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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1342732
審判番号 不服2017-13921  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-20 
確定日 2018-08-21 
事件の表示 特願2013-158037「波長板及び分割プリズム部材」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月12日出願公開,特開2015-28559,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2013-158037号(以下「本件出願」という。)は,平成25年7月30日を出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成29年 3月29日付け:拒絶理由通知書
平成29年 6月 1日付け:意見書
平成29年 6月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 9月20日付け:審判請求書

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本件出願の請求項1及び請求項3?請求項9に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2009-300108号公報
引用文献2:特開2000-241767号公報
引用文献3:特開2000-338328号公報
引用文献4:特開2002-182158号公報
引用文献5:特開2002-189301号公報
引用文献6:特開平5-347450号公報
(当合議体注:引用文献1は,いわゆる主引用例であり,引用文献2?引用文献5は,周知技術を示す文献,引用文献6は,請求項6等の構成に対応する,いわゆる副引用例である。)

3 本願発明
本件出願の請求項1?請求項9に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明9」という。)は,特許請求の範囲の請求項1?請求項9に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。
「【請求項1】
テラヘルツ波を入射させる入射面と,前記入射面から入射した前記テラヘルツ波を出射させる出射面とを有するプリズム部材を備え,
前記プリズム部材は,前記テラヘルツ波の一部を入射させる一部入射面と,前記一部入射面から入射した前記テラヘルツ波を全反射させる複数の全反射面と,前記全反射面で全反射した前記テラヘルツ波を出射させる一部出射面とを有する複数の導波領域で構成され,
前記複数の導波領域を積層配置することにより,前記各一部入射面が連続して前記プリズム部材の入射面を構成し,前記各一部出射面が連続して前記プリズム部材の出射面を構成することを特徴とする波長板。

【請求項2】
隣接する前記各導波領域における前記全反射面間には,前記テラヘルツ波のエバネッセント波の浸み出し深さよりも大きな間隔の隙間部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の波長板。

【請求項3】
前記各導波領域において,前記一部入射面に入射する前記テラヘルツ波の入射軸と,前記一部出射面から出射する前記テラヘルツ波の出射軸とが略一致するように,前記テラヘルツ波の光軸に対する前記各全反射面の傾斜角が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長板。

【請求項4】
前記各導波領域において,前記テラヘルツ波の光軸に対する前記各全反射面の傾斜角は,いずれも等しくなっていることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の波長板。

【請求項5】
前記各導波領域において,前記複数の全反射面は,第1の全反射面,第2の全反射面,第3の全反射面及び第4の全反射面の4面で構成されていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の波長板。

【請求項6】
前記プリズム部材には,前記波長板を保持部材に保持させる保持面が前記テラヘルツ波の入射軸及び出射軸と略平行に設けられていることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の波長板。

【請求項7】
前記導波領域を有する分割プリズム部材を複数備え,
前記プリズム部材は,前記複数の分割プリズム部材を積層配置してなることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の波長板。

【請求項8】
前記各分割プリズム部材には,積層方向に隣接する前記分割プリズム部材に当接する当接面が前記テラヘルツ波の入射軸及び出射軸と略平行に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の波長板。

【請求項9】
テラヘルツ波を入射させる入射面と,前記入射面から入射した前記テラヘルツ波を出射させる出射面とを有するプリズム部材を構成する分割プリズム部材であって,
前記テラヘルツ波の一部を入射させる一部入射面と,前記一部入射面から入射した前記テラヘルツ波を全反射させる複数の全反射面と,前記全反射面で全反射した前記テラヘルツ波を出射させる一部出射面とを有する導波領域を備えることを特徴とする分割プリズム部材。」

