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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R |
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管理番号 | 1342329 |
審判番号 | 不服2017-9942 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-04 |
確定日 | 2018-07-31 |
事件の表示 | 特願2015-200330「試験装置、試験信号供給装置、試験方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017- 72509、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成27年10月8日 拒絶査定: 平成29年3月31日(以下、「原査定」という。送達日:同年4月4日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成29年7月4日 手続補正: 平成29年7月4日(以下、「補正1」という。) 拒絶理由通知: 平成30年3月22日 (以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月27日) 手続補正: 平成30年5月11日(以下、「本件補正」という。) 第2 本願発明 本願請求項1-16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明16」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1-16は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 被試験デバイスを試験する試験装置であって、 一の試験において、前記被試験デバイスに供給するべき試験パターンを、前記被試験デバイスの前記一の試験の試験中に発生するパターン発生部と、 前記被試験デバイスの試験中に発生させる前記一の試験の試験パターンを、前記一の試験の試験中に一部ずつパケット化して送信するパケット送信部と、 前記パケット送信部により送信されたパケットを伝送する、ネットワークを含むパケット伝送部と、 前記パケット伝送部を介して前記パケット送信部に接続され、前記一の試験の試験中に前記パターン発生部が発生する前記一の試験の試験パターンを用いて前記被試験デバイスを試験するテストヘッドと、 を備え、 前記テストヘッドは、 前記パケット伝送部を介して伝送された試験パターンを受信するパケット受信部と、 前記パケット受信部により受信された試験パターンをバッファリングするバッファ部と、 前記バッファ部から取得した試験パターンに応じた試験信号を前記被試験デバイスに供給する試験信号供給部と、 を有し、 前記一の試験の試験中に前記バッファ部がアンダーフローとなったことに応じて、当該試験装置に起因する試験失敗を通知する通知部を更に備える試験装置。 【請求項2】 前記パターン発生部は、 前記被試験デバイスを試験するための試験プログラムを格納するメモリと、 前記試験プログラムを実行して試験パターンを生成するCPUと、 を有する請求項1に記載の試験装置。 【請求項3】 前記被試験デバイスに供給するべき試験パターンを格納するメモリを有し、 前記パケット送信部は、前記メモリに格納された試験パターンをDMA転送により前記パケット伝送部へと送信する請求項1または2に記載の試験装置。 【請求項4】 前記被試験デバイスに試験パターンを供給するタイミングを発生するタイミング発生部を更に備え、 前記試験信号供給部は、前記バッファ部にバッファリングされた試験パターンに応じた試験信号を、前記タイミング発生部が発生するタイミングで前記被試験デバイスに供給する 請求項1から3のいずれか一項に記載の試験装置。 【請求項5】 前記パケット伝送部は、前記パケット送信部により送信されたパケットを分配して伝送し、 前記テストヘッドは複数の前記被試験デバイスと接続され、前記パケット伝送部を介して前記パターン発生部から分配されて供給された前記一の試験の試験パターンを用いて、複数の前記被試験デバイスを試験する請求項1から4のいずれか一項に記載の試験装置。 【請求項6】 前記被試験デバイスに接続される少なくとも1つの試験端子に対応して設けられ、それぞれが前記バッファ部および前記試験信号供給部を有する複数のチャネルグループ回路を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の試験装置。 【請求項7】 前記複数のチャネルグループ回路のそれぞれの前記バッファ部は、前記パケット受信部が受信したパケットに含まれる、前記複数のチャネルグループ回路のそれぞれに対応付けられた試験パターンをバッファリングする請求項6に記載の試験装置。 【請求項8】 前記パケット伝送部は、前記パケット送信部により送信されたパケットを、2以上のチャネルグループ回路にマルチキャストする請求項6または7に記載の試験装置。 【請求項9】 前記パケット伝送部は、前記パケット送信部により送信されたパケットを、いずれのチャネルグループ回路に伝送するかを切り換える切換部を有する請求項6から8のいずれか一項に記載の試験装置。 