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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1342262
審判番号 不服2017-4176  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-23 
確定日 2018-08-03 
事件の表示 特願2013-542142「立体視ビデオ画像を観察および追跡するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月 7日国際公開、WO2012/075155、平成25年12月26日国内公表、特表2013-545557、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)11月30日(パリ条約による優先権主張 2010年12月2日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月13日付けで拒絶理由が通知され、同年11月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月28日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月5日付けで意見書が提出され、同年11月30日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、平成29年3月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後当審において平成30年1月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という)が通知され、同年4月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに、当審において平成30年6月14日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という)が通知され、同年6月28日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成28年11月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の以下の請求項に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-3、5-7、15-17、20
・引用文献等 1、5

・請求項 4、8-11、13、16、18、19
・引用文献等 1-3、5

・請求項 12、14
・引用文献等 1-4、5

引用文献1:特開2004-57614号公報
引用文献2:特開平7-275202号公報
引用文献3:米国特許第6414708号明細書
引用文献4:特開2009-153785号公報
引用文献5:特表2007-518540号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、平成30年4月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び13は以下のとおりである。
「 【請求項1】
立体視ビデオのイメージングおよびトラッキングシステムであって、該システムは、
口内の腔の第一のビデオフィードを生成するように構成される第一のビデオカメラと、
該第一のビデオカメラから瞳孔間距離だけ間隔を置かれておりかつ該口内の腔の第二のビデオフィードを生成するように構成される第二のビデオカメラと、
該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラと関連するトラッキングモジュールであって、該トラッキングモジュールは該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラを収束点へと向けさせるように構成され、該トラッキングモジュールは、患者の頭部のある位置にあるトラッキング点を有し、該収束点と相対的な該トラッキング点を追跡し、それによって、該口内の腔が、該第一のビデオカメラ、または該第二のビデオカメラのうちの少なくとも1つに対して動きが生じる場合に立体視を維持するように構成される、トラッキングモジュールと、
該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラと関連するズーミングモジュールであって、該ズーミングモジュールは、該第一のビデオフィードおよび該第二のビデオフィードの立体視ビデオ画像の拡大を提供するように構成される、ズーミングモジュールと、
を含み、
該トラッキング点が移動する場合に、該収束点は、該トラッキング点に相対的に移動する、システム。
【請求項13】
立体視ビデオのイメージングおよびトラッキングシステムの動作制御方法であって、該システムは、トラッキングモジュールと、ディスプレイシステムとを備え、該方法は、
該トラッキングモジュールが、第一のビデオカメラおよび第二のビデオカメラを口内の腔の選択された領域へと向け、それによって該選択された領域の第一のビデオフィードおよび第二のビデオフィードそれぞれを生成することであって、該第一のビデオカメラは該第二のビデオカメラから選択された距離だけ離れており、該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラはそれぞれ該選択された領域のもしくは該選択された領域近くの収束点に向けられ、該トラッキングモジュールは、患者の頭部のある位置にある選択されたトラッキング点を有し、該収束点と相対的な該選択されたトラッキング点を追跡し、それによって、該口内の腔が、該第一のビデオカメラ、または該第二のビデオカメラのうちの少なくとも1つに対して動きが生じる場合に該選択された領域の立体視を提供するように構成され、該選択されたトラッキング点が移動する場合に、該収束点は、該選択されたトラッキング点に相対的に移動する、ことと、
該トラッキングモジュールが、該収束点の位置を該選択されたトラッキング点の動きと相対的に調節することと、
該ディスプレイシステムが、該第一のビデオフィードおよび該第二のビデオフィードを表示することであって、該ディスプレイシステムは、立体視ビデオ画像を生成するために該第一のビデオフィードおよび該第二のビデオフィードを光学的に分離する、ことと、
を含む、方法。」

なお、本願発明2ないし12は、いずれも、本願発明1をさらに減縮した発明である。
本願発明13は、本願発明1にディスプレイシステムの構成を加え、ズーミングモジュールの構成を削除し、さらにカテゴリーを方法の発明として構成した発明である。
本願発明14ないし16は、いずれも、本願発明13をさらに減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について (下線は当審で付与した。)
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2004-57614号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、手術用観察装置に関しており、特に、対物光学系を含む撮像光学系と、前記撮像光学系と分離して設けられた画像表示装置とを備えた手術用観察装置に関している」