第2 当合議体の判断
1 引用文献1の記載及び引用発明等
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され,本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1には,以下の記載がある。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,おおよそ0.1×10^(12)[Hz]?100×10^(12)[Hz]帯域の電磁波(テラヘルツ波)を用いる技術に関するものである。
【背景技術】
…(省略)…
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
…(省略)…
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので,試料の配向特性にかかわらず測定精度を向上し得るテラヘルツ分光装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明は,テラヘルツ分光装置であって,直線偏光のテラヘルツ波を透過又は反射する偏光ビームスプリッタと,入射されるテラヘルツ波に対して90度の位相差を与える1/4波長と,偏光ビームスプリッタから1/4波長板を経て入射される円偏光のテラヘルツ波を照射面に導く光学部材とをもつ構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,照射面に対して,繊維状の構造をもつ等のように配向特性をもつ試料が配された場合であっても,円偏光のテラヘルツ波が照射面に導かれるので,該試料に対するテラヘルツ波の反射率を,配向特性がない試料と同等のものとして得ることができる。つまり,試料の配向状態にかかわらず反射率の変動を低減することで測定再現性を向上することができ,かくして測定精度を向上し得るテラヘルツ分光装置を実現できる。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
…(省略)…
【0021】
(2)テラヘルツ波伝播光学系の構成
次に,この実施の形態におけるテラヘルツ波伝播光学系TPOSの構成について図2を用いて説明する。テラヘルツ波伝播光学系TPOSは,3つの放物面鏡21,22,23と,偏光ビームスプリッタ31と,フレネルロムプリズム32との各光学部材によって構成される。」
(当合議体注:図2は以下の図である。)


ウ 「【0022】
放物面鏡21は,テラヘルツ波発生部13から放射状に発生するテラヘルツ波を平行光線の束として偏光ビームスプリッタ31に導く。
【0023】
偏光ビームスプリッタ31は,金属性のワイヤーが所定間隔ごとに同一方向へ並べられた板状の偏光子であり,放物面鏡21から入射されるテラヘルツ波の光軸に対して45度傾けられる。
…(省略)…
【0025】
このフレネルロムプリズム32は,偏光ビームスプリッタ31におけるワイヤーの並び方向に対して全反射面が45度をなす状態に傾けられている(図2では紙面に対して上側方向に45度傾けられている)。これによりフレネルロムプリズム32は,1/4波長板として機能することとなり,偏光ビームスプリッタ31から入射される直線偏光のテラヘルツ波を内部で4回全反射させて90度の位相を与える。したがって,このフレネルロムプリズム32から出射されるテラヘルツ波は,円偏光(円偏光に近い楕円偏光も含む)に変換されていることとなる。
…(省略)…
【0042】
また,このテラヘルツ分光装置10におけるフレネルロムプリズム32は,4回の全反射を用いて位相を変換させるものであり,ポリエチレン,テフロン(登録商標),ポリメチルペンテン,シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーなどのプラスチック(有機ポリマー)によって成形される。これらの屈折率はテラヘルツ波帯域において屈折率が小さく波長依存性が少ない。
【0043】
したがって,このテラヘルツ分光装置10は,フレネルロムプリズム32でのフルオネル反射を極力抑えて,広範囲となるテラヘルツ帯であっても反射損失を低減した状態で,該テラヘルツ帯を検出することができ,その分だけ信号対雑音比を大きくすることが可能なので測定精度を向上できる。
【0044】
