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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  B28D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B28D
管理番号 1342006
異議申立番号 異議2017-701027  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-25 
確定日 2018-06-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6120197号発明「コンクリートカッター冷却水給水用スイベルジョイント」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6120197号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6120197号の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成28年12月21日に特許出願され、平成29年4月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年10月25日に特許異議申立人仲山鉄工株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年12月18日付け(平成29年12月22日発送)で取消理由を通知し、平成30年2月19日に意見書が提出され、さらに、申立人に平成30年2月28日付け(平成30年3月6日発送)で審尋を通知し、これに対し、平成30年4月5日に審尋回答書が提出されたものである。

2 本件発明
「【請求項1】
コンクリートカッターのブレードシャフトを利用してブレードに冷却水を給水するためのスイベルジョイントであって、スイベルジョイントのケースの上部にニップルが設けてあり、ケース内にベアリングが内蔵されており、ケース側面のケースフランジに整流ガイドが取付けてあり、この整流ガイドの開口がニップルの直下に位置しており、ニップルから流下する冷却水の方向を水平方向に変更させることを特徴とするコンクリートカッターの冷却水用のスイベルジョイント。
【請求項2】
請求項1において、整流ガイドは、間隔をあけて取り付けた二つの壁体と、この壁体の下部に設けた斜めの底板からなるものであるコンクリートカッターの冷却水用のスイベルジョイント。」

3 取消理由の概要
当審において、請求項1ないし2に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施された発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(公然実施発明に係る証拠)
甲第1号証:コンクリートカッターにおけるスイベルジョイントの開発、市販経過に関する状況説明書、仲山鉄工株式会社 岩田雄介、2017年10月20日
甲第2号証:AZZ355型コンクリートカッターの構造確認に関する状況説明書、仲山鉄工株式会社 高梨和哉、2017年10月20日
甲第3号証:AZZ355型コンクリートカッターの構造確認に関する状況説明書、村岡ロードカッター、2018年3月23日
甲第4号証:AZZ355型コンクリートカッターの構造確認に関する状況説明書、北見商会株式会社、2018年3月30日
甲第5号証:AZZ355型コンクリートカッターの構造確認に関する状況説明書、有限会社モリグチカッター土木、2018年3月30日
甲第6号証:AZZ355型コンクリートカッターの構造確認に関する状況説明書、有限会社日本道路切断会津、2018年4月2日
甲第7号証:受注・出荷記録ノート、仲山鉄工株式会社 岩田雄介

4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
「コンクリートカッターにおけるスイベルジョイントの開発、市販経過に関する状況説明書

作成日:2017年10月20日
作成者:仲山鉄工株式会社
設計班班長 岩田雄介

1.はじめに
当社が2015年秋頃から、コンクリートカッターにおけるスイベルジョイントについての技術上の問題点を把握し、その改良を行い、2016年5月から改良仕様のスイベルジョイントを採用したコンクリートカッターを販売した経緯について説明します。

2.技術的問題点の把握
ユーザーから、スイベルジョイントからの給水を増やしてほしいとの要望が2015年秋頃寄せられました。
これを確認すべく、資料1?4の報告書○1?○4のとおり、『漏水量の計測』or『フランジからの給水量』を、2015年10月30日(資料1)?2015年12月4日(資料4)に亘り計測しました。
(決定注:丸囲み数字は、「○数字」と表記する。以下同様。)


3.改良型プロトタイプ
改良型プロトタイプは、2016年12月4日の試験に供されたものであって、スイベルジョイントの蓋の形状を変更したものです。
具体的には、資料4の写真のとおり、蓋の内側を扁平円柱状に張り出させると共に、その一部を削り込むように、側周面から中心にかけて、平面視でU字状輪郭の溝を形成したものです(資料5、6、9、11)。
この溝の作用により、ニップルからスイベルジョイント内に導入される冷却水は、無駄なくブレードシャフトの導水孔に導かれます。なお資料10として従来型の蓋の図面を示します。

4.部品の供給準備
プロトタイプの性能が確認できたことから、2016年2月頃から正式設計に入り(資料6)、4月5日、変更開始をしました。しかし、ユーザーの利便性を考慮し、「準備できしだい」新規部品装着を決定しました。(資料7)

5.販売実施実績
販売実績は、資料8に示すとおりです、この実績は、受注を受ける都度、記帳しておきます。2016年5月24日以降は、改良スペックのスイベルジョイントの蓋を付けて出荷しています。
一例として、ユーザーの了解が得られた製品を確認して、甲第2号証として、ユーザー村岡ロードカッターの代表者村岡寛氏立会いの下行った確認状況説明書を別途提出します。
ユーザーは、村岡ロードカッターで、製造番号「R160303627」です。
そのスイベルジョイントの構造は、甲第2号証に添付の写真のとおりです。また、このスイベルジョイントの部分は一度も不都合はなく、ユーザーとしての部品交換は特にしていないとのことです。」

