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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1342392
審判番号 不服2016-10426  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-08 
確定日 2018-07-11 
事件の表示 特願2014-179764「電子記述言語スクリプトを使用してプロセス制御システムを構成する方法、装置及び製造品」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月15日出願公開、特開2015-8010〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年2月17日(パリ条約による優先権主張2009年2月19日、アメリカ合衆国)を出願日とする特願2010-32263号の一部を平成26年9月4日に新たな特許出願としたものであって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年7月29日付け :拒絶理由の通知
平成27年11月4日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年3月4日付け :拒絶査定
平成28年7月8日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書
の提出
平成29年8月21日付け :拒絶理由の通知
平成29年11月17日 :意見書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年7月8日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。

「プロセスプラントを表す第1のスクリプトをロードするステップであって、前記第1のスクリプトは電子記述言語に従い前記プロセスプラントの複数の非制御コンポーネントと前記プロセスプラントのためのプロセス制御システムの複数の制御コンポーネントとの間の相互接続を表す、解釈可能なシステムレベルスクリプトを含み、前記第1のスクリプトは前記プロセス制御システムの複数のコンポーネント間の所定の数および所定のタイプの相互接続を定義するために使用される、ステップと、
前記第1のスクリプトをコンパイルして第2のスクリプトを形成するステップであって、前記第2のスクリプトは前記プロセスプラントのための特定のプロセス制御システムに関連するベンダー固有の構成言語に従って前記複数の制御コンポーネントの1つ以上によって利用されるステップと、
前記プロセス制御システムに関連付けられている構成データベースに前記第2のスクリプトをインポートするステップと、
前記第2のスクリプトに基づいて操作データベースを生成するステップと、
前記操作データベースに基づいて前記プロセス制御システムを構成するステップと、
を含む方法。」(以下「本願発明」という。)

第3 引用文献・引用発明

1.引用文献1の記載事項及び引用発明

(1)本願の優先日前に頒布され、当審が上記平成29年8月21日付けの拒絶理由通知において引用した、米国特許出願公開第2008/91376号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の記載がある。

ア 「BACKGROUND OF THE INVENTION
[0002] In industrial settings, control systems are used to monitor and control inventories of industrial and chemical processes, and the like. Typically, the control system performs these functions using field devices distributed at key locations in the industrial process and coupled to the control circuitry in the control room by control loop. The term "field device" refers to any device that performs a function in a distributed control or process monitoring system, including all devices used in the measurement, control and monitoring of industrial processes.」
(当審訳:本発明の背景
工業的状況では、工業及び化学プロセスのインベントリなどをモニタリングし、制御するために制御システムが使用される。通常、制御システムは、工業プロセス中の主要な場所に分散し、制御ループによって制御室中の制御回路に結合されたフィールド装置を使用してそのような機能を実行する。「フィールド装置」とは、工業プロセスの計測、制御及びモニタリングで使用されるすべての装置を含む、分散制御又はプロセスモニタリングシステムにおける機能を実行する任意の装置をいう。)

イ 「[0031] To develop a device description (DD) source file (written in human-readable format) for a field device, a developer uses the DDL for the communication protocol associated with that device to describe core or essential characteristics of the device as well as to provide group-specific, and vendor-specific definitions relating to each function and special feature of the field device, as defined by the above-identified categories of information. Thereafter, the developed DD source file may be compiled into a binary format to produce a machine-readable file or a DD object file using, for example, a tokenizer. Device description object files are typically provided to a user by the device manufacturer or third-party developers to be stored in a host system, such as a field device management system. Although device description language and device descriptions are generally known in the art, additional information pertaining to specific functions and formats of DDL's and the fieldbus DDL in particular, can be found in the InterOperable systems project foundation manual entitled "InterOperable System Project Fieldbus Specification Device Description Language" (1993). A similar document pertaining to the HART DDL is provided by the HART Communication Foundation.」
(当審訳:フィールド装置のための装置記述(DD)ソースファイル(人間読み取り可能なフォーマットで書かれている)を開発するためには、開発者は、先に識別した情報のカテゴリーによって定義されるように、その装置に関連する通信プロトコルのDDLを使用して、装置のコア又は本質的特性を記述し、フィールド装置の各機能及び特徴に関するグループ固有及び売り手固有の定義を提供する。その後、たとえばトークナイザを使用して、開発されたDDソースファイルを二進フォーマットにコンパイルして、機械読み取り可能なファイル又はDDオブジェクトファイルを生成することができる。装置記述オブジェクトファイルは通常、装置製造者又は第三者開発者によってユーザに提供されて、ホストシステム、たとえばフィールド装置管理システム中に記憶される。装置記述言語及び装置記述は当該技術分野で一般に公知であるが、DDL、特にフィールドバスDDLの特定の機能及びフォーマットに関連するさらなる情報は、「InterOperable System Project Fieldbus Specification Device Description Language」と題するInterOperableシステムプロジェクトファンデーションマニュアル(1993)に見いだすことができる。HART DDLに関する同様な文書がHART Communication Foundationによって提供されている。)

