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審決分類 審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A61K
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  A61K
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A61K
管理番号 1342988
異議申立番号 異議2017-700581  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-09 
確定日 2018-06-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6060168号発明「レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤からなる前眼部疾患治療剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6060168号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?2、4?5〕、〔6?13〕について訂正することを認める。 特許第6060168号の請求項1、3?12に係る特許を維持する。 特許第6060168号の請求項2、13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6060168号の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成24年10月31日(優先権主張 2011年11月1日、日本国)を国際出願日として特許出願され、平成28年12月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年6月9日に特許異議申立人 本橋 洋子 により特許異議の申立てがされ、平成29年10月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年12月27日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人 本橋洋子 から平成30年3月23日付けで意見書が提出されたものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?訂正事項7のとおりである。

訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「レバミピド又はその塩と、ヒアルロン酸又はその塩との組み合わせを含有する前眼部疾患治療剤」と記載されているのを、「レバミピド又はその塩と、ヒアルロン酸又はその塩との組み合わせを含有する前眼部疾患治療剤であって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である前眼部疾患治療剤」に訂正する。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前眼部疾患が角膜疾患または結膜疾患である請求項1から3のいずれかに記載の前眼部疾患治療剤。」と記載されているのを、「前眼部疾患が角膜疾患または結膜疾患である請求項1または3に記載の前眼部疾患治療剤。」に訂正する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「前眼部疾患がドライアイである請求項1から3のいずれかに記載の前眼部疾患治療剤。」と記載されているのを、「前眼部疾患がドライアイである請求項1または3に記載の前眼部疾患治療剤。」に訂正する。

訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「レバミピド又はその塩と、ヒアルロン酸またはその塩を含有する点眼液」と記載されているのを、「レバミピド又はその塩と、ヒアルロン酸またはその塩を含有する点眼液であって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である点眼液」に訂正する。

訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「更に亜鉛化合物を含む請求項6の点眼液。」と記載されているのを、「レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩、および亜鉛化合物を含有する点眼液。」に訂正する。

訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(2)一群の請求項、訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び新規事項の有無
ア 一群の請求項について
訂正事項1?訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項1?2、4?5について訂正するものであるところ、訂正前の請求項4及び同請求項5は同請求項1?3のいずれかを引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?2、4?5は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正事項1?訂正事項4に係る訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
訂正事項5?訂正事項7に係る訂正はそれぞれ、訂正前の請求項6、7、13について訂正するものであるところ、訂正前の請求項7は同請求項6を引用し、同請求項8は同請求項7を引用し、同請求項9は同請求項6?8のいずれかを引用し、同請求項10は同請求項6?9のいずれかを引用し、同請求項11は同請求項6?10のいずれかを引用し、同請求項13は同請求項6?12のいずれかを引用する関係にあるから、訂正前の請求項6?13は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正事項5?訂正事項7に係る訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。

イ 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び新規事項の有無について
訂正事項1に関連して、明細書の発明の詳細な説明に「本発明は、レバミピド又はその塩と、涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤であり、各成分がお互いにその作用を補完および/または増強するものである。」(段落【0025】)、「前眼部疾患の治療に関しては、レバミピド又はその塩と、涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液を1つの製剤に配合した形で投与、即ち合剤にして投与してもよく、これらを別々の製剤にして投与、即ち併用投与の形態をとってもよい。」(段落【0026】)及び「本発明がレバミピドとヒアルロン酸またはその塩を含有する点眼剤で調製される場合、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度はそれぞれ、1?3%(w/v)および0.05?0.4%(w/v)、好ましくは1.5?2.5%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である。」(段落【0033】)と記載されていることから、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である前眼部疾患治療剤」の発明は明細書に記載されているものと認められる。
訂正事項1は、明細書に記載された事項の範囲内において、訂正前の請求項1における「レバミピド」の濃度及び「ヒアルロン酸又はその塩」の濃度を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであり、訂正事項3及び訂正事項4は、それに伴い、請求項4又は請求項5が引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項5に関連して、明細書の発明の詳細な説明に「本発明は、レバミピド又はその塩と、涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤であり、各成分がお互いにその作用を補完および/または増強するものである。」(段落【0025】)、「前眼部疾患の治療に関しては、レバミピド又はその塩と、涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液を1つの製剤に配合した形で投与、即ち合剤にして投与してもよく、これらを別々の製剤にして投与、即ち併用投与の形態をとってもよい。」(段落【0026】)及び「本発明がレバミピドとヒアルロン酸またはその塩を含有する点眼剤で調製される場合、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度はそれぞれ、1?3%(w/v)および0.05?0.4%(w/v)、好ましくは1.5?2.5%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である。」(段落【0033】)と記載されていることから、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である点眼液」の発明は明細書に記載されているものと認められる。
訂正事項5は、明細書に記載された事項の範囲内において、訂正前の請求項6における「レバミピド」の濃度及び「ヒアルロン酸又はその塩」の濃度を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項6は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項6を引用する形式で記載されていたものを、引用関係を解消したものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項7は、訂正前の請求項13を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?2、4?5〕、〔6?13〕について訂正することを認める。

3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求による訂正後の請求項1?13に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」、……、「本件発明13」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
レバミピド又はその塩と、ヒアルロン酸又はその塩との組み合せを含有する前眼部疾患治療剤であって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である前眼部疾患治療剤。

【請求項2】
(削除)
【請求項3】
ヒアルロン酸又はその塩と併用することを特徴とする、レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤。
【請求項4】
前眼部疾患が角膜疾患または結膜疾患である請求項1または3に記載の前眼部疾患治療剤。
【請求項5】
前眼部疾患がドライアイである請求項1または3に記載の前眼部疾患治療剤。
【請求項6】
レバミピド又はその塩と、ヒアルロン酸またはその塩を含有する点眼液であって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である点眼液。
【請求項7】
レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩、および亜鉛化合物を含有する点眼液。
【請求項8】
亜鉛化合物が塩化亜鉛および/または硫酸亜鉛である請求項7の点眼液。
【請求項9】
更に溶解補助剤、アミノ糖、および緩衝剤を含有する請求項6から8のいずれかに記載の点眼液。
【請求項10】
更に等張化剤を含有する請求項6から9のいずれかに記載の点眼液。
【請求項11】
pHが7?9の範囲にある請求項6から10のいずれかに記載の点眼液。
【請求項12】
亜鉛化合物の濃度が亜鉛に換算して、0.000001%(w/v)?0.0001%(w/v)である請求項10または11に記載の点眼液。
【請求項13】
(削除)

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1?13に係る特許に対して平成29年10月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 本件特許発明1?本件特許発明2、本件特許発明4?本件特許発明6、本件特許発明10?本件特許発明11は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
刊行物1:国際公開2008/074853号

イ 本件特許発明1?本件特許発明2、本件特許発明4?本件特許発明6、本件特許発明10?本件特許発明11、本件特許発明13は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
刊行物1:国際公開2008/074853号
刊行物2:特開平9-301866号公報
刊行物3:特表2011-524854号公報
刊行物4:特開昭60-84225号公報
刊行物5:特開平1-238530号公報

(3)刊行物の記載及び刊行物1に記載された発明
ア 刊行物1:国際公開2008/074853号(特許異議申立人 本橋 洋子 により提出された甲第1号証)の記載及び刊行物1に記載された発明
(なお、刊行物1は英文で記載されているため、当審による邦訳を示す。)

(ア)刊行物1の記載
記載(1-ア)(特許請求の範囲)
「特許請求の範囲
1.(1)レバミピド;
(2)増粘剤;
(3)等張剤;および
(4)溶液のpHが約7.5から約9の間となるような緩衝剤
を含む、薬学的に許容される溶液。
2.(1)レバミピド;
(2)増粘剤;
(3)等張剤;および
(4)溶液の塩化物濃度が0.5mM未満となるような緩衝剤
を含む、薬学的に許容される溶液。
3.レバミピドの濃度が、約0.01%w/vから約2.5w/vの間である、請求項1または2に記載の薬学的に許容される溶液。
4.レバミピドの濃度が、約0.5%w/vから約1.5の間である、請求項1または2に記載の薬学的に許容される溶液。
5.レバミピドの濃度が、約1.0%w/vである、請求項1または2に記載の薬学的に許容される溶液。
6.等張剤が、ポリオールである、請求項1または2に記載の薬学的に許容される溶液。
7.等張剤が、ポリエチレングリコール、グリセロール、またはプロピレングリコールである、請求項1または2に記載の薬学的に許容される溶液。
8.緩衝剤が、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、リン酸水素カルシウム、またはそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の薬学的に許容される溶液。
9.緩衝剤が、ホウ酸ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムから選択される、請求項8に記載の薬学的に許容される溶液。
10.増粘剤が、ポリマー増粘剤である、請求項1または2に記載の薬学的に許容される溶液。
11.ポリマー増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロールナトリウム(Na-CMC)、ポリビニルピロリドン、デキストラン70、ポリビニルアルコール、ポラキサマー、およびそれらの混合物から選択される、請求項10に記載の薬学的に許容される溶液。
12.ポリマー増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、PVA40-88、ポラキサマー407、およびポビドンK17、K25、K29、K30、K32,K64 VAまたはK90から選択される、請求項11に記載の薬学的に許容される溶液。
13.ポリマー増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項11に記載の薬学的に許容される溶液。
14.増粘剤が、低分子量の増粘剤である、請求項1または請求項2に記載の薬学的に許容される溶液。
15.低分子量の増粘剤が、グリセロールおよびヒアルロン酸ナトリウムおよびそれらの混合物から選択される請求項16に記載の薬学的に許容される溶液。
16.溶液のpHが約7.7から約8.3の間である請求項1または請求項2に記載の薬学的に許容される溶液。
17.溶液のpHが約7.7と約8の間である請求項1または請求項2に記載の薬学的に許容される溶液。
18.溶液のpHが約7.8である請求項1または請求項2に記載の薬学的に許容される溶液。
19.(1)レバミピド;
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、またはそれらの混合物から選択される増粘剤;
(3)グリセロール;および
(4)溶液のpHが約7.7から約8.3の間となるような、ホウ酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムから選択される緩衝剤
を含む、薬学的に許容される溶液。
20.溶液の塩化物濃度が0.5mM未満である、請求項19に記載の薬学的に許容される溶液。
21.(1)レバミピド;
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビミルピロリドン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、またはそれらの混合物から選択される増粘剤;
(3)グリセロール;および
(4)溶液の塩化物濃度が0.5mM未満となるような、ホウ酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムから選択される緩衝剤
を含む、薬学的に許容される溶液。
22.溶液のpHが約7.7から約8.3の間である請求項21に記載の薬学的に許容される溶液。
23.さらに防腐剤を含む、請求項1または請求項2に記載の薬学的に許容される溶液。
24.防腐剤が、第四級アンモニウム化合物、セトリミド及びフェニルエチルアルコールから選択される、請求項23に記載の薬学的に許容される溶液。
25.さらに抗酸化剤を含む、請求項1または請求項2に記載の薬学的に許容される溶液。
26.防腐剤が、天然または合成のビタミンE誘導体から選択される、請求項25に記載の薬学的に許容される溶液。
27.眼への局所適用のための請求項1から26のいずれか一項に記載の薬学的に許容される溶液。
28.眼の炎症および/またはドライアイに罹患しているか罹患しやすい患者の治療に使用するための請求項27に記載の薬学的に許容される溶液。
29.患者への経口投与のための、請求項1から26のいずれか一項に記載の薬学的に許容される溶液。
30.消化性潰瘍に罹患しているか罹患しやすい患者の治療における経口用溶液として使用するための、請求項29に記載の薬学的に許容される溶液。
31.ヒトの眼の疾患または障害の治療および/または予防のための医薬の調製における請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物の使用。
32.前記医薬が、ドライアイの治療のために患者の眼の表面に局所投与するのに適合したものである、請求項31に記載の使用。
33.前記医薬が、炎症性疾患の治療のために患者の眼の表面に局所投与するのに適合したものである、請求項31に記載の使用。
34.前記炎症性疾患が、眼瞼炎、慢性眼瞼炎、脂漏性眼瞼炎またはアレルギー性眼瞼炎から選択される、請求項33に記載の使用。」

記載(1-イ)(2頁20?21行)
「特定の実施形態では、本発明の薬学的溶液中のレバミピド濃度は、約0.01%w/v?約2.5%w/vである。」

記載(1-ウ)(3頁1?2行)
「特定の実施態様では、本発明の薬学的溶液中の増粘剤は、約0.01%w/v?約5%w/vである。」

記載(1-エ)(4頁下から8?5行)
「特定の実施態様では、低分子量増粘剤を使用することが望ましい場合がある。好ましい低分子量増粘剤は、眼によく耐容される。特定の非限定的な低分子量増粘剤は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムおよびデキストラン70から選択される。」

記載(1-オ)(10頁下から4?1行)
「本発明に係る均質なレバミピド溶液は、皮膚、例えば、瞼の皮膚、眼の脈絡膜または眼の表面、特に、角膜、強膜、および/または結膜へのレバミピドの局所投与のために有用である。」

記載(1-カ)(16頁下から14行?10行)
「実施例6:実施例1および2の製剤の眼許容性に関する動物モデル
メスのニュージーランド・アルビノ・ウサギ3匹を用いた修正ドレイズ試験を含む動物実験であって、眼球結膜の外側上部に本発明の組成物50マイクロリットルを単回点眼した後の眼の耐容性を見る。反対側の眼は非処置対照とされる。組成物の点眼後、瞼を静かに閉じる。」

(イ)刊行物1に記載された発明
前記記載(1-ア)には、請求項19として
「19.(1)レバミピド;
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、またはそれらの混合物から選択される増粘剤;
(3)グリセロール;および
(4)溶液のpHが約7.7から約8.3の間となるような、ホウ酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムから選択される緩衝剤
を含む、薬学的に許容される溶液。」が記載されるとともに、請求項27として、
「27.眼への局所適用のための請求項1から26のいずれか一項に記載の薬学的に許容される溶液。」が記載され、請求項28として、
「28.眼の炎症および/またはドライアイに罹患しているか罹患しやすい患者の治療に使用するための請求項27に記載の薬学的に許容される溶液。」が記載されている。

したがって、刊行物1には、
「(1)レバミピド;
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、またはそれらの混合物から選択される増粘剤;
(3)グリセロール;および
(4)溶液のpHが約7.7から約8.3の間となるような、ホウ酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムから選択される緩衝剤
を含む、眼の炎症および/またはドライアイに罹患しているか罹患しやすい患者の治療に使用するための、眼への局所適用のための薬学的に許容される溶液。」の発明(以下、「引用発明1」ともいう。)が記載されている。

イ 刊行物2:特開平9-301866号公報(特許異議申立人 本橋 洋子 により提出された甲第2号証)の記載
記載(2-ア)(特許請求の範囲)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式
【化1】
……(中略)……
[式中、Rはハロゲン原子を意味し、該カルボスチリル骨格上の置換位置は3位または4位であり、またカルボスチリル骨格の3位と4位間の結合は1重結合または2重結合を示す]で示されるカルボスチリル誘導体またはその塩を有効成分とする眼疾患治療剤。
……(中略)……
【請求項5】 眼疾患が眼球乾燥症候群(ドライアイ)である請求項1に記載の眼疾患治療剤。
【請求項6】 眼の創傷治療剤である請求項1に記載の眼疾患治療剤。
【請求項7】 眼の創傷が角膜上皮創傷である請求項6に記載の眼疾患治療剤。
【請求項8】 有効成分が2-(4-クロルベンゾイルアミノ)-3-(2-キノロン-4-イル)プロピオン酸またはその塩である請求項1?7項のいずれかに記載の眼疾患治療剤。
【請求項9】 眼に適用する製剤形態である請求項8に記載の眼疾患治療剤。
……(後略)……」

記載(2-イ)(発明の詳細な説明の段落0005)
「【0005】
【発明の実施の形態】本発明の眼疾患治療剤は、前記一般式(I)で示されるカルボスチリル誘導体またはその塩を有効成分とし、一般的な医薬製剤の形態に調製される。……。本発明の眼疾患治療剤は、その適応症からも、眼適用製剤、例えば点眼剤、眼軟膏剤等の形に調製するのが特に好ましい。」

記載(2-ウ)(発明の詳細な説明の段落0010)
「【0010】点眼剤、眼軟膏剤等の眼適用製剤は通常の眼科用製剤担体を用い常法にしたがって製造される。……。また、点眼剤を製造するには、基剤として代表的には滅菌蒸留水を使用できる。さらに、眼適用製剤には必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、等張化剤、pH調整剤等を配合することができる。……。緩衝剤としては、例えばリン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、硼酸、硼酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、イプシロンアミノカプロン酸、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。……。等張化剤としては、例えば食塩、ブドウ糖、D-マンニトール、グリセリン等が挙げられる。溶解剤としてN-メチルグルカミン等を用いても良い。またpH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウム、塩酸等が挙げられる。」

