求項3】 前記加熱装置は、前記容器フィルムを上下から挟み込む加熱部材を有し、 その上下の加熱部材の少なくとも一方が、前記容器フィルムの幅方向中央部位と非接触となるようにしたことを特徴とする請求項2に記載のPTP包装機。 【請求項4】 複数のポケット部と、長手方向の一方の端部に前記ポケット部が形成されない余剰フィルム部分とを備えたPTP包装体を製造するPTP包装方法であって、 横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向して配置した状態で、前記PTP包装体を製造するものであり、 容器フィルムに、横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型する成型行程と、 その成型行程を行う前に、前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の後行程で熱シールする領域よりも弱くするように前記容器フィルムを加熱する行程を備えることを特徴とするPTP包装方法。」 第4 当審の判断 1.平成29年11月2日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審において通知した取消理由の概要は以下のとおりである。なお、上記取消理由において申立人の特許異議申立理由は、全て通知した。 本件発明2?4は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。また、「甲第1号証に記載された発明」、「甲第2号証に記載された事項」等を、それぞれ「甲1発明」、「甲2記載事項」等という。) 甲1:特開平10-218139号公報 甲2:実公昭53-533号公報 甲3:特開2006-280825号公報 甲4:特開2002-19734号公報 甲5:特開平6-48421号公報 甲6:特開昭63-319120号公報 甲7:特開2004-131117号公報 (1)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、甲1発明、甲2記載事項及び周知技術(甲4?甲7に例示されるもの)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明4について 本件発明4は、甲2発明、あるいは甲2発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2.上記取消理由についての判断 (1)甲各号証について ア.甲1記載事項及び甲1発明 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【0009】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1において、本発明のカール防止方法を実施するPTP包装装置の一例が全体を参照番号1で概略的に示されている。同図において、2は樹脂材料でつくられた容器フィルムF_(1)を加熱するヒータ、3は容器フィルムF_(1)に複数の容器すなわちポケットpを形成する成形装置、4はポケットp内に錠剤等の品物を充填する充填装置、5は容器フィルムF_(1)とその上に被されたカバーフィルムF_(2)とを加熱接着させてシールするヒートシール装置、6はポケット毎にその周囲においてフィルムにミシン目又はスリット等の切り込みを形成する切り込み形成装置、7は連続するフィルムから所定の大きさのPTPシートに打つ抜く打ち抜き装置である。カバーフィルムF_(2)は、この実施例では容器フィルムと同じ樹脂材料をベースとしてつくられ、容器フィルム側の面に加熱により軟化する接着層が形成されている。」 「【0012】可動フレーム62の上面には、公知の方法(例えば、電気ヒータ等を埋設すること)により加熱されるようになっている加熱板641から成る加熱装置64が取り外し可能に取り付けられている。加熱板64の上にはスリッタ刃ユニット65が取り外し可能に取り付けられている。スリッタ刃ユニット65は、ベースプレート651と、そのベースプレート651に直立した状態で固定された複数(5枚一組として二組で10枚)のスリッタ刃652とを備えている。このスリッタ刃は図4に示すPTPシートaの幅方向に全幅にわたって伸びるスリットSを形成する。・・・ 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図4】 」 甲1の図2及び図4から、図2の左側のPTPシートに関しては、「余剰フィルム部分」がシートの中央側に位置していることを看取できる。甲1の図2は切り込み形成装置6の断面図であるが、上流側においても同様であるから、図1の成形装置3においても、図2の左側のPTPシートに対応する部分に関しては、「余剰フィルム部分」がシートの中央側に位置しているといえる。 よって、上記記載事項から、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。 「複数のポケットpと、長手方向の一方の端部に前記ポケットpが形成されない余剰フィルム部分とを備えたPTPシートを製造するPTP包装装置であって、 容器フィルムに前記ポケットpを成型する成型装置3と、 その成形装置3の下流側に配置され、前記ポケットpに品物を充填する充填装置4と、 その品物を充填する充填装置4の下流側に配置され、前記容器フィルムにカバーフィルムを覆うとともに、それらを加熱接着してヒートシールするヒートシール装置5を備え、 前記成型装置3の上流側に、前記容器フィルムを加熱するヒータ2を設け、 前記成型装置3は、横に並んだPTPシートの一方の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケットpを成型するようにした、PTP包装装置。」 