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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1343508
審判番号 不服2017-14457  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-29 
確定日 2018-09-14 
事件の表示 特願2015-201818「透過複合基板、及び、タッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月16日出願公開、特開2016- 81530、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月13日(パリ条約による優先権主張2014年10月21日、中国)の出願であって、平成28年9月6日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月2日付けで手続補正がされ、平成29年5月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正がされ、平成30年5月18日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年7月24日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年5月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1-13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。




<引用文献等一覧>
A.国際公開第2014/078524号
B.特開2012-003212号公報
C.特開昭58-103632号公報
D.荒井聡,EV GROUP 薄化ウェハーに対応した接合・アライメント技術を展開,[online],2012年 7月 6日,[検索日 2016.09.05],URL,http://sustainablejapan.net/?p=1942
E.特開2013-246610号公報
F.特開2010-044870号公報
G.特開昭55-154347号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)本件出願の請求項1-4,8-13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。




引 用 文 献 等 一 覧

引用文献1:国際公開第2014/078524号(拒絶査定時の引用文献A)
引用文献2:荒井聡,EV GROUP 薄化ウェハーに対応した接合・アライメント技術を展開,[online],2012年 7月 6日,[検索日 2016.09.05],URL,http://sustainablejapan.net/?p=1942(拒絶査定時の引用文献D)
引用文献3:特開2013-246610号公報(拒絶査定時の引用文献E)

第4 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成30年7月24日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-9は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第1の面と前記第1の面に対向する第2の面を有するサファイヤ製透過基板と、
前記第2の面に対向する第3の面と、前記第3の面に対向する第4の面を有する無機材料層と、
前記第4の面に対向する第5の面と、前記第5の面に対向する第6の面を有するガラス製透過基板と、
シリコン酸素シリコン結合を有し、前記無機材料層の第4の面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する接合層と、を備える透過複合基板。
【請求項2】
前記無機材料層は、シリコン層、又は、二酸化シリコン層である請求項1に記載の透過複合基板。
【請求項3】
前記無機材料層は、約1μm?約10μmの範囲内の厚みを有する請求項1または2に記載の透過複合基板。
【請求項4】
前記サファイヤ基板は、約0.1mm?約0.3mmの範囲内の厚みを有し、
前記ガラス基板は、約0.2mm?約1mmの範囲内の厚みを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の透過複合基板。
【請求項5】
第1の面と前記第1の面に対向する第2の面を有するサファイヤ製透過基板と、
前記第2の面に対向する第3の面と、前記第3の面に対向する第4の面を有する無機材料層と、
前記第4の面に対向する第5の面と、前記第5の面に対向する第6の面を有するガラス製透過基板と、
シリコン酸素シリコン結合を有し、前記無機材料層の第4の面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する接合層と、
を有するカバープレートと、
前記第6の面側に設けられたタッチ検出デバイスと、を備えるタッチパネル。
【請求項6】
前記サファイヤ製透過基板の第1の面側にノングレアフィルムが設けられている請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記無機材料層は、シリコン層、又は、二酸化シリコン層である請求項5又は6に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記無機材料層は、約1μm?約10μmの範囲内の厚みを有する請求項5?7のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記サファイヤ基板は、約0.1mm?約0.3mmの範囲内の厚みを有し、
前記ガラス基板は、約0.2mm?約1mmの範囲内の厚みを有する
請求項5?8のいずれか1項に記載のタッチパネル。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成30年5月18日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「[0015] In one embodiment, the cover plate comprises a sapphire layer combined with one or more permanent or temporary carrier substrates or layers that provide additional desirable features to the cover plate. For example, the cover plate may further comprise a transparent subsurface layer having a front or exterior-facing surface to which the sapphire layer is attached, thereby forming a multilayer composite. The subsurface layer can be any transparent material known in the art including, for example, a layer comprising glass, such as soda-lime, borosilicate, or aluminosilicate glass, including chemically-strengthened alkali aluminosilicate glass (such as the material referred to as "gorilla glass" available from Corning), or a layer comprising a polymeric material, such as a polycarbonate or a polymethacrylate such as polymethyl methacrylate (PMMA). The subsurface layer can be relatively much thicker than the sapphire layer, having a thickness greater than 0.2 mm, including greater than 0.4 mm, such as between about 0.2 mm to about 1.0 mm. By combining a thicker subsurface layer with the ultrathin sapphire layer for the cover plate of the electronic device of the present invention, the composite would retain the desirable surface characteristics of the sapphire, such as hardness and scratch and smudge resistance, while also taking advantage of the desirable bulk properties of the subsurface material, such as good fracture resistance and low cost. For example, in a sapphire-glass composite structure, the sapphire would enhance the shatter and scratch resistance of the glass while, for a sapphire-polymeric material composite, the combination would be much more resistant to mechanical damage, such as cracking, particularly if flexed or bent to fit a curved surface. Such composites would not compromise the transparency of the cover plate. Other advantageous combinations of ultrathin sapphire layers and transparent substrates are also possible and can be determined by one of ordinary skill in the art, given the benefit of this disclosure.
[0016] As a specific example, an embodiment of a cover plate comprising a sapphire multilayer composite for the electronic device of the present invention is shown in FIG 1. As shown, sapphire composite 100 comprises sapphire lamina 110, with a thickness of less than 50 microns, attached to subsurface layer 120, such as a glass or plastic substrate, forming interface 130, which is formed at the lower surface of sapphire lamina 110 and the front (upper) surface of subsurface layer 120.
[0017] The sapphire layer and the subsurface layer may be combined using any technique known in the art, forming an interface in between, including the methods described in U.S. Patent Application No. 12/980,424 entitled, "A Method to Form a Device by Constructing a Support Element on a Thin Semiconductor Lamina", filed December 10, 2010, now U.S. Patent No. 8,173,452, incorporated in its entirety by reference herein. For example, the interface may be formed by bonding with an adhesive layer, thereby affixing the sapphire layer to the front surface of the transparent subsurface layer. Examples of suitable adhesives include, but are not limited to, polymers or combinations of polymers such as poly(propylene carbonate) (PC), poly(ethylene carbonate) (PEC), or poly(butylenes carbonate) (PBC). Electrostatic adhesion may also be used. In addition, the interface may be formed by thermally bonding the sapphire lamina to the subsurface layer, such as through thermal compression bonding at, for example, pressures of from about 5-100 psi, including 40 psi, and temperatures from about 300-500°C, including 400°C. Specific bonding conditions would vary depending on the specific type of subsurface layer used. Furthermore, the transparent subsurface layer may be fused or melted to the sapphire layer to form an interface, and the temperature will depend on the type of material used as the subsurface layer. For example, temperatures for melting a glass substrate to the sapphire may be on the order of 650-1050°C while lower temperatures, such as 110-150°C, would be suitable if the substrate is plastic.
[0018] The cover plate may further comprise at least one transparent conducting oxide layer. This is particularly preferred for an electronic device including a capacitive touch screen in the display element in which the touch screen electrical components are integrated with the cover plate. Use of a cover plate comprising an ultrathin sapphire lamina could facilitate simpler integration of a capacitive touch screen into a display. For example, a capacitive touch screen structure in general consists of two layers of transparent conducting oxide (TCO), often separated by a dielectric layer. The two TCO layers are typically patterned into lines, with the lines on the first layer running perpendicular to the lines on the second layer, although other line patterns are also possible. The pitch of these patterned lines may be between 0.1 and 10 mm (such as 6 mm), and the width of these patterned lines may be between 0.2 and 6 mm (such as 5.9 mm or 1 mm). The dielectric layer can be a layer of glass, or, alternatively, may be a sputtered thin film, leading to a configuration having an overall thinner structure. 」
(当審訳:[0015] 一実施態様では、カバープレートは、カバープレートにさらなる望ましい特性をもたらす1つ又はそれ以上の常設又は一時的な担体となる基板又は層と組み合わせたサファイア層を含有してなる。例えば、カバープレートは、表面下の透明な層をさらに含有してもよく、表面下層はサファイア層が付着するための前又は外に向いた表面を有しており、付着によって多層複合材を形成する。この表面下の層は、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、若しくは(例えば、Corning 社から入手可能な「ゴリラガラス」と呼ばれる物質のような)化学的に強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含むアルミノケイ酸塩ガラスからなる層、又はポリカーボネート若しくはポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリメタクリレートなどの高分子物質からなる層を含む、当該技術分野で公知の任意の透明物質であってもよい。この表面下の層は、サファイア層よりかなり厚くてもよく、約0.2mm?約1.0mmのように、0.4mmより大きい厚さを含む、0.2mmより大きい厚さを有する。本発明の電子機器のカバープレートに関して、より厚い表面下層を極薄サファイア層と組み合わせることによって、複合材は、優れた破砕耐性及び低コストなどの表面下層の物質の望ましい多くの特性を利用しつつも、硬度、引っかき及び汚れへの耐性などのサファイアの望ましい表面特性も有するだろう。例えば、サファイア-ガラス複合材の構造においては、サファイアがガラスの破砕及び引っかきへの耐性を増強するだろうし、サファイア-高分子物質複合材に関しては、それらの組み合わせは、特に曲がった表面に適合させるために複合材が曲げられたり曲がったりする場合に、亀裂などの機械的損傷に対してより強い抵抗性を示すようになるだろう。このような複合材は、カバープレートの透明性を損なわないだろう。これら以外の極薄サファイア層と透明な基板との有益な組み合わせも可能であり、本開示の利益を考慮して当業者が決定できるだろう。
[0016] 具体例として、本発明の電子機器で使われる、サファイア多層複合材を含有してなるカバープレートの実施態様を、図1に示す。図示したように、サファイア複合材(100)はサファイア薄層(110)を含有してなり、サファイア薄層は50ミクロン未満の厚さを有し、ガラス又はプラスチック基板のような表面下層(120)に付着され、接触面(130)を形成し、接触面はサファイア薄層(110)の下表面と表面下層(120)の前(上)表面とで形成される。
[0017] サファイア層と表面下層は、当該技術分野で公知の任意の技術を用いて結合でき、その間に接触面を形成する。当該技術分野で公知の技術は、2010年12月10日に出願され現在米国特許第8,173,452である「A Method to Form a Device by Constructing a Support Element on a Thin Semiconductor Lamina」と題する米国特許出願第12/980,424に記載されている方法を含み、この文献全体は参照により本明細書に取り込まれる。例えば、接触面は接着層で結合することによって形成することができ、これによりサファイア層を透明な表面下層の前面に貼り付ける。適切な接着剤は、これに限定されないが、ポリ(プロピレンカーボネート)(PC)、ポリ(エチレンカーボネート)(PEC)、又はポリ(ブチレンカーボネート)(PBC)等のポリマー又はポリマーの組み合わせを包含する。静電接着も用いることができる。さらに、接触面は、サファイア薄膜を表面下層に熱で結合することによって形成することもでき、例えば、40psiを含む約5?100psiの圧力及び400℃を含む約300?500℃の温度で熱圧着すること等ができる。具体的な結合条件は、用いられる表面下層の具体的な種類によって変化するだろう。さらに、透明な表面下層をサファイア層に融合又は融解させて接触面を形成することができ、その温度は表面下層として用いられる物質の種類によって決まるだろう。例えば、ガラス基板を溶融してサファイアに結合するための温度は、650?1050℃のオーダーであるのに対して、基板がプラスチックである場合は、より低い温度、例えば110?150℃が適切であろう。
[0018] カバープレートはさらに、少なくとも1つの透明な導電酸化物層を含有してもよい。導電酸化物層の含有は、タッチスクリーン電気部品がカバープレートと一体化しているディスプレー要素中に容量性のタッチスクリーン含んでいる電子機器について特に好ましい。極薄サファイア薄膜を含有してなるカバープレートの使用は、容量性タッチスクリーンのディスプレーへのより単純な一体化を容易なものにし得る。例えば、容量性のタッチスクリーン構造は、一般に透明な導電酸化物(TCO)の2つの層から成り、多くの場合誘電体の層によって隔てられている。2つのTCO層は典型的には線状にパターン化されており、第一層上のこれらの線は第二層上の線に垂直に走っているが、他の線状パターンも同様に可能である。パターン化されたこれらの列の間隔の幅は0.1?10mm(例えば6mm)であってよく、パターン化されたこれらの列の幅は0.2?6mm(例えば5.9mm又は1mm)であってもよい。誘電体層はガラスの層であってよく、或いは、スパッタ薄膜であってもよく、これは全体としてより薄い構造を有する形状をもたらす。)
(下線は当審で付与。以下、同様。)

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、カバープレートとして、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「カバープレートは、1つ又はそれ以上の基板と組み合わせたサファイア層を含有し、
カバープレートは、表面下の透明な層をさらに含有してもよく、表面下層はサファイア層が付着するための前又は外に向いた表面を有しており、付着によって多層複合材を形成し、
この表面下の層は、例えば、アルミノケイ酸塩ガラスからなる層を含む、透明物質であってもよく、
この表面下の層は、サファイア層よりかなり厚くてもよく、より厚い表面下層を極薄サファイア層と組み合わせることによって、複合材は、優れた破砕耐性及び低コストなどの表面下層の物質の望ましい多くの特性を利用しつつも、硬度、引っかき及び汚れへの耐性などのサファイアの望ましい表面特性も有するものであり、
電子機器で使われる、サファイア多層複合材を含有してなるカバープレートは、
サファイア複合材(100)はサファイア薄層(110)を含有してなり、ガラス基板のような表面下層(120)に付着され、接触面(130)を形成し、接触面はサファイア薄層(110)の下表面と表面下層(120)の前(上)表面とで形成され、
サファイア層と表面下層は、その間に接触面を形成し、例えば、接触面は接着層で結合することによって形成することができ、静電接着も用いることができ、さらに、接触面は、サファイア薄膜を表面下層に熱で結合することによって形成することもでき、例えば、40psiを含む約5?100psiの圧力及び400℃を含む約300?500℃の温度で熱圧着すること等ができる
カバープレート。」

2.引用文献2について
平成30年5月18日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

b)「プラズマ表面活性化技術「LowTemp(R)(当審注:○にRを(R)と記載した。以下、同様。)」

シリコンとSOIウェハーなどを、接着剤を使わずに直接接合する場合、プラズマによる表面活性化処理を施すことがある。1000℃程度の高温熱処理ができる場合には、特に表面活性化を行わなくても問題なく接合できるが、プロセス全体をより低温で行う場合には表面活性化処理が必要になる。例えば、裏面照射型イメージセンサでは、ほとんどこの技術が使われている。EVグループは、プラズマ活性化処理技術「LowTemp(R)」を開発しており、同技術を導入した装置としてプラズマ装置「EVG(R)810LT」などがある。

・・・

洗浄でウェハー表面のパーティクル除去を行ってから、表面をプラズマで活性化する。プラズマガスにはN_(2)またはO_(2)が使われる。接合自体は常温で行い、その後200?300℃でアニール処理をかけることにより、十分な接合界面の強度が得られる。この温度であれば、ウェハー上にデバイスが形成された状態で直接接合も問題なく行うことができるという。

・・・

高温の熱処理による直接接合と、プラズマ活性化処理による直接接合におけるシリコンウェハーの表面状態を比較してみると、高温処理ではウェハー同士を接触させたときに表面に存在するHとOがファンデルワールス力で弱い結合を作っている。このとき高温での熱処理によってH_(2)Oを飛ばすと、Si-O-Siの強い共有結合を得る。一方、プラズマ活性化処理を行うと、表面状態がよりシンプルなSi-O-Hの構造にそろうので、200℃程度の熱処理でもH_(2)Oを十分飛ばすことができ、Si-O-Siの強い共有結合を得ることができる。接合強度の評価は、接合界面にブレードを差し入れたときに接合面が剥がれる距離を測定することによって算出できる。」

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献2には、以下の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。
「シリコンとSOIウェハーなどを、接着剤を使わずに直接接合する場合、
洗浄でウェハー表面のパーティクル除去を行ってから、表面をプラズマで活性化し、
接合自体は常温で行い、その後200?300℃でアニール処理をかけることにより、十分な接合界面の強度を得る技術。」

3.引用文献3について
平成30年5月18日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

c)「【0019】
図3(a)は、カバーガラスを透明基材10として用いた、カバーガラス一体型投影型静電容量式タッチパネル基板の構造を示す図である。
図3(b)は、反射防止膜50を有する、本実施形態のカバーガラス一体型投射型静電容量式タッチパネル基板の構造を示す図である。透明基材10の表面に反射防止膜50を有することで、表示面への外観の映りこみを防ぐことができる。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明は、「サファイア複合材(100)はサファイア薄層(110)を含有してなり、ガラス基板のような表面下層(120)に付着され、接触面(130)を形成し、接触面はサファイア薄層(110)の下表面と表面下層(120)の前(上)表面とで形成され」るものであり、「サファイヤ薄層(110)」は前記「下表面」と対向する面(上表面)を有することは明らかであるから、引用発明の「サファイヤ薄層(110)」の前記「下表面」と対向する面は本願発明1の「第1の面」に、引用発明の「サファイヤ薄層(110)」の前記「下表面」は本願発明1の「前記第1の面に対向する第2の面」にそれぞれ相当し、引用発明の「サファイヤ薄層(110)」は本願発明1の「第1の面と前記第1の面に対向する第2の面を有するサファイヤ製透過基板」に相当する。

イ.引用発明は、「サファイア複合材(100)はサファイア薄層(110)を含有してなり、ガラス基板のような表面下層(120)に付着され、接触面(130)を形成し、接触面はサファイア薄層(110)の下表面と表面下層(120)の前(上)表面とで形成され」るものであり、「表面下層(120)」は前記「前(上)表面」と対向する面(下表面)を有することは明らかであるから、引用発明の「表面下層(120)」の前記「前(上)表面」と対向する面は本願発明1の「第5の面」に、引用発明の「表面下層(120)」の前記「前(上)表面」は本願発明1の「前記第5の面に対向する第6の面」にそれぞれ相当し、引用発明の「ガラス基板のような表面下層(120)」は本願発明1の「前記第4の面に対向する第5の面と、前記第5の面に対向する第6の面を有するガラス製透過基板」と「第5の面と、前記第5の面に対向する第6の面を有するガラス製透過基板」である点で共通するといえる。

ウ.引用発明は、「サファイア複合材(100)はサファイア薄層(110)を含有してなり、ガラス基板のような表面下層(120)に付着され、接触面(130)を形成し、接触面はサファイア薄層(110)の下表面と表面下層(120)の前(上)表面とで形成され」、「接合面」の形成には、「静電接着も用いることができ、さらに、接触面は、サファイア薄膜を表面下層に熱で結合することによって形成することもでき、例えば、40psiを含む約5?100psiの圧力及び400℃を含む約300?500℃の温度で熱圧着すること等ができる」ものであるから、引用発明の「静電接着」や「熱で結合」した「接触面(130)」は、本願発明1の「シリコン酸素シリコン結合を有し、前記無機材料層の第4の面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する接合層」と「前記ガラス製透過基板の第5の面と対向する面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する接合層」である点で共通するといえる。

エ.引用発明の「カバープレート」は、「多層複合材を形成」するものであるから、本願発明1の「透過複合基板」に相当する。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「第1の面と前記第1の面に対向する第2の面を有するサファイヤ製透過基板と、
第5の面と、前記第5の面に対向する第6の面を有するガラス製透過基板と、
前記ガラス製透過基板の第5の面と対向する面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する接合層と、を備える透過複合基板。」
である点。

〈相違点〉
本願発明1は、「第2の面を有するサファイヤ製透過基板」と「第5の面の面を有するガラス製透過基板」との間に「前記第2の面に対向する第3の面と、前記第3の面に対向する第4の面を有する無機材料層」を備え、「ガラス製透過基板」の「第5の面」は「第4の面に対向する」ものであり、「結合層」は「シリコン酸素シリコン結合を有し、前記無機材料層の第4の面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する」ものであるのに対し、引用発明は、「無機材料層」を備えるとはされておらず、「接触面はサファイア薄層(110)の下表面と表面下層(120)の前(上)表面とで形成され」ている点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、上記相違点に係る本願発明1の「第2の面を有するサファイヤ製透過基板」と「第5の面の面を有するガラス製透過基板」との間に「前記第2の面に対向する第3の面と、前記第3の面に対向する第4の面を有する無機材料層」を備え、「ガラス製透過基板」の「第5の面」は「第4の面に対向する」ものであり、「結合層」は「シリコン酸素シリコン結合を有し、前記無機材料層の第4の面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する」ものであるという構成は、上記引用文献1-3には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
また、引用発明において、「サファイア薄層(110)」と「ガラス基板のような表面下層(120)」との間に無機材料層を設ける動機もない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1を引用するものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明5について
本願発明5も、本願発明1の「第2の面を有するサファイヤ製透過基板」と「第5の面の面を有するガラス製透過基板」との間に「前記第2の面に対向する第3の面と、前記第3の面に対向する第4の面を有する無機材料層」を備え、「ガラス製透過基板」の「第5の面」は「第4の面に対向する」ものであり、「結合層」は「シリコン酸素シリコン結合を有し、前記無機材料層の第4の面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する」ものであるという構成と実質的に同じ構成を備えるものであるから、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明6-9について
本願発明6-9は、本願発明5を引用するものであり、上記「3.請求項5について」にて述べたのと同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1-9は、「第2の面を有するサファイヤ製透過基板」と「第5の面の面を有するガラス製透過基板」との間に「前記第2の面に対向する第3の面と、前記第3の面に対向する第4の面を有する無機材料層」を備え、「ガラス製透過基板」の「第5の面」は「第4の面に対向する」ものであり、「結合層」は「シリコン酸素シリコン結合を有し、前記無機材料層の第4の面と前記ガラス製透過基板の第5の面とを接合する」ものであるという技術的事項を有し、当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Gには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-9は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Gに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-30 
出願番号 特願2015-201818(P2015-201818)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 円子 英紀  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 松田 岳士
山田 正文
発明の名称 透過複合基板、及び、タッチパネル  
代理人 井上 正則  
代理人 家入 健  

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