ウ 「[0032] More recently, electronic device description language (EDDL) has been developed and now standardized as IEC Standard 61804-3. The new EDDL is fully backward compatible to 1990. Device descriptions for more than 20 million compatible instruments are installed in the field and can be readily accessed.」
(当審訳:より最近には、電子装置記述言語(EDDL)が開発され、今やIEC規格61804-3として標準化されている。この新規なEDDLは1990に対して完全に後方互換性である。2000万を超える互換機のための装置記述がフィールドに設置されており、容易にアクセスすることができる。)

エ 「[0033] At block 604 , the relevant device description can be pre-loaded into the calibrator, such as prior to the field technician's excursion into the field, as indicated at block 606 , or can be obtained once the calibrator is coupled to the field device. This situation is indicated at block 608 . In this regard, the calibrator can obtain the device description either directly from the attached field device, or can identify the field device, via a tag, or other suitable information, such as a radio frequency identification (RFID) tag and subsequently access a database, via wireless communication through the internet, or another suitable network, to obtain the relevant device description. As illustrated at block 610 , the device description can be that previously formed from the device description language (DDL), or can be the newer electronic device description language, as indicated at block 612 . Once the device description is accessed, block 614 executes where at least one calibration task is generated by the calibrator based upon the device description. Thus, if the device description indicates that the field device is a process fluid pressure transmitter having a range from 0 to 1000 PSI, suitable calibration tasks generated by the calibrator might include a test with a 0 pressure, a test with a 500 PSI pressure, and a test with a 1000 PSI pressure. Additionally, block 614 can include the field technician specifying additional calibration tasks via user interface 126 (shown in FIG. 1 ). At block 616 , the calibration of the field device begins. At block 616 , a known input is generated to the field device. Control then passes to block 618 where the calibrator reads the field device's output related to the known input. Next, at block 620 , it is determined whether the field device's measurement of the known input is within an acceptable tolerance. This step can be done either automatically via a program resident within the calibrator, or can be overridden or otherwise manually set, by the field technician. If the field device's measurement is not within tolerance, control passes to block 622 where the field device is adjusted by the technician. After block 622 , control passes to block 624 , which is where control passes if the field device's measurement was within tolerance. At block 624 , it is determined whether all calibration tasks for the field device are complete. If so, control passes along line 626 and method 600 ends. However, if not all calibration tasks are complete, control passes along line 628 to block 630 which moves to the next task, and returns to block 616 to generate the next known input to the field device.」
(当審訳:ブロック604で、該当する装置記述を、ブロック606に示すように、たとえばフィールド技術者がフィールドに入る前に校正器にプレロードすることもできるし、ひとたび校正器がフィールド装置に結合されたのちに得ることもできる。この状況がブロック608に示されている。これに関して、校正器は、装置記述を、取り付けられたフィールド装置から直接得ることもできるし、タグ又は他の適切な情報、たとえば無線周波数識別(RFID)タグを介してフィールド装置を識別したのち、インタネット又は別の適切なネットワークを介するワイヤレス通信によってデータベースにアクセスして該当する装置記述を得ることもできる。ブロック610に示すように、装置記述は、装置記述言語(DDL)から事前に形成されたものであることもできるし、ブロック612に示すように、比較的新しい電子装置記述言語であることもできる。ひとたび装置記述がアクセスされると、ブロック614が実行され、そこで、装置記述に基づいて少なくとも一つの校正タスクが校正器によって生成される。したがって、装置記述が、フィールド装置が0?1000PSIの範囲を有するプロセス流体圧力トランスミッタであることを示すならば、校正器によって生成される適切な校正タスクは、0圧力での試験、500PSI圧力での試験及び1000PSI圧力での試験を含むかもしれない。さらには、ブロック614は、フィールド技術者がユーザインタフェース126(図1に示す)を介してさらなる校正タスクを指定することを含むことができる。ブロック616で、フィールド装置の校正が始まる。ブロック616で、既知の入力をフィールド装置に対して生成する。次いで、制御はブロック618に移動し、そこで、校正器が、既知の入力に関連したフィールド装置の出力を読む。次に、ブロック620で、既知の入力のフィールド装置の計測値が許容可能な公差範囲内であるかどうかを決定する。このステップは、校正器内に常駐するプログラムによって自動的に実施されることもできるし、フィールド技術者によって無効化される又は他のやり方で手作業で設定されることもできる。フィールド装置の計測値が公差範囲内にないならば、制御はブロック622に移動し、そこで、フィールド装置は技術者によって調節される。ブロック622ののち、制御は、フィールド装置の計測値が公差範囲内であった場合に移動するところであるブロック624に移動する。ブロック624で、フィールド装置のためのすべての校正タスクが完了したかどうかを決定する。完了したならば、制御はライン626に沿って移動し、方法600は終了する。しかし、すべての校正タスクが完了したわけではないならば、制御はライン628に沿ってブロック630に移動し、次のタスクに移動し、ブロック616に戻ってフィールド装置への次の既知の入力を生成する。)

