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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1342414
審判番号 不服2017-11217  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-28 
確定日 2018-07-31 
事件の表示 特願2013- 38096「事故点標定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 8日出願公開、特開2014-163914、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月28日の出願であって、平成28年10月24日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年1月27日付けで手続補正がされ、同年4月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ(送達日:同年5月2日)、これに対し、同年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がされ、当審において、平成30年4月4日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月24日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平08-15362号公報


第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
地中ケーブルの一方の端末部で検出したサージ波が2つの異なる閾値をともに超えたとき、前記サージ波と各閾値との交点を通る直線と零レベルとの交点を前記一方の端末部へ前記サージ波が到達した時刻と近似する第1サージ到達時刻検出部と、
前記地中ケーブルの他方の端末部で検出したサージ波が2つの異なる閾値をともに超えたとき、前記サージ波と各閾値との交点を通る直線と零レベルとの交点を前記他方の端末部へ前記サージ波が到達した時刻と近似する第2サージ到達時刻検出部と、
前記地中ケーブル中央から両方の端末部までの距離を複数の区間に区分し前記各区間に対応して設けられた補正値を予め記憶した記憶部を有し、前記第1サージ到達時刻検出部によって近似して得られたサージ波の到達時刻と前記第2サージ到達時刻検出部によって近似して得られたサージ波の到達時刻との差及び前記地中ケーブルにおけるサージ波の伝搬速度を用いて事故点位置を算出すると共に、前記算出した事故点位置と前記地中ケーブルの中央の距離に応じた補正処理を行うことによって事故点位置を標定する事故点標定部とを備え、
前記補正処理は、前記地中ケーブルの構造及び材料によって決まる定数と前記2つの異なる閾値に基づいて得られるサージ波形の鈍りにより生じる誤差を相殺する補正値によって行う処理であって、前記算出した事故点位置に該当する区間の補正値を前記記憶部から求め、当該補正値を前記算出した事故点位置に加算又は減算することにより、当該補正値で前記事故点位置を補正する処理であることを特徴とする事故点標定装置。」


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
引用文献1には、次の記載がある。(下線は当審による。)

ア 「【請求項1】 送電線の両端に設置された二つの局の間で発生し、各局で受信されたサージのレベルおよびサージがそのレベルに到達した時間に基づいて、前記サージの発生箇所を標定する標定手段を備えた送電線サージ標定システムにおいて、
前記標定手段が、前記各局で受信したサージのレベルのうち、各局間で共通する二つのレベルを選択する選択手段と、選択されたレベルに基づいて前記サージが到達した時間を線型補正する補正手段とを有し、前記補正手段により補正された時間に基づいて前記サージの発生箇所を標定するように構成されたことを特徴とする送電線サージ標定システム。」

イ 「【0002】
【従来の技術】
送電線が地絡、短絡することにより、或いは、送電線に雷が直撃する等により、送電線にサージが発生する。従来より、このようなサージを、隣接する親局および子局において受信し、各局で受信されたサージのレベルに基づいて、サージが発生した箇所を標定する送電線サージ標定システムが知られている。このような、送電線サージ標定システムにおいては、一定のレベルに到達したサージが隣接する親局および子局に到達した時間の時間差を計測し、下記の式(1) に基づいて、親局からサージの発生した箇所までの距離L1 を算出している。
L1 =(L-c・Δt)/2 ・・・・・(1)
(ただし、L:両端に設置された親局と子局との間の距離、Δt:時間差、c:サージ伝搬速度)
現在、多くの送電線サージ標定システムは、一般にB型或いはマイクロB型と称され、一定のレベルに到達したサージを親局及び子局のそれぞれが受信するとともに、子局が、該サージを受信した旨を、地上系の有線の通信回線或いはマイクロ波無線を介して親局に通知し、親局が自局の受信時間と子局の受信時間との時間差を算出し、この時間差を(1) 式に適用することにより、サージの発生箇所を標定している。
【0003】
上述した送電線サージ標定システムにおいては、親局および子局が、同一の形状の波形を受理することが理想である。しかしながら、親局および子局の各々に到達するサージの波形の形状、波頭長、波高値などは、送電線の状態、送電所の電気所構内にある共通母線からサージを取り込む機器の特性或いは機器の負荷若しくは他の送電線の影響により変動或いは減衰する。したがって、送電線サージ標定システムは、親局および子局があたかもほぼ同一の波形を受理したように、親局に到達したサージ或いは子局に到達したサージの時間差を補正する必要がある。」