これに加えて,1/4波長板としてフレネルロムプリズム32を用いることで,入射光と出射光との光軸を同軸とすることができ,視認できないテラヘルツ波を用いる場合であっても,1/4波長板としての方位の位置決めを容易に行うことが可能となる。また,このテラヘルツ分光装置10では,視認可能なワイヤーをもつ偏光ビームスプリッタ31を偏光ビームスプリッタとしているので,該偏光ビームスプリッタ31との関係においても,1/4波長板としての方位の位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0045】
以上の構成によれば,波長依存性のないフレネルロムプリズム32を1/4波長板として作用させて円偏光のテラヘルツ波を照射面に対して垂直方向から導くようにしたことにより,試料SPLの測定精度を向上し得るテラヘルツ分光装置10を実現できる。
【0046】
(4)他の実施の形態
上述の実施の形態においては,1/4波長板としてフレネルロムプリズム32を用いる場合について述べたが,本発明はこれに限らず,これ以外の光学部材を用いるようにしてもよい。
【0047】
例えば,内部で2回の全反射を経て直線偏光を円偏光又は円偏光を直線偏光に変換するフレネルロムプリズムを用いることができる。なお,このフレネルロムプリズムを用いる場合,偏光子31におけるワイヤーの並び方向に対して全反射面が45度をなす状態に傾ける点については同じであるが,該フレネルロムプリズムの全反射面に対する入射角については,42度又は74.8度に変更する必要がある。
【0048】
また例えば,厚さの異なる水晶板6枚を各々の結晶方位も調整して張り合わせたアクロマティック1/4波長板を用いることができる(J.Masson and G.Gallot: Opt. Lett., Vol.31, NO.2, 265(2006))。ただし,フレネルロムプリズム32は,このアクロマティック1/4波長板に比して,90度の位相シフトの調整が簡易である。
【0049】
また例えば,高抵抗シリコンプリズムと呼ばれるものを用いることができる(「テラヘルツ技術総覧」,廣本宣久 編著,エヌジーティー 2007年11月29日発行,第7章 テラヘルツ計測システム,7.4.2偏光センシング,p462,図4)。ただし,シリコンは,プラスチックに比して屈折率が高いため反射損失が大きくなる点で,プラスチック製のフレネルロムプリズム32のほうが測定精度の向上には適す。
【0050】
ちなみに,反射率は,屈折率をrとすると,((r-1)/(r+1))^(2)として簡易的に表すことができ,またシリコンの屈折率は「3.4」であるから,シリコンの反射率はおよそ30[%]となる。したがってこのプリズムを採用した場合,往路と復路との反射損失はおよそ60[%]である。一方,フレネルロムプリズム32の屈折率を「2」とすると,シリコンの場合に比べて,反射損失を11[%]以下に抑え,往路と復路との合計で20[%]以下に抑えることが可能となる。
【0051】
なお,フレネルロムプリズム32の材質としてプラスチックを適用するようにしたが,テラヘルツ帯に対して透明となるものであれば,種々の誘電体を用いることは可能である。ちなみに,シリコンが屈折率が高いことを述べたが,該シリコンを適用できないことを意味するものではない。
【0052】
また,フレネルロムプリズム32内での全反射面に対して鏡面研磨を施すようにすれば,より屈折率を小さくして反射損失を抑えることができ,フレネルロムプリズム32の入射面及び出射面を,テラヘルツ波の波長よりも小さい凹凸をもつ砂面(モスアイ状)としても,より屈折率を小さくして反射損失を抑えることができる。
【0053】
また上述の実施の形態においては,直線偏光(P偏光)のテラヘルツ波を透過させ,フレネルロムプリズム32を往復して導かれる直線偏光(S偏光)のテラヘルツ波を反射させるテラヘルツ波伝播光学系TPOSを構築するようにした場合について述べたが,本発明はこれに限らず,直線偏光(S偏光)のテラヘルツ波を反射させ,フレネルロムプリズム32を往復して導かれる直線偏光(P偏光)のテラヘルツ波を透過させるテラヘルツ波伝播光学系TPOSを構築するようにしてもよい。
…(省略)…
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は,工業,医療,バイオ,農業,セキュリティ又は情報通信・エレクトロニクスなどの産業上において利用可能である。」