なお、甲第1号証には、以下の資料1ないし資料10が添付されている。
資料1:20151029 AZZシリーズ給水量計測結果 報告書○1、安田、2015年10月30日
資料2:20151102 AZZシリーズ給水量計測結果 報告書○2、安田、2015年11月4日
資料3:20151112 AZZシリーズ給水量計測結果 報告書○3、大峠、2015年11月16日
資料4:20151203 AZZシリーズ給水量計測結果 報告書○4、大峠、2015年12月4日
資料5:AZZ355ブレードシャフト断面図、2017年9月21日
資料6:スイベルジョイントフタ図面、岩田、2016年2月12日
資料7:変更通知書、岩田、2016年3月4日
資料8:受注・出荷記録ノート、仲山鉄工株式会社 岩田雄介
資料9:AZZ355 説明図、2017年10月6日
資料10:スイベルジョイントフタ図面、岩田、2009年7月17日

(2)甲第2号証
「AZZ355型コンクリートカッターの構造確認に関する状況説明書
作成日:2017年10月20日
作成者:仲山鉄工株式会社
静岡県藤枝市青葉町1丁目
4番12号
営業企画担当 高梨 和哉

1.はじめに
当社が、2016年5月24日、株式会社シブヤ福岡営業所を通じて村岡ロードカッター(村岡寛代表)へ納入したコンクリートカッターについて、構造確認を行った状況を説明します。

2.構造確認の状況
(1)対象機 AZZ355型コンクリートカッター
型式番号:AZZ355
製造番号:R160303627
メーカー:仲山鉄工株式会社
納品日 :2016年5月24日
(2)確認年月日,時間
2017年10月17日16時
(3)確認場所
村岡ロードカッター敷地内(熊本県八代市田中東町26-9)
(4)確認者
仲山鉄工株式会社 営業企画担当 高梨 和哉
村岡ロードカッター 代表者 村岡 寛(写真1左)

3.具体的状況
現在村岡ロードカッターで使用中の前記AZZ355型コンクリートカッター(写真1)を、村岡ロードカッター敷地内において、一部分解作業を開始した。
順序としては、手前上部の、上部リッドを開けると共に前ボンネットを開け(写真2)、機体番号「R160303627」を確認した(写真3)。次いで下部プーリーカバーを外し、プーリー端部のスイベルジョイントを露見させた(写真4)。次いで露見することとなったスイベルジョイントの蓋を外した(写真5)。その結果、スイベルジョイントの蓋は、その内側に冷却水導流用の溝が形成されていることが確認された(写真5?7)。

4.部品交換等の事情
本装置は納品以来順調に稼働しており、一部の消耗部品を除いて、分解、点検、部品交換はしていません。当然、分解した蓋も交換していません。

以上、村岡ロードカッターで仲山鉄工株式会社製のコンクリートカッターについて、構造確認を行った状況を説明しました。」

(3)甲第7号証
甲第7号証の表の「通番」欄が「076」の段には、「製造NO」欄が「R160303627」、「代理店」欄が「(株)シブカ福岡(営)」、「ユーザー名」欄が「村岡ロードカッター」、「出荷日」欄が「5/24」と記載され、以下同様に、「078」の段には、「R160510026」、「(株)コンセック大阪」、「北見商会(株)、6/10」と、「080」の段には、「R160525060」、「協商」、「(有)日本道路切断会津」、「5/23」と、「088」の段には、「R160923002」、「フレキ名古屋」、「(有)モリグチカッター土木」、「10/21」と、記載されている。

5 申立人の主張
(1)特許異議申立書
ア 特許異議申立人の製品について
甲第1号証資料5は、特許異議申立人(以下、「申立人」という。)の製品「コンクリートカッター」(品番:AZZ355)(以下、甲製品という。)の冷却水供給装置を、ブレードシャフトの軸方向に断面した断面図である。冷却水供給装置は、図の右側の端部に、スイベルジョイント(以下、「甲発明」という。)を備えている。甲発明は、ブレードシャフトを利用して、ブレードフランジに固定される不図示のブレードに冷却水を給水するためのものである。
甲第1号証資料6は、甲発明に用いられるスイベルジョイントフタを示す図である。また、甲第1号証資料9は、甲第1号証資料5と甲第1号証資料6に基づき、甲発明(図1)と、甲発明に用いられるスイベルジョイントフタ(図2)とを、本件発明と対応する構成に本件特許の明細書で用いられている符号を付して示す参考図である。
甲第2号証は、2016年5月24日に熊本県の村岡カッター、代表村岡寛宛に納品された上記AZZ355型ロードカッターの一部を分解して構造確認した状況を示すものであり、上記構成を具えたスイベルジョイントが示されている。以下、甲発明について、甲第1号証資料9に付した符号を適宜用いて説明する。
甲発明は、以下の構成を備えている。
A コンクリートカッターのブレードシャフトを利用してブレードに冷却水を給水するためのスイベルジョイント(1)であって、
B スイベルジョイント(1)の、スイベルジョイントボスとスイベルジョイントフタ(11)からなるケース(10)の上部にホースニップル(2)が設けてあり、
C ケース(10)内にベアリング(3)が内蔵されており、
D ケース側面を構成するスイベルジョイントフタ(11)に整流ガイド(5)が設けられており、
E この整流ガイド(5)とスイベルジョイントシャフト(33)とで画定される開口(50)がホースニップル(2)の直下に位置しており、
F ホースニップル(2)から流下する冷却水の方向を水平方向に変更させることを特徴とする
G コンクリートカッターの冷却水用のスイベルジョイント。
H 上記スイベルジョイント(1)において、
I 整流ガイド(5)は、間隔をあけて取り付けた二つの壁体(51)と、
J この壁体(51)の下部に設けた底部(52)からなるものである
K コンクリートカッターの冷却水用のスイベルジョイント。」

