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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1342438
審判番号 不服2017-9019  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-21 
確定日 2018-07-19 
事件の表示 特願2014-551940号「液体供給システム」拒絶査定不服審判事件〔2014年6月19日国際公開、WO2014/091866号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年11月14日(優先権主張平成24年12月14日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 8月29日付け:拒絶理由通知書
平成28年10月17日 :意見書及び手続補正書の提出
平成29年 3月23日付け:拒絶査定
平成29年 6月21日 :審判請求書及び手続補正書の提出

第2 平成29年6月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年6月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
密閉容器と、
密閉容器内に収容される超低温液体中に配置され、リニアアクチュエータによって駆動され、一方向弁が備えられた吸入口から超低温液体を吸入し、一方向弁が備えられた送出口から超低温液体を送り出するポンプと、
前記ポンプによって送り出される超低温液体を密閉容器の外部に設けられた被冷却装置に導く第1配管と、
被冷却装置から密閉容器内部まで超低温液体を戻す第2配管と、
前記超低温液体中に配置され、密閉容器内において第1配管に接続され、かつ第1配管の内部圧力が所定圧以上になることを抑制するように密閉容器内に超低温液体を逃がす第1逃し弁と、
を備えることを特徴とする液体供給システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成28年10月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】
密閉容器と、
密閉容器内に収容される超低温液体中に配置され、リニアアクチュエータによって駆動されるポンプと、
前記ポンプによって送り出される超低温液体を密閉容器の外部に設けられた被冷却装置に導く第1配管と、
被冷却装置から密閉容器内部まで超低温液体を戻す第2配管と、
密閉容器内において第1配管に接続され、かつ密閉容器内に超低温液体を逃がす逃し弁と、
を備え、前記逃し弁が前記超低温液体中に配置されることを特徴とする液体供給システム。」

2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ポンプ」について、「一方向弁が備えられた吸入口から超低温液体を吸入し、一方向弁が備えられた送出口から超低温液体を送り出する」ものと限定し、及び「逃し弁」について、「超低温液体中に配置され」であって「第1配管の内部圧力が所定圧以上になることを抑制するように」するものと限定し、さらに「第1」の「逃し弁」と特定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2004-286404号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある(「・・・」は記載の省略を意味する。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被冷却物である、例えば、半導体素子の電気試験(機能試験)に用いられるウエハープローバのウエハーチャックを冷却するための冷却液循環装置及び該冷却液循環装置を用いた冷却ユニットに関し、特に冷却液循環装置に設けた低温タンクの構造に関する。」
「【0002】
【従来の技術】
・・・試験ではウエハープローバ(ウエハーの移動と加熱または冷却の温度調節を行う装置)と呼ばれる装置が使われている。ウエハープローバ内部には平面内に精密に移動可能なテーブル(X-Yテーブルと呼ばれる)があり、テストするウエハーを乗せるウエハーチャックは、このテーブルに取り付けられている。低温における半導体素子の特性測定では、ウエハーチャックを低温(例えば、一55℃程度)に冷やす。」
「【0004】