記載(2-エ)(発明の詳細な説明の段落0011)
「【0011】本発明の薬剤に含有されるべきカルボスチリル誘導体(I)またはその塩の量はとくに限定されず広範囲に選択されるが、通常全組成物中1?70重量%、好ましくは5?50重量%である。眼疾患治療剤としてとくに好ましい眼適用製剤の場合は、通常、製剤組成物全量当り約0.005?5重量%、好ましくは0.01?3重量%とするのが良い。……。また、眼適用製剤は従来の眼適用製剤と同様に、例えば、眼軟膏剤の場合には眼に塗布され、また、点眼剤の場合は従来の点眼剤と同様の方法で投与でき、例えば適当な点滴容器から眼に1?2滴滴下するか、または噴霧装置により眼に噴射すれば良い。」

記載(2-オ)(発明の詳細な説明の段落0020?0021)
「【0020】薬理実験1
(1)供試液
本発明の活性成分の具体例である2-(4-クロルベンゾイルアミノ)-3-(2-キノロン-4-イル)プロピオン酸(以下、単に本発明化合物という)を用い、下記のようにして溶解液および懸濁液を調製し、これを試験液とした。
a)3%溶解液
本発明化合物 3.00g
メグルミン(N-メチルグルカミン) 2.64g
濃グリセリン 1.80g
塩酸 適 量
10%塩化ベンザルコニウム 0.10ml
水 全量100mlに調製
pH 8.3?9.3の範囲で調節
……(中略)……
なお、コントロールとして生理食塩水を用いた。
【0021】(2)実験方法および結果
正常家兎(各群3羽6眼)の両眼に、上記供試液を1回50μl/眼の用量で4回/日点眼し、2週間点眼を続けたのち、家兎を屠殺し、下記3項目について測定した。」

記載(2-カ)(発明の詳細な説明の段落0026)
「【0026】薬理実験3 送風ドライアイモデルでの実験
(1)供試液
下記処方にしたがって、本発明の化合物の1%点眼液を調製した。また、下記処方から本発明化合物を除いたものを対照液(コントロール)として用いた。
本発明化合物 0.5g
N-メチルグルカミン 1.32g
濃グリセリン 0.45g
10%塩化ベンザルコニウム 50μl
生理食塩水 全量50mlに調製
pH8.8?9.3の範囲で調節 浸透圧290?300mOsmに調節」

記載(2-キ)(発明の詳細な説明の段落0029?0030)
「【0029】薬理実験4 強制開瞼ドライアイモデルでの実験
(1)実験方法
ウレタン2g/kg(i.p.)麻酔下に瞬膜を切除したNZW種雌性家兎〔1群4羽、8眼(n=8)〕を用い、室温(約25℃)にて開瞼器により眼を強制的に2時間開瞼させた角膜を乾燥させ障害を作製した。この実験動物に対し、前記薬理実験3で用いたと同じ供試液を用い、2.5時間間隔で1日4回、開瞼前2週間から強制開瞼5分前まで点眼させた。
【0030】(2)評価方法と結果
強制開瞼2時間後にメチレンブルーにより下記の操作にしたがって角膜上皮障害部(細胞の欠損部)を染色し、その色素量を測定することにより定量的に評価した(角膜上皮障害を評価)。……。図6から明らかなように本発明の1%点眼液を投与した群では有意に色素量が少なく、強制開瞼による角膜上皮障害が抑制されたことがわかる。」

ウ 刊行物3:特表2011-524854号公報(特許異議申立人 本橋 洋子 により提出された甲第3号証)の記載
記載(3-ア)(特許請求の範囲)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)レバミピド、(2)アミノ糖および(3)緩衝剤を含有し、無機性の陽イオンを含有しない医薬組成物。
……(中略)……
【請求項7】
医薬組成物が点眼用医薬組成物である請求項1?6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
局所的に眼へ投与することにより、ドライアイを治療するための請求項1?7のいずれかに記載の医薬組成物の使用。」

記載(3-イ)(発明の詳細な説明の段落0025)
「【0025】
本発明の医薬組成物には、必要に応じて、涙液と等張にするために、等張化剤を使用することができる。等張化剤としては陽イオンを含有しないものが望ましく、点眼液剤で通常使用されるマンニトール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マルトース、ショ糖、ソルビトール、ブドウ糖等が使用できるが、好ましくは陽イオンを含まないグリセリンおよびショ糖が使用される。これらの等張化剤は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。」

記載(3-ウ)(発明の詳細な説明の段落0003)
「【0003】
さらに、レバミピドは、眼のゴブレット細胞の増加作用、眼の粘液増加作用および涙液増加作用を有し、ドライアイ、すなわち眼球乾操症候群の治療剤として有用であることも既に知られている(WO97/013515)。」

エ 刊行物4:特開昭60-84225号公報(特許異議申立人 本橋 洋子 により提出された甲第4号証)の記載
記載(4-ア)(特許請求の範囲第1項)
「(1)分子量が20万?300万の高分子ヒアルロン酸非毒性属塩を含む点眼剤。」

記載(4-イ)(1頁右下欄13行?2頁左上欄11行)
「本発明は高分子ヒアルロン酸非毒性塩を含む点眼剤である。
後記実験例から明らかなように、高分子ヒアルロン酸非毒性塩は非ニュートン流体のパターンを示し、流動していない場合には高粘性物質としての挙動を示すものである。而して、高分子ヒアルロン酸非毒性塩を点眼した場合、開瞼時は、角膜、結膜表面上に高粘性物質として留まり、瞬目時には速やかに流動し、角膜と結膜の摩擦を少なくして、角膜と結膜を保護する作用を示す。
従って、高分子ヒアルロン酸非毒性塩は、涙液減少症、角膜潰瘍等の眼疾患に際して、瞬目時、角膜との摩擦により角膜表皮の脱落が起こったり、潰瘍の治療が遅延することに対して、角膜と結膜の摩擦を少なくし、角膜を保護する作用を有する、さらに高分子ヒアルロン酸非毒性塩は保水性を有するものであるところから、角膜表面が乾燥するのを防止し、角膜表皮の脱落を阻止し、角膜乾燥症の治療を早める作用を有するものである。」

オ 刊行物5:特開平1-238530号公報(特許異議申立人 本橋 洋子 により提出された甲第5号証)の記載
記載(5-ア)(特許請求の範囲)
「【特許請求の範囲】
(1)ヒアルロン酸又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする角膜上皮層障害症治療剤。
……(中略)……
(3)ヒアルロン酸又はその塩を200?5,000μg/ml含有する水溶液である請求項1記載の角膜上皮層障害症治療剤。」

記載(5-イ)(3頁右下欄1?2行)
「右眼には0.5%のNa-HA、左眼には生理食塩液を点眼した。」

4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 前記3(2)ア(新規性)について
(ア)本件発明1
引用発明1における「(1)レバミピド」は、本件発明1における「レバミピド又はその塩」に相当する。
引用発明1における「(2)…、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、…」は、本件発明1における「ヒアルロン酸又はその塩」に相当する。
引用発明1における「眼の炎症および/またはドライアイに罹患しているか罹患しやすい患者の治療に使用するための、眼への局所適用のための薬学的に許容される溶液」については、刊行物1には、前記記載(1-オ)に示したとおり「本発明に係る均質なレバミピド溶液は、……、特に、角膜、強膜および/または結膜へのレバミピドの局所投与のために有用である。」との記載がある一方、本件明細書の発明の詳細な説明に「本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」(段落0009)との記載があることから、両者の適用疾患は一致する。そうすると、結局、引用発明1における「眼の炎症および/またはドライアイに罹患しているか罹患しやすい患者の治療に使用するための、眼への局所適用のための薬学的に許容される溶液」は、本件発明1における「前眼部疾患治療剤」に相当する。

しかし、本件発明1と引用発明1は、本件発明1では、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」を発明特定事項とするのに対し、引用発明1ではそのような特定がされていない点で、相違する。

したがって、本件発明1は引用発明1ではない。

(イ)本件発明2
本件発明2は、平成29年12月27日付け訂正請求により削除された。

(ウ)本件発明4
本件発明4は請求項1または請求項3を引用しているところ、取消理由通知に記載した取消理由1(新規性)の対象としたものは、そのうち請求項1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項に加えて、「前眼部疾患が角膜疾患または結膜疾患である」ことを発明特定事項としたものである。
上記(ア)に示したとおり本件発明1と引用発明1が相違する以上、本件発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明4のうち請求項1を引用するものと引用発明1も相違する。

