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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1342933
審判番号 不服2017-13619  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-13 
確定日 2018-08-09 
事件の表示 特願2015-82155号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月1日出願公開、特開2016-198399号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成27年4月14日の出願であって、平成28年3月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月22日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年1月30日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月14日付け(発送日:同年6月20日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年9月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年9月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
平成29年9月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、平成29年1月30日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
特別遊技を実行するか否かを始動条件の成立を契機として判定すると共に、このときの判定結果に基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
前記判定結果に基づいて複数の演出のうちから決定された遊技の進行に対応する遊技演出を演出装置に実行させる演出制御手段と、
を備える遊技機であって、
前記複数の演出は、前記特別遊技を実行する信頼度が高い複数の第1の予告演出と、前記特別遊技を実行する信頼度が前記複数の第1の予告演出よりも低い複数の第2の予告演出とを含み、
前記演出制御手段は、図柄表示手段の図柄の変動開始から変動停止までの1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの及び遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なもののうち遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行せず、
前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における疑似連続変動演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの又は遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行することがある遊技機。」は、

審判請求時に提出された手続補正書(平成29年9月13日付け)における
「【請求項1】
特別遊技を実行するか否かを始動条件の成立を契機として判定すると共に、このときの判定結果に基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
前記判定結果に基づいて複数の演出のうちから決定された遊技の進行に対応する遊技演出を演出装置に実行させる演出制御手段と、
を備える遊技機であって、
前記複数の演出は、前記特別遊技を実行する信頼度が高い複数の第1の予告演出と、前記特別遊技を実行する信頼度が前記複数の第1の予告演出よりも低い複数の第2の予告演出と、可動役物の落下によって前記特別遊技が実行されることを報知する可動役物落下演出とを含み、
前記演出制御手段は、図柄表示手段の図柄の変動開始から変動停止までの1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの及び遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なもののうち遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行せず、
前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における疑似連続変動演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの又は遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行することがあり、
前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記可動役物落下演出を2回以上実行しない
ことを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の演出」に関して、「可動役物の落下によって前記特別遊技が実行されることを報知する可動役物落下演出」「を含み」と限定し、
本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「演出制御手段」に関して、「前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記可動役物落下演出を2回以上実行しない」ことを加えることを含むものである。

そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0133】、【0174】、特許請求の範囲又は【図31】等の記載からみて、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Jは、分説するため当審で付した。)。
「A 特別遊技を実行するか否かを始動条件の成立を契機として判定すると共に、このときの判定結果に基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
B 前記判定結果に基づいて複数の演出のうちから決定された遊技の進行に対応する遊技演出を演出装置に実行させる演出制御手段と、
を備える遊技機であって、
C 前記複数の演出は、前記特別遊技を実行する信頼度が高い複数の第1の予告演出と、前記特別遊技を実行する信頼度が前記複数の第1の予告演出よりも低い複数の第2の予告演出と、可動役物の落下によって前記特別遊技が実行されることを報知する可動役物落下演出とを含み、
D 前記演出制御手段は、図柄表示手段の図柄の変動開始から変動停止までの1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの及び遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なもののうち遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行せず、
E 前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における疑似連続変動演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの又は遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行することがあり、
F 前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記可動役物落下演出を2回以上実行しない
ことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願前に頒布された刊行物である特開2014-138841号公報(以下「刊行物1」という。)には、遊技機に関して、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。

・記載事項
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の演出制御処理に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような高信頼度予告演出が比較的多く出現したにもかかわらず、ゲーム結果として「ハズレ」が導出されてしまうと、遊技者にとっては、当選期待感が大きかった反動により大きく失望し、遊技機に対する不信感を招来する。また遊技者が、上記のようなケースを複数回経験してしまうと、予告演出に対する信頼感を失ってしまい、当りへの当選期待感を与えるといった、元来、予告演出が有する意義が没却される恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、当り当選期待度が相対的に高まる高信頼度予告演出の出現をある程度抑制し、遊技者に対して過度な当りへの当選期待感を与えてしまうことを極力抑えうる遊技機を提供することを目的とする。」

ウ 「【0053】
また主制御部20は、特別図柄変動表示ゲームに関する情報を乗せた演出制御コマンドを、演出制御部24に送信可能となっている。このような主制御部20からの演出制御コマンドは、外部からのゴト行為による不正な信号が演出制御部24を介して主制御部20に入力されることを防止するため、一方向通信により演出制御部24に送信される。」

エ 「【0061】
<3.動作の概説>
次に、上記制御装置(図3)を用いた本実施形態のパチンコ遊技機1に係る遊技動作について説明する。
【0062】
(3-1.図柄変動表示ゲーム)
(3-1-1.特別図柄変動表示ゲーム、装飾図柄変動表示ゲーム)
本実施形態のパチンコ遊技機1では、所定の始動条件、具体的には、遊技球が上始動口34または下始動口35に遊技球が入球(入賞)したことに基づき、主制御部20において乱数抽選による「大当り抽選」が行なわれる。主制御部20は、その抽選結果に基づき、特別図柄表示装置38a、38bに特別図柄1、2を変動表示して特別図柄変動表示ゲームを開始させ、所定時間経過後に、その結果を特別図柄表示装置に導出表示して、これにより特別図柄変動表示ゲームを終了させる。」

