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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1342982
異議申立番号 異議2018-700047  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-19 
確定日 2018-06-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6165138号発明「胡麻含有酸性液状調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6165138号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7について訂正することを認める。 特許第6165138号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6165138号の請求項1?7に係る特許についての出願は、2012年5月30日を国際出願日とする出願であって、平成29年6月30日に特許権の設定登録がされ、その後、平成30年1月19日に特許異議申立人杉本 里佳より特許異議の申立てがされ、平成30年3月15日付けで取消理由が通知され、平成30年5月17日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。


第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
平成30年5月17日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6165138号の特許請求の範囲を本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(訂正事項)
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれかに記載の胡麻含有酸性液状調味料。」とあるのを、「請求項6に記載の胡麻含有酸性液状調味料。」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正の目的
上記訂正事項は、請求項7において、請求項1?5を引用するものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記(1)のとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、上記(1)のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項7についての訂正を認める。


第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1?7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された以下の事項により特定されるものである。

【請求項1】
酢酸を0.1?1%及び胡麻を2?20%含有する胡麻含有酸性液状調味料において、前記調味料の香気成分を、下記分析条件にて固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、酢酸のピーク面積に対する、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの各ピーク面積の比が、下記の条件(a)、(b):
(a)2-methylthiophene:0.0001 ?0.01
(b)2-((methyldithio)methyl)furan:0.00001?0.001
を満たす、胡麻含有酸性液状調味料。
[分析条件]
<固相マイクロ抽出条件>
ファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー
抽出条件:40℃で15分間予備加温後、40℃で20分間揮発性成分抽出を行う
<ガスクロマトグラフ条件>
カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム,長さ30m,口径0.25mm
温度条件:35℃で5分間保持後、120℃までは5℃/分で昇温、220℃までは15℃/分で昇温し、6分間保持した
キャリアー: Heガス、ガス流量1.0mL/分
<質量分析条件>
装置:四重極型質量分析計
イオン化方式: EI(イオン化電圧70eV)
スキャン質量 :m/z 29.0?350.0
・酢酸:定量イオンm/z60
・2-methylthiophene:定量イオンm/z97
・2-((methyldithio)methyl)furan:定量イオンm/z81
【請求項2】
ソルビン酸を含有する、請求項1に記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項3】
酢酸及びソルビン酸を1:0.005?1:1の質量比で含有する、請求項1又は2に記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項4】
前記酢酸の含有量が、前記調味料の全量に対して0.4?0.8%である請求項1?3のいずれかに記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項5】
水中油型乳化液状調味料である、請求項1?4のいずれかに記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項6】
卵黄を含有する、請求項1?5のいずれかに記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項7】
前記卵黄がホスフォリパーゼA処理されている卵黄である、請求項6に記載の胡麻含有酸性液状調味料。

第4 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して、平成30年3月15日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
なお、当該取消理由は、特許異議申立の申立理由を全て含んでいる。

ア 特許法第29条第1項第3号及び第2項について
本件発明1?7は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1?3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
本件発明1?7は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1?3号証に記載された発明及び甲第5?9号証に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

甲第1号証:特開2005-95061号公報
甲第2号証:特開2004-159530号公報
甲第3号証:特開2008-154475号公報
甲第4号証:実験成績書
甲第5号証:Mitsuya SHIMODA 外3名、「Headspace Gas Analysis of Volatile Compounds of Light and Deep Roasted Sesame Seed Oil」、Food Sci Technol.Int.Tokyo、1998年、第4巻、第1号、p.14?17
甲第6号証:David Agyemang 外5名、「Identification of 2-Ethyl-4-Methyl-3-Thiazoline and 2-Isopropyl-4-Methyl-3-Thiazoline for the First Time in Nature by the Comprehensive Analysis of Sesame Seed Oil」、Journal of Food Science、2011年、Vol.76、Nr.3、p.C385?C391
甲第7号証:Ivon Flament、Coffee Flavor Chemistry、JOHN WILEY & SONS,LTD、2002年、p.246、252?253
甲第8号証:特開平2-5836号公報
甲第9号証:特開2006-61065号公報