(1-イ)
「【0024】
このように、上記手術用観察装置100は、結像光学系111の焦点距離に相関して角度θaが変化するため、顕微鏡部110を移動した場合、術者8に所望の立体感を有する画像を提供することが困難である。
【0025】
本発明は、上記課題を鑑みて、術者の作業空間を確保すると共に十分な立体観察がおこなえる手術用観察装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の手術用観察装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を有している。
【0027】
本発明の一態様の手術用観察装置は、対物光学系を含む2つの独立した撮像光学系と、前記撮像光学系と分離して設けられた画像表示装置と、前記撮像光学系による観察点を任意の位置に移動可能に、前記撮像光学系を保持する保持手段と、
を備えている。前記2つの独立した撮像光学系は、それぞれの撮像光学系の観察点に対し相関をもって制御される。」

(1-ウ)
「【0082】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施例を図4及び図5(a)、(b)を用いて説明する。なお第1の実施の形態の構成と同様の構成は同じ参照符号を付与し詳細な説明を省略する。
【0083】
(構成)
本実施の形態の手術用観察装置1は、撮像光学系保持部40が、手術室の天井に配置されている。具体的には、XY駆動部42a、42bは夫々、上面が天井面に沿って移動可能に、前記天井に支持されている。従って、XY平面は、天井面とが実質的に一致する。
【0084】
また、本実施の形態の手術用観察装置1は、第1の実施の形態と異なり、観察部位の位置を指示する観察位置指示装置を有している。手術用観察装置1は、観察位置指示装置の示す観察部位の位置に従って、撮像光学系20a、20bの焦点位置が自動的に調整される。このため、本実施の形態の手術用観察装置1は、第1の実施の形態とは異なり、撮像部20並びに撮像光学系保持部40にフットスイッチが接続されていない。
【0085】
前記観察位置指示装置は、図4中に示されるように、処置具90に取り付けられた公知のマーカー71と、マーカー71の位置を検出するためのデジタイザー72とを有している。マーカー71は、例えば手術に用いられる吸引管等の処置具90と一体的に構成されている。デジタイザー72は、マーカー71の位置を基に処置具90の先端の位置を検出する。デジタイザー72は、制御部60に接続されている。
【0086】
また、処置具90には、撮像光学系20aを操作するための操作部80が取り付けられている。操作部80は、撮像光学系20aの倍率を設定するためのズームスイッチと、撮像光学系20aの光軸の角度を設定するためのティルトスイッチとを有している。また、操作部80は、制御部60に接続されている。
【0087】
本実施の形態の画像表示装置30は、第1の実施の形態と異なり、フェイスマウントディスプレイではなく、公知のモニタである。本実施の形態の画像表示装置30も、第1の実施の形態と同様に、各撮像素子23a、23bに接続されており、各撮像素子23a、23bから送られた取得画像を表示する。なお、画像記録30は、第1の実施の形態と同様なフェイスマウントディスプレイにすることも可能であるし、公知のプロジェクターなどに代えることも可能である。このように画像表示装置30は、撮像部20の取得した画像を3次元表示(立体画像表示)し得れば、公知のいかなる画像表示装置に代えることも可能である。なお、上述の公知のモニタは、以下に例示するようにして、撮像部20の取得した画像を3次元表示し得る。1つの例として、上記モニタは、撮像部20により取得した2つの視差のある画像の表示を、交互に高速に切り替えることにより、観察者に3次元画像を提供する。また、他の例として、上記モニタは、偏光板を利用し、偏光フィルタ式立体映像を表示することも可能である。なお、上記モニタの立体画像の表示方法は、これらの表示方法に限定されることはない。
【0088】
(作用)
本実施の形態の手術用観察装置1は、観察部位Pを観察する際には、処置具90の先端位置を、前記観察部位Pに配置する。デジタイザー72は、マーカー71の位置を検出し、処置具90の先端位置を制御部60に送る。これとともに、操作部80は、前記ズームスイッチ並びに前記ティルトスイッチにより設定された撮像光学系20aの倍率並びに光軸の角度を、制御部60に入力する。
【0089】
制御部60は、デジタイザー72から送られた処置具90の先端位置に、撮像光学系20aの焦点位置を合わせるように、XY駆動部42a、中間アーム保持部43a、中間アーム44a、並びに撮像光学系20aの各モーターに駆動命令を出す。上記各部材の駆動により、撮像光学系20aの倍率並びに光軸の角度は、前記操作部80により入力された倍率並びに光軸の角度になるように、調整される。なお、本実施の形態では、撮像光学系20aの、XY平面に沿った位置は、XY駆動部42aにより調整される。XY駆動部42aは、X方向並びにY方向の駆動するための夫々のモーターの回転数を、制御部60に送る。
【0090】
続いて、制御部60は、前記XY駆動部42aの2つのモーターの回転数を基に、撮像光学系20aのXY平面上の位置を検出する。そして、制御部60は、第1の実施の形態と同様に、撮像光学系20bの焦点位置を撮像光学系20aの焦点位置と一致させるように、XY駆動部42b、中間アーム保持部43b、中間アーム44b、並びに撮像光学系20bの各モーターに駆動命令をだす。なお、撮像光学系20aと撮像光学系20bとの離間距離は、制御部60が求めた前記撮像光学系20aのXY平面上の位置に対して調整される。」

