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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1342597
審判番号 不服2017-10773  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-20 
確定日 2018-07-26 
事件の表示 特願2016-102152「洗濯機の操作表示装置および洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月23日出願公開、特開2016-168354〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月8日に出願した特願2012-175720号の一部を平成28年5月23日に新たな特許出願としたものであって、平成29年1月26日付けの拒絶理由の通知に対し、同年3月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月20日に審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明(本願発明の認定)
本願の請求項に係る発明は、 特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「指で触れるときの静電容量の変化を検出するタッチパネル表示部を備え、前記タッチパネル表示部を傾斜して配置したことを特徴とする洗濯機の操作表示装置」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2012-130424号公報
引用文献2.特開2010-198336号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特表2011-522714号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献
1.原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

「【0001】
本発明は、洗濯物を洗濯及び脱水し、その後、乾燥運転を実行する洗濯乾燥機に関する。」

「【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明の実施の形態に係る洗濯乾燥機100の外観を示す概略斜視図、図2は図1に示す洗濯乾燥機の側面断面図である。
本発明に係る洗濯乾燥機100は、前面に開口部11が設けられた外箱1と、外箱1内に配置された有底円筒形状の水槽3と、水槽3内に回転自在に設けられ、洗濯物を収容する有底円筒形状のドラム4と、洗濯物を乾燥させるための乾燥部6と、外箱1の前面の下部分に設けられたパネル12と、外箱1の底部に設けられた底台13と、水槽3の後部を弾性支持する2本のダンパ9とを備えている。外箱1の開口部11にはドア2がヒンジにより回動自在に取り付けられている。
【0035】
外箱1の上部には、洗剤、漂白剤及び柔軟剤を収容する洗剤ケース14と、操作キー及びタッチパネル式の表示部を有する操作部8とが設けられている。操作部8の操作キーには、電源キー、運転開始キー等の他に、洗濯乾燥コース(例えば標準、わが家流、念入り、ドライ、毛布等の複数段階)を入力するキーも設けてある。操作部8の裏側(外箱1の内部側)には、洗濯乾燥機100の動作を制御する制御部7が配置されている。また、外箱1の天面の後部には、天面の前部よりも低い段部15が設けられている。」

「【0048】
図3は、洗濯乾燥機100の制御ブロック図である。
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)71、洗濯乾燥機100の全体を制御するための制御プログラム及び運転時間テーブル73を格納したROM72、及び作業領域としてのRAM74を備えたマイクロコンピュータ(マイコン)で構成される。CPU71が、ROM72に格納された制御プログラムをRAM74上に読み出し、処理中のデータを一時的にRAM74に格納しながらその制御プログラムを実行する。
運転時間テーブル73は、洗濯乾燥コース毎に、洗濯物の布量及び布質別に、ユーザが選択する運転時間及び変更量の度合いに応じた最短運転時間(下限運転時間)及び最長運転時間(上限運転時間)を設定されている。運転時間のデータは、洗濯乾燥コース、布量及び布質毎に行った乾燥試験のデータに基づいている。
【0049】
制御部7には、水位センサ30、第1温度センサ63c,第2温度センサ63dの検出信号、及び操作部8の操作キーの信号が入力される。制御部7からは、操作部8の表示部に対する表示信号の他に、ドラムモータ5、ファンモータ61c、PTCヒータ62、給水弁27及び排水モータ24に対する駆動信号が出力される。」

「【0055】
CPU71は運転時間の設定後、布質の判定方法の指示を受け付けたか否かを判定する(S4)。CPU71は、図6に示す布質の判定方法の設定画面を操作部8の表示部に表示し、ユーザから布質の判定方法の指示を受け付けたか否かを判定する。CPU71は、布質の判定を「減水量の検出」及び「ドラムモータ5のトルクの変動を検出」の2種類の方法で行うか、洗濯物の布量に応じ、いずれか1種類の方法で行うかの指示を受け付ける。CPU71は前記指示を受け付けていないと判定した場合(S4:NO)、処理を繰り返す。
なお、この布質の判定方法の指示の受付は、洗濯乾燥の都度行わずに、洗濯乾燥機100の設置時、又は所定期間毎に行うことにしてもよい。」

「【0061】
以下に、上述のステップS3の運転時間の設定処理について詳述する。
図7はCPU71による運転時間の設定の処理の手順を示すフローチャート、図8は変更する運転時間を設定する画面の一例を示す図、図9は運転時間の変更の度合いを設定する画面の一例を示す図である。
まず、CPU71は、図8に示す設定画面を操作部8の表示部に表示し、ユーザより標準設定から変更する運転時間の設定の指示を受け付けたか否かを判定する(S31)。図8の設定画面において、洗濯物が疎水性である場合(化繊多めの場合)に標準(混紡)の運転時間から変更する(短くする)運転時間として、「最長運転時間」、及び「最短・最長運転時間(の両方)」のいずれのボタンが選択されたかをCPU71は判定する。そして、洗濯物が親水性である場合(綿多めの場合)に変更する(長くする)運転時間として、「最短運転時間」、及び「最短・最長運転時間」のいずれのボタンが選択されたかを判定して、制御部7は前記設定の指示の受付の有無を判定する。制御部7は前記指示を受け付けていないと判定した場合(S31:NO)、処理を繰り返す。」

2.引用文献1の【図1】及び【図2】の記載から、外箱1の前面の上部は、傾斜していることがわかり、この外箱1の前面の上部に操作部8が設けられているといえる。

3.上記1から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(1)操作部8は、タッチパネル式の表示部を有しており、ユーザより布質の判定方法の指示と運転時間の設定の指示を受け付けるものであるから、タッチパネル式の表示部はユーザより指示を受け付けるものといえる。

(2)上記2から、操作部8は、外箱1の前面の上部に傾斜して設けられており、この操作部8はタッチパネル式の表示部を有しているから、該タッチパネル式の表示部は、傾斜して洗濯乾燥機に配置されているといえる。

4.上記1ないし3から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザより指示を受け付けるタッチパネル式の表示部を有し、前記タッチパネル式の表示部を傾斜して配置した洗濯乾燥機の操作部。」

第5 対比(一致点、相違点の認定)
本願発明と引用発明とを対比する。
1.引用発明の「タッチパネル式の表示部」は、本願発明の「タッチパネル表示部」に相当し、引用発明の「タッチパネル式の表示部を有し」は、本願発明の「タッチパネル表示部を備え」に相当する。
引用発明の「ユーザより指示を受け付けるタッチパネル式の表示部」は、ユーザが指で触れて、このユーザからの指示を受け付けることを想定しているものと解されるが、指で触れたことの検出方式を特定するものではないから、本願発明の「指で触れるときの静電容量の変化を検出するタッチパネル表示部」と、「指で触れたことを検出するタッチパネル表示装置」である点で一致する。
また、引用発明の「洗濯乾燥機の操作部」は、表示部を有しているから、本願発明の「洗濯機の操作表示装置」に相当する。

2.以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「指で触れたことを検出するタッチパネル表示装置を備え、前記タッチパネル表示部を傾斜して配置した洗濯機の操作表示装置。」

【相違点】
タッチパネル表示部の検出方式について、本願発明は、「指で触れるときの静電容量の変化を検出する」のに対し、引用発明は、特定されていない点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。
まず、引用文献1に接した当業者は、引用発明のタッチパネル式の表示部は指で触れたことの検出を行うものであるから、この検出を何らかの方式で行っていると認識するし、このような指で触れたことを検出する方式として、静電容量の変化を検出することにより行う方式を備えたタッチパネル表示装置は、本願の出願前において周知技術(周知例として、原査定の理由で提示した特開2010-198336号公報(特に「【0001】本発明は、…特に、静電容量方式のタッチパネル及びそれを備えた表示装置に関する。」、「【0113】…より具体的には、…電子機器(例えば、…洗濯機、…)にも適用することができる。」の記載参照。)、同じく原査定の理由で提示した特表2011-522714号公報(特に、「【0002】…本開示は、タッチスイッチに関し、更に詳細には、…静電容量型スイッチに関する。」、「【0019】本開示は、自動車用途に制限されるものではない。例えば、ここに記載されているスイッチは、タッチ式スイッチパネルを有する家庭電気器具(すなわち、…洗濯機、…)と共に用いられてもよい。…」の記載参照。)、審決で新たに提示する特開2012-104045号公報(特に、「【0022】また、カバー部3は、透明タッチパネル部42の上面(前面)に透明接合材によって接合してもよいし、透明タッチパネル部42が例えば静電容量式である場合には、該透明タッチパネル部42から離隔させて透明タッチパネル部42の上方に配置してもよい。…」、「【0053】本発明の表示装置は、タッチパネル式の入力部を備えた携行型および据置き型のいずれの電子機器の表示装置としても用いることができる。…据置き型電子機器の具体例としては、…冷蔵庫、…のいわゆる白物家電(生活家電)や、…が挙げられる。」の記載参照。)、審決で新たに提示する特開2010-217716号公報(特に、「【0027】本実施形態では、…簡易な表示機能を必要とする他の電子(電気)機器、例えば、…洗濯機、掃除機、空気清浄機等を電子機器100としてもよい。」、「【0065】タッチパネル310は、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、静電容量方式等の各種方式に固有の原理によって、ユーザが接触した位置を後述するタッチパネル制御部342に伝送する。また、タッチパネル310の操作入力を受ける面は検知領域を有している。検知領域には電子機器が行う機能が対応付けられている。」の記載参照。)がある。)であり、上記周知例に示されるように当該周知技術は、洗濯機に適用することができるものである。
したがって、洗濯機に適用することができる上記周知技術を引用発明に用いて、指で触れたことの検出する方式として、本願発明の上記相違点に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

審判請求人は、審判請求書の審判請求の理由において、「本願発明は、静電容量式のタッチパネル表示部を搭載した洗濯機において、特に液体洗剤による誤検出を抑制することを課題とするもの」であり、「本願発明は、上記課題を解決するために、タッチパネル表示部を傾斜させて配置し」、「傾斜させて配置することにより、タッチパネル表示部に付着した液体洗剤等は、傾斜に沿って流れ落ちるために、静電容量式のタッチパネル表示部であっても誤検知を抑制することができ」る旨を主張する。しかし、まず本願発明は上記第2に示した通りであって、タッチパネル表示部を傾斜させて配置することは特定されているが、その傾斜の程度は特定されておらず、また本願の発明の詳細な説明にも傾斜の程度は、記載されてはおらず、さらに審判請求人が主張する本願発明の課題や「傾斜させて配置することにより、タッチパネル表示部に付着した液体洗剤等は、傾斜に沿って流れ落ちる」ことも本願の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)には示されておらず、このような事項が本願明細書等に接した当業者にとって自明であるともいえない。そして、傾斜の程度によっては、タッチパネル表示部に付着した液体洗剤が流れ落ちないことも想定できるから、審判請求人が主張する本願発明の課題は、本願発明によって解決される課題であるとはいえない。
また、仮に「液体洗剤による誤検出を抑制すること」が洗濯機の分野における自明の課題であったとしても、引用発明もタッチパネル式の表示部を傾斜して配置したものであり、少なくとも本願発明と同程度に「タッチパネル式の表示部に付着した液体洗剤等は、傾斜に沿って流れ落ちる」ものであるから、引用発明によって、上記課題が解決できることは当業者にとって自明であり、この点において本願発明と引用発明とに差異はない。そして、上記のとおり、引用発明における指で触れたことの検出する手段として、周知技術を用いることは,当業者にとって容易であるから、審判請求人の主張は採用することができない。

3.そして、一致点及び相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、そのように判断した原査定の理由について取り消すべき理由はないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-24 
結審通知日 2018-05-29 
審決日 2018-06-11 
出願番号 特願2016-102152(P2016-102152)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大瀬 円  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 山村 和人
長馬 望
発明の名称 洗濯機の操作表示装置および洗濯機  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  

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