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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C01D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C01D |
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管理番号 | 1343329 |
審判番号 | 不服2017-4454 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-29 |
確定日 | 2018-08-13 |
事件の表示 | 特願2015- 78185「塩化リチウムから炭酸リチウムを製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日出願公開、特開2015-157753〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成22年4月23日を国際出願日とする特願2013-506123号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年4月7日に新たな特許出願としたものであって、平成28年4月27日付けの拒絶理由が通知され、同年11月4日に手続補正がされたが、同月25日付けの拒絶査定がされ、この査定を不服として平成29年3月29日に本件審判が請求されると同時に手続補正が提出されたものである。 第2.補正の却下の決定について [結論] 平成29年3月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について次の補正事項を有する。 -補正前- 塩化リチウム含有溶液から炭酸リチウムを調製する方法であって、 塩化リチウムを含有する流れを電気化学セルに供給するステップであって、電気化学セルは水酸化リチウム溶液を生成するのに十分な条件に保たれる、ステップ; 電気分解を、電気化学セル内で、水酸化リチウム含有量が17重量%に達するまで連続的に行うステップ;及び 前記水酸化リチウム溶液を、二酸化炭素に接触させて、炭酸リチウムを生成させるステップ を含み、 前記電気化学セルのカソードが、ニッケル、触媒化ニッケルメッシュ、ステンレス鋼、及び被覆ステンレス鋼から選択される、上記方法。 -補正後-(下線部が補正箇所) 塩化リチウム含有溶液から炭酸リチウムを調製する方法であって、 塩化リチウム含有溶液にシリカ除去処理を適用して、シリカ除去塩化リチウム含有溶液を生じさせるステップ; 前記シリカ除去塩化リチウムを含有する流れを電気化学セルに供給するステップであって、電気化学セルは水酸化リチウム溶液を生成するのに十分な条件に保たれる、ステップ; 電気分解を、電気化学セル内で、水酸化リチウム含有量が17重量%に達するまで連続的に行うステップ;及び 前記水酸化リチウム溶液を、二酸化炭素に接触させて、炭酸リチウムを生成させるステップ を含み、 前記電気化学セルのカソードが、ニッケル、触媒化ニッケルメッシュ、ステンレス鋼、及び被覆ステンレス鋼から選択される、上記方法。 2.補正の適否 本件補正は、請求項1に係る方法発明において、「塩化リチウム含有溶液にシリカ除去処理を適用して、シリカ除去塩化リチウム含有溶液を生じさせるステップ」なる工程を新たに導入するものであり、これは、請求項1に記載した発明特定事項を限定するのではなく、新たな発明特定事項を追加するものと認められる。 してみると、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではあるが、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正又は拒絶理由に示す事項について明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもない。 したがって、この補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。 また、仮にこの補正が、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるとしても、以下「3.」に示すとおり、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないから、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 よって、この補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件 (1)原出願前に公知となった、 特開昭52-119498号公報 (以下、「引用例」という。) 特開昭50-118993号公報 (以下、「周知例1」という。) 特開2004-225144号公報 (以下、「周知例2」という。) 特公昭59-43556号公報 (以下、「周知例3」という。) 国際公開第2009/083234号(以下、「周知例4」という。) には、それぞれ次の事項が記載されている。 なお、引用例及び周知例1,2は、後述するように原査定において引用されたものであり、周知例3,4は、本件補正により追加された新たな発明特定事項に対応して引用するものである。 引用例 摘示a(1頁左欄4行?右欄1行) 「塩水を濃縮してリチウム以外のアルカリおよびアルカリ土類金属の殆んど全てを沈澱せしめリチウム含量を約2?7%とし、 この濃縮塩水のpHを約10.5?11.5に調整し残留カルシウム、マグネシウムおよび鉄不純物を沈澱せしめ、 陽極電解液(anolyte)と陰極電解液(catholyte)とを区劃する選択的カチオン透過性隔膜を有する電解槽を用い、陽極電解液としてこの精製塩水を電気分解し、 かくして陽極電解液中のリチウムイオンを隔膜を通して移動し、陰極電解液中に高純度水酸化リチウムを形成せしめ、副生成物として電極から水素および塩素を放出せしめることからなる、 リチウムおよび他のアルカリおよびアルカリ土類金属のハロゲン化物を含有する塩水から高純度水酸化リチウムを製造する方法。」 摘示b(3頁左上欄10行?右上欄3行) 「本発明の方法において、電気分解される塩水中のリチウム以外の他のカチオン濃度を最少限にしておくことが重要である。 このことは、高純度水酸化リチウムの製造の為に必須の要件であるばかりでなく、カルシウム、マグネシウムまたは鉄のようなある種のカチオンが不溶性水酸化カルシウム、マグネシウムおよび鉄のように、選択的カチオン透過性薄膜中に沈澱を生成する傾向がある為に必要である。このような沈澱物は、リチウムイオンを透過する薄膜の効果を減少するばかりでなく、その寿命を短縮し、電解槽の連続的操作可能期間をいちぢるしく短縮してしまうので最も好ましくない。」 摘示c(5頁左下欄11?17行) 「かゝる方法により、陽極電解塩水中の塩化リチウムは陰極電解液で水酸化リチウムに変化する。そして電解槽の陽極隔室に添加される塩化リチウムに対して実質的100%の変換率となる。 電気分解操作は水酸化リチウム濃度が14%から飽和点わずか低い範囲で必要なレベルに達するまで連続的に操作される。」 摘示d(5頁右下欄4?11行) 「本発明の方法により得られる高純度水酸化リチウム水溶液はそのまま販売に供することが出来るが他の商業的に望まれる高純度リチウム製品に容易に変えることが出来る。 例えば、水酸化リチウムを炭酸ガスで処理して塩素含量0.05%以下、典型的には約0.01%以下の高純度炭酸リチウム沈澱物とすることができる。」 周知例1 摘示1a(1頁右下欄1?4行) 「本発明は、アルカリの電流効率の低下を招くことなく、高濃度且つ高純度の水酸化アルカリと、塩素とを製造するができる塩化アルカリの新規な電気分解方法に関する。」 摘示1b(3頁左上欄5?19行) 「第1図において1は陽極、2は陰極であり、該陽極と陰極との間には、2枚の陽イオン交換膜C_(1),C_(2)が配置され、槽内には、陽イオン交換膜によって区画された陽極室3、中間室4及び陰極室5が構成される。第1図では簡略のためにただ1組の構成だけが示されるが、工業的には通常各電極が共用されるような複槽形式にて多数並列に構成される。また陽極と陰極間には、必要に応じて2枚以上の陽イオン交換膜を配置して中間室の数を増やしてもよい。陽極としては例えば炭素、白金、又は白金、酸化ルテニウム若しくはロジウムなどの貴金属で被覆したチタンやタンタルなどが使用され、また陰極としては、例えば鉄、ステンレススティール、ニッケルなど使用される。」 周知例2 摘示2a(【0002】) 「【従来の技術】 電気分解法により、金属ハロゲン化物から金属水酸化物を製造することが工業的に広く行われている。最も汎用な例は、塩化ナトリウム(NaCl)からの苛性ソーダ(NaOH)の製造(苛性電解)である。また、この他にも苛性カリ(KOH)を初め、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の水酸化物製造に工業化例がある。」 摘示2b(【0046】) 「【実施例】 以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 実施例1 図1に示すイオン交換膜式電気分解装置1を用いて、連続式の電気分解実験を行った。この電気分解装置1は、イオン交換膜2によって、電解槽が、陽極4を備えた陽極室6と、陰極8を備えた陰極室10とに隔絶されている。 電気分解装置1の機器仕様は、以下の通りである。 整流器:直流安定化電源、容量10A 電解槽:陽極室、陰極室、容積各250ml 陽極材質:Ru、Pt、Ir等のメッキ/ベースT1 陰極材質:SUS316 イオン交換膜:旭硝子エンジニアリング製CMF型(耐酸化性陽イオン交換膜) 運転方法:連続添加流出法 Cell有効膜面積:30cm^(2)(幅=3cm、高さ=10cm)」 周知例3 摘示3a(3欄1?6行) 「これに対し、本発明に於て我々は、陽イオン交換膜を用いた電解槽にて、苛性ソーダを製造する際に、食塩水中に溶解したり、ゲル状もしくは、コロイド状に懸濁しているシリカ、特に、ポリシリカが陽イオン交換膜の陽極側面に蓄積し、電解電圧を上げることを見出した。」 摘示3b(3欄16?22行) 「これに対し、本発明に於て、我々は、10重量%以上の食塩水中でも、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化鉄、硫酸バリウム等の沈澱が析出する時にシリカを吸着し、共沈することを見い出し、さらに、これらの沈澱を循環することにより、シリカの吸着、共沈する量が増大することを見出した。」 摘示3c(5欄22?25行) 「シリカを共沈させる時のpHは4以下、12以上では、シリカは共沈しない。又、共沈していても再溶解する。従つて、シリカを共沈させるには、pHを8乃至11に保つのが最も好ましい。 周知例4 (パテントファミリ特表2011-508717号公報による訳文) 摘示4a(【0001】) 「本発明は、電解質用に意図されている塩ブラインからのケイ素化合物の除去のための方法並びにこの方法に適切な装置に関する。ケイ素は、岩塩又は例えば塩沈殿物中に存在するか又は海塩から獲得できる塩化ナトリウム中の随伴元素として、通常は、ケイ酸の形態中に一緒に含有される。これは、塩溶液において、モノマーの又はアモルファスの形態で、又はポリケイ酸として、また同様にアグロメラートにおいても存在し、かつ、電解プロセスを妨げる。」 摘示4b(【0004】) 「DE2816772A1ではこれは類似して振る舞う。請求されているのは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、炭酸バリウム及び/又は塩化鉄(II)であることができる化学的試薬を溶液の汚染物質の沈殿及び分離のために添加し、同時に、この溶液中に、前記試薬と一緒になって存在する汚染物質のスラリーを導入し、これにより二酸化ケイ素が汚染物質と一緒になって沈殿することである。汚染物質を有する二酸化ケイ素の沈殿の時間の間に、pH値8?11に調節される。」 (2)引用例には、 「塩水を濃縮してリチウム以外のアルカリおよびアルカリ土類金属の殆んど全てを沈澱せしめリチウム含量を約2?7%とし、 この濃縮塩水のpHを約10.5?11.5に調整し残留カルシウム、マグネシウムおよび鉄不純物を沈澱せしめ、 陽極電解液(anolyte)と陰極電解液(catholyte)とを区劃する選択的カチオン透過性隔膜を有する電解槽を用い、陽極電解液としてこの精製塩水を電気分解し、 かくして陽極電解液中のリチウムイオンを隔膜を通して移動し、陰極電解液中に高純度水酸化リチウムを形成せしめ、副生成物として電極から水素および塩素を放出せしめることからなる、 リチウムおよび他のアルカリおよびアルカリ土類金属のハロゲン化物を含有する塩水から高純度水酸化リチウムを製造する方法。」(摘示a) について、塩水に「塩化リチウム」が含まれ、かつ、「電気分解操作は水酸化リチウム濃度が14%から飽和点わずか低い範囲で必要なレベルに達するまで連続的に操作される」(摘示c)こと、さらに、「高純度水酸化リチウムを炭酸ガスで処理して高純度炭酸リチウム沈澱物とすることができる」(摘示d)ことが記載されている。 そうすると、引用例には、塩化リチウムを含む塩水から高純度炭酸リチウム沈澱物を得る方法として、次の工程を有する発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「塩化リチウムを含む塩水から高純度炭酸リチウム沈澱物を得る方法であって、 塩水を濃縮してリチウム以外のアルカリおよびアルカリ土類金属の殆んど全てを沈澱せしめリチウム含量を約2?7%とし、 この濃縮塩水のpHをを約10.5?11.5に調整し残留カルシウム、マグネシウムおよび鉄不純物を沈澱せしめる工程、 選択的カチオン透過性隔膜を有する電解槽を用い、陽極電解液としてこの精製塩水を電気分解し、 かくして陽極電解液中のリチウムイオンを隔膜を通して移動し、陰極電解液中に高純度水酸化リチウムを形成せしめ、副生成物として電極から水素および塩素を放出せしめる工程、 この高純度水酸化リチウムを炭酸ガスで処理して高純度炭酸リチウム沈澱物とする工程、を含み、 前記電気分解操作は水酸化リチウム濃度が14%から飽和点よりわずか低い範囲で必要なレベルに達するまで連続的に操作する、方法。」 (3)本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「塩化リチウムを含む(濃縮)塩水」は、本願補正発明の「塩化リチウム含有溶液」に相当し、以下、「高純度炭酸リチウム沈澱物を得る」は、「炭酸リチウムを調製する」、「選択的カチオン透過性隔膜を有する電解槽」は、「電気化学セル」、「炭酸ガスで処理」は、「二酸化炭素に接触」にそれぞれ相当し、また、引用発明の「陽極電解液としてこの精製塩水を電気分解し、かくして陽極電解液中のリチウムイオンを隔膜を通して移動し、陰極電解液中に高純度水酸化リチウムを形成せしめ、副生成物として電極から水素および塩素を放出せしめる工程」は、本件補正発明の「塩化リチウムを含有する流れを電気化学セルに供給するステップであって、電気化学セルは水酸化リチウム溶液を生成するのに十分な条件に保たれる、ステップ」といえるから、 本件補正発明のうち、 「塩化リチウム含有溶液から炭酸リチウムを調製する方法であって、 塩化リチウムを含有する流れを電気化学セルに供給するステップであって、電気化学セルは水酸化リチウム溶液を生成するのに十分な条件に保たれる、ステップ;及び 前記水酸化リチウム溶液を、二酸化炭素に接触させて、炭酸リチウムを生成させるステップ を含む、上記方法。」 の点は引用発明と一致し、両者は次の点で相違する。 相違点1:電気分解の前に、本件補正発明が「塩化リチウム含有溶液にシリカ除去処理を適用して、シリカ除去塩化リチウム含有溶液を生じさせるステップ」を有するのに対し、引用発明が「塩水を濃縮してリチウム以外のアルカリおよびアルカリ土類金属の殆んど全てを沈澱せしめリチウム含量を約2?7%とし、この濃縮塩水のpHをを約10.5?11.5に調整し残留カルシウム、マグネシウムおよび鉄不純物を沈澱せしめる工程」を有する点。 相違点2:電気分解について、本件補正発明が「電気分解を、電気化学セル内で、水酸化リチウム含有量が17重量%に達するまで連続的に行うステップ」を有するのに対し、引用発明が「電気分解操作は水酸化リチウム濃度が14%から飽和点よりわずか低い範囲で必要なレベルに達するまで連続的に操作する」点。 相違点3:本件補正発明の「電気化学セルのカソードが、ニッケル、触媒化ニッケルメッシュ、ステンレス鋼、及び被覆ステンレス鋼から選択される」のに対し、引用発明の電解槽の陰極の材質が不明な点。 (4)上記相違点について検討する。 相違点1について 引用例には、引用発明において「塩水を濃縮してリチウム以外のアルカリおよびアルカリ土類金属の殆んど全てを沈澱せしめリチウム含量を約2?7%とし、この濃縮塩水のpHを約10.5?11.5に調整し残留カルシウム、マグネシウムおよび鉄不純物を沈澱せしめる工程」を設ける理由について、不溶性水酸化カルシウム、マグネシウムおよび鉄が、選択的カチオン透過性薄膜中に沈澱を生成し、電解槽の連続的操作可能期間をいちぢるしく短縮してしまうためである(摘示b)と説明されている。これに対し、シリカも電気分解を妨害する不純物であり(要すれば、摘示3a,4a参照)、電気分解の前に、pHを8?11に調整することで、他の不純物と一緒に共沈により除去できること(要すれば、摘示3b,3c,4b参照)が、当業者に周知である。 してみると、引用発明においても、調整後の濃縮塩水のpH値からみて、シリカが鉄不純物などと一緒に共沈により除去処理されているものと解され、仮にそうでないとしても、別途、電気分解の前に、電気分解を妨害するシリカの除去処理をすべきことは、当業者が容易に想到し得たことといえる。 相違点2について 本願明細書の【0032】には、「約17重量%を超える水酸化リチウム濃度で、溶液中の水酸化リチウムは析出し始め得る。」と記載されており、「約17重量%」とは水酸化リチウムの溶解度(飽和点)と認められるから、本件補正発明における「電気分解を、電気化学セル内で、水酸化リチウム含有量が17重量%に達するまで連続的に行う」は、引用発明の「電気分解操作は水酸化リチウム濃度が14%から飽和点よりわずか低い範囲で必要なレベルに達するまで連続的に操作する」ことと同意であると解される。 してみると、相違点2は実質的な差異とはいえない。 相違点3について 塩化アルカリから水酸化物を電解製造する陽イオン交換膜電解槽に使用される電極のカソード電極(陰極)に、ニッケルやステンレスを使用すること(要すれば、摘示1a,1b,2a,2b参照)は、当業者に周知である。 してみると、引用発明の陰極をこれらの材質とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (5)以上のとおり、引用発明において相違点1?3を解消することは、当業者が容易になし得たことであり、また、本件補正発明が、引用例及び周知例の記載から当業者が予期し得ない効果を奏するわけではない。 したがって、本件補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 第3.原査定の理由について (1)本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年11月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(上記「第2.1」の「-補正前-」参照)。 これに対し、原査定の理由の一つは、引用例及び周知例1,2を引用し、 「本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 というものである。 (2)そこで検討するに、上記「第2.3」にて述べたように、本願発明を減縮した本件補正発明が、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明もまた、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、同法第49条第1項第2号の規定に該当し、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-03-22 |
結審通知日 | 2018-03-23 |
審決日 | 2018-04-03 |
出願番号 | 特願2015-78185(P2015-78185) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C01D)
P 1 8・ 121- Z (C01D) P 1 8・ 572- Z (C01D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村岡 一磨 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 後藤 政博 |
発明の名称 | 塩化リチウムから炭酸リチウムを製造する方法 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |