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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04F
管理番号 1342400
審判番号 不服2017-7330  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-22 
確定日 2018-08-03 
事件の表示 特願2012- 62948「内装シート」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月30日出願公開、特開2013-194434、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月20日の出願であって、平成27年12月14日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年2月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年7月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年9月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月16日付けで平成28年9月30日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年4月20日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年6月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年2月16日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1 平成29年2月16日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
平成28年9月30日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1-3に係る発明は、下記引用文献A-Eに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成28年9月30日付けの補正は却下すべきものである。

引用文献:
A.特開平6-179788号公報
B.特開2000-191993号公報(周知技術を示す文献)
C.特開平10-175270号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2011-32657号公報(周知技術を示す文献)
E.特開2010-84391号公報(周知技術を示す文献)

2 原査定(平成29年2月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-3に係る発明は、上記引用文献A-Eに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献:
1.特開平7-304919号公報(当審において新たに引用した文献)
2.特開平6-179788号公報(拒絶査定時の引用文献A)
3.特開平10-212818号公報(当審において新たに引用した文献)
4.登録実用新案第3043513号公報(当審において新たに引用した文献)
5.特開2010-84391号公報(拒絶査定時の引用文献E)
6.特開2011-32657号公報(拒絶査定時の引用文献D)

第4 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成30年6月22日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-3は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤5重量部?60重量部とシリコーン系共重合体1重量部?10重量部と50重量部未満の充填剤とを含有する樹脂組成物のみからなり、上面に凸部及び凹部がなだらかに連続する微細な凹凸を形成する表面層を有し、前記可塑剤がフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、アゼライン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤から選ばれる少なくとも一種以上のみであることを特徴とする内装シート。
【請求項2】
前記シリコーン系共重合体がシリコーン‐アクリル系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の内装シート。
【請求項3】
前記表面層の算術平均粗さRaが1μm?15μmである請求項1または2のいずれかに記載の内装シート。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は、当審決で付した。以下同じ。)

「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、各種建築物に使用される内装材として好適な耐汚染性に優れ、かつ汚れの除去が容易な樹脂組成物、および少なくとも表面層が該樹脂組成物からなる床材に関する。」

「【0003】本発明は、内装材の少なくとも表面層を構成する素材として用いれば、内装材の表面に汚れが付着し難く、したがって内装材の洗浄(清掃)頻度を低減させることができ、また汚れが付着した場合でも、例えば水を用いた洗浄のみでも速やかに、かつ容易に除去することができる優れた防汚能を有する内装材を得ることができる樹脂組成物、および少なくとも表面層が該樹脂組成物により形成された優れた防汚能を有する床材を提供することを目的とする。」

「【0004】【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の樹脂組成物は、可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物において、該可塑剤の50?100重量%が耐汚染性可塑剤としてのテキサノールイソブチレートおよび/または安息香酸エステル系可塑剤であることを特徴とする。」

「【0006】また、本発明の床材は、少なくとも表面層が上記の樹脂組成物からなることを特徴とする。」

「【0008】上記の塩化ビニル系樹脂は、一般に可塑剤を含有させて使用するものであるが、本発明の樹脂組成物においては、可塑剤の50?100重量%が、耐汚染性可塑剤としてのテキサノールイソブチレートおよび/または安息香酸エステル系可塑剤である。」

「【0009】また、本発明の樹脂組成物に含まれる全可塑剤量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、25?70重量部程度である。」

「【0017】本発明の樹脂組成物においては、必要に応じて、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、ジフェニルデシルホスファイトなどの有機ホスファイト系化合物、有機スズ系化合物などの安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填剤、防カビ剤、着色剤などを配合してもよい。これらの添加剤の種類や添加量は、従来から塩化ビニル系樹脂に使用されている種類のものを、従来から採用されている量で添加すればよく、特に制限されない。」

「【0018】本発明の樹脂組成物は、カレンダー成形法、押出成形法、射出成形法、ペーストコーティング法などのような、従来の塩化ビニル系樹脂において行われている成型法により成形され、床材、壁材、天井材などのような建築物の内装材として好ましく使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、これらの内装材以外にも使用可能であることは言うまでもない。」