オ 「【0071】
演出制御部24は、主制御部20から送られてくる演出制御コマンド(ここでは、変動パターン指定コマンドと装飾図柄指定コマンド)に含まれる情報に基づいて、装飾図柄変動表示ゲーム中に時系列的に展開させる演出内容(演出シナリオ)や、最終的に停止表示する装飾図柄(装飾停止図柄)を決定し、特別図柄の変動パターンに基づくタイムスケジュールに従い装飾図柄を変動表示して装飾図柄変動表示ゲームを実行させる。これにより、特別図柄表示装置38a、38bによる特別図柄の変動表示と時間的に同調して、液晶表示装置36による装飾図柄が変動表示され、特別図柄変動表示ゲームの期間と装飾図柄変動表示ゲーム中の期間とが、実質的に同じ時間幅となる。また演出制御部24は、演出シナリオに対応するように、液晶表示装置36または光表示装置45aあるいは音響発生装置46aをそれぞれ制御し、装飾図柄変動表示ゲームにおける各種演出を展開させる。これにより、液晶表示装置36での画像の再生(画像演出)と、効果音の再生(音演出)と、装飾ランプ45やLEDなどの点灯点滅駆動(光演出)とが実現される。」

カ 「【0123】
(5-2.予告演出)
次に、予告演出について説明する。演出制御部24は、図柄変動表示ゲーム中において、主制御部20からの演出制御コマンドの内容、具体的には、少なくとも変動パターン指定コマンドに含まれる変動パターン情報(たとえば当落抽選結果、リーチ演出の有無、および特別図柄の変動時間など)に基づき、大当り抽選結果に関連した様々な予告演出を、上述した演出モード下で現出制御する機能部(予告演出現出制御手段)を備える。斯様な演出態様には、「リーチ演出(リーチ変動パターンに係る演出態様)」に代表される予告演出の他、これらの演出に付随して、または単独的に発生するものが含まれる。これらの演出態様は、当り種別に当選したか否かの信頼度または期待度(以下、「当り当選期待度」と称する)を示唆(予告)し、遊技者の当り種別への当選期待感(当り当選期待感)を煽るための「煽り演出」として機能する。以下に、本実施形態に係る予告演出について説明する。
【0124】
(5-2-1.リーチ演出)
上記「リーチ演出」とは、リーチ状態を伴う演出態様をいい、具体的には、リーチ状態を経由して最終結果を表示するような演出態様をいう。この「リーチ状態」とは、装飾図柄変動表示ゲームの結果が導出される前段階において、当該装飾図柄変動表示ゲームの途中で導出表示される一部の装飾図柄が、大当り発生(大当り当選)を示す表示態様の一部を構成している状態で、未だ導出表示されていない装飾図柄の変動表示が行われている表示態様であり、換言すれば、大当り発生を示す表示態様が導出され易いことを遊技者に連想させうる変動表示態様をいう。たとえば、大当り発生(大当り当選)を示す装飾図柄の組合せが「7(左図柄)」「7(中図柄)」「7(右図柄)」である場合、所定の当り有効ライン上において、装飾図柄の一部が大当り発生(大当り当選)を示す表示態様の一部を表示しており(たとえば、左図柄と右図柄とが「7」を表示しているといった、いわゆる「聴牌状態(リーチ図柄)」を呈している。但し、最終的に導出される結果が必ずしも大当り発生を示す表示態様、たとえば「7(左図柄)」「7(中図柄)」「7(右図柄)」が導出されるとは限らない)、いまだ導出表示されていない装飾図柄(ここでは、聴牌状態(リーチ図柄)を形成していない中図柄)、またはリーチ図柄の一部または全部の装飾図柄とともに、いまだ導出表示されていない装飾図柄が、所定時間継続して停止、揺動、拡大縮小、または変形しながら、最終結果が表示される前段階で大当り発生の可能性が継続している状態やその様子をいう。したがって、たとえリーチ状態が形成されたからといって、装飾図柄変動表示ゲームの結果が必ずしも「大当り」になるとは限らず、最終的に導出された結果が大当りを示す停止表示態様(たとえば、「7(左図柄)」「7(中図柄)」「7(右図柄)」)でない場合は、今回のゲーム結果は「ハズレ」となる。」