図5に従来のウエハーチャック冷却用冷却ユニット(以下、「冷却ユニット」という)及びその冷却液循環装置B’を示す。該冷却液循環装置B’は、循環ポンプ102、フィルタ105、流量調整弁103、リリーフ弁106、予備タンク104、冷却液出口接続口107、冷却液入口接続口108、冷凍機入口接続口109、冷凍機出口接続口110とそれらの各機器を接続する配管(循環ポンプ吸込み側配管111、循環ポンプ吐出側配管112、リリーフ配管113、冷却液往き配管114、冷却液戻り配管115、冷凍機往き配管116、冷凍機戻り配管117、冷却液補給配管119等。)で構成されている。これら冷却液循環装置B’を構成する各機器は、図5に示すように、冷却ユニット筐体101に個別に設けられている。フィルタ105は循環ポンプ吸引側配管111に設けられ、流量調整弁103は冷凍機往き配管116に設けられ、リリーフ弁106はリリーフ配管113に設けられている。予備クンク(審決注:「予備タンク」の誤記。)105は、冷却液が常温時と低温時で比重が変わる為、冷却液の液が不足するのを防止するために設置されている。」
「【0007】
循環ポンプ本体102a、流量調整弁本体103a、リリーフ弁106、冷却液出口接続口107、冷却液入口接続口108、冷凍機入口接続口109、冷凍機出口接続口110等の各機器及びこれら各機器を結ぶ配管は低温になるので、結露及び外部からの熱侵入を防ぐために断熱材で覆われている。なお、図5に示す二点鎖線は断熱材で覆われる部分を模式的に示す。」
「【0010】
【発明が解決しようとする課題】
冷却液循環装置は、結露及び外部からの熱侵入を防ぐために冷却液循環装置を構成する機器及び各機器を接続する配管を断熱材で覆う必要があるが、従来の冷却液循環装置は、各機器が別個に配置され、また、各機器を接続する配管の全長も長くなるため、多量の断熱材を必要としていた。また、各機器が別個に配置され、その間に断熱材が存在するため、各機器を離れて配置せざるを得なかった。そのため、従来の冷却液循環装置は、図5に示すように、膨大な構成スペースを必要とするという問題があった。また、多量の断熱材及び配管を必要とするため、断熱材の施工が容易でなく、コスト的にも問題があった。」
「【0012】
本発明の目的は、冷却液循環装置を構成する各機器をコンパクトに配置するとともに各機器を接続する配管の全長を短くし、かつ断熱材の使用量を少なくして、省スペース化した冷却液循環装置を得ることにある。また、本発明の目的は、断熱材の施工の容易化を図るとともに製造コストの低減を図ることにある。さらに、本発明の目的は、冷却液循環装置が組み込まれる冷却ユニット全体のフットプリント(設置スペース)を小さくすることにある。」
「【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、低温タンクから循環ポンプに吸込まれた冷却液を、循環ポンプによって被冷却物及び冷凍機に供給し、被冷却物を冷却した冷却液及び冷凍機によって冷却された冷却液を低温タンクに戻すようにした冷却液の流路を有する冷却液循環装置において、循環ポンプを低温タンクの内部に設けたものである。請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記冷却液の流路に1つの弁又は2つ以上の弁を設け、該1つの弁又は2つ以上の弁のうちいずれか1つの弁あるいは任意の複数の弁を低温タンクの内部に設けたものである。」
「【0015】
・・・請求項7の発明は、前記循環ポンプの吐出口にリリーフ弁を接続し、前記冷凍機によって冷却された冷却液を前記低温タンクに戻す流路に流量調整弁を接続し、循環ポンプの吸込み口にフィルタを接続するとともに、前記循環ポンプと流量調整弁とフィルタとリリーフ弁を前記低温タンク内に設けたものである。」
「【0017】
【発明の効果】
請求項1、4乃至7の発明は、低温タンクから循環ポンプに吸込まれた冷却液を、循環ポンプによって被冷却物及び冷凍機に供給し、被冷却物を冷却した冷却液及び冷凍機によって冷却された冷却液を低温タンクに戻すような冷却液循環回路を採用するとともに、冷却液循環装置の機器を構成する循環ポンプ、流量調整弁、フィルタ及びリリーフ弁のうち、いずれか一つの機器あるいは任意の複数の機器を低温タンク5内に配置したため、冷却液循環装置を構成する各機器及びこれらを接続する各配管を、低温タンク4内部も含め低温タンク4まわりにコンパクトに纏めて配置することができる。そのため、各機器及び配管に施される断熱材及び配管の量を、従来の冷却液循環装置に較べ、大幅に低減することができ、断熱材の施工を容易にするとともに製造コストを低減でき、かつ、冷却液循環装置を省スペース化することができた。」
「【0018】
特に,請求項7の発明では、循環ポンプの吐出口にリリーフ弁を接続し、循環ポンプの吸込み口にフィルタを接続したため、配管をより簡単にすることができる。また請求項2、3の発明のように、冷却液循環装置に採用される弁として、流量調整弁及びリリーフ弁に限らず適当な弁を採用しても、請求項1、4乃至7の発明と同様の効果を奏する。」
「【0020】
【発明の実施の形態】
図1乃至3を参照して、本発明による冷却液循環装置の一実施の形態について説明する。冷却液循環装置Bは、冷凍機Aで冷却された冷却液(冷却液)を循環させて、ウエハープローバのウエハーチャック(被冷却物。図示せず)を冷却するものであり、キャスター1a付きの冷却ユニット筐体1に組込まれている。」
「【0021】
冷却液循環装置Bは、ポンプ本体2a及びポンプ駆動モータ2bとから構成された循環ポンプ2と、流量調整弁本体3a及び弁駆動部3bとから構成された流量調整弁3と、冷却液を収容する低温タンク4と、循環ポンプ2の吸込み側に設けられたフィルタ5と、循環ポンプの吐出側に設けられたリリーフ弁6と、冷却液をウエハーチャックに供給するウエハープローバ側接続ホース(図示せず)が接続される冷却液出口接続口7と、ウエハーチャックを冷却した冷却液を冷却液循環装置Bに戻すウエハープローバ側接続ホース(図示せず)が接続される冷却液入口接続口8と、冷却液を冷凍機Aに供給する冷凍機側接続配管が接続される冷凍機入口接続口9と、冷凍機Aで冷却された冷却液を冷却液循環装置Bに戻す冷凍機側接続配管が接続される冷凍機出口接続口10を備えている。」
「【0022】
循環ポンプ2、流量調整弁3、低温タンク4、フィルタ5、リリーフ弁6、冷却液出口接続口7、冷却液入口接続口8、冷凍機入口接続口9、冷凍機出口接続口10は、冷却液循環装置Bの各機器を構成している。なお、循環ポンプ2として歯車ポンプが図示されているが、冷却液を循環させることができるものであればどのような形式のポンプであってもよい。」
「【0023】
冷却液循環装置Bの各機器を構成する機器のうち、循環ポンプ2のポンプ本体2aと、流量調整弁3の弁本体3aと、フィルタ5と、リリーフ弁6は、図2に示すように、冷却ユニット筐体1のリアカバー1bに近接して配置された低温タンク4の内部に設けられている。これら低温タンク4内に設けられる機器は、低温タンク4の設置スペース、後述する配管等を考慮して配置される。図3に示す低温タンク4内の配置では、フィルタ5が、循環ポンプ2のポンプ本体2aの横(図3における左右方向)に並べて配置されている。リリーフ弁6は、循環ポンプ2のポンプ本体2aの前方に(図3における前後方向)に配置されている。フィルタ5とリリーフ弁6は循環ポンプ2のポンプ本体2aに近接して配置されている。また、流量調整弁3の弁本体3aは、フィルタ5の斜め前方に近接して配置されている。このように配置することによって、低温タンク4の設置スペースをコンパクトにすることできる。」
「【0024】
冷却液出口接続口7と冷却液入口接続口8は、冷却ユニット筐体1のリヤカバー1bに取り付けられた冷却液接続口取付部材21に、冷却液出口接続口7の軸心と循環ポンプ2の吐出口12の軸心が一致するように設けられている。冷凍機入口接続口9と冷凍機出口接続口10は、低温タンク4より上方に設けられている。」
「【0025】
なお、図1乃至3において、符号4aは低温タンク4の冷却液補給口、符号4bは低温タンク4の液面を表示するレベル表示器、符号4b1はレベル表示器4bの接続配管、4b2は、レベル表示器接続口、符号18は冷却液循環装置Bから漏れた液体を回収するオイルパン、符号19はポンプ取付部材、符号20は低温タンク取付部材、20aは低温タンク取付部材18の取付ボルト・ナットである。なお、図示していないが、低温タンク4には、従来の冷却液循環装置B’と同様、低温タンク4の液面を計測するレベル計が設けられ、オイルパン18には、ドレン弁が設けられている。」
「【0026】
このように構成された冷却液循環装置Bの各機器は、各配管により接続されている。循環ポンプ2の吸込み口11には、フィルタ5が接続されている。循環ポンプ2の吐出口12には、リリーフ弁6が接続されるとともにポンプ吐出配管13が接続されている。ポンプ吐出配管13には、継手13aを介して、冷却液出口接続口7に接続される冷却液往き配管14と、冷凍機入口接続口9に接続される冷凍機往き配管16が接続されている。冷却液入口接続口8は、冷却液戻り配管15を介して低温タンク4に接続され、冷凍機出口接続口10は、冷凍機戻り配管17を介して低温タンクに接続されている。流量調整弁3は冷凍機戻り配管17に接続されている。ポンプ吐出配管13と冷却液往き配管14と冷却液戻り配管15は、冷却液出口接続口7及び冷却液入口接続口8が循環ポンプ2に近接して設けられているため、非常に短い配管となっている。」
「【0027】
また、冷却液循環装置Bの機器及び配管は低温になるため、結露及び外部からの熱侵入を防ぐために断熱材で覆われている。図1乃至3の二点鎖線は、本実施の形態において断熱材が施される部分を模式的に示したものである。断熱材は、低温タンク4の外表面と、冷却液出口接続口7と、冷却液入口接続口8と、ポンプ吐出配管13と、冷却液往き配管14と、冷却液戻り配管15と、冷凍機往き配管16と、冷凍機戻り配管17のうち低温タンク4の外にある部分と、レベル表示器4bの接続配管4b1等に施されている。」
「【0028】
冷却液循環装置Bを構成する各機器及びこれらを接続する各配管は、冷却液循環装置Bをコンパクト、かつ小さな構成スペースとするため、低温タンク4内部を含め低温タンク4まわりに纏めて配置されている。」
「【0029】
このように構成された冷却液循環装置Bの冷却液は次のように流れる。なお、図1、3に図示した矢印は冷却液の流れ方向を示す。低温タンク4内に内蔵された冷却液はフィルタ5を介して循環ポンプ2に吸い込まれ、循環ポンプ2によって吐出される。吐出された冷却液は、ポンプ吐出配管13、冷凍機往き配管16、冷凍機入口接続口9、冷凍機側接続配管を順次通って冷凍機Aに供給される。冷凍機Aに供給された冷却液は、冷凍機Aを通過し、熱交換器(図示せず)によって冷却される。冷却された冷却液は、冷凍機の中を通り、次いで冷凍機側接続配管、冷凍機出口接続口10を順次通り、さらに冷凍機戻り配管17、流量調整弁3を順次通って、低温タンクに4内へ戻される。また、循環ポンプ2から吐出された冷却液は、ポンプ吐出配管13、冷却液往き配管14、冷却液出口接続口7、ウエハープローバ側接続ホースを順次通ってウエハーチャックに供給される。ウエハーチャックに供給されてウエハーチャックを冷却した冷却液は、ウエハープローバ側接続ホース、冷却液入口接続口8、冷却液戻り配管15を順次通って低温タンク4内に戻される。」
「【0030】
流量調整弁3は、冷凍機Aに供給される冷却液の流量を調節することによって、ウエハーチャックに供給される冷却液の流量を制御するとともに、ウエハーチャックに供給される冷却液の温度を制御する。リリーフ弁6は、循環ポンプ2によって吐出される冷却液の圧力を一定に保つように機能する。」
「【0031】
このように構成された本発明の実施の形態の冷却液循環装置Bでは、冷却液を内蔵するタンクを従来のような予備タンクの構成としないで、冷却液の循環回路中に設けた低温タンク4の構成とし、低温タンク4から循環ポンプ2に吸込まれた冷却液を、循環ポンプ2によってウエハーチャック及び冷凍機Aに供給し、ウエハーチャックを冷却した冷却液及び冷凍機Aによって冷却された冷却液を低温タンク4に戻すような冷却液循環回路を構成し、この低温タンク4内に循環ポンプ2、流量調整弁3、フィルタ5及びリリーフ弁6を配置したことによって、低温タンク4内の配管が簡素になるとともに、低温タンク4の外表面に断熱材の施工を行えば、循環ポンプ2、流量調整弁3、フィルタ5、リリーフ弁6に断熱材を施す必要がない。さらに、冷却液出口接続口7及び冷却液入口接続口8を循環ポンプ2の吐出口12の近傍に設けることが可能となり、冷却液往き配管14及び冷却液戻り配管15の長さを可及的に短くすることができる。このため、断熱材を施す機器及び配管が少なくなり、断熱材の施工を容易にし、製造コストを低減することができる。」
「【0032】
また、本発明の実施の形態の冷却液循環装置Bは、冷却液循環装置Bを構成する各機器及びこれらを接続する各配管が、低温タンク4内部も含め低温タンク4まわりに纏めて配置されており、しかも、断熱材を施す機器及び配管が少ないため、断熱材によって占められるスペースを小さくすることができるので、冷却液循環装置B全体の省スペース化が可能
となり、従来の冷却液循環装置のように広い構成スペースを必要としない。そのため、後述するように、冷却液循環装置Bが組み込まれる冷却ユニット全体のフットプリント(設置スぺース)を小さくすることができる。」
「【0033】
なお、前記実施の形態では、循環ポンプ2、流量調整弁3、フィルタ5及びリリーフ弁6を低温タンク5に内蔵したものを示したが、本発明はこれに限定されない。低温タンク4の大きさを考慮して、循環ポンプ2、流量調整弁3、フィルタ5及びリリーフ弁6の各機器のうち、一つの機器あるいは任意の複数の機器を内蔵するようにしてもよい。その組み合わせは自由であるが、少なくとも構成スペースの大きな循環ポンプ2を内蔵する形態が好ましい。なお、フィルタ5は必ずしも設ける必要はない。また、流量調整弁3あるいはリリーフ弁6に換えて他の適宜の弁を設けるようにし、これらを低温タンク4内に内蔵させるものであってもよい。」


















(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 図2の側断面図における「低温タンク4」の最下部に対する「ポンプ吐出配管13」の配置、及び図3の平断面図における「低温タンク4」に対する「ポンプ吐出配管13」の配置、並びに「低温タンク4」内の「循環ポンプ2の吐出口12」についての「循環ポンプ2の吐出口12には・・・ポンプ吐出配管13が接続されている。」(【0026】)という記載からみて、「低温タンク4」の最下部には、「ポンプ吐出配管13」が配置されている。
b 上記aに加え、「ポンプ吐出配管13には、継手13aを介して、冷却液出口接続口7に接続される冷却液往き配管14・・・が接続されている。」(【0026】)、「冷却液出口接続口7と冷却液入口接続口8は、冷却ユニット筐体1のリヤカバー1bに取り付けられた冷却液接続口取付部材21に、冷却液出口接続口7の軸心と循環ポンプ2の吐出口12の軸心が一致するように設けられている。」(【0024】)、並びに図2の側断面図における「ポンプ吐出配管13」、「冷却液往き配管14」及び「冷却液出口接続口7」の略水平といえる配置態様から、「ポンプ吐出配管13」及び「冷却液往き配管14」からなる配管(以下、「配管A」という。)の軸心と、「循環ポンプ2」の「吐出口12」の軸心とは一致し、「低温タンク4」の最下部には、「配管A」が配置されている。
c 上記bに加え、図1の背面図における「冷却液出口接続口7」及び「冷却液入口接続口8」の略同じ高さといえる配置態様、及び図3の平断面図における「ポンプ吐出配管13」及び「冷却液戻り配管15」の配置態様から、「循環ポンプ2」の「吐出口12」及び「冷却液戻り配管15」は、(「配管A」とともに、)「低温タンク4」の最下部に配置されている。
d 上記cに加え、「循環ポンプ2のポンプ本体2aと・・・リリーフ弁6は・・・低温タンク4の内部に設けられている。・・・リリーフ弁6は、循環ポンプ2のポンプ本体2aの前方に(図3における前後方向)に配置されている。」(【0023】)、「循環ポンプ2の吐出口12には、リリーフ弁6が接続されるとともにポンプ吐出配管13が接続されている。」(【0026】)、図3の平断面図における「循環ポンプ2」の「吐出口12」と「ポンプ吐出配管13」との間の「リリーフ弁6」の配置態様から、「リリーフ弁6」は、(「循環ポンプ2」の「吐出口12」、「配管A」及び「冷却液戻り配管15」とともに、)「低温タンク4」の最下部に配置されるものである。
e 上記dに加え、「循環ポンプ2・・・低温タンク4・・・リリーフ弁6、冷却液出口接続口7、冷却液入口接続口8・・・は、冷却液循環装置Bの各機器を構成している。」(【0022】)、及び「図1乃至3において、・・・符号4bは低温タンク4の液面を表示するレベル表示器、符号4b1はレベル表示器4bの接続配管、4b2は、レベル表示器接続口・・・図示していないが、低温タンク4には、従来の冷却液循環装置B’と同様、低温タンク4の液面を計測するレベル計が設けられ」(【0025】)から、液面を計測して使用される「低温タンク4」の少なくとも下部には、冷却液が満たされ、「低温タンク4」の最下部に配置されている「循環ポンプ2」、「吐出口12」、「リリーフ弁6」、「配管A」及び「冷却液戻り配管15」は、それぞれ冷却液中に配置されるものである。
f 「ウエハーチャックを低温(例えば、一55℃程度)に冷やす。」(【0002】)及び「冷却液循環装置Bは・・・冷却液をウエハーチャックに供給するウエハープローバ側接続ホース(図示せず)が接続される冷却液出口接続口7と、ウエハーチャックを冷却した冷却液を冷却液循環装置Bに戻すウエハープローバ側接続ホース(図示せず)が接続される冷却液入口接続口8・・・を備えている。」(【0021】)から、引用文献1の冷却液は超低温液体である。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「低温タンク4と、
低温タンク4内に収容される超低温液体中に配置され、吸込み口11から超低温液体を吸入し、吐出口12から超低温液体を送り出する循環ポンプ2と、
前記循環ポンプ2によって送り出される超低温液体を低温タンク4の外部に設けられたウエハーチャックに導く配管A及びウエハープローバ側接続ホースと、
ウエハーチャックから低温タンク4内部まで超低温液体を戻す冷却液戻り配管15及びウエハープローバ側接続ホースと、
前記超低温液体中に配置され、低温タンク4内において、循環ポンプ2の吐出口12に配管Aとともに接続され、循環ポンプ2によって吐出される冷却液の圧力を一定に保つように機能するリリーフ弁6と、
を備える冷却液循環装置B。」

イ 引用文献2
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2012/124363号(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「[0010]本発明の目的は、省スペース化を可能としつつ冷却効率の向上を図った液体供給システムを提供することにある。」
「[0036]液体供給システム100は、超低温の液体Lが収容される第1容器110と、第1容器110に収容された液体L中に配置される第2容器120と、第2容器120の内部に入り込むように配置されるベローズ130とを備えている。第2容器120内のうちベローズ130の外側の領域によって、第1ポンプ室P1を構成している。また、ベローズ130内も密閉空間となっており、この密閉空間が第2ポンプ室P2となっている。そして、第2容器120には、第1容器110内の液体Lを第1ポンプ室P1内に吸入する第1吸入口121と、吸入した液体Lを第1ポンプ室P1内からシステムの外部に通じる供給通路(供給管)K1に送出する第1送出口122とが設けられている。また、第2容器120には、第1容器110内の液体Lを第2ポンプ室P2内に吸入する第2吸入口123と、吸入した液体Lを第2ポンプ室P2内から供給通路K1に送出する第2送出口124も設けられている。また、第1吸入口121及び第2吸入口123には、それぞれ1方向弁121a,123aが設けられており、第1送出口122及び第2送出口124にも、それぞれ1方向弁122a,124aが設けられている。」
「[0037]また、駆動源としてのリニアアクチュエータ140によって往復移動するように構成された軸150が、第1容器110の外部からベローズ130の内部に入り込み、その先端がベローズ130の先端に固定されている。これにより、軸150が往復移動することによって、ベローズ130は伸縮する。」
(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されていると認められる。
「リニアアクチュエータを駆動源とするポンプを容器に収容し、ポンプは吸入口及び送出口を設け、1方向弁を備える吸入口から超低温液体を吸入し、1方向弁を備える送出口から超低温液体を送出する技術。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「低温タンク4」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明の「密閉容器」に相当し、以下同様に、「吸込み口11」は「吸入口」に、「吐出口12」は「送出口」に、「循環ポンプ2」は「ポンプ」に、「ウエハーチャック」は「被冷却装置」に、「配管A及びウエハープローバ側接続ホース」は「第1配管」に、「冷却液戻り配管15及びウエハープローバ側接続ホース」は「第2配管」に、「リリーフ弁6」は「第1逃し弁」に、「冷却液循環装置」は「液体供給システム」に、それぞれ相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「密閉容器と、
密閉容器内に収容される超低温液体中に配置され、吸入口から超低温液体を吸入し、送出口から超低温液体を送り出するポンプと、
前記ポンプによって送り出される超低温液体を密閉容器の外部に設けられた被冷却装置に導く第1配管と、
被冷却装置から密閉容器内部まで超低温液体を戻す第2配管と、
前記超低温液体中に配置される第1逃し弁と、
を備える液体供給システム。」

[相違点1]
吸入口から超低温液体を吸入し、送出口から超低温液体を送り出するポンプについて、本件補正発明は、「リニアアクチュエータによって駆動され」、「吸入口」及び「吸込口」にそれぞれ「一方向弁」を備えるのに対し、引用発明は、当該構成について特定されてない点。
[相違点2]
超低温液体中に配置される第1逃し弁について、本件補正発明は、「密閉容器内において第1配管に接続され、かつ第1配管の内部圧力が所定圧以上になることを抑制するように密閉容器内に超低温液体を逃がす」ものであるのに対し、引用発明は、「低温タンク4内において、循環ポンプ2の吐出口12に配管Aとともに接続され、循環ポンプ2によって吐出される冷却液の圧力を一定に保つように機能する」ものである点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明及び引用文献2記載の技術はともに、被冷却装置に超低温液体を供給するシステムであることで同一技術分野に属し、また、省スペース化を目的として、収容容器内にポンプを配する装置であることで技術が共通するものである((2)ア(ア)【0017】及び(2)イ(ア)[0010])。
さらに、 引用文献1には、「循環ポンプ2として歯車ポンプが図示されているが、冷却液を循環させることができるものであればどのような形式のポンプであってもよい。」(【0022】)と記載されており、引用発明は、他の形式のポンプを用いることが可能な装置である。
そうすると、引用文献2記載の技術に基づき、引用発明のポンプをリニアアクチュエータによって(往復)駆動される形式とすること、並びに、リニアアクチュエータとともに用いることが一般的な一方向弁なる部品を、同技術に基づき、ポンプの吸入口及び送出口に配することは、技術の具体化の際に当業者が適宜なし得る設計事項であるといえる。
よって、相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2について
引用文献1の従来技術を参照すると(特に、引用文献1の【0004】及び図5参照。)、リリーフ弁106はリリーフ配管113に設けられ、かつリリーフ配管113は、循環ポンプ102の吐出側配管112と、吸込側配管111に接続されたフィルタ105との間に接続して設けられるものである。
他方、引用発明は、引用文献1の図3平断面図の「低温タンク4」に対する「冷却液戻り配管15」の接続態様から理解できるとおり、「低温タンク4」内に収容された「リリーフ弁6」の周囲の空間は、「循環ポンプ2」の吸込側に対応する空間である。
そうすると、上記従来技術と同様のリリーフ弁に係るポンプ吐出側とポンプ吸込側との接続態様は、引用発明において、ポンプ吐出側の配管Aに接続された「リリーフ弁6」から、ポンプ吸込側の「低温タンク4」内への冷却液の放出により達成可能である。
また、引用発明における「リリーフ弁6」の機能である「循環ポンプ2によって吐出される冷却液の圧力を一定に保つ」ことにより、配管Aの内部圧力が所定圧以上になることを抑制可能であることは明らかである。
以上から、引用発明において、ポンプ吐出側の配管Aに接続された「リリーフ弁6」から、ポンプ吸込側に対応する「低温タンク4」内の空間に冷却液を逃がすようにして、配管の内部圧力が所定圧以上になることを抑制すべく構成することは、当業者が容易になし得る設計事項である。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年6月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年10月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載のとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、上記第2[理由]2に記載した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-10 
結審通知日 2018-05-15 
審決日 2018-06-07 
出願番号 特願2014-551940(P2014-551940)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
P 1 8・ 575- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
藤原 直欣
発明の名称 液体供給システム  
代理人 世良 和信  
代理人 金井 廣泰  
代理人 坂井 浩一郎  
代理人 森廣 亮太  

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