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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1342604
審判番号 不服2017-13565  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-12 
確定日 2018-07-26 
事件の表示 特願2015- 96818「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開、特開2016-209360〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成27年5月11日の出願であって、平成28年3月22日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年5月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月28日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年5月25日付け補正の却下の決定により平成28年12月22日付けの手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は平成29年6月13日に請求人に送達された。これに対して、同年9月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年9月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成29年9月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 補正の内容

本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち平成28年5月17日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正する事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前)
「複数種類の図柄が施された複数の回胴手段と、
前記複数の回胴手段をそれぞれ回転駆動させてゲームを始動するための始動手段と、
前記始動手段による始動条件の成立に基づき、複数種類の役の内部当選の当否を抽選する抽選手段と、
第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態とを含む複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段と、
前記抽選手段による抽選により所定の役が前記内部当選した場合に、前記第2遊技状態の継続を助長する特典数を決定可能な特典数決定手段とを備え、
前記所定の役が当選した場合に決定可能な前記特典数は、該所定の役に対応付けられた遊技価値の数が大きいほど大きくなる場合があることを特徴とする遊技機。」

(補正後)
「複数種類の図柄が施された複数の回胴手段と、
前記複数の回胴手段をそれぞれ回転駆動させてゲームを始動するための始動手段と、
前記始動手段による始動条件の成立に基づき、予め定められた遊技価値が対応付けられた第1役と前記第1役より大きな遊技価値が対応付けられた第2役とを含む複数種類の役の内部当選の当否を抽選する抽選手段と、
第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態と第3遊技状態とを含む複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段と、
前記抽選手段による抽選により所定の役が前記内部当選した場合に、前記第2遊技状態の継続を助長する特典数を決定可能な特典数決定手段とを備え、
前記第2遊技状態では、前記第2役が当選した遊技より、前記第1役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きく、
前記第3遊技状態では、前記第1役が当選した遊技より、前記第2役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きい
ことを特徴とする遊技機。」

そして、本件補正は、以下の補正事項1ないし3を含むものである。

(1) 補正事項1
本件補正前の請求項1の「複数種類の役」について、「予め定められた遊技価値が対応付けられた第1役と前記第1役より大きな遊技価値が対応付けられた第2役とを含む」との限定を付加する。

(2) 補正事項2
本件補正前の請求項1の「第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態とを含む複数の遊技状態」を、「第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態と第3遊技状態とを含む複数の遊技状態」に補正する。

(3) 補正事項3
本件補正前の請求項1の「前記所定の役が当選した場合に決定可能な前記特典数は、該所定の役に対応付けられた遊技価値の数が大きいほど大きくなる場合がある」を、「前記第2遊技状態では、前記第2役が当選した遊技より、前記第1役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きく、前記第3遊技状態では、前記第1役が当選した遊技より、前記第2役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きい」に補正する。

2 補正の適否

(1) 補正事項1について
上記補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数種類の役」について、「予め定められた遊技価値が対応付けられた第1役と前記第1役より大きな遊技価値が対応付けられた第2役とを含む」との限定を付加するものであり、この補正事項は、本件補正前の請求項1に係る発明のいわゆる限定的減縮を目的としており、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

(2) 補正事項2について
上記補正事項2は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の遊技状態」について、「第1遊技状態」と「第2遊技状態」に加えて、「第3遊技状態」を含むとの限定を付加するものであり、この補正事項は、本件補正前の請求項1に係る発明のいわゆる限定的減縮を目的としており、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

(3) 補正事項3について
上記補正事項3は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2遊技状態の継続を助長する特典数」に関して、「前記所定の役が当選した場合に決定可能な前記特典数は、該所定の役に対応付けられた遊技価値の数が大きいほど大きくなる場合がある」(以下、「限定事項1」という。)との限定を削除した上で、「前記第2遊技状態では、前記第2役が当選した遊技より、前記第1役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きく、前記第3遊技状態では、前記第1役が当選した遊技より、前記第2役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きい」(以下、「限定事項2」という。)との限定を加えたものである。
そこで、上記補正事項3の上記限定事項1を削除し、上記限定事項2を加えることが、本件補正前の請求項1に係る発明の、いわゆる限定的減縮を目的とするものであるか否かを検討する。

ア 限定事項1を削除する補正は、特許請求の範囲を拡張する補正であるから、上記補正事項3、特許請求の範囲を拡張する補正事項を含むものである。

イ 限定事項2には、「特典数の期待値」との記載があり、当該記載に対応する限定事項1中の記載は「特典数」であるが、「特典数の期待値」には確率的な要素が含まれることは明らかであり、「特典数」と「特典数の期待値」とは、異なる概念のものであるから、「特典数」を「特典数の期待値」に補正することは、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項とは別個の作用を有する発明特定事項を付加するものである。

