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審決分類 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1343007
異議申立番号 異議2017-701173  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-13 
確定日 2018-07-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6146008号発明「液晶表示装置、偏光板及び偏光子保護フィルム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6146008号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正することを認める。 特許第6146008号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6146008号(請求項の数9。以下,「本件特許」という。)は,平成24年12月27日(優先権主張平成23年12月28日,平成24年7月31日)に出願され,平成29年5月26日に特許権の設定登録がされたものである。
その後,同年6月14日に特許掲載公報の発行がなされたところ,同年12月13日に特許異議申立人により請求項1ないし9に係る特許について特許異議の申立てがされ,平成30年2月9日付けで特許権者に取消理由が通知され,特許権者より同年4月13日に意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下,当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされ,同年6月7日に特許異議申立人より意見書が提出された。


第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
(1)訂正前後の記載
本件訂正請求は,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし9について訂正することを求めるものであるところ,一群の請求項〔1ないし9〕ごとに請求するものであるから,特許法120条の5第4項の規定に適合して請求されたものである。
しかるに,本件訂正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
ア 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルムの少なくとも片面に,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂及び粒子を含有する塗布層を有し,該粒子は,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物である,偏光子保護フィルムが,偏光子の少なくとも片面に積層された偏光板,及び
連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源
を有する液晶表示装置。
【請求項2】
塗布層が,尿素系架橋剤,エポキシ系架橋剤,メラミン系架橋剤,イソシアネート系架橋剤,オキサゾリン系架橋剤,及びカルボジイミド系架橋剤から成る群より選択される少なくとも1種の架橋剤を更に含む,請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上である,請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
ポリエステルフィルムが3層以上からなり,その最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し,380nmの光線透過率が20%以下である,請求項1?3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
電子線若しくは紫外線硬化型アクリル樹脂又はシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層が該塗布層上に積層されている,請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
塗布層上に防眩層,反射防止層,低反射層,低反射防眩層,反射防止防眩層及び帯電防止層からなる群より選択される1種以上の層を有する,請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
偏光子保護フィルムが,紫外線硬化型,電子線硬化型又は熱硬化型の接着剤を介して偏光子に積層されている,請求項1?6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記偏光板が液晶に対して射出光側に配される偏光板である,請求項1?7のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が,白色発光ダイオードである,請求項1?8のいずれかに記載の液晶表示装置。」

イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルムの少なくとも片面に,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂及び粒子を含有する塗布層を有し,該粒子は,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物である,偏光子保護フィルムが,偏光子の少なくとも片面に積層された偏光板,及び
連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源
を有し,
前記ポリエステルフィルムの配向主軸は前記偏光子の吸収軸に対して垂直であり,
前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分中のナフタレンジカルボン酸の割合は20モル%以上90モル%以下であり,
前記塗布層中の前記金属酸化物の含有量は2質量%以上70質量%以下である,
液晶表示装置。
【請求項2】
塗布層が,尿素系架橋剤,エポキシ系架橋剤,メラミン系架橋剤,イソシアネート系架橋剤,オキサゾリン系架橋剤,及びカルボジイミド系架橋剤から成る群より選択される少なくとも1種の架橋剤を更に含む,請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上である,請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
ポリエステルフィルムが3層以上からなり,その最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し,380nmの光線透過率が20%以下である,請求項1?3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
電子線若しくは紫外線硬化型アクリル樹脂又はシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層が該塗布層上に積層されている,請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
塗布層上に防眩層,反射防止層,低反射層,低反射防眩層,反射防止防眩層及び帯電防止層からなる群より選択される1種以上の層を有する,請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
偏光子保護フィルムが,紫外線硬化型,電子線硬化型又は熱硬化型の接着剤を介して偏光子に積層されている,請求項1?6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記偏光板が液晶に対して射出光側に配される偏光板である,請求項1?7のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が,白色発光ダイオードである,請求項1?8のいずれかに記載の液晶表示装置。」

(2)訂正事項
本件訂正は,次の訂正事項からなる。
ア 訂正事項1
請求項1に「を有する液晶表示装置。」とあるのを,「を有し,前記ポリエステルフィルムの配向主軸は前記偏光子の吸収軸に対して垂直であり,前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分中のナフタレンジカルボン酸の割合は20モル%以上90モル%以下であり,前記塗布層中の前記金属酸化物の含有量は2質量%以上70質量%以下である,液晶表示装置。」に訂正する。これによって,請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項2ないし9についても同様の訂正がなされることとなる。

2 訂正の目的の適否について
訂正事項1は,請求項1ないし9に係る発明において,本件訂正前には,ポリエステルフィルムの配向主軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が任意であったものを,「垂直」なものに限定し,本件訂正前には,ポリエステル樹脂について,酸成分中のナフタレンカルボン酸の割合が任意であったものを,「20モル%以上90モル%以下」のものに限定し,本件訂正前には,塗布層中の金属酸化物の含有量は任意であったものを,「2質量%以上70質量%以下」のものに限定する訂正事項であるから,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

3 新規事項の追加の有無について
(1) 訂正事項1のうち,ポリエステルフィルムの配向主軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を「垂直」とする限定事項は,本件特許明細書の【0100】に記載されており,訂正事項1のうち,ポリエステル樹脂における酸成分中のナフタレンカルボン酸の割合を「20モル%以上90モル%以下」とする限定事項は,本件特許明細書の【0042】に記載されており,訂正事項1のうち,塗布層中の金属酸化物の含有量を「2質量%以上70質量%以下」とする限定事項は,本件特許明細書の【0053】に記載されているから,訂正事項1からなる本件訂正は,願書に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面(特許された時点での特許請求の範囲,明細書及び図面)に記載した事項の範囲内においてするものである。

(2) なお,特許異議申立人は,平成30年6月7日提出の意見書において,概略,本件特許明細書の【0100】には,射出光側に配される偏光板の視認側に配される特定の構成の偏光子保護フィルムについて,その配向主軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を「垂直」とすることが記載されているのであって,射出光側に配される偏光板の視認側ではない位置に配される偏光子保護フィルムや,特定の構成を有するものでない偏光子保護フィルムについてまで,その配向主軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を「垂直」とすることが記載されているのではないから,本件訂正は新規事項を追加するものである旨主張する。
そこで検討すると,請求項1ないし9に係る発明の「リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルム」を有する「偏光子保護フィルム」の位置について,本件特許明細書の【0021】には,「当該特定のリタデーションを有する偏光子保護フィルムの配置は特に限定されないが,液晶表示装置の入射光側に配される偏光板の入射光側の偏光子保護フィルム,もしくは射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが当該特定のリタデーションを有するポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムであることが好ましい。特に好ましい態様は,射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムを当該特定のリタデーションを有するポリエステルフィルムとする態様である。上記以外の位置にポリエステルフィルムを配する場合は,液晶セルの偏光特性を変化させてしまう場合がある。偏光特性が必要とされる箇所には本発明の高分子フィルムを用いることは好ましくない為,このような特定の位置の偏光板の保護フィルムとして使用されることが好ましい。」などと説明されているのみであって,当該説明によれば,射出光側の偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムとして用いることが特に好ましいとされているものの,他の位置に用いることを排除しているわけではない。また,本件特許明細書,特許請求の範囲及び図面等には,請求項1ないし9に係る発明の「リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルム」を有する「偏光子保護フィルム」を設ける位置に応じて,その配向主軸と偏光子の吸収軸のなす角度を変更しなければならない旨の開示や示唆は一切ない。そうすると,請求項1ないし9に係る発明の「リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルム」を有する「偏光子保護フィルム」の配向主軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を「垂直」とする場合に,当該「偏光子保護フィルム」を設ける位置を特定しないことで,請求項1ないし9に係る発明が,本件特許明細書等に記載されたものとは異なる技術上の意義を有するものになることはないというべきである。
さらに,特許異議申立人が主張する偏光子保護フィルムの特定の構成(「I層/II層/III層」という層構成等)は,本件特許明細書の【0026】ないし【0028】等の記載からは,偏光子の劣化を抑制するために偏光子保護フィルムに紫外線吸収剤を配合する場合の層構成等にすぎないと解されるのであって,当該層構成等と,偏光子保護フィルムの配向主軸と偏光子の吸収軸とのなす角度とは,技術的に無関係である。すなわち,請求項1ないし9に係る発明の「リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルム」を有する「偏光子保護フィルム」の配向主軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を「垂直」とする際に,特許異議申立人のいう特定の構成を有していない偏光子保護フィルムを用いることで,本件特許明細書等に記載されたものとは異なる技術上の意義を有することとなるとは認められない。
以上によれば,請求項1ないし9に係る発明の「リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルム」を有する「偏光子保護フィルム」の配向主軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を「垂直」とする場合に,当該「偏光子保護フィルム」を設ける位置や,層構成等の特定の構成を特定しないことで,請求項1ないし9に係る発明が,本件特許明細書等に記載されたものとは異なる技術上の意義を有するものになることはないから,本件訂正は,本件特許明細書等に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないというべきである。
したがって,特許異議申立人の前記主張は採用できない。

(3) 以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

4 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
訂正事項1が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

5 小括
前記2ないし4のとおりであって,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許の請求項1ないし9に係る発明
前記第2 5で述べたとおり,本件訂正は適法になされたものであるから,本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下,それぞれを「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。)は,それぞれ,前記第2 1(1)イにおいて,本件訂正後の特許請求の範囲の記載として示した請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。

