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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G09G 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G |
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管理番号 | 1343316 |
審判番号 | 不服2018-323 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-11 |
確定日 | 2018-09-04 |
事件の表示 | 特願2013- 98797「画像処理装置、画像処理方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日出願公開、特開2014-219566、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年5月8日の出願であって、平成28年5月2日付けで手続補正がされ、平成29年2月28日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月2日付けで手続補正がされ、同年10月5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年1月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年10月5日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。 平成29年5月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4、13-14及び16に係る発明は、以下の引用文献5に記載されたものであり、また、引用文献5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により、特許を受けることができない。 引用文献等一覧 5.特開2011-112727号公報 第3 本願発明 本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成30年1月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「画像データを入力する入力手段と、 前記画像データに基づく画像が表示される表示画面の周囲の明るさに応じた明るさ情報を取得する取得手段と、 前記入力手段により入力された画像データのコントラストを、前記取得手段により取得された明るさ情報に基づいて補正する補正手段であって、前記取得手段により第1の明るさを示す明るさ情報が取得された第1の場合には、前記取得手段により前記第1の明るさより高い第2の明るさを示す明るさ情報が取得された第2の場合よりも、第1階調範囲に対応するコントラストが高くなり且つ前記第1階調範囲よりも階調値が大きい第2階調範囲に対応するコントラストが低くなるように補正する補正手段と、 前記補正手段によりコントラストが補正された画像データに基づく画像を前記表示画面に表示させる表示制御手段と を有し、 前記第1階調範囲は、前記入力手段により入力される画像データの取りうる階調値の最小値から中央値までの範囲であり、前記第2階調範囲は、前記入力手段により入力される画像データの取りうる階調値の中央値から最大値までの範囲であることを特徴とする画像処理装置。」 なお、本願発明2-14の概要は、以下のとおりである。 本願発明2-4は、本願発明1を減縮する発明である。 本願発明5-6(本件補正前の請求項6、8に係る発明に対応する。)は、本願発明1を減縮する発明であり、拒絶査定の対象とされていない発明である。 本願発明7-10(本件補正前の請求項9-12に係る発明に対応する。)は、拒絶査定の対象とされていない発明である。 本願発明11は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 本願発明12は、本願発明11を減縮する発明である。 本願発明13(本件補正前の請求項15に係る発明に対応する。)は、拒絶査定の対象とされていない発明である。 本願発明14は、本願発明1-10の画像処理装置の各手段として動作させるためのプログラムの発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、図とともに次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。 「【0001】 本発明は、反射型表示装置、および、反射型表示装置の制御回路に関する。」 「【0016】 電子ペーパーには、このコレステリック液晶のほか、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式等の多様な方式が提案されている。