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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
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管理番号 | 1342772 |
審判番号 | 不服2017-5873 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-24 |
確定日 | 2018-08-02 |
事件の表示 | 特願2013-231587「印刷装置及び印刷装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年5月11日出願公開、特開2015-89673〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成25年11月7日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年11月 4日 手続補正 平成28年11月30日 手続補正 平成28年12月 7日 拒絶理由通知 平成29年 1月 6日 意見書・手続補正 平成29年 1月17日 拒絶査定 平成29年 4月24日 審判請求・手続補正 平成30年 2月 8日 拒絶理由通知 平成30年 4月13日 意見書・手続補正 第2 当審の判断 1 本願発明 本願の請求項22に係る発明(以下「本願発明22」という。)は,平成30年4月13日付けで補正された特許請求の範囲における,請求項22に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。 「【請求項22】 感光体と,表示部と,人感センサと,を備える印刷装置の制御方法であって, 前記印刷装置を前記表示部に画面が表示されていない第1電力状態に移行するステップと, 前記人感センサの検知結果に基づいて前記感光体を駆動することなく前記印刷装置を前記第1電力状態から前記表示部に画面が表示される第2電力状態に移行するステップと, 前記表示部に表示された前記画面の操作に基づいて前記感光体が駆動するよう制御するステップと,を有することを特徴とする印刷装置の制御方法。」 2 引用文献に記載された事項 (1)引用文献 平成30年2月8日付け拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-247799号公報(以下「引用文献」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。他の下線についても同じ。) ア「【0026】 図2には,本実施の形態に係る画像処理装置10が示されている。画像処理装置10は,記録用紙に画像を形成する画像形成部240と,原稿画像を読み取る画像読取部238と,ファクシミリ通信制御回路236を備えている。画像処理装置10は,メインコントローラ200を備えており,画像形成部240,画像読取部238,ファクシミリ通信制御回路236を制御して,画像読取部238で読み取った原稿画像の画像データを一次的に記憶したり,読み取った画像データを画像形成部240又はファクシミリ通信制御回路236へ送出したりする。」 イ「【0029】 画像形成部240は,感光体を備え,感光体の周囲には,感光体を一様に帯電する帯電装置と,画像データに基づいて光ビームを走査する走査露光部と,前記走査露光部によって走査露光されることで形成された静電潜像を現像する画像現像部と,現像化された感光体上の画像を記録用紙へ転写する転写部と,転写後の感光体の表面をクリーニングするクリーニング部と,が設けられている。また,記録用紙の搬送経路上には,転写後の記録用紙上の画像を定着する定着部を備えている。」 ウ「【0032】 ネットワーク回線網20は、メインコントローラ200に接続されている。メインコントローラ200には、それぞれ、データバスやコントロールバス等のバス33A?33Dを介して、ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル216が接続されている。すなわち、このメインコントローラ200が主体となって、画像処理装置10の各処理部が制御されるようになっている。」 エ「【0034】 また、メインコントローラ200には、2個の第1の人感センサ28、第2の人感センサ30が接続されており、画像処理装置10の周囲の人の有無を監視している。この第1の人感センサ28、第2の人感センサ30については後述する。」 オ「【0072】 ウォームアップモードは画像処理装置10を迅速に処理可能状態にもっていくため,各モードの内最大の電力消費量となるが,例えば,定着部におけるヒータとしてIHヒータを利用することによって,ハロゲンランプを用いたヒータよりもウォームアップモード時間は,比較的短い時間とされている。 【0073】 ウォームアップモードによる暖機運転が終了すると,画像処理装置10はスタンバイモードに遷移するようになっている。」 カ「【0099】 節電中監視制御部24では,前記第1の人感センサ28及び第2の人感センサ30の検出信号に基づく,上記3種類の形態の確定に基づいて,まず,メインコントローラ200におけるUIタッチパネル216や節電解除ボタン26を含むコピー実行等を指示するハードキー等の入力系への電力供給を実行する。この状態は,依然としてスリープモードと定義してもよいし,節電中監視制御部24のみの電力供給よりも電力供給量が増加するので,アウェイクモード「awk」(目覚めモード)として定義してもよい(図5の遷移図における,スリープモード範囲の括弧[ ]内参照)。 【0100】 その後,UIタッチパネル216又はハードキー等による操作指示によって,当該操作指示された機能に必要なデバイスに対して電力供給を実行する。」 キ「【0274】 図24に示される如く,ステップ400では,第1の人感センサ28で移動体(使用者)を検知したか否かが判断され,否定判定された場合はこのルーチンは終了する。なお,スリープモード中は基本的に他の処理は行っていないので,直ちにステップ400へ戻ることになる。 【0275】 前記ステップ400で肯定判定されると,ステップ402へ移行し,画像処理装置10の動作状態を,図5に示すスリープモード(slp)からアウェイクモード(awk)モードへ遷移する。この遷移は,基本的には依然としてスリープモードではあるが,UIタッチパネル216に電力が供給され,起動した状態である。 【0276】 次のステップ404では,節電中監視制御部24での第1の人感センサ28による監視体制を「無効」とし,ステップ406へ移行する。これは,例えば,使用者が画像処理装置10の前で立ち止まり,静止すると,第1の人感センサ28の出力がなくなり,使用者が去ったと判断される可能性があるからである。 【0277】 ステップ406ではUIタッチパネル216を用いたキー入力(操作)があったか否かが判断され,否定判定されると,ステップ408へ移行して予め設定した第1の所定時間が経過したか否かが判断される。このステップ408で否定判定されると,ステップ406へ戻り,ステップ406,408を繰り返す。 【0278】 上記ステップ406,408の繰り返し中,ステップ406で肯定判定,すなわち,キー入力(操作)があったと判定されると,ステップ416へ移行する(後述)。 【0279】 また,ステップ408で肯定判定,すなわち,第1の所定時間が経過してもキー入力(操作)がないと判定されると,ステップ410へ移行して,UIタッチパネル216へメッセージ(例えば「キー操作をして下さい」等)を表示し,ステップ412へ移行する。 【0280】 これにより,仮に,画像処理装置10の前に使用者がいれば,キー操作を迅速に行う契機となり得る。なお,メッセージ内容は,上記に限らず,使用者にキー操作を促すメッセージであれば限定されるものではなく,視覚以外の五感(例えば,聴覚や触覚)を通じて報知してもよい。 【0281】 次のステップ412では,UIタッチパネル216を用いたキー入力(操作)があったか否かが判断され,否定判定されると,ステップ414へ移行して予め設定した第2の所定時間が経過したか否かが判断される。このステップ414で否定判定されると,ステップ412へ戻り,ステップ412,414を繰り返す。 【0282】 なお,第1の所定時間と第2の所定時間の間に相関関係はないが,例えば,第1の所定時間は移動体(使用者)が近づいている可能性があるので比較的に長い時間に設定し,第2の所定時間はメッセージをみれば直ちに操作するであろうと予測できるので比較的短い時間に設定する,といった目的に応じた時間の設定が可能である。 【0283】 上記ステップ412,414の繰り返し中,ステップ414で肯定判定,すなわち,キー入力(操作)があったと判定されるとステップ416へ移行する。ステップ416では,立ち上げトリガを出力し,このルーチンは終了する。これにより,画像処理装置10の動作状態はウォームアップモード(wup)へ遷移し,ウォームアップが完了すると,スタンバイモード(stb)となる。」 ク 段落【0099】の末尾にある「(図5の遷移図における,スリープモード範囲の括弧[ ]内参照)」の「括弧[ ]内」には,時間t軸の左から,「スリープ(slp)」,「立ち上げトリガ(人感センサ)」,「アウェイク(awk)(ex.UIのみ通電)」と記載され,「アウェイク(awk)(ex.UIのみ通電)」の次に「ウォームアップ(wup)」が続くことは自明である。 ケ 【図5】から,「スリープ(slp)」の電力は「ほぼゼロ」であり,「アウェイク(awk)」と「ウォームアップ(wup)」の電力差は非常に大きい(図面上1:16)ことが,看て取れる。 コ 引用文献の画像処理装置10は,制御の「ステップ」を用いて制御しているものであるから,実質的に「制御方法」に係る発明が記載されていることは明らかである。 