(2) 引用発明
引用文献1の特に【0008】及び【0025】の記載を考慮すると,引用文献1には,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 直線偏光のテラヘルツ波を透過又は反射する偏光ビームスプリッタと,入射されるテラヘルツ波に対して90度の位相差を与える1/4波長と,偏光ビームスプリッタから1/4波長板を経て入射される円偏光のテラヘルツ波を照射面に導く光学部材とをもつテラヘルツ分光装置において1/4波長板として機能するフレネルロムプリズム32であって,
偏光ビームスプリッタ31におけるワイヤーの並び方向に対して全反射面が45度をなす状態に傾けられ,
偏光ビームスプリッタ31から入射される直線偏光のテラヘルツ波を内部で4回全反射させて90度の位相を与えることによって,
1/4波長板として機能するフレネルロムプリズム32。」

(3) 引用文献2?引用文献5の記載
原査定の拒絶の理由で引用され,本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2?引用文献5の開示内容は,以下のとおりである。
ア 引用文献2
引用文献2には,「偏光分離素子は複数の偏光分離面が山型形状に形成することにより,各素子を薄型とすることができ装置全体の小型化を図っている。」(【0048】)という記載とともに,次の図5が示されている。


イ 引用文献3
引用文献3には,「大面積を照射する偏光光照射装置においても,複数のプリズムを組合せたものを用いることにより,偏光素子を平面状に薄いものとして構成することができ,偏光素子が大型化することを防ぐことができる。」(【0023】)という記載とともに,次の図3が示されている。


ウ 引用文献4
引用文献4には,「本実施例においては,複数の偏光ビームスプリッタ5aを組み合わせて構成した偏光素子5を用いたので,個々の偏光ビームスプリッタのプリズムの大きさを小さくでき,大面積照射用の装置に対応できるとともに,製作費用を安くすることができる。また,偏光素子の光軸方向の長さを短くすることができるので,偏光光照射装置の小型化を図ることができる。」(【0011】)という記載とともに,次の図2が示されている。


エ 引用文献5
引用文献5には,引用文献4に記載されたものと同様の偏光素子が記載されている。また,「くの字型に組み合わせたガラス板を複数枚使用したパイル偏光板を用いることにより,光軸方向の長さを短くすることができ,インテグレータレンズの光入射側のレンズ群と光出射側のレンズ群との光軸方向の距離を短くしなければならない場合でも,レンズ群間に偏光素子を配置することができる。」(【0005】)という記載とともに,次の図10が示されている。


2 本願発明1との対比及び判断
(1) 対比
引用発明の「フレネルロムプリズム32」は,「1/4波長板として機能する」。また,フレネルロムプリズムが,光を入射させる入射面と,入射面から入射した光を出射させる出射面とを有するプリズム部材であることは,技術常識である。
そうしてみると,引用発明の「フレネルロムプリズム32」と本願発明1の「波長板」は,「テラヘルツ波を入射させる入射面と,前記入射面から入射した前記テラヘルツ波を出射させる出射面とを有するプリズム部材を備え」という構成において共通する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は,次の構成で一致する。
「テラヘルツ波を入射させる入射面と,前記入射面から入射した前記テラヘルツ波を出射させる出射面とを有するプリズム部材を備えた,波長板。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は,次の点で相違する。
(相違点1)
「プリズム部材」について,本願発明1は,「前記テラヘルツ波の一部を入射させる一部入射面と,前記一部入射面から入射した前記テラヘルツ波を全反射させる複数の全反射面と,前記全反射面で全反射した前記テラヘルツ波を出射させる一部出射面とを有する複数の導波領域で構成され」,「前記複数の導波領域を積層配置することにより,前記各一部入射面が連続して前記プリズム部材の入射面を構成し,前記各一部出射面が連続して前記プリズム部材の出射面を構成する」ものであるのに対して,引用発明は,この構成を具備するとはいえない点。

(3) 判断
相違点1に係る本願発明1の構成に関して,本件出願の明細書の【0009】には,「テラヘルツ波の進行方向における寸法を抑えることが可能となる。」と記載されている(当合議体注:審判請求人も,審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(3)本願発明と引用発明との対比」において,上記の【0009】の記載を指摘している。)。
これに対し,引用文献1の【0042】?【0053】には,引用発明の「フレネルロムプリズム32」の材質や形状が他のものであってもよいこと等の記載はあるが,テラヘルツ波の進行方向における寸法(以下「厚さ」という。)を抑えることの動機付けとなるような記載は見当たらない。また,引用発明の「フレネルロムプリズム32」は,「テラヘルツ波を内部で4回全反射させて90度の位相を与える」ものであり,厚さを抑えることよりも,入射光と出射光の光軸を同軸とすることが優先されたものと理解できる。

ところで,引用発明の「フレネルロムプリズム32」は,「テラヘルツ分光装置において1/4波長板として機能する」。また,引用文献1の【0058】の記載からみて,引用発明が前提とする「テラヘルツ分光装置」は,産業用の分析機器といえる。したがって,「テラヘルツ分光装置」全体としては,分析機器としての性能を維持しつつコンパクトなものがよいことは明らかである。ただし,引用発明の「フレネルロムプリズム32」が,「テラヘルツ分光装置」全体との大きさとの関係において,厚さを抑える必要がある部材であるかは,引用文献1の記載を参照しても判らない。また,引用発明の「フレネルロムプリズム32」は1/4波長板であるから,1/2波長板のように回転ホルダでの取り扱い性は必須ではない。加えて,引用発明の「フレネルロムプリズム32」の厚さは,予めテラヘルツ波のビーム径を小さくすることにより抑えることができるが,試料の分析を前提とする引用発明において,これができないとする理由も,引用文献1の記載からは窺えない。

引用文献2?引用文献5には,偏光分離素子の厚さ(光の進行方向における寸法)を抑えるために,複数の偏光分離素子を,光の進行方向に垂直な面内で組み合わせる技術が開示されている。しかしながら,これら技術は,フレネルロムプリズムに関するものではなく,また,1/4波長板に関するものでもない。したがって,仮に,当業者が引用発明の「フレネルロムプリズム32」の厚さを抑える必要を感じたとしても,これら偏光分離素子に関する技術を適用すれば良いことに思い到るかは不明である。
また,引用発明の「フレネルロムプリズム32」は,複数の全反射面を具備するものである。ところが,仮に,引用発明の「フレネルロムプリズム32」を引用文献2?引用文献5に記載されているように組み合わせた場合には,その全反射面の機能が損なわれることになる。したがって,仮に,当業者が引用発明の「フレネルロムプリズム32」の厚さを抑える必要を感じ,その際,引用文献2?引用文献5に記載の偏光分離素子に関する技術に思い到ったとしても,そこには,全反射面を確保しつつ,引用発明の「フレネルロムプリズム32」を組み合わせるという,新たな課題が待ち受けることとなる。しかしながら,引用文献1?引用文献5には,このような新たな課題についての記載や示唆があるとはいえず,また,課題を解決するための手段についても,記載や示唆があるとはいえない。そうしてみると,当業者が,引用発明と引用文献2?引用文献5に記載された技術を組み合わせることにより,相違点1に係る本願発明1の構成に到ることができたということはできない。
この点は,引用文献6の記載を考慮しても同じである。

以上のとおりであるから,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2?引用文献6に記載された技術に基づいて,容易に発明できたものであるということはできない。

3 本願発明2?本願発明9について
(1) 本願発明2?本願発明8
本願発明2?本願発明8は,相違点1に係る本願発明の構成を具備するものである。
したがって,本願発明1と同じ理由により,本願発明2?本願発明8は,当業者であっても引用発明及び引用文献2?引用文献6に記載された技術に基づいて,容易に発明できたものであるということはできない。

(2) 本願発明9
ア 相違点
本願発明9と引用発明を対比すると,両者は次の点で相違する。
(相違点2)
「プリズム部材」について,本願発明9は,「前記テラヘルツ波の一部を入射させる一部入射面と,前記一部入射面から入射した前記テラヘルツ波を全反射させる複数の全反射面と,前記全反射面で全反射した前記テラヘルツ波を出射させる一部出射面とを有する導波領域を備える」「分割プリズム部材」であるのに対して,引用発明は,この構成を具備するとはいえない点。

イ 判断
引用文献1に記載された使用態様からみて,引用発明の「フレネルロムプリズム32」は,「プリズム部材」の一部分をなすものではなく,「プリズム部材」全体である。したがって,引用発明の「フレネルロムプリズム32」は,「前記テラヘルツ波の一部を入射させる一部入射面」や「前記全反射面で全反射した前記テラヘルツ波を出射させる一部出射面」を具備するものと理解することはできないし,「分割プリズム部材」と理解することもできない。
また,当業者が,引用発明の「フレネルロムプリズム32」と引用文献2?引用文献6に記載された技術を組み合わせることが,容易に発明できたものであるということができないことについては,前記「2」(3)で述べたとおりである。

したがって,本願発明9は,当業者であっても引用発明及び引用文献2?引用文献6に記載された技術に基づいて,容易に発明できたものであるということはできない。

第3 むすび
以上のとおり,本件出願の請求項1?請求項9に係る発明は,当業者が引用発明及び引用文献2?引用文献6に記載された技術に基づいて,容易に発明をすることができたものであるということができない。したがって,原査定の拒絶の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-07 
出願番号 特願2013-158037(P2013-158037)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 関根 洋之
樋口 信宏
発明の名称 波長板及び分割プリズム部材  
代理人 柴山 健一  
代理人 黒木 義樹  
代理人 中山 浩光  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
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