したがって、本件発明4のうち請求項1を引用するものは引用発明1ではない。

(エ)本件発明5
本件発明5は請求項1または請求項3を引用しているところ、取消理由通知に記載した取消理由1(新規性)の対象としたものは、そのうち請求項1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項に加えて、「前眼部疾患がドライアイである」ことを発明特定事項としたものである。
上記(ア)に示したとおり本件発明1と引用発明1が相違する以上、本件発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明5のうち請求項1を引用するものと引用発明1も相違する。

したがって、本件発明5のうち請求項1を引用するものは引用発明1ではない。

(オ)本件発明6
引用発明1における「(1)レバミピド」は、本件発明6における「レバミピド又はその塩」に相当する。
引用発明1における「(2)…、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、…」は、本件発明6における「ヒアルロン酸又はその塩」に相当する。
引用発明1における「眼への局所適用のための薬学的に許容される溶液」は、本件発明6における「点眼液」に相当する。

しかし、本件発明6と引用発明1は、本件発明6では、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」を発明特定事項とするのに対し、引用発明1ではそのような特定がされていない点で、相違する。

したがって、本件発明6は引用発明1ではない。

(カ)本件発明10
本件発明10は請求項6から9のいずれかを引用しているところ、取消理由通知に記載した取消理由1(新規性)の対象としたものは、そのうち請求項6を引用するものであって、本件発明6の発明特定事項に加えて、「更に等張化剤を含有する」ことを発明特定事項としたものである。
上記(オ)に示したとおり本件発明6と引用発明1が相違する以上、本件発明6の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明10のうち請求項6を引用するものと引用発明1も相違する。

したがって、本件発明10のうち請求項6を引用するものは引用発明1ではない。

(キ)本件発明11
本件発明11は請求項6から10のいずれかを引用しているところ、取消理由通知に記載した取消理由1(新規性)の対象としたものは、そのうち請求項6または請求項10のうち請求項6を引用するものを引用するものであって、本件発明6または本件発明10の発明特定事項に加えて、「pHが7?9の範囲にある」ことを発明特定事項としたものである。
上記(オ)及び(カ)に示したとおり本件発明6及び本件発明10のうち請求項6を引用するものと引用発明1が相違する以上、本件発明6または本件発明10の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明11のうち請求項6または請求項10のうち請求項6を引用するものを引用するものと引用発明1も相違する。

したがって、本件発明11のうち請求項6または請求項10のうち請求項6を引用するものを引用するものは引用発明1ではない。

イ 前記3(2)イ(進歩性)について
(ア)本件発明1
上記ア(ア)に示したとおり、引用発明1における「(1)レバミピド」、「(2)…、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、…」及び「眼の炎症および/またはドライアイに罹患しているか罹患しやすい患者の治療に使用するための、眼への局所適用のための薬学的に許容される溶液」はそれぞれ、本件発明1における「レバミピド又はその塩」、「ヒアルロン酸又はその塩」及び「前眼部疾患治療剤」に相当するが、本件発明1と引用発明1は、本件発明1では、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」を発明特定事項とするのに対し、引用発明1ではそのような特定がされていない点で、相違する。

刊行物1には、前記記載(1-イ)に示したとおり、レバミピドに関して「特定の実施形態では、本発明の薬学的溶液中のレバミピド濃度は、約0.01%w/v?約2.5%w/vである。」との記載がある。
また、刊行物1には、前記記載(1-ウ)に示したとおり、「特定の実施態様では、本発明の薬学的溶液中の増粘剤は、約0.01%w/v?約5%w/vである。」との記載があり、前記記載(1-エ)に示したとおり、「特定の実施態様では、低分子量増粘剤を使用することが望ましい場合がある。好ましい低分子量増粘剤は、眼によく耐容される。特定の非限定的な低分子量増粘剤は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムおよびデキストラン70から選択される。」との記載がある。
本件発明1におけるレバミピドの濃度範囲は前記記載(1-イ)に示されたレバミピドの濃度範囲と重複し、同ヒアルロン酸またはその塩の濃度範囲は前記記載(1-ウ)に示された増粘剤の濃度範囲内にある。

しかし、刊行物1を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を特定濃度で組み合わせることにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物1を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を特定濃度で組み合わせることにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
また、刊行物1において、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩をともに含有している製剤が実施例などにより具体的に示されているものは、Example5の♯22(刊行物1の15頁表)(レバミピドの濃度1%(w/v)とヒアルロン酸ナトリウムの濃度0.4%(w/v))のみであって、その濃度が本件発明1で規定される濃度範囲を逸脱する上に、その製剤による涙液保持作用も角膜上皮障害改善作用も示されていない。
してみると、上述のとおり、本件発明1におけるレバミピドの濃度範囲は前記記載(1-イ)に示されたレバミピドの濃度範囲と重複し、同ヒアルロン酸またはその塩の濃度範囲は前記記載(1-ウ)に示された増粘剤の濃度範囲内にあるものの、引用発明1に対して、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を、それぞれ濃度1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)で組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
本件発明1により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物1を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

よって、本件発明1は、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2
本件発明2は、平成29年12月27日付け訂正請求により削除された。

(ウ)本件発明4
本件発明4は請求項1または請求項3を引用しているところ、取消理由通知に記載した取消理由2(進歩性)の対象としたものは、そのうち請求項1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項に加えて、「前眼部疾患が角膜疾患または結膜疾患である」ことを発明特定事項としたものである。
上記(ア)に示したとおり本件発明1は引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明4のうち請求項1を引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本件発明4のうち請求項1を引用するものは、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件発明5
本件発明5は請求項1または請求項3を引用しているところ、取消理由通知に記載した取消理由2(進歩性)の対象としたものは、そのうち請求項1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項に加えて、「前眼部疾患がドライアイである」ことを発明特定事項としたものである。
上記(ア)に示したとおり本件発明1は引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明5のうち請求項1を引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本件発明5のうち請求項1を引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ)本件発明6
上記ア(オ)に示したとおり、引用発明1における「(1)レバミピド」、「(2)…、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、…」及び「眼への局所適用のための薬学的に許容される溶液」はそれぞれ、本件発明6における「レバミピド又はその塩」、「ヒアルロン酸又はその塩」及び「点眼液」に相当するが、本件発明6と引用発明1は、本件発明6では、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」を発明特定事項とするのに対し、引用発明1ではそのような特定がされていない点で、相違する。

刊行物1には、前記記載(1-イ)に示したとおり、レバミピドに関して「特定の実施形態では、本発明の薬学的溶液中のレバミピド濃度は、約0.01%w/v?約2.5%w/vである。」との記載がある。
また、刊行物1には、前記記載(1-ウ)に示したとおり、「特定の実施態様では、本発明の薬学的溶液中の増粘剤は、約0.01%w/v?約5%w/vである。」との記載があり、前記記載(1-エ)に示したとおり、「特定の実施態様では、低分子量増粘剤を使用することが望ましい場合がある。好ましい低分子量増粘剤は、眼によく耐容される。特定の非限定的な低分子量増粘剤は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムおよびデキストラン70から選択される。」との記載がある。
本件発明6におけるレバミピドの濃度範囲は前記記載(1-イ)に示されたレバミピドの濃度範囲と重複し、同ヒアルロン酸またはその塩の濃度範囲は前記記載(1-ウ)に示された増粘剤の濃度範囲内にある。

しかし、刊行物1を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を特定濃度で組み合わせることにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物1を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を特定濃度で組み合わせることにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
また、刊行物1において、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩をともに含有している製剤が実施例などにより具体的に示されているものは、Example5の♯22(刊行物1の15頁表)(レバミピドの濃度1%(w/v)とヒアルロン酸ナトリウムの濃度0.4%(w/v))のみであって、その濃度が本件発明6で規定される濃度範囲を逸脱する上に、その製剤による涙液保持作用も角膜上皮障害改善作用も示されていない。
してみると、上述のとおり、本件発明6におけるレバミピドの濃度範囲は前記記載(1-イ)に示されたレバミピドの濃度範囲と重複し、同ヒアルロン酸またはその塩の濃度範囲は前記記載(1-ウ)に示された増粘剤の濃度範囲内にあるものの、引用発明1に対して、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を、それぞれ濃度1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)で組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
本件発明6により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物1を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

