• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1342567
審判番号 不服2017-6975  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-15 
確定日 2018-07-18 
事件の表示 特願2015-122261「調剤装置におけるガンマ硬化されたRFIDタグの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月15日出願公開、特開2015-181053〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年(2007年)8月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2006年8月9日,米国,以下,左の日を「本願優先日」という。)の出願である特願2007-206746号の一部を,平成25年3月11日に特願2013-048112号として新たな出願とし,さらにその一部を,平成27年6月17日に新たな出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 7月16日 審査請求・手続補正・上申書
平成28年 5月17日 拒絶理由通知
平成28年11月24日 意見書・手続補正
平成29年 1月10日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 5月15日 審判請求・手続補正
平成29年 6月27日 手続補正
平成29年12月15日 上申書

第2 本願発明
本願の請求項6に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成28年11月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。ただし,「前記装置特有のデータ」は,「前記装置特有の情報のデータ」の誤記と認める。
「【請求項6】
滅菌された製薬構成要素のガンマ線照射されたロットのための追跡システムであって,
複数の製薬構成要素と,
複数の追跡タグであって,各タグは強誘電性メモリ装置を含み,各メモリ装置は装置特有の情報を含み,前記情報はガンマ線照射の前に前記装置に書き込まれており,各タグは前記複数の製薬構成要素のそれぞれ1つに取り付けられている,該タグと,
メモリ読取装置であって,ガンマ線照射の後に,前記メモリ装置から,前記装置特有の情報を得るためにユーザが使用可能である,該装置と
を含み,前記装置特有の情報のデータは前記ガンマ線照射によって影響を受けない,該システム。」

第3 引用文献及び引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特表2005-503870号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,広義の意味で,医療生成物情報装置(システム)に係わり,具体的には,体外血液および/または血液成分製品,特に病原体不活性化処理を施す生成物に関する情報の伝達など,医療装置での生成物識別および更新可能な情報の保存および検索のための高周波,磁気および/または電磁気通信およびデータ捕捉装置の実現および/または提供者/患者環境での生成物の製造,殺菌,保存および/または使用に関するものである。」
イ 「【背景技術】
【0002】
最終的に患者に注入するために,提供者から血液または血液成分を採集し,処理する分野では,提供者の情報を提供し,取り出された様々な血液成分製品(生成物)を適切に識別して,分類することが望ましい。これは従来,個々の血液または血液成分製品を含む血液成分容器またはバッグの面に取り付けたラベルに表示を印刷することによって,これまで実行されてきた。しかし,病原体不活性化剤へ曝露したり,潜在的に光照射したりするなど,病原体不活性化処理にかけることが好ましい特定の血液成分に関して,容器またはバッグの面にある従来のラベルは,中身へのこのような光照射を遮断することがあり,その結果,照射が不完全になり,病原体不活性化処理が成功しない。したがって,容器は,照射による血液製品容器への光透過を遮断するようなラベルまたは同様の表示がほぼないことが好ましい。
【0003】
さらに,特定の容器内の血液製品が,病原体不活性化剤および/または照射に曝露するなど,病原体不活性化処理にかけたか否かを示す迅速かつ確実な手段があることも望ましい。また,容器の識別に使用する表示は,コンピュータ化した在庫制御システムで容器およびその中身を追跡し,分類できるよう,ラベル情報またはデータを含むことが望ましく,これによって手作業の在庫制御システムで発生しそうな識別の誤りまたは損失の危険を低下させることができる。
