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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1343370
審判番号 不服2017-9410  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-28 
確定日 2018-09-05 
事件の表示 特願2013-190223「携帯端末、画像検索プログラムおよび画像検索方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月23日出願公開、特開2015- 56102、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 経緯
1.手続
本願は、平成25年9月13日を出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成28年10月27日(起案日)
手続補正、意見書 :平成28年12月21日
拒絶査定 :平成29年 3月31日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成29年 6月28日
手続補正 :平成29年 6月28日
拒絶理由通知(当審) :平成30年 5月11日(起案日)
手続補正、意見書 :平成30年 7月11日

第2 本願発明
本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成30年7月11付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
カメラモジュール、表示部および前記表示部へのタッチ操作を受け付けるタッチパネルを有する、携帯端末であって、
前記タッチパネルに対するタッチ操作を受け付ける第1受付部、
前記カメラモジュールから取得されたリアルタイム動画像を分割する分割領域の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部、
前記リアルタイム動画像のタッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域を特定し、前記タッチ操作された分割領域と前記特定された分割領域とを含む抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部、
前記検索対象画像に基づき所定の情報を検索する検索部、および
前記リアルタイム動画像において、前記検索部により検索された検索結果を、前記検索対象画像と重畳しないように出力する出力部を備える、携帯端末。」

なお、本願発明2-14の概要は以下のとおりである。

本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明11、12は、それぞれ本願発明1に対応する「画像検索プログラム」、「方法」の発明であり、本願発明1、2とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

本願発明13は、本願発明1の携帯端末に、さらに、「第2タッチ操作」の構成を加えた発明であり、本願発明14は、本願発明13を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-272931号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

【0001】
本発明は、撮像画像から注目被写体を抽出し、この抽出した注目被写体に関連した参照情報を提供可能な撮像装置、及びこのような撮像装置を用いた情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが撮影した画像の中の所定の被写体を注目被写体として抽出し、この注目被写体が何であるかを所定のデータベースを参照することによって特定し、この特定した注目被写体に係わる参照情報をユーザに提供する情報提供サービスが開始されてきている。このような情報提供サービスにおいては、データベースにアクセスするためにPC(Personal Computer)等の汎用の端末装置が用いられたり、専用の情報処理装置が用いられたりしている。また、特許文献1では、携帯電話機等の携帯端末装置を用いて撮像画像中の注目被写体の詳細情報を取得できるようにしている。