(1-エ)



上記(1-ア)?(1-エ)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「観察部位の位置を指示する観察位置指示装置を有している、立体観察がおこなえる手術用観察装置1であって、
観察位置指示装置の示す観察部位の位置に従って、撮像光学系20a、20bの焦点位置が自動的に調整され、
観察位置指示装置は、手術に用いられる吸引管等の処置具90と一体的に構成されている公知のマーカー71と、マーカー71の位置を検出するためのデジタイザー72とを有し、
デジタイザー72は、マーカー71の位置を基に吸引管等の処置具90の先端の位置を検出し、
処置具90には、撮像光学系20aを操作するための操作部80が取り付けられており、
操作部80は、撮像光学系20aの倍率を設定するためのズームスイッチを有し、制御部60に接続され、
制御部60は、デジタイザー72から送られた処置具90の先端位置に、撮像光学系20aの焦点位置を合わせるように、各モーターに駆動命令を出し、撮像光学系20aの倍率並びに光軸の角度は、前記操作部80により入力された倍率並びに光軸の角度になるように、調整され、
続いて、制御部60は、撮像光学系20bの焦点位置を撮像光学系20aの焦点位置と一致させるように各モーターに駆動命令をだし、撮像光学系20aと撮像光学系20bとの離間距離は調整され、
各撮像素子23a、23bから送られた取得画像を画像表示装置30に表示する、
手術用観察装置1。」
(以下、「引用発明」という。)

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献2(特開平7-275202号公報)には、「【0006】・・・狭い治療現場において、口腔内観察装置を使用の都度所要の位置に引き寄せる必要がなく、しかも撮影時に手振れが生じないようにして、医師がひとりで撮影と治療を同時に行うことができる歯科治療ユニット」の発明が記載されている。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献3(米国特許第6414708号明細書)には、「Video system for three dimensional imaging and photogrammetry(3次元のイメージングおよび写真測量用の映像システム)」の発明が記載されている。

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献4(特開2009-153785号公報)には、「ヘッドマウントディスプレイが用いられ、患部と診療データとの双方を効率よく視認できる歯科用表示装置」の発明が記載されている。

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献5(特表2007-518540号公報)には、「患者に対して取り付けられた外科手術ナビゲーションセンサを提供するための方法およびシステムおよび装置」の発明が記載されている。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。


引用発明の「観察部位の位置を指示する」ことは、観察部位の位置にトラッキングすることであり、「立体観察」は、立体視ビデオのイメージングにより行われるものであるから、引用発明の「観察部位の位置を指示する観察位置指示装置を有している、立体観察がおこなえる手術用観察装置1」は、本願発明1の「立体視ビデオのイメージングおよびトラッキングシステム」に相当する。


