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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1342426 |
審判番号 | 不服2017-14434 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-09-29 |
確定日 | 2018-08-07 |
事件の表示 | 特願2014-546139「モバイルデバイス上でのデータ可視化の閲覧および対話のための拡大ツール」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日国際公開、WO2013/086395、平成27年 1月 8日国内公表、特表2015-501052、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成24年12月7日(パリ条約による優先権主張 平成23年12月8日,米国 平成24年2月27日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成28年9月7日付けで拒絶理由通知がされ,平成28年12月13日付けで手続補正がされ,平成29年5月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成29年9月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年5月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-11に係る発明は,以下の引用文献2-4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 2.特許第4818478号公報 3.小山 香織,iPadビジネス活用ガイド 初版,株式会社毎日コミュニケーションズ,2011年7月6日,第17頁 4.ゲイザー,iPhone 4S スーパーマニュアル 第1版 iPhone 4S SUPER MANUAL,株式会社秀和システム,2011年12月3日,第56頁 第3 本願発明 本願請求項1-7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は,平成29年9月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,2,7は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 タッチスクリーンを有するデバイス上の内容を拡大する方法であって, 前記内容は,1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含み, 前記タッチスクリーン上のユーザがタッチした場所の選択を受け付けるステップと, 前記タッチスクリーン上の前記場所の位置を判定するステップと, 前記内容をタッチスクリーンに表示するステップと, 拡大される前記タッチスクリーンの部分であって円形部分を,判定された前記位置および当該部分に対応のデータ要素の密集度に応じた半径に基づき判定するステップと, 判定された前記円形部分に対応する内容の一部を拡大し,前記拡大された一部を前記タッチスクリーンの上に重ねるステップと, 拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示するステップと, 前記内容の一部を拡大して重ね中に,当該拡大のために選択された場所とは異なる場所の選択が受付けられたときは,当該一部を拡大して重ねることを終了するステップと,を備える,方法。」 「【請求項2】 表示される内容を拡大するための拡大ツールを含むデバイスであって, 1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含む内容を表示するように動作可能なタッチスクリーンと, ユーザからのタッチスクリーンにおける操作を受け付ける手段とを備え, 前記デバイスが,前記タッチスクリーン上の場所の選択の操作を受け付けた場合,前記デバイスは, 前記タッチスクリーン上の前記場所の位置を判定し, 拡大する前記タッチスクリーンの部分であって円形部分を,判定された前記位置および当該部分に対応のデータ要素の密集度に応じた半径に基づき判定し, 判定された前記部分に対応した内容の一部を拡大し,前記拡大された一部を前記タッチスクリーンの上に重ね, 拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示し, 前記一部を拡大して重ね中に,当該拡大のために選択された場所とは異なる場所の選択が受付けられたときは,当該一部を拡大して重ねることを終了するように構成される,デバイス。」 「【請求項7】 プログラムであって,コンピュータに, コンピュータ読み取り可能な媒体とプロセッサとを含むデバイスのタッチスクリーン上の場所の選択を受け付けるステップと, 前記タッチスクリーン上の前記場所の位置を判定するステップと, デバイス上の内容であって,1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含む内容をタッチスクリーンに表示するステップと, 拡大する前記タッチスクリーンの部分であって円形部分を,判定された前記位置および当該部分に対応のデータ要素の密集度に応じた半径に基づき判定するステップと, 判定された前記円形部分に対応の内容の一部を拡大し,前記タッチスクリーン上に前記拡大された一部を重ねるステップと, 拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示するステップと, 前記内容の一部を拡大して重ね中に,当該拡大のために選択された場所とは異なる場所の選択が受付けられたときは,当該一部を拡大して重ねることを終了するステップとを実行させる,プログラム。」 