【0016】
次に、図1に示す撮像装置の動作について説明する。
光学系101を通して得られた光学像はイメージセンサ102で受光されて撮像画像信号に変換される。イメージセンサ102において得られた撮像画像信号は、A/D変換回路103へ出力されてデジタル化される。A/D変換回路103において得られた撮像画像データは、プリプロセス回路104とフォーカス検出回路105とに出力される。プリプロセス回路104では入力された撮像画像データに対する前処理が行われる。前処理された撮像画像データは、データバス118を介してRAM106に一時記憶される。
【0017】
また、フォーカス検出回路105は、入力された撮像画像データに基づいて合焦評価値を演算する。この合焦評価値は制御回路117に出力される。制御回路117は、合焦評価値に従って光学系101を駆動させ、光学系101のフォーカス調整を行う。これにより、イメージセンサ102を介して得られる撮像データにおける被写体に光学系101のフォーカスが合わせられることになる。撮影時には、フォーカス調整後の撮像画像データがRAM106に一時記憶される。
【0018】
RAM106に記憶された撮像画像データは画像処理回路107によって読み出される。画像処理回路107は、読み出した撮像画像データに対して、ノイズ除去、輝度・色差変換、ガンマ補正等の各種の画像処理を施す。画像処理がなされた後の撮像画像データは、データバス118を介してRAM106に一時記憶される。このRAM106に記憶された画像処理後の撮像画像データは、表示回路114又は画像圧縮伸長回路111によって読み出される。表示回路114は、読み出した撮像画像データを、モニタ115の表示サイズに適したサイズにリサイズ(通常は縮小)する。さらに、表示回路114は、撮像画像の表示タイミングに同期した各種の同期信号を生成し、この同期信号に従って、モニタ115に画像表示を行う。
【0019】
また、画像圧縮伸長回路111は、読み出した画像処理後の撮像画像データをJPEG方式(静止画の場合)又はMPEG方式(動画の場合)に従って圧縮し、圧縮により得られた圧縮画像データを記録媒体113に記録させる。
【0020】
次に、注目被写体に係わる参照情報をユーザに提供する情報提供の処理について説明する。この情報提供の一連の処理は、例えば、撮影後の画像表示の際に実行されるものである。上述したように、撮影によって得られる撮像画像データは画像処理回路107において処理された後、RAM106に一時記憶される。その後、表示回路114の処理に従って、RAM106に記憶された撮像画像データに基づく画像がモニタ115に表示される。このとき、注目被写体の抽出が行われる。注目被写体は、ユーザが手動で選択したものを抽出するようにしても良いし、注目被写体抽出回路108が自動的に注目被写体を抽出するようにしても良い。
【0021】
図2は、ユーザが注目被写体を手動で選択する際のモニタ115の画面表示を示す図である。ユーザは、モニタ115に表示されている画像301内の所定の領域を選択枠302によって指定することで注目被写体の選択を行うことが可能である。選択枠302は、例えば入力回路116に含まれる十字キー116aやタッチパネル等によって移動させたり、サイズを変更したりすることが可能である。
【0022】
また、注目被写体を自動的に抽出する場合の手法としては、例えば、画像301内で、色、輝度、形状等の特徴量の大きい被写体を注目被写体として抽出する手法や、光学系101のフォーカスが合っている被写体を注目被写体として抽出する手法等が考えられる。このような自動抽出手法の何れの手法を使用するかをユーザが選択できるようにしても良い。
【0023】
注目被写体に対応した撮像画像データが抽出されると、この注目被写体の撮像画像データが、画像処理回路107により、フラッシュメモリ112又は記録媒体113内のデータベースに予め登録されている形状データ(詳細は後述する)の大きさに合わせてリサイズされる。その後、リサイズされた注目被写体部分の撮像画像データは、特徴量抽出回路109に送られる。これを受けて特徴量抽出回路109は、注目被写体の特徴量の抽出を行う。本実施形態においては、注目被写体の形状及び注目被写体の色の分布を特徴量として抽出する。注目被写体の形状は、ハイパスフィルタ等を用いて注目被写体の高コントラスト部(エッジ部)を抽出する。また、注目被写体の色の分布は、注目被写体部分の撮像画像データの分布である。
【0024】
特徴量抽出回路109において抽出された特徴量は情報取得回路110に送られる。これを受けて情報取得回路110は、注目被写体に対応した参照物に係わる参照情報の取得を行う。即ち、情報取得回路110は、特徴量抽出回路109から送られた特徴量とフラッシュメモリ112又は記録媒体113内のデータベースに登録されている形状データとを比較し、この比較結果に基づいて注目被写体に対応した参照物に係わる参照情報を取得する。
【0025】
図3は、形状データの一例を示した図である。形状データは、円、楕円、多角形等の代表的な形状を示す画像データであり、図3(a)に示すような注目被写体の外形を推定するための形状データと、図3(b)に示すような注目被写体の一部の形状を推定するための形状データの2種類がある。
【0026】
例えば、注目被写体が花である場合、まず、花の形状のデータを抽出し、この花の形状のデータと図3(a)に示す各形状データとを比較する。そして、抽出した花の形状データと各形状データとの類似度(例えば、外形データと形状データの画素毎の差分の和を百分率で示したもの)を算出する。これにより、花の外形形状を推定することができる。さらに、花の形状のデータと図3(b)に示す各形状データとを比較する。そして、抽出した花の形状データと各形状データとの類似度を算出する。これにより、花の細部の形状を推定することができる。
【0027】
以上の比較の後、注目被写体の外形の形状との類似度及び注目被写体の細部の形状との類似度が所定レベル以上高い参照物の参照情報を、注目被写体に対応した参照物に係わる参照情報として取得する。例えば、花であれば、図3(a)の各形状データに対応した外形を有する花の総称がそれぞれ何であるか、その中で図3(b)の各形状データに対応した形状の葉や花弁を有する花の個称がそれぞれ何であるかといった情報をデータベースに予め登録しておくことで、上述の比較により花の総称や個称を特定することが可能である。即ち、本実施形態の手法では、葉や茎を含めた花の外形及び色の分布によって大まかな花の特定を行うとともに、花弁の形状や葉の形状や色の分布によって細かな花の特定を行うことが可能である。

【0033】
ステップS4の判定において、情報取得回路110において参照情報の取得を行うことができた場合、制御回路117は、類似度が高いと考えられる上位10個の参照物に係わる参照情報のうちの基本情報(参照物の総称又は個称)をRAM106に一時記憶させる(ステップS5)。その後に、参照情報の呈示処理を行う。この参照情報の呈示処理については後述する。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

光学系101を通して得られた光学像はイメージセンサ102で受光されて撮像画像信号に変換され、イメージセンサ102において得られた撮像画像信号は、A/D変換回路103へ出力されてデジタル化され、A/D変換回路103において得られた撮像画像データは、プリプロセス回路104とフォーカス検出回路105とに出力され、プリプロセス回路104では入力された撮像画像データに対する前処理が行われ、前処理された撮像画像データは、データバス118を介してRAM106に一時記憶され、フォーカス検出回路105は、入力された撮像画像データに基づいて合焦評価値を演算し、この合焦評価値は制御回路117に出力され、制御回路117は、合焦評価値に従って光学系101を駆動させ、光学系101のフォーカス調整を行い、(【0016】、【0017】)
RAM106に記憶された撮像画像データは画像処理回路107によって読み出され、各種の画像処理を施された後の撮像画像データは、表示回路114又は画像圧縮伸長回路111によって読み出され、表示回路114は、読み出した撮像画像データを、モニタ115の表示サイズに適したサイズにリサイズし、表示回路114は、撮像画像の表示タイミングに同期した各種の同期信号を生成し、この同期信号に従って、モニタ115に画像表示を行い、(【0018】)
RAM106に記憶された撮像画像データに基づく画像がモニタ115に表示されるとき、注目被写体の抽出が行われるものであって、
a)ユーザが注目被写体を手動で選択する際、ユーザは、モニタ115に表示されている画像301内の所定の領域を選択枠302によって指定することで注目被写体の選択を行うことが可能であって、選択枠302は、例えば入力回路116に含まれる十字キー116aやタッチパネル等によって移動させたり、サイズを変更したりすることが可能であり、(【0020】、【0021】)
b)自動的に抽出する場合の手法としては、光学系101のフォーカスが合っている被写体を注目被写体として抽出する手法でもよく、(【0022】)
注目被写体に対応した撮像画像データが抽出されると、この注目被写体の撮像画像データは、特徴量抽出回路109に送られ、特徴量抽出回路109は、注目被写体の特徴量(注目被写体の形状及び注目被写体の色の分布)の抽出を行い、抽出された特徴量は情報取得回路110に送られ、情報取得回路110は、注目被写体に対応した参照物に係わる参照情報の取得を行い、(【0023】、【0024】)
情報取得回路110において参照情報の取得を行うことができた場合、制御回路117は、参照情報の呈示処理を行う、(【0033】)
撮像装置。

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2007-236008号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は画像表示器付きカメラに係り、特に液晶モニタ等の画像表示器を有する画像表示器付きカメラに関する。」

「【0008】
前記タッチパネルは、前記押圧力とともにタッチ位置を検知し、前記タッチ位置に対応する被写体にピント及び/又は露出を合わせてもよい。あるいは、撮影画像又は再生画像を表示する画像表示器を有する画像表示器付きカメラにおいて、前記画像表示器の上面に押圧力を検知するタッチパネルを設け、該タッチパネルでの押圧の強さに応じてカメラ操作系に対して異なる指示を与え、前記画像表示器は、前記タッチパネルでの押圧の強さを表示してもよい。」

したがって、上記引用文献2には、「画像表示器付きカメラの画像表示器がタッチパネルであり、タッチ位置に対応する被写体にピント及び/又は露出を合わせることが可能なカメラ」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2013-46343号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、画像撮像装置に関し、より詳細には、立体視用の画像を撮影する画像撮像装置に関する。」

