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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1343333
審判番号 不服2017-14620  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-03 
確定日 2018-09-04 
事件の表示 特願2012-226691「偏光膜、円偏光板及びそれらの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101328、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月12日(優先権主張 平成23年10月12日)の出願であって、平成28年4月12日付けで拒絶理由が通知され、同年6月15日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、さらに、同年11月18日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月18日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年6月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1?10に係る発明は、引用文献1?4に記載された発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2008-547062号公報
引用文献2:特開2011-48311号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開昭64-70585号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2002-151251号公報


第3 本件発明
本願の請求項1?10に係る発明は、平成29年1月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項10及び平成28年6月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2?9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
波長400?800nmの範囲に吸収を有し、下記一般式(1)で表されるポリアゾ系色素の少なくとも1種と、
重合性スメクチック液晶化合物とを含有する組成物から形成され、
前記重合性スメクチック液晶化合物が示す液晶状態は高次のスメクチック相である偏光膜。

[式(1)中、
nは1である。
Ar_(1)及びAr_(3)は、それぞれ独立に式(1-A)

で示される基および式(1-B)

で示される基から選ばれる基を表し、
Ar_(2)は式(1-C)

で示される基、式(1-D)

および式(1-E)

で示される基から選ばれる基を表し、
Ar_(1)およびAr_(3)が式(1-A)で示される基である場合、Ar_(2)は式(1-D)または式(1-E)で示される基であり、
Ar_(2)が式(1-C)で示される基である場合、Ar_(1)およびAr_(3)の少なくとも一方は式(1-B)で示される基である。
A_(1)は、下記に示す基から選ばれる基を表す。

(mは0?10の整数であり、同一の基中にmが2つある場合、この2つのmは互いに同一又は相異なる。)]
【請求項2】
厚みが、1μm以上5μm以下である請求項1記載の偏光膜。
【請求項3】
X線回折測定においてブラッグピークが得られる請求項1又は2記載の偏光膜。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか記載の偏光膜、配向膜及び透明基材をこの順で備えた偏光子。
【請求項5】
請求項1?3のいずれか記載の偏光膜、配向膜及び透明基材をこの順で備えた偏光子の製造方法であり、
前記透明基材上に、前記配向膜を備えた積層体を準備する工程と、
前記積層体の前記配向膜上に、重合性スメクチック液晶化合物、波長400?800nmの範囲に吸収を有し、前記一般式(1)で表されるポリアゾ系色素、重合開始剤及び溶剤を含む膜を形成する工程と、
前記膜から前記溶剤を除去する工程と、
前記溶剤を除去した膜に含まれる前記重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とする工程と、
前記重合性スメクチック液晶化合物が前記スメクチック液晶状態を保持したまま、前記重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、前記配向膜上に偏光膜を形成する工程と
を有する製造方法。
【請求項6】
請求項1?3のいずれか記載の偏光膜を備えた液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1?3のいずれか記載の偏光膜と、λ/4層とを有し、以下の(A1)及び(A2)の要件を満たす円偏光板。
(A1)前記偏光膜の吸収軸と、前記λ/4層の遅相軸とのなす角度が、略45°であること;
(A2)波長550nmの光で測定した、前記λ/4層の正面リタデーションの値が100?150nmの範囲であること
【請求項8】
請求項1?3のいずれか記載の偏光膜と、λ/2層と、λ/4層とをこの順で有し、以下の(B1)、(B2)、(B3)及び(B4)の要件を満たす円偏光板。
(B1)前記偏光膜の吸収軸と、前記λ/2層の遅相軸とのなす角度が、略15°であること;
(B2)前記λ/2層の遅相軸と、前記λ/4層の遅相軸とのなす角度が、略60°であること;
(B3)前記λ/2層が、波長550nmの光で測定した、前記λ/4層の正面リタデーションの値が200?300nmの範囲であること;
(B4)前記λ/4層が、波長550nmの光で測定した、前記λ/4層の正面リタデーションの値が100?150nmの範囲であること
【請求項9】
請求項7又は8記載の円偏光板と、有機EL素子とを備えた有機EL表示装置。
【請求項10】
波長400?800nmの範囲に吸収を有し、下記一般式(1)で表されるポリアゾ系色素の少なくとも1種と、
重合性スメクチック液晶化合物とを含有し、
前記重合性スメクチック液晶化合物が示す液晶状態は高次のスメクチック相である組成物。

