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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1343418
審判番号 不服2017-17332  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-22 
確定日 2018-09-04 
事件の表示 特願2013-265214「硬化膜付きタッチパネル用基材及びその製造方法、感光性エレメント並びにタッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日出願公開、特開2015-121929、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月24日の出願であって、平成28年4月13日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年6月15日付けで意見書が提出され、平成28年9月1日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年12月2日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成29年2月3日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年6月14日付けで意見書が提出され、平成29年7月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-18に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2011/129210号
2.特開2013-200891号公報
3.特開2006-315960号公報
4.“ソルト・サイエンス・シンポジウム2012「海水・塩の科学」開催について”,[online],2013年1月24日,[2017年2月3日検索],インターネット,<URL:http://www.saltscience.or.jp/web_salence/2013No4_sympo2012.pdf>
5.“Web-そるえんす”,[online],[2017年2月3日検索],インターネット,<URL:http://www.saltscience.or.jp/web_salence/web_salence1.html>

第3 本願発明
本願請求項1-18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明18」という。)は、平成28年12月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される発明であり、本願の請求項1、9に係る発明は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
タッチパネル用基材と、硬化膜とを備える硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法であって、
前記タッチパネル用基材が、電極を有するセンシング領域と、前記センシング領域よりも外側に位置すると共に、前記電極に電気的に接続された金属配線を有する領域と、を備え、
前記製造方法が、タッチパネル用基材上に、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:光重合性化合物と、を含有する感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を設け、前記感光性樹脂組成物層の所定部分を活性光線の照射により硬化させた後に前記所定部分以外を除去し、前記感光性樹脂組成物の硬化膜を少なくとも前記金属配線上に形成する工程を備え、
前記(A)成分が、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する共重合体を含み、
前記(B)成分が、ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含み、
前記(A)成分の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量100質量部に対し35?85質量部であり、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量100質量部に対し15?65質量部である、硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法。」

「【請求項9】
支持フィルムと、前記支持フィルム上に設けられた感光性樹脂組成物層と、を備える転写用感光性エレメントであって、
前記感光性樹脂組成物層が、電極を有するセンシング領域と、前記センシング領域よりも外側に位置すると共に、前記電極に電気的に接続された金属配線を有する領域と、を備えるタッチパネル用基材において、少なくとも前記金属配線上に硬化膜を形成するための感光性樹脂組成物を含み、
前記感光性樹脂組成物が、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、を含有し、
前記(A)成分が、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する共重合体を含み、
前記(B)成分が、ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含み、
前記(A)成分の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量100質量部に対し35?85質量部であり、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量100質量部に対し15?65質量部である、感光性エレメント。」

本願発明2-8は、概略、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明10-18は、概略、本願発明9を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審付与。以下同様。)。

(1) 段落[0031]
「[0031] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)多官能モノマー、(D)ジルコニウム化合物を含有する。」

(2) 段落[0048]
「[0048] アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合したものが好ましい。ラジカル重合の触媒に特に制限はなく、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物や過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物など一般的に用いられる。」

(3) 段落[0054]
「[0054] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂の含有量に特に制限はなく、所望の膜厚や用途により任意に選ぶことができるが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分中10wt%以上60wt%以下が一般的である。」