ウ 限定事項2は、第2遊技状態と第3遊技状態とで、第1役の当選及び第2役の当選による特典数の期待値の大小関係を異ならせる点を特定するものであるが、その特定は、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項とは別個の作用を有する発明特定事項を付加するものである。

したがって、上記アないしウより、上記補正事項3は、特許請求の範囲を拡張する補正事項を含み、限定的減縮であるとはいえず、上記補正事項3は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。

また、平成28年10月28日付けの拒絶理由や平成29年5月25日付けの拒絶査定をみても、請求項1について「明りょうでない記載」があるとの指摘はないし、仮にあったとしても、上記補正事項3が、明りょうでない記載を釈明するためのものであるということはできない。よって、上記補正を、同項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものであるということはできない。

さらに、上記補正事項3が、同項第1号又は第3号に掲げる「請求項の削除」又は「誤記の訂正」を目的とするものに該当しないことは明らかである。

(4) 小括

以上のことから、上記補正事項3は、特許法第17条の2第5項各号のいずれの規定にも該当しないことから、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれの規定にも該当しない。

3 独立特許要件について

上記2のとおりであるが、仮に本件補正が限定的減縮を目的とするものであるとした場合、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても以下に検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、平成29年9月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記「1」の「(補正後)」の記載を参照。)であり、分説し、A)ないしH)の符号を付与すると、以下のとおりである。

「A) 複数種類の図柄が施された複数の回胴手段と、
B) 前記複数の回胴手段をそれぞれ回転駆動させてゲームを始動するための始動手段と、
C) 前記始動手段による始動条件の成立に基づき、予め定められた遊技価値が対応付けられた第1役と前記第1役より大きな遊技価値が対応付けられた第2役とを含む複数種類の役の内部当選の当否を抽選する抽選手段と、
D) 第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態と第3遊技状態とを含む複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段と、
E) 前記抽選手段による抽選により所定の役が前記内部当選した場合に、前記第2遊技状態の継続を助長する特典数を決定可能な特典数決定手段とを備え、
F) 前記第2遊技状態では、前記第2役が当選した遊技より、前記第1役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きく、
G) 前記第3遊技状態では、前記第1役が当選した遊技より、前記第2役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きい
H) ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献とそれに記載された事項

ア 引用文献1

(ア) 引用文献1の記載事項
本願の出願前に頒布された特開2012-100916号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。以下同様。)。

引1-a
「【0012】
図1に示すスロットマシン100は、本体101と、本体101の正面に取り付けられ、本体101に対して開閉可能な前面扉102と、を備える。本体101の中央内部には、外周面に複数種類の図柄が配置されたリールが3個(左リール110、中リール111、右リール112)収納され、スロットマシン100の内部で回転できるように構成されている。これらのリール110乃至112はステッピングモータ等の駆動装置により回転駆動される。」

引1-b
「【0019】
スタートレバー135は、リール110乃至112の回転を開始させるためのレバー型のスイッチである。即ち、メダル投入口134に所望するメダル枚数を投入するか、ベットボタン130乃至132を操作して、スタートレバー135を操作すると、リール110乃至112が回転を開始することとなる。スタートレバー135に対する操作を遊技の開始操作と言う。スタートレバー135は遊技者の操作を受け付ける複数の操作部うちの所定の操作部である。さらに限定すると、スタートレバー135は、遊技者による操作により各リール110乃至112を回転開始させる指示のための操作を受け付ける回転指示操作部である。つまり、スタートレバー135は、複数種類の図柄が施された複数のリールの回転開始を指示するものであり、スタートスイッチに相当する。」

引1-c
「【0029】
スロットマシン100の制御部は、大別すると、遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、によって構成されている。」

引1-d
「【0054】
本実施形態における入賞役のうち、特別役1(BB(ビッグボーナス))および特別役2(RB(レギュラーボーナス))はボーナス遊技(特別遊技)に移行する役とされている。・・・(略)・・・。
【0055】
スロットマシン100の入賞役には、ビッグボーナス(BB)と、レギュラーボーナス(RB)と、小役(小役1?小役3)と、再遊技役(再遊技1?再遊技7)がある。」

引1-e
「【0059】
「小役(小役1?小役3)」は、入賞により所定数のメダルが払い出される入賞役で、対応する図柄組合せは、小役1が「チェリー-ANYー-ANY(チェリー)」、小役2が「スイカ-スイカ-スイカ(スイカ)」、小役3が「ANY-ベル-ANY(ベル)」である。」

引1-f
「【0067】
さらに、AT遊技状態について説明する。
【0068】
遊技者は、どの停止操作順序が正解となる停止操作順序であるか、すなわち、どの停止操作順序が遊技者にとって有利となる停止操作順序であるかについて、遊技台100が正解となる停止操作順序を報知しない限り認識することができない。
【0069】
ここで、後述するが第1副制御部400および第2副制御部500は、所定の条件が成立した場合に、上述した正解となる停止操作順序が設けられた入賞役が当選したときに、正解となる停止操作順序がどのような停止操作順序であるかの報知を行う。このように、遊技者にとって有利となる操作手順(停止操作順序または操作タイミング)を報知することを操作手順報知と呼ぶ。また、所定の開始条件が成立してから複数回の遊技にわたって操作手順報知を実行し続ける状態をAT遊技(AT遊技状態)と呼ぶ。第1副制御部400がAT状態で報知する操作手順は遊技台または遊技台メーカーが推奨する停止操作順序である。なお、この第1副制御部400が設定するAT遊技状態は、非AT遊技状態よりも遊技者にとって有利であり、かつ複数回の遊技にわたり継続するものである。また、非AT遊技状態は本発明にいう第1の遊技期間であり、AT遊技状態は第2の遊技期間に相当する。」

引1-g
「【0093】
ステップS104では、乱数発生回路317で発生させた乱数を取得する。
【0094】
ステップS105では、ステップS104で取得した乱数値と、ROM306に記憶されている入賞役抽選テーブルを用いて、役の内部抽選を行う。また、内部抽選の結果、入賞役が決定されたことに基づいて内部当選コマンドを送信する準備を行う。ここで準備されたコマンドは後述する図10の主制御部タイマ割り込み処理のステップS208にて第1副制御部400に送信される。なお、この処理にて主制御部300は、スタートレバー135の操作に基づいて、予め定められた複数種類の抽選結果から所定の抽選結果を抽選により決定するものであり、抽選手段に相当する。なお、複数種類の抽選結果には本発明にいう特定の抽選結果である「再遊技役1-5」を含む。」

引1-h
「【0157】
次に、図15を用いて第1副制御部400が図13のステップS803にて実行する上乗せ処理について詳細に説明する。図15は第1副制御部400が実行する上乗せ処理のフローチャートである。
【0158】
ステップS1001では上乗せ報知フラグが設定されているか否かを判定する。上乗せとは、AT遊技状態など通常の遊技状態よりも有利な遊技状態が設定される遊技回数を追加することを意味し、上乗せ報知とは、上乗せがあったことを報知することを意味し、上乗せ報知フラグとは後述する図17のステップS1206にて、RAM408の所定の領域に設定されるフラグを意味する。設定されていればステップS1002に進み、設定されていなければステップS1003に進む。
【0159】
ステップS1002では、上乗せナビ設定処理を行う。詳細は後述する。
【0160】
ステップS1003では、上乗せ役が内部当選した否か(当審注:「当選したか否か」の誤記と認める。)を判定する。当選していた場合はステップS1004に進み、していなかった場合はステップS1005に進む。なお、上乗せ役とは、後述する図17のステップS1201にて実行される上乗せ抽選を実行する契機となる入賞役のことであり、本実施形態では、特別役1、特別役2、小役1および小役2がそれにあたる。」

引1-i
「【0176】
ステップS1201では、RAM408の所定の領域に記憶された上乗せATゲーム数用の抽選用乱数から抽選用乱数を取得し、該抽選用乱数、当選した上乗せ役の情報およびROM406に記憶された上乗せATゲーム数抽選テーブルに基づいて上乗せATゲーム数を決定する。
【0177】
具体的に、図18に示す上乗せATゲーム数抽選テーブルを用いて説明する。
【0178】
たとえば、上乗せ役としてチェリーに当選した場合、チェリーの行から取得した抽選用乱数値に基づいて上乗せATゲーム数を決定する。チェリーの場合、図に示すとおり、300Gの上乗せATゲーム数である場合が1%、200Gである場合が1%、100Gである場合が1%、50Gである場合が7%、30Gである場合が20%、10Gである場合が20%、そして0G(すなわち上乗せを行わない)場合が50%ある。第1副制御部400は、この上乗せATゲーム数抽選テーブルを参照して、抽選用乱数値によって上乗せATゲーム数をどの程度のゲーム数にするかを決定する。」

引1-j 図1




引1-k 図6




引1-l 図13




引1-m 図18




(イ) 引用文献1の記載より認定できる事項

a 上記引1-lに示した図13を参照すると、上乗せ処理は、ATフラグありの状態で行われるものであるから、AT遊技状態で行われるものであることが読み取れる。

b 上記引1-mに示した図18には、上乗せATゲーム数抽選テーブルが記載されており、上乗せ役として「特別役1」、「特別役2」、「チェリー」、及び、「スイカ」が規定されていることが読み取れる。
一方、上記引1-kに示した図6には、各役の払出し数が記載されており、「特別役1」、「特別役2」、「チェリー」、及び、「スイカ」の払い出数が、それぞれ、「0枚」、「0枚」、「2枚」、及び、「5枚」であることが読み取れる。

c 上記引1-mに示した図18より、「チェリー」及び「スイカ」が上乗せ役として当選した場合には、上乗せゲーム数として、最大で300Gが設定されているが、「特別役1」が上乗せ役として当選した場合は、最大で50G、「特別役2」が上乗せ役として当選した場合は、最大で100Gである点が読み取れる。

d また、上記引1-iの記載を参酌し、上記引1-mに示した図18より、「特別役1」、「特別役2」、「チェリー」及び「スイカ」が当選した場合の上乗せATゲーム数の期待値を計算すると、以下のとおりである。
「特別役1」= 50G×0.5+ 0G×0.5 = 25G
「特別役2」=100G×0.5+ 0G×0.5 = 50G
「チェリー」=300G×0.01+200G×0.01+100G×0.01+50G×0.07+30G×0.2 +10G×0.2 +0G×0.5 = 17.5G
「スイカ」 =300G×0.05+200G×0.05+100G×0.05+50G×0.05+30G×0.05+10G×0.05+0G×0.7 = 34.5G

(ウ) 引用発明

上記引1-aないし引1-mに摘記した引用文献1の記載事項、及び、(イ)aないしdにおいて認定した事項を含む引用文献1全体の記載を総合すると、引用文献1には、

「a) 外周面に複数種類の図柄が配置された3個のリール(左リール110、中リール111、右リール112)と(【0012】)、
b) 複数のリールの回転開始を指示するレバー型のスイッチであるスタートレバー135と(【0019】)を有する、
スロットマシン100であり、
c) 前記スロットマシン100の制御部は、
遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンドに応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500とによって構成され(【0029】)、
c-1) 主制御部300は、スタートレバー135の操作に基づいて、抽選結果を抽選により決定するものであり、乱数発生回路317で発生させた乱数を取得し、取得した乱数値と、入賞役抽選テーブルを用いて、役の内部抽選を行い(【0093】、【0094】)、
c-2) スロットマシン100の入賞役には、「特別役1(ビッグボーナス)」と、「特別役2(レギュラーボーナス)」と、小役1(チェリー)と、小役2(スイカ)と、小役3(ベル)と、再遊技役(再遊技1?再遊技7)があり(【0055】、【0059】)、
d-1) 第1副制御部400は、所定の開始条件が成立してから複数回の遊技にわたって操作手順報知を実行し続けるAT遊技(AT遊技状態)を設定するものであり(【0069】)、
d-2) この第1副制御部400が設定するAT遊技状態は、非AT遊技状態よりも遊技者にとって有利であり、かつ複数回の遊技にわたり継続するものであり(【0069】)、
e-1) このAT遊技状態において、第1副制御部400がAT遊技状態が設定される遊技回数を追加する上乗せ処理を実行し(【0157】、【0158】、図13、(イ)a)、
e-2) この上乗せ処理において、上乗せ抽選を実行する契機となる入賞役である上乗せ役が内部当選したか否かを判定し(【0160】)、
e-3) 第1副制御部400は、上乗せATゲーム数抽選テーブルを参照して、抽選用乱数値によって上乗せATゲーム数をどの程度のゲーム数にするかを決定し(【0178】)、
c-3) 上乗せ役は、「特別役1」、「特別役2」、「チェリー」、及び、「スイカ」であり、それぞれの払出し数は「0枚」、「0枚」、「2枚」、及び、「5枚」であり(【0160】、図6、(イ)b)、
e-4) 「チェリー」及び「スイカ」が上乗せ役として当選した場合には、上乗せゲーム数として、最大で300Gが設定され、「特別役1」が上乗せ役として当選した場合は、最大で50G、「特別役2」が上乗せ役として当選した場合は、最大で100Gが設定され(【0178】、図18、(イ)c)、
f) また、「特別役1」、「特別役2」、「チェリー」、及び、「スイカ」が内部当選したときの上乗せATゲーム数の期待値が、それぞれ、「25G」、「50G」、「17.5G」、「34.5G」である((イ)d)、
h) スロットマシン100。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ 引用文献2

(ア) 引用文献2の記載事項
本願の出願前に頒布された、「パチスロサムライチャンプルー 流転輪廻」,パチスロ攻略マガジンドラゴン,2014年7月号,日本,株式会社プラントピア,2014年 5月21日,120-123頁(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

引2-a
120頁左中央には、役の構成が記載されており、その払出し数が、「チェリー」が2枚、「スイカ」が8枚である点が記載されており、同頁左下欄には、「レア小役の停止形」が記載されており、「チェリー」には「弱チェリー」、「強チェリー」及び「中段チェリー」が存在し、「スイカ」には「弱スイカ」と「強スイカ」が存在する点が記載されている。

引2-b
120頁右下欄に「ゲームの流れ」のフロー図が記載されており、「NORMAL/HYPER BONUS」の欄に、「またこちらのボーナスに限り、ゲーム数上乗せ抽選が行われ、ロング継続が大量出玉への王道となる。」と記載されている。

引2-c
122頁左下欄に「NORMAL/HYPER BONUS中の上乗せ」とのタイトルが付された欄があり、当該欄の左下部に、「ボーナス中はゲーム数上乗せアリ」と記載され、さらに「本機で唯一ゲーム数上乗せが発生し得るのがボーナス中。・・・(略)・・・、本機の上乗せのメインは特化ゾーンにある。」と記載されている。

引2-d
123頁の上端には、「上乗せ特化ゾーン詳細」のタイトルが付され、右上欄には、「上乗せ特化ゾーンは全4種類!」「それぞれ突入契機・上乗せ抽選の仕様が異なる」「メインはエピソード」「最も突入機会が多いのが、チャンスリプレイ&ベル連で突入抽選が行われるエピソード。」と記載されている。

引2-e
123頁の右下の「チャンプルーエピソードラッシュ」の欄には、「エピソードは3種類存在」と記載され、「大食い大会(ボタン停止上乗せ)」、「タギング対決(連打上乗せ)」、「野球対決(一撃上乗せ)」の3種類のエピソードが存在することが読み取れる。

引2-f
123頁の右下欄には、「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」として、以下の表が掲示されている。




引2-g
123頁の右下欄の最下部には、以下の記載がある。
「ボーナスのロング継続に不可欠
大食い大会は他の2つに比べ、大きなゲーム数を上乗せしやすい分選択率は低め。しかし全種類において、成立役次第で思わぬ上乗せに繋がる可能性はある。」

(イ) 引用文献2の記載より認定できる事項

a 引2-b、引2-c及び引2-gの記載から、ボーナスのゲーム数上乗せ抽選は、ボーナス中にのみ行われる点が理解できることから、123頁右下欄の「チャンプルーエピソードラッシュ」の記事は、ボーナス中に行われるボーナスの上乗せゲーム数の抽選に関する記事であることが理解できる。

b 引2-eより、エピソードには、「タギング対決(連打上乗せ)」と「野球対決(一撃上乗せ)」を含む3種類のものが存在することが理解できる。
また、引2-fに示した「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」には、各エピソードごとの小役当選時の上乗せゲーム数が一覧表として記載されており、上記表の左欄には、小役の種類が示され、上記表の最上段には、「大食い対決」、「タギング対決」、「野球対決」で示されるエピソードの種類が記載されている。
そして、左欄の上から4段目に記載された「強チェリー」と、左欄の上から8段目に記載された「強スイカ」に注目すると、「タギング対決」の「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」は、「強チェリー」では「20.27G」、「強スイカ」では「20.24G」で、「強チェリー」のほうが「強スイカ」よりも「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」が大きいのに対して、「野球対決」では、「強チェリー」では「31.34G」、「強スイカ」では「32.34G」であり、「強スイカ」のほうが「強チェリー」よりも「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」が大きい点が記載されている。

c よって、引用文献2には、ボーナス中にボーナスの上乗せゲーム数を抽選するにあたって、「タギング対決」の遊技状態では、払出し数が2枚の「強チェリー」のほうが、払出し数が8枚の「強スイカ」よりも「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」が大きく、「野球対決」の遊技状態では、「強スイカ」のほうが「強チェリー」よりも「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」が大きい点(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されている。

(3)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 本願補正発明のA)の特定事項について
引用発明の特定事項a)の「外周面に複数種類の図柄が配置された3個のリール(左リール110、中リール111、右リール112)」は、本願補正発明の「複数種類の図柄が施された複数の回胴手段」に相当する。

イ 本願補正発明のB)の特定事項について
引用発明の特定事項b)の「複数のリールの回転開始を指示するレバー型のスイッチであるスタートレバー135」は、本願補正発明の「複数の回胴手段をそれぞれ回転駆動させてゲームを始動するための始動手段」に相当する。