よって、本件発明6は、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(カ)本件発明10
本件発明10は請求項6から9のいずれかを引用しているところ、取消理由通知に記載した取消理由2(進歩性)の対象としたものは、そのうち請求項6を引用するものであって、本件発明6の発明特定事項に加えて、「更に等張化剤を含有する」ことを発明特定事項としたものである。
上記(オ)に示したとおり本件発明6は引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明6の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明10のうち請求項6を引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本件発明10のうち請求項6を引用するものは、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(キ)本件発明11
本件発明11は請求項6から10のいずれかを引用しているところ、取消理由通知に記載した取消理由2(進歩性)の対象としたものは、そのうち請求項6または請求項10のうち請求項6を引用するものであって、本件発明6または本件発明10の発明特定事項に加えて、「pHが7?9の範囲にある」ことを発明特定事項としたものである。
上記(オ)及び(カ)に示したとおり本件発明6及び本件発明10のうち請求項6を引用するものは引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明6または本件発明10の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明11のうち請求項6または請求項10のうち請求項6を引用するものを引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本件発明11のうち請求項6または請求項10のうち請求項6を引用するものを引用するものは、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ク)本件発明13
本件発明13は、平成29年12月27日付け訂正請求により削除された。

(2)特許異議申立人の提出した平成30年3月23日付け意見書における意見について
ア 取消理由通知に記載した取消理由2(進歩性)
(ア)本件発明6
特許異議申立人は、本件発明6について、概略、以下のように述べて、本件発明6に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。

(特許異議申立人の意見)
ヒアルロン酸の配合目的の違いについては、本件請求項6には配合目的を特定する記載はないから、本件発明6と引用発明1との相違点にはならない。なお、ヒアルロン酸が、保水性を有し、角膜表面が乾燥するのを防止する作用があることは、刊行物4にも記載されているように公知の性質であるので、「増粘剤として配合されるヒアルロン酸」であっても、涙液保持作用をも有していることは自明である。
「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
効果についても、特許権者は刊行物1に対して、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」とした本件発明6が顕著な効果を奏することを何ら主張していない。実施例において試験されているのは、「2%レバミピド+0.1%ヒアルロン酸」の1つの組合せ濃度だけである。本件明細書の段落0033の記載によれば、ヒアルロン酸またはその塩の濃度、0.4%(w/v)は、元々本件発明の範囲内のものであり、レバミピド1%(w/v)、ヒアルロン酸ナトリウム0.4%(w/v)を含有する刊行物1のExample5の♯11の点眼液は、本件明細書に記載の効果を奏するものと推認され、本件明細書の記載に基づけば、本件発明6が、刊行物1に記載された発明に対して顕著な効果を有さないことは明らかである。
したがって、本件発明6は、刊行物1に記載された発明並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いてに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(当審の判断)
刊行物1には、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を、それぞれ特定濃度範囲で組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは記載されておらず、刊行物1における前記記載(1-イ)のレバミピド濃度範囲並びに前記記載(1-ウ)の増粘剤の濃度範囲及び前記記載(1-エ)の増粘剤の種類についての記載から、当業者が、レバミピド及びヒアルロン酸またはその塩をそれぞれ本件発明6の濃度範囲で組み合わせて点眼液に含有させることを、容易に想到し得たとは認められない。
また、刊行物1のExample5の♯11は、濃度1%(w/v)のレバミピドと濃度0.4%(w/v)のヒアルロン酸ナトリウムをともに含有する点眼液であって、本件発明6に属さないものである上に、その点眼液による涙液保持作用も角膜上皮障害改善作用も刊行物1には記載されておらず、技術常識から明らかであるとも認められない。
一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を、それぞれ濃度1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)で組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
したがって、特許異議申立人の意見は受け入れられず、本件発明6は、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明1
特許異議申立人は、本件発明1について、概略、以下のように述べて、本件発明1に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。

(特許異議申立人の意見)
本件請求項1と本件請求項6は、請求項6の末尾が「点眼液」であるのに対し、請求項1の末尾が「前眼部疾患治療剤」であること以外は、発明特定事項が全く同じである。
刊行物1に記載された溶液は「前眼部疾患治療剤」に相当するから、本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比した場合、本件発明6と刊行物1に記載された発明とを対比した場合における相違点の他には、新たな相違点は存在せず、本件発明6について述べたのと同じ理由で、本件発明1もまた、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(当審の判断)
刊行物1には、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を、それぞれ特定濃度範囲で組み合わせて前眼部疾患治療剤に含有させることにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは記載されておらず、刊行物1における前記記載(1-イ)のレバミピド濃度範囲並びに前記記載(1-ウ)の増粘剤の濃度範囲及び前記記載(1-エ)の増粘剤の種類についての記載から、当業者が、レバミピド及びヒアルロン酸またはその塩をそれぞれ本件発明1の濃度範囲で組み合わせて前眼部疾患治療剤に含有させることを、容易に想到し得たとは認められない。
また、刊行物1のExample5の♯11は、濃度1%(w/v)のレバミピドと濃度0.4%(w/v)のヒアルロン酸ナトリウムをともに含有する点眼液であって、本件発明1に属さないものである上に、その点眼液による涙液保持作用も角膜上皮障害改善作用も刊行物1には記載されておらず、技術常識から明らかであるとも認められない。
一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を、それぞれ濃度1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)で組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
したがって、特許異議申立人の意見は受け入れられず、本件発明1は、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)本件発明4
特許異議申立人は、本件発明4について、概略、以下のように述べて、本件発明4に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。

(特許異議申立人の意見)
本件発明4は、本件発明1における前眼部疾患が角膜疾患又は結膜疾患であることを特定した発明である。しかし、刊行物1には、角膜疾患および結膜疾患を適用疾患とすることも記載されている。
したがって、本件発明4は、本件発明1と同様に、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(当審の判断)
本件発明4は請求項1または請求項3を引用しているところ、特許異議申立人の意見の対象は、そのうちの請求項1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項に加えて、「前眼部疾患が角膜疾患または結膜疾患である」ことを発明特定事項としたものである。
上記(1)イ(ア)及び(2)ア(イ)に示したとおり本件発明1は引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明4のうち請求項1を引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、特許異議申立人の意見は受け入れられず、本件発明4は、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)本件発明5
特許異議申立人は、本件発明5について、概略、以下のように述べて、本件発明5に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。

(特許異議申立人の意見)
本件発明5は、本件発明1における前眼部疾患がドライアイであることを特定した発明である。しかし、刊行物1には、ドライアイを適用疾患とすることも記載されている。
したがって、本件発明5は、本件発明1と同様に、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(当審の判断)
本件発明5は請求項1または請求項3を引用しているところ、特許異議申立人の意見の対象は、そのうちの請求項1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項に加えて、「前眼部疾患がドライアイである」ことを発明特定事項としたものである。
上記(1)イ(ア)及び(2)ア(イ)に示したとおり本件発明1は引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明5のうち請求項1を引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、特許異議申立人の意見は受け入れられず、本件発明5は、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(オ)本件発明10
特許異議申立人は、本件発明10について、概略、以下のように述べて、本件発明10に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。

(特許異議申立人の意見)
本件発明10のうち、請求項6を引用するものは、本件発明6の発明特定事項に加えて、「更に等張化剤を含有する」ことを発明特定事項としたものである。しかし、刊行物1には、等張化剤を含むことが記載されていることから、本件発明10も、本件発明6と同様に、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(当審の判断)
本件発明10は請求項6から9のいずれかを引用しているところ、特許異議申立人の意見の対象は、そのうちの請求項6を引用するものであって、本件発明6の発明特定事項に加えて、「更に等張化剤を含有する」ことを発明特定事項としたものである。
上記(1)イ(オ)及び(2)ア(ア)に示したとおり本件発明6は引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明6の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明10のうち請求項6を引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、特許異議申立人の意見は受け入れられず、本件発明10は、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(カ)本件発明11
特許異議申立人は、本件発明11について、概略、以下のように述べて、本件発明11に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。

