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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1343324
審判番号 不服2014-18167  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-11 
確定日 2018-08-13 
事件の表示 特願2011-214012号「電池充電器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年1月12日出願公開、特開2012-10593号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年6月25日(パリ条約による優先権主張2003年11月19日、2003年11月19日、2003年11月20日、2003年11月20日、2003年11月24日、2004年5月24日、2004年5月25日、米国)に出願した特願2004-188878号の一部を平成19年12月5日に新たな特許出願とした特願2007-315202号の一部を平成23年9月29日に新たな特許出願としたものであって、平成26年6月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年9月11日に本件審判が請求がなされ、当審において平成27年8月6日付けで拒絶理由を通知したところ、平成27年11月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、当審において平成28年3月8日付けで拒絶理由を通知したところ、平成28年6月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、当審において平成28年11月15日付けで拒絶理由を通知したところ、平成29年2月15日付けで付けで意見書及び手続補正書が提出され、当審において平成29年3月15日付けで拒絶理由を通知したところ、平成29年6月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、当審において平成29年7月11日付けで拒絶理由を通知したところ、平成29年10月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

平成29年10月12日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲は以下のとおり。
「【請求項1】
電池充電器であって、
公称電圧を有する電池パックに電気的に接続する、少なくとも3つの端子と、
制御器とを備え、
前記電池パックは、各電池セルが同一のタイプのリチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを含み、前記複数の電池セルの各々のセルは個々の電圧を有し、
前記制御器は、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電モジュールの中から選択を行い、
前記複数の異なる充電モジュールの少なくとも1つの充電モジュールは、前記制御器が、パルス化された充電電流が前記少なくとも3つの端子の中の2つの端子を介して前記電池パックに供給されることを可能にするものであり、パルス化された充電電流のデュティーサイクルは、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧に基づいて変更され、
前記電池充電器は、前記電池パックから、前記電池パックの温度に関する情報、及び前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧に関する情報を受け取るように構成される、
ことを特徴とする電池充電器。
【請求項2】
請求項1に記載の電池充電器において、前記電池パックの公称電圧は、約9.6Vから約30Vの範囲に含まれていることを特徴とする電池充電器。
【請求項3】
請求項1に記載の電池充電器において、前記複数の充電モジュールは、急速充電モジュールを含むことを特徴とする電池充電器。
【請求項4】
請求項1に記載の電池充電器において、前記複数の充電モジュールは、細流充電モジュールを含むことを特徴とする電池充電器。
【請求項5】
請求項1に記載の電池充電器において、前記少なくとも3つの端子は、第2の電池パックに電気的に接続するように構成され、前記第2の電池パックは、複数の電池セルを含み、各電池セルは、同一のタイプの化学的性質を有し、前記化学的性質は、ニッケルカドミウムの化学的性質又はニッケル水素の化学的性質であり、
前記電池充電器は、さらに前記第2の電池パックに充電電流を供給するように構成されていることを特徴とする電池充電器。
【請求項6】
請求項1に記載の電池充電器において、前記制御器は、前記複数の電池セルのリチウムベースの化学的性質を識別するように動作可能であることを特徴とする電池充電器。
【請求項7】
請求項1に記載の電池充電器において、前記電池パックは手持ち型の電動工具に実施可能であることを特徴とする電池充電器。
【請求項8】
請求項7に記載の電池充電器において、前記手持ち型の電動工具電池パックは、丸鋸及びドライバドリルの一方であることを特徴とする電池充電器。」

第2 平成29年7月11日付け当審拒絶理由
平成29年7月11日付け当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。