2 平成30年2月9日付けで通知された取消理由の概要
本件訂正前の請求項1ないし9に係る特許に対して平成30年2月9日付けで通知された取消理由は,概略次のとおりである。
(1)取消理由1(進歩性欠如)
ア 引用例
甲1:特開2011-59488号公報
甲2:特開2011-107198号公報
甲5:特開2010-243630号公報
周知文献1:特開2009-143226号公報
周知文献2:特開2011-5854号公報
周知文献3:特開2011-11364号公報

イ 請求項1ないし3,5ないし9に対して
本件特許の請求項1ないし3,5ないし9に係る発明は,甲1の記載から把握される発明,甲2に記載された事項,及び周知技術に基づいて(少なくとも,甲1の記載から把握される発明,甲2に記載された事項,及び周知文献1ないし3のいずれかに記載された事項に基づいて),当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
ウ 請求項4に対して
本件特許の請求項4に係る発明は,甲1の記載から把握される発明,甲2に記載された事項,甲5に記載された事項,及び周知技術に基づいて(少なくとも,甲1の記載から把握される発明,甲2に記載された事項,甲5に記載された事項,及び周知文献1ないし3のいずれかに記載された事項に基づいて),当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

(2)取消理由2(サポート要件違反)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は,偏光子保護フィルム上にハードコート層を積層した際に干渉斑が生じてしまうという課題に関して,発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでも,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもないから,その特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 引用例
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1(特開2011-59488号公報)は,本件特許の優先権主張の日(以下,「本件優先日」という。)より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲1には次の記載がある。(下線部は,後述する「甲1発明」の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,偏光板およびそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0003】
一方で,液晶表示装置のさらなる薄型軽量化を望む強い市場要求を受けて,液晶表示装置を構成する液晶パネル,拡散板,バックライトユニット,および駆動IC等の薄型化や小型化が進められている。このような状況下,液晶パネルを構成する部材である偏光板も10μmの単位で薄型化することが求められている。
【0004】
同時に,液晶表示装置の普及に伴って,市場からのコストダウン要求も日増しに強くなっており,偏光板においてもさらなるコストダウンや生産性の向上が必須となっている。
【0005】
これらの要求を満足すべく,これまでに様々な提案がなされてきた。たとえば,偏光板は通常,偏光フィルムの片面または両面に透明保護フィルムが設けられた構成を有し,その透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが一般的に使用されている・・・(中略)・・・
【0007】
上記要求を満足できる技術として,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする手法が提案されている。ポリエチレンテレフタレートは機械的強度に優れることから,薄膜化に適しており,偏光板の薄型化を実現できる。さらに,トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して,一般的にコストの面からも優位性を有する。加えて,トリアセチルセルロースと比較して,低透湿性で低吸水性といった特徴を有することから,耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ,環境変化に対して高い耐久性を持つことも期待できる。
【0008】
しかしながら,一方で,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合,トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて,その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ,虹ムラとも言う)が目立ち,視認性に劣るという問題を有している。・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで,本発明の目的は,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって,液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ,かつ薄型化を実現し,コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。また,本発明のもう一つの目的は,前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは,上記色ムラ問題を解決するべく,鋭意研究を行なってきた。その結果,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において,面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x),面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y),厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに,(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで,液晶表示装置の色ムラを効果的に低減でき,高い視認性と薄型化,低コスト化との両立が実現できることを見出した。
【0012】
すなわち,本発明によれば,ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと,該偏光フィルムの片面に,第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと,を備え,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x),面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y),厚み方向の屈折率をn_(z)としたときに,(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板が提供される。
【0013】
本発明の偏光板において,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値であることが好ましい。
【0014】
上記第一の接着剤層は,脂環式エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層からなることが好ましい。
【0015】
本発明の偏光板は,偏光フィルムにおける延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に,第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えることができる。
・・・(中略)・・・
【0017】
上記第二の接着剤層は,第一の接着剤層を形成する活性エネルギー硬化性組成物と同一の組成物の硬化物層からなることが好ましい。
【0018】
上記のように保護フィルムまたは光学補償フィルムを積層する場合,本発明の偏光板は,当該保護フィルムまたは光学補償フィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に積層された粘着剤層を備えることができる。
【0019】
本発明の偏光板は,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に積層された,防眩層,ハードコート層,反射防止層,および帯電防止層から選ばれる少なくとも1層を備えることが好ましい。
【0020】
また,本発明によれば,上記粘着剤層が設けられた偏光板が,その粘着剤層を介して液晶セルに貼合された液晶パネルを備える液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで,液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し,かつ薄型化を実現し,コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また,本発明によれば,前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。」

(イ) 「【発明を実施するための形態】
【0022】
<偏光板>
本発明の偏光板は,ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと,該偏光フィルムの片面に,第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと,を備えるものである。また,本発明の偏光板は,偏光フィルムにおける延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に,第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていてもよい。以下,本発明の偏光板について具体的に説明する。
【0023】
(偏光フィルム)
本発明に用いる偏光フィルムは,通常,公知の方法によってポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程,ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより,二色性色素を吸着させる工程,二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程,およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものである。
・・・(中略)・・・
【0038】
(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)
本発明に用いる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは,一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し,横延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルム,または,製膜後引き続いて縦延伸し,次いで横延伸してなる一層以上の二軸延伸フィルムである。ポリエチレンテレフタレートは,延伸により屈折率の異方性および,それらで規定される位相差値,Nz値,光軸を任意に制御することができ,本発明においては,必要な光学性能を効率よく付与できることから一軸延伸品が好ましく用いられる。
・・・(中略)・・・
【0052】
このようにして得られるポリエチレンテレフタレート系樹脂は,フィルム状に成形し,延伸処理することにより,透明で均質な機械的強度の高い延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとすることができる。その製造方法としては,特に限定されるものではないが,たとえば,次に記載する方法が採用される。
【0053】
まず,乾燥させたポリエチレンテレフタレート樹脂からなるペレットを溶融押出装置に供給し,融点以上に加熱し溶融する。次に,溶融した樹脂をダイから押し出し,回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し,実質的に非晶状態の未延伸フィルムを得る。この溶融温度は,用いるポリエチレンテレフタレート系樹脂の融点や押出機に応じて定められるものであり,特に制限するものではないが,通常,250?350℃である。
・・・(中略)・・・
【0056】
また,押し出すフィルムの積層数は,必要に応じ2層以上にしてもよい。たとえば,ブロッキング防止剤としての粒状フィラーを配合したペレットと無配合のペレットを用意し,異なる押出機から同一のダイへ供給して「フィラー配合/無配合/フィラー配合」の2種3層からなるフィルムを押し出すこと等が挙げられる。
【0057】
一軸延伸フィルムを得る場合,上記未延伸フィルムは,通常,ガラス転移温度以上の温度において,テンターによってフィルムの巾方向(長尺方向に対して垂直方向)への横延伸が行なわれる。この延伸温度は,通常,70?150℃であり,80?130℃が好ましく,90?120℃がより好ましい。また,延伸倍率は,通常,2.5?6倍であり,3?5.5倍であることが好ましい。横延伸における延伸倍率が2.5倍未満であると,フィルムの透明性が不良となる場合があり好ましくない。また,6倍を超える延伸倍率は,製造技術上現実的ではない。
・・・(中略)・・・
【0072】
本発明の偏光板においては,かかる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとして,Nz係数が2.0未満であるものを用いる。このため,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,一軸延伸にて作製することが好ましい。このような光学性能の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用することで,かかる偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラを効果的に低減することが可能となる。Nz係数は,2.0未満であれば小さいほど色ムラ低減の効果を発揮し,好ましくは1.5以下,より好ましくは1.0以下である。Nz係数が2.0以上の場合は,かかる偏光板を搭載した液晶表示装置において強い色ムラが発生し,視認性に劣るものとなる。Nz係数が2.0以上4未満である場合,色ムラ低減効果を得ることができない。なお,Nz係数が4以上である場合であっても色ムラ低減効果を得ることができ,この場合,Nz係数の値が高いほど,色ムラ低減に有利である。
【0073】
また,本発明の偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,膜厚をdとしたときに,(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmのものが好適に採用できる。R_(0)がかかる範囲外,すなわちR_(0)が1200を超え,2000nm未満の範囲にある場合は,比較的目立つ色ムラが発生する傾向にある。したがって,より効果的に色ムラを低減する観点から,面内位相差値R_(0)は,1200nm以下もしくは2000nm以上であることが好ましい。また,R_(0)が200nm未満と小さい場合は,安定的にNz係数を2.0未満に制御することが困難であり,生産性やコストの面に問題を有する。一方で,R_(0)が7000nmを超える場合は,Nz係数は低減させやすいものの,機械的強度に劣るフィルムとなる傾向にある。
【0074】
本発明の偏光板においては,偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度は目的や生産上の制約等に応じて任意に選択することができる。たとえば,本発明の偏光板を,偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合,延伸ポリエチレンテレフタレートの面内位相差に由来する正面方向からの干渉色の発現を防ぐため,偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度は小さい方が好ましい。好ましくは,偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は,0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。かかる場合においても,Nz係数を2.0未満とすることが,色ムラの低減に効果的である。
【0075】
偏光性の強いバックライト光源として,たとえば,バックライトユニット内に反射型偏光分離フィルムを備えるもの等が挙げられる。反射型偏光分離フィルムとは,バックライトの光を選択的に反射させ,再利用することで可視範囲の輝度を向上させる機能を有するフィルムである。反射型偏光分離フィルムに相当する市販品としては,米国の3M Company〔日本では住友スリーエム(株)〕から販売されている「DBEF」(商品名)などがある。
【0076】
一方で,上記以外の場合には,偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができる。中でも,20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましい。偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度を上記の範囲とすることで,より効果的に液晶表示装置の色ムラを低減することができる。
・・・(中略)・・・
【0081】
(機能層)
本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには,そのフィルムが偏光板の視認側に用いられる場合,偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に,防眩層,ハードコート層,反射防止層,および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を設けることが好ましい。
【0082】
防眩層は,外光の映り込みやギラツキを防ぐために設けられる。ハードコート層は,表面の耐擦傷性などを改善するために設けられる。反射防止層は,外光の反射を防ぐために設けられる。また帯電防止層は,静電気の発生を防ぐために設けられる。これらの機能層を本発明の偏光板に形成する場合,塗工など公知の方法で直接延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に設けてもよいし,基材上にこれらの機能層が設けられたフィルムを延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼合してもよい。また,これらの機能層を予め延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成しておき,これをその機能層とは反対側の面で偏光フィルムに貼合する方法も採用できる。
【0083】
防眩層は,たとえば,フィラーが添加された紫外線硬化型樹脂を塗工し,そこに紫外線を照射して硬化させ,フィラーに基づく凹凸を現出させる方式,紫外線硬化型樹脂にエンボス型を接触させた状態で紫外線を照射し,硬化させて凹凸を現出させる方式などにより設けることができる。ハードコート層は,紫外線硬化型のハードコート樹脂を塗工し,そこに紫外線を照射して硬化させる方式などにより設けることができる。反射防止層は,金属酸化物などを一層または複数層蒸着する方式などにより設けることができる。帯電防止層は,帯電防止剤入りの紫外線硬化型樹脂を塗工し,そこに紫外線を照射して硬化させる方式などにより設けることができる。また,一般に偏光板の表面には,易剥離性の粘着剤層を有するプロテクトフィルムを貼合し,使用時までその表面を仮着保護するのが通例である。かかるプロテクトフィルムを構成する粘着剤層に帯電防止剤を配合しておき,それを偏光板の透明保護フィルムである延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に貼合することも,好適な帯電防止層の形態のひとつである。
【0084】
さらに,本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには,本発明の効果を妨げない限り,上記以外にも様々な機能層を片面または両面に積層することができる。積層される上記以外の機能層としては,たとえば,導電層,平滑化層,易滑化層,ブロッキング防止層,および易接着層等が挙げられる。中でも,この延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,偏光フィルムと接着剤層を介して積層されることから易接着層が積層されていることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0087】
(第一の接着剤層)
本発明の偏光板において,偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは,通常,透明で光学的に等方性の接着剤を介して貼着される。これらの接着には,それぞれのフィルムに対する接着性を考慮して任意のものを用いることができる。たとえば,ポリビニルアルコール系接着剤,アクリル系接着剤,ウレタン系接着剤,エポキシ系接着剤などが挙げられるが,本発明においては,脂環式エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を採用することが好ましく,脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性組成物を採用することがより好ましい。かかる接着剤を採用することにより,過酷な環境下における偏光板の耐久性を向上させることが可能になるとともに,無溶剤のものを用いた場合には,接着剤を乾燥させる工程が不要になるため,生産性を向上させることができる。脂環式エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を接着剤として用いる場合,偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを当該接着剤を介して積層させた後,活性エネルギー線を照射して当該接着剤を硬化させることにより,当該活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層からなる第一の接着剤層が形成される。
・・・(中略)・・・
【0147】
(保護フィルム,光学補償フィルム)
本発明の偏光板は,偏光フィルムの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面と反対側の面に,第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていてもよい。
【0148】
保護フィルムまたは光学補償フィルムは,光学フィルムとしての光学特性を有するものを目的に合わせて適宜使用することができ,特に限定されるものではないが,保護フィルムとしては,たとえば,トリアセチルセルロース(TAC)等からなるセルロース系樹脂フィルム,オレフィン系樹脂フィルム,アクリル系樹脂フィルム,ポリカーボネート系樹脂フィルム,およびポリエステル系樹脂フィルム等の透明樹脂フィルムから構成されるものを用いることができる。
・・・(中略)・・・
【0187】
(第二の接着剤層)
本発明の偏光板において,偏光フィルムと上記した保護フィルムまたは光学補償フィルムは,通常,透明で光学的に等方性の第二の接着剤を介して貼着される。これらの接着には,それぞれのフィルムに対する接着性を考慮して任意のものを用いることができる。たとえば,ポリビニルアルコール系接着剤,アクリル系接着剤,ウレタン系接着剤,エポキシ系接着剤などが挙げられるが,本発明においては,第一の接着剤層を形成する接着剤と同様に,脂環式エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を採用することが好ましく,脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性組成物を採用することがより好ましい。・・・(中略)・・・
【0204】
(粘着剤層)
本発明の偏光板は,保護フィルムまたは光学補償フィルムの外側(保護フィルムまたは光学補償フィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面)に粘着剤層を有することができる。このような粘着剤層は,液晶セルとの貼合に用いることができる。
・・・(中略)・・・
【0217】
<液晶表示装置>
以上のようにしてなる偏光板,すなわち,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板は,粘着剤層から剥離フィルムを剥離して,液晶セルの片面または両面に貼合し,液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは,液晶表示装置に適用することができる。
【0218】
本発明の偏光板は,たとえば,液晶表示装置において,光出射側(視認側)に配置される偏光板として用いることができる。光出射側とは,液晶セルを基準に,液晶表示装置のバックライト側とは反対側を指す。光出射側の偏光板として本発明の偏光板が採用される場合,当該偏光板は,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に,防眩層,ハードコート層,反射防止層,および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備えることが好ましい。また,液晶表示装置の光入射側(バックライト側)に配置される偏光板は,本発明の偏光板であってもよいし,従来公知の偏光板であってもよい。
【0219】
本発明の偏光板は,また,液晶表示装置において,光入射側に配置される偏光板として用いることもできる。この場合,液晶表示装置の光出射側に配置される偏光板は,本発明の偏光板であってもよいし,従来公知の偏光板であってもよい。
・・・(中略)・・・
【0222】
液晶表示装置を構成するバックライトも,一般の液晶表示装置に広く使用されているものでよい。たとえば,拡散板とその背後に配置された光源で構成され,光源からの光を拡散板で均一に拡散させたうえで前面側に出射するように構成されている直下型のバックライトや,導光板とその側方に配置された光源で構成され,光源からの光を一旦導光板の中に取り込んだうえで,その光を前面側に均一に出射するように構成されているサイドライト型のバックライトなどを挙げることができる。バックライトにおける光源としては,蛍光管を使って白色光を発光する冷陰極蛍光ランプや,発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを採用することができる。」

(ウ) 「【実施例】
【0223】
以下,実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0224】
以下の例において,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは,メーカー呼称値で示した。面内位相差値R_(0)およびNz係数は,位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)にて測定した。また,環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムの厚み,面内位相差値R_(0)および厚み方向位相差値R_(th)はメーカー呼称値で示した。環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムのR_(0)およびR_(th)は位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)を用いて実測もしているが,ほぼ同様の値が得られている。
【0225】
<実施例1>
(a)偏光フィルムの作製
平均重合度約2400,ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを,30℃の純水に浸漬した後,ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後,ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後,65℃で乾燥して,ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は,主に,ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない,トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0226】
(b)粘着剤付き偏光板の作製
厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0,R0:2160nm)の貼合面に,コロナ処理を施した後,脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を,チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工した。また,厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R_(0):63nm,厚み方向位相差値R_(th):225nm)の貼合面に,コロナ処理を施した後,上記と同じ接着剤組成物を同様の装置にて厚さ2μmで塗工した。
【0227】
次いで,直ちに上記(a)にて得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを,もう一方の面に上記光学補償フィルムを,各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。この際,偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とした。その後,この積層物の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から,メタルハライドランプを320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)となるように照射し,両面の接着剤を硬化させた。さらに,得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に,厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設けた。
【0228】
(c)液晶表示装置の作製
ソニー(株)製の垂直配向モードの液晶表示装置“BRAVIA”(対角寸法40インチ=約102cm)の液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし,その代わりに,市販の偏光板(スミカランSRW842E-GL5,住友化学(株)製)を,オリジナルの偏光板と同じ軸方向で,その粘着剤層側にて貼り付けた。また,光入射側偏光板も剥がし,その代わりに,上記(b)で作製した粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたものを,オリジナルの偏光板と同じ軸方向で,その粘着剤層を用いて貼り付けた。得られた液晶表示装置について,目視にて観察したところ,斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく,視認性は良好であった。
・・・(中略)・・・
【0230】
<実施例3>
Nz係数が1.8,面内位相差値R_(0)が3950nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い,偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう接着貼合したこと以外は実施例1の(b)同様にして偏光板を作製し,さらに,実施例1の(c)と同様にして,液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について,目視にて観察したところ,斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は比較的小さく,視認性は比較的良好であった。
・・・(中略)・・・
【0234】
各例につき,偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの光学特性と試験結果を表1にまとめた。
【0235】
【表1】