ウ 本願補正発明のC)の特定事項について
(ア) 引用発明の特定事項c-2)及びc-3)において、「特別役2」は払出し数が「0枚」の役であり、「スイカ」は払出し数が「5枚」の役である。そして、引用発明の役は、「特別役2」、「スイカ」に加えて、「特別役1」、「チェリー」等の役を含む複数種類の役からなるものである。
(イ) そして、引用発明の払出し数が「0枚」の「特別役2」は、本願補正発明の「予め定められた遊技価値が対応付けられた第1役」に相当し、引用発明の払出し数が「5枚」の「スイカ」は、本願補正発明の「前記第1役より大きな遊技価値が対応付けられた第2役」に相当する。
(ウ) よって、引用発明の払出し数が「0枚」の「特別役2」と、払出し数が「5枚」の「スイカ」とを含む複数種類の役は、本願補正発明の「予め定められた遊技価値が対応付けられた第1役と前記第1役より大きな遊技価値が対応付けられた第2役とを含む複数種類の役」に相当する。
(エ) 引用発明の特定事項c-1)の「スタートレバー135の操作」が始動条件の成立を意味することは、当業者の技術常識であるから、引用発明の「スタートレバー135の操作に基づ」くことは、本願補正発明の「前記始動手段による始動条件の成立に基づ」くことに相当する。
(オ) 引用発明の特定事項c-1)の「乱数発生回路317で発生させた乱数を取得し、取得した乱数値と、入賞役抽選テーブルを用いて、役の内部抽選を行い」、「抽選結果を抽選により決定する」ことは、本願補正発明の「内部当選の当否を抽選する」ことに相当する。
(カ) 引用発明の特定事項c-1)の「主制御部300」は、「役の内部抽選を行」うものであるから、本願補正発明の「抽選手段」に相当する。
(キ) 以上のことから、引用発明の、「スタートレバー135の操作に基づいて」、払出し数が「0枚」の「特別役2」と、払出し数が「5枚」の「スイカ」とを含む複数種類の役から、乱数発生回路317で発生させた乱数を取得し、取得した乱数値と、入賞役抽選テーブルを用いて、役の内部抽選を行い」、「抽選結果を抽選により決定する」「主制御部300」は、本願補正発明の「前記始動手段による始動条件の成立に基づき、予め定められた遊技価値が対応付けられた第1役と前記第1役より大きな遊技価値が対応付けられた第2役とを含む複数種類の役の内部当選の当否を抽選する抽選手段」に相当する。

エ 本願補正発明のD)の特定事項について
(ア) 引用発明の特定事項d-1)及びd-2)において、「AT遊技状態」は、「非AT遊技状態よりも遊技者にとって有利であ」るから、引用発明の「非AT遊技状態」は、本願補正発明の「第1遊技状態」に相当し、引用発明の「非AT遊技状態よりも遊技者にとって有利であ」る「AT遊技状態」は、本願補正発明の「前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態」に相当する。
(イ) 引用発明の特定事項d-1)の「AT遊技状態」を「設定する」「第1副制御部400」は、「所定の開始条件が成立してから複数回の遊技にわたって操作手順報知を実行し続けるAT遊技(AT遊技状態)を設定するものであ」るから、本願補正発明の「複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段」に相当する。
(ウ) よって、引用発明の「非AT遊技状態よりも遊技者にとって有利であ」る「所定の開始条件が成立してから複数回の遊技にわたって操作手順報知を実行し続ける」「AT遊技状態」を「設定する」「第1副制御部400」と、本願補正発明の「第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態と第3遊技状態とを含む複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段」とは、「第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態を含む複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段」である点で一致する。

オ 本願補正発明のE)の特定事項について
(ア) 引用発明の特定事項e-1)の「AT遊技状態が設定される遊技回数を追加する」ことは、本願補正発明の「第2遊技状態の継続を助長する」ことに相当する。
(イ) 引用発明の特定事項e-1)及びe-3)において、「AT遊技状態が設定される遊技回数を追加する」「上乗せATゲーム数」は、本願補正発明の「第2遊技状態の継続を助長する特典数」に相当する。
(ウ) 引用発明の特定事項e-2)の「上乗せ抽選を実行する契機となる入賞役である上乗せ役が内部当選」することは、本願補正発明の「抽選手段による抽選により所定の役が」「内部当選した」ことに相当する。
(エ) 引用発明の特定事項e-1)の「第1副制御部400」は、「AT遊技状態が設定される遊技回数を追加する上乗せ処理を実行」するものであるから、本願補正発明の「特典数決定手段」に相当する。
(オ) よって、引用発明の「上乗せ抽選を実行する契機となる入賞役である上乗せ役が内部当選したか否かを判定し」、「上乗せATゲーム数抽選テーブルを参照して、抽選用乱数値によって上乗せATゲーム数をどの程度のゲーム数にするかを決定」する「第1副制御部400」は、本願補正発明の「抽選手段による抽選により所定の役が」「内部当選した場合に」、「第2遊技状態の継続を助長する特典数を決定可能な特典数決定手段」に相当する。

カ 本願補正発明のF)の特定事項について
(ア) 引用発明は、特定事項e-1)より、「AT遊技状態において」「上乗せ処理を実行」するものである。
(イ) 上記ウで検討したように、引用発明において、「特別役2」は払出し数が「0枚」の役であり、「スイカ」は払出し数が「5枚」の役である。そして、引用発明の特定事項f)に関して、「特別役2」が内部当選したときの上乗せATゲーム数の期待値が「50G」、「スイカ」が内部当選したときの上乗せATゲーム数の期待値が「34.5G」である。
(ウ) よって、引用発明の、「AT遊技状態において」、払出し数が「5枚」の役である「スイカ」が当選した場合には、上乗せATゲーム数の期待値が「34.5G」であり、払出し数が「0枚」の役である「特別役2」が当選した場合には、上乗せATゲーム数の期待値が「50G」であることは、本願補正発明の「前記第2遊技状態では、前記第2役が当選した遊技より、前記第1役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大き」いことに相当する。

キ 本願補正発明のG)の特定事項について
引用発明は、本願補正発明のG)の特定事項を有さない。

ク 本願補正発明のH)の特定事項について
引用発明の「スロットマシン100」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致点する。

<一致点>
「 複数種類の図柄が施された複数の回胴手段と、
前記複数の回胴手段をそれぞれ回転駆動させてゲームを始動するための始動手段と、
前記始動手段による始動条件の成立に基づき、予め定められた遊技価値が対応付けられた第1役と前記第1役より大きな遊技価値が対応付けられた第2役とを含む複数種類の役の内部当選の当否を抽選する抽選手段と、
第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態を含む複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段と、
前記抽選手段による抽選により所定の役が前記内部当選した場合に、前記第2遊技状態の継続を助長する特典数を決定可能な特典数決定手段とを備え、
前記第2遊技状態では、前記第2役が当選した遊技より、前記第1役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きい
遊技機。」

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明は、第1遊技状態より遊技者に有利な遊技状態として、「第2遊技状態」に加えて、前記第1役が当選した遊技より前記第2役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きい「第3遊技状態」を含むのに対して、引用発明は、そのような遊技状態が存在するか否かが不明である点。

(4)当審の判断

ア 相違点についての検討

上記相違点に係る構成と、上記(2)イ(イ)cに記載した引用文献2に記載された事項とを以下に対比する。

引用文献2に記載された事項は、ボーナス中にボーナスの上乗せゲーム数を抽選するにあたって、「タギング対決」の遊技状態(以下、「遊技状態ア」という。)と、「野球対決」の遊技状態(以下、「遊技状態イ」という。)を含む複数の遊技状態を設定し、「遊技状態ア」では、払出し数が2枚の「強チェリー」(以下、「A役」という。)の当選のほうが払出し数が8枚の「強スイカ」(以下、「B役」という。)の当選よりも「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」が大きく、「遊技状態イ」では、「B役」の当選のほうが「A役」の当選よりも「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」が大きいものである。
ここにおいて、引用文献2に記載された事項における「A役」及び「B役」は、上記相違点に係る構成の「第1役」及び「第2役」に相当する。
また、引用文献2に記載された事項における「ボーナス」は、通常の遊技状態に比べて遊技者に有利な遊技状態であることは明らかであるから、ボーナス中である「遊技状態ア」及び「遊技状態イ」は、ともに、遊技者に有利な遊技状態である。
そして、「1Gあたりの小役別平均上乗せゲーム数」は、上記相違点に係る構成の「特典数の期待値」に相当する。
してみると、引用文献2に記載された事項における「遊技状態ア」は、「前記第2役が当選した遊技より、前記第1役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きい」遊技状態であり、当業者に有利な遊技状態であるから、本願補正発明の「第2遊技状態」に相当し、また、「遊技状態イ」は、「前記第1役が当選した遊技より前記第2役が当選した遊技における前記特典数の期待値が大きい」遊技状態であり、当業者に有利な遊技状態であるから、本願補正発明の「第3遊技状態」に相当する。

したがって、引用発明において、当業者に有利な遊技状態中に、当該有利な遊技状態の継続を助長する特典数を決定するにあたって、より興趣性を高める目的で、引用文献2に記載された事項を適用し、「第2遊技状態」に加えて、第1役が当選した遊技より、第2役が当選した遊技における特典数の期待値が大きい「第3遊技状態」を設定し、本願補正発明の上記相違点に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果

本願補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1に記載された事項、及び、引用文献2に記載された事項から、当業者が予測し得る程度のものである。

(5)小括

よって、本願補正発明は、引用発明、及び、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正が限定的減縮を目的とするものであるとした場合であっても、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。

4 むすび

以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれの規定にも該当しない。
また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる限定的減縮を目的とするものであるとした場合であっても、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成29年9月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年5月17日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記「第2」[理由]「1」の「(補正前)」の記載を参照)(以下「本願発明」という。)であり、分説し、I)ないしO)の符号を付与すると、以下のとおりである。

「I) 複数種類の図柄が施された複数の回胴手段と、
J) 前記複数の回胴手段をそれぞれ回転駆動させてゲームを始動するための始動手段と、
K) 前記始動手段による始動条件の成立に基づき、複数種類の役の内部当選の当否を抽選する抽選手段と、
L) 第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態とを含む複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段と、
M) 前記抽選手段による抽選により所定の役が前記内部当選した場合に、前記第2遊技状態の継続を助長する特典数を決定可能な特典数決定手段とを備え、
N) 前記所定の役が当選した場合に決定可能な前記特典数は、該所定の役に対応付けられた遊技価値の数が大きいほど大きくなる場合がある
O) ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、以下の(1)及び(2)を含むものである。

(1) この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2) この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-100916号公報

3 引用文献とそれに記載された事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 本願発明と引用発明の対比

本願発明と引用発明とを対比する。

ア 本願発明のI)の特定事項について
本願発明のI)の特定事項は、本願補正発明のA)の特定事項に相当することから、引用発明の「外周面に複数種類の図柄が配置されたリール(左リール110、中リール111、右リール112)」は、本願補正発明の「複数種類の図柄が施された複数の回胴手段」に相当する。

イ 本願発明のJ)の特定事項について
本願発明のJ)の特定事項は、本願補正発明のB)の特定事項に相当することから、引用発明の「複数のリールの回転開始を指示するレバー型のスイッチであるスタートレバー135」は、本願補正発明の「複数の回胴手段をそれぞれ回転駆動させてゲームを始動するための始動手段」に相当する。

ウ 本願発明のK)の特定事項について
引用発明の、「スタートレバー135の操作に基づいて」、「特別役1(ビッグボーナス)」と、「特別役2(レギュラーボーナス)」と、小役1(チェリー)と、小役2(スイカ)と、小役3(ベル)と、再遊技役(再遊技1?再遊技7)」から、「乱数発生回路317で発生させた乱数を取得し、取得した乱数値と、入賞役抽選テーブルを用いて、役の内部抽選を行い」、「抽選結果を抽選により決定する」「主制御部300」は、本願発明の「前記始動手段による始動条件の成立に基づき、複数種類の役の内部当選の当否を抽選する抽選手段」に相当する。

エ 本願発明のL)の特定事項について
(ア) 引用発明の「AT遊技状態」は、「非AT遊技状態よりも遊技者にとって有利であ」るから、引用発明の「非AT遊技状態」は、本願発明の「第1遊技状態」に相当し、引用発明の「非AT遊技状態よりも遊技者にとって有利であ」る「AT遊技状態」は、本願発明の「前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態」に相当する。
(イ) 引用発明の「AT遊技状態」を「設定する」「第1副制御部400」は、「所定の開始条件が成立してから複数回の遊技にわたって操作手順報知を実行し続けるAT遊技(AT遊技状態)を設定するものであ」るから、本願発明の「複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段」に相当する。
(ウ) よって、引用発明の「非AT遊技状態よりも遊技者にとって有利であ」る「所定の開始条件が成立してから複数回の遊技にわたって操作手順報知を実行し続ける」「AT遊技状態」を「設定する」「第1副制御部400」は、本願発明の「第1遊技状態と前記第1遊技状態よりも遊技者に有利な第2遊技状態を含む複数の遊技状態のうち1つの遊技状態での遊技を複数ゲームに亘って実行可能な遊技制御手段」に相当する。

オ 本願発明のM)の特定事項について
本願発明のM)の特定事項は、本願補正発明のE)の特定事項に相当することから、引用発明の「上乗せ抽選を実行する契機となる入賞役である上乗せ役が内部当選したか否かを判定し」、「上乗せATゲーム数抽選テーブルを参照して、抽選用乱数値によって上乗せATゲーム数をどの程度のゲーム数にするかを決定」する「第1副制御部400」は、本願発明の「抽選手段による抽選により所定の役が」「内部当選した場合に」、「第2遊技状態の継続を助長する特典数を決定可能な特典数決定手段」に相当する。

カ 本願発明のN)の特定事項について
(ア) 引用発明の「特別役2」は払出し数が「0枚」の役であり、「スイカ」は払出し数が「5枚」の役である。
(イ) 引用発明の「特別役2」の上乗せATゲーム数の最大値は「100G」であり、「スイカ」の上乗せATゲーム数の最大値は「300G」である。
(ウ) よって、引用発明の払出し数が「0枚」の役である「特別役2」の上乗せATゲーム数の最大値が「100G」であり、払出し数が「5枚」の役である「スイカ」の上乗せATゲーム数の最大値が「300G」であることは、本願発明の「前記所定の役が当選した場合に決定可能な前記特典数は、該所定の役に対応付けられた遊技価値の数が大きいほど大きくなる場合がある」ことに相当する。

キ 本願発明のO)の特定事項について
引用発明の「スロットマシン100」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

ク してみると、本願発明の発明特定事項と、引用発明の発明特定事項は一致し、両者の間に相違点は見出せない。

5 当審の判断

したがって、本願発明の発明特定事項と、引用発明の発明特定事項は一致し、両者の間に相違点は見出せないことから、本願発明は、引用文献1に記載された発明といわざるを得ない。
また、本願発明と引用発明との間に相違点が存在したとしても、その相違点の存在により、本願発明が、引用発明に対して、当業者が予測し得る範囲を超えるほどの格別な作用効果を奏するものとは認められず、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-28 
結審通知日 2018-05-29 
審決日 2018-06-11 
出願番号 特願2015-96818(P2015-96818)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 573- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 571- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 樋口 宗彦
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 鈴木 均  

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