イ.甲2記載事項及び甲2発明 甲2には、以下の事項が記載されている。 「このブリスター包装を行うにあたっては、まず、熱可塑性の帯状フィルムに成型装置で多数のブリスターを縦横に成型しこれらのブリスターに錠剤等を自動的に供給した後、上からアルミ箔等を被せシールローラで熱圧着してヒートシールを行う。 次に、切り離しやすいようにミシン目カットを入れた後、一定寸法に打抜いてブリスター包装品とする。」(1頁1欄35行?2欄5行) 「なお、ダイス2の上側面に形成された多数の楕円状凹部15は、打抜き前のシートのブリスター包装された錠剤を逃げるためのものである。」(2頁3欄16行?19行) 「包装シートの打抜きにあたっては、ダイス2の上面で第3図の矢印方向へ、錠剤等がブリスター包装された帯状シートを間欠的に送つて打抜いていく。」(2頁3欄33行?36行) 「シートが1ピツチ送られると、図示されない駆動機構でダイス2が押上げられて、2個の大刃11.11′とポンチ4,4′により、2枚の方形シートが打抜かれる。」(2頁4欄4行?7行) 「第3図 」 甲2の第3図の「ダイス2の上側面に形成された多数の楕円状凹部15」は、打抜き前のシートのブリスター包装された錠剤を逃げるためのものであるから、多数の楕円状凹部15が設けられた部分に対向する位置にブリスター包装品のブリスターが設けられているので、第3図のYで示される部分(楕円状凹部15が設けられていない部分)には、横に並んだブリスター包装品の余剰フィルム部分が、内側に対向して配置されているといえる。 よって、上記記載事項から、甲2には、以下の甲2発明が記載されている。 「多数のブリスターと、長手方向の一方の端部に前記ブリスターが形成されない余剰フィルム部分とを備えたブリスタ-包装品を製造するブリスター包装方法であって、 熱可塑性の帯状フィルムに成型装置で多数のブリスターを縦横に成型しこれらのブリスターに錠剤等を自動的に供給した後、上からアルミ箔等を被せシールローラで熱圧着してヒートシールを行い、一定寸法に打抜いてブリスター包装品とし、 横に並んだブリスター包装品の前記余剰フィルム部分が、内側に対向して配置した状態で、前記ブリスター包装品を製造する、ブリスター包装方法。」 ウ.甲3記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0014】 図3は、本発明の70錠PTPシートにおいて中央で2つの35錠PTPシートに分割可能なミシン目と誤飲防止スペースを設けた70錠PTPシートである。」 「【図3】 」 (2)本件発明2について ア.対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「PTP包装装置」、「ポケットp」、「PTPシート」、「成型装置3」、「ヒートシール装置5」、「ヒータ2」は、本件発明2の「PTP包装機」、「ポケット部」、「PTP包装体」、「成型装置」、「シール装置」、「加熱装置」にそれぞれに相当する。そうすると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点1> 加熱装置が、本件発明2では、容器フィルムの余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記余剰フィルム部分以外のポケット部及びその周辺の蓋フィルムと熱シールする領域よりも弱くするのに対して、甲1発明のヒータ2は、そのような構成を備えてない点。 イ.相違点1についての検討 甲1のヒータ2のように成型装置の上流側に配置され容器フィルムを加熱する加熱装置について、「容器フィルムの余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記余剰フィルム部分以外のポケット部及びその周辺の蓋フィルムと熱シールする領域よりも弱くする」点は、甲2に記載もされていないし、示唆する記載もない。また、周知技術を示す証拠とされている甲4?甲7にも、その点は、記載もされていないし、示唆する記載もない。 そして、本件発明2は、相違点1に係る構成により、「中央領域は元々熱膨張をほとんどせずに、安定した状態を保ち、係る中央領域は、最終的なPTP包装体における余剰フィルム部分となるため、後段のシール装置におけるシール処理時に斜め方向のストレスによる歪みを受けにくくなり、よりきれいなPTP包装体を製造することができる」(明細書【0031】)との格別の作用効果を奏するものである。 よって、本件発明2は、甲1発明、甲2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明2の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(2)の説示を踏まえれば、甲1発明、甲2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明4について ア.対比 本件発明4と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「ブリスター包装方法」は、錠剤を熱可塑性の帯状フィルムとアルミ箔等で包装する方法であるので、本件発明4の「PTP包装方法」に相当する。また、甲2発明の、「ブリスター」、「ブリスター包装品」、「熱可塑性の帯状フィルム」は、本件発明4の「ポケット部」、「PTP包装体」、「容器フィルム」にそれぞれに相当する。