引用発明の「撮像光学系20a」、「撮像光学系20b」、「マーカー71」及び「吸引管等の処置具90の先端」は、それぞれ、本願発明1の「第一のビデオカメラ」、「第二のビデオカメラ」、「トラッキング点」及び「収束点」に相当する。そして、「撮像光学系20a」及び「撮像光学系20b」は、それぞれのビデオフィードを生成するように構成されることは明らかであるから、引用発明の、「撮像光学系20a」及び「撮像光学系20b」と、本願発明1の「第一のビデオカメラ」及び「第二のビデオカメラ」とは、それぞれ「第一」及び「第二」の「ビデオフィードを生成するように構成される」点で共通する。


引用発明の「撮像光学系20a」と「撮像光学系20b」の「離間距離」は、「制御部60」により「撮像光学系20bの焦点位置を撮像光学系20aの焦点位置と一致させるように」「調整される」から、引用発明の「撮像光学系20a」と「撮像光学系20b」と、
本願発明1の「第一のビデオカメラ」と「第二のビデオカメラ」とは、
「第二のビデオカメラ」が、撮影対象の「第一のビデオカメラから間隔を置かれて」いる点で共通する。


(ア)引用発明の「マーカー71の位置を基に吸引管等の処置具90の先端の位置を検出」する「デジタイザー72」と「デジタイザー72から送られた処置具90の先端位置に、撮像光学系20aの焦点位置を合わせるように、各モーターに駆動命令を出」す「制御部60」は、2つまとめて、本願発明1の「トラッキングモジュール」に相当する。

(イ)引用発明は「マーカー71」の位置が移動すると、「吸引管等の処置具90の先端」の位置も相対的に移動することは明らかであるから、引用発明と本願発明1とは、「該トラッキング点が移動する場合に、該収束点は、該トラッキング点に相対的に移動する」点で共通する。
そして、引用発明の「デジタイザー72」は、「マーカー71の位置を基に吸引管等の処置具90の先端の位置を検出」するから、引用発明の「デジタイザー72」と、本願発明1の「トラッキングモジュール」とは、「該収束点と相対的な該トラッキング点を追跡し」ている点で共通する。

(ウ)引用発明の「制御部60」は、「撮像光学系20a」と「撮像光学系20b」を制御している。
そうすると、引用発明の「制御部60」は、「デジタイザー72から送られた処置具90の先端位置に、撮像光学系20aの焦点位置を合わせるように、各モーターに駆動命令を出し」、「続いて」、「撮像光学系20bの焦点位置を撮像光学系20aの焦点位置と一致させるように各モーターに駆動命令をだ」しているから、引用発明の「制御部60」と、本願発明1の「トラッキングモジュール」とは、「該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラと関連」しており、「該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラを収束点へと向けさせるように構成され」ている点で共通する。

(エ)上記(ア)?(ウ)より、引用発明は、「マーカー71の位置を基に吸引管等の処置具90の先端の位置を検出」し、検出された「処置具90の先端位置に、撮像光学系20aの焦点位置を合わせ」、「続いて」、「撮像光学系20bの焦点位置を撮像光学系20aの焦点位置と一致させ」、その結果として、立体視を維持しているものであり、そのためには、「マーカー71の位置」が、「撮像光学系20a」及び「撮像光学系20b」に対する相対的な位置でなければならないことは明らかであるから、引用発明の「制御部60」と、本願発明1の「トラッキングモジュール」とは、「該第一のビデオカメラ、または該第二のビデオカメラのうちの少なくとも1つに対して動きが生じる場合に立体視を維持するように構成される」点で共通する。