「【0019】本発明の防汚能を有する樹脂組成物は、各種性状を呈する塵埃などの汚れが付着し易い床材の表面層として特に有用である。」

「【0020】本発明の防汚能を有する床材は、少なくとも表面層が、全可塑剤の50?100重量%を耐汚染性可塑剤であるテキサノールイソブチレートおよび/または安息香酸エステル系可塑剤とした塩化ビニル系樹脂組成物から構成されていればよく、その下層はどのような層構成であってもよい。」

「【0022】・・・さらに、本発明の防汚能を有する床材は、必要に応じて従来の床材と同様にしてエンボス加工などを施してもよい。」

「【0034】実施例4?9
表4?5に示す配合割合にて樹脂組成物のペーストを調製し、裏打紙上にロールコーターにて厚さ0.3mmのコート層を形成した。得られたコート層について、実施例1?3および比較例1と同様の防汚試験を行い、この結果を表6に示した。」

「【0038】実施例10?15、比較例2
実施例4?9および比較例1で用いた組成物からなる表面層を有する床材を調製し、工場事務所の入口に施工して1カ月間実用試験を行い、耐汚染性と清掃性を、表7に示す評価基準で評価した。この結果を表8に示す。」

「【0041】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の樹脂組成物によれば、汚れが付着し易い合成樹脂製品、例えば、床材、壁材、天井材などの建築物の内装材などの素材として使用する場合、汚れが付着し難いのみならず、汚れても容易に除去することができる。したがって、クリーニング回数を大幅に削減することができる。この結果として、クリーニングに要する人員やコストを大幅に低減することができるとともに、上記のような本発明の樹脂組成物からなる製品の耐用年数を大幅に延長させることもできる。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤25重量部?70重量部と無機充填剤とを含有する樹脂組成物のみからなり、上面にエンボス加工による凹凸を形成する表面層を有し、可塑剤の50?100重量%が耐汚染性可塑剤としてのテキサノールイソブチレートおよび/または安息香酸エステル系可塑剤であるシート状の床材。」

2 引用文献2?6、引用文献B、Cについて
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献2の段落【0001】、【0008】及び【0052】の【表3】における実施例4の記載からみて、当該引用文献2には、「(A)ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、(B)ポリカルボン酸エステル系可塑剤5?150重量部、(C)アクリル変性ポリオルガノシロキサン5?100重量部を配合し、充填材として重質炭酸カルシウム10重量部を配合して成るポリ塩化ビニル系樹脂成形材料」が記載されていると認められる。

(2)当審拒絶理由に引用された引用文献3の段落【0001】、【0013】及び【図1】の記載からみて、当該引用文献3には、「床材表面に適用す合成樹脂トップコートであって、床材の一般的課題である防滑性、清掃性の性能向上を目的として、上面に波形状や連続又は不連続凹凸状に仕上げる」という技術的事項が記載されていると認められる。

(3)当審拒絶理由に引用された引用文献4の【0001】、【0003】、【0005】、【0009】、【0014】、【図1】の記載からみて、当該引用文献4には、「床材表面に適用する樹脂部材の床材シートであって、床材の一般的課題である清掃性の性能向上を目的として、上面全体に連通しない凹陥部の多数集合した凹凸模様を形成する」という技術的事項が記載されていると認められる。

(4)当審拒絶理由に引用された引用文献5の【0001】、【0009】、【0023】、【0024】の記載からみて、当該引用文献5には、「床材表面に適用する合成樹脂製床シートであって、床材の一般的課題である防滑性、清掃性等を性能向上を目的として、上面に微細な凹凸を形成する」という技術的事項、及び、「樹脂部材の表面層に微細な凹凸を設ける際に、当該表面層の算術平均粗さRaを2μm?15μm内となるように設定する」という技術的事項が記載されていると認められる。

(5)当審拒絶理由に引用された引用文献6の【0007】、【0008】、【0011】、【0030】の記載からみて、当該引用文献6には、「床材表面に適用する合成樹脂製の床シートであって、床材の一般的課題である防滑性、耐汚染性の性能向上を目的として、上面に凹凸表面を形成する」という技術的事項、及び、「樹脂部材の表面層に凹凸を設ける際に、当該表面層の算術平均粗さRaを3.5μm?5.5μm内となるように設定する」という技術的事項が記載されていると認められる。