1.請求項1に「電池パックは、各電池セルがリチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを含み・・」との訳語があるが、電池パックの全ての電池セルがリチウムベースの化学的性質を有するものか否か不明確である。
(1)電池パックの全ての電池セルはリチウムベースの化学的性質を有するものでないとすると、電池パックが、リチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを含んでいれば、他の種類の電池セルを含んでいても良いこととなるが、リチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルと他の種類の電池セルを含んだ電池パックは、発明の詳細な説明に記載されていない。
(2)電池パックの全ての電池セルはリチウムベースの化学的性質を有するものであるとしても、本願明細書【0004】に「リチウムベースの電池、例えば、リチウムコバルト電池、リチウムマンガン電池、およびスピネル型の電池を完全に充電できる電池充電器を提供する。」と記載されている様に、リチウムベースの電池にも様々な形式のものが存在し起電力は同じでなく、そのような、起電力が異なる電池セルが混在するものも、発明の詳細な説明に記載されていないし、そのようなものにおいては、本願発明の、電池セルの電圧との比較に基づいて充電動作モジュールの選択、デュティーサイクル変更を行うこととの関係において、(適切な選択、変更が行えるとは考えられないので)制御器の構成(制御内容)が不明確である。
(3)なお、請求人は平成29年6月15日付け意見書において、「この補正は、少なくとも本願明細書の段落〔0011〕における記載等により、明確にサポートされている。」旨の主張を行っているが、【0011】には「電池20は・・5個の電池セルを含む。いくつかの構成では、それぞれの電池セル60がリチウムイオンの化学的性質を有し、かつそれぞれの電池セル60が、例えば、約3.6Vまたは約4.2Vなどの同じ公称電圧を有する。」と記載されているものの、リチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルと他の種類の電池セルを含んだ電池パックは記載されておらず、リチウムイオンの化学的性質を有するものであっても、それぞれの電池セル60は、同じ公称電圧を有するものしか記載されていない。

2.請求項1に「制御器は、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電動作モジュールの中から選択を行い」との訳語があるが、
(1)【発明の詳細な説明】の記載において、「充電動作モジュール」なる記載は、【図面の簡単な説明】の【図28】?【図38】に存在するのみであり、「充電動作モジュール」がどのようなものであるか、構成が不明である。
発明の詳細な説明に記載されている、「不良パックモジュール205」「温度範囲外モジュール210」の様な、充電を行わないモジュールが、請求項1の「充電動作モジュール」に含まれるのか否か不明であり、仮に含まれるならば、「充電動作モジュール」とはどのようなモジュールであるのか不明である。
また、【発明の詳細な説明】の記載には、細流充電モジュール215、段階充電モジュール220、急速充電モジュール225、維持充電モジュール230が「充電モジュール215?230」として記載されているものの、請求項1の「充電動作モジュール」とは異なる用語で記載されたものであって、「充電モジュール215?230」が、請求項1の「充電動作モジュール」そのものであるのか、また、「充電モジュール215?230」以外のどのようなモジュールが、請求項1の「充電動作モジュール」に含まれるのか不明である。
そして、上記で請求項1のどのようなモジュールが、「充電動作モジュール」に含まれるのか不明であるとしたモジュール(発明の詳細な説明記載の充電モジュール215?230以外で「充電動作モジュール」とされるのもの。)は、発明の詳細な説明の記載を参照しても、請求項1の「充電動作モジュール」に含まれるのか否か不明なものであって、出願時の技術常識に照らしても、そのような含まれるのか否か不明なモジュールも包含する請求項1の「充電動作モジュール」まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないので、請求項1の「充電動作モジュール」は、発明の詳細な説明に記載されていたものといえない。
(2)「2つ又はそれ以上の電圧範囲」「2つ又はそれ以上の温度範囲」との記載では、電圧範囲、温度範囲は任意のものとなるが、例えば、電圧範囲が100?999vや、温度範囲が100?999℃と比較したところで、100vを越える電圧や、100℃を越える温度で適切な充電動作がなし得るとは考えがたく、「複数の異なる充電動作モジュールの中から選択を行」うことの技術的意味が不明確であり、適切な選択肢も特定できないので、制御器の構成(制御内容)が不明確である。

3.請求項1に「制御器は、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電動作モジュールの中から選択を行い」との訳語があり、当該訳語は、例えば、100個の電池セルの個々の電池セルの100の電圧すべてと、2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較で、充電動作モジュールの選択を行うこととなるが、比較方法が不明であり、【発明の詳細な説明】にも、そのような構成は記載されていない。
また、個々の電池セルの電圧等と比較すると、電池セルの数だけの比較結果が発生するが、例えば、セル電圧が最小値のセルの電圧との比較結果か、最大値のセルの電圧との比較結果かで、結果は変わるので、どの比較結果を採用するか特定されない場合、適切な選択肢も特定できないので、制御器の構成(制御内容)が不明確である。
なお、請求人は平成29年6月15日付け意見書において、「電池セルを特定するための例示的プロセスは、少なくとも本願明細書の段落〔0107〕において説明されている。」、「請求項1記載の比較において使用される電池セルを特定するための他の多くの任意のプロセスを実行する電池充電器を包含するものである。『2つ又はそれ以上の電圧範囲』との比較のためにどの特定の電池セルを選択するかに拘らず、また、特定のセルの選択のためのプロセスに拘らず、請求項1記載の電池充電器は、電池充電のための新規なシステムを提供するものである。」旨の主張を行っているが、請求項1の記載は「複数の電池セルの個々の電池セルの電圧」と「電圧範囲」とを比較するものであって、特定の電池セルを選択して、特定の電池セルの電圧のみと「電圧範囲」とを比較するものではないので、上記主張を参酌しても、100個の電池セルの個々の電池セルの100の電圧すべてと、2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較で、充電動作モジュールの選択を行う構成が、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないし、選択を行う構成が明確であるともいえない。

4.請求項1に「制御器は、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電動作モジュールの中から選択を行い」との訳語があるが、リチウム二次電池であっても形式により発生電圧は様々(例えば、特開平3-22357号公報では「従来の活物質を用いた電池、例えば二酸化マンガン/リチウム系では、一般に公称電圧が3vの2次電池となるが、活物質の種類によっては、上述のように、さらに高電圧の電池を得ることができる。」とされている。)であって、電池セルの起電力が異なる場合に、1種類の「2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較」で適当な充電動作モジュール選択ができるのか不明確である。
また、単に「比較に基づいて・・選択を行い」では、「基づいて」は様々な基づき方が考えられるため、各比較の結果と、比較に基づいて選択される充電動作モジュールの内容が特定されないので、制御器の構成(制御内容)が不明確である。

5.請求項1に「電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電動作モジュールの中から選択を行い」との訳語があるが、「電池セルの温度」と「電池パックの温度」とは(実質的に相関関係を有する場合もあるが、)原則的には、別々のものであり、「電池セルの温度」が充電に影響をあたえるものであるとしても、「電池セルの温度」と関連しない場合の「電池パック」の温度との比較に基づく充電動作モジュール選択がどのような技術的意義を有するのか、発明の詳細な説明の記載を見ても不明であり、その場合、適切な選択肢も特定できないので、制御器の構成(制御内容)が不明確である。
なお、請求人は平成29年6月15日付け意見書において、「本願明細書の段落〔0040〕では、『「電池温度」または「電池の温度」という条件は、全体として計測した電池(すなわち、電池セル、電池構成要素等々)の温度、および/または個々にもしくは集合的に計測した電池セルの温度を包含することができる。』と説明されている」旨の主張を行っているが、【0040】は「電池温度」または「電池の温度」という条件に、全体として計測した電池の温度や、個々にもしくは集合的に計測した電池セルの温度を包含することができることを記載したにすぎず、「電池セルの温度」と関連しない場合の「電池パック」の温度に基づく充電動作モジュール選択の技術的意義を表すものではない。

6.請求項1に「制御器は、・・2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、・・2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電動作モジュールの中から選択を行い」との訳語があり、「2つ又はそれ以上の電圧範囲」との一度の比較、及び、「2つ又はそれ以上の温度範囲」との一度の比較に基づいて、一度に「複数・・の中から選択」がなされるものと解されるが、【発明の詳細な説明】に記載された実施例は、「【0060】ステップ355で、電池電圧が4.3V/セルよりも大きければ、・・不良パックモジュール205に進む。」「【0061】ステップ370で、電池温度が-10℃よりも低いかまたは65℃よりも高ければ、・・温度範囲外モジュール210に進む。」「【0062】ステップ380で、電池温度が-10℃と0℃の間にあれば、・・ステップ385で・・確認する。電池電圧が3.5V/セル未満であれば、・・細流充電モジュール215に進む。」「【0063】ステップ395で、・・電池電圧が3.5V/セルから4.1V/セルまでの電圧範囲に含まれていなければ、・・維持モジュール230に進む。」等、複数回の電圧との比較、複数回の温度との比較を行って、比較毎にモジュール選択がなされるものであるので、上記【発明の詳細な説明】の記載は、上記請求項1の記載事項の実施例とはならないことになり、【発明の詳細な説明】のどの記載が、上記請求項1の記載事項の実施例になるのか不明である。
また、通常「電池電圧が4.3V/セルよりも大きければ・・に進む。」は、電圧との比較であって、電圧範囲との比較とはならず、また、ステップ560、575等、モジュールの選択を行った後の、温度範囲との比較、電圧範囲との比較は、それらに基づいて「複数の異なる充電動作モジュールの中から選択」を行うものでないので、請求項1の「2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較」「2つ又はそれ以上の温度範囲との比較」に含まれるものではないと解されるが、それで良いのかも不明確である。
仮に、比較が、適宜の回数、タイミングでも良いものであるとすると、複数の電圧や温度との比較に基づいて充電手段を選択する周知技術(例えば、拒絶査定の引用文献3参照)との差異が見いだせないものとなる。

7.請求項1に「少なくとも1つの充電動作モジュールは、前記制御器が、パルス化された充電電流が前記少なくとも3つの端子の中の2つの端子を介して前記電池パックに供給されることを可能にするもの」との訳語があり、少なくとも3つの端子の内の任意の2つの端子を介して充電電流を供給するものになるが、充電電流の供給は、例えば、図4では、正の端子80、負の端子85でなされるものであっても、検出端子90を介してなされるものでなく、図17においても同様であって、少なくとも3つの端子の中の任意の2つの端子を介して充電電流を供給するものは、発明の詳細な説明に記載されておらず、構成が不明瞭である。

8.請求項1に「パルス化された充電電流のデュティーサイクルは、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧に基づいて変更され」との訳語があり、例えば、100個の電池セルの個々の電池セルの100の電圧すべてに基づいてデュティーサイクルを変更するものが含まれるが、最小値のセル電圧に基づいて決められるデュティーサイクルと、最大値のセル電圧に基づいて決められるデュティーサイクルとは、異なるものとなり、同時に異なるデュティーサイクルで、1つの電池パックに充電電流を供給することはできないので構成が不明確である。

9.請求項1はものをあらわす充電器の発明であり、情報を受けとる構成が存在しなければならないが、請求項1に「電池パックから、前記電池パックの温度に関する情報、及び前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧に関する情報を受け取るように構成される」との訳語があるのみで、情報を受けとるための構成は記載されていないので、充電器の構成が不明確である。
例えば、図4、図17においては、検出端子90が用いられているが、請求項1にはそのような構成は記載されていない。

10.請求項5に、「少なくとも3つの端子は、各電池セルがニッケルカドミウムの化学的性質及びニッケル水素の化学的性質の一方を有する複数の電池セルを含む第2の電池パックに電気的に接続するように構成され、前記電池充電器は、さらに前記第2の電池パックに充電電流を供給するように構成されている」との訳語があるが、電池パックの全ての電池セルが、(a)ニッケルカドミウムの化学的性質を有するか、または、ニッケル水素の化学的性質を有するのか、(b)ニッケルカドミウムの化学的性質及びニッケル水素の化学的性質の一方を有する(両者が混ざって良い)のか、(c)それ以外であるのか不明確である。
そして、上記「(b)ニッケルカドミウムの化学的性質及びニッケル水素の化学的性質の一方を有する(両者が混ざって良い)」であるとすると、ニッケルカドミウムの化学的性質を有する電池セルと、ニッケル水素の化学的性質を有する電池セルの両方を含んだ電池パックは、発明の詳細な説明に記載されていない。
また、上記(b)(c)のようなものにおいては、本願発明の、電池セルの電圧との比較に基づいて充電動作モジュールの選択、デュティーサイクル変更を行うこととの関係において、(適切な選択、変更が行えるとは考えられないので)技術的意味も不明確であり、適切な選択肢も特定できないので、制御器の構成(制御内容)が不明確である。

11.請求項5に、「請求項1に記載の電池充電器において、前記少なくとも3つの端子は、各電池セルがニッケルカドミウムの化学的性質及びニッケル水素の化学的性質の一方を有する複数の電池セルを含む第2の電池パックに電気的に接続するように構成され、前記電池充電器は、さらに前記第2の電池パックに充電電流を供給するように構成されている」との訳語があるが、「請求項1に記載の電池充電器」の「電池パックに電気的に接続する、少なくとも3つの端子」に接続する電池パックは「各電池セルがリチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを含」むものであるので、請求項5記載の電池充電器は、「各電池セルがリチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを含」む電池パックと、第2の電池パックとに電気的に接続するように構成され、両方に充電電流を供給するように構成されることとなるが、両方に電気的に接続して、充電電流を供給する電池充電器は、発明の詳細な説明に記載されておらず、構成が不明確である。
また、1種類の「複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較」(「請求項1に記載の電池充電器」であるので、当該電圧範囲や温度範囲は「リチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セル」に対応するものと解される)では、ニッケルカドミウムの化学的性質や、ニッケル水素の化学的性質を有する電池セルに対して適切な選択、変更が行えるとは考えられないので、適切な選択肢も特定できず、発明の技術的意味が不明であり、制御器の構成(制御内容)も不明確である。(上記1.参照のこと。)」

第3 当審の判断
1.請求項1に「電池パックは、各電池セルが同一のタイプのリチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを含み」と記載されている。
当該記載では、電池パックが、同一のタイプのリチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを有していれば、他の種類の電池セルを含んでいても良いこととなるが、リチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルと他の種類の電池セルを含んだ電池パックは、発明の詳細な説明に記載されていない。

[請求人の主張について]
請求人は平成29年10月12日付け意見書(以下「意見書」という。)IV.1.において「補正により、電池パックを構成する各電池セルが同一のタイプのリチウムベースの化学的性質を有することが一層明確化された」旨の主張を行っているが、上記のとおりであり、請求人の上記主張は採用できない。

2.請求項1に「制御器は、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電モジュールの中から選択を行い」と記載されている。
「2つ又はそれ以上の電圧範囲」、「2つ又はそれ以上の温度範囲」との記載では、電圧範囲、温度範囲は任意のものとなるが、例えば、電圧範囲100?999vと電池セルの電圧、温度範囲100?999℃と電池パックの温度とを比較したところで、100vを越える電圧や、100℃を越える温度で適切な充電動作がなし得るとは考えがたく、充電モジュールの中から適切な選択を行えないので制御器の構成(制御内容)が不明確である。

[請求人の主張について]
請求人は意見書IV.2.において、「本願明細書の記載に基づけば、当業者であれば、請求項1に記載された電池充電器の電圧範囲、温度範囲を如何にして実施するかを、また、例えば、本願明細書の記載に基づき上記範囲を適宜変更し得ることを理解する」、「当業者にとって、適当な充電がなされないように電圧範囲、温度範囲を変更することなど想定し得ないことというべきである。」旨の主張を行っているが、請求項1は上記のとおり電圧範囲、温度範囲は任意のものとなっており、請求人の上記主張は採用できない。

3.請求項1に「制御器は、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電モジュールの中から選択を行い」と記載されている。
当該記載では、例えば、電池セルが100個あれば100個の電圧値が存在し、100個の電圧値と、2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較で、充電モジュールの選択を行うこととなるが、この点は発明の詳細な説明には記載も示唆もない。
また、個々の電池セルの電圧等と比較すると、電池セルの数だけの比較結果が発生するが、例えば、セル電圧が最小値のセルの電圧との比較と、最大値のセルの電圧との比較では、比較結果は変わるので、どの比較結果を採用するか特定されない場合、適切な選択を行うことができず、したがって制御器の構成(制御内容)が不明確である。
また、適切な選択を行うことができないので、本願発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明を当業者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載されたものともいえない。

[請求人の主張について]
請求人は意見書IV.3.において、「該請求項1の比較に関して単一/特定の電池セルを特定することは、段落〔107〕において説明されている。」旨の主張を行っている。
しかし、請求項1は複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と電圧範囲とを比較するものであって、特定の電池セルを選択した上で電圧範囲と比較するものではないので、上記主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、請求人の上記主張は採用できない。

4.請求項1に「制御器は、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧と2つ又はそれ以上の電圧範囲との比較、及び、電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電モジュールの中から選択を行い」と記載されているが、上述のように電池パックは、同一のタイプのリチウムベースでない電池セルも含み得るものであり、各電池セルが同一のタイプのリチウムベース以外が含まれると、各電池セルの起電力が異なり、どの様に適当な充電動作モジュール選択ができるのか不明である。
また、「基づいて」はあいまいな表現であって様々な基づき方が考えられるため、どの様な比較(複数存在する「個々の電池セルの電圧」を、「2つ又はそれ以上の電圧範囲」と、どの様に対応させて比較するのか不明)の結果に基づいて、どの様にどの様な充電モジュールを選択するのか不明(機械である制御器が選択するのであるから特定の充電モジュールを選択する関数があるはずであるが請求項1には開示がない。)のため、制御器の構成(制御内容)が不明確である。

[請求人の主張について]
請求人は意見書IV.4.において「本願明細書は・・電圧範囲、温度範囲に関して例示値を開示する・・当業者であれば、請求項1に記載された電池充電器の電圧範囲、温度範囲を如何にして実施するかを、また、例えば、使用される電池のタイプに基づき上記範囲を適宜変更し得ることを理解する」、「本願明細書の開示を考慮すれば、請求項1に記載の『基づき』との用語を理解するものである。蓋し、図5a,5bに示される充電動作200は、1つ又は複数の充電モジュールを請求項1に記載されるように『個々の電池セルの比較』及び『温度の比較』に『基づいて』実行している。」旨の主張を行っているが、上記のとおりであり、請求人の上記主張は採用できない。

5.請求項1に「電池パックの温度と2つ又はそれ以上の温度範囲との比較に基づいて、複数の異なる充電モジュールの中から選択を行い」と記載されているが、電池パックは複数の電池セルを含み、プラスチック等のケースで一体化したものであって、その外部の温度を測定しても、内部の電池セルの温度を特定できるものでないので、「電池パック」の温度との比較に基づく充電モジュールの選択で、適切な選択を行えないので制御器の構成(制御内容)が不明確である。

[請求人の主張について]
請求人は意見書IV.5.において、「当業者であれば、少なくとも、a)全体として計測した電池の温度、及び、b)個々の電池セルの温度の少なくとも一方を検出するように電池充電器を設計することにより、請求項1に記載された電池充電器を如何にして実施するかを理解する」旨の主張を行っているが、上記のとおり請求人の上記主張は採用できない。

6.請求項1に「少なくとも1つの充電動作モジュールは、前記制御器が、パルス化された充電電流が前記少なくとも3つの端子の中の2つの端子を介して前記電池パックに供給されることを可能にするもの」と記載されており、少なくとも3つの端子の内の任意の2つの端子を介して充電電流を供給すれば良いことになるが、充電電流の供給は、例えば、図4では、正の端子80、負の端子85で行い、検出端子90は用いておらず、検出端子90を介して供給しても良いことは記載されていないので、少なくとも3つの端子の中の任意の2つの端子を介して充電電流を供給するものは、発明の詳細な説明に記載されておらず、したがって構成が不明瞭である。

[請求人の主張について]
請求人は意見書IV.7.において「請求項1には、少なくとも3つの端子の中の任意の2つの端子を介して充電電流を供給すると記載されていない」、「本願明細書は、電流が正の端子80、負の端子85を介して電池パックに供給されることを開示している。この開示は、電流が少なくとも3つの端子の中の2つの端子を介して電池パックに供給されることを適切に記述する」旨の主張を行っているが、上記のとおりであり、請求人の上記主張は採用できない。

7.請求項1に「パルス化された充電電流のデュティーサイクルは、前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧に基づいて変更され」と記載されているが、例えば、電池セルが100個あれば100個の電圧値が存在し、100個の電圧全てに基づいてデュティーサイクルを変更することとなるが、最小値のセル電圧に基づいて決められるデュティーサイクルと、最大値のセル電圧に基づいて決められるデュティーサイクルとは、異なるものとなる。
本願明細書に添付された図4、13、17記載のような、複数の電池セルが直列接続された電池パックにあっては、各電池セルが同じデュティーサイクルの充電電流で充電されることになるが、請求項1には複数の異なるセル電圧に基づいて決められる複数の異なるデュティーサイクルの中から、1つのデュティーサイクルを選択することは記載されていない。
そうすると、個々の電池セルの電圧に基づいて、どの様に充電電流のデュティーサイクルを変更して充電電流を供給するのか発明の詳細な説明にも何ら開示がなく不明である。
また、複数の電池セルの個々の電池セルの電圧に基づいてデュティーサイクルを変更して充電電流を供給することができないので、本願発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明を当業者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載されたものともいえない。

[請求人の主張について]
請求人は意見書IV.8.において、
(a)「請求項1は、充電電流が一度に2つの異なるデューティーサイクルで電池パックへ供給される、ということを記載してはいない。」
(b)「本願明細書の段落〔0109〕?〔0110〕に鑑みて、当業者であれば、電池充電器に関する上記特定された構成を如何に実施するかを理解する」
(c)「請求項1の範囲内に包含される全ての個々の異なる電池充電器の設計を明確に開示していないという(例えば、100電池セルの比較を行い、最小セル電圧または最大セル電圧に基づきデューティーサイクルを計算する、審判官殿により創造された仮想的な電池充電器)だけの理由で、請求項1を不確定又は不明瞭とすることは妥当ではない。」旨の主張を行っている。
しかし、複数の電池セルの電圧値がそれぞれ異なった場合に、どの電圧値を選択してデュティーサイクルを決めるのか、請求項1には開示がない。
そうすると、請求人の上記主張は採用できない。

8.請求項1の保護の対象は物である電池充電器であり、情報を受けとる構成が存在しなければならないが、請求項1に「電池パックから、前記電池パックの温度に関する情報、及び前記複数の電池セルの個々の電池セルの電圧に関する情報を受け取るように構成される」と記載されているのみで、情報を受けとるための構成は記載されていない(請求項1に「少なくとも3つの端子」とは記載されていても、温度や電圧に関する情報を受け取る端子とは記載されていない)ので、電池充電器がどの様にして情報を受けとるのか、充電器の構成が不明確である。

[請求人の主張について]
請求人は意見書IV.9.において「本願明細書の段落〔0057〕及び図4に鑑みて、当業者であれば、3つの端子のうちの1つが、充電器と電池パックとの間の通信リンクを確立し、充電器が電池パックから情報を受け取ることを可能にする検出端子であり得ることを理解する」旨の主張を行っているが、上記のとおりであり、請求人の上記主張は採用できない。

9.請求項5に「請求項1に記載の電池充電器において、前記少なくとも3つの端子は、第2の電池パックに電気的に接続するように構成され、前記第2の電池パックは、複数の電池セルを含み、各電池セルは、同一のタイプの化学的性質を有し、前記化学的性質は、ニッケルカドミウムの化学的性質又はニッケル水素の化学的性質であり、前記電池充電器は、さらに前記第2の電池パックに充電電流を供給するように構成されている」と記載されているが、引用する請求項1の少なくとも3つの端子は、電池パックに電気的に接続するものであるので、請求項5記載の電池充電器は、電池パックと第2の電池パックとに同時に電気的に接続できるように構成されることとなるが、両電池パックに同時に電気的に接続する電池充電器は、発明の詳細な説明に記載されておらず、構成が不明確である。
また、両電池パックに同時に電気的に接続する電池充電器は発明の詳細な説明に記載も示唆もないので、本願発明の詳細な説明の記載は、請求項5に係る発明を当業者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載されたものともいえない。
また、請求項1はリチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを含む電池パックの電池セルの電圧や電池パックの温度との比較に基づいて、複数の異なる充電モジュールの中から選択を行うものであるが、リチウムベースの電池セルと起電圧等が異なる、ニッケルカドミウムの化学的性質やニッケル水素の化学的性質を有する電池セルにおいて、同じ様に比較して充電モジュールの適切な選択、変更が行えるとは考えられないので、適切な充電モジュールの選択ができず、適切な充電動作をなし得る制御器の構成(制御内容)が不明確である。

[請求人の主張について]
請求人は意見書において、「請求項5は請求項1に従属するが、第2の電池パックへ供給される充電電流は、リチウムベースの電池パックに関しての請求項1に記載された複雑な電圧および温度の比較を含まないことがある。むしろ、請求項5は、a)第1の充電方法に従ってリチウムベースの電池パックを、そしてb)第2の充電方法に従ってNiCdまたはNiMHの電池パックを、個別に充電できる電池充電器を範囲に含むことを意図している。」旨の主張を行っている。
しかし、請求項5の記載において、電池充電器は、「各電池セルが同一のタイプのリチウムベースの化学的性質を有する複数の電池セルを含」む電池パックと、第2の電池パックとに電気的に接続するように構成され、両方に充電電流を供給するように構成されるものとして記載されており、請求人が主張する「a)第1の充電方法に従ってリチウムベースの電池パックを、そしてb)第2の充電方法に従ってNiCdまたはNiMHの電池パックを、個別に充電できる電池充電器」としては記載されていないので、特許請求の範囲の記載に基づく主張ではなく、請求人の上記主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、本願請求項1、5に係る発明、及び本願請求項1を直接又は間接的に引用する本願請求項2?8に係る発明は、記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、また発明が明確でないので、特許法第36条第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明の詳細な説明の記載は、発明を当業者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載されたものでないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願は拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-03-22 
結審通知日 2018-03-23 
審決日 2018-04-03 
出願番号 特願2011-214012(P2011-214012)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 晃  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 中川 真一
矢島 伸一
発明の名称 電池充電器  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 上田 忠  
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