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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1343416
審判番号 不服2017-18876  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-20 
確定日 2018-09-04 
事件の表示 特願2014-194634「電流検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 65791、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月25日の出願であって、平成29年2月27日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月19日に手続補正がされ、同年9月26日付けで拒絶査定(送達日:同年10月3日)がされ、これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月26日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、本願請求項4に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-117447号公報
2.特開2004-079007号公報
3.特開2008-199876号公報
4.特開2011-185647号公報


第3 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成29年4月19日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「電流センサと、前記電流センサの周囲に配置され内側に導体が配設される領域を有する磁気シールドとを備えた電流検出装置において、
前記磁気シールドは、導体を挟んで配置される第一の磁気シールド部材と第二の磁気シールド部材とを備え、
前記第一の磁気シールド部材は、導体を挟んで前記第二の磁気シールド部材と対向する対向側壁部と、前記対向側壁部から前記第二の磁気シールド部材側に向けて突き出す突出部とを備え、
前記第二の磁気シールド部材は、導体を挟んで前記第一の磁気シールド部材と対向する対向側壁部と、前記対向側壁部から前記第一の磁気シールド部材側に向けて突き出す突出部とを備え、
前記第一の磁気シールド部材の突出部の先端部と前記第二の磁気シールド部材の突出部の先端部とは、突出部の突き出し方向に垂直で且つ導体の延設方向に垂直な方向に離間して隙間が設けられると共に、突出部の突き出し方向にオーバラップしており、
前記第一及び第二のシールド部材は、複数の積層鋼板が積層されることにより構成され、
前記隙間が設けられたオーバラップ部は前記電流センサ、前記導体、前記オーバラップ部の順に、前記第一の磁気シールド部材の対向側壁部および前記第二の磁気シールド部材の対向側壁部に並行な平面に沿った方向に並んで配置されていることを特徴とする電流検出装置。」

なお、本願発明2-4の概要は、以下のとおりである。
本願発明2-3は、本願発明1を減縮する発明である。
本願発明4は、本願発明1の電流検出装置を備えた車載用電力変換装置の発明である。


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。

ア 「【0001】
本発明は、被測定電流から生じる磁界による磁電変換素子の出力信号の変動に基づいて、被測定電流を測定する電流センサに関するものである。」
イ 「【0023】
図1に示すように、電流センサ100は、要部として、センサ基板10と、該センサ基板10に形成された磁電変換素子20と、センサ基板10及び被測定電流が流れる被測定導体90それぞれの周囲を囲む磁気シールド部30と、を有する。電流センサ100は、被測定電流から生じる磁界(以下、被測定磁界と示す)による磁電変換素子20の出力信号の変動に基づいて、被測定電流を測定する。本実施形態に係る電流センサ100は、上記した構成要素10?30の他に、バイアス磁石40、回路基板50、支持基板60、モールド樹脂70、及び、スペーサ80を有する。」
ウ 「【0039】
z方向における、空隙の一部の高さ位置と、センサ基板の高さ位置とが同一である構成の場合、センサ基板と高さ位置が異なる空隙からも、空隙磁界が形成される。この空隙磁界における基準線BLでの向きは、基準線BLに直交する向きになるとは限らないので、磁電変換素子20に対して、形成面10aに沿う方向の空隙磁界が印加される虞がある。このような空隙磁界が印加されると、空隙磁界によって磁電変換素子20の抵抗値が変動し、電流の検出精度が低下する虞がある。
【0040】
これに対して、本実施形態では、z方向における、空隙33全ての高さ位置と、センサ基板10の高さ位置とが同一となっている。この場合、磁電変換素子20に対して、形成面10aに沿う方向の空隙磁界が印加されることが抑制され、電流の検出精度の低下が抑制される。」
エ 「【0081】
以下、第4実施形態を図10に基づいて説明する。図10は、第4実施形態に係る電流センサの概略構成を示す断面図であり、第1実施形態で示した図1に対応している。
【0082】
第4実施形態に係る電流センサは、上記した各実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明を省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、上記した各実施形態で示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与している。
【0083】
本実施形態に係る電流センサ100は、磁気シールド部30の構成と、センサ基板10の位置に特徴がある。図10に示すように、磁気シールド部30は、上部シールド36、及び、下部シールド37を有し、シールド36,37それぞれは、一つの開口部を有する箱形状を成している。上部シールド36の側壁の外壁面間の距離は、下部シールド37の側壁の内壁面間の距離よりも短くなっており、各シールド36,37の底部内面が互いに対向し、下部シールド37の収納空間内に、上部シールド36の側壁が配置される態様で、センサ基板10を収納する空間が構成されている。そして、上部シールド36の側壁の外面と、下部シールド37の側壁の内面とがx-y平面に沿う方向にて対向して、空隙33が構成されている。この空隙33を構成する、シールド36,37の対向面にて、空隙磁界が発生する。図10に示すように、センサ基板10は、空隙磁界の発生部位よりもz方向に離れ、上部シールド36によってその周囲が囲まれている。なお、上記したシールド36,37の側壁が、[4-1]に記載の延設部に相当する。」
オ 「【0084】
空隙磁界の密度分布は、その発生中心であるシールド36,37の対向面から遠ざかるほど粗となる。これに対して、本実施形態では、センサ基板10が空隙磁界の発生中心よりもz方向に離れている。そのため、センサ基板が、空隙磁界の発生中心とz方向にて同じ位置にある構成と比べて、空隙磁界のセンサ基板10への印加が抑制される。」