ウ 「【0011】
【実施例】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施例につき詳細に説明を加える。図1は、本発明の実施例にかかる送電線サージ標定システムに含まれる親局の構成を示すブロック図である。この親局は、送電線(図示せず)からのサージを受信するサージ受信部12と、サージ受信部12の出力電圧と雑音レベルよりも大きな閾値VTHとを比較し、出力電圧の方が大きいときにVTH検出信号を出力するVTH検出部14と、VTH検出信号を保持するVTHラッチ16と、サージ受信部12の出力電圧と所定の電圧V1 とを比較し、出力電圧の方が大きいときに、V1レベル検出信号を出力するV1レベル検出部18と、V1レベル検出信号を保持するV1レベルラッチ20と、サージ受信部12の出力電圧と所定の電圧V2とを比較し、出力電圧の方が大きいときに、V2レベル検出信号を出力するV2レベル検出部22と、V2レベル検出信号を保持するV2レベルラッチ24と、サージ受信部12の出力電圧と所定の電圧V3とを比較し、出力電圧の方が大きいときに、V3レベル検出信号を出力するV3レベル検出部26と、V3レベル検出信号を保持するV3レベルラッチ28と、人工衛星(図示せず)からのGPS信号を受理するGPS受信部30と、GPS受信部38から出力された10MHz のクロックに基づいて、100nsec毎にカウントをするとともに、1秒毎にクリアされるカウンタ32と、V1レベルラッチ20から信号が出力されたときのカウンタ32のカウンタ値を保持するV1カウンタ値ラッチ34と、V2レベルラッチ24から信号が出力されたときのカウンタ32のカウンタ値を保持するV2カウンタ値ラッチ36と、V3レベルラッチ28から信号が出力されたときのカウンタ32のカウンタ値を保持するV3カウンタ値ラッチ38と、親局全体を制御するCPU40と、CPU40に接続され、V1、V2およびV3カウンタ値ラッチ34,36,38を選択するデータラッチ選択信号を出力するデータ選択部42と、CPU40と接続され、他の局にデータを送信し、或いは、他の局からのデータを受信するモデム44とから構成されている。また、V1レベル検出部18、V2レベル検出部22およびV3レベル検出部26には、CPU40から、V1レベル設定信号、V2レベル設定信号およびV3レベル設定信号が、それぞれ与えられ、これら設定信号により、所望の検出レベルを設定することができるようになっている。」

エ 「【0012】
その一方、子局も、後述するようにCPUの構成を除いて、親局とほぼ同様に構成されている。ここに、送電線サージ標定システムにおける標定原理について以下に説明する。たとえば、親局および子局が、距離Lだけ離間して位置し、これらの間のある位置Pでサージが発生したものとし、この位置Pから親局までの距離をL1、位置Pから子局までの距離をL2とする。サージが親局および子局に到達する時間を、それぞれT1およびT2とすると、下記の式が成立する。
L1=c・T1 (ただし、cはサージ伝搬速度)
L2=c・T2
親局からサージの発生した位置Pまでの距離L1は、
L1=L/2-c・Δt/2 (ただし、Δt=T2-T1)
と表すことができる。したがって、親局にサージが到達した時間と子局にサージが到達した時間との時間差T2-T1を計測することによって、上述した距離L1を算出することが可能となる。かかる標定は、従来の送電線サージ標定システムにおいて行われているものと同様である。」

オ 「【0013】
次に、本発明にかかる送電線サージ標定システムにおける距離補正の概念について、説明する。前述したように、実際には、送電線に生じるサージ、特に、前駆サージを伴う雷サージは、微小な上下動を繰り返しつつ、その電圧レベルが上昇するものであるが、説明上の便宜のため、その立ち上がり部分が直線に近似されるものと仮定する。ここに、図2は、直線により近似された親局に受信されたサージMw1および子局に受信されたサージSw1,Sw2を示す図である。図2に示すように、親局で受信されるサージMw1 と子局で受信されるサージSw1,Sw2 とでは、送電線或いは各局の状態により、その波頭長や、波高値が異なる。したがって、送電線上の親局と子局とのちょうど中間点でサージが発生した場合、本来であれば、同一の波形を有するサージが、同時に、親局および子局に到達すべきものが、図2に示すように、異なった波形を有するサージが親局および子局に到達する。たとえば、サージが到達したと判断するレベルを、図2に示す電圧レベルV1に設定すると、親局と子局との中間点でサージが発生したにもかかわらず時間td だけの誤差が生じる。したがって、本発明にかかる送電線サージ標定システムにおいては、この誤差td を算出し、この値に基づいて、親局或いは子局にサージが到達した時間の一方、若しくは、親局および子局にサージが到達した時間の双方を補正する。」