(4) 段落[0060]-[0063]
「[0060] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(C)多官能モノマーを含有する。光照射により上記(B)光重合開始剤によって(C)多官能モノマーの重合が進行し、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の露光部がアルカリ水溶液に対して不溶化し、ネガ型のパターンを形成することができる。多官能モノマーとは、分子中に少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物をいい、特に限定するわけでないが、ラジカル重合のしやすい(メタ)アクリル基を有する多官能モノマーが好ましい。また、(C)多官能モノマーの二重結合当量は80g/mol以上400g/mol以下であることが、感度、硬度の点から好ましい。
[0061] (C)多官能モノマーとしてはたとえばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、テトラペンタエリスリトールノナアクリレート、テトラペンタエリスリトールデカアクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカアクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、テトラペンタエリスリトールノナメタクリレート、テトラペンタエリスリトールデカメタクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカメタクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、(2-アクリロイルオキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)-3、5-ジメチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)-3、5-ジメチルフェニル]フルオレン、などが挙げられる。
中でも、感度向上の観点から、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、などが好ましい。また、疎水性向上の観点から、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが好ましい。
[0062] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(C)多官能モノマーの含有量に特に制限はなく、所望の膜厚や用途により任意に選ぶことができるが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分中10wt%以上60wt%以下が一般的である。
[0063] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(D)ジルコニウム化合物を含有する。(D)ジルコニウム化合物を含有することで、得られる硬化膜の耐湿熱性が向上する。カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基由来の親水性であるため耐湿熱性に乏しいが、(D)ジルコニウム化合物を含有することで硬化膜の耐湿熱性が向上する。これまでに、一部のジルコニウム化合物がポリシロキサンに対して耐湿熱性向上効果を持つことが知られているが(特許文献1参照)、該公知例ではポリシロキサンの側鎖が疎水性基に限られ、結果として得られる硬化膜も疎水性となるため、カルボキシル基などの親水性基を有する場合の効果は明かではなかった。本発明では、ポリシロキサンに限らず、親水性樹脂であるカルボキシル基含有アルカリ可溶性樹脂が、(D)ジルコニウム化合物を含有することで硬化膜の耐湿熱性が向上することを今回初めて見出した。その詳細なメカニズムについては明らかではないが、(D)ジルコニウム化合物が、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂の複数のカルボキシル基と反応する事によって架橋構造を形成し、膜密度が向上すると同時に、カルボキシル基由来の親水性が低減することにより、得られる硬化膜の耐湿熱性が向上するものと考えられる。(D)ジルコニウム化合物は、ジルコニウム原子を含む化合物であれば特に制限はないが、たとえば平均粒径が100nm以下のジルコニウム酸化物粒子や、一般式(1)で表される化合物が好ましい。ジルコニウム酸化物粒子の平均粒径は、さらに好ましくは、40nm以下である。ジルコニウム酸化物粒子の平均粒径を100nm以下とすることで、得られる硬化膜の白濁を防ぐことができる。」

(5) 段落[0069]
「[0069] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(D)ジルコニウム化合物の含有量に特に制限はないが、平均粒径が100nm以下のジルコニウム酸化物粒子の場合はネガ型感光性樹脂組成物の固形分中1wt%以上60wt%以下が好ましく、それ以外の(D)ジルコニウム化合物の場合はネガ型感光性樹脂組成物の固形分中0.1wt%以上10wt%以下が好ましい。上記範囲であることにより、透明性、耐湿熱性を高いレベルで両立出来る。」

(6) 段落[0094]
「[0094] タッチパネル部材の作製方法に特に制限は無いが、例えば次のような方法が挙げられる。ガラス基板上に透明電極薄膜を任意の膜厚で形成し、レジスト材料をフォトリソグラフィー技術によりパターン加工、該透明電極のエッチング液による薬液エッチング、剥離液によるレジスト剥離工程を経て、X軸電極およびY軸電極の一部を形成する透明電極がパターン加工されたガラス基板を作製する(図1-a)。透明電極にはITO、IZO、AZO、ZnO 2 、錫アンチモン酸、等の金属酸化物、または金、銀、銅、アルミニウム等の金属の薄膜などが上げられる。これらの透明導電極は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着等の物理的方法や化学的気相成長法など、従来より行われている方法によって形成する事が出来る。続いて後から形成する電極と交差する部位に、透明絶縁膜として本発明のネガ型感光性樹脂組成物より得られる硬化膜を形成する(図1-b)。その後、ICドライバとの接続配線およびY軸電極導通配線を、電極薄膜を任意の膜厚で形成したのち、レジストパターン加工、エッチング、レジスト剥離の工程を経て形成する(図1-c)。ここでの電極としては、前記透明電極材料に加え、モリブデン、モリブデン/アルミニウム/モリブデン積層膜(MAM)、モリブデン-ニオブ合金、クロム、チタン、チタン/アルミニウム/チタン積層膜(TAT)、アルミニウムなどが挙げられる。最後に、基板端部(図1-cの上辺左部および右辺下部)のICドライバとの接続部位以外の部分に透明保護膜を、本発明のネガ型感光性樹脂組成物より得られる硬化膜にて作製し、タッチパネル部材が得られる。図2は上記タッチパネル部材作製例の断面図である。」

(7) 段落[0095]の「合成例6」
「(合成例6:アクリル樹脂溶液(a)の合成)
500mlのフラスコに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を3g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を23.0g、ベンジルメタクリレートを31.5g、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを32.8g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを12.7g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、アクリル樹脂溶液(a)を得た。得られたアクリル樹脂溶液(a)に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加えた。アクリル樹脂の重量平均分子量は18,000、カルボン酸当量は560g/molであった。」

(8) 段落[0098]
「[0098]各実施例・比較例における評価方法を以下に示す。
(1)透過率の測定
作製したネガ型感光性樹脂組成物を5cm角のテンパックスガラス基板(旭テクノガラス板(株)製)にスピンコーター(ミカサ(株)製「1H-360S(商品名)」)を用いて500rpmで10秒回転した後、1,000rpmで4秒回転してスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW-636(商品名)」)を用いて90℃で2分間プリベークし、膜厚2μmの膜を作製した。作製した膜をパラレルライトマスクアライナー(以下PLAという)(キヤノン(株)製「PLA-501F(商品名)」)を用いて超高圧水銀灯を光源として露光し、オーブン(エスペック(株)製「IHPS-222」)を用いて空気中230℃で1時間キュアして膜厚1.5μmの硬化膜を作製した。」

(9) 段落[0110]の実施例1
「(実施例1)
黄色灯下にて1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)0.277gをDAA2.846g、PGMEA2.317gに溶解させ、ジルコニウムジノルマルブトキシビス(エチルアセトアセテート)(70wt%1-ブタノール溶液)(「オルガチックスZC-580(商品名)」、マツモトファインケミカル製)0.227g、シリコーン系界面活性剤である「BYK-333(商品名)」(ビックケミージャパン(株)製)のPGMEA1wt%溶液0.2000g(濃度100ppmに相当)、4-t-ブチルカテコールのPGMEA1wt%溶液1.661gを加え、撹拌した。そこへ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)のPGMEA50重量%溶液5.538g、ポリシロキサン溶液(i)6.923gを加えて、撹拌した。次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、ネガ型感光性樹脂組成物(S-1)を得た。得られたネガ型感光性樹脂組成物(S-1)について、前記方法で透過率、硬度、耐湿熱性、パターン加工性を評価した。」

(10) 段落[0110]の実施例24
「(実施例24)
ポリシロキサン溶液(i)の替わりにアクリル樹脂溶液(a)を用い、DAAの替わりに同量のPGMEAをさらに加える以外は実施例1と同様に行い、ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を得た。得られたネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用いて、実施例1と同様にして評価を行った。」

(11) 段落[0110]-[0111]の実施例46
「(実施例46) 以下の手順に従い、タッチパネル部材を作製した。
(1)ITOの作製
厚み約1mmのガラス基板にスパッタリング装置HSR-521A((株)島津製作所製)を用いて、RFパワー1.4kW、真空度6.65×10^( -1) Paで12.5分間スパッタリングすることにより、膜厚が150nmで、表面抵抗が15Ω/□のITOを成膜し、ポジ型フォトレジスト(東京応化工業(株)製「OFPR-800」)を塗布し、80℃で20分間プリベークして膜厚1.1μmのレジスト膜を得た。PLAを用いて、得られた膜に超高圧水銀灯をマスクを介してパターン露光した後、自動現像装置を用いて2.38wt%TMAH水溶液で90秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。その後、40℃のHCl/HNO 3 /H 2 O=18/4.5/77.5(重量比)混合溶液に80秒浸すことでITOをエッチングし、50℃の剥離液(ナガセケムテックス(株)製「N-300」)で120秒処理することでフォトレジストを除去し、膜厚200オングストロームのパターン加工された透明電極を有するガラス基板を作製した。
(2)透明絶縁膜の作製
得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、上述の評価の方法の手順に従い透明絶縁膜を作製した。
(3)モリブデン/アルミニウム/モリブデン積層膜(MAM)配線の作製
得られたガラス基板上に、ターゲットとしてモリブデンおよびアルミニウムを用い、エッチング液としてH_(3)PO_(4)/HNO_(3)/CH_(3)COOH/H_(2)O=65/3/5/27(重量比)混合溶液を用いる以外は(1)と同様の手順によりMAM配線を作製した。
(4)透明保護膜の作製
得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、上述の評価の方法の手順に従い透明保護膜を作製した。
テスターを用いて接続部の導通テスト実施したところ、電流の導通が確認された。」