なお,本願発明3-6の概要は以下のとおりである。 本願発明3-6は,本願発明2を直接又は間接的に引用した発明である。 第4 引用文献,引用発明等 1 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている(なお,下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。 (1)段落【0013】-【0016】 「【0013】 [携帯端末装置の外観例] 図1は,本実施の形態の携帯端末装置1の外観例を示す斜視図である。なお,本実施の形態の携帯端末装置1は,一般にスマートフォンとも称され,携帯電話の機能と携帯型情報端末装置の機能とが組み合わされたものを想定する。 【0014】 図1に示される携帯端末装置1において,その前面パネルにはタッチパネル2が設けられる。このタッチパネル2は,例えば液晶などによるディスプレイパネルとタッチセンサとが組み合わされたものであり,図示するように,前面パネルにおける大部分を占める程度のサイズとされている。ユーザは,タッチパネル2に表示された画像に対して,例えばタッチ,スライドなどの操作を適宜行うことで,携帯端末装置1に所望の動作を実行させることができる。 【0015】 また,前面パネルにおいてタッチパネル2の下側にはメニューボタン3a,ホームボタン3bおよびバックボタン3cが配置される。メニューボタン3aは,メニュー画面を表示させるための操作が行われるボタンである。ホームボタン3bは,ホームとしての表示に戻すための操作が行われるボタンである。バックボタン3cは,前のページ,または前にアクティブとなっていたアプリケーションに戻すための操作が行われるボタンである。 【0016】 また,この携帯端末装置1の側面には,図示するように,電源ボタン4,アップボタン5a,ダウンボタン5bおよびシャッターボタン6が配置される。電源ボタン4は,携帯端末装置1の電源のオン・オフを行うための操作が行われるボタンである。アップボタン5a,ダウンボタン5bは,実行中のアプリケーションに応じて所定のパラメータをアップ・ダウンさせるための操作が行われるボタンである。例えば,オーディオファイルを再生するアプリケーションの場合には,アップボタン5aおよびダウンボタン5bを操作することにより音量を上下させることができる。」 (2)段落【0018】-【0035】 「【0018】 [起動アプリケーションの登録例] 上記図1に示したように,本実施の形態の携帯端末装置1は,筐体に対して物理的に備えられるボタンは必要最小限に抑えられている。そして,携帯電話機能およびアプリケーションに関する操作のほとんどを,タッチパネル2に対するタッチやスライドなどの操作によって行えるようになっている。例えば,携帯端末装置1に実装されているアプリケーションを起動させる操作も,タッチパネル2に対して行われる。具体的には,タッチパネル2に対してインストールされているアプリケーションのリストを表示させるための操作を行い,次に,この表示されたリストのなかから,起動させたいアプリケーションのアイコンを選択してタッチする操作を行う。これにより,選択されたアプリケーションが起動することになる。 【0019】 上記のアプリケーションを起動させる操作は,タッチパネル2に対する複数回の操作を必要とする。このような操作は,例えば一度起動させた後において長時間継続して使用されるようなアプリケーションではさほど苦になるものではない。しかし,例えば1回の使用時間は短いものの,必要に応じて比較的頻繁に起動させて使用したいようなアプリケーションの場合,非常にわずらわしく面倒なものとなってしまう。 【0020】 そこで,本実施の形態の携帯端末装置1では,上記の不都合を解消するために,シャッターボタン6に対する長押し操作に応じて予め登録されたアプリケーションを起動できるように構成する。なお,シャッターボタン6の長押しに応じてアプリケーションを起動できるのは,カメラ機能が起動されていないときに限定される。カメラ機能が動作中であるとき,シャッターボタン6に対する操作は,あくまでも撮像画像を記録するためのトリガとして扱われる。 【0021】 まず,図2を参照して,シャッターボタン6の長押しに対応して起動すべきアプリケーション(以降,「起動アプリケーション」と略す)を登録するための操作手順例について説明する。 【0022】 図2(a)には,タッチパネル2が示されている。このタッチパネル2としての画像表示領域全体において,その上側にはステイタスバー21が表示される。ここでの詳細な図示は省略しているが,ステイタスバー21においては,時刻,バッテリ残量,無線通信用アンテナの受信強度などをはじめとした所定の状態を示す各種アイコンが表示される。 【0023】 タッチパネル2における上記ステイタスバー21以外の領域は,アプリケーションエリア22とされて,起動中のアプリケーションの画像が表示される。この図2(a)では,ウェブブラウザのアプリケーションが起動しており,これに応じて文字やグラフィック像が表示された状態を想定している。 【0024】 上記図2(a)に示される状態のもとで,ユーザがシャッターボタン6に対する操作を行ったとする。また,この段階では,未だ起動アプリケーションの登録が行われていないものとする。携帯端末装置1は,この状態に応じた動作として,図2(b)に示すように,タッチパネル2に起動アプリケーション選択画面30を表示させる。なお,起動アプリケーション選択画面30の表示後は,シャッターボタン6の長押しを解除しても,起動アプリケーション選択画面30は継続して表示されるようになっている。 【0025】 図2(b)の起動アプリケーション選択画面30においては,複数(この場合には3つ)の選択エリア31a,31bおよび31cが配置される。これら選択エリア31のそれぞれには,起動アプリケーションの選択候補となるアプリケーションが提示される。また,これら選択エリア31の下側には,チェックボックス32が表示されている。 【0026】 そして,ユーザが起動アプリケーションを登録したい場合には,図2(b)に示す起動 アプリケーション選択画面30を表示させている状態のもとでチェックボックス32に対するタッチ操作を行ってチェックマークを入れた状態とする。そのうえで,選択エリア31a?31cのうちから,登録したいアプリケーションが示される選択エリア31を選択してタッチ操作を行う。 【0027】 ここでは,ユーザは選択エリア31cに表示されている「補助辞書アプリケーション」を選択してタッチ操作を行ったものとする。この操作に応じて,携帯端末装置1は,起動アプリケーションとして補助辞書アプリケーションが登録されたものとして記憶する。この登録内容は,ユーザによる登録解除操作が行われるまで有効である。また,選択エリア31cに対する操作を行ったことに応じて,補助辞書アプリケーションが起動する。 【0028】 これとともに,上記の選択エリア31cに対するタッチ操作に応じて,補助辞書アプリケーションは通常に起動する。補助辞書アプリケーションの起動に応じて,タッチパネル2には補助辞書アプリケーションに対応する画像が表示される。本実施の形態の補助辞書アプリケーションに対応する画像は,図2(c)に例示するようにルーペ型ポインタ41となる。このルーペ型ポインタ41は,図2(a)に表示されていたウェブブラウザの画像に対して重畳して表示されている。また,図2(c)のタッチパネル2においては,補助辞書アプリケーションが起動されたことに応じて,アプリケーション通知バー23が追加して表示され,補助辞書アプリケーションがアクティブであることをユーザに通知するようにもされている。 【0029】 なお,補助辞書アプリケーションの機能および操作例については後述する。また,図2(c)に示したように起動アプリケーション選択画面30に対する選択操作に応じて起動した補助辞書アプリケーションは,バックボタン3cまたはシャッターボタン6の短押し操作に応じて終了させることができる。補助辞書アプリケーションが終了すれば,タッチパネル2の表示内容は,図2(a)のウェブブラウザの画像に戻る。また,起動アプリケーション選択画面30を表示させるために行ったシャッターボタン6の長押し状態を,図2(c)の補助辞書アプリケーションの起動まで継続させていた場合には,この長押し操作を解除することにより補助辞書アプリケーションを終了させることができる。 【0030】 上記のように起動アプリケーションとして補助辞書アプリケーションが登録されて以降は,図3により説明するように,起動アプリケーション選択画面30に対する操作を必要とすることなく補助辞書アプリケーションを起動させることができる。例えば,図3(a)のタッチパネル2に示すように,ウェブブラウザがアクティブの状態において,シャッターボタン6の長押し操作が行われたとする。この長押し操作に応じては,図3(b)に示すように補助辞書アプリケーションが起動して,ウェブブラウザの画像(バックグラウンド画像)に対してルーペ型ポインタ41が重畳表示される。また,アプリケーション通知バー23も表示され,補助辞書アプリケーションがアクティブであることを示す。 【0031】 このように起動された補助辞書アプリケーションは,シャッターボタン6の長押し操作がユーザによって継続されている限り,終了されることなくアクティブの状態が維持される。例えば,図3(b)に示す状態において,ユーザがシャッターボタン6の長押し操作を解除したとすると,補助辞書アプリケーションが終了し,これまでバックグラウンドで動作していたウェブブラウザがアクティブとなる。これに応じて,タッチパネル2においては,ルーペ型ポインタ41およびアプリケーション通知バー23の表示が消去され,図3(a)に示すウェブブラウザの画像の表示に戻ることになる。 【0032】 なお,図2(b)においてチェックボックス32からチェックマークを外した状態で選択エリア31に対するタッチ操作を行った場合には,起動アプリケーションの登録は行われないまま,タッチ操作が行われた選択エリア31のアプリケーションが起動する。したがって,この後において,再度シャッターボタン6の長押し操作を行えば,起動アプリケーション選択画面30が表示されることになる。 【0033】 [補助辞書アプリケーションの動作例] 図4および図5を参照して,補助辞書アプリケーションに対する操作と,この操作に応じた動作例について説明する。図4(a)は,図3(a)と同様のタッチパネル2の状態が示されている。つまり,補助辞書アプリケーションが起動して,バックグラウンドのウェブブラウザの画像に対してルーペ型ポインタ41が表示された状態である。ルーペ型ポインタ41においては,そのバックグラウンドで表示されている画像部分(ここではウェブブラウザの画像部分)を抜き出して拡大して表示されるようになっている。ルーペ型ポインタ41は,ポインタとして,このように拡大表示される画像部分を指し示すものとなる。 【0034】 ここで,図4(a)から図4(b)への遷移として示すようにルーペ型ポインタ41を移動させる操作を行ったとする。このルーペ型ポインタ41を移動させる操作は,例えばタッチパネル2におけるルーペ型ポインタ41の画像部分に指などで触れ,移動させたい方向にスライドさせるというものになる。