引用文献の上記記載事項を含め,引用文献の全記載を総合すると,引用文献には以下の事項(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「画像形成部240に備えられた感光体と, UIタッチパネル216と, 第1の人感センサ28と,を備える画像処理装置10であって, メインコントローラ200には、第1の人感センサ28が接続されて、画像処理装置10の周囲の人の有無を監視するとともに、ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル216が接続され、該メインコントローラ200が主体となって、画像処理装置10の各処理部が制御されるものであって、 ステップ400では,第1の人感センサ28で移動体(使用者)を検知したか否かが判断され, ステップ400で肯定判定されると,画像処理装置10の動作状態を,スリープモード(slp)から,アウェイクモード(awk)モードへ遷移し, 該アウェイクモード(awk)モードにおいて,メインコントローラ200におけるUIタッチパネル216や節電解除ボタン26を含むコピー実行等を指示するハードキー等の入力系への電力供給を実行し, ステップ406ではUIタッチパネル216を用いたキー入力(操作)があったか否かが判断され, ステップ406で肯定判定,すなわち,キー入力(操作)があったと判定されると,ステップ416へ移行し, ステップ416では,立ち上げトリガを出力し,画像処理装置10の動作状態はウォームアップモード(wup)へ遷移し, UIタッチパネル216又はハードキー等による操作指示によって,当該操作指示された機能に必要なデバイスに対して電力供給を実行する画像処理装置10の制御方法。」 3 対比 (1)本願発明22と引用発明とを対比する。 後者の「感光体」は,前者の「感光体」に相当する。 以下同様に,「UIタッチパネル216」は,「表示部」に, 「第1の人感センサ28」は,「人感センサ」に, 「画像処理装置10」は,「印刷装置」に,それぞれ相当する。 前者の「アウェイクモード(awk)モード」は,「スリープモード(slp)」から引き続いて遷移するモードであって,遷移したときに「UIタッチパネル216に電力が供給され」るのであるから,前者のUIタッチパネル216は,スリープモード(slp)時には,画面が表示されていないことは自明である。したがって,後者の「スリープモード(slp)」は,前者の「第1電力状態」に相当する。 後者の「アウェイクモード(awk)モード」は,スリープモード(slp)中に,第1の人感センサ28で移動体(使用者)を検知したことによって遷移するものであって,UIタッチパネル216や節電解除ボタン26を含むコピー実行等を指示するハードキー等の入力系への電力供給を実行する(消費)電力の少ない状態であるから,UIタッチパネル216には何らかの表示が行われるが,画像処理に関わる感光体を駆動しない状態であることは自明である。したがって,後者の「アウェイクモード(awk)モード」は,前者の「第2電力状態」に相当する。 後者において「UIタッチパネル216を用いたキー入力(操作)」があったと判定された場合,画像処理装置10の動作状態はウォームアップモード(wup)へ遷移し,UIタッチパネル216による操作指示によって,当該操作指示された機能に必要なデバイスに対して電力供給を実行」するものであるから,印刷実行指示であれば,感光体を駆動することになることは自明である。したがって,後者は,前者の「表示部に表示された画面の操作に基づいて感光体が駆動するよう制御する」に相当する構成を有しているといえる。 以上のことより,両者は, 〈一致点〉 「感光体と,表示部と,人感センサと,を備える印刷装置の制御方法であって, 前記印刷装置を前記表示部に画面が表示されていない第1電力状態に移行するステップと, 前記人感センサの検知結果に基づいて前記感光体を駆動することなく前記印刷装置を前記第1電力状態から前記表示部に画面が表示される第2電力状態に移行するステップと, 前記表示部に表示された前記画面の操作に基づいて前記感光体が駆動するよう制御するステップと,を有することを特徴とする印刷装置の制御方法。」 である点で一致し,相違点はない。 第3 むすび 以上のとおり,本願発明22は,引用発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-05-30 |
結審通知日 | 2018-06-05 |
審決日 | 2018-06-19 |
出願番号 | 特願2013-231587(P2013-231587) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三橋 健二 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 畑井 順一 |
発明の名称 | 印刷装置及び印刷装置の制御方法 |
代理人 | 黒岩 創吾 |
代理人 | 阿部 琢磨 |