カ 「【0016】
カウンタ値ラッチ34,36,38の各々に保持されたカウンタ値は、データ選択部42からの選択信号に基づいて、CPU40に与えられる。子局においては、CPU40は、受理したV1レベルラッチ20、V2レベルラッチ24およびV3レベルラッチ28に保持されたデータ、ならびに、V1カウンタ値ラッチ34、V2カウンタ値ラッチおよびV3カウンタ値ラッチ38に保持されたデータを、モデム44を介して親局に送信し、その処理を終了する。親局においては、モデム44は、子局により送信されたデータを受信し、これらデータをCPU40に与える。CPU40は、モデム44からのデータを受理すると、親局および子局の双方のレベルラッチから信号が出力されたレベル、すなわち、親局および子局に受信されたサージの双方が到達している共通のレベルを判断する。たとえば、図2に示すように、親局がサージMw1を受信し、子局がサージSw1を受信した場合には、サージの双方が到達している共通のレベルは、V1、V2およびV3であると判断される。これに対して、親局がサージMw1 を受信し、子局がサージSw2を受信した場合には、サージの双方が到達している共通のレベルは、V1およびV2であると判断される。」

キ 「【0017】
次いで、CPU40は、サージの双方が到達している共通のレベルから、所望の二つのレベルを選択する。本実施例においては、最も高いレベルと、次に高いレベルが選択される。すなわち、図2に示すように、親局がサージMw1を受信し、子局がサージSw1を受信した場合には、V3およびV2が選択され、これに対して、親局がサージMw1 を受信し、子局がサージSw2を受信した場合には、V2およびV1が選択される。CPU40は、選択されたレベルに到達した時間を示すカウンタ値ラッチのデータを読みだし、このデータに基づいて、前述した時間td を算出する。」

ク 「【0018】
次いで、CPU40は、子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1 から時間td を減算し、この減算値を、子局におけるサージの補正された到達時間とする。さらに、(5) 式に示すように、CPU40は、親局にサージが到達した時間および、子局におけるサージの補正された到達時間に基づいて、親局からサージの発生した位置までの距離L1'を算出する。
L1'=L/2-c・(Δt-td)/2 ・・・・・(5) 」

ケ 段落【0012】に記載の「子局も、後述するようにCPUの構成を除いて、親局とほぼ同様に構成されている。」の「CPUの構成を除いて」とは、段落【0016】に「子局においては、CPU40は、・・・その処理を終了する。」と子局がCPUを備えることが記載されていること、及び段落【0016】にさらに子局のCPUと親局のCPUが実行する処理の内容が記載されており、その処理内容が異なっていることから、子局がCPUを備えていないことを説明する記載ではなく、子局のCPUが実行する処理の内容が親局のCPUとは異なることを説明する記載であると認められる。

コ 段落【0018】に記載の(5)式「L1'=L/2-c・(Δt-td)/2」は、段落【0012】に記載の数式「L1 =(L-c・Δt)/2」に、段落【0013】に記載のサージの到達時間に生じる誤差「td 」を補正するための項を付加したものであると認められる。
よって、上記(5)式中の記号「L」、「c」、及び「Δt」は、段落【0012】に記載の各記号に対する説明から、それぞれ、「親局と子局の間の距離」、「サージ伝搬速度」、及び「(サージが子局に到達した時間T2)-(サージが親局に到達した時間T1)」であると認められる。

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「送電線の両端に設置された二つの局の間で発生し、各局で受信されたサージのレベルおよびサージがそのレベルに到達した時間に基づいて、前記サージの発生箇所を標定する標定手段を備えた送電線サージ標定システムにおいて(【請求項1】)、
親局は、送電線からのサージを受信するサージ受信部12と、サージ受信部12の出力電圧と所定の電圧V1とを比較し、出力電圧の方が大きいときに、V1レベル検出信号を出力するV1レベル検出部18と、V1レベル検出信号を保持するV1レベルラッチ20と、サージ受信部12の出力電圧と所定の電圧V2とを比較し、出力電圧の方が大きいときに、V2レベル検出信号を出力するV2レベル検出部22と、V2レベル検出信号を保持するV2レベルラッチ24と、サージ受信部12の出力電圧と所定の電圧V3とを比較し、出力電圧の方が大きいときに、V3レベル検出信号を出力するV3レベル検出部26と、V3レベル検出信号を保持するV3レベルラッチ28と、カウンタ32と、V1レベルラッチ20から信号が出力されたときのカウンタ32のカウンタ値を保持するV1カウンタ値ラッチ34と、V2レベルラッチ24から信号が出力されたときのカウンタ32のカウンタ値を保持するV2カウンタ値ラッチ36と、V3レベルラッチ28から信号が出力されたときのカウンタ32のカウンタ値を保持するV3カウンタ値ラッチ38と、親局全体を制御するCPU40と、CPU40と接続され、他の局にデータを送信し、或いは、他の局からのデータを受信するモデム44から構成されており(【0011】)、
子局は、CPUの処理内容を除いて、親局とほぼ同様に構成されており(【0012】、上記ケ)(以下、親局を構成する「CPU40」を「親局のCPU40」、子局を構成する「CPU40」を「子局のCPU40」という。)、
子局においては、子局のCPU40は、受理したV1レベルラッチ20、V2レベルラッチ24およびV3レベルラッチ28に保持されたデータ、ならびに、V1カウンタ値ラッチ34、V2カウンタ値ラッチおよびV3カウンタ値ラッチ38に保持されたデータを、モデム44を介して親局に送信し(【0016】)、
親局においては、親局のCPU40は、モデム44からのデータを受理すると、親局および子局に受信されたサージの双方が到達している共通のレベルを判断し、サージの双方が到達している共通のレベルから、所望の二つのレベルを選択し、選択されたレベルに到達した時間を示すカウンタ値ラッチのデータを読みだし、このデータに基づいて、時間tdを算出し(【0016】、【0017】)、
サージが到達したと判断するレベルが電圧レベルV1に設定されており(【0013】)、子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1から時間td を減算し、この減算値を、子局におけるサージの補正された到達時間とし(【0018】)、
親局にサージが到達した時間および、子局におけるサージの補正された到達時間に基づいて、親局からサージの発生した位置までの距離L1’を、L1’=L/2-c・(Δt-td)/2(ここで、Lは親局と子局の間の距離、cはサージ伝搬速度、Δt=T2-T1、T1は親局にサージが到達した時間、T2は子局にサージが到達した時間)により算出する(【0018】、上記コ)、
送電線サージ標定システム。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると次のことがいえる。

ア 引用発明の「送電線の両端に設置された二つの局」である「親局」及び「子局」は、本願発明1の「地中ケーブルの一方の端末部」及び「前記地中ケーブルの他方の端末部」と、「ケーブルの一方の端末部」及び「前記ケーブルの他方の端末部」である点で共通する。

イ (ア)引用発明は「サージが到達したと判断するレベルが電圧レベルV1に設定されて」いるから、引用発明の「親局のCPU40」は、「子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1から時間td を減算し、この減算値を、子局におけるサージの補正された到達時間とし」、「親局にサージが到達した時間および、子局におけるサージの補正された到達時間に基づいて、親局からサージの発生した位置までの距離L1’」を「算出する」際に、「親局にサージが到達した時間」として「親局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータ」、及び「子局にサージが到達した時間」として「子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1」を取得していると認められる。

(イ)「サージが到達したと判断するレベルが電圧レベルV1に設定されて」いることは、サージ電圧が電圧レベルV1に到達した時間を「子局」及び「親局」にサージが到達した時間とするものであり、当該時間は「子局」及び「親局」が実際にサージが到達した時間の近似値であると認められるから、引用発明の「親局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータ」、及び「子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1」は、実際に「子局」及び「親局」にサージが到達した時間の近似値であると認められる。

(ウ)引用発明の「親局のCPU40」が、「親局および子局に受信されたサージの双方が到達している共通のレベルを判断」し、「サージの双方が到達している共通のレベルから、所望の二つのレベルを選択し、選択されたレベルに到達した時間を示すカウンタ値ラッチのデータを読みだし、このデータに基づいて、時間tdを算出」することから、「親局からサージの発生した位置までの距離L1’を、L1’=L/2-c・(Δt-td)/2」「により算出する」ためには、「親局」及び「子局」に到着したサージ波がともに少なくとも2つの共通のレベルを超えることが必要であると認められる。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)から、引用発明の「親局のCPU40」が、「サージの双方が到達している共通のレベルから、所望の二つのレベルを選択し、」「時間tdを算出」し、「親局からサージの発生した位置までの距離L1’」を「算出する」際に、「子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1」及び「親局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータ」を取得することは、
本願発明1の「第1サージ到達時刻検出部」及び「第2サージ到達時刻検出部」が、「地中ケーブルの一方の端末部で検出したサージ波が2つの異なる閾値をともに超えたとき、前記サージ波と各閾値との交点を通る直線と零レベルとの交点を前記一方の端末部へ前記サージ波が到達した時刻と近似する」ことと、
「検出したサージ波が2つの異なる閾値をともに超えたとき、端末部へ前記サージ波が到達した時刻の近似値を取得する」点で共通する。

ウ (ア) 引用発明において算出される「時間td」は、引用文献1の段落【0013】の記載から、「サージが到達したと判断するレベルを」「電圧レベルV1に設定」したときに、「親局で受信されるサージMw1 と子局で受信されるサージSw1,Sw2 とでは、送電線或いは各局の状態により、その波頭長や、波高値が異なる」ことにより生じる、親局及び子局にサージが到達した時間の差の「誤差」であり、上記「送電線或いは各局の状態より、その波頭長や、波高値が異なる」とは、具体的には段落【0003】に記載の「親局および子局の各々に到達するサージの波形の形状、波頭長、波高値などは、送電線の状態、送電所の電気所構内にある共通母線からサージを取り込む機器の特性或いは機器の負荷若しくは他の送電線の影響により変動或いは減衰する」ことであると認められる。

(イ)上記(ア)において引用した段落【0003】に記載の「サージの波形の形状、波頭長、波高値など」の「変動或いは減衰」は、本願発明1の「サージ波形の鈍り」に相当する。
よって、引用発明で算出される「時間td」は、本願発明1の「サージ波形の鈍りにより生じる誤差」に相当し、さらに、「時間td」は「子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1から時間td を減算」する演算に用いられるものであるから、本願発明1の「サージ波形の鈍りにより生じる誤差を相殺する補正値」にも相当する。

(ウ)したがって、引用発明が「子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1から時間td を減算し、この減算値を、子局におけるサージの補正された到達時間と」することは、本願発明1の「サージ波形の鈍りにより生じる誤差を相殺する補正値によって行う」「補正処理」に相当する。

エ 上記ア及びウを踏まえると、引用発明の「親局のCPU40」が、「子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1から時間td を減算し、この減算値を、子局におけるサージの補正された到達時間とし、親局にサージが到達した時間および、子局におけるサージの補正された到達時間に基づいて、親局からサージの発生した位置までの距離L1’を、L1’=L/2-c・(Δt-td)/2(ここで、Lは親局と子局の間の距離、cはサージ伝搬速度、Δt=T2-T1、T1は親局にサージが到達した時間、T2は子局にサージが到達した時間)により算出する」ことは、
本願発明1の「事故点標定部」が、「前記地中ケーブル中央から両方の端末部までの距離を複数の区間に区分し前記各区間に対応して設けられた補正値を予め記憶した記憶部を有し、前記第1サージ到達時刻検出部によって近似して得られたサージ波の到達時刻と前記第2サージ到達時刻検出部によって近似して得られたサージ波の到達時刻との差及び前記地中ケーブルにおけるサージ波の伝搬速度を用いて事故点位置を算出すると共に、前記算出した事故点位置と前記地中ケーブルの中央の距離に応じた補正処理を行うことによって事故点位置を標定」し、「前記補正処理は、前記地中ケーブルの構造及び材料によって決まる定数と前記2つの異なる閾値に基づいて得られるサージ波形の鈍りにより生じる誤差を相殺する補正値によって行う処理であって、前記算出した事故点位置に該当する区間の補正値を前記記憶部から求め、当該補正値を前記算出した事故点位置に加算又は減算することにより、当該補正値で前記事故点位置を補正する処理であること」と、
「前記第1サージ到達時刻検出部によって得られたサージ波の到達時刻と前記第2サージ到達時刻検出部によって得られたサージ波の到達時刻との差及び前記ケーブルにおけるサージ波の伝搬速度を用いて事故点位置を算出すると共に、補正処理を行うことによって事故点位置を標定」し、「前記補正処理は、サージ波形の鈍りにより生じる誤差を相殺する補正値によって行う処理である」点で共通する。

