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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1342632
審判番号 不服2017-3052  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-01 
確定日 2018-08-15 
事件の表示 特願2012-113325「カバーテープ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日出願公開、特開2013-237481、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成24年5月17日の出願であって、平成28年3月23日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年5月23日付けで手続補正がされ、平成28年11月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年3月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲の補正がされ、平成29年5月30日に前置報告がされたものである。

第2.原査定の概要
原査定(平成28年11月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-2に係る発明は、以下の引用文献1-2及び周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平5-51053号公報
2.特開2000-318080号公報
3.特開平3-256741号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2011-6510号公報(周知技術を示す文献)

第3.本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、平成29年3月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
基材1上に粘着剤層を形成し、該粘着剤層の上に、基材1より幅の狭い基材2、及び帯電防止層を積層したカバーテープにおいて、該帯電防止層から発生するイオンの移動を抑制するトップコート層を該帯電防止層上に更に積層し、そして、該トップコート層は、厚さが0.01乃至0.3μmであり且つ形成するためのバインダー樹脂が3次元の網目構造を形成し得る架橋タイプのメラミン樹脂であること及び前記帯電防止層は、バインダー樹脂としてメラミン樹脂を使用することを特徴とする、カバーテープ。
【請求項2】
イオンクロマト法に従って測定される、前記カバーテープより純水で121℃、24時間の条件で抽出されたイオンの合計量が1乃至20ng/cm^(2)である、請求項1に記載のカバーテープ。」

第4.引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平5-51053号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】 電子部品を収納する多数個のキャビティをもつキャリアテープに貼付されるカバーテープにおいて、105℃-30分間の熱処理における収縮率が0.5%以下、可視光線透過率が50%以上である透明ベースフィルムの一面に常温粘着性樹脂層が形成され、該粘着性樹脂層の表面に、該キャビティの幅より広くかつ該透明ベースフィルムの幅よりも狭く、可視光線透過率が50%以上の透明マスクフィルムを貼付したことを特徴とする耐熱カバーテープ。」
「【0012】以下本発明を図1を用いて詳細に説明する。本発明に使用される透明ベースフィルム11は、上記のベーキング処理にて熱収縮すると、耐熱カバーテープ12を貼付したキャリアテープ2が耐熱カバーテープ12側にカールし、さらに収縮がいちじるしいと粘着性樹脂層13が剥離してしまい、キャビティ3内部の電子部品4が粘着性樹脂層13に付着したり、キャビティ3より飛び出してしまうという問題が生じる。したがってこの透明ベースフィルム11としては、105℃-30分間の熱処理における収縮率が0.5%以下、好ましくは0.3%以下の耐熱性を有し、さらにキャビティ3内部の収納部品4のマーキングや収納方向等を耐熱カバーテープ12を通して確認するため、ベースフィルム11は透明である必要があり、よって可視光線透過率が50%以上であることを要する。」
「【0019】本発明は、このようにして得られた粘着性樹脂層を有する透明ベースフィルム11の粘着面に、キャリアテープ2のキャビティ3の幅より広くかつ透明ベースフィルム11の幅より狭い幅を有し、可視光線透過率が50%以上の透明プラスチックよりなるマスクフィルム14を図1に示すように貼付する。この張り込み用のマスクフィルム14は、上記した透明透明ベースフィルム11と同様の特性を有すればよく、材質は上記に例示した材料から選択すればよい。また、その厚みが透明ベースフィルム11の50%以下である場合には、105℃-30分間の熱処理における熱収縮が0.5%以上であっても、透明ベースフィルム11の厚みに対し1.0%以下の熱収縮となるから使用できる。また105℃以上のベーキング条件において粘着性をおびることのないマスクフィルムであれば使用できることはもちろんである。」
「【0023】よって、本発明の耐熱カバーテープも帯電防止処理を施すことが好ましく、必要とされる表面抵抗としては109 Ω以下、好ましくは107 Ω以下とすればよい。この帯電防止膜を設ける位置としては、マスクフィルムのキャビティ側の面、もしくは透明ベースフィルムに貼付した粘着性樹脂層の反対面の少なくとも一方に実施すればよい。図1には両者に帯耐防止膜15を設けた例を示す。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子部品を収納する多数個のキャビティ3をもつキャリアテープ2に貼付される耐熱カバーテープ12において、透明ベースフィルム11の一面に粘着性樹脂層13が形成され、該粘着性樹脂層13の表面に、該キャビティ3の幅より広くかつ該透明ベースフィルム11の幅よりも狭い透明マスクフィルム14及び帯電防止膜15を設けた耐熱カバーテープ12。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の【特許請求の範囲】の【請求項1】、段落【0002】、【0005】、【0012】-【0015】、図1、図2からみて、当該引用文献2には、キャリヤーテープ等に使用する導電性シートの帯電防止層の表面に無機イオン交換体を含む、厚さ1?3μm程度のイオンバリヤー層を形成するという技術的事項が記載されていると認められる。
また、段落【0017】-【0024】、表2からみて、キャリヤーテープ等に使用する導電性シートの帯電防止層の表面に、無機イオン交換体を、塩化ビニル-アクリル共重合ポリマー15部をトルエン35部及びメチルエチルケトン50部に溶解させた溶液Dに分散させて、導電性シートの導電層の表面に塗布及び乾燥することによりイオンバリヤー層を形成すること、及び比較例として、無機イオン交換体を含まない上記溶液Dはイオンバリヤー層として望ましくないこと、したがって、専らイオンバリヤー層を形成するにあたり無機イオン交換体を必須のものとすることが記載されていると認められる。