【請求項10】 前記パケット送信部は、前記被試験デバイスの前記一の試験の試験前から前記一の試験の試験パターンを送信し、 前記バッファ部に試験パターンが予め定められた量以上バッファリングされたことに応じて前記被試験デバイスの試験を開始する試験開始部を更に備える 請求項1から9のいずれか一項に記載の試験装置。 【請求項11】 前記試験信号供給部は、前記バッファ部から取得した試験パターンが、ウェイトサイクルの挿入を許可するウェイト許可コードを含み、かつ、前記バッファ部にバッファリングされた試験パターンの残量が基準以下である場合に、前記被試験デバイスに供給する試験信号にウェイトサイクルを挿入する請求項1から10のいずれか一項に記載の試験装置。 【請求項12】 前記試験信号供給部は、前記バッファ部から取得した試験パターンが、前記バッファ部のサイズ未満の範囲内での分岐命令を含む場合に、既にバッファリングされた分岐先の試験パターンに応じた試験信号を前記被試験デバイスに供給する請求項1から11のいずれか一項に記載の試験装置。 【請求項13】 前記バッファ部は、バッファリングされた試験パターンを使用後に予め定められたサイクル個数分保持しておき、 前記試験信号供給部は、前記バッファ部から取得した試験パターンが、前方分岐命令を含む場合に、前記バッファ部に保持された使用済みの試験パターンに応じた試験信号を前記被試験デバイスに供給する 請求項12に記載の試験装置。 【請求項14】 被試験デバイスを試験する試験装置に設けられる試験信号供給装置であって、 一の試験において、前記被試験デバイスに供給するべき試験パターンを、前記被試験デバイスの試験中に一部ずつパケット化したパケットにより伝送する、ネットワークを含むパケット伝送部から、前記被試験デバイスの前記一の試験の試験中に試験パターンを受信するパケット受信部と、 前記パケット受信部により受信された前記一の試験の試験パターンをバッファリングするバッファ部と、 前記バッファ部から取得した前記一の試験の試験パターンに応じた試験信号を前記被試験デバイスに供給する試験信号供給部と、 前記一の試験の試験中に前記バッファ部がアンダーフローとなったことに応じて、当該試験装置に起因する試験失敗を通知する通知部と、 を備え、 当該試験の試験パターンは、当該試験信号供給装置と前記パケット伝送部を介して接続されたパターン発生部が前記被試験デバイスの前記一の試験の試験中に発生する試験信号供給装置。 【請求項15】 被試験デバイスを試験する試験方法であって、 一の試験において、前記被試験デバイスに供給するべき試験パターンを、前記被試験デバイスの前記一の試験の試験中に発生するパターン発生段階と、 前記被試験デバイスの試験中に発生させる前記一の試験の試験パターンを、前記一の試験の試験中に一部ずつパケット送信部がパケット化して送信するパケット送信段階と、 前記パケット送信段階により送信されたパケットを、ネットワークを含むパケット伝送部が伝送するパケット伝送段階と、 前記パケット伝送部を介して前記パケット送信部に接続されたテストヘッドが、前記一の試験の試験中に前記一の試験の試験パターンを用いて前記被試験デバイスを試験する段階と、 を備え、 前記被試験デバイスを試験する段階は、 前記パケット伝送段階により伝送された試験パターンを受信するパケット受信段階と、 前記パケット受信段階により受信された試験パターンをバッファ部にバッファリングするバッファ段階と、 前記バッファ部から取得した試験パターンに応じた試験信号を前記被試験デバイスに供給する試験信号供給段階と、 を有し、 前記一の試験の試験中に前記バッファ部がアンダーフローとなったことに応じて、試験装置に起因する試験失敗を通知する通知段階を更に備える試験方法。 【請求項16】 コンピュータに実行されて、請求項1に記載の試験装置が用いる試験パターンを発生させるプログラムであって、 当該プログラムは、前記コンピュータを、 前記一の試験において、前記被試験デバイスに供給するべき試験パターンを発生する前記パターン発生部と、 発生した試験パターンを前記一の試験の試験中に一部ずつパケット化して送信する前記パケット送信部と、 して機能させるプログラム。」 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(実願平3-47133号(実開平5-2249号)のCD-ROM)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は論理半導体素子(ロジックIC)を試験するための試験パターンを発生する試験パターン発生装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 図2に従来のこの種の試験パターン発生装置を示す。一連の試験パターンは試験プロセッサ(又はエンジニアリングワークステーション)11からスーパバッファメモリ12に転送される。その転送の終了後、スーパバッファメモリ12から試験パターンをパターン発生器13へ転送し、パターン発生器13から試験パターン中の試験データを図に示していない被試験IC素子へ供給し、また期待値をその被試験IC素子の出力との比較に利用する。 【0003】 パターン発生器13内での試験パターンの記憶容量は比較的小さいため、試験パターンがなくなって来るとスーパバッファメモリ12から試験パターンを転送補充している。