したがって、関連図面と技術常識に照らし、特に、段落[0094]と「実施例46」(及び「実施例46」が引用する「合成例6」、段落[0098]の「評価の方法」、「実施例1」、「実施例24」)を参照すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「「アクリル樹脂溶液(a)」とは、
500mlのフラスコに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を3g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を50g仕込み、その後、メタクリル酸を23.0g、ベンジルメタクリレートを31.5g、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを32.8g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌し、次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを12.7g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリル樹脂溶液(a)に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加えたものであり、
「ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)」とは、
黄色灯下にて1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)0.277gをPGMEA2.846g、PGMEA2.317gに溶解させ、ジルコニウムジノルマルブトキシビス(エチルアセトアセテート)(70wt%1-ブタノール溶液)(「オルガチックスZC-580(商品名)」、マツモトファインケミカル製)0.227g、シリコーン系界面活性剤である「BYK-333(商品名)」(ビックケミージャパン(株)製)のPGMEA1wt%溶液0.2000g(濃度100ppmに相当)、4-t-ブチルカテコールのPGMEA1wt%溶液1.661gを加え、撹拌し、そこへ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)のPGMEA50重量%溶液5.538g、「アクリル樹脂溶液(a)」6.923gを加えて、撹拌し、次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を得たものであり、
「評価の方法の手順」とは、
作製したネガ型感光性樹脂組成物を5cm角のテンパックスガラス基板(旭テクノガラス板(株)製)にスピンコーター(ミカサ(株)製「1H-360S(商品名)」)を用いて500rpmで10秒回転した後、1,000rpmで4秒回転してスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW-636(商品名)」)を用いて90℃で2分間プリベークし、膜厚2μmの膜を作製する方法であって、
以下の手順に従う、
(1) 膜厚200オングストロームの、X軸電極およびY軸電極の一部を形成する透明電極がパターン加工された透明電極を有するガラス基板を作製し、
(2) 得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、評価の方法の手順に従い、透明絶縁膜を作製し、
(3) 得られたガラス基板上に、モリブデン/アルミニウム/モリブデン積層膜(MAM)で、ICドライバとの接続配線およびY軸電極導通配線を作製し、
(4) 得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、評価の方法の手順に従い、基板端部(上辺左部および右辺下部)のICドライバとの接続部位以外の部分に透明保護膜を作製する、
タッチパネル部材の製造方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、段落【0042】に、以下の記載がある。
「【0042】
本実施形態において、(A)成分は、(a)(メタ)アクリル酸、及び(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含有する共重合体が好適である。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、以下の記載がある。

(1) 段落【0003】
「【0003】
そのような中で、特にジシクロペンタジエン誘導体のような脂環式骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルは、優れた硬化性、耐水性、可とう性、耐アルカリ性を有することで知られている。さらに、優れた硬化性を示すジシクロペンタジエンのジ(メタ)アクリル酸誘導体としては、現在までのところトリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートのみが知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。しかし,トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートでは、必ずしも十分な硬化性、耐水性等を得られるとは言えない。」

(2) 段落【0009】
「【発明の効果】
【0009】
本発明のトリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレートは、優れた硬化性、耐水性、可とう性、耐アルカリ性を有し、トリシクロデカンジオールと(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルとを触媒存在下で反応させて製造することができる。本発明のトリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレートは、塗料・コーティング材料及び土木建築材料だけでなく、半導体・液晶に用いられる電子材料、また、光ファイバー、光学レンズ等に代表されるオプトエレクトロニクス材料、さらには医療材料として使用することができる。」

4.引用文献4、引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4(なお、引用文献4の発行日は、引用文献5に記載されるとおり、2013年1月24日である。)の講演-1「海水・塩水・さび-塩分があると金属はどうしてさびやすいのか?-」の2.?3.において記載されているように、そもそも塩単体では錆は生じず、錆が生じるためには水分が必要不可欠であること、つまり、科学的には、低い透湿度により、水を通しにくくすることによって、防錆性は高まるものであることが、本願出願日前において、周知技術であったといえる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア) 引用発明の「タッチパネル部材」である「ガラス基板」は、本願発明1の「タッチパネル用基材」に相当する。
引用発明の「ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)」を用いて作成された「透明保護膜」は、本願発明1の「硬化膜」に相当する。
よって、引用発明の「得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、評価の方法の手順に従い、基板端部(上辺左部および右辺下部)のICドライバとの接続部位以外の部分に透明保護膜を作製する、タッチパネル部材の製造方法」は、本願発明1の「タッチパネル用基材と、硬化膜とを備える硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法」に相当する。

(イ) 引用発明の「X軸電極およびY軸電極の一部を形成する透明電極がパターン加工された透明電極を有するガラス基板」が、「基板端部(上辺左部および右辺下部)」に「ICドライバとの接続配線」を備えることは、本願発明1の「前記タッチパネル用基材が、電極を有するセンシング領域と、前記センシング領域よりも外側に位置すると共に、前記電極に電気的に接続された金属配線を有する領域と、を備え」ることに相当する。

(ウ) 引用発明の「ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)」のうち、「メタクリル酸」と「ベンジルメタクリレート」とを含む「アクリル樹脂溶液(a)」は、本願発明1の「(A)成分:バインダーポリマー」に相当する。
引用発明の「ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)」のうち、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)」は、本願発明1の「(B)成分:光重合性化合物」に相当する(なお、本願発明1の「(B)成分」は、引用文献1では「(C)多官能モノマー」と総称されている。)。
よって、引用発明において、
「アクリル樹脂溶液(a)とは、500mlのフラスコに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を3g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を50g仕込み、その後、メタクリル酸を23.0g、ベンジルメタクリレートを31.5g、トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカン-8-イルメタクリレートを32.8g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌し、次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを12.7g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリル樹脂溶液(a)に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加えたものであり」、
「ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)とは、黄色灯下にて1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)0.277gをPGMEA2.846g、PGMEA2.317gに溶解させ、ジルコニウムジノルマルブトキシビス(エチルアセトアセテート)(70wt%1-ブタノール溶液)(「オルガチックスZC-580(商品名)」、マツモトファインケミカル製)0.227g、シリコーン系界面活性剤である「BYK-333(商品名)」(ビックケミージャパン(株)製)のPGMEA1wt%溶液0.2000g(濃度100ppmに相当)、4-t-ブチルカテコールのPGMEA1wt%溶液1.661gを加え、撹拌し、そこへ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)のPGMEA50重量%溶液5.538g、アクリル樹脂溶液(a)6.923gを加えて、撹拌し、次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を得たものであり」、
「(4) 得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、評価の方法の手順に従い、基板端部(上辺左部および右辺下部)のICドライバとの接続部位以外の部分に透明保護膜を作製する」ことは、
本願発明1の「前記製造方法が、タッチパネル用基材上に、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:光重合性化合物と、を含有する感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を設け、前記感光性樹脂組成物層の所定部分を活性光線の照射により硬化させた後に前記所定部分以外を除去し、前記感光性樹脂組成物の硬化膜を少なくとも前記金属配線上に形成する工程を備え」ることと、「前記製造方法が、タッチパネル用基材上に、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:光重合性化合物と、を含有する感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を設け、前記感光性樹脂組成物の硬化膜を少なくとも前記金属配線上に形成する工程を備え」を有する点で共通するといえる。

したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「タッチパネル用基材と、硬化膜とを備える硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法であって、
前記タッチパネル用基材が、電極を有するセンシング領域と、前記センシング領域よりも外側に位置すると共に、前記電極に電気的に接続された金属配線を有する領域と、を備え、
前記製造方法が、タッチパネル用基材上に、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:光重合性化合物と、を含有する感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を設け、前記感光性樹脂組成物の硬化膜を少なくとも前記金属配線上に形成する工程を備える、
硬化膜付きタッチパネル用基材の製造方法。」

[相違点1]
硬化膜層を形成する工程において、本願発明1では、「前記製造方法が、タッチパネル用基材上に、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:光重合性化合物と、を含有する感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を設け、前記感光性樹脂組成物層の所定部分を活性光線の照射により硬化させた後に前記所定部分以外を除去し、前記感光性樹脂組成物の硬化膜を少なくとも前記金属配線上に形成する工程」、すなわち、硬化膜をパターン加工する工程を備えるのに対して、引用発明では、「(4)透明保護膜の作製」中にパターン加工する工程を備えることは特定されていない点。

[相違点2]
「(A)成分:バインダーポリマー」に関して、本願発明1では、「前記(A)成分が、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する共重合体を含」むのに対して、引用発明では、「アクリル樹脂溶液(a)」は、「メタクリル酸」と「ベンジルメタクリレート」(これは「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」である。)とを構成単位として含むものの、これらに由来する「共重合体」を含むことは特定されていない点。

[相違点3]
「(B)成分:光重合性化合物」に関して、本願発明1では、「前記(B)成分が、ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含」むのに対して、引用発明では、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」を用いるものであって、「ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含」まない点。

[相違点4]
前記(A)成分と前記(B)成分の含有量に関して、本願発明1では、「前記(A)成分の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量100質量部に対し35?85質量部であり、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量100質量部に対し15?65質量部である」のに対して、引用発明は、「アクリル樹脂溶液(a)6.923g」(すなわち、「固形分濃度が40wt%」より、固形分量は2.7692gである。)と「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)のPGMEA50重量%溶液5.538g」(すなわち、固形分量は、2.769gである。)であって、すなわち、それぞれ50質量部であるものの、そもそも「前記(B)成分」は存在せず、このため、「前記(A)成分」と「前記(B)成分」とを特定量だけ含有することは特定されていない点。

(2) 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記[相違点3]について先に検討する。
ア 引用発明は、主に引用文献1の「実施例46」に係るものであって、光重合性化合物として「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」を用いるものである。
この点について、引用文献1の段落[0061]には、「(C)多官能モノマーとしてはたとえば・・・(中略)・・・、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、・・・(中略)・・・、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、・・・(中略)・・・、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、・・・(中略)・・・、などが挙げられる。
中でも、感度向上の観点から、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、などが好ましい。また、疎水性向上の観点から、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが好ましい。」と記載され、(C)多官能モノマー(本願発明1の(B)成分)として多数の化合物を列挙した中で、「感度」向上の観点からは、実施例46で用いられる「ジペンタエリスリトールペンタアクリレート」などが好ましい一方、「疎水性」向上の観点からは、「ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなど」という4つの化合物が好ましいものとして列挙されている。
しかし、引用文献1は、(C)多官能モノマー(本願発明1の(B)成分)として多数の化合物を列挙した中で、光重合性化合物の「疎水性」向上の観点から、4つの化合物を列挙するものであって、「吸湿性」向上の観点ではない。
(なお、吸湿性に関連して、引用文献1の段落[0063]に「・・・(中略)・・・カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基由来の親水性であるため耐湿熱性に乏しいが、・・・(中略)・・・親水性樹脂であるカルボキシル基含有アルカリ可溶性樹脂が、(D)ジルコニウム化合物を含有することで硬化膜の耐湿熱性が向上することを今回初めて見出した。その詳細なメカニズムについては明らかではないが…」との記載がある。
この記載から、引用文献1は、耐湿性の乏しいアルカリ可溶性樹脂(これは本願発明1の「(A)」成分に対応する。)に「(D)成分」としてジルコニウム化合物を加えると(詳細なメカニズムは不明だが)、硬化膜の耐湿性が向上することを新たに見出したというものであって、光重合性化合物(本願発明1の(B)成分)の耐湿性の向上については記載されていない。
さらに、「(D)成分」のジルコニウム化合物により「その詳細なメカニズムについては明らかではないが」耐湿性を向上させた引用発明の実施例において、さらに、光重合性化合物(本願発明1の(B)成分)を別の特定の化合物で置換した場合、どのようなメカニズムで、どのように耐湿性が変化するかは、引用文献1の記載からは直ちに予測し難いといえる。)

引用文献1には、(C)多官能モノマー(本願発明1の(B)成分)として多数の化合物が列挙されており、列挙された化合物の中に「ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート」が含まれているにとどまり、特に、「ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート」(本願発明1でいう「ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物」)を選択することや、その有効性までは記載されていない。

イ 引用文献2(上記「第4、2.」を参照。)には、(A)成分として(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含有する共重合体が好適であることの記載はあるが、光重合性化合物として「ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物」を用いることについては記載されていない。

ウ 引用文献3(上記「第4、3.(1)-(2)」を参照。)には、一般に、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートは、必ずしも十分な耐水性等を得られない一方、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレートは、優れた耐水性を有している旨の記載がある。
しかし、引用文献1は、(C)多官能モノマー(本願発明1の(B)成分)として多数の化合物を列挙した中で、「疎水性」向上の観点から、4つの化合物を列挙するものであるから、「疎水性」と異なる特性である、引用文献3の「耐水性」向上の観点での化合物に関する技術的事項を組み合わせる起因は見いだし難い。
さらに、もし引用文献3の公知技術を組合せた場合でも、引用文献3では「トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートは、必ずしも十分な耐水性等を得られない」旨が記載されている以上、引用文献1で列記された4つの化合物から、引用文献3の記載に基づいて、特に「ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート」を選択する起因は見いだし難い。

エ 引用文献4-5(上記「第4、4.」を参照。)には、低い透湿度により、水を通しにくくすることによって、防錆性が高まるとの一般的な記載はあるが、光重合性化合物として、「ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物」を用いることについては記載も示唆もされていない。

オ これに対し、平成29年12月28日付け手続補正書4ページで提示された、上記4つの化合物を用いた塩水噴霧試験の結果を示す[表A]を参照すると、「疎水性」向上の観点から列挙された4つの化合物のうち、本願発明1の「ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物」に該当する「ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート」又は「ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート」を用いた場合、低い透湿性と高い防錆性とが両立できる一方、これに該当しない「エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート」又は「9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン」を用いた場合、低い透湿性と高い防錆性とを両立できないことが認められるから、本願発明1は、(B)成分として特に「ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物」を選択することによって、低い透湿性と高い防錆性とを両立し得るという格別な効果を奏するものと認められる。
したがって、引用発明において、(B)成分として「ジシクロペンタニル構造又はジシクロペンテニル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含」む構成として、本願発明1の相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に想到し得たものであるとはいえない。

カ したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-18について
本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明9は、本願発明1に対応する「感光性エレメント」の発明であり、本願発明10-18は、本願発明9を減縮した発明であって、本願発明1の上記[相違点3]に係る構成と同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-18も、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-18は、当業者が引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2013-265214(P2013-265214)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 萩島 豪  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 稲葉 和生
松田 岳士
発明の名称 硬化膜付きタッチパネル用基材及びその製造方法、感光性エレメント並びにタッチパネル  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 平野 裕之  
代理人 阿部 寛  
代理人 古下 智也  
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