引用発明の「制御部60」は、「撮像光学系20aの倍率」が、「撮像光学系20aの倍率を設定するためのズームスイッチを有し、制御部60に接続され」る「前記操作部80により入力された倍率」「になるように、調整」しており、「撮像光学系20a」の倍率を変更した場合、当然、「撮像光学系20b」の倍率も変更されるから、
引用発明の「制御部60」は、本願発明1の「該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラと関連するズーミングモジュールであって、該ズーミングモジュールは、該第一のビデオフィードおよび該第二のビデオフィードの立体視ビデオ画像の拡大を提供するように構成される、ズーミングモジュール」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 立体視ビデオのイメージングおよびトラッキングシステムであって、該システムは、
撮像対象の第一のビデオフィードを生成するように構成される第一のビデオカメラと、
該撮像対象の該第一のビデオカメラから間隔を置かれておりかつ該撮像対象の第二のビデオフィードを生成するように構成される第二のビデオカメラと、
該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラと関連するトラッキングモジュールであって、該トラッキングモジュールは該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラを収束点へと向けさせるように構成され、該トラッキングモジュールは、該収束点と相対的な該トラッキング点を追跡し、それによって、該撮像対象が、該第一のビデオカメラ、または該第二のビデオカメラのうちの少なくとも1つに対して動きが生じる場合に立体視を維持するように構成される、トラッキングモジュールと、
該第一のビデオカメラおよび該第二のビデオカメラと関連するズーミングモジュールであって、該ズーミングモジュールは、該第一のビデオフィードおよび該第二のビデオフィードの立体視ビデオ画像の拡大を提供するように構成される、ズーミングモジュールと、
を含み、
該トラッキング点が移動する場合に、該収束点は、該トラッキング点に相対的に移動する、システム。」

(相違点1)
観察対象と、収束点を観察対象に維持するためのトラッキング点について、本願発明1では、「口内の腔」と「患者の頭部のある位置にあるトラッキング点」であるのに対して、引用発明では、「手術のための観察部位」と「吸引管等の処置具90の先端」である点。

(相違点2)
2つのビデオカメラの間隔について、本願発明1では、「瞳孔間距離だけ間隔を置かれてお」るのに対して、引用発明では、離間距離は調整される点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、観察対象を「口内の腔」とし、収束点を該「口内の腔」に維持するためのトラッキング点を「患者の頭部のある位置にあるトラッキング点」とする構成は、上記引用文献2ないし5のいずれにも記載されておらず、本願の優先権主張日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)結論
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

2 本願発明2ないし12について
また、本願発明2ないし12は、本願発明1を限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

3 本願発明13について
本願発明13は、本願発明1にディスプレイシステムの構成を加え、ズーミングモジュールの構成を削除し、さらに、物の発明からカテゴリー変更し方法の発明として再構成した発明であり、本願発明1の、観察対象を「口内の腔」とし、収束点を該「口内の腔」に維持するためのトラッキング点を「患者の頭部のある位置にあるトラッキング点」とする構成、と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

4 本願発明14ないし16について
また、本願発明14ないし16は、本願発明13を限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

第6 原査定についての判断
平成30年6月28日付けの手続補正により補正された請求項1ないし16は、「観察対象を「口内の腔」とし、収束点を該「口内の腔」に維持するためのトラッキング点を「患者の頭部のある位置にあるトラッキング点」とする」という技術事項を有するものとなった。
当該技術事項は、原査定における引用文献1ないし5に記載されておらず、本願優先権主張日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし16は、当業者であっても、原査定における引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由1および2について
特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1ないし20について、「該収束点が該対象の口内の腔に関連している」との記載では発明の範囲が明確でない旨の拒絶の理由(当審拒絶理由1)を通知しているが、平成30年4月27日付けの手続補正において、上記記載が削除された結果、この拒絶理由は解消した。
さらに、当審では、請求項1ないし16について、「トラッキング点」がどこにあるのかが明確でない旨の拒絶の理由(当審拒絶理由2)を通知しているが、平成30年6月28日付けの手続補正において、「患者の頭部のある位置にあるトラッキング点を有し」との記載が付加された結果、この拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおりであり、原査定及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-24 
出願番号 特願2013-542142(P2013-542142)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田邉 英治関根 裕  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
信田 昌男
発明の名称 立体視ビデオ画像を観察および追跡するためのシステムおよび方法  
代理人 森下 夏樹  
代理人 石川 大輔  
代理人 山本 健策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 山本 秀策  

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