キ 「【0128】
(5-2.期待予告演出)
本実施形態では、大当りである旨を示す装飾図柄の組合せが導出表示される過程で上記リーチ演出を経由するようになっている。このため、遊技者にとって、リーチ演出の発生の有無が大当りの可能性を知る手がかりとなる。そこで、リーチ演出の発生可能性を予告(示唆)する演出態様、換言すれば、当り当選期待度をさらに明確に予告しうる演出態様として、複数種類の「期待予告演出」が設けられている。この「期待予告演出」は、当り当選期待度を予告する煽り演出としての役割を担うものであるが、特定の演出(たとえば、リーチ演出)が発生する可能性がある旨を予告したり、特定の演出の発生が確定する旨を予告したりする役割も担う。したがって、リーチ演出のような特定の演出が発生する演出シナリオでは、期待予告演出が当該特定の演出が発生する前段階で発生し、リーチ演出の発生可能性を予告するとともに、当り当選期待度を予告する場合がある。つまり、単にリーチ演出が単独で発生する場合よりも、期待予告演出が伴えば、当り当選期待度がより明確化され、遊技者の当り当選期待感を煽ることができるようになっている。また期待予告演出は、大当り抽選結果に関連して、1または複数種類の期待予告演出が複合して発生する場合があり、複数種類の期待予告演出が複合することで、より明確な当り当選期待度が示されるようになっている。たとえば、当り当選期待度が高い期待予告演出が発生すれば、当り当選期待度がより高まることになる。
【0129】
次に、本実施形態の「期待予告演出」について説明する。なお本実施形態では、大当りである旨を示す装飾図柄の組合せが導出表示される過程で上記リーチ演出を経由する関係上、本明細書中では、上記「期待予告演出」の発生タイミングに着目し、リーチ演出前に発生しうる予告演出を「前予告演出」と、リーチ演出中に発生しうる予告演出を「後予告演出」と称して説明する。
【0130】
(5-2-1.疑似連(疑似連演出))
本実施形態では、上記「期待予告演出」の一態様として、疑似連演出(以下、「疑似連」と略す)が設けられている。
「疑似連」とは、装飾図柄の疑似的な連続変動表示状態(疑似変動)を伴う演出態様をいい、具体的には、装飾図柄変動表示ゲーム中において、装飾図柄の一部または全部を一旦仮停止状態とし、その仮停止状態から装飾図柄の再変動動作を実行する、といった表示動作を1回または複数回繰り返すことにより、見た目上、一セットとする変動動作があたかも複数回実行されているかの如く表現するような変動表示態様をいう。この疑似変動を行う場合には、仮リーチ状態(リーチ状態を形成するかの如く装う仮停止状態)を形成しながら、一旦ハズレとなる図柄の組合せで仮停止状態としてから再変動動作を行ったり、または通常の装飾図柄に替えて特殊な装飾図柄(疑似連の発生可能性がある旨を示唆する特殊な装飾図柄(疑似連発動チャンス図柄))を含ませて仮停止状態としてから再変動動作を行う、といったように、特殊な装飾図柄を含ませて仮停止させることにより、疑似変動が行われる旨、またはその可能性がある旨を遊技者に示唆する場合もある。斯様な「疑似連」は、主として、リーチ演出発生前に展開される「前予告演出」として働き、疑似連回数が多くなるほど当り当選期待度が高まるようにその発生率(疑似連回数に応じた疑似連の発生確率)が定められている。換言すれば、疑似連回数が多くなるほど当り当選期待度が相対的に高いSPリーチ種別の発生が期待できるようになっている。」

ク 「【0133】
(5-3.他の期待予告演出:図24、図25)
上述した「疑似連」は、主として、装飾図柄の変動表示および停止表示状態に関する演出態様である。本実施形態では、上記疑似連のような装飾図柄の変動表示態様を利用した予告演出態様とは別の予告演出態様として、複数種類の前予告演出および後予告演出が設けられている。これらの予告演出は、装飾図柄の変動表示態様を利用しない演出態様であり、上記疑似連とは区別され、疑似連中においても複合発生しうる予告演出態様となっている。なお以下に説明する予告演出は、疑似連が発生する演出シナリオの場合には当該疑似連と重複して発生しうる予告演出であり、疑似連回数と当該予告演出とにより当り当選期待度が示唆されるようになっている。
【0134】
(5-3-1.前予告演出:図24)
先ず図24を参照して前予告演出1?6について説明する。図24は、本実施形態に係る前予告演出の一例を示したものである。
・・・
【0141】
本実施形態では、各期待予告演出に属する演出群のうち、大当り抽選結果がハズレの場合には相対的に低い確率で選択され(低出現率)、大当りの場合には相対的に高い確率で選択(高出現率)される、といった高い当り当選期待度を持つ予告演出として、たとえば当り当選期待度が所定の期待値以上(本実施形態では、当り当選期待度20%以上を持つ予告演出)のものを高信頼度予告演出と称し、それ以外を低信頼度予告演出と称して説明する。上記前予告演出1に属する演出番号4の「背景牡丹柄予告演出(当り当選期待度20.5%)」と演出番号5の「背景藤柄予告演出(当り当選期待度52.6%)」は、上述の高信頼度予告演出に属し、その他の予告演出は低信頼度予告演出に属する。このような高信頼度予告演出が発生すると、遊技者は、大当り当選に大きな期待を寄せることになる。」

ケ 「【0156】
次に、前予告演出6について説明する。本実施形態の前予告演出6は、可動体役物(図示せず)の動作パターンおよび/または遊技機に配設された特定の装飾ランプ45による光演出により、当り当選期待度を示唆する予告演出態様であり、ここでは、装飾ランプ45の発光色の違いにより当り当選期待度を示唆するようになっている。上記前予告演出6の光演出は、発光色が、白色(役物演出白色予告演出)、青色(役物演出青色予告演出)、黄色(役物演出黄色予告演出)、赤色(役物演出赤色予告演出)、および虹色(役物演出虹色予告演出)となっており、この発光色種の順に当り当選期待度が高くなるように定められている(図24参照)。この前予告演出5に属する各演出は、上記した前予告演出1?5と共通する(同一または酷似する)色彩に対応した当り当選期待度となっている。本実施形態では、前予告演出6に属する予告演出のうち、上記高信頼度予告演出に属するものは、演出番号29の役物演出赤色予告演出(当り当選期待度22.5%)と、演出番号30の役物演出虹色予告演出(当り当選期待度37.5%)となっている。」