そうすると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点2> 成型行程前に行う容器フィルムの加熱について、本件発明4では、容器フィルムの余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を前記余剰フィルム部分以外のポケット部及びその周辺の後行程で熱シールする領域よりも弱くするように前記容器フィルムを加熱する行程を備えるのに対して、甲2発明は、そのような行程を備えてない点。 イ.相違点2についての検討 成型行程前に行う容器フィルムの加熱について、「容器フィルムの余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を前記余剰フィルム部分以外のポケット部及びその周辺の後行程で熱シールする領域よりも弱くするように前記容器フィルムを加熱する行程を備える」点は、甲3に記載もされていないし、示唆する記載もない。また、周知技術を示す証拠とされている甲4?甲7にも、その点は、記載もされていないし、示唆する記載もない。 そして、本件発明4は、相違点2に係る構成により、「中央領域は元々熱膨張をほとんどせずに、安定した状態を保ち、係る中央領域は、最終的なPTP包装体における余剰フィルム部分となるため、後段のシール装置におけるシール処理時に斜め方向のストレスによる歪みを受けにくくなり、よりきれいなPTP包装体を製造することができる」(明細書【0031】)との格別の作用効果を奏するものである。 よって、本件発明4は、甲2発明及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ.小括 よって、本件発明2?4は、甲1発明、甲2記載事項及び周知技術、あるいは、甲2発明及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件発明2?4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明2?4に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件特許の請求項1は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対して申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。よって、本件特許の請求項1に係る特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 そして、他に本件発明2?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 複数のポケット部と、長手方向の一方の端部に前記ポケット部が形成されない余剰フィルム部分とを備えたPTP包装体を製造するPTP包装機であって、 容器フィルムに前記ポケット部を成型する成型装置と、 その成型装置の下流側に配置され、前記ポケット部に製品を供給する製品供給領域と、 その製品供給領域の下流側に配置され、前記容器フィルムに蓋フィルムを覆うとともに、それらを熱シールして密封するシール装置を備え、 前記成型装置の上流側に、前記容器フィルムを加熱する加熱装置を設け、 前記成型装置は、横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型するようにし、 前記加熱装置は、前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の前記蓋フィルムと前記熱シールする領域よりも弱くすることを特徴とするPTP包装機。 【請求項3】 前記加熱装置は、前記容器フィルムを上下から挟み込む加熱部材を有し、 その上下の加熱部材の少なくとも一方が、前記容器フィルムの幅方向中央部位と非接触となるようにしたことを特徴とする請求項2に記載のPTP包装機。 【請求項4】 複数のポケット部と、長手方向の一方の端部に前記ポケット部が形成されない余剰フィルム部分とを備えたPTP包装体を製造するPTP包装方法であって、 横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向して配置した状態で、前記PTP包装体を製造するものであり、 容器フィルムに、横に並んだ前記PTP包装体の前記余剰フィルム部分が、内側に対向するようなレイアウトとなるように前記ポケット部を成型する成型行程と、 その成型行程を行う前に、前記容器フィルムの前記余剰フィルム部分となる幅方向中央部位に対する加熱状態を、前記余剰フィルム部分以外の前記ポケット部及びその周辺の後行程で熱シールする領域よりも弱くするように前記容器フィルムを加熱する行程を備えることを特徴とするPTP包装方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-05-31 |
出願番号 | 特願2013-89673(P2013-89673) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B65B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 家城 雅美 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
蓮井 雅之 渡邊 豊英 |
登録日 | 2017-03-03 |
登録番号 | 特許第6099470号(P6099470) |
権利者 | 大森機械工業株式会社 |
発明の名称 | PTP包装方法およびPTP包装機 |
代理人 | 松井 伸一 |
代理人 | 松井 伸一 |