コレステリック液晶をはじめとした電子ペーパーは、表示のメモリ性を有しており、電力が供給されない状態で画像の表示を半永久的に保持してメモリ表示することができる。これにより、同一の画像を長時間メモリ表示するといった使い方に好適である。しかしながら、これらのような反射型の表示装置の表示は周辺光に依存するため、暗い環境になると視認性が大きく低下するという問題があった。このような周辺光に起因する問題を改善するための技術が、以下の特許文献1?3に開示されている。」 「【0022】 本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、照度依存性が抑制された反射型表示装置およびその制御回路を提供することを目的とする。」 「【0028】 図1は、実施例1に係る反射型の表示装置100に含まれる表示素子10の模式的断面図である。表示装置100は、一例として、カラー電子ペーパ等に用いられる。図1を参照して、表示素子10は、上側基板11と、上側基板11の下側に設けられた上側電極14と、下側基板13と、下側基板13の上側に設けられた下側電極15と、シール材16と、を含んでいる。また、光を入射させる側とは反対側の下側基板13の下(外面)には、必要に応じて可視光吸収層17が設けられている。」 「【0041】 源振クロック部25は、動作の基本となる基本クロックを発生する。分周部26は、基本クロックを分周して、後述する動作に必要な各種クロックを生成する。制御回路27は、基本クロック、各種クロックおよび画像データDに基づいて制御信号を生成して、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に送信する。 【0042】 コモンドライバ28は、制御回路27の指示に従って、768本のスキャンラインを駆動する。セグメントドライバ29は、制御回路27の指示に従って、1024本のデータラインを駆動する。RGBの各画素に与える画像データが異なるため、セグメントドライバ29は各データラインを独立して駆動する。コモンドライバ28は、RGBのラインを共通に駆動する。本実施例では、ドライバICとして、汎用の2値出力のSTNドライバを使用した。ドライバICとして、様々なものが使用可能である。 【0043】 セグメントドライバ29へ入力する画像データは、フルカラーの原画像を誤差拡散法によりRGB各16階調の4096色のデータに変換した、4ビットのデータD0-D3である。この階調変換として、高い表示品質を得られる方法が好ましく、誤差拡散法のほかにブルーノイズマスク法などが使用できる。また、階調変換の前後に、コントラスト強調処理などの画質向上処理を行うこともできる。照度センサ19は、表示装置100の環境照度をアナログ電流に変換する。照度センサ19が出力するアナログ電流は、A/D変換器30によってデジタル信号に変換されて制御回路27に入力される。 【0044】 図4は、駆動回路18によって実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。図4を参照して、照度センサ19は、表示装置100の環境照度をアナログ電流に変換する(ステップS1)。次に、A/D変換器30は、照度センサ19が出力するアナログ電流をデジタル信号に変換する(ステップS2)。次いで、制御回路27は、A/D変換器30の出力値に基づいて、元画像データの彩度の補正処理を行う(ステップS3)。次に、制御回路27は、元画像データのコントラストの補正処理を行う(ステップS4)。 【0045】 次いで、制御回路27は、ステップS3で得られた彩度とステップS4で得られたコントラストとから補正画像データを生成する(ステップS5)。次に、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29は、ステップS5で生成された補正画像データに基づいて、表示素子10を駆動する。それにより、表示素子10は、画像の表示を更新する(ステップS6)。」 「【0049】 制御回路27は、照度センサ19によって検出された照度が低い場合には、彩度を低下させる補正処理を行う。それにより、暗環境において人間の視覚が明度軸の感度により一層支配されやすくなるという性質を利用して、暗環境での視認性低下を抑制することができる。すなわち、照度依存性を抑制することができる。 【0050】 また、制御回路27は、照度センサ19によって検出された照度が低い場合には、コントラストを強調させる補正処理を行ってもよい。この場合、暗環境での視認性低下をより抑制することができる。図6(a)および図6(b)は、コントラストの強調の一例を説明するための図である。図6(a)は、通常時(明環境)でのコントラストを表している 。図6(a)においては、入力画素値と出力画素値とが一致している。これに対して、暗環境では、制御回路27は、図6(b)のように、暗い部分をより暗くしかつ明るい部分をより明るくする補正処理を行ってもよい(例えば、トーンカーブのS字化、ヒストグラム変換など)。」 また、引用文献5の図3(駆動回路の全体構成を説明するためのブロック図である。)