コ 「【0159】
本実施形態の後予告演出1は、前予告演出2?3と同じ所謂「画像出現予告演出」に属するもので、特定画像として、複数の花弁が舞い落ちる様を表現した画像が表示され、この舞い落ちる花弁の種類に応じて当り当選期待度が示唆されるといった予告演出態様である。この前予告演出7には、花弁(模様、図柄)およびその花に因んで付された花弁色(色彩)がそれぞれ異なる複数種類の画像表示演出が用意されており、どの種類の花弁が出現するかにより、当り当選期待度が示唆されるようになっている。
・・・
【0161】
次に、後予告演出2について説明する。本実施形態の後予告演出2は、上記前予告演出5と同じ、所謂「ボタン予告演出」に属するもので、上記前予告演出遊技者が枠演出ボタン13を操作したか否かに応じて、演出の内容が変化し得る予告演出態様である。後予告演出2は、後予告演出1の所定時間経過後に現出される。」
・・・
【0164】
斯様な期待予告演出を複数種類を設けることで、図柄変動表示ゲーム中の種々のタイミングで遊技者の当り当選期待感を煽ることが可能になり、遊技に対する面白みを増すことができる。上記前予告演出1?6および後予告演出1?8の各予告演出に属する高信頼度予告演出が複数回発生した場合は、それ自体発生しなかった場合か、または1回だけ高信頼度予告演出が発生した場合よりも当り当選期待度が相対的に高まることになり、また当り当選期待度がより明確化されるので、遊技者に対して大当りへの緊張感や高揚感を与えることができる。」

サ 「【0302】
(16.装飾図柄指定コマンド受信処理:図16)
図16は、装飾図柄指定コマンドを受信した場合の受信コマンド解析処理を示すフローチャートである。この装飾図柄指定コマンドは、図9の特別図柄変動開始処理のステップS415で送信される演出制御コマンドである。この処理では、図15の変動パターン指定コマンド受信処理で得られた変動パターン情報と、装飾図柄指定コマンドにより得られる情報とに基づいて、図柄変動表示ゲーム中の演出(各種の予告演出)、装飾図柄の表示態様(疑似連中の仮停止図柄、リーチ図柄、最終的に停止表示される装飾図柄の組合せなど)が決定され、今回の図柄変動表示ゲーム中に現出される演出の演出シナリオが構成される。
【0303】
図16において、演出制御部24(CPU241)は、まず装飾図柄指定コマンドの内容を解析し、その内容を取得する(ステップS751)。
・・・
【0309】
次いで、ステップS754の処理では、ステップS753で決定された予告演出抽選テーブル指定テーブル(後述の図27参照)に基づき、今回の図柄変動表示ゲーム中に現出すべき期待予告演出を抽選により決定する(予告演出抽選処理)。
・・・
【0312】
(T-3:予告演出抽選テーブル)。
上記予告演出抽選テーブル(前予告演出1_TBL?前予告演出6_TBL、後予告演出1_TBL?後予告演出2_TBL:図示せず)には、変動パターンの内容と予告演出とが関連付けて定められており、具体的には、変動パターンの内容と演出用乱数(予告演出決定用乱数)とに基づき、期待予告演出種別(図24、図25参照)に属する複数種類の予告演出のうちからいずれかの一つの予告演出が抽選により決定されるようになっている。なお図示はしていないが、予告演出抽選テーブルには、各期待予告演出種別(前予告演出1?6、後予告演出1?2)に属する予告演出(演出番号1?41)が図24?図25に示す当り当選期待度となるように、各変動パターンに応じてその選択率(出現率)が定められている。なお演出モードに応じて、図24?図25に示す各期待予告演出種別に属する予告演出の当り当選期待度の順位を変更しない範囲(各予告演出間の当り当選期待度の対応関係を変更しない範囲)で、各予告演出の選択率を異ならせ、その当選期待度を変更しても良い。」

シ 「【0328】
この高信頼度予告演出変更処理では、ステップS754の予告演出抽選処理で決定された高信頼度予告演出を、他の演出に変更、またはその高信頼度予告演出の現出予定自体をキャンセル(無効化)する。本実施形態では、抑制カウンタが制限値「1」である場合、高信頼度予告演出変更処理を実行され、高信頼度予告演出の現出が1回だけに制限される、といった構成となっている。なお上記制限値は任意の値に適宜変更可能であるが、高信頼度予告演出が何回も現出されると遊技者に過度な当り当選期待感を抱かせてしまうという観点から、当該制限値を1または2とし、高信頼度予告演出の現出回数を2回以下に制限することが好ましい。」