【0236】
表1に示されるように,偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのNz係数が2.0未満である実施例1?5については,偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラが少なく,視認性に優れる効果が認められた。一方で,Nz係数が2.0以上である比較例1については,色ムラが強く,視認性に劣るものであった。」

イ 甲1に記載された発明
前記ア(ア)ないし(ウ)を含む甲1の全記載から,機能層が設けられた延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを有する偏光板を,液晶セルの光出射側に備える液晶表示装置に係る発明を把握することができるところ,当該発明の構成は次のとおりである。

「偏光板を粘着剤層により液晶セルの両面に貼合してなる液晶パネルと,光源として発光ダイオードを採用したバックライトとを有する液晶表示装置であって,
前記偏光板のうち光出射側に配置される偏光板は,ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと,当該偏光フィルムの片面に第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと,前記偏光フィルムの反対側の面に第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムと,前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に設けられた機能層とを備え,前記保護フィルムまたは光学補償フィルム側を前記粘着剤層により前記液晶セルに貼合したものであり,
前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは,ブロッキング防止剤としての粒状フィラーを配合したペレットと無配合のペレットとを異なる溶融押出装置から同一のダイへ供給して溶融押出して製膜することによって,「フィラー配合/無配合/フィラー配合」の2種3層からなるフィルムとし,これを横延伸して得られた一軸延伸フィルムであって,面内の遅相軸方向の屈折率をn_(x),面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をn_(y),厚み方向の屈折率をn_(z),膜厚をdとしたときに,(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で表されるNz係数が2.0未満で,(n_(x)-n_(y))×dで定義される面内位相差値R_(0)が200?1200nmもしくは2000?7000nmであり,
前記偏光フィルムの透過軸に対する前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は,20度以上50度以下に設定され,
前記第一及び第二の接着剤層は,脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層からなり,
前記機能層は,防眩層,ハードコート層,反射防止層,および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層である,
液晶表示装置。」(以下,「甲1発明」という。)

(2)周知の技術事項
ア 周知文献1の記載
周知文献1(特開2009-143226号公報)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該周知文献1には次の記載がある。(下線部は,後述する「周知技術」の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層を設けた光学用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記塗布層に架橋剤を含むことを特徴とした請求項1に記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記架橋剤が尿素系架橋剤,エポキシ系架橋剤,メラミン系架橋剤,イソシアネート系架橋剤,オキサゾリン系架橋剤から選ばれた少なくとも1種の架橋剤であることを特徴とする請求項2に記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載の光学用易接着性ポリエステルフィルムの塗布層の少なくとも片面に,電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂,またはシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルム。」

(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。例えば,タッチパネル,液晶表示板(LCD),テレビやコンピューターのブラウン管(CRT),プラズマディスプレイ(PDP),有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の表示画面の前面に装着して,外光の写り込み,ぎらつき,虹彩状色彩等を抑制する反射防止性を付与し,ハードコート層との密着性及び高温高湿処理後の密着性に優れる光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル,コンピューター,テレビ,液晶表示装置等のディスプレイ,装飾材等の前面には,透明なハードコート層を積層させたハードコートフィルムが使用されている。また,基材の透明プラスティックフィルムとしては,透明な二軸配向ポリエステルフィルムが一般的に用いられ,基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために,これらの中間層として易接性を有する塗布層を設ける場合が多い。
【0003】
・・・(中略)・・・ハードコートフィルムにはディスプレイや装飾材などの表面に用いられることが多いため,視認性や意匠性が要求されている。そのため,任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため,ハードコート層の上層に,高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら,ディスプレイや装飾材などの用途では,近年,さらなる大画面化(大面積化)及び高級性が求められ,それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また,蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており,より干渉斑が出やすくなっている。さらに,反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため,反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。
【0005】
ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は,基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.62)とアクリル樹脂からなるハードコート層の屈折率(例えば1.49)との差が大きいため発生するといわれている。・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
・・・(中略)・・・
【0009】
すなわち,本発明は,蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し,かつ,ハードコート層との密着性,高温高湿下での密着性に優れる光学易接着性ポリエステルフィルム及び該フィルムにハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に対し,本発明者は塗布層組成に関して鋭意検討を行った結果,所定の屈折率を有する塗布層に平均粒径200nm以上700nm以下という大きな粒子を加えた結果,厚み変動に対しても安定的に干渉斑を抑制できるという驚くべき効果を見いだし,本発明に至った。
【0011】
すなわち,本発明は,ポリエステルフィルムの少なくとも片面に,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層を設けた光学用易接着性ポリエステルフィルムである。・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学用易接着ポリエステルフィルムは,該フィルムの易接着層にハードコート層を積層した際に,干渉斑抑制に優れ,かつハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れる。」

(ウ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
・・・(中略)・・・
【0019】
(塗布層)
本発明の光学用易接着性フィルムには,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層に設けることが重要である。すなわち,本発明の以下のような達成手段による。
【0020】
(1)塗布層の屈折率制御
本願発明の光学易接着性フィルムは,塗布層の屈折率をハードコート層と基材ポリエステルフィルムとの中間付近に調整する必要がある。ハードコート層に使用する樹脂の組成によって,ハードコート層の屈折率は変動するため,塗布層の屈折率はそれに対応して調整することが望ましく,具体的には塗布層の屈折率を1.6?1.7の範囲に調整する必要がある。このようにすることで各界面屈折率差を小さくし,干渉斑を抑制する。一般に易接着性を有する塗布層では屈折率が低いため(1.50前後),塗布層の屈折率を上記範囲に制御する為に本願では,塗布層の用いる樹脂を酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用い,さらに屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を添加する。係る構成により密着性を有しながら,屈折率の高い塗布層にすることができる。これらの組成の詳細については後述する。
【0021】
(2)平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)
本願発明者は塗布層組成を鋭意検討した結果,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を塗布層に添加することで干渉斑抑制効果を見いだし本願発明に至った。粒子Bがこのような効果を奏する理由はとして,本願発明者は以下のように考えている。塗布層に平均粒径の比較的大きい粒子を添加することで,塗布層とハードコート層との界面に凹凸が形成される。このような凹凸構造によって,塗布層とハードコート層との界面で光の散乱が生じる。このようなランダムな光散乱により塗布層と基材ポリエステルフィルムとの界面で生じる反射光との位相の乱れが生じ,その結果,干渉斑の抑制効果が生じると考えられる。本願の光学易接着性フィルムの塗布層はかかる構成を有するため,従来技術のように塗布厚みを高度に制御する必要もなく,各種の溶剤からなるハードコート層形成用塗布液でも広範囲に適用可能となった。
【0022】
また,粒子Bを塗布層に添加した効果として,ハードコート層との密着性が向上することを見いだした。これは,塗布層とハードコート層との界面に凹凸が形成されることによって,塗布層とハードコート層との界面面積が増加し,密着性に有利に作用したものと考えている。
・・・(中略)・・・
【0024】
本発明は,上記態様により,ハードコート層との密着性,及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)を維持しながら,蛍光灯下での虹彩状色彩を制御できる。さらに,本発明の構成を以下に詳細する。
【0025】
本発明において,易接着層中にポリエステル樹脂を含有させる必要があり,前記ポリエステル樹脂の酸性分として,ナフタレンジカルボン酸を含有させる必要がある。ナフタレンジカルボン酸を含有させることで,屈折率が増加し,蛍光灯下での虹彩状色彩を制御しやすくなる。また,耐湿熱性を向上させることができる。
・・・(中略)・・・
【0027】
ポリエステル樹脂は酸成分として,少なくともナフテレンジカルボン酸を含有させる必要がある。このようなナフテレンジカルボン酸としては,2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸性分として20%以上が好ましく,30%以上がより好ましく,50%以上がさらに好ましく,60%以上がよりさらに好ましい。また,ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸性分として90%以下が好ましく,85%以下がより好ましく,80%以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は,粒子Aとともに塗布層の屈折率が前述の範囲になるよう適宜調整するが,20%未満であれば粒子Aの添加量が多くなり,密着性が低下する場合がある。また,90%を超える場合は,樹脂の密着性が低下する場合がある。・・・(中略)・・・
【0029】
本発明において,塗布層中に架橋剤を含有させても良い。架橋剤を含有させることにより,インク受容層の高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。架橋剤としては,尿素系,エポキシ系,メラミン系,イソシアネート系,オキサゾリン系等が挙げられる。これらの中で,塗液の経時安定性,高温高湿処理下の密着性向上効果からメラミン系,イソシアネート系,オキサゾリン系が好ましい。また,架橋反応を促進させるため,触媒等を必要に応じて適宜使用される。
・・・(中略)・・・
【0031】
本発明において,塗布層中に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を含有させる必要がある。・・・(中略)・・・金属酸化物粒子の屈折率が1.7以上であれば,塗布層の屈折率を前記範囲で調整する点で好ましい。また,金属酸化物粒子の屈折率が3.0以下であればフィルムの透明性を維持する点で好ましい。
【0032】
金属酸化物粒子の塗布層中の含有量としては,全固形成分中,5質量%以上70質量%以下が好ましい。金属酸化物粒子の含有量の下限としては,7質量%以上がより好ましく,8質量%以上がさらに好ましい。また,金属酸化物粒子の含有量の上限としては,50質量%以下がより好ましく,30質量%以下がさらに好ましく,20質量%以下がよりさらに好ましく,15質量%以下が特に好ましい。ハードコート層の屈折率によって,前記範囲内で金属酸化物粒子を添加し,塗布層の屈折率1.6?1.7の範囲で調整する。金属酸化物粒子の含有量が5質量%未満であれば塗布層の屈折率を上記範囲に調整することが困難になる場合がある。また,金属酸化物粒子の含有量が70質量%を越えると塗布層の密着性が低下する場合があるので好ましくない。・・・(中略)・・・
【0041】
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムは,前述のポリエステルフィルムの塗布層の少なくとも片面に,電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層を設けることにより得られる。」

イ 周知文献2の記載
周知文献2(特開2011-5854号公報)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該周知文献2には次の記載がある。(下線部は,後述する「周知技術」の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に,ポリエステル樹脂と粒子Aと粒子Bを含有する塗布層を有する光学用易接着性ポリエステルフィルムであって,
前記ポリエステル樹脂が,酸成分としてナフタレンジカルボン酸と,下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分とを含み,
前記粒子Aが,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子であり,
前記粒子Bが,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子である,光学用易接着性ポリエステルフィルム。
(1)HOOC-(CH_(2))_(n)-COOH (式中,nは4≦n≦10の整数)
(2)HO-(CH_(2))_(n)-OH (式中,nは4≦n≦10の整数)
【請求項2】
前記塗布層が架橋剤を含むことを特徴とした請求項1に記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記架橋剤が尿素系架橋剤,エポキシ系架橋剤,メラミン系架橋剤,イソシアネート系架橋剤,オキサゾリン系架橋剤,カルボジイミド系架橋剤から選ばれた少なくとも1種の架橋剤であることを特徴とする請求項2に記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載の光学用易接着性ポリエステルフィルムの塗布層に,電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂,またはシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルム。」

(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。例えば,タッチパネル,液晶表示板(LCD),テレビやコンピューターのブラウン管(CRT),プラズマディスプレイ(PDP),有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の表示画面の前面に装着して,外光の写り込み,ぎらつき,虹彩状色彩等を抑制する反射防止性を付与し,ハードコート層との密着性及び高温高湿処理後の密着性に優れる光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル,コンピューター,テレビ,液晶表示装置等のディスプレイ,装飾材等の前面には,透明なハードコート層を積層させたハードコートフィルムが使用されている。また,基材の透明プラスティックフィルムとしては,透明な二軸配向ポリエステルフィルムが一般的に用いられ,基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために,これらの中間層として易接性を有する塗布層を設ける場合が多い。
【0003】
・・・(中略)・・・ハードコートフィルムにはディスプレイや装飾材などの表面に用いられることが多いため,視認性や意匠性が要求されている。そのため,任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため,ハードコート層の上層に,高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら,ディスプレイや装飾材などの用途では,近年,さらなる大画面化(大面積化)及び高級性が求められ,それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また,蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており,より干渉斑が出やすくなっている。さらに,反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため,反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。
【0005】
ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は,基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.62?1.65)とアクリル樹脂からなるハードコート層の屈折率(例えば1.49)との差が大きいため発生するといわれている。・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
・・・(中略)・・・
【0012】
よって,各種の溶剤でも広範囲に適用可能な干渉斑の抑制効果を有し,さらに高速加工においても塗布層の削れが少なく,安定した干渉斑低減効果を有する光学易接着性ポリエステルフィルムが切望されつつある。すなわち,本発明は,蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し,かつ,ハードコート層との密着性,高温高湿下での密着性に優れ,かつ,高速後加工においても塗布層の耐削れ性を有する光学易接着性ポリエステルフィルム及び該フィルムにハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に対し,本発明者は塗布層組成に関して鋭意検討を行った結果,所定の屈折率を有する塗布層に平均粒径200nm以上700nm以下という大きな粒子を加えた結果,厚み変動に対しても安定的に干渉斑を抑制できるという驚くべき効果を見いだし,かつ,特定の炭素数を有する長鎖のジカルボン酸成分および/または長鎖のジオール成分を含むポリエステル樹脂を使用することで塗布層の削れを顕著に抑制しうることを見いだし,本発明の光学用積層ポリエステルフィルムを得るに至った。
【0014】
すなわち,本発明は,ポリエステルフィルムの少なくとも片面に,ポリエステル樹脂と粒子Aと粒子Bを含有する塗布層を有する光学用易接着性ポリエステルフィルムであって,前記ポリエステル樹脂が,酸成分としてナフタレンジカルボン酸と,下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分とを含み,前記粒子Aが,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子であり,前記粒子Bが,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子である,光学用易接着性ポリエステルフィルムである。
(1)HOOC-(CH_(2))_(n)-COOH (式中,nは4≦n≦10の整数)
(2)HO-(CH_(2))_(n)-OH (式中,nは4≦n≦10の整数)・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学用易接着ポリエステルフィルムは,該フィルムの易接着層にハードコート層を積層した際に,干渉斑抑制に優れ,かつハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れるとともに,塗布層の削れ性を顕著に抑制しうる。そのため,ハードコート層を積層した光学積層ポリエステルフィルムのベースフィルムとして好適である。」

(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0016】
・・・(中略)・・・
【0023】
(塗布層)
本発明の光学用易接着性フィルムには,酸成分としてナフタレンジカルボン酸と,下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分とを含むポリエステル樹脂と,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層に設けることが重要である。すなわち,本発明の以下のような達成手段による。
(1)HOOC-(CH_(2))_(n)-COOH (式中,nは4≦n≦10の整数)
(2)HO-(CH_(2))_(n)-OH (式中,nは4≦n≦10の整数)
【0024】
(1)塗布層の屈折率制御
本発明の光学易接着性フィルムは,塗布層の屈折率をハードコート層と基材ポリエステルフィルムとの中間付近に調整する必要がある。ハードコート層に使用する樹脂の組成によって,ハードコート層の屈折率は変動するため,塗布層の屈折率はそれに対応して調整することが望ましく,具体的には塗布層の屈折率を1.6?1.7の範囲に調整する必要がある。このようにすることで各界面屈折率差を小さくし,干渉斑を抑制する。一般に易接着性を有する塗布層では屈折率が低いため(1.50前後),塗布層の屈折率を上記範囲に制御する為に本願では,塗布層の用いる樹脂を酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用い,さらに屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を添加する。係る構成により密着性を有しながら,屈折率の高い塗布層にすることができる。これらの組成の詳細については後述する。
【0025】
(2)平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)
本発明者は塗布層組成を鋭意検討した結果,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を塗布層に添加することで干渉斑抑制効果を見いだし本発明に至った。粒子Bがこのような効果を奏する理由として,本発明者は以下のように考えている。塗布層に平均粒径の比較的大きい粒子を添加することで,塗布層とハードコート層との界面に凹凸が形成される。このような凹凸構造によって,塗布層とハードコート層との界面で光の散乱が生じる。このようなランダムな光散乱により塗布層と基材ポリエステルフィルムとの界面で生じる反射光との位相の乱れが生じ,その結果,干渉斑の抑制効果が生じると考えられる。本願の光学易接着性フィルムの塗布層はかかる構成を有するため,従来技術のように塗布厚みを高度に制御する必要もなく,各種の溶剤からなるハードコート層形成用塗布液でも広範囲に適用可能となった。
【0026】
また,粒子Bを塗布層に添加した効果として,ハードコート層との密着性が向上することを見いだした。これは,塗布層とハードコート層との界面に凹凸が形成されることによって,塗布層とハードコート層との界面面積が増加し,密着性に有利に作用したものと考えている。
・・・(中略)・・・
【0028】
(3)長鎖のジカルボン酸成分および/またはジオール成分を含有するポリエステル樹脂 本発明の塗布層は,上記のようにナフタレンジカルボン酸成分を含む,比較的硬いポリエステル樹脂を用いながら,平均粒径200nm以上700nm以下の比較的大きい粒子を用いる。そのため,生産性効率の向上により後加工処理でのラインスピードが上昇した場合,塗布層の削れや粒子の脱落が生じることが考えられる。そこで,本発明者は鋭意検討をおこなった結果,ポリエステル樹脂の成分として,長鎖のジカルボン酸成分および/またはジオール成分を用いることで,塗布層の顕著な耐削れ性を奏することを見出した。
【0029】
すなわち,本発明の塗布層に用いるポリエステル樹脂は,酸成分としてナフタレンジカルボン酸と,下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分とを含む。
(1)HOOC-(CH_(2))_(n)-COOH (式中,nは4≦n≦10の整数)
(2)HO-(CH_(2))_(n)-OH (式中,nは4≦n≦10の整数)
・・・(中略)・・・
【0032】
本発明は,上記態様により,ハードコート層との密着性,及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)を維持しながら,蛍光灯下での虹彩状色彩を制御し,かつ,優れた塗布層の耐削れ性を有する。さらに,本発明の構成を以下に詳細する。
【0033】
本発明において,塗布層中にポリエステル樹脂を含有させる必要があり,前記ポリエステル樹脂の酸成分として,ナフタレンジカルボン酸を含有させる必要がある。ナフタレンジカルボン酸を含有させることで,屈折率が増加し,蛍光灯下での虹彩状色彩を制御しやすくなる。また,耐湿熱性を向上させることができる。
【0034】
このようなナフタレンジカルボン酸としては,2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸成分として20モル%以上が好ましく,30モル%以上がより好ましく,50モル%以上がさらに好ましく,60モル%以上がよりさらに好ましい。また,ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸成分として90モル%以下が好ましく,85モル%以下がより好ましく,80モル%以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は,粒子Aとともに塗布層の屈折率が前述の範囲になるよう適宜調整するが,20モル%未満であれば粒子Aの添加量が多くなり,密着性が低下する場合がある。また,90モル%を超える場合は,樹脂の密着性が低下する場合がある。
・・・(中略)・・・
【0041】
本発明において,塗布層中に架橋構造を形成させるために,架橋剤を含有させても良い。架橋剤を含有させることにより,高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。また,塗布層に架橋構造を導入することによりハードコート塗布液溶剤に対する耐溶剤性が向上するため,塗布層厚みの変動による干渉縞の発現をより好適に抑制することができる。架橋剤としては,尿素系,エポキシ系,メラミン系,イソシアネート系,オキサゾリン系,カルボジイミド系等が挙げられる。これらの中で,塗液の経時安定性,高温高湿処理下の密着性向上効果からメラミン系,イソシアネート系,オキサゾリン系,カルボジイミド系が好ましい。また,架橋反応を促進させるため,触媒等を必要に応じて適宜使用される。
・・・(中略)・・・
【0043】
本発明において,塗布層中に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を含有させる必要がある。・・・(中略)・・・金属酸化物粒子の屈折率が1.7以上であれば,塗布層の屈折率を前記範囲で調整する点で好ましい。また,金属酸化物粒子の屈折率が3.0以下であればフィルムの透明性を維持する点で好ましい。
【0044】
金属酸化物粒子の塗布層中の含有量としては,用いる金属酸化物粒子の屈折率と適用するハードコート層の屈折率との関係で制御することが好ましく,具体的には全固形成分中,2質量%以上より好ましくは5質量%以上70質量%以下が好ましい。金属酸化物粒子の含有量の下限としては,7質量%以上がより好ましく,8質量%以上がさらに好ましい。また,金属酸化物粒子の含有量の上限としては,50質量%以下がより好ましく,30質量%以下がさらに好ましく,20質量%以下がよりさらに好ましく,15質量%以下が特に好ましい。ハードコート層の屈折率によって,前記範囲内で金属酸化物粒子を添加し,塗布層の屈折率を,1.5?1.7の範囲,好ましくは1.6?1.7の範囲で調整する。金属酸化物粒子の含有量が2質量%未満,あるいは5質量%未満であれば塗布層の屈折率を上記範囲に調整することが困難になる場合がある。また,金属酸化物粒子の含有量が70質量%を越えると塗布層の密着性が低下する場合があるので好ましくない。・・・(中略)・・・
【0053】
(光学用積層ポリエステルフィルム)
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムは,前述のポリエステルフィルムの塗布層に,電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層を設けることにより得られる。
・・・(中略)・・・
【0064】
本発明で得られた光学用易接着性ポリエステルフィルムの塗布層は,電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層に対して良好な接着性を有する。」

ウ 周知文献3の記載
周知文献3(特開2011-11364号公報)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該周知文献3には次の記載がある。(下線部は,後述する「周知技術」の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合成分を有するポリエステルフィルムの少なくとも片面に,ポリエステル樹脂と粒子Aと粒子Bを含有する接着性改質層を有する成型用ポリエステルフィルムであって,
前記ポリエステル樹脂が,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含み,
前記粒子Aが,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子であり,
前記粒子Bが,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子である,
成型用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂が,酸成分としてナフタレンジカルボン酸と,さらに下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分とを含む請求項1に記載の成型用ポリエステルフィルム。
(1)HOOC-(CH_(2))_(n)-COOH (式中,nは4≦n≦10の整数)
(2)HO-(CH_(2))_(n)-OH (式中,nは4≦n≦10の整数)
【請求項3】
前記接着性改質層に架橋剤を含むことを特徴とした請求項1または2に記載の成型用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記架橋剤が尿素系架橋剤,エポキシ系架橋剤,メラミン系架橋剤,イソシアネート系架橋剤,オキサゾリン系架橋剤,カルボジイミド系架橋剤から選ばれた少なくとも1種の架橋剤であることを特徴とする請求項3に記載の成型用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルムの前記接着性改質層面に塗布液を塗布硬化させてなるハードコート層を有する成型用ハードコートフィルム。」

(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,成型用ポリエステルフィルムおよび成型用ハードコートフィルムに関する。部材,成型体などの前面に装着して,虹彩状色彩を抑制し,ハードコート層との密着性に優れる成型用ポリエステルフィルムおよび成型用ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,成型用フィルムとしては,ポリ塩化ビニルフィルムが代表的である。しかし,近年の耐環境性のニーズにより,環境負荷が小さいポリエステル,ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂よるなるフィルムが使用されている。中でも,共重合ポリエステルを含むポリエステルフィルムは低い温度や低い圧力下での成型性に優れた特性を有する(特許文献1)。
【0003】
例えば,家電,自動車の銘板用または建材用部材など,成型用フィルムを外部に触れる位置に装着する場合,キズつき防止のため,成型用フィルムの表面硬度を補い,耐擦傷性を向上させる目的で,表面にハードコート層を設けることが行われる。また,基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために,これらの中間層として易接性を有する接着性改質層を設ける場合が多い。
【0004】
ハードコートフィルムには製品や装飾材などの表面に用いられることが多いため,視認性や意匠性が要求されている。そのため,任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため,ハードコート層の上層に,高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが行われている。
【0005】
しかしながら,パソコン,AV,家電などの製品や装飾材などの用途では,近年,高い意匠性及び高級性が求められ,それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。特に,近年流行のブラック系の配色がなされた製品では干渉斑が視認しやすくなっている。また,蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており,より干渉斑が出やすくなっている。さらに,反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため,反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。
【0006】
ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は,基材の成型用ポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.61)とアクリル樹脂からなるハードコート層の屈折率(例えば1.48)との差が大きいため発生するといわれている。・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
・・・(中略)・・・
【0010】
すなわち,本発明は,蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し,かつ,ハードコート層との密着性に優れる成型用ポリエステルフィルム及び該フィルムにハードコート層を積層してなる成型用ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に対し,本発明者は接着性改質層組成に関して鋭意検討を行った結果,所定の屈折率を有する塗布層に平均粒径200nm以上700nm以下という大きな粒子を加えた結果,厚み変動に対しても安定的に干渉斑を抑制できるという驚くべき効果を見いだし,本発明に至った。
【0012】
すなわち,本願の第1の発明は,共重合成分を有するポリエステルフィルムの少なくとも片面に,ポリエステル樹脂と粒子Aと粒子Bを含有する接着性改質層を有する成型用ポリエステルフィルムであって,前記ポリエステル樹脂が,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含み,前記粒子Aが,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子であり,前記粒子Bが,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子である成型用ポリエステルフィルムである。・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0013】
本発明の成型用ポリエステルフィルムは,該フィルムの接着性改質層にハードコート層を積層した際に,干渉斑抑制に優れ,かつハードコート層との密着性に優れる。」

(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0014】
(接着性改質層)
本発明の成型用ポリエステルフィルムには,共重合成分を有するポリエステルフィルムの少なくとも片面に,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する接着性改質層に設けることが重要である。すなわち,本発明の以下のような達成手段による。
【0015】
(1)接着性改質層の屈折率制御
本願発明の成型用ポリエステルフィルムは,接着性改質層の屈折率をハードコート層と基材ポリエステルフィルムとの中間付近に調整する必要がある。ハードコート層に使用する樹脂の組成によって,ハードコート層の屈折率は変動するため,接着性改質層の屈折率はそれに対応して調整することが望ましく,具体的には接着性改質層の屈折率を1.52?1.56の範囲に調整する必要がある。このようにすることで各界面屈折率差を小さくし,干渉斑を抑制する。一般に易接着性を有する接着性改質層では屈折率が低いため,接着性改質層の屈折率を上記範囲に制御する為に本願では,接着性改質層の用いる樹脂を酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用い,さらに屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を添加する。係る構成により密着性を有しながら,屈折率の高い接着性改質層にすることができる。これらの組成の詳細については後述する。
【0016】
(2)平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)
本願発明者は接着性改質層組成を鋭意検討した結果,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を接着性改質層に添加することで干渉斑抑制効果を見いだし本願発明に至った。粒子Bがこのような効果を奏する理由として,本願発明者は以下のように考えている。接着性改質層に平均粒径の比較的大きい粒子を添加することで,接着性改質層とハードコート層との界面に凹凸が形成される。このような凹凸構造によって,接着性改質層とハードコート層との界面で光の散乱が生じる。このようなランダムな光散乱により接着性改質層と基材ポリエステルフィルムとの界面で生じる反射光との位相の乱れが生じ,その結果,干渉斑の抑制効果が生じると考えられる。本願の成型用ポリエステルフィルムの接着性改質層はかかる構成を有するため,従来技術のように塗布厚みを高度に制御する必要もなく,各種の溶剤からなるハードコート層形成用塗布液でも広範囲に適用可能となった。
【0017】
また,粒子Bを接着性改質層に添加した効果として,ハードコート層との密着性が向上することを見いだした。これは,接着性改質層とハードコート層との界面に凹凸が形成されることによって,接着性改質層とハードコート層との界面面積が増加し,密着性に有利に作用したものと考えている。
・・・(中略)・・・
【0019】
本発明は,上記態様により,ハードコート層との密着性を維持しながら,蛍光灯下での虹彩状色彩を制御する。さらに,本発明の構成を以下に詳細する。
【0020】
本発明において,接着性改質層にポリエステル樹脂を含有させる必要があり,前記ポリエステル樹脂の酸性分として,ナフタレンジカルボン酸を含有させる必要がある。ナフタレンジカルボン酸を含有させることで,屈折率が増加し,蛍光灯下での虹彩状色彩を制御しやすくなる。また,耐湿熱性を向上させることができる。
【0021】
このようなナフタレンジカルボン酸としては,2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸性分として20%以上が好ましく,30%以上がより好ましく,50%以上がさらに好ましく,60%以上がよりさらに好ましい。また,ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸性分として90%以下が好ましく,85%以下がより好ましく,80%以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は,粒子Aとともに接着性改質層の屈折率が前述の範囲になるよう適宜調整するが,20%未満であれば粒子Aの添加量が多くなり,密着性が低下する場合がある。また,90%を超える場合は,樹脂の密着性が低下する場合がある。
・・・(中略)・・・
【0029】
本発明において,接着性改質層中に架橋剤を含有させても良い。架橋剤を含有させることにより,高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。架橋剤としては,尿素系,エポキシ系,メラミン系,イソシアネート系,オキサゾリン系,カルボジイミド系等が挙げられる。これらの中で,塗液の経時安定性,高温高湿処理下の密着性向上効果からメラミン系,イソシアネート系,オキサゾリン系,カルボジイミド系が好ましい。また,架橋反応を促進させるため,触媒等を必要に応じて適宜使用される。
・・・(中略)・・・
【0031】
本発明において,接着性改質層中に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を含有させる必要がある。・・・(中略)・・・金属酸化物粒子の屈折率が1.7以上であれば,接着性改質層の屈折率を前記範囲で調整する点で好ましい。また,金属酸化物粒子の屈折率が3.0以下であればフィルムの透明性を維持する点で好ましい。
【0032】
金属酸化物粒子の接着性改質層中の含有量としては,全固形成分中,3質量%以上70質量%以下が好ましい。金属酸化物粒子の含有量の下限としては,4質量%以上がより好ましく,5質量%以上がさらに好ましい。また,金属酸化物粒子の含有量の上限としては,50質量%以下がより好ましく,30質量%以下がさらに好ましく,20質量%以下がよりさらに好ましく,15質量%以下が特に好ましい。ハードコート層の屈折率によって,前記範囲内で金属酸化物粒子を添加し,接着性改質層の屈折率1.52?1.56の範囲で調整する。金属酸化物粒子の含有量が3質量%未満であれば接着性改質層の屈折率を上記範囲に調整することが困難になる場合がある。また,金属酸化物粒子の含有量が70質量%を越えると接着性改質層の密着性が低下する場合があるので好ましくない。・・・(中略)・・・
【0059】
(成型用ハードコートフィルム)
・・・(中略)・・・
【0060】
本発明で使用可能なハードコート性を有する層は,特に限定するものではなく,メラミン系,アクリル系,シリコーン系の電離放射線硬化型化合物が挙げられるが,なかでも高い表面硬度を得る点でアクリレート系電離放射線硬化型化合物が好ましい。」

エ 周知文献1ないし3の記載から把握される周知の技術事項
前記アないしウで摘記した周知文献1ないし3の記載から,次の技術事項が,本件優先日前に周知であったと認められる。

「ポリエステルフィルム上にハードコート層を積層したハードコートフィルムにおいて,
前記ポリエステルフィルムと前記ハードコート層の間に,塗布層を設け,
当該塗布層を,
屈折率を前記ハードコート層と前記ポリエステルフィルムとの中間付近に調整して,各界面屈折率差を小さくし,干渉斑を抑制するために,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を酸性分中の割合で20モル%以上90モル%以下含むポリエステル樹脂を含有するとともに,屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子を塗布層の全固形成分中5質量%以上70質量%以下で含有し,
前記ハードコート層との界面に凹凸を形成して,光の散乱を生じさせ,干渉斑の抑制効果を生じさせるとともに,前記凹凸によって界面面積を増加し,前記ハードコート層との密着性を向上させるために,平均粒径200nm以上700nm以下の粒子を含有し,
架橋剤として,尿素系架橋剤,エポキシ系架橋剤,メラミン系架橋剤,イソシアネート系架橋剤,オキサゾリン系架橋剤から選ばれた少なくとも1種を含有するもの
により形成し,
前記ハードコート層を,電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂により形成することによって,
蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し,かつ,ハードコート層との密着性,高温高湿下での密着性に優れるものとする技術。」(以下,「周知技術」という。)

4 取消理由1(進歩性欠如)についての判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
(ア) 技術的にみて,甲1発明の「面内位相差値R_(0)」,「偏光フィルム」,「偏光板」,「バックライト」及び「液晶表示装置」は,本件特許発明1の「リタデーション」,「偏光子」,「偏光板」,「バックライト光源」及び「液晶表示装置」にそれぞれ対応する。

(イ) 「ポリエチレンテレフタレート」は,「ポリエステル」の一種であるから,甲1発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は,「ポリエステルフィルム」の一種である。そして,甲1発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は,その「面内位相差値R_(0)」(本件特許発明1の「リタデーション」に対応する。以下,「ア 対比」欄において,甲1発明の構成を囲む「」に付された()中の文言は,当該甲1発明の構成に対応する本件特許発明1の発明特定事項を指す。)が200?1200nmもしくは2000?7000nmであるから,本件特許発明1の「リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルム」と,「リタデーションが所定の範囲にあるポリエステルフィルム」である点で共通するといえる。
また,甲1発明の「偏光板」は,偏光フィルムの片面に第一の接着剤層を介して積層された「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」を有しているところ,甲1の【0005】の「偏光板は通常,偏光フィルムの片面または両面に透明保護フィルムが設けられた構成を有し,」という記載や,【0010】の「本発明の目的は,ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板を・・・(中略)・・・提供することにある。」という記載等からみて,甲1発明において,「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」が偏光フィルムの保護フィルムとして用いられていることは明らかである。
以上によれば,甲1発明の「偏光板」は,本件特許発明1の「偏光板」と,「リタデーションが所定の範囲にあるポリエステルフィルムである偏光子保護フィルムが,偏光子の少なくとも片面に積層された偏光板」である点で共通し,甲1発明と本件特許発明1は,「リタデーションが所定の範囲にあるポリエステルフィルムである偏光子保護フィルムが,偏光子の少なくとも片面に積層された偏光板を有する液晶表示装置」である点で共通する。

(ウ)a 甲1発明の「バックライト」は,本件特許発明1の「バックライト光源」と,「バックライト光源」である点で共通し,甲1発明と本件特許発明1は,「バックライト光源を有する液晶表示装置」である点で共通する。
b なお,特許異議申立人は,特許異議申立書や平成30年6月7日提出の意見書において,甲1の出願時,白色LEDの主流は連続的な発光スペクトルを発する「青色LED+黄色蛍光体」であり,甲1発明の「発光ダイオード」もこのようなものと解釈するのが自然であるから,この点が相違点となることはない旨主張する。
しかしながら,液晶表示装置のバックライトに用いる白色光源としては,「青色LED+黄色蛍光体」のほかに,赤・緑・青の各色を発するLEDを組み合わせる方式のもの(以下,便宜上「RGB方式」という。)も周知なのであって(例えば,甲2の【0018】を参照。),このような「RGB方式」のバックライトではその発光スペクトルが連続的なものとならないことは,当業者に自明である。そして,甲1には,甲1発明の「光源として発光ダイオードを採用したバックライト」が,RGB方式のものであるのか,それとも,連続的な発光スペクトルを発するようなものなのかを特定できる記載や示唆は一切ない。
したがって,甲1発明の「光源として発光ダイオードを採用したバックライト」が,連続的な発光スペクトルを発するものに限られると認めることはできない。
よって,特許異議申立人の前記主張は採用できない。

(エ) 甲1発明では,偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は,20度以上50度以下に設定されているところ,偏光フィルムの吸収軸が偏光フィルムの透過軸に直交していること,及び延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸が延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸と一致することは,技術常識から自明である。
そうすると,甲1発明において,「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「遅相軸」は,「偏光フィルム」の「吸収軸」に対して40度(=90度-50度)以上70度(=90度-20度)以下の角度を有するものであるから,甲1発明は,本件特許発明1の「ポリエステルフィルムの配向主軸は偏光子の吸収軸に対して垂直であ」るとの発明特定事項に相当する構成を具備していない。

(オ) 前記(ア)ないし(エ)に照らせば,本件特許発明1と甲1発明は,
「リタデーションが所定の範囲にあるポリエステルフィルムである偏光子保護フィルムが,偏光子の少なくとも片面に積層された偏光板,及び
バックライト光源
を有する,
液晶表示装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本件特許発明1では,「ポリエステルフィルム」の「リタデーション」が,3000?30000nmであるのに対して,
甲1発明では,「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「面内位相差値R_(0)」は,200?1200nmもしくは2000?7000nmである点。

相違点2:
本件特許発明1が,酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂及び粒子を含有する「塗布層」であって,前記粒子が屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物であり,前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分中のナフタレンジカルボン酸の割合が20モル%以上90モル%以下であり,前記塗布層中の前記金属酸化物の含有量が2質量%以上70質量%以下である,「塗布層」を「ポリエステルフィルム」の少なくとも片面に有しているのに対して,
甲1発明は,そのような「塗布層」を有していない点。

相違点3:
本件特許発明1の「バックライト光源」が,連続的な発光スペクトルを有する白色光源であるのに対して,
甲1発明では,「バックライト」がそのような構成のものであることは特定されていない点。

相違点4:
本件特許発明1では,「ポリエステルフィルム」の「配向主軸」が「偏光子の吸収軸」に対して垂直であるのに対して,
甲1発明では,「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「遅相軸」が「偏光子の吸収軸」に対して40度以上70度以下の角度を有する点。

イ 判断
事案に鑑みて,まず,相違点2及び4についてまとめて判断する。
(ア) 甲1発明において,機能層として,ハードコート層を選択するとともに,蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し,かつ,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとハードコート層の密着性,高温高湿下での密着性に優れるものとするために,前記3(2)エで認定した周知技術を適用すること(すなわち,甲1発明を,相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすること)は,当業者が容易に想到し得たことといえる。

(イ) また,甲1の【0074】には,「本発明の偏光板を,偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合,・・・(中略)・・・偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は,0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。」と記載され,【0075】には,偏光性の強いバックライト光源として,バックライトユニット内に反射型偏光分離フィルムを備えるものが例示されているところ,甲1発明において,バックライトとして,ユニット内に反射型偏光分離フィルムを備えるもの等の偏光性の強いバックライトを採用し,かつ,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを備える偏光板の位置を,液晶セルの光出射側から,液晶セルのバックライト側に変更し,さらに,当該偏光板における偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度を0度とすること(すなわち,甲1発明を,相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすること)は,甲1の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たことといえる。(あるいは,引用発明として,そのような構成を有する液晶表示装置の発明を認定することができ,当該引用発明と本件特許発明1とを対比したときには,相違点4は相違点でないということもできる。)

(ウ) しかしながら,前記(イ)で述べた構成の変更を行った甲1発明において,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを備える偏光板は,液晶セルのバックライト側,すなわち,液晶表示装置の内部に位置しているのであって,技術的にみて,そのような位置の偏光板にハードコート層を設ける必要性はない。また,取消理由で引用した他の引用例(甲2及び甲5)にも,液晶セルの光出射側に設けられた偏光板の光出射側に位置する偏光子保護フィルムについて,その配向主軸を偏光子の吸収軸に対して垂直に設定することは,記載も示唆もされていない。
そうすると,前記(イ)で述べた構成の変更を行った甲1発明において,当業者が,前記(ア)で述べた構成の変更(機能層としてハードコート層を選択するとともに,前記3(2)エで認定した周知技術を適用するという構成の変更)をしようとすることはないというべきである。
すなわち,甲1発明を,相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成と,相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成とを同時に具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。(同様の理由で,相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を具備した引用発明において,当業者が,相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することはないともいえる。)
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本件特許発明1は,甲1発明,甲2記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ) なお,特許異議申立人は,甲8(特開2009-300611号公報)を提出した上で,平成30年6月7日提出の意見書において,甲1発明において,「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「遅相軸」が「偏光子の吸収軸」に対して垂直にすることは,甲8の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである旨主張する。
そこで検討すると,甲8には,特許異議申立人が主張するように,その【0024】及び【0025】には,「本発明の偏光板を後述する液晶パネルに用いるに際しては,集光偏光板として作用させる観点において,偏光板の第1の保護フィルムが積層されたのと反対側の主面が液晶セルと対向するように配置される。・・・(中略)・・・複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が大きいフィルムを第1の保護フィルムとして用いた場合,液晶表示装置が干渉による虹模様の着色を生じる場合がある。このような着色を抑制する観点からは,第1の保護フィルムの遅相軸方向(フィルム面内の屈折率が最大となる方向)と,偏光子の吸収軸方向が略平行または略直交となるように配置することが好ましい。」と記載されている。また,甲8の【0085】には,「本発明の偏光板は液晶セルの片側又は両側に配置することができる。液晶セルの片面に本発明の偏光板を配置する場合,液晶セルの光源側,視認側のいずれに配置することもできるが,偏光板の集光特性を発揮させる観点からは,光源側,すなわち,液晶パネル100と光源ユニット200を組み立てる際の光源ユニット200が配置される側の主面に本発明の偏光板を配置することが好ましい。」と記載されている。甲8のこれらの記載から,当業者は,偏光板の保護フィルムとして,リタデーション値の大きいものを用いた場合,干渉による虹模様の着色を生じる場合があり,これを抑制するためには,保護フィルムの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とが略平行または略直交となるように配置するのがよいことを理解できる。
一方,甲1の【0074】及び【0076】には,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを備える偏光板を,偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側偏光板として適用する場合には,「正面方向からの干渉色」の発現を防ぐため,「偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度」は小さい方が好ましく,その範囲としては0度以上15度以下が好ましいこと,及びそれ以外の偏光板として適用する場合には,「偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度」を20度以上50度以下の範囲とすることが,「液晶表示装置の色ムラ」を低減することができるので,好ましいことが記載されている。甲1のこれらの記載からは,当業者は,甲1発明においては,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを備える偏光板は,液晶セルの光出射側に配置されているため,正面方向からの干渉色は発現しないか,発現するとしても,その程度はさしたるものではなく,表示品質上「液晶表示装置の色ムラ」のほうがより重要な問題となるので,「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度」が20度以上50度以下に設定されているものと理解すると認められる。
甲1に記載された「正面方向からの干渉色」と,甲8に記載された「干渉による虹模様の着色」とは,同様の現象を指していると解されるから,当業者は,甲1発明においては,「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度」を略平行とする(すなわち,延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対して略垂直になるようにする)必要はなく,仮にそのように構成したとすれば,「液晶表示装置の色ムラ」が悪化すると考えるのが自然である。
そうであれば,当業者は,甲1発明において,甲8に記載された事項を適用して,「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度」を略平行に設定することはしないというべきである。
したがって,特許異議申立人の前記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし9について
本件特許発明2ないし9と甲1発明とを対比すると,いずれの本件特許発明も,少なくとも前記(1)ア(オ)で認定した相違点2及び4で相違する。
したがって,前記(1)イ(ア)及び(イ)で述べたのと同様の理由で,本件特許発明2ないし3,5ないし9は,甲1発明,甲2記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,本件特許発明4は,甲1発明,甲2記載事項,甲5に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
前記(1)及び(2)のとおりであるから,取消理由1によって,本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。

5 取消理由2(サポート要件違反)についての判断
本件特許明細書の【0006】には,「本発明は,かかる課題を解決するためのものであり,その目的は,液晶表示装置の薄型化に対応可能(即ち,十分な機械的強度を有する)であり,且つ虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない,液晶表示装置および偏光子保護フィルムを提供することである。また,本発明は,偏光子保護フィルム上にハードコート層を積層した際の干渉斑抑制に優れ,且つ,ハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れる偏光子保護フィルムを提供することを目的とする。」と記載されている。
当該記載からみて,本件特許発明1ないし9が解決しようとする主たる課題は,液晶表示装置の薄型化に対応して十分な機械的強度を有するとともに,虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない液晶表示装置を提供することにあり,偏光子保護フィルム上にハードコート層を積層した際の干渉斑抑制に優れ,且つ,ハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れるようなものとすることは,副次的な課題であると解することができる。
そして,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載等から,当業者は,前記主たる課題は,「リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルム」を「偏光子保護フィルム」として,偏光子の少なくとも片面に積層するという,本件特許発明1ないし9が有する発明特定事項によって,解決されると理解するといえる。
以上によれば,本件特許発明1ないし9が,発明の詳細な説明の記載や出願時の技術常識から,当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないとすることはできないから,本件訂正後の請求項1ないし9の記載がサポート要件に違反するとはいえない。
したがって,取消理由2によって,本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。

6 特許異議申立人の主張について
特許異議申立書に記載された申立理由のうち,取消理由通知で取り上げなかった理由はない。


第4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては,本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。また,他に本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リタデーションが3000?30000nmであるポリエステルフィルムの少なくとも片面に、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂及び粒子を含有する塗布層を有し、該粒子は、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物である、偏光子保護フィルムが、偏光子の少なくとも片面に積層された偏光板、及び
連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源
を有し、
前記ポリエステルフィルムの配向主軸は前記偏光子の吸収軸に対して垂直であり、
前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分中のナフタレンジカルボン酸の割合は20モル%以上90モル%以下であり、
前記塗布層中の前記金属酸化物の含有量は2質量%以上70質量%以下である、
液晶表示装置。
【請求項2】
塗布層が、尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びカルボジイミド系架橋剤から成る群より選択される少なくとも1種の架橋剤を更に含む、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上である、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
ポリエステルフィルムが3層以上からなり、その最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し、380nmの光線透過率が20%以下である、請求項1?3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
電子線若しくは紫外線硬化型アクリル樹脂又はシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層が該塗布層上に積層されている、請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
塗布層上に防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防眩層、反射防止防眩層及び帯電防止層からなる群より選択される1種以上の層を有する、請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
偏光子保護フィルムが、紫外線硬化型、電子線硬化型又は熱硬化型の接着剤を介して偏光子に積層されている、請求項1?6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記偏光板が液晶に対して射出光側に配される偏光板である、請求項1?7のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1?8のいずれかに記載の液晶表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-28 
出願番号 特願2012-284048(P2012-284048)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 841- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 関根 洋之
清水 康司
登録日 2017-05-26 
登録番号 特許第6146008号(P6146008)
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 液晶表示装置、偏光板及び偏光子保護フィルム  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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