(2)引用文献1に記載された発明

ア 上記(1)イには、「装置記述(DD)ソースファイル」が、「フィールド装置」のためのものであると記載され、また、上記(1)アには、「制御システム」が、工業的及び化学的プロセスを多数のフィールド装置を用いることによって制御するためのものであり、「制御システム」の機能が、「フィールド装置」を用いて実現されるものであると記載されているから、引用文献1の「装置記述(DD)ソースファイル」が「プロセスプラントを表すもの」であるのは明らかである。
また、上記(1)イには、「装置記述(DD)ソースファイル」が、「トークナイザ」によってコンパイルされることが記載されており、コンパイルする前に「装置記述(DD)ソースファイル」の読み込みがなされるのは技術的に明らかである。
よって、引用文献1において、プロセスプラントを表す「装置記述(DD)ソースファイル」が読み込まれる段階が存在するのは明らかである。

イ 上記(1)イないし(1)エには、「装置記述(DD)ソースファイル」は、「電子装置記述言語(EDDL)」で記述された「人間読み取り可能」なものであると記載されている。
また、上記(1)アには、「制御システム」が、工業的及び化学的プロセスを制御するためのものであると記載されているから、「制御システム」が「プロセス制御システム」であるのは明らかである。
さらに、上記(1)イには、「装置記述(DD)ソースファイル」が、「フィールド装置」のためのものであると記載されているところ、一般的にフィールドデバイスの分野における装置記述とは、フィールドデバイスの種別や出力情報のタイプに関するパラメータ情報を指すことから、「装置記述(DD)ソースファイル」が、「フィールド装置」に関する所定の状態や関係を定義するために使用されるものであるのも明らかである。
よって、引用文献1において、「装置記述(DD)ソースファイル」が、上記アにおける段階において、「電子装置記述言語(EDDL)」で記述された「人間読み取り可能」な「ファイル」であり、プロセス「制御システム」の「フィールド装置」に関する所定の状態や関係を定義するために使用されるのは明らかである。

ウ 上記ア及びイからみて、引用文献1において、プロセスプラントを表す装置記述(DD)ソースファイルが読み込まれる段階であって、前記装置記述(DD)ソースファイルが、「電子装置記述言語(EDDL)」で記述された「人間読み取り可能」な「ファイル」であり、プロセス「制御システム」の「フィールド装置」に関する所定の状態や関係を定義するために使用される段階が存在するのは明らかである。

エ 上記(1)イには、「装置記述(DD)ソースファイル」をコンパイルして「機械読み取り可能なファイル」を形成することが記載されている。
よって、引用文献1において、装置記述(DD)ソースファイルをコンパイルして機械読み取り可能なファイルを形成する段階が存在するのは明らかである。

オ 上記(1)イには、「機械読み取り可能なファイル」が「フィールド装置」のためのものであると記載されている。
よって、引用文献1において、「機械読み取り可能なファイル」が、上記エにおける段階で、「フィールド装置」のために利用されるのは明らかである。