・認定事項
ス 刊行物1には、【0141】に「・・・当り当選期待度が所定の期待値以上・・・のものを高信頼度予告演出と称し、それ以外を低信頼度予告演出と称・・・」と記載され、【0164】に「・・・前予告演出1?6および後予告演出・・・の各予告演出に属する高信頼度予告演出・・・」と記載され、【0312】に「・・・各期待予告演出種別(前予告演出1?6、後予告演出1?2)に属する予告演出・・・」と記載されている。
これらの記載から、刊行物1には、「当り当選期待度が所定の期待値以上の、前予告演出1?6および後予告演出1?2の各予告演出に属する高信頼度予告演出と、それ以外の低信頼度予告演出とが含まれ」ることが記載されていると認められる。

上記ア?シの記載事項、上記スの認定事項、及び、図面の図示内容を総合すると、刊行物1には次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?fは、本件補正発明のA?Fに対応させて付与した。)。
「a 遊技球が上始動口34または下始動口35に遊技球が入球したことに基づき「大当り抽選」が行なわれ、その抽選結果に基づき、特別図柄1、2を変動表示して特別図柄変動表示ゲームを開始させ、所定時間経過後に、その結果を導出表示して、特別図柄変動表示ゲームを終了させる主制御部20(【0062】)と、

b 装飾図柄変動表示ゲーム中において、主制御部20からの特別図柄変動表示ゲームに関する情報を乗せた、演出制御コマンドの内容、すなわち、変動パターン指定コマンドに含まれる変動パターン情報(たとえば当落抽選結果、リーチ演出の有無、および特別図柄の変動時間など)に基づき、大当り抽選結果に関連した様々な予告演出を液晶表示装置36に現出制御する演出制御部24(【0053】、【0071】、【0123】?【0124】)と
を備える遊技機であって(【0001】)、

c リーチ演出の発生可能性を予告する演出態様として、複数種類の「期待予告演出」が設けられ、「期待予告演出」には、発生タイミングに着目すると、リーチ演出前に発生しうる複数種類の予告演出である「前予告演出」と、リーチ演出中に発生しうる複数種類の予告演出である「後予告演出」とが含まれ(【0128】?【0129】、【0133】)、
当り当選期待度が所定の期待値以上の、前予告演出1?6および後予告演出1?2の各予告演出に属する高信頼度予告演出と、それ以外の低信頼度予告演出とが含まれ(認定事項ス)、
「前予告演出」には、可動体役物の動作パターンにより、当り当選期待度を示唆する予告演出態様であって、高信頼度予告演出に属するものである前予告演出6が含まれ(【0156】)、

d 「後予告演出」には、特定画像として、複数の花弁が舞い落ちる様を表現した画像が表示され、この舞い落ちる花弁の種類に応じて当り当選期待度が示唆されるといった予告演出態様である「画像出現予告演出」に属する後予告演出1と、予告演出遊技者が枠演出ボタン13を操作したか否かに応じて、演出の内容が変化し得る予告演出態様である「ボタン予告演出」に属する後予告演出2とがあり(【0159】、【0161】)、
演出制御部24は、ステップS754の処理では、ステップS753で決定された予告演出抽選テーブル指定テーブルに基づき、今回の図柄変動表示ゲーム中に現出すべき期待予告演出を抽選により決定し、さらに、ステップS754の予告演出抽選処理で決定された高信頼度予告演出を、その高信頼度予告演出の現出予定自体をキャンセル(無効化)する、高信頼度予告演出変更処理を実行することにより、高信頼度予告演出の現出を1回だけに制限し(【0303】、【0309】、【0328】)、

e 複数種類の後予告演出は、装飾図柄変動表示ゲーム中において、装飾図柄の一部または全部を一旦仮停止状態とし、その仮停止状態から装飾図柄の再変動動作を実行する、といった表示動作を1回または複数回繰り返す、疑似連中においても複合発生しうる予告演出態様であり(【0130】、【0133】)、

f 変動パターンの内容と演出用乱数とに基づき、各期待予告演出種別(前予告演出1?6)に属する複数種類の予告演出のうちからいずれか一つの予告演出が抽選により決定される(【0312】)
遊技機。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。
(a)刊行物発明における「遊技球が上始動口34または下始動口35に遊技球が入球したこと」は、本件補正発明における「始動条件の成立を契機と」することに相当する。
そして、刊行物発明における「抽選結果」は、「大当り抽選」の結果であるから、本件補正発明における「特別遊技を実行するか否か」の「判定結果」に相当する。
さらに、刊行物発明における「特別図柄1、2を変動表示して特別図柄変動表示ゲームを開始させ、所定時間経過後に、その結果を導出表示して、特別図柄変動表示ゲームを終了させる」ことは、変動表示ゲームの進行を制御することであるから、本件補正発明における「遊技の進行を制御する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成aの「主制御部20」は、本件補正発明における構成Aの「遊技制御手段」に相当する。