3.引用文献3について
また、原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献3の第1頁左下欄第16?20行には「ポリエステルフィルムとシリコーン樹脂の積層体は、シリコーン樹脂の特性に応じて表面硬化フィルム、離型フィルム、易滑化フィルムなどとして広く使用されており、通常のプラスチックフィルムと同様、帯電防止性が重要な課題である。」と、また、第8頁右上欄第18行から左下欄第12行には「実施例1?4で得られた複合フィルムは、曇価が8%以下であり、実用上問題ない透明性を示しており、ほこりの付着し難い離型フィルムとして使用でき、また、いずれもテープカセット用のライナーシートとしても問題なく使用できた。すなわち、市販のテープカセットのライナーシートを取り除き、かわりに実施例1?4の複合フィルムをライナーシートに加工しポリマー層(B)の表面が磁気テープの断面に接するようにして組込んだ。いずれも磁気テープとの滑り性は良好で、安定した走行性を示した。また、はこりが付着し難いため、フィルムをライナーシートに加工する工程での汚染が少なく、かつテープカセット内でもほこりを吸い寄せず、長時間にわたって安定な走行性を示した。」と記載され、第10頁の表2にはポリマー層(B)を厚さ0.06μmとすることが記載されている。

4.引用文献4について
更に、同じく周知技術を示す文献として引用された引用文献4の段落【0002】には「偏光板等に使用される保護フィルム(プロテクトフィルム)としては、例えば、基材としてのPETフィルム等の上に帯電防止層およびトップコートを有するものが知られている。」と、【0071】には「トップコートの厚さは、帯電防止層の傷付きの防止や表面抵抗の観点から、0.01?2μmであるのが好ましく、0.05?0.5μmであるのがより好ましい。」と記載されている。

5.その他の文献について
前置報告において周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開昭63-294383号公報)の第2頁右下欄第1行から第3頁左上欄第3行には、「導電性樹脂の樹脂成分は、汎用の合成樹脂、例えばポリエチレン樹脂…、メラミン樹脂、…等の熱硬化性樹脂を単独または複数種混合したものである。収容容器の導電性樹脂以外の層に用いられる絶縁性樹脂は、導電性樹脂中の樹脂成分と同様に、慣用の合成樹脂、例えばポリエチレン樹脂…、メラミン樹脂、…等の熱硬化性樹脂を単独または複数種混合したものである。」と記載され、第2図には絶縁性樹脂層4を導電性樹脂層5の間に配した収容容器1が、第4図には絶縁性樹脂層4を導電性樹脂層5の外側に配した収容容器1が記載されている。更に、引用文献6(特開2004-175890号公報)の段落【0071】には「導電性コート剤は、後記する方法によって基材シート、または基材シート上のアンカーコート層の上にコートされる」と、【0079】-【0081】には、「本発明の導電性ポリエステルシートにおいては、アンカーコート剤としては、樹脂、硬化剤を主剤とし、カーボンブラックを含有するコート剤が最適である。本発明の硬化剤としては…、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミン…などが挙げられ…、それぞれ単独、または併用して使用することができる。」と記載されている。
また、前置報告において周知技術を示す文献として引用された引用文献7(特開2009-23663号公報)の段落【0018】には「帯電防止層は、帯電防止材料とバインダーを含む帯電防止塗料を塗布し、」と、【0020】には「 バインダーとしては、例えば…、メラミン樹脂…等が挙げられる。」と記載されている。更に、引用文献8(特開2003-72836号公報)の段落【0014】には「このような導電層を透明高分子フィルムの表面に設ける方法としては、例えば、バインダーとなる樹脂を適宜溶剤などにより希釈して塗料化したものに導電剤を混合分散して塗工液を調整し、当該塗工液を従来公知の塗布方法により透明高分子フィルム表面に塗布する方法が採用できる。」と、【0015】には「ここでバインダーとなる樹脂としては、…メラミン系樹脂、…等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などから適宜選択することができる。」と記載されている。

第5.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「透明ベースフィルム11」は本願発明1における「基材1」に、同様に、「粘着性樹脂層13」は「粘着剤層」に、「透明マスクフィルム14」は「基材2」に、「帯電防止膜15」は「帯電防止層」に、相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「基材1上に粘着剤層を形成し、該粘着剤層の上に、基材1より幅の狭い基材2、及び帯電防止層を積層したカバーテープ」である点。
(相違点)
(相違点1)
本願発明1は、帯電防止層から発生するイオンの移動を抑制するトップコート層を該帯電防止層上に更に積層し、そして、該トップコート層は、厚さが0.01乃至0.3μmであり且つ形成するためのバインダー樹脂が3次元の網目構造を形成し得る架橋タイプのメラミン樹脂であるのに対して、引用発明は、帯電防止層から発生するイオンの移動を抑制するトップコート層の構成を備えていない点。
(相違点2)
本願発明1は、帯電防止層は、バインダー樹脂としてメラミン樹脂を使用するのに対し、引用発明は、帯電防止層のバインダー樹脂としてメラミン樹脂を使用することを規定していない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、キャリヤーテープ等に使用する導電性シートの帯電防止層の表面に無機イオン交換体を含む、厚さ1?3μm程度のイオンバリヤー層を形成するという技術的事項が記載されており、また、専らイオンバリヤー層を形成するにあたり無機イオン交換体は必須のものであるとしている。
したがって、引用文献2には「帯電防止層から発生するイオンの移動を抑制するトップコート層」が「厚さが0.01乃至0.3μmであり且つ形成するためのバインダー樹脂が3次元の網目構造を形成し得る架橋タイプのメラミン樹脂である」ことは記載されていない。
また、原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献3または引用文献4には、帯電防止層に積層する層を0.01乃至0.3μmの厚さとすることが、それぞれ記載されているにすぎず、これらに記載されたフィルムは主に「テープカセット用のライナーシート」、「偏光板等に使用される保護フィルム」としての使用が示されおり、イオンバリア層としてのトップコート層を設ける動機付けは認められない。
一方、前置報告において周知技術を示す文献として引用された引用文献5-6には「帯電防止層に積層する層の材料としてメラミン樹脂を用いること」が、引用文献7-8には「帯電防止層のバインダー樹脂としてメラミン樹脂を使用すること」が記載されているにすぎず、引用文献5-8にも「帯電防止層から発生するイオンの移動を抑制するトップコート層」が「厚さが0.01乃至0.3μmであり且つ形成するためのバインダー樹脂が3次元の網目構造を形成し得る架橋タイプのメラミン樹脂である」ことは記載されていない。
したがって、引用文献3-8の何れの引用文献にも「帯電防止層から発生するイオンの移動を抑制するトップコート層」について「厚さが0.01乃至0.3μmであり且つ形成するためのバインダー樹脂が3次元の網目構造を形成し得る架橋タイプのメラミン樹脂である」ことの記載も示唆も無い。
上記のように、引用文献2-8には、何れにも相違点1に係る本願発明の構成が記載も示唆もされていないので、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1-8に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1のトップコート層として、「厚さが0.01乃至0.3μmであり且つ形成するためのバインダー樹脂が3次元の網目構造を形成し得る架橋タイプのメラミン樹脂」を用いた同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1-8に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6.原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-2はトップコート層が「厚さが0.01乃至0.3μmであり且つ形成するためのバインダー樹脂が3次元の網目構造を形成し得る架橋タイプのメラミン樹脂」を用いるという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-30 
出願番号 特願2012-113325(P2012-113325)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B65D)
P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 谿花 正由輝浅野 弘一郎  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 関谷 一夫
熊倉 強
発明の名称 カバーテープ  
代理人 萼 経夫  
代理人 加藤 勉  
代理人 宮崎 嘉夫  

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