イ 特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号について
(イ-1)本件発明の課題は、「長期保管後においても胡麻特有の芳香に優れている胡麻含有酸性液状調味料を提供すること」(【0006】)である。
そして、本件特許明細書において、当該課題を解決できたことが確認できた胡麻含有酸性液状調味料として、例2?例5(【0040】及び【0043】?【0049】)の配合のものが記載されているのみである。
そうすると、「本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、天然の胡麻には元来含まれない2つの化合物を特定の比率で組合せることを見出した。2つの化合物を特定の比率で含有した胡麻含有酸性液状調味料は、2つの化合物の相乗効果により、長期保管後における胡麻特有の芳香を増強保持する効果が見られることを知見し」(【0007】)たとの記載を参酌すると、本件発明の課題を解決するためには、胡麻の含有量、2つの化合物の比率が所定の範囲であることが必要であるところ、上記例2?例5(【0040】及び【0043】?【0049】)の配合のものから、本件発明1の範囲のもの全てが、本件発明の課題を解決できるとは理解できない。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された範囲内のものでない。
また、本件発明2?7も同様である。

(イ-2)本件特許明細書には、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanをそれぞれどのように調整しうるのか記載がなく、当業者が本件発明1?7を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

ウ 特許法第36条第6項第2号について
請求項7中の「前記卵黄」の記載は、引用する請求項1?5に「卵黄」の記載がなく、何を指すのか不明確である。

(2)特許法第29条第1項第3号及び第2項についての判断
ア 甲1発明
甲第1号証の比較例4(【0072】)及び比較例5(【0073】)には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「分散液20部、醤油15部、ぶどう糖果糖液糖14.5部、ごまペースト5部、20%加糖卵黄0.8部、キサンタンガム0.3部、水20部を撹拌し、次いでサラダ油15部、ごま油5部を加えて撹拌した後、撹拌しつつ90℃まで加温し、最後に食酢6.5部を加えたごまドレッシング。」

イ 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1と甲1発明とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1>
本件発明1では、「前記調味料の香気成分を、下記分析条件にて固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、酢酸のピーク面積に対する、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの各ピーク面積の比が、下記の条件(a)、(b):
(a)2-methylthiophene:0.0001 ?0.01
(b)2-((methyldithio)methyl)furan:0.00001?0.001
を満たす」、
「[分析条件]
<固相マイクロ抽出条件>
ファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー
抽出条件:40℃で15分間予備加温後、40℃で20分間揮発性成分抽出を行う
<ガスクロマトグラフ条件>
カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム,長さ30m,口径0.25mm
温度条件:35℃で5分間保持後、120℃までは5℃/分で昇温、220℃までは15℃/分で昇温し、6分間保持した
キャリアー: Heガス、ガス流量1.0mL/分
<質量分析条件>
装置:四重極型質量分析計
イオン化方式: EI(イオン化電圧70eV)
スキャン質量 :m/z 29.0?350.0
・酢酸:定量イオンm/z60
・2-methylthiophene:定量イオンm/z97
・2-((methyldithio)methyl)furan:定量イオンm/z81」であるのに対して、甲1発明は、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの含有量が不明である点。

ウ 甲2発明
甲第2号証の比較例1(【0020】、【0023】)には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「水165.5g、醤油150g、液糖145g、食酢65g、ゴマ成分(市販練りゴマ)50g、20%加糖殺菌凍結卵黄8gを加えて、撹拌しながら、キサンタンガム1.5g、食塩15g、コーンサラダ油380gとゴマ油20gを加え、更に攪拌し、90℃になるまで加温した後、室温まで冷却した水中油型の乳化液状ドレッシング様のゴマ含有調味料。」

エ 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、本件発明1と甲2発明とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点2>
本件発明1では、「前記調味料の香気成分を、下記分析条件にて固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、酢酸のピーク面積に対する、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの各ピーク面積の比が、下記の条件(a)、(b):
(a)2-methylthiophene:0.0001 ?0.01
(b)2-((methyldithio)methyl)furan:0.00001?0.001
を満たす」、
「[分析条件]
<固相マイクロ抽出条件>
ファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー
抽出条件:40℃で15分間予備加温後、40℃で20分間揮発性成分抽出を行う
<ガスクロマトグラフ条件>
カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム,長さ30m,口径0.25mm
温度条件:35℃で5分間保持後、120℃までは5℃/分で昇温、220℃までは15℃/分で昇温し、6分間保持した
キャリアー: Heガス、ガス流量1.0mL/分
<質量分析条件>
装置:四重極型質量分析計
イオン化方式: EI(イオン化電圧70eV)
スキャン質量 :m/z 29.0?350.0
・酢酸:定量イオンm/z60
・2-methylthiophene:定量イオンm/z97
・2-((methyldithio)methyl)furan:定量イオンm/z81」であるのに対して、甲2発明は、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの含有量が不明である点。