(b)刊行物発明における「主制御部20からの特別図柄変動表示ゲームに関する情報」のうちの「当落抽選結果」は、本件補正発明における「判定結果」に相当する。
そして、刊行物発明における「大当り抽選結果に関連した様々な予告演出」は、本件補正発明における「複数の演出」に相当する。したがって、刊行物発明における「大当り抽選結果に関連した様々な予告演出」のうちから、「装飾図柄変動表示ゲーム中において」「現出制御」される「予告演出」は、本件補正発明における「複数の演出のうちから決定された遊技の進行に対応する遊技演出」に相当する。
また、刊行物発明における「液晶表示装置36」は、本件補正発明における「演出装置」に相当する。
よって、刊行物発明における構成bの「演出制御部24」は、本件補正発明における構成Bの「演出制御手段」に相当する。

(c)刊行物発明における「リーチ演出の発生可能性を予告する演出態様」は、構成bより、「大当り抽選結果に関連した様々な予告演出」に含まれる概念であるから、上記(b)と同様に、本件補正発明における「複数の演出」に相当する。
そして、刊行物発明における「高信頼度予告演出」には、「前予告演出1?6および後予告演出1?2の各予告演出に属する」複数の予告演出が含まれることから、「当り当選期待度が所定の期待値以上の」「高信頼度予告演出」は、本件補正発明における「特別遊技を実行する信頼度が高い複数の第1の予告演出」に相当する。
同様に、刊行物発明における「それ(高信頼度予告演出)以外の低信頼度予告演出」は、本件補正発明における「特別遊技を実行する信頼度が前記複数の第1の予告演出よりも低い複数の第2の予告演出」に相当する。

次に、刊行物発明における「可動体役物の動作パターンにより、当り当選期待度を示唆する予告演出態様である前予告演出6」と、本件補正発明における「可動役物の落下によって特別遊技が実行されることを報知する可動役物落下演出」とを対比する。
まず、刊行物発明における「前予告演出6」は、構成bより、「前予告演出」のうちの1種類であって、また、「当り当選期待度を示唆する予告演出態様であって、高信頼度予告演出に属する」ものである。
ここで、本件補正発明における「可動役物落下演出」による「特別遊技が実行されることを報知する」ことの意味について検討する。
本願明細書の【0134】に「このような可動役物14の落下は、通常遊技の終了後に特別遊技を実行する信頼度の高い演出(確定演出を含む)として基本的に1回実行すればよいが、例外的に複数のタイミング、例えばSPリーチ演出及びSPSPリーチ演出の両方、SPリーチ演出又はSPSPリーチ演出と復活演出との両方で行ってもよい。そして、可動役物落下演出を2回以上実行する場合、複数の大当たりのうちの遊技者にとって有利な所定の大当たりが確定する大当たり確定演出としてもよい。・・・」と記載されている。この記載によると、「可動役物落下演出」は、「通常遊技の終了後に特別遊技を実行する信頼度の高い演出(確定演出を含む)」である。
そうすると、本件補正発明における「可動役物落下演出」の「報知」内容である「特別遊技が実行されること」は、特別遊技の実行される信頼度が高い(確定演出を含む)ことであると解される。
したがって、刊行物発明における「当り当選期待度を示唆する」「前予告演出6」、すなわち、「高信頼度予告演出に属するもの(演出)」は、本件補正発明における「特別遊技が実行されることを報知する」「演出」に相当する。

また、刊行物発明における「可動体役物の動作パターン」による「前予告演出」と、本件補正発明における「可動役物の落下によ」る「演出」とは、「可動役物の動作によ」る「演出」である点で共通する。
したがって、刊行物発明における「可動体役物の動作パターンにより、当り当選期待度を示唆する予告演出態様である前予告演出6」と、本件補正発明における「可動役物の落下によって特別遊技が実行されることを報知する可動役物落下演出」とは、「可動役物の動作によって特別遊技が実行されることを報知する可動役物動作演出」である点で共通する。

よって、刊行物発明における構成cと、本件補正発明における構成Cとは、「複数の演出は、特別遊技を実行する信頼度が高い複数の第1の予告演出と、特別遊技を実行する信頼度が複数の第1の予告演出よりも低い複数の第2の予告演出と、可動役物の動作によって特別遊技が実行されることを報知する可動役物動作演出を含」む点で共通する。

(d)刊行物発明における「今回の図柄変動表示ゲーム中」は、本件補正発明における「図柄表示手段の図柄の変動開始から変動停止までの1回の変動表示内」に相当する。

ここで、刊行物発明における「後予告演出」について検討する。
刊行物発明の構成cより、「後予告演出」には、「リーチ演出中に発生しうる複数種類の予告演出が設けられ」ているものである。
また、刊行物発明の構成cより、「後予告演出」としての「後予告演出1?2」は、「高信頼度予告演出」を含むものである。
さらに、刊行物発明における「予告演出遊技者が枠演出ボタン13を操作したか否かに応じて、演出の内容が変化し得る予告演出態様である「ボタン予告演出」」は、本件補正発明における「遊技者による操作手段の操作により実行される」「予告演出」に相当する。同様に、刊行物発明における「複数の花弁が舞い落ちる様を表現した画像が表示され、この舞い落ちる花弁の種類に応じて当り当選期待度が示唆されるといった予告演出態様である「画像出現予告演出」」は、遊技者による枠演出ボタン13の操作を必要とするものでないことから、本件補正発明における「遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能な」「予告演出」に相当する。
したがって、刊行物発明における「「ボタン予告演出」に属する後予告演出2」は、本件補正発明における「所定のリーチ演出の実行中に、複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの(演出)」に相当し、刊行物発明における「「画像出現予告演出」に属する後予告演出1」は、本件補正発明における「所定のリーチ演出の実行中に、複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって」「遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なもの(演出)」に相当する。

そして、刊行物発明における「演出制御部24は」、「今回の図柄変動表示ゲーム中に」「予告演出抽選処理で決定された高信頼度予告演出を、その高信頼度予告演出の現出予定自体をキャンセル(無効化)する、高信頼度予告演出変更処理を実行することにより、高信頼度予告演出の現出を1回だけに制限」するものであり、1回の図柄変動表示ゲーム中に、高信頼度予告演出を2回以上実行しないように制御するものである。

そして、刊行物発明における構成dにおける「高信頼度予告演出」に、「後予告演出2」、「後予告演出1」による「高信頼度予告演出」が含まれることから、刊行物発明における構成dの「演出制御部24は」、「今回の図柄変動表示ゲーム中に」「高信頼度予告演出変更処理を実行することにより、高信頼度予告演出の現出を1回だけに制限」することは、本件補正発明における構成Dの「演出制御手段は、図柄表示手段の図柄の変動開始から変動停止までの1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの及び遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なもののうち遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行」しないことに相当する。

(e)刊行物発明における「複数種類の後予告演出」は、構成b、cからみて、「演出制御部24」によって「液晶表示装置36に現出制御」されるものである。
そして、上記(d)より、刊行物発明における「後予告演出2」、「後予告演出1」は、本件補正発明における「複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出」に相当する。
同様に、上記(d)より、刊行物発明における「後予告演出2」、「後予告演出1」は、それぞれ、本件補正発明における「遊技者による操作手段の操作により実行されるもの」、「遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なもの」に相当する。
また、刊行物発明における「装飾図柄の一部または全部を一旦仮停止状態とし、その仮停止状態から装飾図柄の再変動動作を実行する、といった表示動作を1回または複数回繰り返す、疑似連中」は、本件補正発明における「疑似連続変動演出の実行中」に相当する。
さらに、刊行物発明における「後予告演出」は、「装飾図柄変動表示ゲーム中において」、「仮停止状態から装飾図柄の再変動動作を実行する、といった表示動作」を「複数回繰り返す、疑似連中においても複合発生しうる予告演出態様であ」ることから、本件補正発明における「1回の変動表示内における疑似連続変動演出の実行中に」「2回以上実行することがあ」ることに相当する。
したがって、刊行物発明における構成eは、本件補正発明における構成Eの「演出制御手段は、1回の変動表示内における疑似連続変動演出の実行中に、複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの又は遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行することがあ」ることに相当する。

(f)刊行物発明において、「各期待予告演出種別(前予告演出1?6)に属する複数種類の予告演出」は、構成dより、「今回の図柄変動表示ゲーム中」に「現出」されるものである。
そして、刊行物発明は、各「前予告演出1?6に属する複数種類の予告演出」のうちからいずれか一つの予告演出が抽選により決定されるものである。
したがって、刊行物発明における構成fの「変動パターンの内容と演出用乱数とに基づき、各期待予告演出種別(前予告演出1?6)に属する複数種類の予告演出のうちからいずれか一つの予告演出が抽選により決定される」ことと、本件補正発明における構成Fの「演出制御手段は、1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、可動役物落下演出を2回以上実行しない」こととは、「演出制御手段は、1回の変動表示内に、可動役物動作演出を2回以上実行しない」ことで共通する。

よって、上記(a)?(f)によれば、本件補正発明と刊行物発明は、
「A 特別遊技を実行するか否かを始動条件の成立を契機として判定すると共に、このときの判定結果に基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
B 前記判定結果に基づいて複数の演出のうちから決定された遊技の進行に対応する遊技演出を演出装置に実行させる演出制御手段と、
を備える遊技機であって、
C’ 前記複数の演出は、前記特別遊技を実行する信頼度が高い複数の第1の予告演出と、前記特別遊技を実行する信頼度が前記複数の第1の予告演出よりも低い複数の第2の予告演出と、可動役物の動作によって前記特別遊技が実行されることを報知する可動役物動作演出とを含み、
D 前記演出制御手段は、図柄表示手段の図柄の変動開始から変動停止までの1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの及び遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なもののうち遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行せず、
E 前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における疑似連続変動演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの又は遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行することがあり、
F’ 前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内に、前記可動役物動作演出を2回以上実行しない
遊技機。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1](構成C)
特別遊技が実行されることを報知する可動役物動作演出に関して、
本件補正発明は、可動役物の落下による可動役物落下演出であるのに対して、
刊行物発明は、可動役物の落下による演出が含まれるか明らかでない点。

[相違点2](構成F)
1回の変動表示内に可動役物動作演出を実行する演出制御手段に関して、
本件補正発明は、所定のリーチ演出の実行中に、可動役物落下演出を2回以上実行しないのに対して、
刊行物発明は、そのような構成を備えるか不明である点。