カ 上記エ及びオからみて、引用文献1において、装置記述(DD)ソースファイルをコンパイルして機械読み取り可能なファイルを形成する段階であって、機械読み取り可能なファイルがフィールド装置のために利用される段階が存在するのは明らかである。

キ 上記(1)イには、コンパイルにより、「機械読み取り可能なファイル」又は「装置記述(DD)オブジェクトファイル」を生成し、「装置記述(DD)オブジェクトファイル」を「フィールド装置管理システム」に記憶することが記載されており、「機械読み取り可能なファイル」が生成されれば、「装置記述(DD)オブジェクトファイル」と同様、「フィールド装置管理システム」に記憶することは技術的に明らかである。
よって、引用文献1において、機械読み取り可能なファイルを、フィールド装置管理システムに記憶する段階が存在するのは明らかである。

ク そして、上記アないしキを総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。) が記載されている。

「プロセスプラントを表す装置記述(DD)ソースファイルが読み込まれる段階であって、前記装置記述(DD)ソースファイルが、電子装置記述言語(EDDL)で記述された人間読み取り可能なファイルであり、プロセス制御システムのフィールド装置に関する所定の状態や関係を定義するために使用される段階と、
前記装置記述(DD)ソースファイルをコンパイルして機械読み取り可能なファイルを形成する段階であって、前記機械読み取り可能なファイルが、フィールド装置のために利用される段階と、
前記機械読み取り可能なファイルを、フィールド装置管理システムに記憶する段階と、
を含む方法。」

2.引用文献2の記載事項及び技術的事項

(1)本願の優先日前に頒布され、当審が上記平成29年8月21日付けの拒絶理由通知において引用した、特開2007-122697号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に次の記載がある。

ア 「【0007】
現在、通常、プロセスプラントと関連付けられている複雑な情報技術システム、及びこの技術の様々なユーザと製品とともにそれと関連付けられる莫大なデータのために、プロセスプラント内またはプロセスプラントと関連付けられている多様なパーツまたは構成部品は、一般的に、様々な規格、機能性、及び特長を有する多岐にわたる異なる通信フォーマットとデータ構造を使用して相互に通信する。例えば、送信機、バルブポジショナ、アナライザ、センサ、スイッチ等のインテリジェントフィールドデバイスは、デバイス記述(DD)、電子デバイス記述言語(EDDL)、デバイスタイプマネージャ(DTM)等を含む多様なプロセス制御に特化した業界データ規格を通してそこに含まれている情報を露呈する。さらに、これらのデバイスはHART、Fieldbus、Profitbus等のフォーマット等の種々の通信フォーマットを使用して通信する。同様に、プロセスコントローラは、通常、その中に含まれている情報を、Modbus IP、InternetIP、OPC、ProfitNet及び他のもののような様々な多様な業界規格と独自仕様の規格を通して露呈する。一般的には、OPCはプラント内の、またはプロセス制御システムと関連付けられている多様なデバイスまたはコンピュータを提供するまたは相互接続するために通信規格として使用される一方、IOC自体もOPC UA(ユニバーサルアクセス)、OPC DA(データアクセス)、OPC HDA(履歴データアクセス)及びPC AE(アラームとイベント)等の多くの規格を有する。さらに複雑なデータは、通常OPC UAプロトコル、AEプロトコル、及びDAプロトコルを使用して送信される。同様に、プロセスプラント内のオペレータインタフェースは、通常、コントローラ及び他のプロセス制御装置から情報を取得するために、OPC、SQL、ProfiNet、Modbus IP、Devicenet、modbus 485等の独自仕様のプロトコルを使用する。別の例として、プロセスプラント内で使用されているアラーム分析ソフトウェアは、通常、OPC、SQL、ProfiNet、Modbus IP、Devicenet、modbus 485等の独自仕様のフォーマットとオープン規格ベースのフォーマットの両方を使用してその情報を受信する。」