上記イを踏まえてエをみれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「センサ基板10と、該センサ基板10に形成された磁電変換素子20と、センサ基板10及び被測定電流が流れる被測定導体90それぞれの周囲を囲む磁気シールド部30と、を有し、被測定電流から生じる磁界による磁電変換素子20の出力信号の変動に基づいて、被測定電流を測定する電流センサ100であって、
磁気シールド部30は、上部シールド36、及び、下部シールド37を有し、上部シールド36の側壁の外壁面間の距離は、下部シールド37の側壁の内壁面間の距離よりも短くなっており、各シールド36,37の底部内面が互いに対向し、下部シールド37の収納空間内に、上部シールド36の側壁が配置される態様で、センサ基板10を収納する空間が構成されており、上部シールド36の側壁の外面と、下部シールド37の側壁の内面とが対向して、空隙33が構成されている、電流センサ100。」


2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、【0024】の記載からみて、シールド部材に生じる渦電流を抑制するため、シールド部材を複数の板状部材によって積層された構造とするという技術事項が記載されていると認められる。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、【0034】及び図6の記載からみて、シールド部材に生じる渦電流を抑制するため、シールド部材を積層構造とするという技術事項が記載されていると認められる。

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、【0011】?【0012】の記載からみて、車載のモータに接続される端子とパワーモジュールとの間に電流センサを設けるという技術事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「磁電変換素子20」、「被測定導体90」、「磁気シールド部30」及び「電流センサ100」がそれぞれ、本願発明1の「電流センサ」、「導体」、「磁気シールド」及び「電流検出装置」に相当するところであり、本願発明1と引用発明は、「電流センサと、前記電流センサの周囲に配置され内側に導体が配設される領域を有する磁気シールドとを備えた電流検出装置」の点で一致する。
イ 引用発明の「上部シールド36」及び「下部シールド37」がそれぞれ、本願発明1の「第一の磁気シールド部材」及び「第二の磁気シールド部材」に相当するところであり、本願発明1と引用発明は、「前記磁気シールドは、導体を挟んで配置される第一の磁気シールド部材と第二の磁気シールド部材とを備え」る点で一致する。
ウ 引用発明において、「各シールド36,37の底部内面が互いに対向し」ているから、引用発明の「各シールド36,37の底部」は、それぞれ、「対向壁部」ということができ、また、引用発明の「上部シールド36の側壁」及び「下部シールド37の側壁」は、それぞれ、「上部シールド36の底部から下部シールド37に向けて突き出す突出部」及び「下部シールド37の底部から上部シールド36に向けて突き出す突出部」ということができ、本願発明1の「前記第一の磁気シールド部材は、導体を挟んで前記第二の磁気シールド部材と対向する対向側壁部と、前記対向側壁部から前記第二の磁気シールド部材側に向けて突き出す突出部とを備え、前記第二の磁気シールド部材は、導体を挟んで前記第一の磁気シールド部材と対向する対向側壁部と、前記対向側壁部から前記第一の磁気シールド部材側に向けて突き出す突出部とを備え、」る構成と、引用発明の上記構成とは、「前記第一の磁気シールド部材は、導体を挟んで前記第二の磁気シールド部材と対向する対向壁部と、前記対向壁部から前記第二の磁気シールド部材側に向けて突き出す突出部とを備え、前記第二の磁気シールド部材は、導体を挟んで前記第一の磁気シールド部材と対向する対向壁部と、前記対向壁部から前記第一の磁気シールド部材側に向けて突き出す突出部とを備え、」る点で共通する。
エ 引用発明は、「上部シールド36の側壁の外面と、下部シールド37の側壁の内面とが対向して、空隙33が構成されて」いるというものであり、図10の記載を併せると、本願発明1と同様に、「前記第一の磁気シールド部材の突出部の先端部と前記第二の磁気シールド部材の突出部の先端部とは、突出部の突き出し方向に垂直で且つ導体の延設方向に垂直な方向に離間して隙間が設けられると共に、突出部の突き出し方向にオーバラップして」いると認められる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「電流センサと、前記電流センサの周囲に配置され内側に導体が配設される領域を有する磁気シールドとを備えた電流検出装置において、
前記磁気シールドは、導体を挟んで配置される第一の磁気シールド部材と第二の磁気シールド部材とを備え、
前記第一の磁気シールド部材は、導体を挟んで前記第二の磁気シールド部材と対向する対向壁部と、前記対向壁部から前記第二の磁気シールド部材側に向けて突き出す突出部とを備え、
前記第二の磁気シールド部材は、導体を挟んで前記第一の磁気シールド部材と対向する対向壁部と、前記対向壁部から前記第一の磁気シールド部材側に向けて突き出す突出部とを備え、
前記第一の磁気シールド部材の突出部の先端部と前記第二の磁気シールド部材の突出部の先端部とは、突出部の突き出し方向に垂直で且つ導体の延設方向に垂直な方向に離間して隙間が設けられると共に、突出部の突き出し方向にオーバラップしている電流検出装置。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1では、対向する壁部が「対向側壁部」であり、「前記隙間が設けられたオーバラップ部は前記電流センサ、前記導体、前記オーバラップ部の順に、前記第一の磁気シールド部材の対向側壁部および前記第二の磁気シールド部材の対向側壁部に並行な平面に沿った方向に並んで配置されている」のに対し、引用発明は、このようなものでない点。
(相違点2)
本願発明1では、「前記第一及び第二のシールド部材は、複数の積層鋼板が積層されることにより構成され」ているのに対し、引用発明では、「各シールド36,37」がこのようなものとはされていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討するに、引用発明は、引用文献1の図10にみられるように、磁電変換素子20と被測定導体90は縦方向に配置されるが、空隙33はこれらの横に配置され、空隙33の隙間も横方向に離間して設けられているものである。そして、上記の配置は、引用文献1の段落【0039】、【0040】、【0084】の記載から見て、(磁電変換素子20と被測定導体90の横に配置された)空隙33全ての高さ位置(図1及び図10に記載されたz方向の位置)と、センサ基板10の高さ位置とが同一となっている第1実施形態を基本的構成としつつ、さらにセンサ基板10が空隙磁界の発生中心よりも高さ方向に離れることによって、空隙磁界のセンサ基板10への印加が抑制されるようにするために採用されたものである。
そうすると、引用発明において、磁電変換素子20と被測定導体90と空隙33を上記の本願発明1のような配置とする動機を見いだすことはできない。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
引用文献2-4も、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることを示唆するものではない。
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1を引用文献1-4に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。

2 本願発明2-3について
本願発明2-3は、本願発明1を減縮する発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1-4に基づいて当業者が容易に発明できたものということはできない。

3 本願発明4について
本願発明4は、本願発明1の電流検出装置を備えた車載用電力変換装置の発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1-4に基づいて当業者が容易に発明できたものということはできない。


第6 原査定について
本願発明1-4は、「前記隙間が設けられたオーバラップ部は前記電流センサ、前記導体、前記オーバラップ部の順に、前記第一の磁気シールド部材の対向側壁部および前記第二の磁気シールド部材の対向側壁部に並行な平面に沿った方向に並んで配置されている」という事項を有するものであって、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2014-194634(P2014-194634)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
中村 説志
発明の名称 電流検出装置  
代理人 戸田 裕二  
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