【0004】
したがって,血液または血液成分容器,特に病原体不活性化処理のために情報および識別でバス,システムおよび/または方法を改善する必要がある。さらに,血液成分の分離および/または病原体不活性化を含め,血液処理処置の様々な部分を通して血液処理容器または装置から情報を読み,そこに情報を書き込むことが望ましい。
【0005】
高周波識別(以下では「RFID」と呼ぶ)は,最近になって非常に急速に成熟した技術である。RFIDテクノロジの一提供者は,Intermec Technology Corporation(米国テキサス州ダラス)であり,同社はIBM Corporation(米国ニューヨーク州Armonk)からRFIDの電子チップ/マイクロチップの基礎技術を取得した。RFIDテクノロジにより,電磁波,特に高周波(RF),通常は2.45GHzまたはそれに近い値を使用して,RFIDチップ/マイクロチップに読み書きすることができる。マイクロ波および極超短波(UHF)スペクトルも使用することができるものも含め,様々な種類の電磁波を使用してもよい。このテクノロジのさらなる重要な特徴は,チップ/マイクロチップを高周波(RF)で電源投入できることである。つまり,情報/識別装置/チップ/マイクロチップは,装置/チップ/マイクロチップに十分に近い個々の場にRF源を配置するまで,基本的に受動的でよい。
【0006】
次に,この種のRFID装置/チップ/マイクロチップ(以下では「チップ」と呼ぶ)を対象に統合することができる。チップまたはチップを統合する先の対象は,自身上に小型アンテナを有し,これがチップとエネルギ/データ通信接触する。代替方法は,チップがアンテナと実際に物理的に接触しないでよい。次に,「チップ・オン・ボード」と呼ばれる技術でチップを装着することができる。これは基本的に,通常はこれに伴うチップのパッケージングを実行せずに,チップを装着することができる。ここで,典型的なチップは,恐らく2.5mm平方で深さ1.5mmでよい。アンテナを対象に「プリント」することもできる。次に,チップをアンテナにはんだまたは溶接で取り付ける。このようなチップ・アセンブリはガンマ線に耐えることができ,実際にガンマ線に耐性があることが好ましく,したがってアセンブリ全体(チップ・装置/アセンブリおよびチップ・アセンブリを装着した対象)をガンマ線で殺菌することができる。チップは,決して消去されないようロックしたフェーズにプログラムするか,データを上書き可能にすることができる。チップおよび関連の読み書き装置は,衝突検出プロトコルを有することも好ましく,これによって1つまたは複数のチップを1つのRF場で電源投入し,その同じRF場にある間に,個々にまたはほぼ同時に質問/読み書きすることができる。これらの機能を実行可能な距離は,部分的に伝送力およびアンテナ設計の関数である。これらの装置/チップは,通常,1kビットの記憶量を有し,「一意の」識別子を有する。これは通常,許可を得て無期限に100,000回以上読み書きすることもできる。」
ウ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によると,血液製品容器およびチューブ・セットの情報/識別システムおよび方法が改善される。本発明は,血液,血液成分または生物学的液体製品,または他の同様の材料または物質,特に成分分離または光放射線での潜在的照射を含む病原体不活性化などの血液処理にかける材料および物質に,読み書きデータ記憶および検索を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
情報/識別方法およびシステムの使用は,例えば米国特許第5,769,811号(使い捨てチューブ・マニホルドのバーコード・ラベル)で示されているように,使い捨ての血液チューブ・セットで概ね知られている。しかし,本発明の概念は,ある種の読み書きチップを血液または血液成分容器および/またはチューブ・セットに組み込むことを含む。その例には,読み書きチップを血液成分バッグまたはチューブ・セット・カートリッジまたはカセットに配置することがある。このような読み書き装置/チップがバッグまたはカートリッジ上に常にあると,血液成分バッグまたはチューブ・セット/カセットまたはその内容に関するさらに多くの詳しい情報を,処置前,処置中,または処置後,あるいは処置の結果としてさえ,血液処理の様々な段階でチップに書き込み,記憶することができる。
【0009】
したがって,製造または製造後在庫データなどの情報を,血液処理での製造,殺菌,輸送,保存および/または使用という多くの異なる段階で各チップに書き込むことができ,このようなデータは,1回しかこのようなチップに書き込む必要がない。さらに,チップに書き込んだ情報を,必要に応じて変更することができる。さらに,この情報は,バッグまたはユニットまたはカセットごとに別個にすることができ,したがって別個のバッグおよび別個の使い捨てチューブ・セットはそれぞれ,自身上に特に書き込まれた容器の製品情報および/または容積情報またはプロセス制限情報など,貴重でしかも個別の情報を有することができる。さらに,遠心/分離,透析または病原体不活性化などの血液処理のエンド・ユーザ作業中に,使い捨てのセット/カセットに情報を読み書きすることができる。個々の処理機械も使用して,チップに読み書きすることができる。したがって,実行中にユーザ/提供者または患者固有のデータを,単純および/または自動的にチップに書き込むことができ,したがって提供者/患者の介護または技術的操作分析を,必要に応じて後にさらに容易に実行することができる。不具合が発生した場合,提供者/患者は,チップに書き込まれた回復ポイントで別の処理機械にて再開するか,技術的不具合分析をさらに容易に実行することができる。血液製品を後の輸血に使用する提供者の場合は,提供者情報(例えば血液型または他の履歴データ)を,実際の提供前,提供中,または提供後に書き込むことができる。次に,患者の介護,在庫管理またはその他を改善するため,血液製品の最終的受容者に輸血する前,輸血後または輸血時点で,この情報の一部または全部をチップから通信/読み出すことができる。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「血液製品容器の情報/識別システムであって,読み書きチップを血液成分バッグに配置し,チップに書き込んだ情報を,バッグごとに別個にすることができ,したがって別個のバッグはそれぞれ,自身上に特に書き込まれた容器の製品情報など,貴重でしかも個別の情報を有することができ,血液処理のエンド・ユーザ作業中に,個々の処理機械も使用して,チップに読み書きをすることができるものであること。
この情報/識別システムの背景技術として,容器の識別に使用する表示は,コンピュータ化した在庫制御システムで容器を追跡するもの,また,チップ・アセンブリはガンマ線に耐えることができ,したがってチップを装着した対象をガンマ線で殺菌することができ,これらのチップは,通常1kビットの記憶量を有し,「一意の」識別子を有するもの,があること。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特表2005-503669号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0002】
キャパシタの充電状態に基づくメモリ(DRAM,SRAM,フラッシュメモリ)は,元素トランジスタのサイズが小さくなるに伴なって,イオン化放射線(たとえば宇宙線等)の影響を益々受け易くなってきている。また,強誘電体に基づくメモリ(FRAM)は経年劣化の問題が深刻である。磁気-電子分野における近年の研究開発の結果は,磁気接合の磁気抵抗に基づく新規なタイプのメモリを設計することを可能にした。換言すれば,これらの新規なメモリの動作原理は,もはや電荷の蓄積には基づいておらず,メモリを構成する元素の磁化の相対的方向に基づいている。このような磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)は,高速であること(書き込み及び読み出し時間が数ナノ秒),不揮発性であること,書き込み及び読み出しを繰り返しても劣化がないこと,イオン化放射線の影響を受け難いこと等の多くの長所を有している。磁気ランダムアクセスメモリは,まずフラッシュメモリと置き換えられ,長期的にはDRAM及びSRAMに代わって汎用メモリとなるものと目されている。」
(2)引用技術的事項2
前記(1)より,引用文献2には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項2」という。)」が記載されていると認められる。
「電荷の蓄積に基づかないメモリは,イオン化放射線の影響を受け難いこと。」
3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭52-125245号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「本発明は強誘電体装置(ferroelectric device)の製造方法に関する。」(2頁左上欄10-11行)
イ 「従って,本発明の1つの目的は,現在この技術分野の製品により保証されている書き込み/読み取りサイクル数を超えた強誘電体装置及びその製造方法を提供することにある。」(2頁左下欄3-6行)
ウ 「上記の方法により製造した実際の装置の具体例として,ガラス被覆した28ピンセラミック強誘電体からなる包装メモリーを1パイントの水に挿入しその中に約72時間セットした装置を4時間毎にチェックしたところ,72時間後でまた十分に活性であった。」(2頁右下欄13-18行)
エ 「また,本発明の装置は耐放射線性がある。本発明の装置は10^(7)ガンマーの放射線を受けても正常に機能しデータを残した。その際,該装置はガンマー線源に近接して位置させておいた。これに対し,双極装置は10^(6)ガンマーで破壊し,また市販の他のメモリー装置は10^(5)ガンマーまたはそれ以下で破壊した。」(3頁右下欄7-13行)
(2)引用技術的事項3
前記(1)より,引用文献3には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項3」という。)が記載されていると認められる。
「強誘電体メモリーは,ガンマー線に対して耐放射線性があり,ガンマー線を受けても正常に機能しデータを残すこと。」

第5 対比及び判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「バッグ」は本願発明の「製薬構成要素」に相当(本願請求項8及び本願明細書段落【0022】参照。)し,「別個のバッグはそれぞれ,・・・個別の情報を有する」ものであることから,「バッグ」が複数製造されるものであることが明らかであるから,「ロット」単位で製造されるものであり,引用発明の「血液製品容器の情報/識別システム」は,その前提とする背景技術として「容器の識別に使用する表示は,コンピュータ化した在庫制御システムで容器を追跡するもの」であるから,下記相違点1を除いて,本願発明の「製薬構成要素のロットのための追跡システムであって,複数の製薬構成要素と」を満たす。
イ 引用発明の「チップ」は,「血液成分バッグに配置し,チップに書き込んだ情報を,バッグごとに別個にすることができ,したがって別個のバッグはそれぞれ,自身上に特に書き込まれた容器の製品情報など,貴重でしかも個別の情報を有することができ」るものであり,またその前提とする背景技術として「チップは,通常1kビットの記憶量を有し,「一意の」識別子を有するもの」であるから,下記相違点2を除いて,本願発明の「複数の追跡タグであって,各タグはメモリ装置を含み,各メモリ装置は装置特有の情報を含み,前記情報は前記装置に書き込まれており,各タグは前記複数の製薬構成要素のそれぞれ1つに取り付けられている,該タグと」を満たす。
ウ 引用発明においては「血液処理のエンド・ユーザ作業中に,個々の処理機械も使用して,チップに読み書きをすることができるものである」から,前記イを考慮すると,「個々の処理機械」は本願発明の「メモリ読取装置」に相当し,下記相違点3を除いて,本願発明の「メモリ読取装置であって,前記メモリ装置から,前記装置特有の情報を得るためにユーザが使用可能である,該装置とを含む」を満たす。
エ すると,本願発明と引用発明とは,下記(2)の点で一致し,下記(3)の点で相違する。
(2)一致点
「製薬構成要素のロットのための追跡システムであって,
複数の製薬構成要素と,
複数の追跡タグであって,各タグはメモリ装置を含み,各メモリ装置は装置特有の情報を含み,前記情報は前記装置に書き込まれており,各タグは前記複数の製薬構成要素のそれぞれ1つに取り付けられている,該タグと,
メモリ読取装置であって,前記メモリ装置から,前記装置特有の情報を得るためにユーザが使用可能である,該装置とを含む,該システム。」
(3)相違点
ア 相違点1
本願発明においては「製薬構成要素のロット」が「滅菌され」「ガンマ線照射された」ものであり,さらに「前記装置特有の情報のデータは前記ガンマ線照射によって影響を受けない」のに対し,引用発明においてはこの旨が明示されていない点。
イ 相違点2
本願発明においては「メモリ装置」が「強誘電性メモリ装置」であり前記情報は「ガンマ線照射の前に」前記装置に書き込まれているのに対し,引用発明においてはこの旨が明示されていない点。
ウ 相違点3
本願発明においては「メモリ読取装置」が「ガンマ線照射の後に,」前記装置特有の情報を得るためにユーザが使用可能であるのに対し,引用発明においてはこの旨が明示されていない点。
2 相違点についての判断
相違点1ないし3についてまとめて検討する。