イ 甲発明を採用した甲製品が販売された事実について
甲第1号証資料8、甲第2号証によれば、甲発明を採用した甲製品は、本件発明の出願日(平成28年12月21日)より前に販売されていたものである。

ウ 甲発明が出願前に公然実施されたことについて
以上から、甲発明は、本件発明の出願日前に公然と実施された発明に該当する。

(2)審尋回答書
ア 資料8については、別途提出する甲第3号証?甲第6号証に対応する顧客先を開示したもの(甲第7号証)を改めて提出します。

イ この程、顧客の了解の下に、AZZ355型コンクリートカッターの内部確認を行い、各顧客代表者が記名押印した状況説明書(甲第3号証?甲第6号証)を作成したので、これらを提出します。これら各証拠により、AZZ355型コンクリートカッターの出願前出荷が明らかになったものと確信します。

6 判断
(1)上記3の取消理由(1)及び(2)について
ア 申立人の主張する取消理由は、甲発明を採用した甲製品が、本件発明の出願前販売されていたことを前提とするものであるから、まずは、甲製品の販売について検討する。

イ 申立人は、甲第1号証資料8及び甲第2号証の記載に基づいて、甲発明を採用した甲製品は、本件出願前に販売されていたと主張(上記5(1)イ参照)している。
甲第1号証資料8の表には、製造NO、代理店、ユーザー名、出荷日が記載され、甲第2号証に記載された製造NO、代理店、ユーザー名、出荷日の記載と一致している。しかしながら、資料8は、手書きされた社内文書に過ぎないから、当該記載をもって、上記製造NOの製品が上記出荷日に出荷されたのかどうかを証明することはできない。
また、上記製品NOの製品が甲発明の構造を備えていることについて、甲第2号証で陳述しているが、上記製品NOの製品が、出荷当初から甲発明の構造を備えていることを客観的に証明する証拠は提出されていない。さらに、甲第1号証に添付された各資料に基づいても主張しているが、これら各資料についても、社内文書に過ぎないから、甲製品が甲発明の構成を備えていることを証明することはできない。よって、甲発明を備えた甲製品が、本件出願前に販売されたことを証明できていない。
審尋回答書に添付した甲第3号証ないし甲第6号証に基づいても、甲第2号証と同様の主張をしており(上記5(2)参照)、甲第3号証ないし甲第6号証に記載の製造NO、代理店、ユーザー名、出荷日と、甲第7号証に記載の製造NO、代理店、ユーザー名、出荷日とが一致し、各製造NOの製品が甲発明を備えていることを、甲第3号証ないし甲第6号証で陳述しているが、上記甲第2号証について検討したことと同様に、甲発明を備えた甲製品が、本件出願前に販売されたことを証明できていない。
したがって、甲発明は、本件特許の出願前に公然実施された発明であると認めることはできない。

ウ 以上のことから、甲発明が、本件発明と同一であったとしても、上記イで検討したとおりであるから、本件発明は、本件特許の出願前に公然実施された発明であるとすることはできず、よって、甲発明が本件特許の出願前に公然実際された発明であることを前提とする取消理由(1)(2)は理由がないというべきである。


7 むすび
以上のとおり、請求項1ないし2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-06-20 
出願番号 特願2016-247401(P2016-247401)
審決分類 P 1 651・ 112- Y (B28D)
P 1 651・ 121- Y (B28D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 亀谷 英樹  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 西田 秀彦
住田 秀弘
登録日 2017-04-07 
登録番号 特許第6120197号(P6120197)
権利者 株式会社クライム
発明の名称 コンクリートカッター冷却水給水用スイベルジョイント  
代理人 石井 良和  
代理人 東山 喬彦  

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