ルーペ型ポインタ41が移動された結果,図4(b)には,ルーペ型ポインタ41においては,ウェブブラウザの画像において「Photo」の文字が表示された画像部分が拡大表示された状態が示されている。 【0035】 補助辞書アプリケーションは,上記のようにルーペ型ポインタ41において拡大表示された画像部分が英単語を形成する文字列である場合,同じ図4(b)に示すように,ルーペ型ポインタ41の近傍に意味提示エリア42を表示させる。この意味提示エリア42には,ルーペ型ポインタ41において拡大表示されている英単語と,その日本語の意味が示される。この場合には,ルーペ型ポインタ41において「Photo」の文字列が拡大表示されていることに応じて,意味提示エリア42には,同じ「Photo」という英単語と,その日本語の意味である「写真」が示されるように表示されている。」 したがって,上記引用文献2には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「携帯端末装置1において,その前面パネルにはタッチパネル2が設けられ, この携帯端末装置1の側面には,電源ボタン4,アップボタン5a,ダウンボタン5bおよびシャッターボタン6が配置され, 携帯端末装置1に実装されているアプリケーションを起動させる操作は,タッチパネル2に対してインストールされているアプリケーションのリストを表示させるための操作を行い,次に,この表示されたリストのなかから,起動させたいアプリケーションのアイコンを選択してタッチする操作であり, シャッターボタン6に対する長押し操作に応じて予め登録されたアプリケーションを起動できるように構成され, タッチパネル2としての画像表示領域全体において,その上側にはステイタスバー21が表示され, 上記ステイタスバー21以外の領域は,アプリケーションエリア22とされて,起動中のアプリケーションの画像が表示され,ウェブブラウザのアプリケーションが起動しており,これに応じて文字やグラフィック像が表示された状態のもとで,ユーザがシャッターボタン6に対する操作を行ったとすると, タッチパネル2に起動アプリケーション選択画面30を表示させ, 起動アプリケーション選択画面30においては,複数(この場合には3つ)の選択エリア31a,31bおよび31cが配置され,これら選択エリア31のそれぞれには,起動アプリケーションの選択候補となるアプリケーションが提示され, ユーザは選択エリア31cに表示されている「補助辞書アプリケーション」を選択してタッチ操作を行ったものとすると, 選択エリア31cに対する操作を行ったことに応じて,補助辞書アプリケーションが起動し, 選択エリア31cに対するタッチ操作に応じて,補助辞書アプリケーションは通常に起動し,補助辞書アプリケーションの起動に応じて,タッチパネル2には補助辞書アプリケーションに対応する画像が表示され,補助辞書アプリケーションに対応する画像は,ルーペ型ポインタ41となり,このルーペ型ポインタ41は,表示されていたウェブブラウザの画像に対して重畳して表示され, 起動アプリケーション選択画面30に対する選択操作に応じて起動した補助辞書アプリケーションは,バックボタン3cまたはシャッターボタン6の短押し操作に応じて終了させることができ, 起動アプリケーションとして補助辞書アプリケーションが登録されて以降は, シャッターボタン6の長押し操作に応じては,補助辞書アプリケーションが起動して,ウェブブラウザの画像(バックグラウンド画像)に対してルーペ型ポインタ41が重畳表示され, 補助辞書アプリケーションは,シャッターボタン6の長押し操作がユーザによって継続されている限り,終了されることなくアクティブの状態が維持され,ユーザがシャッターボタン6の長押し操作を解除したとすると,補助辞書アプリケーションが終了し,ルーペ型ポインタ41の表示が消去され, ルーペ型ポインタ41においては,そのバックグラウンドで表示されている画像部分(ここではウェブブラウザの画像部分)を抜き出して拡大して表示されるようになっており, ルーペ型ポインタ41を移動させる操作は,例えばタッチパネル2におけるルーペ型ポインタ41の画像部分に指などで触れ,移動させたい方向にスライドさせるというものになり, 拡大表示された画像部分が英単語を形成する文字列である場合,ルーペ型ポインタ41の近傍に意味提示エリア42を表示させる, 方法。」 2 引用文献3-4について (1)引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3の第17頁には,「3|カーソルを移動する」の欄において,「長押しすると拡大鏡が現れるので,」という事項が記載され,併せて示される図面では,円形状の拡大鏡が表示されている。また,「4|カット・コピー&ペーストをする」の欄において,「3の後で指を離すと,吹き出しが現れます。」という事項が記載されている。 (2)引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4の第56頁には,「文字列のコピー」の欄において,「1 編集したい文字列を長押し ・拡大鏡が表示されます」という事項が記載され,併せて示される図面では,円形状の拡大鏡が表示されている。また,続いて「指を離すと,拡大鏡で表示された場所に吹き出しが表示されます」という事項が記載され,併せて示される図面では,拡大鏡は無く吹き出しが表示されている。 (3)周知技術 引用文献3-4より,「長押しによって拡大鏡を表示した後,指を離すと拡大鏡が消去されること」は,本願出願前に周知技術であったといえる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明の「携帯端末装置1」,「タッチパネル2」は,それぞれ本願発明1の「デバイス」,「タッチスクリーン」に相当する。 