引用発明は「血液製品容器の情報/識別システム」であるから,血液製品の安全性を確保するために殺菌に対応する必要があることは当業者に明らかである(前記第3の1(1)ア参照。)。そして,引用発明は「チップを装着した対象をガンマ線で殺菌することができ」ることを前提としており,いずれかの段階でチップを装着したバッグをガンマ線で殺菌することが示唆されている。そして,引用文献1にはエンド・ユーザによる「血液処理での殺菌」が記載されている(前記第3の1(1)ウ【0009】)が,バッグの製造者からエンド・ユーザまでの経路でバッグが汚染される可能性を鑑みて,エンド・ユーザによる「血液処理」の直前にバッグをガンマ線で殺菌することは,当業者が容易に思いつくことである。そして,引用発明のバッグに配置されるチップには「容器の製品情報など,貴重でしかも個別の情報」が書き込まれており「容器の製品情報」はバッグの製造者によって書き込まれると解することが自然であるから,チップに情報が書き込まれた後にチップを配置したバッグをガンマ線で殺菌することが,当業者にとって容易に導出される。
すると,引用技術的事項2により示される「イオン化放射線の影響を受けがたい」「電荷の蓄積に基づかないメモリ」,あるいはより具体的に引用技術的事項3により示される「ガンマー線に対して耐放射線性がある」「強誘電体メモリー」を採用することは,当業者にとって,引用発明にガンマ線殺菌を適用する際に考慮すべき設計的事項にすぎない。
したがって,相違点1ないし3を解消することは,当業者が容易になし得ることである。
3 請求人の主張について
(1)主張の概要
請求人は,補正された審判請求書において,概略下記の主張をしている。(「主張1」等の見出しは,当審において付与した。)
ア 主張1
引用文献1の発明においては、病原体を不活性化する薬剤を用いて、容器の内部に含まれる血液製品を不活性化するもので容器に対して病原体を不活性化する処理を施すものではないのに対し,本願発明は、滅菌対象は製薬構成要素(請求項8に具体的例として挙げられるものを包含する上位概念)であって,血液製品ではない。
また、引用文献1の発明においては、光照射と薬剤との組合せにより、病原体を不活性化するもので,血液製品へのダメージを考慮して、血液製品に導入される光のエネルギーを制限しようとしており、ガンマ線を排除している。
イ 主張2
引用文献1段落0006における記載は、背景技術に関するものであり、本発明の実質的な開示部分に対して適用されるかどうかは別問題である。特に、データがチップに既に書き込まれた時点でガンマ線を適用することについては、全く開示されていない。また、引用文献1段落0006における記載は、ガンマ線に対してチップが耐性を有すること、つまり、物理的に破壊されないことを意味しているにすぎず,記憶したデータのコンテンツが破壊されないことを意味しているわけではない。
また、明細書段落0055においては、殺菌に関する言及が二か所ほどあるが、一番目の言及では、特に具体的な殺菌方法について言及しておらず,明細書全体を参酌すると,この記載は、光照射による不活性化を意味しており、ガンマ線による滅菌は意味していない。二番目の言及では、ETOやガンマ線についての記載があるが、これらの手法がどのタイミングで適用されるかについては全く開示されていないし、データが記憶されるタイミングや、データを読み取るタイミングとの関係も不明である。
ウ 主張3
また、引用文献1の図6は、バッグの製造方法のシステムを開示している。該システムにおいて、複数のチップが図示されている。また、引用文献1段落0055の記載によれば、情報の書き込みは、バッグに取り付けられるチップではなく、カセット110のところに配置されたチップ15aで行われている。そして、チップ15aは、病原体不活性化処理を施すバッグ60?80からは離れたところに位置している。従って、チップ15aに対して滅菌が行われるわけではない。
エ 主張4
引用文献1で開示されているRFIDチップは,Dr.Patrick King氏の証言(宣誓書の3頁目 枠線内参照:参考資料1)によれば,EEPROMメモリであるか、或いはその蓋然性が高い。
実験データによれば,紫外線UVによる滅菌の場合、メモリの応答については、ほとんど影響を受けていない結果となっているが,ガンマ線による殺菌の場合、EEPROMは、全て許容できない応答を示す結果となっている。
以上のことを総合すると、引用文献1の明細書段落0006で述べているRFIDチップのガンマ線に対する耐性は、コンテンツを保持することを意味するのではなく、物理的に破壊されないことを意味すると考えられる。
オ 主張5
引用文献2?3は、強誘電性メモリや磁気抵抗メモリに関して説示するために引用された文献に過ぎない。しかし、RFIDチップの分野における当業者の有する出願時の知識レベルの範囲では、こうしたメモリの存在は認知することはない。当該メモリとRFID分野との関係や応用がまだ考慮されていなかった(宣誓書の6頁目 枠線内参照:参考資料1)。
従って、本願発明の優先日において、引用文献1に記載の発明の分野に属する当業者が、引用文献2?3の技術を理解し、採用することは容易ではない。
(2)主張の検討
ア 主張1について
前記第5の2に示したとおり,エンド・ユーザによる「血液処理での殺菌」とは別にその直前にバッグをガンマ線で殺菌することは,当業者が容易に思いつくことである。血液製品へのダメージを考慮しても,血液製品が充填される前に空のバッグに対してガンマ線殺菌することは排除されない。
よって,請求人の主張は採用できない。
イ 主張2について
引用文献1段落0006の記載は「背景技術」として記載されているのであるから,同段落0007ないし0009に記載された「情報/識別システム」の前提として記載されているものである。
そして,前記第5の2に示したとおり,チップを装着したバッグをガンマ線で殺菌することが示唆されており,その上で,具体的なタイミングを決め,記憶したデータのコンテンツが破壊されないように「強誘電性メモリ」を採用することは,当業者が容易に設計できることである。
よって,請求人の主張は採用できない。
ウ 主張3について
前記第3の1に示したとおり,引用発明としているのは引用文献1の段落【0007】ないし【0009】に記載された「情報/識別システム」であって,引用文献1に記載された「図6の実施形態」(同【0050】参照。)ではないから,主張3は関係のないものである。
なお,段落【0055】には,殺菌完了等を識別するためのコード化したデータをチップ15aに入れることが記載されているが,このデータは「読み取り/書き込み装置」を用いて入れられるものであり,「読み取り/書き込み装置」は読み取ったデータを書き込むのであるから,バッグに取り付けられるチップ15bないしcから読み取った殺菌完了等を識別するためのコード化したデータをチップ15aに入れると解しても何ら矛盾は生じない。
エ 主張4について
引用文献1の段落【0006】には,「このようなチップ・アセンブリはガンマ線に耐えることができ,実際にガンマ線に耐性があることが好ましく,したがってアセンブリ全体(チップ・装置/アセンブリおよびチップ・アセンブリを装着した対象)をガンマ線で殺菌することができる。」という記載の後に「これらの装置/チップは,通常,1kビットの記憶量を有し,「一意の」識別子を有する。」と記載されているのであるから,「一意の」識別子を含む記憶についてもガンマ線に耐性があると,当業者ならば理解する。「一意の」識別子が失われるのであれば,「RFID」装置としての意味をなさないからである。
同段落【0006】は,前提となる背景技術を概括的に記載したにすぎないから,当業者は,まずは上述のように理解する。その上で同段落【0005】に記載されたRFID技術が実際にはEEPROMメモリを用いるものであることや,実験してみるとEEPROMはガンマ線による殺菌に許容できないなどという詳細な検討は,それが行われるとしても,前記の理解の後に行われることである。
してみると,同段落【0006】は,概括的な記載として,「チップを装着した対象をガンマ線で殺菌することができる」ことを示しているといえる。
オ 主張5について
請求人の主張は,進歩性の判断にあたり,現実の技術水準を確定する必要があるという我が国で採用されていない考え方に基づいた主張であり,そのこと自体すでに失当である。RFIDチップの分野とその構成部品であるメモリの分野とは,技術分野としての関連性があり,関連する技術分野における技術を採用することに進歩性を肯定する根拠を認めることはできない。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第6 結言
以上のとおり,本願の請求項6に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-16 
結審通知日 2018-02-20 
審決日 2018-03-05 
出願番号 特願2015-122261(P2015-122261)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 小田 浩
深沢 正志
発明の名称 調剤装置におけるガンマ硬化されたRFIDタグの使用  
代理人 アクシス国際特許業務法人  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