(4)当審による判断
相違点1、2は、可動役物動作演出に関する点で共通するのでまとめて検討する。
遊技機の技術分野において、遊技者の興趣を向上させるために演出制御手段によって、特別遊技が実行されることを報知する可動役物落下演出を、1回の変動表示内におけるリーチ演出実行中に1回のみ実行可能とすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2011-104249号公報の【0001】、【0029】、【0030】、【図2】?【図3】には、スーパーリーチ時などに役物本体30を表示画面14aの上部領域に勢い良く落下させた後、ホームポジションまでゆっくり上昇させることにより、遊技者が遊技を楽しむことができることのできる弾球遊技機について記載され、特開2007-7057号公報の【0001】、【0019】?【0020】、【0022】、【図1】?【図2】には、スーパーリーチなどが発生すると、演出部材5が自重により瞬時に降下し、その後上昇することにより、演出効果を高めたパチンコ遊技機について記載されている。)。

遊技機の技術分野において、遊技者の興趣を向上させることは、当業者に自明の課題であることから、刊行物発明においても解決されるべき課題であるといえる。
したがって、刊行物発明と上記周知の技術事項とは遊技者の興趣を向上させるという共通の課題を解決するものである。
また、刊行物発明と上記周知の技術事項とは、可動役物を用いた予告演出を実行可能な遊技機である点で共通する。

よって、刊行物発明における「可動体役物の動作パターン」による「予告演出6」に、上記周知の技術事項を適用し、「可動体役物の動作パターン」に可動体役物を落下させる動作パターンを含め、演出制御部24により、リーチ演出時に1回のみの可動体役物を落下させる動作パターンを実行可能とし、上記相違点1?2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、平成29年9月13日付けの審判請求書において、「引用文献1には、所定のリーチ演出の実行中や疑似連続変動演出の実行中における特定の予告演出の実行回数に関する記載はあるものの、所定のリーチ演出の実行中において大当たりを報知する可動役物落下演出を2回以上実行しないようにするとの構成の明示や示唆の記載は無いため、引用文献1に記載の発明は、補正後の本願発明の特徴となる構成に相当する構成を有していない。従って、請求項1の発明と引用文献1に記載の発明とは全く異なる発明である。」(第6頁下第3?下8行)と主張する。

そこで、請求人の上記主張について検討する。
刊行物発明における「当り当選期待度を示唆する」「前予告演出6」のうち、「高信頼度予告演出に属するもの(演出)」が、本件補正発明における「特別遊技が実行されることを報知する」「演出」に相当することは、上記(3)(c)において検討したとおりである。
そして、上記(4)において示したように、遊技機の技術分野において、遊技者の興趣を向上させるために演出制御手段によって、特別遊技が実行されることを報知する可動役物落下演出を、1回の変動表示内におけるリーチ演出実行中に1回実行可能とすることは、本願出願前に周知の技術事項である。
したがって、請求人が主張する上記構成を刊行物発明が備えることは、刊行物発明に上記周知の技術事項を適用することにより導き出せる構成である。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(6)小括
本件補正発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別のものではない。
よって、本件補正発明は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
上記1?3より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、平成29年1月30日付け手続補正書の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
A 特別遊技を実行するか否かを始動条件の成立を契機として判定すると共に、このときの判定結果に基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
B 前記判定結果に基づいて複数の演出のうちから決定された遊技の進行に対応する遊技演出を演出装置に実行させる演出制御手段と、
を備える遊技機であって、
C1 前記複数の演出は、前記特別遊技を実行する信頼度が高い複数の第1の予告演出と、前記特別遊技を実行する信頼度が前記複数の第1の予告演出よりも低い複数の第2の予告演出とを含み、
D 前記演出制御手段は、図柄表示手段の図柄の変動開始から変動停止までの1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの及び遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なもののうち遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行せず、
E 前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における疑似連続変動演出の実行中に、前記複数の第1の予告演出のうちの特定の予告演出であって、遊技者による操作手段の操作により実行されるもの又は遊技者による操作手段の操作がなくても実行可能なものを2回以上実行することがある遊技機。」

2 拒絶の理由(平成28年11月22日付け)
原査定の拒絶の理由は、
(1)(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1あるいは2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1、あるいは、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)(同日出願)この出願の請求項1に係る発明は、同一出願人が同日出願した下記の出願3に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。
というものである。

<引用文献等一覧>
1:特開2014-138841号公報
2:特開2014-113337号公報
3:特願2015-82153号(特開2016-198397号)

3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(前記「第2 3(2)」における「刊行物1」に対応する。)の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 3(2)刊行物1」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2 3(1)」で検討した本件補正発明の「複数の演出」(構成C)に関して、「可動役物の落下によって前記特別遊技が実行されることを報知する可動役物落下演出」「を含み」との限定を省き、
同じく、本件補正発明の「演出制御手段」(構成F)に関して、「前記演出制御手段は、前記1回の変動表示内における所定のリーチ演出の実行中に、前記可動役物落下演出を2回以上実行しない」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明は、刊行物発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本願発明は、特許を受けることができない。

5 むすび
よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-06 
結審通知日 2018-06-12 
審決日 2018-06-25 
出願番号 特願2015-82155(P2015-82155)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 長崎 洋一
松川 直樹
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人JAZY国際特許事務所  

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