[式(1)中、
nは1である。
Ar_(1)及びAr_(3)は、それぞれ独立に式(1-A)

で示される基および式(1-B)

で示される基から選ばれる基を表し、
Ar_(2)は式(1-C)

で示される基、式(1-D)

および式(1-E)

で示される基から選ばれる基を表し、
Ar_(1)およびAr_(3)が式(1-A)で示される基である場合、Ar_(2)は式(1-D)または式(1-E)で示される基であり、
Ar_(2)が式(1-C)で示される基である場合、Ar_(1)およびAr_(3)の少なくとも一方は式(1-B)で示される基である。
A_(1)は、下記に示す基から選ばれる基を表す。

(mは0?10の整数であり、同一の基中にmが2つある場合、この2つのmは互いに同一又は相異なる。)]」(以下、請求項1?10に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明10」という。)


第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1(特表2008-547062号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、引用文献に付与されていた下線を省き、判断に用いた箇所に新たに合議体が下線を付与した。)

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の製造のための方法であって:
液晶ホスト及び増粘剤を有する液晶組成物を備える段階;
基板に前記液晶組成物の薄膜を形成する段階;
第1液晶のメソフェーズにある配向膜を得るように前記液晶ホストを配向させる段階であって、前記液晶ホストは前記基板に対して平面配向に配向される、段階;
前記配向膜を凝固させるように前記増粘剤をゲル化させる段階;及び
前記凝固された膜において第2液晶状態を得る段階;
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記液晶ホストは重合可能であり、前記方法は、前記凝固膜における前記第2液晶状態にある前記液晶ホストを重合する段階を更に有する、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、二色性光吸収ゲストは前記液晶組成物において分散されている、方法。

(中略)

【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法であって、前記第1液晶状態における前記配向は、ネマチック相又はスメクチック相S_(Y)であり、又はネマチック相又はスメクチック相S_(Y)に相当し、ここで、YはA又はCである、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法であって、前記第1液晶状態は、前記増粘剤についてゲル化温度以上の温度において得られる、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法であって、前記第2液晶状態における前記配向は、スメクチック相S_(X)であり、又はスメクチック相S_(Y)に相当し、ここで、XはA又はCでない、方法。

(中略)

【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法であって、前記二色性光吸収ゲストはアゾ色素を有する、方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の方法により得られる偏光子。」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の例示としての実施形態について、本発明にしたがった偏光子の断面を示す図1に示す。偏光子1は、配向され且つ重合された液晶ホスト3と、配向され且つ重合された液晶ホスト3を有する配向重合体膜2と、ホスト3において分散され、ホストと共に配向された二色性光吸収ゲスト4と、その膜において異方性ゲルネットワークを構成する増粘剤5とを有する。二色性光吸収ゲストは、個別の二色性光吸収体の形で分散されている。一般に、光吸収体は、個別の分子(二色性色素)、そのような分子のネットワークの凝集、又は無機粒子(ナノ粒子)(顔料)であることが可能である。個々の二色性光吸収体の光吸収は方向依存性である。一体軸に沿って、光吸収は最大にあり、典型的には、最大吸収の軸に対して垂直方向の他の軸に沿って、吸収は最小にある。
【0033】
重合した液晶3は、長距離に亘る秩序を与えて、異方的に配向している。ゲスト4の個々の二色性光吸収体は、ホスト3と共に配向し、それ故、方向依存性光吸収特性を有する配向性重合体膜を与え、したがって、光を偏光する能力を与える。
【0034】
ゲスト4の二色体は、矩形形状を有し、重合体膜において平面一軸性配向にある。しかしながら、他の形状、例えば、ディスク状形状、及び垂直配向又は二軸性配向のような配向をまた、用いることが可能である。」