オ 甲3発明
甲第3号証の比較例2(【0058】?【0060】)には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「水15.65質量%、キサンタンガム0.05質量%、液糖(サンエイ糖化(株)、ダイヤトールK)1質量%、食酢(酸度15%)5質量%、ねり胡麻2質量%、砂糖11質量%、グルタミン酸ナトリウム0.3質量%、醤油(キッコーマン(株)、こいくち醤油)15質量%、食塩1.5質量%、摺り胡麻7質量%を混合し、加熱殺菌後冷却し、その後、10%加塩卵黄1.5質量%を混合後、攪拌しながらジアセシルグリセロール86%含有油脂(花王、健康エコナクッキングオイル)を配合し、乳化した乳化型胡麻ドレッシング。」

カ 本件発明1と甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、本件発明1と甲3発明とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点3>
本件発明1では、「前記調味料の香気成分を、下記分析条件にて固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、酢酸のピーク面積に対する、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの各ピーク面積の比が、下記の条件(a)、(b):
(a)2-methylthiophene:0.0001 ?0.01
(b)2-((methyldithio)methyl)furan:0.00001?0.001
を満たす」、
「[分析条件]
<固相マイクロ抽出条件>
ファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー
抽出条件:40℃で15分間予備加温後、40℃で20分間揮発性成分抽出を行う
<ガスクロマトグラフ条件>
カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム,長さ30m,口径0.25mm
温度条件:35℃で5分間保持後、120℃までは5℃/分で昇温、220℃までは15℃/分で昇温し、6分間保持した
キャリアー: Heガス、ガス流量1.0mL/分
<質量分析条件>
装置:四重極型質量分析計
イオン化方式: EI(イオン化電圧70eV)
スキャン質量 :m/z 29.0?350.0
・酢酸:定量イオンm/z60
・2-methylthiophene:定量イオンm/z97
・2-((methyldithio)methyl)furan:定量イオンm/z81」であるのに対して、甲3発明は、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの含有量が不明である点。

キ 判断
上記相違点1?3について検討する。
甲第4号証の実験成績書には、甲1?3発明の2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの含有量が条件(a)、(b)の範囲内であることが示されているが、甲第4号証は、作成者や作成日等が記載されておらず、当該実験成績書が真正に作成されたものであることは確認できず、採用することができない。
また、仮に、甲第4号証が真正に作成されたものであるとしても、ごまペースト、ゴマ成分(市販練りゴマ)、ねり胡麻、及び摺り胡麻には、様々な種類があり、その成分もそれぞれ異なるところ、甲第4号証には、検体1?3に用いられたごまペースト並びに検体4に用いられたねり胡麻及び摺り胡麻が何であるのか明記されておらず、これらのごまペースト、ねり胡麻、及び摺り胡麻が、甲1発明の「ごまペースト」、甲2発明の「ゴマ成分(市販練りゴマ)」及び甲3発明の「ねり胡麻」、「摺り胡麻」であると認めることはできないから、甲第4号証から、甲1?3発明が、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanを本件発明1と同量含有しているともいえない。
したがって、甲1?3発明の2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの含有量は不明であるから、本件発明1が甲1?3発明であるとはいえない。
また、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanが焙煎胡麻油中の香気成分として周知(甲第5、6号証)であり、2-methylthiopheneが焼けた香りを呈し、2-((methyldithio)methyl)furanが焦げた風味を呈することが周知(甲第7号証)であって、甲第3号証(【0024】)に、擬似的に焙煎胡麻を再現可能なフレーバーとして、様々なフレーバーがあげれている中に、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanが挙げられているとしても、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanが、酢酸を用いた胡麻含有酸性液状調味料における、長期保管後の胡麻含有の芳香を増強保持することの示唆はなく、また、そのための具体的な量に関する示唆もないから、本件発明1が、甲1?3発明及び甲3、5?7号証記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得たともいえない。

ク 小括
以上のとおりであるから、本件発明1が、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

ケ 本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付した発明であるから、本件発明2?7は、上記ア?クと同様の理由により、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(3)特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号についての判断
ア 本件発明の課題
本件発明の課題は、「「長期保管後においても胡麻特有の芳香に優れている胡麻含有酸性液状調味料を提供すること」(【0006】)である。

イ 本件特許明細書に記載された範囲
本件特許明細書において、当該課題を解決できたことが確認できた胡麻含有酸性液状調味料として、例2?例5(【0037】?【0040】及び【0043】?【0049】)に酢酸0.5%、すり胡麻20%を含有し、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、酢酸のピーク面積に対する、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの各ピーク面積の比が、
(a)2-methylthiophene:0.0001 ?0.01
(b)2-((methyldithio)methyl)furan:0.00001?0.001であるのものが、品温25℃で1ヶ月保存後の胡麻特有の芳香について、対象品(2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanを含有しない胡麻含有酸性液状調味料)に比べて強い又は非常に強いことが記載されている。
また、本件特許明細書には、以下の記載がある。
・「【背景技術】
【0002】
マヨネーズ、ドレッシング等の酸性液状調味料は、様々な風味と酸味によるすっきりとした後味が付与された調味料である。その使用用途は様々で、トマト、レタス、キャベツ、コーン等の生野菜サラダ用、リンゴ、キウイ、オレンジ等のフルーツサラダ用、火鍋等の鍋料理のつけだれ用、茹でたポテト等の温野菜用、豆腐料理や肉料理のたれ用等、あらゆる料理に用いることができる万能調味料である。そして、様々な種類の酸性液状調味料のうち、すっきりとした酸味の酢酸を用い、胡麻特有の芳香を特徴とした胡麻含有酸性液体状調味料が大変人気を博している。
【0003】
しかしながら、酢酸を用いた胡麻含有酸性液状調味料は、作り立ては大変美味しいものの、長期保管後において、胡麻特有の芳香が経時的に消失し易い問題があった。例えば、中国のような大国やさらにはその近隣諸国まで流通させようとした場合、長期に保管されたり、熱帯や寒冷地等の温度が一定でない条件で保管されたりするため、胡麻特有の芳香が劣化し易く、消費者の手元に届く時までその芳香を十分に保持することができなかった。」
・「【0007】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、天然の胡麻には元来含まれない2つの化合物を特定の比率で組合せることを見出した。2つの化合物を特定の比率で含有した胡麻含有酸性液状調味料は、2つの化合物の相乗効果により、長期保管後における胡麻特有の芳香を増強保持する効果が見られることを知見し、本発明を完成するに至った。」
・「【0019】
本発明の胡麻含有酸性液状調味料に用いる胡麻の含有量は、胡麻特有の芳香を有すれば特に限定されないが、2?20%が好ましく、3?20%がより好ましい。前記範囲より少ないと、作り立ての時点から胡麻特有の芳香が不十分な場合がある。前記胡麻の含有量が、20%以下であれば、胡麻特有の芳香を増強保持する効果をより発揮することができる。」
・「【0022】
本発明の胡麻含有酸性液状調味料の酢酸の含有量は、調味料の全量に対して0.1?1%であり、0.2?0.9%が好ましく、0.4?0.8%がより好ましい。酢酸の配合量が前記範囲より少ないと、酢酸と2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanとの相乗効果が得られ難い。前記範囲より多いと、酸味が立ち、胡麻特有の芳香を感じ難い場合がある。」

胡麻の含有量について検討するに、酢酸を用いた胡麻含有酸性液状調味料は、長期保管後に、胡麻特有の芳香が経時的に消失し易いものであるところ(【0003】)、本件発明は、酢酸に対して2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanを特定の比率で含有することで、長期保管後における胡麻特有の芳香を増強保持するものである(【0007】)。
そして、【0019】に胡麻の含有量が2%より少ないと作り立ての時点から胡麻特有の芳香が不十分な場合があると記載されていることを参照すると、本件発明において、胡麻の含有量を2%以上としたことは、胡麻含有酸性液状調味料において、作り立ての時点から胡麻特有の芳香を有する範囲を特定したものであり、例2?例5に、胡麻特有の芳香が胡麻含有量2%のものより強い胡麻含有量20%のものにおいて、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanを特定の比率で含有することで、長期保管後における胡麻特有の芳香を増強保持することが示されていることから、胡麻含有量2%のものにおいても2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanを特定の比率で含有することで、同様の効果が期待できるものといえる。
次に、酢酸の含有量について検討するに、「様々な種類の酸性液状調味料のうち、すっきりとした酸味の酢酸を用い、胡麻特有の芳香を特徴とした胡麻含有酸性液体状調味料が大変人気を博している。」(【0002】)と記載されていることから、酢酸は、そもそも酸味として用いられていると理解される。また、「酢酸の配合量が前記範囲より少ないと、酢酸と2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanとの相乗効果が得られ難い。前記範囲より多いと、酸味が立ち、胡麻特有の芳香を感じ難い場合がある。」(【0022】)との記載を参酌すると、酢酸の含有量を0.1?1%としたことは、胡麻含有酸性液体状調味料の酸味として好適な範囲を特定したものと理解でき、本件発明は、上記のとおり、酢酸に対して2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanを特定の比率で含有することで、長期保管後における胡麻特有の芳香を増強保持するものであるから、酢酸含有量0.1?1%のものにおいても、例2?例5のものと同様に効果を有すると理解される。
したがって、本件特許明細書には、本件発明が、本件発明の課題を解決できることが記載されており、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲内のものである。

ウ 2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの調整手段について
本件特許明細書の【0037】には、「次に、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanをそれぞれ添加混合し、例1?6の6種類の胡麻含有酸性液状調味料(水中油型乳化胡麻含有酸性液状調味料)を調製した。」(【0037】)と記載されており、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanがそれぞれ存在し、添加することで、胡麻含有酸性液体状調味料中の2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanそれぞれの含有量を調整しうることが記載されている。
したがって本件特許明細書は、当業者が本件発明1?7を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

エ したがって、本件発明1?7についての特許は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許に対してされたものではない。

(4)特許法第36条第6項第2号についての判断
請求項7は、本件訂正により、明確となった。


第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸を0.1?1%及び胡麻を2?20%含有する胡麻含有酸性液状調味料において、前記調味料の香気成分を、下記分析条件にて固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、酢酸のピーク面積に対する、2-methylthiophene及び2-((methyldithio)methyl)furanの各ピーク面積の比が、下記の条件(a)、(b):
(a)2-methylthiophene:0.0001 ?0.01
(b)2-((methyldithio)methyl)furan:0.00001?0.001
を満たす、胡麻含有酸性液状調味料。
[分析条件]
<固相マイクロ抽出条件>
ファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー
抽出条件:40℃で15分間予備加温後、40℃で20分間揮発性成分抽出を行う
<ガスクロマトグラフ条件>
カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム,長さ30m,口径0.25mm
温度条件:35℃で5分間保持後、120℃までは5℃/分で昇温、220℃までは15℃/分で昇温し、6分間保持した
キャリアー:Heガス、ガス流量1.0mL/分
<質量分析条件>
装置:四重極型質量分析計
イオン化方式:EI(イオン化電圧70eV)
スキャン質量:m/z 29.0?350.0
・酢酸:定量イオンm/z60
・2-methylthiophene:定量イオンm/z97
・2-((methyldithio)methyl)furan:定量イオンm/z81
【請求項2】
ソルビン酸を含有する、請求項1に記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項3】
酢酸及びソルビン酸を1:0.005?1:1の質量比で含有する、請求項1又は2に記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項4】
前記酢酸の含有量が、前記調味料の全量に対して0.4?0.8%である請求項1?3のいずれかに記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項5】
水中油型乳化液状調味料である、請求項1?4のいずれかに記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項6】
卵黄を含有する、請求項1?5のいずれかに記載の胡麻含有酸性液状調味料。
【請求項7】
前記卵黄がホスフォリパーゼA処理されている卵黄である、請求項6に記載の胡麻含有酸性液状調味料。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-19 
出願番号 特願2014-518152(P2014-518152)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高山 敏充  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 槙原 進
佐々木 正章
登録日 2017-06-30 
登録番号 特許第6165138号(P6165138)
権利者 キユーピー株式会社
発明の名称 胡麻含有酸性液状調味料  
代理人 柏 延之  
代理人 小島 一真  
代理人 砂山 麗  
代理人 永井 浩之  
代理人 中村 行孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 永井 浩之  
代理人 小島 一真  
代理人 砂山 麗  
代理人 柏 延之  
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