試験プロセッサ11が接続されたネットワーク14に所属する電子計算機を通じて大容量の磁気テープや磁気ディスクなどから試験パターンをスーパバッファメモリ12に転送することもある。 【0004】 【考案が解決しようとする課題】 IC素子を試験中は、パターン発生器13はスーパバッファメモリ12より試験パターンを取り込みながら動作している。つまり試験中はパターン発生器13がスーパバッファメモリ12を使用するため、スーパバッファメモリ12への試験パターンの転送は、試験終了後に行っていた。」 「【0008】 【実施例】 図1Aに請求項1の考案の実施例を示す。この考案においては第1、第2スーパバッファメモリ11a、11bが設けられ、試験パターン供給源15から試験パターンが、第1切替え手段16により選択された第1、第2スーパバッファメモリ11a、11bの一方に転送される。試験パターン供給源15は従来と同様に試験プロセッサ(又はエンジニアリングワークステーション)11、あるいは試験プロセッサ11が接続されたネットワーク14に所属する電子計算機を通じて読出される磁気テープ装置や磁気ディスク装置などである。 【0009】 第1、第2スーパバッファメモリ11a、11bの他方が第2切替え手段17により選択されてその試験パターンがパターン発生器13へ転送される。つまり例えば第1切替え手段16により試験プロセッサ11が第2スーパバッファメモリ11bに接続され、第2切替え手段17により第1スーパバッファメモリ11aがパターン発生器13に接続され、パターン発生器13より試験パターンを発生して被IC素子を試験しながら、試験パターンが不足すると、第1スーパバッファメモリ11aから試験パターンがパターン発生器13に転送補充され、このようにしてパターン発生器13が第1スーパバッファメモリ11aを利用して試験パターンを発生している間、試験プロセッサ11から現在使用していない方の第2スーパバッファメモリ11bに対し次の試験パターンが転送される。現在実行している試験が終了すると、第1、第2切替え手段16,17を瞬時に切替えて、パターン発生器13は第2スーパバッファメモリ11bから試験パターンを転送取込み、直ちに被試験IC素子に対する試験の実行を可能とし、また更に次の試験パターンを試験プロセッサ11から第1スーパバッファメモリ11aへ転送することを行う。」 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「論理半導体素子(ロジックIC)を試験するための試験パターンを発生する試験パターン発生装置であって、(【0001】) 試験プロセッサ11が接続されたネットワーク14に所属する電子計算機を通じて読出される磁気テープ装置や磁気ディスク装置などの試験パターン供給源15と、(【0008】) 第1、第2スーパバッファメモリ11a、11bと、第1切替え手段16と(【0008】)、第2切替え手段17と、パターン発生器13と(【0009】)、 を備え、 第1切替え手段16により試験プロセッサ11が第2スーパバッファメモリ11bに接続され、第2切替え手段17により第1スーパバッファメモリ11aがパターン発生器13に接続され、パターン発生器13より試験パターンを発生して被IC素子を試験しながら、試験パターンが不足すると、第1スーパバッファメモリ11aから試験パターンがパターン発生器13に転送補充され、このようにしてパターン発生器13が第1スーパバッファメモリ11aを利用して試験パターンを発生している間、試験プロセッサ11から現在使用していない方の第2スーパバッファメモリ11bに対し次の試験パターンが転送される、(【0009】) 試験パターン発生装置。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011-137808号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0016】 図2は、本実施形態に係るテストモジュール20、テストコントローラ22およびネットワーク24のそれぞれの構成の一例を示す。各テストモジュール20は、一例として、テスト部32と、通信部40とを有する。テスト部32は、当該テストモジュール20に接続された被試験デバイス200を試験する。テストモジュール20内の通信部40は、ネットワーク24との間で通信パケットの送受信を行う。」 「【0023】 通信制御部46は、通信バッファ42の使用状態を監視する。そして、通信制御部46は、通信パケットをバッファリングする通信バッファ42の使用状態を示す使用状態パケットを、テストコントローラ22へと送信する。通信制御部46は、一例として、通信バッファ42の空き容量を監視して、空き容量が予め定められた容量未満となった場合に、使用状態パケットをテストコントローラ22へと送信する。」 「【0028】 通信部40内の通信制御部46は、試験時において、当該通信部40内の通信バッファ42の空き容量が予め定められた基準容量未満となったか否かを監視する。そして、通信制御部46は、通信バッファ42の空き容量が予め定められた基準容量未満となった場合、通信バッファ42の空き容量が予め定められた基準容量未満となったことを示す使用状態パケットを、テストコントローラ22へと送信する。これにより、テストモジュール20およびネットワーク24は、例えば下流側の回路において障害が発生して、通信パケットが通信バッファ42に滞留していることをテストコントローラ22に通知することができる。」 