(ウ)「【0035】
原理的には、何れかの二色性ゲストを用いることが可能である。その二色性ゲストは色素又は顔料であることが可能であり、分子スケールで分散される又は光吸収層として分散することが可能である。二色性ゲストの色は、アプリケーションの観点から選択される。代表的には、スペクトル400乃至700nmの可視領域において吸収が得られるようになっている。このことは、例えば、赤色、緑色及び青色等の着色剤の適切な組み合わせ又は黒色の二色性着色剤を用いることにより得られる。ここで、用いているように、用語“配向した”、及び
“配向”等の関連用語は、“異方的に配向した”ことを意味する。“配向した”とは、それが意味するオブジェクトが形成されている物質が、ランダムなマルチドメイン構造とは対照的に、モノドメイン(又は、好ましいパターンにしたがって配列してうる複数のものドメイン)の形にある長距離配向秩序を有することを意味する。これは、制御された好ましい様式で方向依存性のオブジェクトの光学特性のような特性を与える。
【0036】
二色性ゲストの配向は、液晶ホストにより容易化される。液晶ホストは配向され、二色性ゲストはそのホストにより配向される。
【0037】
ここで用いているように、用語“重合された液晶”とは、配向状態にある又は配向状態にもたらされる、若しくは液晶のメソフェーズからもたらされる重合体を意味する。“液晶重合体”は重合された液晶の特定の種類であり、それは重合体且つ液晶である。一般に、重合された液晶は、それ自体が液晶である必要はない。配向状態を備えているとき、その状態は液晶メソフェーズからもたらされる又はメソフェーズと相応していることを満足する。そのような化合物は、例えば、メソフェーズにある液晶を重合させることにより得ることが可能である。重合のとき、メソフェーズは動かなくされ、配向は固定される。
【0038】
ここで用いているように、用語“重合された液晶”とは、一般に、複数の異なる重合された液晶を有する組成物及び混合物のような、重合された液晶を有する何れかの組成物又は何れかの重合された液晶のことをいう。
【0039】
ゲスト4の配向は、平面一軸性配向の軸により配向された消光軸を有する偏光子を与える。
【0040】
約15及びそれ以上の二色比を有する配向重合体膜を備えるように、二色ゲスト、それ故、重合された液晶ホストは高い配向性を有する必要がある。
【0041】
ここで用いているように、用語“二色比”は、吸収における二色比を意味し、消光軸に沿った吸光度(垂直入射で測定される)と、透過軸に沿った吸光度との比として定義される。」

(エ)「【0042】
二色性アゾ色素は、本発明の偏光子におけるゲストとして用いるのに適切である。二色性色素の例については、米国特許第6,133,973号明細書及び国際公開第2005/045485A1号パンフレットに開示されているが、それらに限定されるものではない。
【0043】
適切な二色性ゲストとしては、次のアゾ色素を有するが、それらに限定されるものではない。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

二色性ゲストは液晶自体であることが可能であるが、非液晶二色性ゲストがまた、用いられることが可能である。」

(オ)「【0046】
ゲストホスト偏光子において十分に大きい二色比を得るように、液晶ホストにおいてスメクチック相を用いることが適切であることを見出した。
【0047】
また、スメクチックA相によって典型的に与えられる秩序の度合いは低過ぎ、スメクチックC相及び他の傾いたスメクチック相は、一般に、適切でないことを見出した。更に、ネマチック相はまた、好ましい二色比を与えるには低過ぎる秩序の度合いを有する。
【0048】
適切なメソフェーズは、スメクチックB及びその傾いた変形、即ち、スメクチックF及びスメクチックI相と、結晶B及びその傾いた変形、即ち、結晶G及びJ、並びに結晶E及びその傾いた変形、即ち、結晶H及びKとを有する。それらの適切なメソフェーズは、共通して、長い範囲の配向性秩序を有する。」

(カ)「【0054】
本発明にしたがった偏光子は、基板6において備えられる自立性重合膜、重合膜又は非重合膜として備えられることが可能である。基板は、何れの基板であることが可能であり、その基板において、本発明にしたがった偏光子を備えることは適切であり、そして、典型的には、透光性の又は半透光性の異方性又は等方性重合体又は無機(例えば、側す又はセラミック)基板である。
【0055】
その基板は、任意に、配向層を有し、その配向層において、その膜が備えられ、その配向膜に対して、その膜における液晶ホストは配向される。」

(キ)「【0058】
本発明の偏光子の製造についての方法の例示としての実施形態においては、重合性液晶ホスト及びゲル化剤を有する液晶組成物が与えられる。
【0059】
任意に、液晶組成物は、重合を生じさせるために用いる重合開始剤と、自然重合を抑制する重合抑制剤とを有する。
【0060】
二色性重合体が、その方法により製造されるようになっている場合、液晶組成物は、二色性光吸収ゲストをまた、有利に含むことが可能である。液晶組成物は、基板における薄膜として備えられる。その薄膜は、例えば、コーティング方法又は印刷方法により従来の薄膜形成方法により形成されることが可能である。適切なコーティング方法には、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、スプレイコーティング、浸漬コーティング及びキャスティングがある。適切な印刷方法には、インクジェット印刷、スクリーン印刷及びオフセット印刷がある。
【0061】
必要に応じて、膜を形成するための組成物は、例えば、溶剤、接着促進剤、湿潤剤又は界面活性剤を含むことが可能である。
【0062】
その薄膜は、液晶ホストが基板において平面配向される場合には、秩序付けられたメソフェーズを形成するように、基板において配向され、即ち、液晶モノマーの長軸は、基板の垂直方向に対して垂直方向に方向付けられる。
【0063】
典型的には、配向層が、液晶を配向するように用いられる。適切な配向層は、ラビングされたポリイミド又は傾斜してスパッタリングされた酸化珪素層を有する。しかしながら、基板において平面配向した液晶ホストを備えるために光配向のような他の従来の配向方法を用いることが可能である。
【0064】
液晶ホストが基板において平面配向されるメソフェーズを備えるように、典型的には、その膜は、平面配向が得られる温度にされる。典型的には、配向層に対する(平面)配向を得るように、その膜は、液晶ホストが等方性である温度にされ(図2a)、次いで、平面配向を有する配向相の温度に冷却され、その冷却段階の間、液晶ホストは基板に対して配向する(図2b)。
【0065】
典型的には、液晶ホストは、平面配向が得られるとき、ネマチック又はスメクチックA又はC相にあり、その温度は、ゲル化剤のゲル化温度以上である。しかしながら、上記のように、このネマチック又はスメクチックA又はC相は、本発明の偏光子において用いられるように十分に高い配向性を有するものではない。好ましい高い配向性を有するスメクチックS_(X)相(XはA又はCでない)を得る一方、それらの相にかなり共通である垂直配向に向かう傾向を回避するように、増粘剤は、平面配向が尚もその膜において存在する条件下で(図2c)、その膜を凝固させるようにゲル化される。
【0066】
このことは、ゲル化剤のゲル化温度(T_(g))以下であるが、ネマチック又はスメクチックA又はC相から好ましいスメクチックS_(X)相への遷移温度以上の温度にその膜の温度を下げることにより達成されることが可能である。
【0067】
凝固した膜におけるゲルネットワークは内部配向ソースとしての役割を果たし、垂直配向に向かう傾向が顕著に低下される。
【0068】
その場合、好ましい高い配向性のスメクチック相が得られ、平面配向を保つ。この平面配向の高い配向性の液晶状態において、液晶ホストの重合は有効である。その重合のために、個々のホストは動かなくされ、その膜における配向は固定される(図2d)。
【0069】
代替として、その膜の温度は、ゲル化剤のゲル化温度(T_(g))以下であるが、ネマチック又はスメクチックA又はC相から好ましいスメクチックS_(X)相への遷移温度以下でもある温度にその膜の温度を下げられる。しかしながら、ネマチック又はスメクチックA又はC相から好ましいスメクチックS_(X)相への遷移は、一般に、ゲル形成の過程に比べて遅く、それ故、その温度が急激に低下する場合、好ましい高い配向性のスメクチックS_(X)相が得られる前に、ゲルが形成される。
【0070】
好ましいスメクチック相にある重合性液晶の重合は、典型的には、液晶における反応器の種類に依存し、そして用いられる開始剤の種類に任意に依存して、従来の手段により効果がもたらされる。代表的な重合の手段には、電子線及び紫外光等の活性エネルギー放射線がある。
【0071】
重合は、配向が有効に維持されるように実行される。」

(ク)「【0096】
本発明にしたがった偏光子は、既知の偏光子が用いられてきた何れかのアプリケーションに対して用いられることが可能である。例えば、そのような偏光子は、液晶ディスプレイ(LCD)において有利に用いられることが可能である。LCDに適用されるとき、LCDの基板は、偏光子を支持するように従来通りに用いられることが可能である。本発明の偏光子は、有利であることに、LCDの液晶セルの内側に備えられることが可能である。」

(ケ)「【0097】
実施例1(本発明にしたがわない)
下記の反応性スメクチックメソゲンV及びVIの50対50の混合物の33重量%溶液(1%の二色性色素(NKX2029(日本感光色素研究社製))、1%の開始剤(Irgacure651(Ciba社製))、2%の界面活性剤及び0.1%の抑制剤がクロロベンゼンにおいて調製された。
【化8】

【化9】

約2μmの厚さを有する薄膜は、ラビングされたポリイミドの配向相を備えた基板にこの溶液をスピンコートすることにより得られた。
【0098】
図3は、異なる温度でスピンコートした直後に、交差する偏光子間において得られた膜の顕微鏡写真を示している。右側の顕微鏡写真は、配向層のダイレクタ及び偏光子間の45°の角度で記録された画像を示し、左側の写真は、0°の角度で記録された画像を示している。
【0099】
スピンコートの直後に、マルチドメイン膜はメソゲンの配向が所定の垂直性を有する場合に得られた。平面配向は、小さいドメインのみに存在していた(図3a)。薄膜は130℃に加熱され、その温度において、その混合物は等方性であった(図3b)。その後、その試料は冷却された。
【0100】
122℃においては、その混合物はネマチック相であった。ネマチック相におけるメソゲンの配向は平面配向であった(界面活性剤を用いているために(図3c))。
【0101】
112℃においては、その混合物はスメクチックA層にあった。その顕微鏡写真は、0°においては暗い写真であり、45°においては明るい写真であり、メソゲンの配向はこの相において尚も平面配向であることを示していた(図3d)。
【0102】
70℃においては、その混合物は高い配向性を有するスメクチック相にある。その顕微鏡写真(図3e)は0°及び45°の両方において暗く、メソゲンの垂直配向の遷移が起こったことを示していた。
【0103】
実施例2(本発明にしたがっている)
上記の反応性スメクチックメソゲンV及びVIの50対50の混合物の33重量%溶液(1%の二色性色素(NKX2029(日本感光色素研究社製))、1%の開始剤(Irgacure651(Ciba社製))、2%の界面活性剤及び0.1%の抑制剤がクロロベンゼンにおいて調製された。
この溶液においては、1重量%(固形分に対して)の12-ヒドロキシオクタデカン酸が添加された。
【0104】
薄膜は、約2μmの厚さでこの溶液からスピンコートされた。交差した偏光子間のラビングされた、それらの膜の顕微鏡写真を図4(左側は0°におけるものであり、右側は45°におけるものである)に示している。
【0105】
スピンコートの直後、その膜は透明であった。しかし、そのスピンコートされた膜においては、垂直配向及び平面配向の両方が存在していた。
【0106】
その膜が130℃に加熱され(等方性相)、次いで20℃/minで室温まで冷却される(高い配向性を有するスメクチック相)と、その膜におけるメソゲンは垂直配向を示した(図4b)。
【0107】
しかしながら、その膜が130℃に加熱され、次いで、その基板をホットプレートから金属ブロックに直接、移動させることにより室温に急冷されたとき、その顕微鏡写真は、その膜において平面配向が存在していることを示している(図4c)。
【0108】
それ故、急冷と組み合わせて反応性メソゲン混合物への低分子量の有機ゲル化剤の添加により、反応性スメクチックメソゲンの平面配向を有する、スピンコートされたゲストホスト偏光子が得られた。」

イ 引用文献1に記載された発明
上記記載事項(ケ)に基づけば、引用文献1には、実施例2として、
「反応性スメクチックメソゲンV及びVIの50対50の混合物の33重量%溶液(1%の二色性色素(NKX2029(日本感光色素研究社製))、1%の開始剤(Irgacure651(Ciba社製))、2%の界面活性剤及び0.1%の抑制剤がクロロベンゼンにおいて調製された溶液に、1重量%(固形分に対して)の12-ヒドロキシオクタデカン酸が添加され、
約2μmの厚さの薄膜が、この溶液からスピンコートされ、
急冷と組み合わせて反応性メソゲン混合物への低分子量の有機ゲル化剤の添加により得られた、反応性スメクチックメソゲンの平面配向を有する、スピンコートされたゲストホスト偏光子。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2011-48311号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0018】
(1)二色性色素組成物
本発明の光吸収異方性膜の製造に用いたれる二色性色素組成物は、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される液晶性アゾ色素から選択される少なくとも一種を含む。
【0019】
液晶性アゾ色素:
【化6】

【0020】
式中、R^(1)?R^(5)はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R^(6)及びR^(7)はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q^(1)は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L^(1)は2価の連結基を表し;Aは酸素原子又は硫黄原子を表す。

(中略)

【0055】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0056】
【化11】



3 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献3(特開昭64-70585号公報)には、以下の事項が記載されている。

「実施例1
下記構造式

で示されるアゾ系化合物(色素)を前述の混合液晶ZLI-1565(メルク社商品名)に添加し、70℃以上に加熱して液晶が等方性液体になった状態でよくかきまぜた後、放置冷却する工程を繰り返して行い、上記化合物(色素)を溶解した。
このようにして調製した本発明の液晶組成物を、透明電極を有し、液晶と接する面にポリアミド系樹脂を塗布硬化後ラビングしてホモジニアス配向処理を施した上下2枚のガラス基板からなる基板間ギャップ10μmの素子に封入した。
上記配向処理を施した素子内では電圧無印加のとき上記液晶は、ホモジニアス配向状態をとり、色素分子もホスト液晶に従って同様の配向をとるものであった。
このようにして作製したゲスト・ホスト素子の吸収スペクトルの測定は、液晶分子の配向方向に対して平行に偏光した光及び垂直に偏光した光の各々を用いて行い、これら各偏光に対する色素の最大吸収波長を求めた。色素の吸光度を求めるにあたっては、ホスト液晶及びガラス基板による吸収と、素子の反射損失に関して補正を行った。

からオーダー・パラメーター(S)の値を算出した。
以上の結果を後記第2表のNo.1に示す。
尚、本実施例で用いたアゾ系化合物は、2-アミノ-5-(4’-n-ブチル)フェニルアゾチエノチアゾール5gをN-メチルピロリドン100ml、酢酸50ml、プロピオン酸50mlの混合溶媒中、0℃で、43%ニトロシル硫酸5.2gにてジアゾ化し、次いでN-エチル-N-メチルアニリン2.2gと0℃でカップリング反応を行い得ることが出来た。融点は239?240℃を示した。」(第4頁右下欄最終行?第5頁左下欄第3行)


第5 対比・判断
1 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「二色性色素」と本件発明1の「波長400?800nmの範囲に吸収を有し、下記一般式(1)で表されるポリアゾ系色素」とは、「二色性色素」である点で共通する。

(イ)引用発明の「反応性スメクチックメソゲンV及びVI」は、その化学構造からみて、重合性基を有するスメクチック液晶化合物であるといえる。したがって、引用発明1の「反応性スメクチックメソゲンV及びVI」は、本件発明1の「重合性スメクチック液晶化合物」に相当する。

(ウ)引用発明の「溶液」は、「反応性スメクチックメソゲンV及びVI」と「二色性色素」を含有している。したがって、引用発明の「溶液」は、「二色性色素の少なくとも1種と、重合性スメクチック液晶化合物とを含有する組成物」であるといえる。

(エ)引用発明の「ゲストホスト偏光子」は、「反応性スメクチックメソゲンの平面配向を有する」ものであるから、少なくともスメクチック相の液晶状態を示すものといえる。したがって、引用発明の「ゲストホスト偏光子」は、本件発明1の「スメクチック相である偏光膜」との要件を満たしている。

(オ)以上より、本件発明1と引用発明とは、
「二色性色素の少なくとも1種と、
重合性スメクチック液晶化合物とを含有する組成物から形成され、
前記重合性スメクチック液晶化合物が示す液晶状態はスメクチック相である偏光膜。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]二色性色素が、本件発明1では、波長400?800nmの範囲に吸収を有し、一般式(1)で表されるポリアゾ系色素であるのに対し、引用発明では、一般式(1)で表される色素ポリアゾ系色素ではなく、波長400?800nmの範囲に吸収を有するかが明らかではない点。
[相違点2]スメクチック相が、本件発明1では、高次のスメクチック相であるのに対し、引用発明では高次のスメクチック相であるか明らかではない点。

イ 判断
(ア)まず、[相違点2]について検討すると、引用文献1には、記載事項(オ)に「スメクチックA相によって典型的に与えられる秩序の度合いは低過ぎ、スメクチックC相及び他の傾いたスメクチック相は、一般に、適切でないことを見出した。」、「適切なメソフェーズは、スメクチックB及びその傾いた変形、即ち、スメクチックF及びスメクチックI相と、結晶B及びその傾いた変形、即ち、結晶G及びJ、並びに結晶E及びその傾いた変形、即ち、結晶H及びKとを有する。」と記載されており、記載事項(キ)に「液晶ホストは、平面配向が得られるとき、ネマチック又はスメクチックA又はC相にあり、その温度は、ゲル化剤のゲル化温度以上である。しかしながら、上記のように、このネマチック又はスメクチックA又はC相は、本発明の偏光子において用いられるように十分に高い配向性を有するものではない。好ましい高い配向性を有するスメクチックS_(X)相(XはA又はCでない)を得る一方、それらの相にかなり共通である垂直配向に向かう傾向を回避するように、増粘剤は、平面配向が尚もその膜において存在する条件下で(図2c)、その膜を凝固させるようにゲル化される。」と記載されている。当該記載に基づけば、ゲル化剤のゲル化温度以上にした後、凝固された引用発明は、スメクチック相が、高次のスメクチック相であるといえる。
また、仮に、引用発明のゲストホスト偏光子が示す液晶相が、高次のスメクチック相でないとしても、当該記載に基づいて、高次のスメクチック相とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。

(イ)次に、[相違点1]について検討すると、引用文献3における実施例1に用いられたアゾ系色素は、本件発明1の一般式(1)で表されるポリアゾ系色素に包含されるものであって、ホスト液晶とともにゲスト・ホスト素子を形成するものである。また、特開昭59-204659号公報の表1にNo.6として開示された二色性染料(第4頁左下欄参照)、特開昭60-228568号公報の表3にNo.11として開示された二色性染料(第11頁上欄)、特開昭62-43464号公報の表1にNo.6として開示されたチエノチアゾール系アゾ化合物(第4頁上欄)、特開平10-292175号公報の請求項14に構造式(3)の一つ目の選択肢として開示されたチエノチアゾール環を有するジスアゾ系の赤紫色色素は、いずれも、ホスト液晶とともにゲストホスト素子を形成するものとして知られている。以上より、本件発明1の一般式(1)で表されるポリアゾ系色素は、本願の優先権主張の日前において周知であったといえる。しかし、引用文献3には、実施例2としてベンゼン環のオルト位にメチル基を有するものも開示されており、特開昭59-204659号公報、特開昭60-228568号公報、特開昭62-43464号公報、特開平10-292175号公報は、いずれも、ナフタレン環の1,4位で結合する連結基を有する色素も挙げられており、これらは本願において比較例とされた色素の分子構造に類似するものである。
そして、本願明細書に開示された実施例並びに比較例、参考例の二色比を参酌すれば、従来ゲストホスト素子における二色性色素として知られていた様々な化合物の中でも、本件発明1の一般式(1)で表されるポリアゾ系色素は、高次のスメクチック相をホストとした場合に、他の色素を用いた場合と比べて優れた効果を奏するといえるものであり、当該ゲストホストの組み合わせによる効果の差異は、たとえ相違点1に係る本件発明1の構成を採用することが容易であったとしても、当業者にとって自明であったとはいえないものである。

ウ むすび
以上のとおり、本件発明1は、高次のスメクチック相を示す重合性スメクチック液晶化合物と、一般式(1)で表されるポリアゾ系色素を含有することにより、当業者が予測し得ない効果を奏するものである。したがって、本件発明1は、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明2?9について
本件発明2?9は、本件発明1の構成を具備するものであって、本件発明1と同様の効果を奏するものである。したがって、本件発明2?9も、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本件発明10について
本件発明10は、組成物に関する発明であるが、本件発明1と同じ一般式(1)で表されるポリアゾ系色素の少なくとも1種と、高次のスメクチック相である液晶状態を示す重合性スメクチック液晶化合物とを含有するものである。そうすると、本件発明10も、本件発明1と同様の効果を奏するものであるから、本件発明10も、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本件発明1?10は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-17 
出願番号 特願2012-226691(P2012-226691)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
宮澤 浩
発明の名称 偏光膜、円偏光板及びそれらの製造方法  
代理人 中山 亨  
代理人 坂元 徹  
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