「【0031】
主要被写体領域切出部51では、第1の撮影画像から主要被写体が撮影されていると推定される領域を切り出す。主要被写体領域の推定は、例えば、第1の撮影画像の微分値などに基づきフォーカスが合っている領域を算出する、第1の撮影画像を撮影したときのフォーカス領域を記憶する、顔認識技術により人物が撮影されている領域を検出する、タッチパネルによりユーザが指定することで主要被写体領域を指定する、などの方法により行うことができる。なお、タッチパネルで指定する方法の場合、画像表示部4がタッチパネルを備え、主要被写体領域は、画像表示部4に表示された第1の撮影画像に対してユーザがタッチパネルを介してタッチ操作することで指定することができる。
【0032】
また、上記の第1の撮影画像の微分値やフォーカス領域などの情報は、例えば、画像撮像装置1が備えるオートフォーカス機能の情報から得ることができる。つまり、オートフォーカス(AF)機能によりフォーカスが合わされた領域を主要被写体領域とする。デジタルカメラにおいては、例えば、センター重点AF、人物優先(顔検出)AFなどユーザが各種のAFモードを選択できるようになっており、フォーカスが合っている領域はユーザにより選択された主要被写体である可能性が高いと推定される。また、主要被写体領域としては、オブジェクト抽出により主要被写体のみを切り出しても良いが、主要被写体が撮影されている領域(例えば、矩形領域)を背景ごと切り出しても良い。」

したがって、上記引用文献3には、「画像撮像装置に関し、オートフォーカス(AF)機能によりフォーカスが合わされた領域を主要被写体領域とし、フォーカスが合っている領域はユーザにより選択された主要被写体であるとすることで、主要被写体が撮影されていると推定される領域を切り出す」という技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2011-34127号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
被写体を撮影する撮影部と、
表示部と、
上記撮影部により上記被写体を撮影可能な撮影モード時、撮影状況に応じて、画像検索用の検索キーを上記表示部に表示する制御部と、
上記表示部に表示された上記検索キーを指示するために用いられる指示部と、
上記指示部を介して上記検索キーが指示されると、当該指示された上記検索キーに基づき画像を検索する検索部と
を具え、
上記制御部は、
上記検索部により上記画像が検索されると、当該検索結果を上記表示部に表示する
画像検索装置。
【請求項2】
上記制御部は、
上記撮影モード時、上記画像検索用の上記検索キーを、上記撮影部により上記被写体を撮影状態の確認用に連続撮影して得られる撮影状態提示画像と共に上記表示部に表示する
請求項1に記載の画像検索装置。
【請求項3】
上記撮影部により上記被写体を連続撮影して得られる上記撮影状態提示画像から、当該撮影状態提示画像に写り込んでいる人物の顔を検出する顔検出部
を具え、
上記制御部は、
上記撮影モード時、上記画像検索用の上記検索キーとして、上記顔検出部により検出された上記顔を、上記撮影状態提示画像と共に上記表示部に表示する
請求項2に記載の画像検索装置。」

したがって、上記引用文献4には、「撮影状態提示画像から、撮影状態提示画像に写り込んでいる人物の顔を検出し、画像検索用の上記検索キーとして、顔検出部により検出された顔を、撮影状態提示画像と共に表示部に表示する」という技術的事項が記載されていると認められる。


5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2013-47867号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0099】
図13に示すように、上画面350aには、その上端部に表示領域352が設けられる。また、上画面350aの中央の左側に表示領域354が設けられ、その下側に表示領域356が設けられる。また、上画面350aの中央の右側に表示領域358が設けられ、その下側に表示領域360が設けられる。そして、表示領域352と表示領域354および表示領域358との間に、表示領域362が設けられる。
【0100】
表示領域352には、カメラで花調べのモードが実行されていること、花を検索する画面であること、および当該モードの進行状況が文字等で示される。表示領域354には、今回の撮影画像が表示される。表示領域356には、表示領域354に表示された画像が撮影した花の画像である旨が記述される。
【0101】
表示領域358には、検索結果である花の画像が表示される。この表示領域358に表示される画像は、後述する下画面350bの表示領域374に表示される縮小画像に対応する通常の大きさの画像(通常画像)である。また、表示領域360には、表示領域358に表示されている通常画像が示す花の名称がテキストで表示される。さらに、表示領域362には、表示領域358に表示されている通常画像が示す花の簡単な解説がテキストで表示される。
【0102】
下画面350bには、その上部の左側に表示領域370が設けられるとともに、その右側にボタン画像372が表示される。また、表示領域370およびボタン画像372の下方に、表示領域374が設けられるとともに、この表示領域374の右側に、スクロールボタン画像376が表示される。さらに、下画面350bの下部に、ボタン画像378およびボタン画像380が表示される。
【0103】
表示領域370には、撮影画像に基づく検索結果としての候補の件数が表示される。ボタン画像372は、さらに検索結果から候補を絞り込むために設けられる。表示領域374には、検索結果についての花の画像(縮小画像)が類似している度合い(類似度)が高い順番に、表示される。スクロールボタン画像376は、ボタン画像376a、376b、376cを含む。この実施例では、ボタン画像376aまたはボタン画像376bをオンしたり、ボタン画像376cをスライドしたりすることにより、表示領域374に表示
される縮小画像を上下に移動することができる。したがって、検索結果の縮小画像が多い場合には、画面をスクロールすることにより、すべての検索結果(候補の縮小画像)を見ることができる。
【0104】
たとえば、縮小画像をタッチすることにより、検索結果から外側カメラ18b、18cの撮影画像に含まれる花と一致する花を選択することができる。図12に示す検索結果画面350の例では、類似度が最も高い(第1位の)縮小画像が選択されている。
【0105】
なお、詳細な説明は省略するが、検索結果画面350が表示される当初では、下画面350bにおいては、類似度が第1位の縮小画像が選択される。」