オ 引用発明の「送電線サージ標定システム」は、本願発明1の「事故点標定装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。
(一致点)
「ケーブルの一方の端末部で検出したサージ波が2つの異なる閾値を超えたとき、前記一方の端末部へ前記サージ波が到達した時刻近似値を取得する第1サージ到達時刻検出部と、
ケーブルの一方の端末部で検出したサージ波が2つの異なる閾値を超えたとき、前記一方の端末部へ前記サージ波が到達した時刻の近似値を取得する第2サージ到達時刻検出部と、
前記第1サージ到達時刻検出部によって得られたサージ波の到達時刻と前記第2サージ到達時刻検出部によって得られたサージ波の到達時刻との差及び前記地中ケーブルにおけるサージ波の伝搬速度を用いて事故点位置を算出すると共に、補正処理を行うことによって事故点位置を標定する事故点標定部とを備え、
前記補正処理は、サージ波形の鈍りにより生じる誤差を相殺する補正値によって行う処理である事故点標定装置。」

(相違点)
(相違点1)
事故点位置を標定する対象である「ケーブル」が、本願発明1は「地中ケーブル」であるのに対し、引用発明は「送電線」である点。

(相違点2)
「サージ波が到達した時刻の近似値を取得する」際に、本願発明1は「検出したサージ波が2つの異なる閾値をともに超えたとき、前記サージ波と各閾値との交点を通る直線と零レベルとの交点を前記一方の端末部へ前記サージ波が到達した時刻と近似する」のに対し、引用発明は「サージが到達したと判断するレベルが電圧レベルV1に設定されて」おり、「V1カウンタラッチ34に保持されていたデータ」を「サージ波が到達した時間」として取得する点。

(相違点3)
「補正処理」が、本願発明1は、「補正値」が「前記地中ケーブルの構造及び材料によって決まる定数と前記2つの異なる閾値に基づいて得られるサージ波形の鈍りにより生じる誤差を相殺する補正値」であり、「前記地中ケーブル中央から両方の端末部までの距離を複数の区間に区分し前記各区間に対応して設けられた補正値を予め記憶した記憶部を有し」、「前記算出した事故点位置に該当する区間の補正値を前記記憶部から求め、当該補正値を前記算出した事故点位置に加算又は減算することにより、当該補正値で前記事故点位置を補正する処理」であるのに対し、
引用発明は、「補正値」が、送電線或いは各局の状態により生じる誤差を補正する補正値「時間td」であり、「時間td」を予め記憶する記憶部を有しておらず、「子局のV1カウンタラッチ34に保持されていたデータSV1から時間td を減算」する処理である点。

(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑み、相違点3について検討する。

上記(1)ウ(ア)において述べたように、引用発明において算出される「時間td」は、「サージが到達したと判断するレベルを、電圧レベルV1に設定」したときに、「親局および子局の各々に到達するサージの波形の形状、波頭長、波高値などは、送電線の状態、送電所の電気所構内にある共通母線からサージを取り込む機器の特性或いは機器の負荷若しくは他の送電線の影響により変動或いは減衰する」ことにより生じる、親局及び子局にサージが到達した時間の差の誤差である。
引用文献1には、「送電線の状態、送電所の電気所構内にある共通母線からサージを取り込む機器の特性或いは機器の負荷若しくは他の送電線の影響により」生じる「サージの波形の形状、波頭長、波高値」の「変動或いは減衰」が、事故点の位置からの距離に依存して変化するものであることについて、記載も示唆もされておらず、技術常識であるとも認められない。
したがって、引用文献1の記載全体を参酌しても、引用発明において算出される補正値である「時間td」が事故点の位置からの距離に依存して変化するものと認められないから、引用発明において、「送電線の中央から送電線の両端に設置された二つの局までの距離を複数の区間に区分し前記各区間に対応して設けられた補正値を予め記憶した記憶部」を設ける動機があるとはいえない。

以上により、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


第6 原査定についての判断
上記第5において記載した理由により、引用発明において、「送電線の中央から送電線の両端に設置された二つの局までの距離を複数の区間に区分し前記各区間に対応して設けられた補正値を予め記憶した記憶部」を設ける動機があるとはいえないから、原査定を維持できない。


第7 当審拒絶理由について
当審では、請求項1の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正の結果、この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1は、当業者が引用文献1に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2013-38096(P2013-38096)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
P 1 8・ 537- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 ▲うし▼田 真悟
中塚 直樹
発明の名称 事故点標定装置  
代理人 大塚 秀一  
代理人 大塚 秀一  
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