イ 「【0025】
公知であるように、一例として、Emerson Process Managementによって販売されているDeltaV(商標)であってよいコントローラ112の各々は、任意の数の様々な無関係に実行されている制御モジュールまたはブロック129を使用して制御戦略を実現するコントローラアプリケーションを記憶し、実行する。制御モジュール129の各々は、機能ブロックと一般的に呼ばれているものから構成することができ、各機能ブロックは全体的な制御ルーチンの一部つまりサブルーチンであり、プロセスプラント110内でプロセス制御ループを実現するために他の機能ブロックと連動して動作する。周知であるように、オブジェクト指向プログラミングプロトコルのオブジェクトであってよい機能ブロックは、通常、送信機、センサ、または他のプロセスパラメータ測定装置と関連付けられているもの等の入力機能、PID、ファジーロジック等、制御を実行する制御ルーチンと関連付けられているもの等の制御機能、あるいはプロセスプラント110の中で一部の物理的な機能を実行する、バルブ等のなんらかのデバイスの動作を制御する出力機能の内の1つを実行する。モデル予測コントローラ(MPC)、最適化プログラム等の、ハイブリッド及び他のタイプの複雑な機能ブロックが存在することは言うまでもない。Fieldbusプロトコル及びDeltaVシステムプロトコルは、オブジェクト指向プログラミングプロトコルで設計され、実現される制御モジュール及び機能ブロックを使用するが、制御モジュールは例えばシーケンシャル機能ブロック、ラダー論理等を含む任意の所望の制御プログラミング方式を使用して設計され、機能ブロックまたは他の特定のプログラミング技法を使用して設計され、実現されることに限定されない。」

(2)引用文献2に記載された技術的事項

ア 上記摘記事項(1)ア及び(1)イを総合すると、引用文献2には、次の技術的事項が記載されている。

「プロセスプラント110を電子装置記述言語(EDDL)で記述したスプリクトを用いるプロセス制御システムにおいて、フィールドデバイス114のコントローラとしてDeltaVを備えた技術。」

第4 引用発明との対比

1.本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用文献1の「プロセスプラントを表す装置記述(DD)ソースファイルが読み込まれる段階であって、前記装置記述(DD)ソースファイルが、電子装置記述言語(EDDL)で記述された人間読み取り可能なファイルであり、プロセス制御システムのフィールド装置に関する所定の状態や関係を定義するために使用される段階」と、本願発明の「プロセスプラントを表す第1のスクリプトをロードするステップであって、第1のスクリプトは電子記述言語に従い前記プロセスプラントの複数の非制御コンポーネントと前記プロセスプラントのためのプロセス制御システムの複数の制御コンポーネントとの間の相互接続を表す、解釈可能なシステムレベルスクリプトを含み、前記第1のスクリプトは前記プロセス制御システムの複数のコンポーネント間の所定の数および所定のタイプの相互接続を定義するために使用される、ステップ」とは、「プロセスプラントを表す第1のスクリプトをロードするステップであって、前記第1のスクリプトは電子記述言語に従い」、「解釈可能な」「スクリプトを含み」「第1のスクリプトは」「プロセス制御システムの」「コンポーネント」に関する所定の状態や関係を「定義するために使用されるステップ」である点で一致する。

(2)引用発明の「フィールド装置」が、プロセスプラントのためのプロセス制御システムの特定の部分に関連するものであって、ベンダー固有の言語に従って動作するものであることは技術常識である。
よって、引用発明の「前記装置記述(DD)ソースファイルをコンパイルして機械読み取り可能なファイルを形成する段階であって、前記機械読み取り可能なファイルが、フィールド装置のために利用される段階」は、本願発明の「前記第1のスクリプトをコンパイルして第2のスクリプトを形成するステップであって、前記第2のスクリプトは前記プロセスプラントのための特定のプロセス制御システムに関連するベンダー固有の構成言語に従って前記複数の制御コンポーネントの1つ以上によって利用されるステップ」とは、「前記第2のスクリプトは前記プロセスプラントのための特定のプロセス制御システムに関連するベンダー固有の構成言語に従って」「制御コンポーネントの1つ以上によって利用されるステップ」である点で一致する。

(3)引用発明の「フィールド装置管理システム」が「機械読み取り可能なファイル」という構成を記憶するデータベースを有していることや、「フィールド装置管理システム」が「プロセス制御システム」に関連付けられていることは明らかである。
よって、引用発明の「前記機械読み取り可能なファイルを、フィールド装置管理システムに記憶する段階」は、本願発明の「プロセス制御システムと関連付けられている構成データベースに第2のスクリプトをインポートするステップ」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「プロセスプラントを表す第1のスクリプトをロードするステップであって、第1のスクリプトは電子記述言語に従い、解釈可能なスクリプトを含み、前記第1のスクリプトはプロセス制御システムのコンポーネントに関する所定の状態や関係を定義するために使用される、ステップと、
第1のスクリプトをコンパイルして第2のスクリプトを形成するステップであって、前記第2のスクリプトは前記プロセスプラントのための特定のプロセス制御システムに関連するベンダー固有の構成言語に従って制御コンポーネントの1つ以上によって利用されるステップと、
プロセス制御システムと関連付けられている構成データベースに第2のスクリプトをインポートするステップと、
を含む方法。」

<相違点1>
本願発明では、「第1のスクリプト」が、「電子記述言語に従いプロセスプラントの複数の非制御コンポーネントと前記プロセスプラントのためのプロセス制御システムの複数の制御コンポーネントとの間の相互接続を表す、解釈可能なシステムレベルスクリプトを含み、」「前記プロセス制御システムの複数のコンポーネント間の所定の数および所定のタイプの相互接続を定義するために使用される」のに対し、引用発明では、「第1のスクリプト」が、「電子記述言語に従い」、「解釈可能な」「スクリプトを含み」「プロセス制御システムの」「コンポーネント」に関する所定の状態や関係を「定義するために使用される」ものの、「非制御コンポーネント」と「制御コンポーネント」との間の相互接続を表しているのか否か、特定されておらず、それ故、複数の「コンポーネント」間の所定の数および所定のタイプの相互接続を定義するために使用されているのか否かも、特定されていない点。

<相違点2>
本願発明では、「プロセス制御システムに関連付けられている構成データベースに第2のスクリプトをインポートするステップと、前記第2のスクリプトに基づいて操作データベースを生成するステップと、前記操作データベースに基づいて前記プロセス制御システムを構成するステップ」を含んでいるのに対し、引用発明では、「第2のスクリプトに基づいて操作データベースを生成するステップと、前記操作データベースに基づいてプロセス制御システムを構成するステップ」を含んでいない点。

2.判断

(1)相違点1について
ア 引用文献1の段落[0032]に記載されているように、「電子装置記述言語(EDDL)」は、1990年までの「フィールド装置」に対しては遡って互換性があるものの、「電子装置記述言語(EDDL)」の出現時以降に開発された新たな「装置」については、「電子装置記述言語(EDDL)」と互換性があるとは限らないことが普通に想定されるところ、技術の進展に伴い、そのような互換性のない新たな「装置」を、新たにプロセスプラントを構築する際に混在させたり、既存のプロセスプラントに追加させようとする要請は、当業者に普通に想定される事項である。
そして、そもそも互換性は「電子装置記述言語(EDDL)」を特徴付ける機能の1つであるから、上記したような、互換性のある「フィールド装置」と互換性の無い新たな「装置」とが混在したプラント制御システムに対応すべく、従来の互換性のある「フィールド装置」のみならず、互換性の無い新たな「装置」も記述可能なように、既存の「電子装置記述言語(EDDL)」における互換性の範囲を拡げ、従来の互換性のある「フィールド装置」と互換性の無い新たな「装置」との間の相互接続を定義可能にしようとすることは当業者が容易に想到し得ることである。

イ ここで、本願発明における「非制御コンポーネント」の意味するところについて検討すると、まず、本願当初明細書の段落【0002】の「【背景技術】・・・電子デバイス記述言語(EDDL)は、ホストプロセス制御システムの制御コンポーネントによるフィールドデバイスの解釈、制御および/または管理を容易にするために、プロセスプラントのフィールドデバイスを記述および規定する構造化および標準化された形式を提供するために使用されている。・・・」との記載から、従来、電子デバイス記述言語(EDDL)が制御コンポーネントを対象としていたことが読み取れるところ、及び、同段落【0007】には「・・・これまで、電子デバイス記述言語(EDDL)およびEDLスクリプトは、プロセス制御システムのフィールドデバイスを定義、記述および/または別様に規定するためだけに使用された。対照的に、本明細書に説明される例示的なEDLスクリプトは、プロセス制御システムの任意の数および/またはタイプの追加および/または代替の制御および/または非制御コンポーネントを定義、記述および/または別様に規定するために使用可能である。・・・」と記載されていることからみて、同明細書には、従来、電子記述言語は、制御コンポーネントを定義するためだけに使用されていたところ、同明細書に説明される電子記述言語は、「非制御コンポーネント」を定義するためにも使用可能としたものである旨開示されていると認められる。
そして、同段落【0007】には、「EDLスクリプトを用いてこれまでに定義されていないプロセス制御システムの例示的なコンポーネント」すなわち例示的な「非制御コンポーネント」として、「コントローラ、操作ワークステーション、入力/出力(I/O)カード、ルータ、スイッチ、ハブ、ファイアウォール、電源装置、および/またはI/Oゲートウェイ」が挙げられており、同段落【0017】の「例えば、プロセスプラントおよび/またはプロセス制御システムは、Emerson Process ManagementのFisher-Rosemount Systems,Inc.により販売されているDeltaVプロセス制御システム等、プロセス制御システムにより管理および/または制御可能なファイアウォール、スイッチ、ルータ、ハブ、電源装置、および/または他のデバイスを含み得る。」との記載を踏まえると、「非制御コンポーネント」はコントローラにより制御可能なものであると認められる。
したがって、本願発明の「非制御コンポーネント」は、コントローラにより制御可能ではあるものの、従来の電子記述言語に対しては互換性のなかった「コンポーネント」を意味すると解するのが相当である。