したがって、上記引用文献5には、「今回の撮影画像の表示領域354、検索結果である花の画像が表示される表示領域358、表示領域358に表示されている通常画像が示す花の簡単な解説がテキストが表示される表示領域362が重なることなく表示される」という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

本願明細書の【0070】の「なお、カメラ制御回路50、イメージセンサ52およびレンズ54は、まとめてカメラモジュールまたは撮影部と呼ばれる。」の記載と照らせば、引用発明における「光学系」、「イメージセンサ」、「制御回路」が、本願発明1における「カメラモジュール」に相当する。
引用発明の「モニタ」、「タッチパネル」は本願発明1の「表示部」、「表示部へのタッチ操作を受け付けるタッチパネル」に相当する。
引用文献1の「携帯電話機等の携帯端末装置を用いて撮像画像中の注目被写体の詳細情報を取得できるようにしている。」の記載からみて、引用文献1の撮像装置は「携帯端末装置」も想定していることは明らかであるから、引用発明の「撮像装置」は本願発明1の「携帯端末」に相当する。
引用発明において、撮像画像データに基づく画像がモニタ115に表示されるとき、注目被写体の抽出が行われるときの動作について以下検討する。
a)ユーザが注目被写体を手動で選択する場合
「ユーザは、モニタ115に表示されている画像301内の所定の領域を選択枠302によって指定することで注目被写体の選択を行うことが可能であって、選択枠302は、例えば入力回路116に含まれる十字キー116aやタッチパネル等によって移動させたり、サイズを変更したりすることが可能で」あるから、「前記タッチパネルに対するタッチ操作を受け付ける第1受付部」を有しているといえる。
b)自動的に抽出する場合
光学系101のフォーカスが合っている被写体を注目被写体として抽出する手法では、被写体画像の中で、フォーカス(焦点距離)が合っている部分(相対位置関係)を検出し、略同じ値の焦点距離が対応付けられた画像部分を検索対象画像として抽出していることは明らかであるから、本願発明1の「前記カメラモジュールから取得された画像の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部」、「画像の略同じ値の焦点距離が対応付けられた部分領域を特定し、抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部」に対応する構成を有しているといえる。
引用発明の「情報取得回路」は、本願発明1の「検索部」に相当する。
引用発明の参照情報の呈示を行う「制御回路」は、本願発明1の「前記検索部により検索された検索結果を、出力する出力部」と対応する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「カメラモジュール、表示部および前記表示部へのタッチ操作を受け付けるタッチパネルを有する、携帯端末であって、
前記タッチパネルに対するタッチ操作を受け付ける第1受付部、
前記カメラモジュールから取得された画像の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部、
前記画像の略同じ値の焦点距離の領域を特定し、特定された領域を含む抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部、
前記検索対象画像に基づき所定の情報を検索する検索部、および
前記画像において、前記検索部により検索された検索結果を、出力する出力部を備える、携帯端末。」

(相違点)
(相違点1)対象とする画像が、本願発明1では「リアルタイム動画像」であるのに対し、引用発明では「リアルタイム動画像」であるか明らかではない点。

(相違点2)領域が、本願発明1では「画像を分割する分割領域」であり、したがって、「検索対象画像として抽出」される画像が、「(タッチ操作された)分割領域」、「前記特定された分割領域(とを含む抽出範囲内の画像)」であるのに対し、引用発明では「画像を分割する分割領域」という技術思想を備えておらず、「ユーザがタッチパネル等によって移動させたり、サイズを変更した選択枠内によって指定した注目被写体」、「フォーカスが合っている被写体」である点。

(相違点3)本願発明1では、「タッチパネル」、「第1受付部」、「検出部」、「抽出部」を有し、「タッチ操作された分割領域」と「特定された分割領域」の関係が、タッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域を特定領域としているのに対し、引用発明は、「タッチパネル」、「第1受付部」、「検出部」、「抽出部」に対応する構成は有しているものの、タッチパネルによって選択された選択枠内の被写体と自動的に抽出したフォーカスが合っている被写体とに関連はなく、「タッチ操作された領域(被写体)」と「特定された領域(被写体)」の関係が、タッチ操作された領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた領域を特定領域とする関係ではない点。

(相違点4)検索結果の出力(表示)に関して、本願発明1では、「前記検索部により検索された検索結果を、前記検索対象画像と重畳しないように出力」するのに対し、引用発明では、当該構成を有していない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2、相違点3について検討する。
a)本願発明1が相違点2に係る「画像を分割する分割領域」という構成を有することにより、タッチ操作(により指定)された領域および略同じ値の焦点距離が対応付けられた領域とを抽出するにあたり、「分割領域」を単位に行うことを必須の構成としているのに対し、引用発明では、領域が分割領域を単位とせず、
b)相違点3では、本願発明1では、タッチ操作(により指定)された領域と特定された領域の関係が、「タッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域」を特定領域としているのに対し、引用発明では、タッチ操作により得られる(被写体)領域(選択枠)とフォーカスが合っている被写体(領域)とに関連はない、
ことから、本願発明1と引用発明とは、領域を抽出する構成がそもそも異なっており、また、当該構成は、審査官が提示した引用文献2ないし5に開示がない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2-10も、本願発明1の
「前記カメラモジュールから取得されたリアルタイム動画像を分割する分割領域の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部、
前記リアルタイム動画像のタッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域を特定し、前記タッチ操作された分割領域と前記特定された分割領域とを含む抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部」
と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明11、12について
本願発明11、12は、それぞれ本願発明1に対応する「画像検索プログラム」、「方法」の発明であり、本願発明1の
「前記カメラモジュールから取得されたリアルタイム動画像を分割する分割領域の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部、
前記リアルタイム動画像のタッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域を特定し、前記タッチ操作された分割領域と前記特定された分割領域とを含む抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部」
に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明13、14について
本願発明13は、本願発明1の携帯端末に、さらに、「第2タッチ操作」の構成を加えた発明であり、本願発明14は、本願発明13を減縮した発明であり、いずれの発明、も本願発明1の、
「前記カメラモジュールから取得されたリアルタイム動画像を分割する分割領域の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部、
前記リアルタイム動画像のタッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域を特定し、前記タッチ操作された分割領域と前記特定された分割領域とを含む抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部」
と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-14について上記引用文献1ないし引用文献5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成30年7月11日付け手続補正により補正された請求項1、請求項13、及び請求項11、請求項12は、それぞれ
「前記カメラモジュールから取得されたリアルタイム動画像を分割する分割領域の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部、
前記リアルタイム動画像のタッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域を特定し、前記タッチ操作された分割領域と前記特定された分割領域とを含む抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部、」という事項、及び
「前記カメラモジュールから取得されたリアルタイム動画像を分割する分割領域の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部、
前記リアルタイム動画像のタッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域を特定し、前記タッチ操作された分割領域と前記特定された分割領域とを含む抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部」
に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-14は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第1号について
(1)当審では、請求項1の「前記カメラモジュールから取得されたリアルタイム動画像から被写体どうしの相対位置関係を検出する検出部」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年7月11日付けの補正において、「前記カメラモジュールから取得されたリアルタイム動画像を分割する分割領域の焦点距離の相対位置関係を検出する検出部」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項1の「前記相対位置関係に基づいて、前記リアルタイム動画像から検索対象画像を抽出する抽出部」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年7月11日付けの補正において、「前記リアルタイム動画像のタッチ操作された分割領域の焦点距離と略同じ値の焦点距離が対応付けられた分割領域を特定し、前記タッチ操作された分割領域と前記特定された分割領域とを含む抽出範囲内の画像を検索対象画像として抽出する抽出部」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-14は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2013-190223(P2013-190223)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樋口 龍弥  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 相崎 裕恒
渡邊 聡
発明の名称 携帯端末、画像検索プログラムおよび画像検索方法  
代理人 山田 義人  

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