また,引用発明では,「タッチパネル2としての画像表示領域全体において,その上側にはステイタスバー21が表示され,上記ステイタスバー21以外の領域は,アプリケーションエリア22とされて,起動中のアプリケーションの画像が表示され,ウェブブラウザのアプリケーションが起動して」いるから,「タッチパネル2」に「ウェブブラウザ」の「画像」が「表示され」るといえ,この「ウェブブラウザ」の「画像」は,本願発明1の「タッチスクリーンを有するデバイス上の内容」に相当する。 イ 引用発明では,「タッチパネル2」に表示された「起動アプリケーション選択画面30」に「選択エリア31a,31bおよび31c」が「配置」され,「ユーザ」は,この「選択エリア31c」に対する「タッチ操作を行」うことができ,また,「タッチパネル2におけるルーペ型ポインタ41の画像部分に指などで触れ,移動させたい方向にスライドさせる」ことによって「ルーペ型ポインタ41を移動させる操作」が行えるから,引用発明が,本願発明1の「前記タッチスクリーン上のユーザがタッチした場所の選択を受け付けるステップ」及び「前記タッチスクリーン上の前記場所の位置を判定するステップ」に相当する構成を備えることは明らかである。 ウ 上記アで述べたとおり,引用発明では,「タッチパネル2」に「ウェブブラウザ」の「画像」が「表示され」るといえ,このことは,本願発明1の「前記内容をタッチスクリーンに表示するステップ」に相当する。 エ 引用発明では,「ウェブブラウザの画像(バックグラウンド画像)に対してルーペ型ポインタ41が重畳表示され」,「ルーペ型ポインタ41においては,そのバックグラウンドで表示されている画像部分(ここではウェブブラウザの画像部分)を抜き出して拡大して表示されるようになって」いるから,引用発明は,本願発明1の「判定された前記円形部分に対応する内容の一部を拡大し,前記拡大された一部を前記タッチスクリーンの上に重ねるステップ」と「円形部分に対応する内容の一部を拡大し,前記拡大された一部を前記タッチスクリーンの上に重ねるステップ」という点で共通する構成を有するといえる。 オ 引用発明では,「起動アプリケーション選択画面30に対する選択操作に応じて起動した補助辞書アプリケーションは,バックボタン3cまたはシャッターボタン6の短押し操作に応じて終了させることができ」,また,「シャッターボタン6の長押し操作に応じて」「補助辞書アプリケーションが起動し」たときは,「シャッターボタン6の長押し操作がユーザによって継続されている限り,終了されることなくアクティブの状態が維持され,ユーザがシャッターボタン6の長押し操作を解除したとすると,補助辞書アプリケーションが終了し,ルーペ型ポインタ41の表示が消去され」るから,引用発明は,本願発明1の「前記内容の一部を拡大して重ね中に,当該拡大のために選択された場所とは異なる場所の選択が受付けられたときは,当該一部を拡大して重ねることを終了するステップ」と「前記内容の一部を拡大して重ね中に,所定の操作が受付けられたときは,当該一部を拡大して重ねることを終了するステップ」という点で共通する構成を有するといえる。 カ 上記ア,エで述べたとおり,引用発明では,「タッチパネル2」に「ウェブブラウザ」の「画像」が「表示され」,「ルーペ型ポインタ41においては,そのバックグラウンドで表示されている画像部分(ここではウェブブラウザの画像部分)を抜き出して拡大して表示されるようになって」いるから,引用発明は,「タッチスクリーンを有するデバイス上の内容を拡大する方法」であるといえる。 よって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「タッチスクリーンを有するデバイス上の内容を拡大する方法であって, 前記タッチスクリーン上のユーザがタッチした場所の選択を受け付けるステップと, 前記タッチスクリーン上の前記場所の位置を判定するステップと, 前記内容をタッチスクリーンに表示するステップと, 円形部分に対応する内容の一部を拡大し,前記拡大された一部を前記タッチスクリーンの上に重ねるステップと, 前記内容の一部を拡大して重ね中に,所定の操作が受付けられたときは,当該一部を拡大して重ねることを終了するステップと,を備える,方法。」 (相違点) (相違点1)本願発明1では,「前記内容は,1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含」み,さらに,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示するステップ」を備えるのに対して,引用発明では,「1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフ」を表示しておらず,また,「拡大表示された画像部分が英単語を形成する文字列である場合」に「ルーペ型ポインタ41の近傍に意味提示エリア42を表示させる」ものの,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報」を表示するものではない点。 (相違点2)本願発明1は,「拡大される前記タッチスクリーンの部分であって円形部分を,判定された前記位置および当該部分に対応のデータ要素の密集度に応じた半径に基づき判定するステップ」を備え,当該ステップによって「判定された前記円形部分に対応する内容の一部を拡大」するのに対して,引用発明は,このようなステップを備えておらず,「ルーペ型ポインタ41」により拡大される範囲についての特定がなされていない点。 (相違点3)「前記内容の一部を拡大して重ね中に」「当該一部を拡大して重ねることを終了する」ために受付けられる「所定の操作」が,本願発明1では,「当該拡大のために選択された場所とは異なる場所の選択」であるのに対して,引用発明では,「バックボタン3cまたはシャッターボタン6の短押し操作」又は「シャッターボタン6の長押し操作を解除」することである点。 (2)相違点についての判断 まず,上記相違点1について検討する。 ウェブブラウザの表示内容(コンテンツ)として,「1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフ」はありふれたものであり,引用発明における「ウェブブラウザ」において,「1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフ」を表示することは,当業者が想定し得ることである。 しかしながら,このような「グラフ」をウェブブラウザのコンテンツとして表示したとき,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示する」ことまでは,引用文献2-4のいずれにも記載も示唆もされていない。 また,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示する」ことが,本願出願前に周知技術であったということもできない。 したがって,上記相違点2-3について検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明及び引用文献3-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は,方法のカテゴリーに属する本願発明1を「デバイス」という物のカテゴリーに属する発明としたものであり,本願発明1の「前記内容は,1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含み」,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示するステップ」という事項と実質的に同一の「1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含む内容を表示する」,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示し」という事項を有しているから,本願発明1と同様の理由により,引用発明及び引用文献3-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明3-6について 本願発明3-6は,本願発明2の「1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含む内容を表示する」,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示し」と同一の事項を有しているから,本願発明1と同様の理由により,引用発明及び引用文献3-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 4 本願発明7について 本願発明7は,方法のカテゴリーに属する本願発明1を「プログラム」という物のカテゴリーに属する発明としたものであり,本願発明1の「前記内容は,1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含み」という事項と実質的に同一の「デバイス上の内容であって,1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含む内容」という事項を有し,且つ,本願発明1の「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示するステップ」と同一の事項を有しているから,本願発明1と同様の理由により,引用発明及び引用文献3-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定について 理由(特許法第29条第2項)について 本願発明1は,「前記内容は,1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含み」,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示するステップ」という事項,本願発明2-6は,「1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含む内容を表示する」,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示し」という事項,本願発明7は,「デバイス上の内容であって,1つ以上の座標軸上に配置される複数のデータ要素を備えるグラフを含む内容」,「拡大される前記部分の中心に位置するデータ要素に対応した座標値を含む情報を表示するステップ」という事項をそれぞれ有しており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。 したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-07-24 |
出願番号 | 特願2014-546139(P2014-546139) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 若林 治男 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
山田 正文 松田 岳士 |
発明の名称 | モバイルデバイス上でのデータ可視化の閲覧および対話のための拡大ツール |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |