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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1342599
審判番号 不服2017-11488  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-02 
確定日 2018-07-26 
事件の表示 特願2016-1269「リチウムイオン二次電池用電解液、リチウムイオン二次電池、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年3月31日出願公開、特開2016-42493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、平成23年12月26日に出願した特願2011-283571号(以下、「原出願」という。)の一部を平成28年1月6日に新たな特許出願としたものであって、平成28年10月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月28日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものの、平成29年4月26日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年8月2日に請求された拒絶査定不服審判である。

2 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年12月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、
下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種と
を含有し、
前記電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?10重量%であり、
前記電解液中における前記ジニトリル化合物の含有量は、0.1重量%?10重量%であり、
前記電解液中における前記スルフィニル化合物の含有量は、0.1重量%?5重量%であり、
前記電解液中における前記リチウム塩の含有量は、0.01mol/kg?1mol/kgである、
リチウムイオン二次電池。
【化5】

(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)
NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)
【化3】

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)
【化4】

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」

3 引用刊行物の記載事項及び引用発明
(1)引用刊行物1の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願日前である平成22年8月5日に頒布された「特開2010-170886号公報」(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付した。以下、同じ。
ア 特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
正極および負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え、
前記溶媒は、式(1)で表される有機酸と、式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種とを含む
二次電池。
【化1】

(Xは-(O=)C-(CR_(2) )_(a) -C(=O)-、-(O=)_(2) S-(CR_(2 ))_(a) -S(=O)_(2 )-、-(O=)C-(CR_(2) )_(a) -S(=O)_(2) -、-(CR_(2) )_(b) -C(=O)-あるいは-(CR_(2) )_(b) -S(=O)_(2) -である。ただし、Rは水素基、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アリール基である。aは0?4の整数であり、bは1?5の整数である。)
【化2】

(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)
【化3】

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」
「【請求項6】
前記溶媒は、式(4)?式(6)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル、式(7)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステル、式(8)で表されるハロゲン化環状炭酸エステル、スルトン、および酸無水物のうちの少なくとも1種を含む請求項1載(当審注:「載」は「記載」の誤記。)の二次電池。
【化9】

(R11およびR12は水素基あるいはアルキル基である。)
【化10】

(R13?R16は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
【化11】

(R17はアルキレン基である。)
【化12】

(R21?R26は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
【化13】

(R27?R30は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
【請求項7】
前記不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンあるいは炭酸メチレンエチレンであり、前記ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチルあるいは炭酸ビス(フルオロメチル)であり、前記ハロゲン化環状炭酸エステルは、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンである請求項6記載の二次電池。
【請求項8】
前記電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4) )、過塩素酸リチウム(LiClO_(4) )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF_(6) )、および式(9)?式(14)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。
【化14】

(X31は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素、またはアルミニウム(Al)である。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は-(O=)C-R32-C(=O)-、-(O=)C-C(R33)_(2) -あるいは-(O=)C-C(=O)-である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1?4の整数であり、b3は0、2あるいは4であり、c3、d3、m3およびn3は1?3の整数である。)
【化15】

(X41は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Y41は-(O=)C-(C(R41)_(2) )_(b4)-C(=O)-、-(R43)_(2) C-(C(R42)_(2) )_(c4)-C(=O)-、-(R43)_(2) C-(C(R42)_(2) )_(c4)-C(R43)_(2) -、-(R43)_(2) C-(C(R42)_(2) )_(c4)-S(=O)_(2) -、-(O=)_(2) S-(C(R42)_(2 ))_(d4)-S(=O)_(2) -あるいは-(O=)C-(C(R42)_(2) )_(d4)-S(=O)_(2 )-である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1あるいは2であり、b4およびd4は1?4の整数であり、c4は0?4の整数であり、f4およびm4は1?3の整数である。)
【化16】

(X51は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1?10である。Y51は-(O=)C-(C(R51)_(2) )_(d5)-C(=O)-、-(R52)_(2) C-(C(R51)_(2) )_(d5)-C(=O)-、-(R52)_(2) C-(C(R51)_(2) )_(d5)-C(R52)_(2) -、-(R52)_(2) C-(C(R51)_(2) )_(d5)-S(=O)_(2) -、-(O=)_(2) S-(C(R51)_(2 ))_(e5)-S(=O)_(2) -あるいは-(O=)C-(C(R51)_(2) )_(e5)-S(=O)_(2) -である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1あるいは2であり、b5、c5およびe5は1?4の整数であり、d5は0?4の整数であり、g5およびm5は1?3の整数である。)
LiN(C_(m) F_(2m+1)SO_(2) )(C_(n )F_(2n+1) SO_(2) ) …(12)
(mおよびnは1以上の整数である。)
【化17】

(R61は炭素数=2?4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
LiC(C_(p) F_(2p+1)SO_(2) )(C_(q) F_(2q+1) SO_(2) )(C_(r )F_(2r+1) SO_(2) ) …(14)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)」
イ 発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸およびスルホン化合物を含む電解質およびそれを用いた二次電池に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.電解質
2.電解質を用いた電気化学デバイス(二次電池)
2-1.第1の二次電池(リチウムイオン二次電池:円筒型)
2-2.第2の二次電池(リチウム金属二次電池:円筒型)
2-3.第3の二次電池(リチウムイオン二次電池:ラミネートフィルム型)
【0017】
<1.電解質>
本発明の一実施の形態に係る電解質は、例えば二次電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、溶媒に電解質塩が溶解されたものである。ただし、電解質は、溶媒および電解質塩の他に、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0018】
[溶媒]
溶媒は、式(1)で表される有機酸と、式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種とを含んでいる。有機酸およびスルホン化合物の双方を含んでいない場合や、いずれか一方だけを含む場合よりも、電解質の化学的安定性が向上するからである。
【0019】
【化4】

(Xは-(O=)C-(CR_(2) )_(a) -C(=O)-、-(O=)_(2) S-(CR_(2 ))_(a) -S(=O)_(2 )-、-(O=)C-(CR_(2) )_(a) -S(=O)_(2) -、-(CR_(2) )_(b) -C(=O)-あるいは-(CR_(2) )_(b) -S(=O)_(2) -である。ただし、Rは水素基、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アリール基である。aは0?4の整数であり、bは1?5の整数である。)
【0020】
【化5】

(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)
【0021】
【化6】

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」
「【0040】
溶媒中における有機酸の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.001重量%?0.5重量%であることが好ましい。また、溶媒中におけるスルホン化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.5重量%?2重量%であることが好ましい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。なお、上記したスルホン化合物の含有量とは、式(2)および式(3)に示したスルホン化合物の双方を含む場合には、それらの含有量の合計である。」
「【0044】
特に、溶媒は、式(4)?式(6)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。電極反応時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応が抑制されるからである。この「不飽和炭素結合環状炭酸エステル」とは、不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルである。溶媒中における不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01重量%?10重量%である。ただし、不飽和炭素結合環状炭酸エステルの種類は、式(4)?式(6)に示した構造を有していれば、必ずしも以下で説明するものに限られず、他のものでもよい。
【0045】
【化14】

(R11およびR12は水素基あるいはアルキル基である。)
【0046】
【化15】

(R13?R16は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
【0047】
【化16】

(R17はアルキレン基である。)
【0048】
式(4)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物である。この炭酸ビニレン系化合物の一例としては、以下のものが挙げられる。炭酸ビニレン、炭酸メチルビニレンあるいは炭酸エチルビニレンである。4,5-ジメチル-1,3-ジオキソール-2-オン、4,5-ジエチル-1,3-ジオキソール-2-オン、4-フルオロ-1,3-ジオキソール-2-オンあるいは4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソール-2-オンである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
【0049】
式(5)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物である。この炭酸ビニルエチレン系化合物の一例としては、以下のものが挙げられる。炭酸ビニルエチレン、4-メチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4-エチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。4-n-プロピル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、5-メチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジビニル-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,5-ジビニル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R13?R16としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在してもよい。
【0050】
式(6)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸メチレンエチレン系化合物である。この炭酸メチレンエチレン系化合物の一例としては、以下のものが挙げられる。4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンである。この炭酸メチレンエチレン系化合物としては、1つのメチレン基を有するもの(式(6)に示した化合物)の他、2つのメチレン基を有するものでもよい。
【0051】
なお、不飽和炭素結合環状炭酸エステルとしては、式(4)?式(6)に示したものの他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)などでもよい。
【0052】
また、溶媒は、式(7)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび式(8)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。電極反応時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応が抑制されるからである。この「ハロゲン化鎖状炭酸エステル」とは、ハロゲンを構成元素として含む鎖状炭酸エステルであり、「ハロゲン化環状炭酸エステル」とは、ハロゲンを構成元素として含む環状炭酸エステルである。なお、式(7)中のR21?R26は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、式(8)中のR27?R30についても、同様である。溶媒中におけるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01重量%?50重量%である。ただし、ハロゲン化鎖状炭酸エステルあるいはハロゲン化環状炭酸エステルの種類は、式(7)あるいは式(8)に示した構造を有していれば、必ずしも以下で説明するものに限られず、他のものでもよい。
【0053】
【化17】

(R21?R26は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
【0054】
【化18】

(R27?R30は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
【0055】
ハロゲン化鎖状炭酸エステルあるいはハロゲン化環状炭酸エステルにおいて、ハロゲンの種類は特に限定されないが、中でも、フッ素、塩素あるいは臭素が好ましく、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも高い効果が得られるからである。ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上でもよい。保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応がより抑制されるからである。
【0056】
ハロゲン化鎖状炭酸エステルの一例としては、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。また、ハロゲン化環状炭酸エステルの一例としては、式(8-1)?式(8-21)で表されるものが挙げられる。このハロゲン化環状炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。中でも、ハロゲン化環状炭酸エステルとしては、式(8-1)に示した4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(8-3)に示した4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンが好ましく、後者がより好ましい。特に、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンでは、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
【0057】
【化19】

・・・・・(略)・・・・・
【0058】
また、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。このスルトンの一例としては、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられる。溶媒中におけるスルトンの含有量は、例えば、0.5重量%?5重量%である。ただし、スルトンの種類は、必ずしも上記したものだけに限られず、他のものでもよい。
【0059】
さらに、溶媒は、酸無水物(スルホン化合物に該当するものを除く)を含んでいることが好ましい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。この酸無水物の一例としては、カルボン酸無水物などが挙げられる。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸あるいは無水マレイン酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、例えば、0.5重量%?5重量%である。ただし、酸無水物の種類は、必ずしも上記したものだけに限られず、他のものでもよい。
【0060】
[電解質塩]
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類あるいは2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、軽金属塩以外の他の塩を含んでいてもよい。
【0061】
リチウム塩の一例としては、以下のものが挙げられる。六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムあるいは六フッ化ヒ酸リチウムである。テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C_(6) H_(5 ))_(4) )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH_(3) SO_(3 ))、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF_(3) SO_(3) )あるいはテトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl_(4 ))である。六フッ化ケイ酸二リチウム(Li_(2) SiF_(6) )、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)である。モノフルオロリン酸リチウム(LiPFO_(3) )あるいはジフルオロリン酸リチウム(LiPF_(2) O_(2) )である。電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、優れた特性が得られるからである。ただし、電解質塩の種類は、必ずしも上記したものだけに限られず、他のものでもよい。
【0062】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。」
「【0080】
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。」
「【0145】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23には、液状の電解質(電解液)として、上記した電解質が含浸されている。セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などにより構成されており、それらの2種以上の多孔質膜が積層されたものでもよい。
【0146】
[二次電池の動作]
この二次電池では、充電時において、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。」
「【実施例】
【0178】
本発明の具体的な実施例について、詳細に説明する。
【0179】
(実験例1-1?1-21)
以下の手順により、図1および図2に示した円筒型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0180】
まず、正極21を作製した。最初に、炭酸リチウム(Li_(2) CO_(3) )と炭酸コバルト(CoCO_(3) )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中で900℃×5時間焼成してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO_(2) )を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物91質量部と、正極導電剤としてグラファイト6質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して、正極合剤とした。続いて、N-メチル-2-ピロリドンに正極合剤を分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、正極活物質層21Bを形成した。この正極集電体21Aとしては、帯状のアルミニウム箔(厚さ=20μm)を用いた。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。
【0181】
次に、負極22を作製した。最初に、負極活物質として人造黒鉛90質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して、負極合剤とした。続いて、N-メチル-2-ピロリドンに負極合剤を分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、負極活物質層22Bを形成した。この負極集電体22Aとしては、帯状の電解銅箔(厚さ=15μm)を用いた。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。
【0182】
次に、液状の電解質である電解液を調製した。最初に、溶媒として炭酸エチレン(EC)および炭酸ジメチル(DMC)と、他の溶媒として有機酸およびスルホン化合物とを混合した。ECおよびDMCの組成は、重量比(EC:DMC)で30:70とした。また、有機酸およびスルホン化合物の種類および含有量は、表1?表3に示したようにした。こののち、溶媒に電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )を溶解させた。電解質塩の含有量は、溶媒に対して1mol/kgとした。」
「【0189】
【表1】

【0190】
【表2】

【0191】
【表3】

【0192】
【表4】


「【0195】
(実験例2-1?2-10)
表5に示したように、電解液の組成を変更したことを除き、実験例1-3と同様の手順を経た。この場合には、溶媒として、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)あるいは炭酸プロピレン(PC)を用いた。また、炭酸ビニレン(VC)、炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)あるいはトランス-4,5-ジフルオロ-1、3-ジオキソラン-2-オン(DFEC)を用いた。さらに、プロペンスルトン(PRS)あるいは無水スルホ安息香酸(SBAH)を用いた。電解質塩として、ジフルオロリン酸リチウム(LiPF_(2 )O_(2) )を用いた。この場合には、EC、PCおよびDECの組成を重量比(EC:PC:DEC)で10:20:70とした。溶媒中におけるVCの含有量を1重量%とし、それ以外のDFDMC等の含有量を5重量%とした。溶媒中におけるLiPF_(2) O_(2) の含有量を0.01重量%とした。
【0196】
(実験例2-11?2-13)
有機酸およびスルホン化合物を組みあわせて用いなかったことを除き、実験例2-4,2-6,2-7と同様の手順を経た。」
「【0198】
【表5】


「【0200】
(実験例3-1?3-3)
表6に示したように、電解質塩の種類を変更したことを除き、実験例1-3と同様の手順を経た。この場合には、電解質塩として、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4) )、式(9-6)に示した化合物、あるいはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF_(3) SO_(2) )_(2) )(LiTFSI)を用いた。また、LiPF_(6 )の含有量を溶媒に対して0.9mol/kgとし、LiBF_(4) 等の含有量を溶媒に対して0.1mol/kgとした。これらの実験例3-1?3-3の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
【0201】
【表6】


「【0203】
(実験例4-1?4-24)
負極活物質としてケイ素を用いて負極22を作製したことを除き、実験例1-1?1-24と同様の手順を経た。負極22を作製する場合には、蒸着法(電子ビーム蒸着法)を用いて負極集電体22Aの表面にケイ素を堆積させて、複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層22Bを形成した。この場合には、10回の堆積工程を繰り返して、負極活物質層22Bの総厚を6μmとした。これらの実験例4-1?4-24の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表7?表10に示した結果が得られた。なお、負極活物質としてケイ素を用いた場合には、2サイクル目および500サイクル目の放電容量に基づいて放電容量維持率を算出した。
【0204】
【表7】

【0205】
【表8】

【0206】
【表9】

【0207】
【表10】


「【0209】
(実験例5-1?5-13)
表11に示したように、実験例4-1?4-24と同様に負極活物質としてケイ素を用いたことを除き、実験例2-1?2-13と同様の手順を経た。これらの実験例5-1?5-13の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表11に示した結果が得られた。
【0210】
【表11】


「【0212】
(実験例6-1?6-3)
表12に示したように、実験例4-1?4-24と同様に負極活物質としてケイ素を用いたことを除き、実験例3-1?3-3と同様の手順を経た。これらの実験例6-1?6-3の二次電池についてサイクル特性および初回充放電特性を調べたところ、表12に示した結果が得られた。
【0213】
【表12】


「【0215】
(実験例7-1?7-6)
負極活物質としてSnCoC含有材料を用いて負極22を作製したことを除き、実験例4-3,5-6,4-22?4-24,5-12と同様の手順を経た。」
「【0220】
【表13】


「【0222】
(実験例8-1?8-12)
表14に示したように、酸化物含有膜および金属材料の双方あるいはいずれか一方を形成したことを除き、4-3,5-6,5-7,4-22?4-24,5-12,5-13と同様の手順を経た。」
「【0226】
【表14】



(2)引用刊行物2の記載事項
また、原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願日前である2010年9月30日に国際公開された「国際公開第2010/110159号」(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 請求の範囲の記載
「[請求項1]正極および負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え、
前記溶媒は、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種と、スクシノニトリル、1,6-ジシアノヘキサン、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンおよび式(3)?式(5)で表される化合物のうちの少なくとも1種とを含む
二次電池。
[化1]

(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)
[化2]

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)
[化3]

(R3は炭素(C)と、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)およびハロゲンのうちの少なくとも1種の元素とを含むa価の有機基であり、aは1以上3以下の整数である。)
[化4]

(R4は炭素数=2?10のアルキル基、炭素数=2?10のアルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族環基、複素環基あるいはそれらの誘導体である。)
[化5]

(R5およびR6は、炭素数=1?10のアルキル基あるいは炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも一方は炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基である。)」
「[請求項6]前記溶媒は、式(6)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステル、式(7)で表されるハロゲン化環状炭酸エステル、式(8)?式(10)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル、スルトンおよび酸無水物(ただし、式(1)および式(2)に示したスルホン化合物を除く)のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。
[化8]

(R11?R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
[化9]

(R17?R20は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
[化10]

(R21およびR22は水素基あるいはアルキル基である。)
[化11]

(R23?R26は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
[化12]

(R27はアルキレン基である。)
[請求項7]前記不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンあるいは炭酸メチレンエチレンであり、前記ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチルあるいは炭酸ビス(フルオロメチル)であり、前記ハロゲン化環状炭酸エステルは、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンであり、前記スルトンは、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンであり、前記酸無水物は、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸あるいは無水フタル酸である請求項6記載の二次電池。
[請求項8]前記電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4) )、過塩素酸リチウム(LiClO_(4) )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF_(6) )および式(11)?式(16)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。
[化13]

(X31は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素、またはアルミニウム(Al)である。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は-(O=)C-R32-C(=O)-、-(O=)C-C(R33)_(2) -あるいは-(O=)C-C(=O)-である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1?4の整数であり、b3は0、2あるいは4であり、c3、d3、m3およびn3は1?3の整数である。)
[化14]

(X41は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Y41は-(O=)C-(C(R41)_(2) )_(b4)-C(=O)-、-(R43)_(2) C-(C(R42)_(2) )_(c4)-C(=O)-、-(R43)_(2 )C-(C(R42)_(2) )_(c4)-C(R43)_(2) -、-(R43)_(2) C-(C(R42)_(2) )_(c4)-S(=O)_(2 )-、-(O=)_(2) S-(C(R42)_(2 ))_(d4)-S(=O)_(2) -あるいは-(O=)C-(C(R42)_(2) )_(d4)-S(=O)_(2) -である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1あるいは2であり、b4およびd4は1?4の整数であり、c4は0?4の整数であり、f4およびm4は1?3の整数である。)
[化15]

(X51は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1?10である。Y51は-(O=)C-(C(R51)_(2 ))_(d5)-C(=O)-、-(R52)_(2 )C-(C(R51)_(2) )_(d5)-C(=O)-、-(R52)_(2) C-(C(R51)_(2 ))_(d5)-C(R52)_(2 )-、-(R52)_(2 )C-(C(R51)_(2 ))_(d5)-S(=O)_(2) -、-(O=)_(2 )S-(C(R51)_(2) )_(e5)-S(=O)_(2 )-あるいは-(O=)C-(C(R51)_(2) )_(e5)-S(=O)_(2) -である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1あるいは2であり、b5、c5およびe5は1?4の整数であり、d5は0?4の整数であり、g5およびm5は1?3の整数である。)
LiN(C_(m) F_(2m+1)SO_(2) )(C_(n) F_(2n+1)SO_(2) ) …(14)
(mおよびnは1以上の整数である。)
[化16]

(R61は炭素数=2?4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
LiC(C_(p )F_(2p+1)SO_(2) )(C_(q) F_(2q+1)SO_(2) )(C_(r )F_(2r+1)SO_(2) ) …(16)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)」

イ 発明の詳細な説明の記載
「[0001]本発明は、溶媒および電解質塩を含む電解質およびそれを用いた二次電池に関する。」
「発明を実施するための形態
[0017]以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は下記の通りである。
1.電解質
2.電解質を用いた電気化学デバイス(二次電池)
2-1.第1の二次電池(リチウムイオン二次電池:円筒型)
2-2.第2の二次電池(リチウム金属二次電池:円筒型)
2-3.第3の二次電池(リチウムイオン二次電池:ラミネートフィルム型)
[0018]<1.電解質>
本発明の一実施の形態に係る電解質は、例えば二次電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、溶媒に電解質塩が溶解されたものである。ただし、電解質は、溶媒および電解質塩の他に、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。
[0019][溶媒]
溶媒は、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種と、スクシノニトリル(NC-CH_(2)-CH_(2)-CN)、1,6-ジシアノヘキサン(NC-CH_(2)-(CH_(2) )_(4)-CH_(2)-CN)、1,2,3-プロパントリカルボニトリル(NC-CH_(2)-CH(CN)-CH_(2)-CN)、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン((NC)_(2)- C=C_(6) H_(4 )=C(CN)_(2) )および式(3)?式(5)で表される化合物のうちの少なくとも1種とを含んでいる。これにより、スルホン化合物およびスクシノニトリル等の双方を含んでいない場合や、いずれか一方だけを含む場合よりも、電解質の化学的安定性が向上する。以下では、必要に応じて、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物を「スルホン化合物」と総称する。同様に、スクシノニトリル、1,6-ジシアノヘキサン、1,2,3-プロパントリカルボニトリルおよび7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンを「ニトリル化合物」、式(3)に示した化合物を「イソシアネート化合物」とそれぞれ総称する。さらに、式(4)に示した化合物を「ピロリドン化合物」、式(5)に示した化合物を「エーテル化合物」とそれぞれ総称する。
[0020][化6]

(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)
[0021][化7]

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)
[0022][化8]

(R3は炭素と、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素およびハロゲンのうちの少なくとも1種の元素とを含むa価の有機基であり、aは1以上3以下の整数である。)
[0023][化9]

(R4は炭素数=2?10のアルキル基、炭素数=2?10のアルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族環基、複素環基あるいはそれらの誘導体である。)
[0024][化10]

(R5およびR6は、炭素数=1?10のアルキル基あるいは炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも一方は炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基である。)」
「[0054]電解質中におけるスルホン化合物の含有量は、特に限定されないが、0.01重量%以上5重量%以下であるのが好ましい。また、電解質中におけるニトリル化合物、イソシアネート化合物、ピロリドン化合物およびエーテル化合物のうちの少なくとも1種の含有量は、特に限定されない。中でも、電解質中におけるニトリル化合物、イソシアネート化合物、ピロリドン化合物およびエーテル化合物のうちの少なくとも1種の含有量は、0.01重量%以上20重量%以下であるのが好ましい。特に、エーテル化合物を除くニトリル化合物等を用いる場合には、電解質中におけるニトリル化合物、イソシアネート化合物、あるいはピロリドン化合物の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であるのが好ましい。エーテル化合物を用いる場合には、電解質中におけるエーテル化合物の含有量は、5重量%以上15重量%以下であるのが好ましい。上記した範囲内で、スルホン化合物とニトリル化合物等とを併せて用いることにより、化学的安定性が特に向上するからである。」
「[0058]特に、溶媒は、式(6)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび式(7)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。電気化学デバイスに用いた場合に、電極反応時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応が抑制されるからである。この「ハロゲン化鎖状炭酸エステル」とは、ハロゲンを構成元素として含む鎖状炭酸エステルであり、「ハロゲン化環状炭酸エステル」とは、ハロゲンを構成元素として含む環状炭酸エステルである。なお、式(6)中のR11?R16は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、式(7)中のR17?R20についても、同様である。溶媒中におけるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01重量%?50重量%である。ただし、ハロゲン化鎖状炭酸エステルあるいはハロゲン化環状炭酸エステルの種類は、必ずしも下記で説明する化合物に限られず、他の化合物でもよい。
[0059][化25]

(R11?R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
[0060][化26]

(R17?R20は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)」
「[0062]ハロゲン化鎖状炭酸エステルの一例としては、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。また、ハロゲン化環状炭酸エステルの一例としては、式(7-1)?式(7-21)で表される化合物などが挙げられる。すなわち、式(7-1)の4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、式(7-2)の4-クロロ-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-3)の4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンである。式(7-4)のテトラフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、式(7-5)の4-クロロ-5-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-6)の4,5-ジクロロ-1,3-ジオキソラン-2-オンである。式(7-7)のテトラクロロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、式(7-8)の4,5-ビストリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-9)の4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。式(7-10)の4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-11)の4,4-ジフルオロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。式(7-12)の4-エチル-5,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、式(7-13)の4-フルオロ-5-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-14)の4-メチル-5-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。式(7-15)の4-フルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-16)の5-(1,1-ジフルオロエチル)-4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンである。式(7-17)の4,5-ジクロロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、式(7-18)の4-エチル-5-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-19)の4-エチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンである。式(7-20)の4-エチル-4,5,5-トリフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-21)の4-フルオロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。このハロゲン化環状炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。中でも、式(7-1)に示した4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは式(7-3)に示した4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンが好ましく、後者がより好ましい。特に、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンでは、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
[0063][化27]

[0064][化28]

[0065]また、溶媒は、式(8)?式(10)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。電気化学デバイスに用いた場合の電極反応時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応が抑制されるからである。この「不飽和炭素結合環状炭酸エステル」とは、不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルである。溶媒中における不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01重量%?10重量%である。不飽和炭素結合環状炭酸エステルの種類は、下記で説明するものに限られず、他のものでもよい。
[0066][化29]

(R21およびR22は水素基あるいはアルキル基である。)
[0067][化30]

(R23?R26は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
[0068][化31]

(R27はアルキレン基である。)
[0069]式(8)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物である。この炭酸ビニレン系化合物の一例としては、以下のものなどが挙げられる。炭酸ビニレン、炭酸メチルビニレンあるいは炭酸エチルビニレンである。また、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソール-2-オン、4,5-ジエチル-1,3-ジオキソール-2-オン、4-フルオロ-1,3-ジオキソール-2-オンあるいは4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソール-2-オンである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
[0070]式(9)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物である。この炭酸ビニルエチレン系化合物の一例としては、以下のものなどが挙げられる。炭酸ビニルエチレン、4-メチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4-エチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。また、4-n-プロピル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、5-メチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジビニル-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,5-ジビニル-1,3-ジオキソラン-2-オンである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R23?R26としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在してもよい。
[0071]式(10)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸メチレンエチレン系化合物である。この炭酸メチレンエチレン系化合物の一例としては、以下のものなどが挙げられる。4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンである。この炭酸メチレンエチレン系化合物としては、1つのメチレン基を有するもの(式(10)に示した化合物)の他、2つのメチレン基を有するものでもよい。
[0072]なお、不飽和炭素結合環状炭酸エステルとしては、式(8)?式(10)に示したものの他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)などであってもよい。
[0073]また、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。このスルトンの一例としては、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられる。溶媒中におけるスルトンの含有量は、例えば、0.5重量%?5重量%である。ただし、スルトンの種類は、必ずしも上記したものに限られず、他のものでもよい。
[0074]さらに、溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。この酸無水物の一例としては、カルボン酸無水物などが挙げられる。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸あるいは無水マレイン酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、例えば、0.5重量%?5重量%である。ただし、酸無水物の種類は、必ずしも上記したものに限られず、他のものでもよい。」
「[0076][電解質塩]
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類あるいは2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、軽金属塩以外の他の塩を含んでいてもよい。
[0077]リチウム塩の一例としては、以下のものなどが挙げられる。六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムあるいは六フッ化ヒ酸リチウムである。テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C_(6)H_(5) )_(4) )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH_(3) SO_(3) )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF_(3) SO_(3 ))あるいはテトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl_(4) )である。六フッ化ケイ酸二リチウム(Li_(2) SiF_(6 ))、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)である。モノフルオロリン酸リチウム(LiPFO_(3) )あるいはジフルオロリン酸リチウム(LiPF_(2 )O_(2) )である。電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、優れた特性が得られるからである。ただし、電解質塩の種類は、必ずしも上記したものに限られず、他のものでもよい。
[0078]中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。特に、六フッ化リン酸リチウムと共に四フッ化ホウ酸リチウムを用いるのが好ましい。高い効果が得られるからである。」
「[0096]電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg?3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。」
「[0163][二次電池の動作]
この二次電池では、充電時において、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。」
「実施例
[0195]本発明の具体的な実施例について、詳細に説明する。
[0196](実験例1-1?1-32) 以下の手順により、図1および図2に示した円筒型のリチウムイオン二次電池を作製した。
[0197]まず、正極21を作製した。この場合には、最初に、炭酸リチウム(Li_(2 )CO_(3) )と炭酸コバルト(CoCO_(3 ))とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中で900℃×5時間焼成してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO_(2) )を得た。続いて、正極活物質としてLiCoO_(2) 91質量部と、正極導電剤としてグラファイト6質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して、正極合剤とした。続いて、N-メチル-2-ピロリドンに正極合剤を分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、正極活物質層21Bを形成した。この正極集電体21Aとしては、帯状のアルミニウム箔(12μm厚)を用いた。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。
[0198]次に、負極22を作製した。この場合には、最初に、負極活物質として人造黒鉛97質量部と、負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して、負極合剤とした。続いて、N-メチル-2-ピロリドンに負極合剤を分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、負極活物質層22Bを形成した。この負極集電体22Aとしては、帯状の電解銅箔(15μm厚)を用いた。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22B(片面70μm厚)を圧縮成型した。
[0199]次に、液状の電解質である電解液を調製した。この場合には、最初に、溶媒として、炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)とを重量比(EC:DMC)で30:70の割合で混合した。続いて、この混合溶媒に対して電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )を1.2mol/kgの含有量になるように添加して溶解させた。最後に、スルホン化合物およびニトリル化合物等を添加したのち混合した。この際、スルホン化合物としては、式(1-1)あるいは式(1-2)に示した化合物を用いた。また、ニトリル化合物としては、スクシノニトリル(SCN)、1,6-ジシアノヘキサン(DCNH)、1,2,3-プロパントリカルボニトリル(PTCN)あるいは7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)を用いた。イソシアネート化合物としては、1-イソシアナトペンタン(NCOP)、1,8-ジイソシアナトオクタン(DNCO)あるいは1,4-ジイソシアナトブタン-1,4-ジオン(DNCOB)を用いた。ピロリドン化合物としては、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N-プロピル-2-ピロリドン(NPP)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(NCHP)あるいはN-フェニル-2-ピロリドン(NPhP)を用いた。エーテル化合物としては、C_(4) F_(9 )OCH_(3) であるノベックHFE7100(スリーエム株式会社製)あるいはC _(6 )F _(13) OCH_(3) であるノベックHFE7300(スリーエム株式会社製)を用いた。各実験例での電解液中におけるスルホン化合物およびニトリル化合物等(エーテル化合物を除く)の含有量(重量%=wt%)は、表1および表2に示した通りである。ただし、エーテル化合物を用いた実験例1-12,1-13,1-25,1-26,1-30?1-32では、ECとDMCとエーテル化合物とを重量比(EC:DMC:エーテル化合物)で30:60:10とした混合溶媒を用いたことを除き、上記と同様に電解液を調製した。
[0200]最後に、正極21および負極22と共に電解液を用いて二次電池を組み立てた。この場合には、最初に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接すると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接した。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層および巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入した。このセパレータ23としては、微孔性ポリプロピレンフィルム(厚さ=25μm)を用いた。続いて、一対の絶縁板12,13で巻回電極体20を挟みながら、ニッケル鍍金された鉄製の電池缶11の内部に収納した。この際、正極リード25を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26を電池缶11に溶接した。続いて、減圧方式により電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させた。最後に、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめて、それらを固定した。これにより、円筒型の二次電池が完成した。この二次電池を作製する場合には、正極活物質層21Bの厚さを調節して、満充電時において負極22にリチウム金属が析出しないようにした。
[0201](実験例1-33?1-48) 表2に示したように、スルホン化合物とニトリル化合物等とを組み合わせて用いなかったことを除き、実験例1-1?1-32と同様の手順を経た。ただし、エーテル化合物を用いた実験例1-47,1-48では、ECとDMCとエーテル化合物とを重量比(EC:DMC:エーテル化合物)で30:60:10とした混合溶媒を用いた。
[0207][表1]

[0208][表2]


「[0213](実験例2-1?2-28)
表3に示したように、スルホン化合物として式(1-1)に示した化合物に代えて、式(2-1)あるいは式(2-2)に示した化合物を用いたことを除き、実験例1-1?1-13,1-34と同様の手順を経た。これらの実験例2-1?2-28の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
[0214][表3]


「[0216](実験例3-1?3-9)
表4に示したように、溶媒の組成を変更したことを除き、実験例1-14,1-19,1-21,1-25,2-1,2-6,2-8,2-12,1-33と同様の手順を経た。この場合には、溶媒として、さらに、式(7)に示したハロゲン化環状炭酸エステルである4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)を用いた。ただし、エーテル化合物を用いなかった実験例3-1?3-3,3-5?3-7,3-9では、ECとDMCとFECとの組成を重量比(EC:DMC:FEC)で27:70:3として混合溶媒を調製した。また、エーテル化合物を用いた実験例3-4,3-8では、ECとDMCとエーテル化合物とFECとの組成を重量比(EC:DMC:エーテル化合物:FEC)で27:60:10:3として混合溶媒を調製した。これらの実験例3-1?3-9の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
[0217][表4]


「[0219](実験例4-1?4-20)
表5に示したように、溶媒の組成を変更したことを除き、実験例1-14,1-19,1-21,1-25,1-33と同様の手順を経た。この場合には、溶媒として、式(7)に示したハロゲン化環状炭酸エステルであるトランス-4,5-ジフルオロ-1、3-ジオキソラン-2-オン(tDFEC)あるいは式(8)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルである炭酸ビニレン(VC)を用いた。また、スルトンであるプロペンスルトン(PRS)あるいは酸無水物である無水コハク酸(SCAH)を用いた。溶媒中におけるtDFEC等の含有量は1重量%とした。これらの実験例4-1?4-20の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
[0220][表5]


「[0222](実験例5-1?5-15)
表6,表7に示したように、電解質塩の種類を変更したことを除き、実験例1-14,1-19,1-21,1-25,1-33と同様の手順を経た。この場合には、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4))、式(11)に示した化合物である式(11-6)に示した化合物あるいは式(14)に示した化合物であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)を用いた。この際、LiPF_(6)の含有量は混合溶媒に対して1.1mol/kg、LiBF_(4)等の含有量は混合溶媒に対して0.1mol/kgとした。これらの実験例5-1?5-15の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性と共に、さらに80℃での保存特性を調べたところ、表6,表7に示した結果が得られた。なお、表6,表7では、実験例1-14,1-19,1-21,1-25,1-33の二次電池についての保存特性の結果も併せて示した。
[0224][表6]

[0225][表7]


「[0227](実験例6-1?6-48)
表8,表9に示したように、負極活物質としてケイ素を用いて負極22を作製すると共に、溶媒としてDMCに代えて炭酸ジエチル(DEC)を用いたことを除き、実験例1-1?1-48と同様の手順を経た。負極22を作製する場合には、蒸着法(電子ビーム蒸着法)を用いて電解銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aの表面にケイ素を堆積させて、複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層22Bを形成した。この場合には、負極活物質層22Bの総厚を6μmとした。これらの実験例6-1?6-49の二次電池について23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表8および表9に示した結果が得られた。
[0228][表8]

[0229][表9]


「[0231](実験例7-1?7-28)
表10に示したように、実験例6-1?6-48と同様に負極活物質としてケイ素を用いると共に、溶媒としてDMCに代えて炭酸ジエチル(DEC)を用いたことを除き、実験例2-1?2-28と同様の手順を経た。これらの実験例7-1?7-28の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全弁作動時間を調べたところ、表10に示した結果が得られた。
[0232][表10]


「[0234](実験例8-1?8-9)
表11に示したように、実験例6-1?6-48と同様に負極活物質としてケイ素を用いると共に、溶媒としてDMCに代えて炭酸ジエチル(DEC)を用いたことを除き、実験例3-1?3-9と同様の手順を経た。これらの実験例8-1?8-9の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表11に示した結果が得られた。
[0235][表11]


「[0237](実験例9-1?9-20)
表12に示したように、実験例6-1?6-48と同様に負極活物質としてケイ素を用いると共に、溶媒としてDMCに代えて炭酸ジエチル(DEC)を用いたことを除き、実験例4-1?4-20と同様の手順を経た。これらの実験例9-1?9-20の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表12に示した結果が得られた。
[0238][表12]


「[0240](実験例10-1?10-15)
表13,表14に示したように、実験例6-1?6-48と同様に負極活物質としてケイ素を用いると共に、溶媒としてDMCに代えて炭酸ジエチル(DEC)を用いたことを除き、実験例5-1?5-15と同様の手順を経た。これらの実験例10-1?10-15の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性および保存特性を調べたところ、表13,表14に示した結果が得られた。なお、表13,表14では、実験例6-14,6-19,6-21,6-25,6-33の二次電池についての保存特性の結果も併せて示した。
[0241][表13]

[0242][表14]


「[0244](実験例11-1?11-15)
負極活物質としてSnCoC含有材料を用いて負極22を作製したことを除き、実験例1-14,1-19,1-21,1-25,2-1,2-6,2-8,2-12,1-33,1-35,2-27,1-36,1-41,1-43,1-47と同様の手順を経た。」
「[0248]これらの実験例11-1?11-15の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表15に示した結果が得られた。
[0249][表15]


「[0251](実験例12-1?12-10)
表16に示したように、溶媒の組成を変更したことを除き、実験例11-1?11-4,11-9と同様の手順を経た。この場合には、溶媒として、FECあるいはVCを用いた。FECを用いる際には、エーテル化合物を用いなかった実験例では、ECとDMCとFECとの組成を重量比(EC:DMC:FEC)で25:70:5として混合溶媒を調製した。また、エーテル化合物を用いた実験例では、ECとDMCとエーテル化合物とFECとの組成を重量比(EC:DMC:エーテル化合物:FEC)で25:60:10:5として混合溶媒を調製した。VCを用いる際には、溶媒中におけるその含有量は1重量%とした。これらの実験例12-1?12-10の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表16に示した結果が得られた。
[0252][表16]


「[0254](実験例13-1?13-5)
表17に示したように、実験例11-1?11-15と同様に負極活物質としてSnCoC含有材料を用いたことを除き、実験例5-3,5-6,5-9,5-12,5-15と同様の手順を経た。これらの実験例13-1?13-5の二次電池について、23℃および45℃それぞれにおけるサイクル特性ならびに安全性を調べたところ、表17に示した結果が得られた。
[0255][表17]



(3)引用発明
(3)-1 引用文献1の請求項7の記載に基づく引用発明
ア 上記(1)アの【請求項7】の「炭酸ビニレン」は、上記(1)アの【請求項6】の「式(4)」「で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル」に含まれる。


(R11およびR12は水素基あるいはアルキル基である。)」

イ 上記(1)アの【請求項7】の「炭酸ビニルエチレン」は、上記(1)アの【請求項6】の「式(5)」「で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル」に含まれる。


(R13?R16は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)」

ウ 上記(1)アの【請求項7】の「炭酸メチレンエチレン」は、上記(1)アの【請求項6】の「式(6)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル」に含まれる。


(R17はアルキレン基である。)」

エ 上記(1)アの【請求項7】の「炭酸フルオロメチルメチル」及び「炭酸ビス(フルオロメチル)」は、いずれも上記(1)アの【請求項6】の「式(7)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステル」に含まれる。


(R21?R26は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)」

オ 上記(1)アの【請求項7】の「4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン」及び「4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン」は、いずれも上記(1)アの【請求項6】の「式(8)で表されるハロゲン化環状炭酸エステル」に含まれる。


(R27?R30は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)」

カ 上記ア?オを考慮しつつ、上記(1)アの請求項1を引用する請求項6を引用する請求項7に注目すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。
「正極および負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え、
前記溶媒は、式(1)で表される有機酸と、式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種と、
炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸メチレンエチレン、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、スルトン、および酸無水物のうちの少なくとも1種とを含む、
二次電池。

(Xは-(O=)C-(CR_(2 ))_(a) -C(=O)-、-(O=)_(2) S-(CR_(2) )_(a) -S(=O)_(2) -、-(O=)C-(CR_(2) )_(a) -S(=O)_(2) -、-(CR_(2) )_(b) -C(=O)-あるいは-(CR_(2) )_(b )-S(=O)_(2) -である。ただし、Rは水素基、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アリール基である。aは0?4の整数であり、bは1?5の整数である。)

(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」

(3)-2 引用文献1の発明の詳細な説明の記載に基づく引用発明
引用文献1の発明の詳細な説明には、化学物質の選択肢が非常に多く記載されているので、発明の詳細な説明の記載に基づく引用発明は、これら選択肢について、請求項の記載も参照して認定した。
ア 上記(1)イには、「二次電池」について記載されており、上記(1)イの【0146】より、該「二次電池」は、充電時において、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵され、一方、放電時において、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵されるものであるから、技術常識に照らせば、該「二次電池」は、「リチウムイオン二次電池」である。

イ 上記(1)イの【0146】より、「リチウムイオン二次電池」について、その電解質、すなわち電解液は液状であり、上記(1)イの【0017】より、当該電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、その他に、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよいものであるといえる。

ウ 上記(1)イの【0018】より、「リチウムイオン二次電池」について、その溶媒は、式(1)で表される有機酸と、式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種とを含んでいる。

(Xは-(O=)C-(CR_(2 ))_(a) -C(=O)-、-(O=)_(2) S-(CR_(2) )_(a) -S(=O)_(2) -、-(O=)C-(CR_(2) )_(a) -S(=O)_(2) -、-(CR_(2) )_(b) -C(=O)-あるいは-(CR_(2) )_(b )-S(=O)_(2) -である。ただし、Rは水素基、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アリール基である。aは0?4の整数であり、bは1?5の整数である。)

(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)

エ 上記(1)イの【0018】及び【0040】より、「リチウムイオン二次電池」について、その溶媒中における、式(1)で表される有機酸の含有量は、0.001重量%?0.5重量%であり、また、当該溶媒中における、式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物の含有量の合計は、0.5重量%?2重量%である。

オ 上記(1)イの【0044】?【0047】、【0052】?【0054】、【0058】及び【0059】より、「リチウムイオン二次電池」について、その溶媒が、式(4)?式(6)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル、式(7)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステル、式(8)で表されるハロゲン化環状炭酸エステル、スルトン、および、酸無水物のうちの少なくとも1種を含んでいる。

(R11およびR12は水素基あるいはアルキル基である。)

(R13?R16は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)

(R17はアルキレン基である。)

(R21?R26は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)

(R27?R30は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)

カ 上記(1)アの【請求項7】を参照すると、上記(1)イの【0048】?【0050】より、「リチウムイオン二次電池」について、式(4)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレンが好ましく、また、式(5)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレンが好ましく、さらに、式(6)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンである。

キ 上記(1)イの【0044】、【0052】、【0058】及び【0059】より、「リチウムイオン二次電池」について、溶媒中における、式(4)?式(6)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?10重量%であり、溶媒中における、式(7)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステル、および、溶媒中における、式(8)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?50重量%であり、溶媒中におけるスルトンの含有量は、0.5重量%?5重量%であり、溶媒中における酸無水物の含有量は、0.5重量%?5重量%である。

ク 上記(1)アの【請求項7】を参照すると、上記(1)イの【0056】より、「リチウムイオン二次電池」について、式(7)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)であり、また、式(8)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルは、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、あるいは、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンである。

ケ 上記オ?クより、「リチウムイオン二次電池」について、溶媒が、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、スルトン、および、酸無水物のうちの少なくとも1種を含んでおり、溶媒中の炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?10重量%であり、溶媒中の炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?50重量%であり、溶媒中におけるスルトンの含有量は、0.5重量%?5重量%であり、溶媒中における酸無水物の含有量は、0.5重量%?5重量%である。

コ 上記ア?エ、ケより、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。
「正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵されるリチウムイオン二次電池であって、
電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、その他に、各種添加剤などを含んでいてもよいものであり、
溶媒は、式(1)で表される有機酸と、式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種とを含んでおり、

(Xは-(O=)C-(CR_(2 ))_(a) -C(=O)-、-(O=)_(2) S-(CR_(2) )_(a) -S(=O)_(2) -、-(O=)C-(CR_(2) )_(a) -S(=O)_(2) -、-(CR_(2) )_(b) -C(=O)-あるいは-(CR_(2) )_(b )-S(=O)_(2) -である。ただし、Rは水素基、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基あるいはハロゲン化アリール基である。aは0?4の整数であり、bは1?5の整数である。)

(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)
溶媒中における、式(1)で表される有機酸の含有量は、0.001重量%?0.5重量%であり、また、溶媒中における、式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物の含有量の合計は、0.5重量%?2重量%であり、
さらに、溶媒が、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、スルトン、および、酸無水物のうちの少なくとも1種を含んでおり、
溶媒中の炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?10重量%であり、
溶媒中の炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?50重量%であり、
溶媒中におけるスルトンの含有量は、0.5重量%?5重量%であり、
溶媒中における酸無水物の含有量は、0.5重量%?5重量%である、
リチウムイオン二次電池。」

(3)-3 引用文献2の請求項7の記載に基づく引用発明
ア 上記(2)アの[請求項7]の「炭酸ビニレン」は、上記(2)アの[請求項6]の「式(8)」「で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル」に含まれる。


(R21およびR22は水素基あるいはアルキル基である。)」

イ 上記(2)アの[請求項7]の「炭酸ビニルエチレン」は、上記(2)アの[請求項6]の「式(9)」「で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル」に含まれる。


(R23?R26は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)」

ウ 上記(2)アの[請求項7]の「炭酸メチレンエチレン」は、上記(2)アの[請求項6]の「式(10)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル」に含まれる。


(R27はアルキレン基である。)」

エ 上記(2)アの[請求項7]の「炭酸フルオロメチルメチル」及び「炭酸ビス(フルオロメチル)」は、いずれも上記(2)アの[請求項6]の「式(6)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステル」に含まれる。


(R11?R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)」

オ 上記(2)アの[請求項7]の「4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン」及び「4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン」は、いずれも上記(2)アの[請求項6]の「式(7)で表されるハロゲン化環状炭酸エステル」に含まれる。


(R17?R20は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)」

カ 上記(2)アの[請求項7]の「プロパンスルトン」及び「プロペンスルトン」は、いずれも上記(2)アの[請求項6]の「スルトン」「(ただし、式(1)および式(2)に示したスルホン化合物を除く)」に含まれる。

キ 上記(2)アの[請求項7]の「無水コハク酸」、「無水グルタル酸」、「無水マレイン酸」及び「無水フタル酸」は、いずれも上記(2)アの[請求項6]の「酸無水物」「(ただし、式(1)および式(2)に示したスルホン化合物を除く)」に含まれる。

ク 上記ア?キを考慮しつつ、上記(2)アの請求項1を引用する請求項6を引用する請求項7に注目すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2-1」という。)が記載されていると認められる。
「正極および負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え、
前記溶媒は、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種と、スクシノニトリル、1,6-ジシアノヘキサン、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンおよび式(3)?式(5)で表される化合物のうちの少なくとも1種とを含み、
前記溶媒は、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸メチレンエチレン、プロパンスルトン、プロペンスルトン、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸あるいは無水フタル酸のうちの少なくとも1種を含む
二次電池。

(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R3は炭素(C)と、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)およびハロゲンのうちの少なくとも1種の元素とを含むa価の有機基であり、aは1以上3以下の整数である。)

(R4は炭素数=2?10のアルキル基、炭素数=2?10のアルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族環基、複素環基あるいはそれらの誘導体である。)

(R5およびR6は、炭素数=1?10のアルキル基あるいは炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも一方は炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基である。)」

(3)-4 引用文献2の発明の詳細な説明の記載に基づく引用発明
引用文献2の発明の詳細な説明には、化学物質の選択肢が非常に多く記載されているので、発明の詳細な説明の記載に基づく引用発明は、これら選択肢について、請求項の記載も参照して認定した。
ア 上記(2)イには、「二次電池」について記載されており、上記(2)イの[0017]及び[0163]から、該「二次電池」は、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される、リチウムイオン二次電池である。

イ 上記(2)イの[0163]より、「リチウムイオン二次電池」について、その電解質、すなわち電解液は液状であり、上記(2)イの[0018]より、当該電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、溶媒および電解質塩の他に、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよいものである。

ウ 上記(2)イの[0019]より、「リチウムイオン二次電池」について、溶媒は、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種と、スクシノニトリル(NC-CH_(2)-CH _(2)-CN)、1,6-ジシアノヘキサン(NC-CH_(2)-(CH_(2) )_(4)-CH_(2)-CN)、1,2,3-プロパントリカルボニトリル(NC-CH_(2)-CH(CN)-CH_(2)-CN)、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン((NC)_(2)- C=C_(6) H_(4) =C(CN)_(2 ))および式(3)?式(5)で表される化合物のうちの少なくとも1種とを含んでいる。

(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R3は炭素と、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素およびハロゲンのうちの少なくとも1種の元素とを含むa価の有機基であり、aは1以上3以下の整数である。)

(R4は炭素数=2?10のアルキル基、炭素数=2?10のアルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族環基、複素環基あるいはそれらの誘導体である。)

(R5およびR6は、炭素数=1?10のアルキル基あるいは炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも一方は炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基である。)

エ 上記(2)イの[0019]及び[0054]より、「リチウムイオン二次電池」について、電解質中における、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であり、また、電解質中におけるニトリル化合物、式(3)で表されるイソシアネート化合物、および、式(4)で表されるピロリドン化合物のうちの少なくとも1種の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であり、式(5)で表されるエーテル化合物の含有量は、5重量%以上15重量%以下である。

オ 上記(2)アの[請求項6]を参照すると、上記(2)イの[0058]、[0065]、[0073]及び[0074]より、「リチウムイオン二次電池」について、溶媒は、式(6)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび式(7)で表されるハロゲン化環状炭酸エステル、式(8)?式(10)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステル、スルトン、酸無水物のうちの少なくとも1種を含んでいる。

(R11?R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)

(R17?R20は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)

(R21およびR22は水素基あるいはアルキル基である。)

(R23?R26は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)

(R27はアルキレン基である。)

カ 上記(2)イの[0058]、[0065]、[0073]及び[0074]より、「リチウムイオン二次電池」について、溶媒中における、式(6)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステル、及び、式(7)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?50重量%であり、溶媒中における、式(8)?式(10)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?10重量%であり、溶媒中におけるスルトンの含有量は、0.5重量%?5重量%であり、溶媒中における酸無水物の含有量は、0.5重量%?5重量%である。

キ 上記(2)アの[請求項7]を参照すると、上記(2)イの[0062]、[0069]?[0071]、[0073]及び[0074]より、「リチウムイオン二次電池」について、式(6)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチル、または、炭酸ビス(フルオロメチル)であり、式(7)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルは、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、または、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンであり、式(8)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレンであり、式(9)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレンであり、式(10)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンであり、スルトンは、プロパンスルトンまたはプロペンスルトンであり、酸無水物は、無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸である。
(当審注:上記(2)イの[0071]には、式(8)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルとして、上記(2)アの[請求項7]の「炭酸メチレンエチレン」と同義の「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」が記載されている他、「4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」及び「4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」も記載されている。)

ク 上記オ?キより、溶媒は、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、プロパンスルトン、プロペンスルトン、無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸のうちの少なくとも1種を含んでおり、溶媒中における、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、または、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?50重量%であり、溶媒中における、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?10重量%であり、溶媒中におけるプロパンスルトン、プロペンスルトンの含有量は、0.5重量%?5重量%であり、溶媒中における無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸の含有量は、0.5重量%?5重量%である。

ケ 上記ア?エ、クより、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2-2」という。)が記載されていると認められる。
「正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される、リチウムイオン二次電池であって、
電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、溶媒および電解質塩の他に、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよいものであり、
溶媒は、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種と、スクシノニトリル(NC-CH_(2)-CH _(2)-CN)、1,6-ジシアノヘキサン(NC-CH_(2)-(CH_(2) )_(4)-CH_(2)-CN)、1,2,3-プロパントリカルボニトリル(NC-CH_(2)-CH(CN)-CH_(2)-CN)、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン((NC)_(2)- C=C_(6) H_(4) =C(CN)_(2 ))および式(3)?式(5)で表される化合物のうちの少なくとも1種とを含んでおり、

(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R3は炭素と、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素およびハロゲンのうちの少なくとも1種の元素とを含むa価の有機基であり、aは1以上3以下の整数である。)

(R4は炭素数=2?10のアルキル基、炭素数=2?10のアルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族環基、複素環基あるいはそれらの誘導体である。)

(R5およびR6は、炭素数=1?10のアルキル基あるいは炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも一方は炭素数=1?10のハロゲン化アルキル基である。)
電解質中における、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であり、また、電解質中におけるニトリル化合物、式(3)で表されるイソシアネート化合物、および、式(4)で表されるピロリドン化合物のうちの少なくとも1種の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であり、式(5)で表されるエーテル化合物の含有量は、5重量%以上15重量%以下であり、
さらに、溶媒は、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、プロパンスルトン、プロペンスルトン、無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸のうちの少なくとも1種を含んでおり、溶媒中における、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、または、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?50重量%であり、溶媒中における、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?10重量%であり、溶媒中におけるプロパンスルトン、プロペンスルトンの含有量は、0.5重量%?5重量%であり、溶媒中における無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸の含有量は、0.5重量%?5重量%である、
リチウムイオン二次電池。」

4 対比・判断
(1)本願発明と引用発明1-1との対比・判断
(1)-1 本願発明と引用発明1-1との対比
本願発明と引用発明1-1とを対比する。
ア 引用発明1-1の「正極および負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え」るとの発明特定事項は、本願発明の「正極および負極と共に電解液を備え」るとの発明特定事項に相当する。

イ 引用発明1-1の「炭酸メチレンエチレン」は、本願発明の「下記の式(18)」「で表される不飽和環状炭酸エステル」において、R5とR6が水素基である化合物と一致する。



(「R5からR14」のうち、R5およびR6は「水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6」は「互いに結合されていてもよい。」)

ウ そうすると、引用発明1-1の「炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸メチレンエチレン、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、スルトン、および酸無水物のうちの少なくとも1種」「を含む」との発明特定事項と、本願発明の「下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項とは、「炭酸メチレンエチレン」を含有するとの発明特定事項で重複する。


(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)」

エ 引用発明1-1の「式(2)」「で表されるスルホン化合物」


(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」は、本願発明の「式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物」のうち、「下記の式」「(10)」「で表されるスルフィニル化合物」において、R52およびR53が互いに結合されているものと一致する。



(「R46?R59」のうち、R52およびR53は、「1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり」、「R52およびR53」は「互いに結合されていてもよい。」)

オ 引用発明1-1の「式(3)で表されるスルホン化合物」


(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」は、本願発明の「式(7)から式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物」のうち、「式(11)」「で表されるスルフィニル化合物」において、R54およびR55が互いに結合されているものと一致する。



(「R46?R59」のうち、R54およびR55は、「1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり」、「R54およびR55」は「互いに結合されていてもよい。」)

カ 引用発明1-1の「溶媒」は、「電解質」に「含」まれるものであるから、上記エ及びオを参照すると、引用発明1-1の「前記溶媒は、」「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」


(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」「を含む」との発明特定事項と、本願発明の「下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項とは、下記の式(10)で表されるスルフィニル化合物であって、R52およびR53が互いに結合されているもの、及び、下記の式(11)で表されるスルフィニル化合物であって、R54およびR55が互いに結合されているもののうち、少なくとも1種を含有する点で重複している。
「NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」

キ 引用発明1-1の「二次電池」と本願発明の「リチウムイオン二次電池」とは、「二次電池」で共通する。

ク 上記ア?キの検討を踏まえると、本願発明と引用発明1-1とは、
「正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
炭酸メチレンエチレンと、
下記の式(10)で表されるスルフィニル化合物であって、R52およびR53が互いに結合されているもの、及び、下記の式(11)で表されるスルフィニル化合物であって、R54およびR55が互いに結合されているもののうち、少なくとも1種と、
を含有する、
二次電池。

」で重複するから、結局、本願発明と引用発明1-1とは、
「正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、
下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種とを含有する、
二次電池。

(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)
NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」で一致し、次の1-1?1-3の相違点で相違する。

(相違点)
1-1 本願発明は、「電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?10重量%であ」るのに対し、引用発明1-1は、「不飽和環状炭酸エステル」である炭酸メチレンエチレンの含有量が特定されていない点。
1-2 本願発明は、「電解液中における前記スルフィニル化合物の含有量は、0.1重量%?5重量%であ」るのに対し、引用発明1-1は、「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」の含有量が特定されていない点。


(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」
1-3 本願発明は、「リチウムイオン二次電池」であるのに対し、引用発明1-1は、単に「二次電池」である点。

(1)-2 判断
ア まず、上記1-1の相違点について検討する。

イ 引用文献1の請求項7に係る発明である引用発明1-1は、「炭酸メチレンエチレン」の含有量が特定されていないが、上記3(1)イの【0044】には、「溶媒中における不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01重量%?10重量%である」と記載されているから、引用発明1-1の「炭酸メチレンエチレン」の含有量は、この範囲内であると考えられる。
しかしながら、不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量が、本願発明は、電解液中における含有量であるのに対し、引用発明1-1は、溶媒中における含有量であるから、これらを単純に比較できない。

ウ そこで、引用発明1-1における、電解液中の「炭酸メチレンエチレン」の含有量がどの程度であるのかを、以下検討する。

エ 引用発明1-1の「二次電池」は、「溶媒および電解質塩を含む電解質」を備えるものであるところ、「電解質塩」の材料が特定されていない。
ここで、「電解質塩」について、上記3(1)アの【請求項8】には、「電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4) )、過塩素酸リチウム(LiClO_(4) )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF_(6) )、および式(9)?式(14)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。」と「六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))」が最初に記載され、また、上記3(1)イの【0060】?【0062】には、電解質塩であるリチウム塩は、「六フッ化リン酸リチウムがより好ましい」と記載され、さらに、上記3(1)イの【0080】には、「電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい」と記載され、また、実施例における【表1】?【表14】には、98例の実施例が記載されているが、そのうち90例が「電解質塩」として、「溶媒に対して1mol/kg」(上記3(1)イの【0182】)の六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )を採用しており、残りの8例のうち、6例(実験例3-1?3、6-1?3)が、0.9mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )+0.1mol/kgの他の電解質塩、残りの2例(実験例2-10、5-10)が、1mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))+0.01mol/kgのLiPF_(2) O_(2)を用いたものであり、実施例では、「電解質塩」として、ほぼ1mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )を採用しているといえる。
そうすると、引用発明1-1における「電解質塩」は、溶媒に対して1mol/kg含有させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))とすることが標準的な実施形態であるといえる。
そして、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )の分子量は、約151.91(Li:6.94、P:30.97、F:19.00)であるから、引用発明1-1における「電解質塩」は、溶媒に対して約15.191%の量が含まれているといえる。

オ そうすると、上記イより、引用発明1-1の溶媒中における「炭酸メチレンエチレン」の含有量は、0.01重量%?10重量%であり、電解液の質量は溶媒の質量の約1.15191倍であるから、引用発明1-1の電解質中における「炭酸メチレンエチレン」の含有量は、約0.0087重量%?約8.68重量%である。
そして、この含有量は、上記1-1の相違点に係る本願発明の数値範囲と大半が重複するものであるから、上記1-1の相違点は実質的な相違点ではない。

カ 次に、上記1-2の相違点について検討する。

キ 引用文献1の請求項7に係る発明である引用発明1-1は、「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物」の含有量が特定されていないが、上記3(1)イの【0040】には、「溶媒中におけるスルホン化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.5重量%?2重量%であることが好ましい」と記載されているから、引用発明1-1の「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」の含有量は、この範囲内であると考えられる。
しかしながら、スルフィニル化合物の含有量が、本願発明は、電解液中における含有量であるのに対し、引用発明1-1は、溶媒中における含有量であるから、これらを単純に比較できないが、上記エの検討から、引用発明1-1における「電解質塩」は、溶媒に対して約15.191%の量が含まれているといえる。

ク そうすると、上記キより、引用発明1-1の溶媒中における「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」の含有量は、0.5重量%?2重量%であり、電解液の質量は溶媒の質量の約1.15191倍であるから、引用発明1-1の電解質中における「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」の含有量は、約0.434重量%?約1.74重量%である。

ケ そして、この含有量は、上記1-2の相違点に係る本願発明の数値範囲に含まれるものであるから、上記1-2の相違点は実質的な相違点ではない。

コ 次に、上記1-3の相違点について検討する。

サ 上記(1)イの【0146】より、引用文献1に記載された「二次電池」は、「正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される」ものであるから、引用文献1の請求項7に係る発明である引用発明1-1の「二次電池」は、「リチウムイオン二次電池」である。
そうすると、上記1-3の相違点は実質的な相違点ではない。

シ 以上より、本願発明と引用発明1-1との間に相違点は存在しないから、本願発明は、引用発明1-1、すなわち、引用文献1に記載された発明である。

(2)本願発明と引用発明1-2との対比・判断
(2)-1 本願発明と引用発明1-2との対比
本願発明と引用発明1-2とを対比する。
ア 引用発明1-2の「正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される」との発明特定事項は、正極、負極及び電解液を有することを表しているから、本願発明の「正極および負極と共に電解液を備え」るとの発明特定事項に相当する。

イ 引用発明1-2の「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」は、それぞれ、本願発明の「下記の式(18)」「で表される不飽和環状炭酸エステル」において、R5及びR6がいずれも水素基、R5及びR6がいずれも一価の炭化水素基であるメチル基、R5及びR6がいずれも一価の炭化水素基であるエチル基である化合物と一致する。



(「R5からR14」のうち、R5およびR6は「水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6」は「互いに結合されていてもよい。」)

ウ そうすると、引用発明1-2の「溶媒が、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、スルトン、および、酸無水物のうちの少なくとも1種を含んで」いるとの発明特定事項と、本願発明の「電解液は、」「下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項とは、「電解液は、」「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」「のうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項で重複する。
「【化5】

(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)」

エ 引用発明1-2の「式(2)」「で表されるスルホン化合物」


(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」は、本願発明の「式(10)」「で表されるスルフィニル化合物」において、R52およびR53が互いに結合されているものと一致する。



(「R46?R59」のうち、R52およびR53は、「1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり」、「R52およびR53」は「互いに結合されていてもよい。」)

オ 引用発明1-2の「式(3)で表されるスルホン化合物」「【化6】

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」は、本願発明の「式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物」のうち、「下記の式」「(11)」「で表されるスルフィニル化合物」において、R54およびR55が互いに結合されているものと一致する。



(「R46?R59」のうち、R54およびR55は、「1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり」、「R54およびR55」は「互いに結合されていてもよい。」)

カ 引用発明1-2の「電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであ」って、「溶媒」は「電解液」に含まれるものであるから、引用発明1-2の「前記溶媒は、」「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」


(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」「を含」むとの発明特定事項と、本願発明の「下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項とは、下記の式(10)で表されるスルフィニル化合物であって、R52およびR53が互いに結合されているもの、及び、下記の式(11)で表されるスルフィニル化合物であって、R54およびR55が互いに結合されているもののうち、少なくとも1種を含有する点で重複している。
「NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」

キ 上記ア?カの検討を踏まえると、本願発明と引用発明1-2とは、
「正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンのうちの少なくとも1種と、
下記の式(10)で表されるスルフィニル化合物であって、R52およびR53が互いに結合されているもの、及び、下記の式(11)で表されるスルフィニル化合物であって、R54およびR55が互いに結合されているもののうち、少なくとも1種と
を含有する、
リチウムイオン二次電池。

」で重複するから、結局、本願発明と引用発明1-2とは、
「正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、
下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種を含有する、
リチウムイオン二次電池。

(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)
NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」で一致し、次の2-1及び2-2の相違点で相違する。

(相違点)
2-1 本願発明は、「電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?10重量%であ」るのに対し、引用発明1-2は、「溶媒中の炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?10重量%であ」る点。
2-2 本願発明は、「電解液中における前記ジニトリル化合物の含有量は、0.1重量%?10重量%であり、前記電解液中における前記スルフィニル化合物の含有量は、0.1重量%?5重量%であり、前記電解液中における前記リチウム塩の含有量は、0.01mol/kg?1mol/kgである」のに対し、引用発明1-2は、「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物の含有量の合計は、0.5重量%?2重量%であ」る点。


(Yは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)

(Zは炭素数=2?4のアルキレン基あるいはハロゲン化アルキレン基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはハロゲン化アルケニレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基、またはそれらの誘導体である。)」

(2)-2 判断
ア まず、上記2-1の相違点について検討する。

イ 引用発明1-2の「リチウムイオン二次電池」は、「電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、その他に、各種添加剤などを含んでいてもよいものであ」るところ、「電解質塩」及び「各種添加剤」の材料が特定されていない。

ウ ここで、「各種添加剤」については、引用文献1に、具体的な添加剤が記載されていない。

エ また、「電解質塩」について、上記3(1)アの【請求項8】には、「電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4) )、過塩素酸リチウム(LiClO_(4) )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF_(6) )、および式(9)?式(14)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。」と「六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))」が最初に記載され、また、上記3(1)イの【0060】?【0062】には、電解質塩は、「六フッ化リン酸リチウムがより好ましい」と記載され、さらに、上記3(1)イの【0080】には、「電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい」と記載され、また、実施例における【表1】?【表14】には、98例の実施例が記載されているうち90例が「電解質塩」として、「溶媒に対して1mol/kg」(上記3(1)イの【0182】)の六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )を採用しており、残りの8例のうち、6例(実験例3-1?3、6-1?3)が、0.9mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))+0.1mol/kgの他の電解質塩、残りの2例(実験例2-10、5-10)が、1mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))+0.01mol/kgのLiPF_(2) O_(2)を用いたものであり、実施例では、「電解質塩」として、ほぼ1mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))を採用しているといえる。

オ そうすると、上記ウのように、引用発明1-2における「各種添加剤」として、引用文献1に、具体的な添加剤が記載されていないし、上記エでの検討を考慮すると、引用発明1-2における「電解質塩」は、溶媒に対して1mol/kg含有させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )とすることが標準的な実施形態であるといえる。

カ そして、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))の分子量は、約151.91(Li:6.94、P:30.97、F:19.00)であるから、引用発明1-2における「電解質塩」は、溶媒に対して約15.191%の量が含まれているといえる。

キ そうすると、引用発明1-2の溶媒中における「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」の含有量は、0.01重量%?10重量%であり、電解液の質量は溶媒の質量の約1.15191倍であるから、引用発明1-2の電解質中における「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」の含有量は、約0.0087重量%?約8.68重量%である。

ク そして、この含有量は、上記2-1の相違点に係る本願発明の数値範囲と大半が重複するものであるから、上記2-1の相違点は実質的な相違点ではない。

ケ 次に、上記2-2の相違点について検討する。

コ 引用発明1-2の溶媒中における「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物の含有量の合計は、0.5重量%?2重量%であ」り、上記キより、電解液の質量は溶媒の質量の約1.15191倍であるから、引用発明1-2の電解質中における「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物の含有量の合計」は、約0.434重量%?約1.736重量%である。

サ そうすると、引用発明1-2の電解質中における「式(2)および式(3)で表されるスルホン化合物の含有量の合計」は、本願発明の「電解液中における前記スルフィニル化合物の含有量」である「0.1重量%?5重量%」に完全に含まれるから、上記2-2の相違点は、実質的な相違点ではない。

シ 以上より、本願発明と引用発明1-2との間に相違点は存在しないから、本願発明は、引用発明1-2、すなわち、引用文献1に記載された発明である。

(3)本願発明と引用発明2-1との対比・判断
(3)-1 本願発明と引用発明2-1との対比
本願発明と引用発明2-1とを対比する。
ア 引用発明2-1の「正極および負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え」るとの発明特定事項は、本願発明2-1の「正極および負極と共に電解液を備え」るとの発明特定事項に相当する。

イ 引用発明2-1の「炭酸メチレンエチレン」は、本願発明の「下記の式(18)」で「表される不飽和環状炭酸エステル」において、R5とR6が水素基である化合物と一致する。



(「R5からR14」のうち、R5及びR6は「水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6」は「互いに結合されていてもよい。」)

ウ そうすると、引用発明2-1の「溶媒は、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸メチレンエチレン、プロパンスルトン、プロペンスルトン、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸あるいは無水フタル酸のうちの少なくとも1種を含むを含む」との発明特定事項と、本願発明の「下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項とは、「炭酸メチレンエチレン」を含有するとの発明特定事項で重複する。


(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)」

エ 引用発明2-1の「式(1)」「で表されるスルホン化合物」


(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)」は、本願発明の「式(10)」「で表されるスルフィニル化合物」において、R52およびR53が互いに結合されているものと一致する。



(「R46?R59」のうち、R52およびR53は、「1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり」、「R52およびR53」は「互いに結合されていてもよい。」)

オ 引用発明2-1の「式(2)」「で表されるスルホン化合物」


(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)」は、本願発明の「式(11)」「で表されるスルフィニル化合物」おいて、R54およびR55が互いに結合されているものと一致する。



(「R46?R59」のうち、R54およびR55は、「1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり」、「R54およびR55」は「互いに結合されていてもよい。」)

カ 引用発明2-1の「溶媒」は、「電解質」に「含」まれるものであるから、引用発明2-1の「前記溶媒は、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」


(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)」「を含」むとの発明特定事項と、本願発明の「下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項とは、下記の式(10)で表されるスルフィニル化合物であって、R52およびR53が互いに結合されているもの、及び、下記の式(11)で表されるスルフィニル化合物であって、R54およびR55が互いに結合されているもののうち、少なくとも1種を含有する点で重複している。
「NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」

キ 引用発明2-1の「二次電池」と本願発明の「リチウムイオン二次電池」とは、「二次電池」で共通する。

ク 上記ア?キの検討を踏まえると、本願発明と引用発明2-1とは、
「正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
炭酸メチレンエチレンと、
下記の式(10)で表されるスルフィニル化合物であって、R52およびR53が互いに結合されているもの、及び、下記の式(11)で表されるスルフィニル化合物であって、R54およびR55が互いに結合されているもののうち少なくとも1種と、
を含有する、
二次電池。

」で重複するから、結局、本願発明と引用発明2-1とは、
「正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、
下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種を含有する、
二次電池。

(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)
NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」で一致し、次の3-1?3-3の相違点で相違する。

(相違点)
3-1 本願発明は、「電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?10重量%であ」るのに対し、引用発明2-1は、「不飽和環状炭酸エステル」である炭酸メチレンエチレンの含有量が特定されていない点。
3-2 本願発明は、「電解液中における前記スルフィニル化合物の含有量は、0.1重量%?5重量%であ」るのに対し、引用発明2-1は、「式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」の含有量が特定されていない点。


(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)」
3-3 本願発明は、「リチウムイオン二次電池」であるのに対し、引用発明2-1は、単に「二次電池」である点。

(3)-2 判断
ア まず、上記3-1の相違点について検討する。

イ 引用文献2の請求項7に係る発明である引用発明2-1は、「炭酸メチレンエチレン」の含有量が特定されていないが、上記3(2)イの[0065]には、「溶媒中における不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01重量%?10重量%である」と記載されているから、引用発明2-1の「炭酸メチレンエチレン」の含有量は、この範囲内であると考えられる。
しかしながら、不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量が、本願発明は、電解液中における含有量であるのに対し、引用発明1-1は、溶媒中における含有量であるから、これらを単純に比較できない。

ウ そこで、引用発明2-1における、電解液中の「炭酸メチレンエチレン」の含有量がどの程度であるのかを、以下検討する。

エ 引用発明2-1の「二次電池」は、「溶媒および電解質塩を含む電解質」を備えるものであるところ、「電解質塩」の材料が特定されていない。
ここで、「電解質塩」について、上記3(2)アの[請求項8]には、「電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4) )、過塩素酸リチウム(LiClO_(4 ))、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF_(6 ))、および式(11)?式(16)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。」と「六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))」が最初に記載され、また、上記3(2)イの[0076]?[0078]には、電解質塩であるリチウム塩は、「六フッ化リン酸リチウムと共に四フッ化ホウ酸リチウムを用いるのが好ましい」と記載され、さらに、上記3(2)イの[0096]には、「電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい」と記載され、また、実施例における[表1]?[表17]には、270例の実施例が記載されているうち235例が「電解質塩」として、「溶媒に対して1.2mol/kg」(上記3(2)イの[0199])の六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )を採用しており、残りの35例(実験例5-1?15、10-1?15、13-1?5)が、1.1mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )+0.1mol/kgの他の電解質塩を用いたものであり、実施例では、「電解質塩」として、ほぼ1.2mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )を採用しているといえる。
そうすると、引用発明2-1における「電解質塩」は、溶媒に対して1.2mol/kg含有させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )とすることが標準的な実施形態であるといえる。
そして、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )の分子量は、約151.91(Li:6.94、P:30.97、F:19.00)であるから、引用発明2-1における「電解質塩」は、溶媒に対して約18.229%の量が含まれているといえる。

オ そうすると、上記イより、引用発明2-1の溶媒中における「炭酸メチレンエチレン」の含有量は、0.01重量%?10重量%であり、電解液の質量は溶媒の質量の約1.18229倍であるから、引用発明2-1の電解質中における「炭酸メチレンエチレン」の含有量は、約0.0085重量%?約8.46重量%である。
そして、この含有量は、上記3-1の相違点に係る本願発明の数値範囲と大半が重複するものであるから、上記3-1の相違点は実質的な相違点ではない。

カ 次に、上記3-2の相違点について検討する。

キ 引用文献1の請求項7に係る発明である引用発明2-1は、「式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」の含有量が特定されていないが、上記(3)-1アより、引用発明2-1の「電解質」は液体であることが明らかであるところ、上記3(2)イの[0054]には、「電解質中におけるスルホン化合物の含有量は、特に限定されないが、0.01重量%?5重量%であることが好ましい」と記載されているから、引用発明2-1の「電解質」の「溶媒」に含まれる「式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」の含有量は、この範囲内であると考えられる。
そして、この含有量は、上記3-2の相違点に係る本願発明の数値範囲と大半が重複するものであるから、上記3-2の相違点は実質的な相違点ではない。

ク 最後に、上記3-3の相違点について検討する。

ケ 上記3(2)イの[0017]より、「二次電池」として「リチウムイオン二次電池」を想定しているから、引用発明2-1の「二次電池」は「リチウムイオン二次電池」であるといえる。
そうすると、上記3-3の相違点は実質的な相違点ではない。

コ 以上より、本願発明と引用発明2-1との間に相違点は存在しないから、本願発明は、引用発明2-1、すなわち、引用文献2に記載された発明である。

(4)本願発明と引用発明2-2との対比・判断
(4)-1 本願発明と引用発明2-2との対比
本願発明と引用発明2-2とを対比する。
ア 引用発明2-2の「正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される」との発明特定事項は、正極、負極及び電解液を有することを表しているから、本願発明の「正極および負極と共に電解液を備え」るとの発明特定事項に相当する。

イ 引用発明2-2の「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」「のうちの少なくとも1種」は、本願発明の「下記の式(18)」「で表される不飽和環状炭酸エステル」において、R5とR6が水素基である化合物と一致する。



(「R5からR14」のうち、R5およびR6は「水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6」は「互いに結合されていてもよい。」)

ウ そうすると、引用発明2-2の「溶媒は、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、プロパンスルトン、プロペンスルトン、無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸のうちの少なくとも1種を含んで」いるとの発明特定事項と、本願発明の「下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項とは、「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンのうちの少なくとも1種」を含有するとの発明特定事項で重複する。
「【化5】

(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

エ 引用発明2-2の「式(1)」「で表されるスルホン化合物」


(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)」は、本願発明の「式(10)」「で表されるスルフィニル化合物」において、R52およびR53が互いに結合されているものと一致する。



(「R46?R59」のうち、R52およびR53は、「1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり」、「R52およびR53」は「互いに結合されていてもよい。」)

オ 引用発明2-2の「式(2)で表されるスルホン化合物」


(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)」は、本願発明の「式(11)」「で表されるスルフィニル化合物」において、R54およびR55が互いに結合されているものと一致する。



(「R46?R59」のうち、R54およびR55は、「1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり」、「R54およびR55」は「互いに結合されていてもよい。」)

カ 引用発明2-2の「電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであ」って、「溶媒」は「電解液」に含まれるものであるから、引用発明2-2の「溶媒は、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物のうちの少なくとも1種」「

(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)」を含むとの発明特定事項と、本願発明の「下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種」「を含有」するとの発明特定事項とは、下記の式(10)で表されるスルフィニル化合物であって、R52およびR53が互いに結合されているもの、及び、下記の式(11)で表されるスルフィニル化合物であって、R54およびR55が互いに結合されているもののうち、少なくとも1種を含有する点で重複している。
「NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」

キ 上記ア?カより、本願発明と引用発明2-2とは、
「正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンのうちの少なくとも1種と、
下記の式(10)で表されるスルフィニル化合物であって、R52およびR53が互いに結合されているもの、及び、下記の式(11)で表されるスルフィニル化合物であって、R54およびR55が互いに結合されているもののうち、少なくとも1種と
を含有する、
リチウムイオン二次電池。

」で重複するから、結局、本願発明と引用発明2-2とは、
「正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、
下記の式(18)?式(20)のそれぞれで表される不飽和環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、
下記の式(6)で表されるジニトリル化合物、下記の式(7)?式(14)のそれぞれで表されるスルフィニル化合物、および下記の式(15)?式(17)のそれぞれで表されるリチウム塩のうちの少なくとも1種を含有する、
リチウムイオン二次電池。

(R5?R14は水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5およびR6、R7?R10のうちの任意の2つ以上、またはR11?R14のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)
NC-R45-CN ・・・(6)
(R45は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)

(R46?R59、R61およびR62は1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R60およびR63は2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。R46およびR47、R48およびR49、R50およびR51、R52およびR53、R54およびR55、R56およびR57、R58?R60のうちの任意の二つ以上、またはR61?R63のうちの任意の2つ以上はそれぞれ互いに結合されていてもよい。)

(R64は2価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li[N(SO_(2) R65)(SO_(2) R66)] ・・・(16)
(R65およびR66はハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R65およびR66のうちの少なくとも一方はハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
Li(SO_(3 )F) ・・・(17)」で一致し、次の4-1及び4-2の点で相違する。

(相違点)
4-1 本願発明は、「電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%?10重量%であ」るのに対し、引用発明2-2は、「溶媒中の炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンの含有量は、0.01重量%?10重量%であ」る点。

4-2 本願発明は、「電解液中における前記ジニトリル化合物の含有量は、0.1重量%?10重量%であり、前記電解液中における前記スルフィニル化合物の含有量は、0.1重量%?5重量%であり、前記電解液中における前記リチウム塩の含有量は、0.01mol/kg?1mol/kgである」のに対し、引用発明2-2は、「電解質中における、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であ」る点。


(R1は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(R2は炭素数=2?4のアルキレン基あるいはそれがハロゲン化された基、炭素数=2?4のアルケニレン基あるいはそれがハロゲン化された基、アリーレン基あるいはそれがハロゲン化された基、またはそれらの誘導体である。)

(4)-2 判断
ア まず、上記4-1の相違点について検討する。

イ 引用発明2-2の「リチウムイオン二次電池」は、「電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、その他に、各種添加剤などを含んでいてもよいものであ」るところ、「電解質塩」及び「各種添加剤」の材料が特定されていない。

ウ ここで、「各種添加剤」については、引用文献2に、具体的な添加剤が記載されていない。

エ また、「電解質塩」について、上記3(2)アの[請求項8]には、「電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4) )、過塩素酸リチウム(LiClO_(4) )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF_(6 ))、および式(11)?式(16)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。」と「六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )」が最初に記載され、また、上記3(2)イの[0076]?[0078]には、電解質塩であるリチウム塩は、「六フッ化リン酸リチウムと共に四フッ化ホウ酸リチウムを用いるのが好ましい」と記載され、さらに、上記3(2)イの[0096]には、「電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい」と記載され、また、実施例における[表1]?[表17]には、270例の実施例が記載されているうち235例が「電解質塩」として、「溶媒に対して1.2mol/kg」(上記3(2)イの[0199])の六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))を採用しており、残りの35例(実験例5-1?15、10-1?15、13-1?5)が、1.1mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )+0.1mol/kgの他の電解質塩を用いたものであり、実施例では、「電解質塩」として、ほぼ1.2mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )を採用しているといえる。

オ そうすると、上記ウのように、引用発明2-2における「各種添加剤」として、引用文献1に、具体的な添加剤が記載されていないし、上記エでの検討を考慮すると、引用発明2-2における「電解質塩」とは、溶媒に対して1.2mol/kg含有させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6 ))とすることが標準的な実施形態であるといえる。

カ そして、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6) )の分子量は、約151.91(Li:6.94、P:30.97、F:19.00)であるから、引用発明2-2における「電解質塩」は、溶媒に対して約18.229%の量が含まれているといえる。

キ そうすると、引用発明2-2の溶媒中における「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」の含有量は、0.01重量%?10重量%であり、電解液の質量は溶媒の質量の約1.18229倍であるから、引用発明2-2の電解質中における「4-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンあるいは4,4-ジエチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン」の含有量は、約0.0085重量%?約8.46重量%である。

ク そうすると、引用発明2-2の電解質中における「式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物の含有量の合計は、本願発明の「電解液中における前記スルフィニル化合物の含有量」である「0.1重量%?5重量%」と大半で重複するから、上記4-1の相違点は、実質的な相違点ではない。

ケ 次に、上記4-2の相違点について検討する。

コ 本願発明は、「電解液中における前記スルフィニル化合物の含有量は、0.1重量%?5重量%であ」り、上記(4)-1アより、引用発明2-2の「電解質」は液体であることが明らかであるところ、引用発明2-2は、「電解質中における、式(1)および式(2)で表されるスルホン化合物の含有量は、0.01重量%以上5重量%以下であ」って、両者の含有量は大半で重複するから、上記4-2の相違点は、実質的な相違点ではない。

サ 以上より、本願発明と引用発明2-2との間に相違点は存在しないから、本願発明は、引用発明2-2、すなわち、引用文献2に記載された発明である。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1-1、引用発明1-2、引用発明2-1、または、引用発明2-2、すなわち、引用文献1または引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-25 
結審通知日 2018-05-29 
審決日 2018-06-12 
出願番号 特願2016-1269(P2016-1269)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神野 将志  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 土屋 知久
宮本 純
発明の名称 リチウムイオン二次電池用電解液、リチウムイオン二次電池、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器  
代理人 特許業務法人つばさ国際特許事務所  

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