(6)原査定に引用された引用文献Bの【0001】、【0003】-【0004】の記載からみて、当該引用文献Bには、従来技術として、「装飾性床材において、その表面にエンボス等の意匠加工を施すことができる」という技術的事項が記載されていると認められる。

(7)原査定に引用された引用文献Cの【0003】、【0041】、【0042】、【0061】の記載からみて、当該引用文献Cには、「床等建築物の内装に用いる内装用化粧シートであって、良好な凹凸感をもたらすことを目的として、その表面にエンボス加工を施してエンボス凹凸を形成する」という技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「塩化ビニル系樹脂」、「可塑剤」、「無機充填剤」、「表面層」、「シート状の床材」は、本願発明1における「塩化ビニル系樹脂」、「可塑剤」、「充填剤」、「表面層」、「内装シート」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「塩化ビニル系樹脂に対し、可塑剤と充填剤とを含有する樹脂組成物のみからなり、上面に凹凸を形成する表面層を有する内装シート。」

<相違点>
(相違点1)表面層の組成について、本願発明1は、「塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤5重量部?60重量部とシリコーン系共重合体1重量部?10重量部と50重量部未満の充填剤とを含有する」構成であるのに対し、引用発明は、「塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤25重量部?70重量部と無機充填剤とを含有する」構成であり、樹脂組成物がシリコーン系共重合体を含有せず、含有される成分の配合量が相違する点。

(相違点2)表面層上面の凹凸について、本願発明1は、「凸部及び凹部がなだらかに連続する微細な凹凸を形成する」構成であるのに対し、引用発明は、「エンボス加工による凹凸を形成する」構成である点。

(相違点3)可塑剤について、本願発明1は、「可塑剤がフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、アゼライン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤から選ばれる少なくとも一種以上のみである」という構成を備えるのに対し、引用発明は、可塑剤の50?100重量%が耐汚染性可塑剤としてのテキサノールイソブチレートおよび/または安息香酸エステル系可塑剤である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討すると、相違点3に係る本願発明1の可塑剤がフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、アゼライン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤から選ばれる少なくとも一種以上のみであるという構成は、上記引用文献1には記載されていない。
また、引用発明は耐汚染性向上等を目的として、可塑剤の50?100重量%が耐汚染性可塑剤としてのテキサノールイソブチレートおよび/または安息香酸エステル系可塑剤であるものであり、当該テキサノールイソブチレートおよび/または安息香酸エステル系可塑剤を除外してその他の可塑剤を採用することは、阻害要因に該当し、またそのように構成することの動機付けを見出すこともできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-3について
本願発明2-3も、本願発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
原査定で用いた引用文献A(当審拒絶理由における引用文献2、平成28年2月26日付け刊行物等提出書における第1刊行物)には、上記「第5 引用文献、引用発明等」の「2 引用文献2?6、引用文献B、Cについて(1)」で記載したとおり、「(A)ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、(B)ポリカルボン酸エステル系可塑剤5?150重量部、(C)アクリル変性ポリオルガノシロキサン5?100重量部を配合し、充填材として重質炭酸カルシウム10重量部を配合して成るポリ塩化ビニル系樹脂成形材料」が記載されているものの、当該材料の具体的な使用態様が開示されていない。したがって、本願発明1-3とは少なくとも、「内装シート」として用いる点、及び、「上面に凸部及び凹部がなだらかに連続する微細な凹凸を形成する表面層を有する」点で相違し、当該ポリ塩化ビニル系樹脂成形材料の上面を凸部及び凹部がなだらかに連続する微細な凹凸を形成する表面層を有する内装シートとする構成は、原査定における引用文献A、D、E(当審拒絶理由における引用文献2、5、6)、及び、原査定における引用文献B、Cには記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえないので、本願発明1-3は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Eに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由通知における理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-24 
出願番号 特願2012-62948(P2012-62948)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E04F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 津熊 哲朗  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 大塚 裕一
小野 忠悦
発明の名称 内装シート  

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