3.引用文献3について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2011-59110号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0012】 なおパターンリストは、試験パターンをパケット単位で指定するパケットリストであってよい。例えばパケットリストは、所定の試験機能を実行するために生成されるべき複数のパケットの識別情報を、実行されるべき順番で示すリストであってよい。 【0013】 パケットリストは、セットアップパケット、送信データパケット、ACKパケット等を順番に指定するリストであってよい。プログラム供給部134は、試験プログラムにより実行されるべき各試験機能に対応するパケットリストを生成して、後述するパケットリスト記憶部60に記憶してよい。」 4.引用文献4について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特表2010-505115号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0038】 接続、セッション又は他の形態の関連付けの生成を可能にするネットワークプロトコルは周知である。周知のネットワークプロトコルが機能モジュール間のネットワーク経路を確立するために使用されてもよい。しかし、カスタムプロトコルを含む、任意の適切なプロトコルが用いられてもよい。関連付けを支援するネットワークプロトコルは、しばしばパケットベースであり、ネットワークに接続される全てのモジュールが処理すべき特定のパケットを識別できるように、パケットについての関連付けを識別するために各パケットと共に送信されるヘッダ情報を用いてもよい。 【0039】 いくつかの実施形態では、機能モジュール間の関連付けの生成を支援するパケットベースのネットワークプロトコルは、ネットワーク210で用いられ、機能モジュール間の相互接続は、この関連付けを用いて通信するように機能モジュールをプログラムすることによって定義される。しかし、任意の適切なネットワークプロトコルが用いられてもよい。」 5.引用文献5について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(再公表特許第2008/114697号)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0043】 パターン発生制御部20は、被試験デバイス300の試験を開始する場合に、パターンリストメモリ14からパターンリストを読み出す。例えばサイト制御装置130から試験を開始する旨の命令を受けた場合に、パターン発生制御部20は、パターンリストメモリ14からパターンリストを読み出してよい。 【0044】 パターン発生制御部20は、メインメモリ40が格納したシーケンスデータ及び対応するパターンデータを、パターンリストに基づく順序で読み出す。パターン発生制御部20は、読み出したシーケンスデータを、パターン発生部70のベクタ発生部80に送信する。また、パターン発生制御部20は、読み出したパターンデータを、パターン発生部70のパターンキャッシュメモリ90に送信する。」 6.引用文献6について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2006-78394号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0010】 (第1の実施の形態) 図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るテストパターン生成管理システム14は、通信回線1を通してクライアントの情報機器8からアクセスし、半導体メモリ15のテストパターンを生成させ管理する。 【0011】 情報機器8は、テストパターン生成管理システム14へ顧客データに基づくテストパターンを生成させ、テストパターン生成管理システム14の内部へ生成したテストパターンを格納させて、キーワード検索により任意のテストパターンを閲覧することができる。 【0012】 端末2は、テストパターン管理者に対してテストパターンが生成され格納された通知を通信回線1を通して受信する。 【0013】 また、情報機器8は、検索したテストパターンを通信回線1を通して半導体テスタ9の内部に設けたメモリ10へ転送させ、半導体メモリ15を半導体テスタ9で検査させることができる。 【0014】 通信回線1は、典型的にはTCP/IPのようなインターネットプロトコルでデータの送受信を行い、クライアントが操作するブラウザ搭載の情報機器8でデータを閲覧させることができる。」 7.引用文献7について また、原査定において周知例として引用された引用文献7(国際公開第2011/132352号)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[0035]試験装置100は、データ消去試験についても同様に、規定回数以内においてデータを消去したい全てのメモリセルについてデータを消去することができた場合に、被試験メモリ10を良品と判断する。本変形例の試験装置100は、プログラム試験および/またはデータ消去試験を、試験実行に必要な他の動作と並行して実行して効率的に試験する。本変形例は、試験プログラムを実行するステップS300からパターンフェイルデータを試験部230に分配するステップS320まで、図3と略同一であるのでこれらの過程の記載を省略する。」 「[0051]以上の実施例に係る試験装置100において、試験部230は、サブコントローラ250を介して外部メモリ240にアクセスして外部メモリ240および内部メモリ235の間で試験情報を転送する例を説明した。これに代えて、試験装置100は、サブコントローラ250が試験部230を介して内部メモリ235にアクセスして外部メモリ240および内部メモリ235の間で試験情報を転送してもよい。試験装置100は、試験サイト220内部において、試験情報を分配することによって、試験情報を順次転送させてよい。」 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 まず、引用発明における「論理半導体素子(ロジックIC)を試験するための試験パターンを発生する試験パターン発生装置」は、本願発明1における「被試験デバイスを試験する試験装置」に相当する。 次に、引用発明における「磁気テープ装置や磁気ディスク装置などの試験パターン供給源15」と、本願発明1における「一の試験において、前記被試験デバイスに供給するべき試験パターンを、前記被試験デバイスの前記一の試験の試験中に発生するパターン発生部」とは、「一の試験において、前記被試験デバイスに供給するべき試験パターンを発生するパターン発生部」である点で共通する。 また、該「試験パターン供給源15」は、「試験プロセッサ11が接続されたネットワーク14に所属する電子計算機を通じて読出される磁気テープ装置や磁気ディスク装置」であることから、引用発明において「試験パターン」を送信する「送信部」、及び該試験パターンを伝送する「ネットワークを含む」「伝送部」が設けられていることは明らかであって、これらは本願発明1における「前記被試験デバイスの試験中に発生させる前記一の試験の試験パターンを、前記一の試験の試験中に一部ずつパケット化して送信するパケット送信部」及び「前記パケット送信部により送信されたパケットを伝送する、ネットワークを含むパケット伝送部」に対し、それぞれ「前記一の試験の試験パターンを送信する送信部」及び「前記送信部により送信された試験パターンを伝送する、ネットワークを含む伝送部」である点で共通するといえる。 また、引用発明における「試験パターン供給源15」にネットワークを通じて接続する「試験プロセッサ11」と、本願発明1における「前記パケット伝送部を介して伝送された試験パターンを受信するパケット受信部」とは、「前記伝送部を介して伝送された試験パターンを受信する受信部」である点で共通し、引用発明における「第1、第2スーパバッファメモリ11a、11b」と、本願発明1における「前記パケット受信部により受信された試験パターンをバッファリングするバッファ部」とは、「前記受信部により受信された試験パターンをバッファリングするバッファ部」である点で共通し、また引用発明における「パターン発生器13」は、本願発明1における「前記バッファ部から取得した試験パターンに応じた試験信号を前記被試験デバイスに供給する試験信号供給部」に相当するから、これら「試験プロセッサ11」、「第1、第2スーパバッファメモリ11a、11b」及び「パターン発生器13」を含む構成は、本願発明1の「前記パケット伝送部を介して前記パケット送信部に接続され、前記一の試験の試験中に前記パターン発生部が発生する前記一の試験の試験パターンを用いて前記被試験デバイスを試験するテストヘッド」に対し、「前記伝送部を介して前記送信部に接続され、前記パターン発生部が発生する前記一の試験の試験パターンを用いて前記被試験デバイスを試験するテストヘッド」である点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「被試験デバイスを試験する試験装置であって、 一の試験において、前記被試験デバイスに供給するべき試験パターンを発生するパターン発生部と、 前記一の試験の試験パターンを送信する送信部と、 前記送信部により送信された試験パターンを伝送する、ネットワークを含む伝送部と、 前記伝送部を介して前記送信部に接続され、前記パターン発生部が発生する前記一の試験の試験パターンを用いて前記被試験デバイスを試験するテストヘッドと、 を備え、 前記テストヘッドは、 前記伝送部を介して伝送された試験パターンを受信する受信部と、 前記受信部により受信された試験パターンをバッファリングするバッファ部と、 前記バッファ部から取得した試験パターンに応じた試験信号を前記被試験デバイスに供給する試験信号供給部と、 を有する、 試験装置。」 (相違点) (相違点1)本願発明1の「パターン発生部」は「一の試験において、・・・試験パターンを、・・・前記一の試験の試験中に発生する」ものであって、また「パケット送信部」が「前記一の試験の試験パターンを、前記一の試験の試験中に・・・送信」し、「テストヘッド」が「前記一の試験の試験中に前記パターン発生部が発生する前記一の試験の試験パターンを用いて前記被試験デバイスを試験する」とされているのに対し、引用発明は「パターン発生器13が第1スーパバッファメモリ11aを利用して試験パターンを発生している間、試験プロセッサ11から現在使用していない方の第2スーパバッファメモリ11bに対し次の試験パターンが転送される」ものであって、ある試験中には次の試験の試験パターンがバッファメモリへ転送されている点。 (相違点2)本願発明1においては「試験パターン」は「パケット送信部」が「一部ずつパケット化して送信する」ように構成されており、その後の伝送、受信も「パケット伝送部」、「パケット受信部」が行っているのに対し、引用発明においては試験パターンが送信、伝送、受信においてパケット化されているか否かは不明である点。 (相違点3)本願発明1は「前記一の試験の試験中に前記バッファ部がアンダーフローとなったことに応じて、当該試験装置に起因する試験失敗を通知する通知部」を備えるのに対し、引用発明はそのような構成は有していない点。 (2)相違点についての判断 本願発明1の内容に鑑み、上記相違点3について検討する。 相違点3に係る本願発明1の「前記一の試験の試験中に前記バッファ部がアンダーフローとなったことに応じて、当該試験装置に起因する試験失敗を通知する通知部」という構成は、上記引用文献2ないし7のいずれにも、記載も示唆もされていない。 なお、引用文献2には、被試験デバイスの試験装置において、「通信バッファ42の空き容量が予め定められた基準容量未満となった場合、通信バッファ42の空き容量が予め定められた基準容量未満となったことを示す使用状態パケットを、テストコントローラ22へと送信する。」(【0028】)構成を設けることが示されているが、これは「例えば下流側の回路において障害が発生して、通信パケットが通信バッファ42に滞留していること」(【0028】)、すなわちバッファのオーバーフローが近いことを通知するためのものであって、相違点3に係る本願発明1の上記構成とは異なる。 したがって、上記相違点1,2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし7に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2-14について 本願発明2-14も、本願発明1の「前記一の試験の試験中に前記バッファ部がアンダーフローとなったことに応じて、当該試験装置に起因する試験失敗を通知する通知部」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし7に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明15,16について 本願発明15は、本願発明1に対応する方法の発明であって、本願発明1の「前記一の試験の試験中に前記バッファ部がアンダーフローとなったことに応じて、当該試験装置に起因する試験失敗を通知する通知部」に対応する構成を備えるものであり、また本願発明16は、「コンピュータに実行されて、請求項1に記載の試験装置が用いる試験パターンを発生させるプログラム」であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし7に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1.原査定の概要 (1)本願請求項1-5,7-18に係る発明は、上記の引用文献1-6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)請求項1,2,3,18に係る発明は不明確であり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2.判断 (1)補正1及び本件補正により補正された請求項1-16は、それぞれ「前記一の試験の試験中に前記バッファ部がアンダーフローとなったことに応じて、当該試験装置に起因する試験失敗を通知する通知部」という事項、もしくはそれに対応する事項を有するものとなっており、本願発明1-16は、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 (2)補正1及び本件補正により請求項1-16の記載は明確となった。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、請求項12,13,16の記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正によって、当該請求項の記載は明確となった。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-16は、当業者が引用文献1ないし7に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-07-18 |
出願番号 | 特願2015-200330(P2015-200330) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G01R)
P 1 8・ 121- WY (G01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 越川 康弘 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
▲うし▼田 真悟 中塚 直樹 |
発明の名称 | 試験装置、試験信号供給装置、試験方法、およびプログラム |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |