• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01J
管理番号 1343440
審判番号 不服2017-11941  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-09 
確定日 2018-09-12 
事件の表示 特願2015-147347「光多重分離システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日出願公開、特開2015-194504、請求項の数(26)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成27年7月27日
(特願2013-518742号(パリ条約による優先権主張2010年7月1日、米国)の分割出願)
拒絶査定: 平成29年4月4日(送達日:同年同月10日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年8月9日
手続補正: 平成29年8月9日
拒絶理由通知: 平成30年4月9日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月10日)
手続補正: 平成30年7月5日(以下、「本件補正」という。)


第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1-29
・引用文献等 A-D

<引用文献等一覧>
A.特開2005-091163号公報
B.米国特許出願公開第2002/0181046号明細書(周知技術を示す文献)
C.特開昭63-154920号公報
D.特開2000-244404号公報(周知技術を示す文献)


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



引用刊行物
1.特開2005-091163号公報(拒絶査定時の引用文献A、以下「引用刊行物1」という)
2.米国特許出願公開第2002/0181046号明細書(拒絶査定時の引用文献B、以下「引用刊行物2」という)
3.特開2002-243544号公報(以下「引用刊行物3」という)
4.特開2000-244404号公報(拒絶査定時の引用文献D、以下「引用刊行物4」という)

1 理由1について
・請求項1-4
・引用刊行物1-3

・請求項5-12,14-18
・引用刊行物1-3

・請求項19-29
・引用刊行物1-4

2 理由2について
a.請求項11において、「前記筐体の前記内部空間の内面」とあるが、「内部空間の内面」とはどのような意味であるのかが不明瞭である。(「前記筐体の内面」の誤りではないか。)
b.請求項12において、「前記ダイクロイックバンドパスリフレクタ」とあるが、引用する請求項10(及び請求項1)には「バンドパスリフレクタ」は記載されているものの、「ダイクロイックバンドパスリフレクタ」は記載されておらず、上記記載が何を指すのかが不明瞭である。
c.請求項22,24において、「前記U.V.光検出器アレイ」とあるが、引用する請求項19には「UV光検出器アレイ」は記載されているものの、「U.V.光検出器アレイ」とは記載されておらず、上記記載が何を指すのかが不明瞭である。また、請求項27の記載に関しても同様に注意されたい。
なお、請求項14,15の記載内容は、請求項5,6と重複しているのではないか。


第4 本願発明
本願請求項1-26に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明26」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-26に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1-26は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
光多重分離デバイスであって、
光検出素子の少なくとも1つのアレイと、
前記光検出素子のアレイに光学的に連結された多重分離アセンブリと、
を備え、
前記多重分離アセンブリは、
複数の光チャネルを含み、各光チャネルは、少なくとも1つのバンドパスリフレクタと、バッフルアセンブリの光フィルタキャビティの中に配置された少なくとも1つのバンドパスフィルタとから形成され、前記光フィルタキャビティは、前記光フィルタキャビティと隣接する光チャネルとの間に配置されたフィルタバッフルと、前記バンドパスフィルタの射出面を覆うように配置された支持用バッフルとによって少なくとも部分的に囲まれており、前記支持用バッフルは、射出開口と、前記射出開口の付近に配置された支持面とを含み、前記支持面は、前記光フィルタキャビティの中のそれぞれのバンドパスフィルタを係合および支持するための棚部を提供するように構成されており、
連続する各チャネルの前記バンドパスリフレクタを前記デバイスの入射軸に対して横方向にずらすことにより、入射信号の、連続する各バンドパスリフレクタを通過する際の横方向のシフトへの対応が行われる、デバイス。
【請求項2】
前記光検出素子のアレイが、連続的な線形アレイを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記光フィルタキャビティの前記フィルタバッフルの下端が、前記光フィルタキャビティの前記支持用バッフルの上面と面するように配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フィルタバッフルが、前記支持用バッフルに隣接する前記光フィルタキャビティの中に配置された前記フィルタの上面または入射面を越えて垂直に延びている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記多重分離アセンブリの全長が76mm未満である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記多重分離アセンブリの全長が51mm未満である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記多重分離アセンブリの入射開口に隣接して配置された前記チャネルが、前記アセンブリの中で最も大きい射出開口を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
各チャネルの帯域波長が、前記多重分離アセンブリの入射開口からの距離の増大に応じて増加して、波長の短縮に応じた前記光検出素子の感度の低下が補償される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記射出開口が前記光検出器アレイの活性部に隣接して配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記バンドパスリフレクタ、フィルタおよびバッフルアセンブリを取り囲む内部空間を有する筐体をさらに含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記筐体の内面が、迷光信号を吸収するように構成されたマットブラック仕上げを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記バンドパスリフレクタが、前記筐体の前記内部空間を完全に横切るように延びている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
各バンドパスリフレクタが、1つまたは複数の隣接するバンドパスリフレクタから、4mm未満の距離だけ離間されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
各チャネルが、前記アレイの不活性部によって分離された前記アレイの固有の活性部に対応し、前記アレイの前記活性部が1つまたは複数の隣接する活性部から、1mm未満の距離だけ離間されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
各バンドパスリフレクタが、前記デバイスの前記入射光学軸に対して45度の角度で配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
光多重分離システムであって、
第一のモジュールであって、前記第一のモジュールは、UV光を検出するが425nmより長い波長を有する光を検出しないように構成されたUV光検出器アレイを含み、かつ、前記第一のモジュールの各光チャネルのための総誘電体フィルタを含む、第一のモジュールと、
第二のモジュールであって、前記第二のモジュールは、広帯域の光信号を検出するように構成された可視光検出器アレイを含み、かつ、前記第二のモジュールの各光チャネルのためのバンドパスリフレクタおよび総誘電体フィルタを含む、第二のモジュールと、
を含み、
前記第一および第二のモジュールの各光チャネルのための誘電体フィルタは、バッフルアセンブリの光フィルタキャビティの中に配置されており、前記光フィルタキャビティは、前記光フィルタキャビティと隣接する光チャネルとの間に配置されたフィルタバッフルと、前記第一および第二のモジュールの各光チャネルのための誘電体フィルタの射出面を覆うように配置された支持用バッフルとによって少なくとも部分的に囲まれており、前記支持用バッフルは、射出開口と、前記射出開口の付近に配置された支持面とを含み、前記支持面は、前記光フィルタキャビティの中のそれぞれのバンドパスフィルタを係合および支持するための棚部を提供するように構成されており、
前記第二のモジュールの連続する各チャネルの前記バンドパスリフレクタを前記第二のモジュールの入射軸に対して横方向にずらすことにより、入射信号の、連続する各バンドパスリフレクタを通過する際の横方向のシフトへの対応が行われる、システム。
【請求項17】
前記第一のモジュールは、複数の光チャネルを含む多重分離モジュールを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第二のモジュールは、複数の光チャネルを含む多重分離モジュールを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記第一のモジュールの前記UV光検出器アレイはSiCアレイを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記第二のモジュールの前記可視光検出器アレイはSiアレイを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記第一のモジュールの前記UV光検出器アレイは連続的な線形アレイを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記第二のモジュールの前記可視光検出器アレイは連続的な線形アレイを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記第一のモジュールは、光信号を受け入れるための入射開口を含み、前記第一のモジュールは、光信号を通過させて前記第一の多重分離モジュールから出すように構成された出口開口を含み、前記第二のモジュールは、前記第一のモジュールの前記出口開口の射出軸と光学的に連通する入射開口を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
前記第一のモジュールの入射開口および前記第二のモジュールの入射開口と光学的に連通するバンドパスリフレクタであって、入射光信号を分割して、前記光信号のUV帯域が前記第一のモジュールの前記入射開口へと向けられ、前記光信号の可視帯域が前記第二のモジュールの前記入射開口へと向けられるように構成されたバンドパスリフレクタをさらに備える請求項16に記載のシステム。
【請求項25】
前記第一および第二のモジュールの全長が76mm未満である、請求項16に記載のシステム。
【請求項26】
前記第一および第二のモジュールの全長が51mm未満である、請求項25に記載のシステム。」


第5 引用刊行物、引用発明等
1.引用刊行物1について
当審拒絶理由に引用された引用刊行物1には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0001】
本発明は、検出光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を光検出器で検出する分光装置に関する。」

「【0014】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、分光装置1は、リニアマルチアノード型の光電子増倍管(光検出器)2を備えている。この光電子増倍管2は四角柱状の金属製側管3を有しており、この側管3の一端側の開口部には、ガラス等の光透過性材料により形成された矩形状の光入射板4が融着等により気密に固定されている。この光入射板4は、図2において紙面に垂直な方向(以下、「幅方向」という)に延在する複数の光遮蔽板6によって等間隔に仕切られ、これにより、光入射板4には、幅方向に延在する光入射部4aが複数形成されることになる。また、光入射板4の内側表面には光電面(受光面)7が形成されている。」

「【0020】
また、図1及び図3に示すように、光電子増倍管2の光入射板4の光入射側には、光入射部4aの配列方向に沿って所定の傾斜角度θ(ここでは、θ=12度)をもって傾斜するダイクロイックミラーアレイ21が配置されている。このダイクロイックミラーアレイ21においては、光電面7に対し傾斜角度θをもって光電面7と対面する平面P上に、長波長帯域側が光透過帯域であって且つ光透過帯域の最短波長が互いに異なる複数のダイクロイックミラーDMn(ここでは、n=1?8)が平面Pの傾斜方向に沿って最短波長が大きい順に配列されている。各ダイクロイックミラーDMnは、図3において紙面に垂直な方向(以下、「幅方向」という)に延在し、光電面7の垂線方向において各光入射部4aと対向している。そして、最短波長が最大のダイクロイックミラーDM1と光電面7との距離は、最短波長が最小のダイクロイックミラーDM8と光電面7との距離に比べ大きくなっている。
【0021】
ここで、長波長帯域側が光透過帯域である場合の光透過帯域の最短波長とは、図4に示すように、例えば、各ダイクロイックミラーDMnにおいて光透過率が50%のときの波長αnを意味する。なお、ダイクロイックミラーアレイ21においては、ダイクロイックミラーDM8,DM7,DM6・・・DM1という順序で光透過帯域の最短波長αnが徐々に大きくなっているものとする。
【0022】
更に、図1及び図3に示すように、ダイクロイックミラーアレイ21による光の反射側には、ブロック状のガラス製反射部材23が配置されている。この反射部材23には、ダ
イクロイックミラーアレイ21と略平行に対面する主鏡面(反射面)23aと、光電面7に対し45度の角度をもち且つ光電面7の垂線方向においてダイクロイックミラーDM1と対面する光導入鏡面23bとが形成されている。
【0023】
また、光電面7とダイクロイックミラーアレイ21との間において、光電面7の垂線方向においてダイクロイックミラーDMnのそれぞれに対応する位置には、幅方向に延在するバンドパスフィルタ24が配置されている。各バンドパスフィルタ24は、光入射板4の外側表面に取り付けられており、隣り合うバンドパスフィルタ24,24は、幅方向に延在する光遮蔽板26によって仕切られている。なお、光電面7の垂線方向において対応する各ダイクロイックミラーDMnとバンドパスフィルタ24との間には光通過路Rが形成されており、隣り合う光通過路R,Rは、幅方向に延在する光遮光部材27によって仕切られている。
【0024】
以上のように構成された分光装置1における検出光の分光作用について説明する。図1に示すように、平行光に整形された検出光は、光電面7と平行に且つ光入射部4aの配列方向に沿って反射部材23の光導入鏡面23bに入射する。この光導入鏡面23bは光電面7に対し45度の角度をもち且つ光電面7の垂線方向においてダイクロイックミラーDM1と対面しているので、検出光は光導入面23bにより90度折り曲げられるように反射され、光電面7の垂線方向に沿ってダイクロイックミラーDM1に入射する。そのため、ダイクロイックミラーDM1を透過した光(主に波長α1より長波長帯域の光)は、バンドパスフィルタ24及び光入射部4aを透過して光電面7にほぼ垂直に入射する。
【0025】
一方、ダイクロイックミラーDM1により反射された光(主に波長α1より短波長帯域の光)は、反射部材23の主鏡面23aにより反射される。このとき、ダイクロイックミラーアレイ21は、最短波長が最大のダイクロイックミラーDM1側に比べ最短波長が最小のダイクロイックミラーDM8側のほうが光電面7に近くなるように傾斜していると共に、主鏡面23aと略平行に対面しているので、主鏡面23aにより反射された光は、光透過帯域の最短波長が2番目に大きいダイクロイックミラーDM2に対し光電面7の垂線方向に沿って入射することになる。そのため、ダイクロイックミラーDM2を透過した光(主に、波長α1より短波長帯域の光のうち、波長α2より長波長帯域の光)も、バンドパスフィルタ24及び光入射部4aを透過して光電面7にほぼ垂直に入射する。
【0026】
このようにして、光透過帯域の最短波長が最小のダイクロイックミラーDM8に到達するまで光の反射及び透過が繰り返され、各ダイクロイックミラーDMnを透過した光(互いに異なる波長帯域の光)は、すべてバンドパスフィルタ24及び光入射部4aを透過して光電面7にほぼ垂直に入射することになる。従って、互いに異なる波長帯域の光を受光する際に光電子増倍管2においてクロストークが発生するのを抑制することができ、各チャンネルCmの出力信号を精度良く取り出すことが可能になる。」

「【0040】
また、上記実施形態では、分光された各波長帯域の光を高精度に検出すべく、光検出器としてリニアマルチアノード型の光電子増倍管2を用いたが、フォトダイオードアレイやリニアCCD等を光検出器として用いてもよい。」


したがって、上記引用刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(対応する記載のある引用刊行物1の段落を括弧書きで示す。)

「検出光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を光検出器で検出する分光装置であって、(【0001】)
フォトダイオードアレイやリニアCCD等の光検出器と、(【0040】)
光入射側に配置されたダイクロイックミラーアレイ21(【0020】)、ブロック状のガラス製反射部材23(【0022】)、及びバンドパスフィルタ24(【0023】)と、を備え、
隣り合うバンドパスフィルタ24,24は、幅方向に延在する光遮蔽板26によって仕切られている(【0023】)、分光装置。」

2.引用刊行物2?4について
当審拒絶理由に引用された引用刊行物2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0018] Preferably, the WDM demultiplexer/multiplexer 200 is configured and dimensioned such that the incidence angle of the light beam on each of the dielectric thin film filters 202, 204, . . . , 206, and 208 is less than 45 degrees, and performance is even better is this angle is less than 30 degrees. This is because a smaller incidence angle will not only make the system performance less sensitive to filter misalignment, but also will also reduce polarization-dependent losses.

[0019]Thus, in accordance with a preferred embodiment, a WDM demultiplexer-multiplexer device is provided, the device being capable of spatially demultiplexing a WDM signal comprising channels at λ_(1)λ_(2)λ_(3)λ_(4) . . . λ_(N), the device comprising a plurality of -linearly arranged narrow band reflective filters, each narrow band reflective filter being designed to reflect a single wavelength λi and reflect all other wavelengths in the WDM signal. ・・・」
(当審による下線部分訳:「好ましくは、WDMデマルチプレクサ/マルチプレクサ200は、誘電体薄膜フィルタ202、204、…、206、及び208の各々に対する光束の入射角は45度未満であるような寸法にされ、・・・」
「したがって、好ましい実施形態によれば、WDMデマルチプレクサ-マルチプレクサ装置が提供され、該装置は、 λ_(1)λ_(2)λ_(3)λ_(4) . . . λ_(N)チャネルを含むWDM信号を空間分離することができ、直線状に配置された狭帯域反射フィルタを備え、各狭帯域反射フィルタは、単一波長λiを反射し、またWDM信号の他の全ての波長を反射するように設計されています。」)

当審拒絶理由に引用された引用刊行物3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0020】例えば、図2、図3に示すように、遮光体9は、皿状で、かつ、平面視「田」の字状に形成されており、各収容部28,29,30,31は、平面視正方形形状の光学フィルター21,22,23,24が収容可能なように格子枠状に形成されている。
【0021】すなわち、前記遮光体9は、平面視口型の外枠部32と、この外枠部32内に連設形成された平面視十字型の仕切り部33とよりなる。前記外枠部32は、平面視正方形形状で、縦断面L字型をなす一方、前記仕切り部33の縦断面は逆T字型をなし、外枠部32と仕切り部33によって前記四つの収容部28,29,30,31が形成されている。なお、この発明では、この実施形態のように複数の光学フィルターを用いる場合、遮光体9の形状は平面視「田」の字状に限定されるものではなく、各光学フィルターの配置を、光学フィルター等の光学系の構成、測定成分、検出素子の性質(リファレンスが必要か否か)等によって任意に変更できる。更に、収容部28,29,30,31を兼ねている遮光体9の配置、形状も光学フィルターの配置、形状の変更に対応させることは勿論である。」

「【0024】そして、例えば光学フィルター21が収容される遮光体9は、窓材2を透過した赤外光が通過する通過穴34を収容部28に有する。この通過穴34は、窓材2を透過した赤外光が通過する上方開口35と、窓材2を透過した赤外光が上方開口35を通過した後、光学薄膜としての前記ショートロングカット面26、バンドパス面27によって選択された所定の波長帯域の赤外光が通過する下方開口36とを有する一方、この下方開口36を形成するフィルター受け部37が収容部28に形成されている。下方開口36の大きさはフィルター受け部37の分だけ上方開口35の大きさよりも小さい。前記フィルター受け部37は、通過穴34上方から通過穴34内に挿入された光学フィルター21を支持するもので、光学フィルター21の下面nの一部が当接した状態で光学フィルター21を収容部28内に載置するためのものである。そして、載置状態では、遮光体9の上端面Mが光学フィルター21の上面NよりもLだけ高い位置に位置している。そのため、この発明では、従来のように4枚の光学フィルターを面一に位置させる精密な作業を行う必要はなくなり、その分作業性を容易にできる。前記フィルター受け部37は、外枠部32を縦断面L字型に形成するとともに、仕切り部33の縦断面を逆T字型に形成することによって得られる。」

当審拒絶理由に引用された引用刊行物4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】
【発明の実施の形態】図1には本発明の高容量の光ファイバネットワーク100を示す。重要な点は、複数の波長分割多重化(WDM)チャネルは1.4μm波長領域(即ち、1335-1435nm)で動作する点である。さらにまた、このWDMチャネルは、1.3μm波長領域(即ち、1285-1335nm)で動作するアナログCATV信号と、1.55μm波長領域(即ち、1500-1600nm)で動作する他のWDMチャネルと光ファイバを共有している。
【0019】図にはキャリア波長(λ11,λ12,λ13,λ14)を有する4本の高速データチャネルが示されており、各キャリアは、10Gb/sのデータレートで送信器111で変調される。このようなチャネルは、電話,データ,画像を含む大量のデジタル信号を送信できる。これらのチャネルは、1400nmを中心に100GHzの中心間チャネルスペースを有するよう示されている。
【0020】同図には4本のチャネルが示されているが、これ以上の数のチャネルあるいはこれ以下の数のチャネルも使用することができる。さらにまた、チャネルスペースは、増幅器のバンド幅およびマルチプレクサとディマルチプレクサのような装置の入手製および/または価格に基づいてネットワークの設計者により決定されるように100GHz以上あるいはそれ以下でもよい。送信器111-1は、10Gb/sのレートで入力データを受信し、コヒーレントな光ソースを変調し、その公称波長λ11は1400nmである。その後この光学信号は、光学マルチプレクサ112に入力され、そのタスクは異なる波長を有する複数の入力を1本の出力ポート110上に結合することである。」

3.引用文献Cについて
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献C(特開昭63-154920号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「照度計の受光部は、通常第6図に示すように光電変換素子8の上方に光電変換素子8と同面積または前記光電変換素子8より大きな面積をもつ視感度補正フィルタ7を配置することにより、受光部の分光感度を標準比視感度に合致させるようにしている。しかし、光電変換素子8の分光感度や視感度補正フィルタ7の分光透過特性は、必ずしも一定ではなく、製造ロットの違いによって変化する。また、同一ロット内においてもバラツキがある。したがって、ある特定の光電変換素子と視感度補正フィルタとを組合せた分光感度が、標準比視感度に合致しても、別の同種の光電変換素子と視感度補正フィルタとを組合せた場合に、その分光感度が標準比視感度に合致しないことがある。」(第1頁右欄第11行?第2頁左上欄第4行)

「遮光支持板2は、光が透過するための複数の円柱状の開口部を持ち、この開口部の入射側の直径をφb、出射側の直径をφaとしたときφb>φaとなるようにしている。これは、斜め入射角特性補正用の光拡散板から出た光を一つの開口部に導くとき、光拡散板より広い面積からの光を取込み光拡散板の輝度ムラや拡散光の方向による出射側での分光分布の変化をなくすためである。」(第2頁左下欄第10行?第17行)


第6 当審拒絶理由についての判断
1.特許法第29条第2項について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

まず、引用発明における「検出光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を光検出器で検出する分光装置」は、本願発明1における「光多重分離デバイス」に相当する。
また、引用発明における「フォトダイオードアレイやリニアCCD等の光検出器」は、本願発明1における「光検出素子の少なくとも1つのアレイ」に相当する。
さらに、引用発明の「光入射側に配置されたダイクロイックミラーアレイ21、ブロック状のガラス製反射部材23、及びバンドパスフィルタ24」を含む構成は、本願発明1における「前記光検出素子のアレイに光学的に連結された多重分離アセンブリ」に相当し、引用発明において「隣り合うバンドパスフィルタ24,24は、幅方向に延在する光遮蔽板26によって仕切られている」ことと、本願発明1において「前記多重分離アセンブリは、複数の光チャネルを含み、各光チャネルは、少なくとも1つのバンドパスリフレクタと、バッフルアセンブリの光フィルタキャビティの中に配置された少なくとも1つのバンドパスフィルタとから形成され、前記光フィルタキャビティは、前記光フィルタキャビティと隣接する光チャネルとの間に配置されたフィルタバッフルと、前記バンドパスフィルタの射出面を覆うように配置された支持用バッフルとによって少なくとも部分的に囲まれており、前記支持用バッフルは、射出開口と、前記射出開口の付近に配置された支持面とを含み、前記支持面は、前記光フィルタキャビティの中のそれぞれのバンドパスフィルタを係合および支持するための棚部を提供するように構成されて」いることとは、「前記多重分離アセンブリは、複数の光チャネルを含み、各光チャネルは、少なくとも1つのバンドパスフィルタから形成されて」いる点で共通するといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「光多重分離デバイスであって、
光検出素子の少なくとも1つのアレイと、
前記光検出素子のアレイに光学的に連結された多重分離アセンブリと、
を備え、
前記多重分離アセンブリは、
複数の光チャネルを含み、各光チャネルは、少なくとも1つのバンドパスフィルタから形成されている、デバイス。」

(相違点1)本願発明1の多重分離アセンブリにおける「各光チャネル」は、「少なくとも1つのバンドパスリフレクタと、バッフルアセンブリの光フィルタキャビティの中に配置された少なくとも1つのバンドパスフィルタとから形成され、前記光フィルタキャビティは、前記光フィルタキャビティと隣接する光チャネルとの間に配置されたフィルタバッフルと、前記バンドパスフィルタの射出面を覆うように配置された支持用バッフルとによって少なくとも部分的に囲まれており、前記支持用バッフルは、射出開口と、前記射出開口の付近に配置された支持面とを含み、前記支持面は、前記光フィルタキャビティの中のそれぞれのバンドパスフィルタを係合および支持するための棚部を提供するように構成されて」いるのに対し、引用発明においては「隣り合うバンドパスフィルタ24,24は、幅方向に延在する光遮蔽板26によって仕切られている」ことにより、各光チャネルは、少なくとも1つのバンドパスフィルタにより各光チャネルが形成されているものではあるが、それ以外の上記構成を備えてはいない点。

(相違点2)本願発明1においては「連続する各チャネルの前記バンドパスリフレクタを前記デバイスの入射軸に対して横方向にずらすことにより、入射信号の、連続する各バンドパスリフレクタを通過する際の横方向のシフトへの対応が行われる」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「連続する各チャネルの前記バンドパスリフレクタを前記デバイスの入射軸に対して横方向にずらすことにより、入射信号の、連続する各バンドパスリフレクタを通過する際の横方向のシフトへの対応が行われる」という構成は、上記引用刊行物2-4には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用刊行物1ないし4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明16について
本願発明16は、第一および第二のモジュールを含む光多重分離システムであって、本願発明1の上記相違点2に係る構成に対応する、「前記第二のモジュールの連続する各チャネルの前記バンドパスリフレクタを前記第二のモジュールの入射軸に対して横方向にずらすことにより、入射信号の、連続する各バンドパスリフレクタを通過する際の横方向のシフトへの対応が行われる」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用刊行物1ないし4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)本願発明2-15,17-26について
本願の請求項2-15,17-26は、本願の請求項1または16を直接または間接的に引用するものであるから、本願発明2-15,17-26は本願発明1または16と同じ理由により、当業者であっても、引用刊行物1ないし4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.特許法第36条第6項第2号について
(1)当審では、請求項11,12,14,15,22,24,27に関し、その記載が不備であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正によって、特許請求の範囲が補正(上記「第4 本願発明」を参照。)された結果、この拒絶の理由はいずれも解消した。


第7 原査定についての判断
本件補正により、補正後の請求項1-26は、「連続する各チャネルの前記バンドパスリフレクタを前記デバイスの入射軸に対して横方向にずらすことにより、入射信号の、連続する各バンドパスリフレクタを通過する際の横方向のシフトへの対応が行われる」という技術的事項、もしくはそれに対応する技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における上記引用文献Cにも記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-26は、当業者であっても、原査定における引用刊行物A-Dに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-31 
出願番号 特願2015-147347(P2015-147347)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01J)
P 1 8・ 121- WY (G01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塚本 丈二奥田 雄介  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
中塚 直樹
発明の名称 光多重分離システム  
代理人 石川 大輔  
代理人 山本 健策  
代理人 山本 秀策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 森下 夏樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