には、「駆動回路」として、「制御回路27」、「コモンドライバ(RGB共通)28」、「セグメントドライバ(RGB独立)29」及び「照度センサ19」が示されており、また、「制御回路27」に「画像データ」が入力され、「制御回路27」から「画像データ(4bit)」が「セグメントドライバ(RGB独立)29」に出力されることが示されている。 したがって、引用文献5には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「反射型表示装置の駆動回路(段落【0001】及び図3より。以下、同様。)であって、駆動回路は、制御回路27、コモンドライバ28、セグメントドライバ29及び照度センサ19を有し、 制御回路27は、基本クロック、各種クロックおよび画像データDに基づいて制御信号を生成して、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に送信し(【0041】)、 制御回路27に画像データが入力され、制御回路27から画像データ(4bit)がセグメントドライバ29に出力され(図3)、 セグメントドライバ29へ入力する画像データは、RGB各16階調のデータに変換した、4ビットのデータあり(【0043】)、 照度センサ19は、表示装置100の環境照度をアナログ電流に変換し、照度センサ19が出力するアナログ電流は、A/D変換器30によってデジタル信号に変換されて制御回路27に入力され(【0043】)、次に、制御回路27は、元画像データのコントラストの補正処理を行ない(【0044】)、次いで、制御回路27は、得られたコントラストから補正画像データを生成し、次に、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29は、生成された補正画像データに基づいて、表示素子10を駆動し(【0045】)、 制御回路27は、照度センサ19によって検出された照度が低い場合には、コントラストを強調させる補正処理を行ってもよく、この場合、通常時(明環境)でのコントラストは、入力画素値と出力画素値とが一致しているが、これに対して、暗環境では、制御回路27は、暗い部分をより暗くしかつ明るい部分をより明るくする補正処理を行ない(トーンカーブのS字化)(【0050】)、暗環境での視認性低下をより抑制することができる(【0050】)、 反射型表示装置の制御回路(【0001】)。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 引用発明における「制御回路27」には、「画像データが入力され」るから、引用発明における「制御回路27」が「画像データ」を入力する手段を有していることは明らかである。 よって、引用発明の「制御回路27」における「画像データ」を入力する手段が、本願発明1における「画像データを入力する入力手段」に相当する。 イ 引用発明における「表示素子10」は、「制御回路27」によって「生成された補正画像データ」に基づいて「駆動」されているから、引用発明における「表示素子10」により表示される画面が、本願発明1における「前記画像データに基づく画像が表示される表示画面」に相当する。 ウ 引用発明における「照度センサ19によって検出された照度」が本願発明1における「周囲の明るさに応じた明るさ情報」に相当する。 そして、引用発明における「制御回路27」には、「照度センサ19によって検出された」「表示装置100の環境照度」が「入力」されているから、引用発明における「制御回路27」が、「表示装置100の環境照度」を取得する取得手段を有していることは明らかである。 よって、上記「イ」を踏まえると、引用発明における「制御回路27」が有している、「照度センサ19によって検出された」、「表示装置100の環境照度」を取得する取得手段が、本願発明1における「前記画像データに基づく画像が表示される表示画面の周囲の明るさに応じた明るさ情報を取得する取得手段」に相当するといえる。 エ 引用発明における「暗環境」とは、「照度センサ19によって検出された照度が低い場合」であるから、本願発明1における「前記取得手段により第1の明るさを示す明るさ情報が取得された第1の場合」に相当するといえる。 オ 引用発明における「通常時(明環境)」とは、「照度センサ19によって検出された照度」が「暗環境」よりも高い場合であることは明らかであるから、本願発明1における「前記取得手段により前記第1の明るさより高い第2の明るさを示す明るさ情報が取得された第2の場合」に相当するといえる。 カ 引用発明における「制御回路27」は、「照度センサ19によって検出された照度が低い場合には、コントラストを強調させる」ように「元画像データのコントラストの補正処理を行な」っているから、本願発明1における「前記入力手段により入力された画像データのコントラストを、前記取得手段により取得された明るさ情報に基づいて補正する補正手段」に相当する。 キ 上記「エ」、「オ」及び「カ」を踏まえると、引用発明の「制御回路27」が行う「元画像データのコントラストの補正処理」は、「通常時(明環境)でのコントラストは、入力画素値と出力画素値とが一致しているが、これに対して、暗環境では」、「暗い部分をより暗くしかつ明るい部分をより明るくする補正処理を行う(トーンカーブのS字化)」ことで、「コントラストを強調」させる処理であるから、本願発明1における「前記取得手段により第1の明るさを示す明るさ情報が取得された第1の場合には、前記取得手段により前記第1の明るさより高い第2の明るさを示す明るさ情報が取得された第2の場合よりも、第1階調範囲に対応するコントラストが高くなり且つ前記第1階調範囲よりも階調値が大きい第2階調範囲に対応するコントラストが低くなるように補正する」こととは、「前記取得手段により第1の明るさを示す明るさ情報が取得された第1の場合、前記取得手段により前記第1の明るさより高い第2の明るさを示す明るさ情報が取得された第2の場合に対し、コントラストを補正」する点で共通するといえる。 ク 引用発明における「コモンドライバ28およびセグメントドライバ29」は、「制御回路27」が「コントラストを強調させる補正処理を行」うことで「生成された補正画像データに基づいて、表示素子10を駆動」しているから、本願発明1における「前記補正手段によりコントラストが補正された画像データに基づく画像を前記表示画面に表示させる表示制御手段」に相当する。 ケ 引用発明では、「通常時(明環境)でのコントラストは、入力画素値と出力画素値とが一致している」とされていることから、引用発明の「制御回路27」に入力される「元画像データ」が、「入力画素値」、つまり「階調」を有していることは明らかである。 よって、引用発明の「制御回路27」に入力される「元画像データ」が、「入力画素値」、つまり「階調」を有していることと、本願発明1における「前記第1階調範囲は、前記入力手段により入力される画像データの取りうる階調値の最小値から中央値までの範囲であり、前記第2階調範囲は、前記入力手段により入力される画像データの取りうる階調値の中央値から最大値までの範囲であること」とは、「前記入力手段により入力される画像データは階調を有する」点で共通する。 コ 引用発明における「反射型表示装置の駆動回路」が、本願発明1における「画像処理装置」に相当する。 よって、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。 (一致点) 画像データを入力する入力手段と、 前記画像データに基づく画像が表示される表示画面の周囲の明るさに応じた明るさ情報を取得する取得手段と、 前記入力手段により入力された画像データのコントラストを、前記取得手段により取得された明るさ情報に基づいて補正する補正手段であって、前記取得手段により第1の明るさを示す明るさ情報が取得された第1の場合、前記取得手段により前記第1の明るさより高い第2の明るさを示す明るさ情報が取得された第2の場合に対し、コントラストを補正する補正手段と、 前記補正手段によりコントラストが補正された画像データに基づく画像を前記表示画面に表示させる表示制御手段と を有し、 前記入力手段により入力される画像データは階調を有することを特徴とする画像処理装置。」 (相違点) 本願発明1では、補正手段が「前記取得手段により第1の明るさを示す明るさ情報が取得された第1の場合には、前記取得手段により前記第1の明るさより高い第2の明るさを示す明るさ情報が取得された第2の場合よりも、第1階調範囲に対応するコントラストが高くなり且つ前記第1階調範囲よりも階調値が大きい第2階調範囲に対応するコントラストが低くなるように補正」し、「前記第1階調範囲は、前記入力手段により入力される画像データの取りうる階調値の最小値から中央値までの範囲であり、前記第2階調範囲は、前記入力手段により入力される画像データの取りうる階調値の中央値から最大値までの範囲である」のに対し、引用発明では、「制御回路27」が、「通常時(明環境)でのコントラストは、入力画素値と出力画素値とが一致しているが、これに対して、暗環境では」、「暗い部分をより暗くしかつ明るい部分をより明るくする補正処理を行う(トーンカーブのS字化)」ことで、「コントラストを強調」する処理を行っている点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 ア 上記相違点は、実質的な相違点であるかについて (ア)本願の明細書には、「コントラスト補正テーブル」の形状が、「直線状」、「S字状カーブ」及び「W字状カーブ」の場合について、次のとおり記載されている。 「【0089】 コントラストが補正されない場合、直線状のコントラスト補正テーブル171により、入力階調がそのまま出力階調になる。視野内平均輝度の低下に伴い、コントラストが上がる方向にコントラスト補正を施すため、直線状のコントラスト変換テーブル171からS字状カーブのコントラスト変換テーブル172に変更される。」 「【0092】 このように、視野内平均輝度の低下に応じて、S字状カーブの逆ガンマ変換テーブルを生成することにより、高いコントラストを得ることが可能となる。 【0093】 また、本実施形態に係る画質調整装置においても、画面内の細かい部分に対する錐体視と桿体視との比率に対応するためには、コントラスト補正テーブルの形状をW字状カーブとし、画面内の暗部のコントラストを上げ、明部のコントラストを下げることにより、よりきめ細かく画質を向上させることが可能となる。」 (イ)すると、「コントラスト補正テーブルの形状」が「S字状カーブ」の場合には、コントラストが補正されない場合(「直線状」)に比べ、高いコントラストを得ることが可能であるが、「W字状カーブの場合」とは異なって、画面内の暗部だけでなく、明部のコントラストも上がることがわかる。 (ウ)したがって、引用発明のとおり、「通常時(明環境)でのコントラストは、入力画素値と出力画素値とが一致しているが、これに対して、暗環境では」、「暗い部分をより暗くしかつ明るい部分をより明るくする補正処理を行う(トーンカーブのS字化)」と、暗い部分だけでなく、明るい部分のコントラストも上がることになる。 (エ)これに対し、本願発明1では、補正手段が「前記取得手段により第1の明るさを示す明るさ情報が取得された第1の場合には、前記取得手段により前記第1の明るさより高い第2の明るさを示す明るさ情報が取得された第2の場合よりも」、「前記入力手段により入力される画像データの取りうる階調値の中央値から最大値までの範囲」にあたる「第2階調範囲に対応するコントラストが低くなるように補正」しているから、「第2階調範囲」では上記引用発明とは真逆のコントラスト補正を行っていることがわかる。 (オ)したがって、上記相違点は、実質的な相違点である。 イ 上記相違点は、当業者が容易になし得たものであるかについて 引用発明は、「反射型の表示装置の表示は周辺光に依存するため、暗い環境になると視認性が大きく低下するという問題があった」(引用文献1の段落【0016】)という、周辺光に依存する反射型の表示装置に特有の課題を解決するものであるから、引用発明において、「暗環境では」、「通常時(明環境)」よりも、「暗い部分をより暗くし」(暗い部分におけるトーンカーブをS字化し)てコントラストが上がるようにしつつ、明るい部分については、これとは逆に(例えば、明るい部分におけるトーンカーブを「逆S字化」して)コントラストが低くなるようにして、上記相違点に係る本願発明1のコントラスト補正とすることは、これにより周辺光に依存する反射型の表示装置の視認性向上が期待できない以上、当業者に動機付けられないことである。 ウ 本願発明1の新規性、進歩性について 以上のとおり、本願発明1は引用発明と同一ではなく、また、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 2 本願発明2-4について 本願発明2-4は、本願発明1を減縮する発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明と同一ではなく、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものということもできない。 3 本願発明11について 本願発明11は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明と同一ではなく、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものということもできない。 4 本願発明12について 本願発明12は、本願発明11を減縮する発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明と同一ではなく、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものということもできない。 5 本願発明14について 本願発明14は、本願発明1-10の画像処理装置の各手段として動作させるためのプログラムの発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明と同一ではなく、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものということもできない。 第6 原査定について 以上のとおりであって、本願発明1-4,11、12及び14は、拒絶査定において引用された引用文献5に記載された発明と同一ではなく、また、引用文献5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものともいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-08-20 |
出願番号 | 特願2013-98797(P2013-98797) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小野 健二、森口 忠紀 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
清水 稔 中村 説志 |
発明の名称 | 画像処理装置、画像処理方法及びプログラム |
代理人 | 國分 孝悦 |