(特許異議申立人の意見)
本件発明11のうち、請求項6又は請求項10のうち請求項6を引用するものは、本件発明6又は本件発明10の発明特定事項に加えて、「pHが7?9の範囲にある」ことを発明特定事項としたものである。しかし、刊行物1には、溶液のpHが約7.7から約8.3の間になるように調整することが記載されているから、本件発明11も、本件発明6や本件発明10と同様に、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(当審の判断)
本件発明11は請求項6から10のいずれかを引用しているところ、特許異議申立人の意見の対象は、そのうちの請求項6又は請求項10のうち請求項6を引用するものを引用するものであって、本件発明6または本件発明10の発明特定事項に加えて、「pHが7?9の範囲にある」ことを発明特定事項としたものである。
上記(1)イ(オ)及び(カ)並びに(2)ア(ア)及び(オ)に示したとおり本件発明6及び本件発明10のうち請求項6を引用するものは引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明6の発明特定事項にさらなる発明特定事項を加えたものである、本件発明11のうち請求項6または請求項10のうち請求項6を引用するものを引用するものもまた引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、特許異議申立人の意見は受け入れられず、本件発明11のうち請求項6または請求項10のうち請求項6を引用するものを引用するものは、引用発明1並びに異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
ア 刊行物1を主引用例とする本件発明3に対する新規性及び進歩性についての特許異議申立理由
特許異議申立人は、特許異議申立書及び平成30年3月23日付け意見書において、概略、以下のように述べて、本件発明3に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。
(特許異議申立人の主張及び意見)
本件発明3は「ヒアルロン酸又はその塩と併用することを特徴とする、レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤。」であるところ、「ヒアルロン酸又はその塩」の併用の態様を特定していない。本件明細書には「・・・別々の製剤にして投与、即ち併用投与」(段落0026)という説明も存在するが、請求項3は「ヒアルロン酸又はその塩を含有する製剤」を併用投与すると記載されているわけではない。したがって、本件発明3は、「ヒアルロン酸またはその塩」を「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤」に配合することによって、併用する場合と、「ヒアルロン酸又はその塩」を「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤」には配合せずに、併用する場合の両方を、実施態様とするものである。
「ヒアルロン酸又はその塩」を「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤」に配合することによって、併用する態様に関しては、本件発明3は引用発明1であり、引用発明1及び刊行物1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。(特許異議申立書21頁10行?26行、同24頁9?23行、平成30年3月23日付け意見書5頁4行?6頁9行)

(当審の判断)
本件発明3は、平成29年12月27日付け訂正請求書による訂正はされず、「ヒアルロン酸又はその塩と併用することを特徴とする、レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤。」とされる。
ここで、本件明細書の発明の詳細な説明においては、「前眼部疾患の治療に関しては、レバミピド又はその塩と、涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液を1つの製剤に配合した形で投与、即ち合剤にして投与してもよく、これらを別々の製剤にして投与、即ち併用投与の形態をとってもよい。」(段落【0026】)及び「これらの点眼量はレバミピド又はその塩と、涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液とを併用投与するときに適用されるが、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液とを1つの製剤に配合した形態で投与する場合には、……」(段落【0032】)との記載があって、「併用」を「合剤」の態様とは区別して記載していると認められる上に、薬理試験1?薬理試験3も「(投与方法)……。併用投与は2%レバミピドの点眼から5分以上の点眼間隔を空けて0.1%ヒアルロン酸ナトリウムを点眼した。」(段落【0046】)、「(投与方法)……、レバミピド+ヒアルロン酸ナトリウム合剤投与群(4回/日)のマウスに、各薬物点眼剤を片眼に対して2μL連日点眼投与した。」(段落【0056】)及び「(投与方法)単回投与試験では、……。併用投与群では2%レバミピドを点眼して5分後に0.1%ヒアルロン酸ナトリウムを点眼した。連続投与試験では、……。併用投与群は2%レバミピド点眼から5分以上間隔を空けて0.1%ヒアルロン酸ナトリウムを点眼した。」(段落【0066】)と記載されるように、「併用」による投与を「合剤」による投与とは区別していると認められる。
したがって、本件発明3は、「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤。」であって「ヒアルロン酸又はその塩と併用することを特徴とする」ものであり、「ヒアルロン酸又はその塩」を「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤」に配合した前眼部疾患治療剤を包含するものとはいえない。
以上のとおり、本件発明3に「ヒアルロン酸又はその塩」を「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤」に配合する態様が包含されることを前提にした特許異議申立人の主張及び意見は受け入れられず、本件発明3は引用発明1であるとはいえず、引用発明1及び刊行物1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 刊行物2を主引用例とする本件特許発明1?13に対する進歩性についての特許異議申立理由
特許異議申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のように述べて、本件特許発明1?13に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。
(特許異議申立人の主張)
刊行物2には、上記記載事項(2-ア)?記載事項(2-キ)から、「レバミピドまたはその塩を有効成分とする、眼疾患が、眼球乾燥症候群(ドライアイ)または角膜上皮創傷である眼疾患治療剤」の発明が記載されているといえる。
刊行物4および刊行物5に記載されるように、ヒアルロン酸またはその塩を、角膜乾燥症および角膜上皮障害症を治療するための有効成分として用いることは公知である。
そうすると、角膜乾燥症および角膜上皮障害症の治療効果を高めるために、「レバミピド」と「ヒアルロン酸又はその塩」を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、レバミピドの濃度について、刊行物2には、眼疾患治療剤としてとくに好ましい眼適用製剤の場合は、通常、製剤組成物全量当り約0.005?5重量%、好ましくは0.01?3重量%とするのが良い、と記載されている(段落0011)。このほか、刊行物1には、約0.01?2.5%、0.01?3%と記載され(請求項3、9頁20行)、処方例11のレバミピドの濃度は1%であることが記載され、また、刊行物3には、0.5から3%(w/v)と記載されている(段落0033)。
また、ヒアルロン酸の濃度について、刊行物4には、通常0.01?10mg/ml程度と記載され(2頁右上欄12?14行)、刊行物5には、200?5000μg/ml含有することが記載されており(請求項3)、これらはそれぞれ、0.001?1%(w/v)、0.02?0.5%(w/v)に換算される。
したがって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度をそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)とすることは当業者が容易になし得るものである。
また、亜鉛化合物は種々の目的で点眼剤に配合されること、亜鉛化合物を医薬品に使用する場合に、硫酸亜鉛や塩化亜鉛を用いることは、当業界における周知の技術である。
効果についても、本件明細書に記載された試験結果は、併用による治療効果の増強が確認できないか、相加作用程度のものを示すにとどまり、格別顕著な効果を奏するとは到底いえない。
以上のとおり、本件特許発明1?6、9?11および13は、刊行物2に記載された発明と、刊行物4もしくは刊行物5に記載された事項に基いて、または、さらに、刊行物1および刊行物3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明7?13は、刊行物2に記載された発明と、刊行物4もしくは刊行物5及び周知技術に基いて、または、さらに、刊行物1および刊行物3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(特許異議申立書27頁8行?49頁22行)

(当審の判断)
・本件発明2及び本件発明13について
本件発明2及び本件発明13は、平成29年12月27日付け訂正請求書による訂正により削除された。

・本件発明1及び請求項1を直接または間接に引用する本件発明4?5、並びに本件発明6及び請求項6を直接または間接に引用する本件発明9?12について
刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を特定濃度で組み合わせることにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を特定濃度で組み合わせることにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
してみると、刊行物2に記載された発明が「レバミピドまたはその塩を有効成分とする、眼疾患が、眼球乾燥症候群(ドライアイ)または角膜上皮創傷である眼疾患治療剤」の発明であるとしても、その発明に対して、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を、それぞれ濃度1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)で組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
本件発明1及び請求項1を直接または間接に引用する本件発明4?5、並びに本件発明6及び請求項6を直接または間接に引用する本件発明9?12により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

したがって、特許異議申立人の主張は受け入れられず、本件発明1及び請求項1を直接または間接に引用する本件発明4?5、並びに本件発明6及び請求項6を直接または間接に引用する本件発明9?12は、刊行物2に記載された発明、刊行物1、3?5の記載事項、並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

・本件発明3及び請求項3を直接又は間接に引用する本件発明4?5について
刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピドまたはその塩を含有する前眼部疾患治療剤を、ヒアルロン酸又はその塩と併用することにより、涙液保持作用を増大させることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことも記載されていない。また、刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピドまたはその塩を含有する前眼部疾患治療剤を、ヒアルロン酸又はその塩と併用することにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
してみると、刊行物2に記載された発明が「レバミピドまたはその塩を有効成分とする、眼疾患が、眼球乾燥症候群(ドライアイ)または角膜上皮創傷である眼疾患治療剤」の発明であるとしても、その発明に対して、「ヒアルロン酸またはその塩と併用することを特徴とする」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0041】?【0050】及び図1?図2に記された薬理試験1の結果、並びに同段落【0061】?【0070】及び図5?図6に記された薬理試験3の結果によって、レバミピドまたはその塩を含有する前眼部疾患治療剤を、ヒアルロン酸又はその塩と併用することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
本件発明3及び請求項3を直接又は間接に引用する本件発明4?5により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

したがって、特許異議申立人の主張は受け入れられず、本件発明3及び請求項3を直接又は間接に引用する本件発明4?5は、刊行物2に記載された発明、刊行物1、3?5の記載事項、並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

・本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12について
刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
してみると、刊行物2に記載された発明が「レバミピドまたはその塩を有効成分とする、眼疾患が、眼球乾燥症候群(ドライアイ)または角膜上皮創傷である眼疾患治療剤」の発明であるとしても、その発明に対して、さらに「ヒアルロン酸またはその塩、および亜鉛化合物を含有する」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されており、技術常識を参酌すると、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて含有させた点眼液の投与により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されていると認められる。
本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物2及び刊行物1、3?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

したがって、特許異議申立人の主張は受け入れられず、本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12は、刊行物2に記載された発明、刊行物1、3?5の記載事項、並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 刊行物3を主引用例とする本件特許発明1?13に対する進歩性についての特許異議申立理由
(特許異議申立人の主張)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のように述べて、本件特許発明1?13に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。
刊行物3には、上記記載事項(3-ア)?記載事項(3-ウ)から、「レバミピドを有効成分として含有する、ドライアイを治療するための点眼用組成物」の発明が記載されているといえる。
刊行物4および刊行物5に記載されるように、ヒアルロン酸またはその塩を、角膜乾燥症および角膜上皮障害症を治療するための有効成分として用いることは公知である。
そうすると、角膜乾燥症および角膜上皮障害症の治療効果を高めるために、「レバミピド」と「ヒアルロン酸又はその塩」を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、レバミピドの濃度について、刊行物2には、眼疾患治療剤としてとくに好ましい眼適用製剤の場合は、通常、製剤組成物全量当り約0.005?5重量%、好ましくは0.01?3重量%とするのが良い、と記載されている(段落0011)。このほか、刊行物1には、約0.01?2.5%、0.01?3%と記載され(請求項3、9頁20行)、処方例11のレバミピドの濃度は1%であることが記載され、また、刊行物3には、0.5から3%(w/v)と記載されている(段落0033)。
また、ヒアルロン酸の濃度について、刊行物4には、通常0.01?10mg/ml程度と記載され(2頁右上欄12?14行)、刊行物5には、200?5000μg/ml含有することが記載されており(請求項3)、これらはそれぞれ、0.001?1%(w/v)、0.02?0.5%(w/v)に換算される。
したがって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度をそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)とすることは当業者が容易になし得るものである。
また、亜鉛化合物は種々の目的で点眼剤に配合されること、亜鉛化合物を医薬品に使用する場合に、硫酸亜鉛や塩化亜鉛を用いることは、当業界における周知の技術である。
効果についても、本件明細書に記載された試験結果は、併用による治療効果の増強が確認できないか、相加作用程度のものを示すにとどまり、格別顕著な効果を奏するとは到底いえない。
以上のとおり、本件特許発明1?6、9?11および13は、刊行物3に記載された発明と、刊行物4もしくは刊行物5に記載された事項に基いて、または、さらに、刊行物1および刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明7?13は、刊行物3に記載された発明と、刊行物4もしくは刊行物5及び周知技術に基いて、または、さらに、刊行物1および刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(特許異議申立書49頁23行?63頁22行)

(特許異議申立人の意見)
特許異議申立人は、平成30年3月23日付け意見書において、概略、以下のように述べて、本件発明3に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。
本件発明3は「ヒアルロン酸又はその塩と併用することを特徴とする、レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤。」であるところ、「ヒアルロン酸又はその塩」の併用の態様を特定していない。本件明細書には「・・・別々の製剤にして投与、即ち併用投与」(段落0026)という説明も存在するが、請求項3は「ヒアルロン酸又はその塩を含有する製剤」を併用投与すると記載されているわけではない。したがって、本件発明3は、「ヒアルロン酸またはその塩」を「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤」に配合することによって、併用する場合と、「ヒアルロン酸又はその塩」を「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤」には配合せずに、併用する場合の両方を、実施態様とするものである。
「ヒアルロン酸又はその塩」を「レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤」には配合せずに、併用する場合について考えてみると、刊行物3(段落0003)及び刊行物2(段落0003、段落0004)に記載されるように、レバミピドは、「眼のゴブレット細胞を増加することによってムチンの産生量を増加し、ドライアイにみられるムチンの減少を防ぐ」作用、「眼の粘液量を増加して水層を保持する」作用、及び「涙液量の増加作用」によって、ドライアイの治療に有効であることが、本件優先日当時、公知であった。また、刊行物4(1頁右欄下から3行?2頁左上欄11行)に記載されるように、ヒアルロン酸塩は、「角膜と結膜の摩擦を少なくして、角膜と結膜を保護する作用」と「保水作用」を有し、角膜表面の乾燥を防止し、角膜表皮の脱落を阻止することで、ドライアイの治療に寄与することが、本件優先日当時公知であった。
してみれば、レバミピドとヒアルロン酸塩を併用すれば、レバミピドによる、眼の粘液及び涙液を積極的に増加させる作用に基づく効果と、ヒアルロン酸塩による角膜や結膜の保護作用に基づく効果が発揮されるであろうことは、当業者が通常期待し得るものであり、ドライアイの治療に際して、これらの薬剤を併用することは当業者が極めて容易に想到できることである。
効果についても、本件明細書に記載された試験では、レバミピド、ヒアルロン酸ナトリウムそれぞれについて、1種類の製剤を用いた試験しか行われておらず、併用投与群の改善効果が、各単独投与群の改善効果の相加作用を上回ることは全く示されていない。
したがって、本件発明3は、刊行物3及び刊行物4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。(平成30年3月23日付け意見書6頁10行?12頁最終行)

(当審の判断)
・本件発明2及び本件発明13について
本件発明2及び本件発明13は、平成29年12月27日付け訂正請求書による訂正により削除された。

・本件発明1及び請求項1を直接または間接に引用する本件発明4?5、並びに本件発明6及び請求項6を直接または間接に引用する本件発明9?12について
刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を特定濃度で組み合わせて前眼部疾患治療剤または点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を特定濃度で組み合わせることにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
してみると、刊行物3に記載された発明が「レバミピドを有効成分として含有する、ドライアイを治療するための点眼用組成物」の発明であるとしても、その発明に対して、「レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を、それぞれ濃度1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)で組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
本件発明1及び請求項1を直接または間接に引用する本件発明4?5、並びに本件発明6及び請求項6を直接または間接に引用する本件発明9?12により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

したがって、特許異議申立人の主張は受け入れられず、本件発明1及び請求項1を直接または間接に引用する本件発明4?5、並びに本件発明6及び請求項6を直接または間接に引用する本件発明9?12は、刊行物3に記載された発明、刊行物1?2、4?5の記載事項、並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

・本件発明3及び請求項3を直接又は間接に引用する本件発明4?5について
刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピドまたはその塩を含有する前眼部疾患治療剤を、ヒアルロン酸又はその塩と併用することにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピドまたはその塩を含有する前眼部疾患治療剤を、ヒアルロン酸又はその塩と併用することにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
してみると、刊行物3に記載された発明が「レバミピドを有効成分として含有する、ドライアイを治療するための点眼用組成物」の発明であるとしても、その発明に対して、「ヒアルロン酸またはその塩と併用することを特徴とする」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0041】?【0050】及び図1?図2に記された薬理試験1の結果、並びに同段落【0061】?【0070】及び図5?図6に記された薬理試験3の結果によって、レバミピドまたはその塩を含有する前眼部疾患治療剤を、ヒアルロン酸又はその塩と併用することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
本件発明3及び請求項3を直接又は間接に引用する本件発明4?5により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

したがって、特許異議申立人の主張及び意見は受け入れられず、本件発明3及び請求項3を直接又は間接に引用する本件発明4?5は、刊行物3に記載された発明、刊行物1?2、4?5の記載事項、並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

・本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12について
刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
してみると、刊行物3に記載された発明が「レバミピドを有効成分として含有する、ドライアイを治療するための点眼用組成物」の発明であるとしても、その発明に対して、さらに「ヒアルロン酸またはその塩、および亜鉛化合物を含有する」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが示されており、技術常識を参酌すると、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて含有させた点眼液の投与により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されていると認められる。
本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物3及び刊行物1?2、4?5を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

したがって、特許異議申立人の主張は受け入れられず、本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12は、引用発明3、刊行物1?2及び刊行物3?5の記載事項、並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 刊行物4を主引用例とする本件特許発明7?13に対する進歩性についての特許異議申立理由
(特許異議申立人の主張)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のように述べて、本件特許発明7?13に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。
刊行物4には、上記記載事項(4-ア)?記載事項(4-イ)から、「高分子ヒアルロン酸非毒性塩を含む点眼剤」の発明が記載されているといえる。
刊行物6には、「ヒアルロン酸及び/又はその塩と、亜鉛化合物とを含有することを特徴とするヒアルロン酸及び/又はその塩の水溶液に安定化組成物。」(請求項1)の発明が記載されており、この発明は、「ヒアルロン酸は保湿性、粘弾性、潤滑性等の特性や創傷治癒作用等の薬理作用を有することから、化粧品としての他に眼科手術補助剤、変形性関節症の治療薬、角膜上皮障害治療用の点眼剤等の医薬品として市販されている。」(段落0002)が、ヒアルロン酸及び/又はその塩の水溶液には安定性の課題があり、分子量低下を抑制できる組成物の提供が求められていたところ、「ヒアルロン酸及び/又はその塩と亜鉛化合物とを共存させることにより分子量低下が抑制できることを見出し、本発明を完成させたものである。」(段落0003?0005)ことが記載されている。
そうすると、同じくヒアルロン酸塩の水溶液の組成物である刊行物4に記載された発明においても、ヒアルロン酸塩の安定性の課題が存在することは自明であり、刊行物4に記載された発明において、ヒアルロン酸塩の安定性を高めるために、亜鉛化合物を配合することは、刊行物6の記載に基いて、当業者が容易になし得るものである。
また、刊行物4に記載された発明における、高分子ヒアルロン酸非毒性塩による効果を高めるために、刊行物1?3に記載されるように、眼の炎症やドライアイの治療のための有効成分として公知の成分であるレバミピドを組み合わせることは、当業者が容易に相当できるものである。
また、ヒアルロン酸の濃度について、刊行物4には、通常0.01?10mg/ml程度と記載され(2頁右上欄12?14行)、刊行物5には、200?5000μg/ml含有することが記載されており(請求項3)、これらはそれぞれ、0.001?1%(w/v)、0.02?0.5%(w/v)に換算される。
また、レバミピドの濃度について、刊行物2には、眼疾患治療剤としてとくに好ましい眼適用製剤の場合は、通常、製剤組成物全量当り約0.005?5重量%、好ましくは0.01?3重量%とするのが良い、と記載されている(段落0011)。このほか、刊行物1には、約0.01?2.5%、0.01?3%と記載され(請求項3、9頁20行)、処方例11のレバミピドの濃度は1%であることが記載され、また、刊行物3には、0.5から3%(w/v)と記載されている(段落0033)。
したがって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度をそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)とすることは当業者が容易になし得るものである。
また、効果についても、予想外の効果を奏したものでもない。
以上のとおり、本件特許発明7?12は、刊行物4に記載された発明と、刊行物6および刊行物1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明13は、刊行物4に記載された発明と、刊行物6、刊行物1?3および刊行物5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(特許異議申立書63頁23行?69頁17行)

(当審の判断)
・本件発明13について
本件発明13は、平成29年12月27日付け訂正請求書による訂正により削除された。

・本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12について
刊行物4及び刊行物1?3、5?6を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物4及び刊行物6、1?3を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
してみると、刊行物4に記載された発明が「高分子ヒアルロン酸非毒性塩を含む点眼剤」の発明であるとしても、その発明に対して、さらに「レバミピド又はその塩、…および亜鉛化合物を含有する」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることを示すものと認められ、技術常識を参酌すると、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて含有させた点眼液の投与により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物4及び刊行物1?3、5?6を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

したがって、特許異議申立人の主張は受け入れられず、本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12は、刊行物4に記載された発明、刊行物1?3、5?6の記載事項、並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 刊行物5を主引用例とする本件特許発明7?13に対する進歩性についての特許異議申立理由
(特許異議申立人の主張)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のように述べて、本件特許発明7?13に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張する。
刊行物5には、上記記載事項(5-ア)?記載事項(5-イ)から、「ヒアルロン酸又はその塩を有効成分として含有する点眼剤」の発明が記載されているといえる。
本件特許発明7?13と刊行物4に記載された発明との対比について述べたのと同様の理由により、本件特許発明7?13は、刊行物5に記載された発明、刊行物6、刊行物1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(特許異議申立書69頁18行?73頁3行)

(当審の判断)
・本件発明13について
本件発明13は、平成29年12月27日付け訂正請求書による訂正により削除された。

・本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12について
刊行物5及び刊行物1?3、6を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれにも、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させることができることも角膜上皮障害改善作用をもたらすことができることも記載されていない。また、刊行物5及び刊行物6、1?3を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて点眼液に含有させることにより、涙液保持作用を増大させること及び角膜上皮障害改善作用をもたらすことが技術常識であるといえる根拠を見出すこともできない。
してみると、刊行物5に記載された発明が、「ヒアルロン酸又はその塩を有効成分として含有する点眼剤」の発明であるとしても、その発明に対して、さらに「レバミピド又はその塩、…および亜鉛化合物を含有する」ものとすることは、異議申立人の提出した各甲号証の記載事項及び技術常識に照らしても、当業者が容易に想到し得ないことと認められる。

一方、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】に「本発明者らは、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤または人工涙液との組み合わせによるドライアイを初めとした前眼部疾患治療剤としての開発の可能性を鋭意研究した結果、これらを組み合わせると角結膜表面での涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用が増強されることを見出し、本発明を完成させた。……、レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤とを組み合わせることによって、顕著な角結膜表面の涙液保持作用および角膜上皮障害改善作用の増強が示された。また、本発明による前眼部疾患治療剤はドライアイの治療だけでなくドライアイの予防、ドライアイではないものの角膜または結膜に傷のある疾患にも好適に用いることができる。」との記載があるとともに、同段落【0051】?【0060】及び図3?図4に記された薬理試験2の結果によって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩を組み合わせた合剤を投与することにより、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることを示すものと認められ、技術常識を参酌すると、レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩及び亜鉛化合物を組み合わせて含有させた点眼液の投与により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることが、示されている。
本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12により、涙液保持作用を顕著に増大させ、角膜上皮障害改善作用をもたらす効果が得られることは、刊行物5及び刊行物1?3、6を含む異議申立人の提出した各甲号証のいずれの記載からも当業者が予想し得ないことである。

したがって、特許異議申立人の主張は受け入れられず、本件発明7及び請求項7を直接又は間接に引用する本件発明8?12は、刊行物5に記載された発明、刊行物1?3、6の記載事項、並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 むすび
以上のとおり、請求項1、3?12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、3?12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2及び13は訂正により削除されたので、本件請求項2及び13に係る特許に対して特許異議申立人 本橋 洋子 がした特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しない不適法な申立てであり、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8が準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバミピド又はその塩と、ヒアルロン酸又はその塩との組み合わせを含有する前眼部疾患治療剤であって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である前眼部疾患治療剤。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
ヒアルロン酸又はその塩と併用することを特徴とする、レバミピド又はその塩を含有する前眼部疾患治療剤。
【請求項4】
前眼部疾患が角膜疾患または結膜疾患である請求項1または3に記載の前眼部疾患治療剤。
【請求項5】
前眼部疾患がドライアイである請求項1または3に記載の前眼部疾患治療剤。
【請求項6】
レバミピド又はその塩と、ヒアルロン酸またはその塩を含有する点眼液であって、レバミピドとヒアルロン酸またはその塩の濃度がそれぞれ1?3%(w/v)および0.1?0.3%(w/v)である点眼液。
【請求項7】
レバミピド又はその塩、ヒアルロン酸またはその塩、および亜鉛化合物を含有する点眼液。
【請求項8】
亜鉛化合物が塩化亜鉛および/または硫酸亜鉛である請求項7の点眼液。
【請求項9】
更に溶解補助剤、アミノ糖、および緩衝剤を含有する請求項6から8のいずれかに記載の点眼液。
【請求項10】
更に等張化剤を含有する請求項6から9のいずれかに記載の点眼液。
【請求項11】
pHが7?9の範囲にある請求項6から10のいずれかに記載の点眼液。
【請求項12】
亜鉛化合物の濃度が亜鉛に換算して、0.000001%(w/v)?0.0001%(w/v)である請求項10または11に記載の点眼液。
【請求項13】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-12 
出願番号 特願2014-538080(P2014-538080)
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (A61K)
P 1 651・ 841- YAA (A61K)
P 1 651・ 854- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 857- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 855- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今村 明子  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 村上 騎見高
前田 佳与子
登録日 2016-12-16 
登録番号 特許第6060168号(P6060168)
権利者 大塚製薬株式会社
発明の名称 レバミピドと涙液保持作用を有する薬剤からなる前眼部疾患治療剤  
代理人 森本 靖  
代理人 呉 英燦  
代理人 品川 永敏  
代理人 森本 靖  
代理人 鮫島 睦  
代理人 松谷 道子  
代理人 松谷 道子  
代理人 呉 英燦  
代理人 品川 永敏  
代理人 鮫島 睦  
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