ウ そうすると、上記アに示した、互換性のない新たな「装置」は、「非制御コンポーネント」に他ならない。
よって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明と引用文献1に記載の事項とから、当業者が容易に想到することができたものである。

(2)相違点2について

本願発明における「前記プロセス制御システムに関連付けられている構成データベースに前記第2のスクリプトをインポートするステップと、前記第2のスクリプトに基づいて操作データベースを生成するステップと、前記操作データベースに基づいて前記プロセス制御システムを構成するステップ」は、本願当初明細書の段落【0022】及び図2を参照すると、「DeltaV」というコントローラの構成に基づくものであるところ、引用文献2の技術的事項におけるコントローラも同じく「DeltaV」であるから、同様のステップを備えるものと認められる。
そして、引用発明も「フィールド装置」のためのコントローラを備えていることが明らかであり、さらに、引用発明と引用文献2の技術的事項は、「電子装置記述言語(EDDL)」で記述されたスクリプトを用いるプロセス制御システムにおけるコントローラに関する点で共通するから、引用文献2の技術的事項を引用発明に適用し、引用発明のコントローラとして、引用文献2の「DeltaV」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明と引用文献2に記載の技術的事項とから、当業者が容易に想到することができたものである。

(3)したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の従来公知の事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。

3.審判請求人の主張について

審判請求人は審判請求書の第3ページ第12行?第18行で「引用文献1?3には、複数の非制御コンポーネント (例えば、a controller, an operator workstation, an input/output (I/O) card, a router, a switch, a hub, a firewall, a power supply, and/or an I/O gateway)の間の相互接続を表すDDLやEDDL (又はscript)は開示されていません。
引用文献1?3には、「前記プロセス制御システムの複数のコンポーネント間の所定の数および所定のタイプの相互接続を定義するために使用される」「前記第1のスクリプト」は開示されていません。」と主張している。
しかしながら、「引用文献1?3には、複数の非制御コンポーネント (例えば、a controller, an operator workstation, an input/output (I/O) card, a router, a switch, a hub, a firewall, a power supply, and/or an I/O gateway)の間の相互接続を表すDDLやEDDL (又はscript)は開示されていません。」については、本願発明1では、「相互接続」として、「複数の非制御コンポーネントと・・・複数の制御コンポーネントとの間」のものを含むとされているに留まり、非制御コンポーネント間のものが発明特定事項とされている訳ではないから、引用文献1?3に、複数の非制御コンポーネントの間の相互接続を表すDDLやEDDL (又はscript)が開示されていないことは、本願発明の容易想到性の判断に影響するものではない。
また、「引用文献1?3には、「前記プロセス制御システムの複数のコンポーネント間の所定の数および所定のタイプの相互接続を定義するために使用される」「前記第1のスクリプト」は開示されていません。」については、上記した3.(1)で相違点1について判断したとおり、引用発明と引用文献1に記載の事項とから、当業者が容易に想到することができたものである。
よって、上記主張は採用できない。

4.結言

したがって、本願発明は、引用発明及び従来公知の事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-08 
結審通知日 2018-02-13 
審決日 2018-03-01 
出願番号 特願2014-179764(P2014-179764)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 柏原 郁昭
平岩 正一
発明の名称 電子記述言語スクリプトを使用してプロセス制御システムを構成する方法、装置及び製造品  
代理人 加藤 和詳  
代理人 西元 勝一  
代理人 中島 淳  

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