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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1343579
審判番号 不服2017-5852  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-24 
確定日 2018-08-23 
事件の表示 特願2014- 28212「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月24日出願公開、特開2015-154377〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)2月18日に出願された特願2014-28212号であり、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 5月27日 :手続補正書の提出
同年 8月16日付け:拒絶理由通知書
同年10月24日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 1月16日付け:拒絶査定
同年 4月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 1月29日付け:拒絶理由通知(当審)
同年 3月30日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
平成30年3月30日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
なお、各構成の符号(A)ないし(D)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成Aないし構成Dと称する。

(本願発明)
(A)第1電力状態と前記第1電力状態より消費電力の少ない第2電力状態とを取り得る画像形成装置であって、
(B)ユーザの操作を受け付け可能であり、表示部を有する操作部と、
(C)前記画像形成装置の正面に立つユーザから見て前記操作部の下端より上側且つ前記表示部の左右方向の端部より外側に設けられ、前記表示部の上方が検知対象となるよう内側に向けられ、赤外線を検知し且つ検知した赤外線に応じた検知結果を出力する複数の赤外線受信素子を有する赤外線アレイセンサと、
(D)前記赤外線アレイセンサから出力された1又は複数の検知結果に基づいて、前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行させる制御部と、
を備えることを特徴とする
(A)画像形成装置。

第3 拒絶の理由
平成30年1月29日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。

本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1、2、7?9に対して、引用文献1、2
・請求項3?5に対して、引用文献1?3
・請求項6、10?14に対して、引用文献1?4

引用文献1:特開平3-96969号公報
引用文献2:特開2013-20048号公報
引用文献3:特開2013-201700号公報
引用文献4:特開2013-7847号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1-1)引用文献1の記載事項
上記引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。以下同じ。)

(あ)「3.発明の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
この発明は、、所定の制御を複写機の傍にオペレータがいるかどうかの判断を基準にして行う人体検出手段を備えた複写機の制御装置に関する。」(第2頁左上欄第2?6行)

(い)「また、本発明の第2の目的は、オペレータが複写機の前に存在せず、かつ、複写機のコピー動作が行われていないときには自動的に予熱モードにセットし、オペレータが複写機に近接し、コピーを行う蓋然性が高いときには自動的に予熱モードを解除して、省エネルギ化を図ることができる複写機の制御装置を提供することにある。」(第2頁右下欄第1?7行)

(う)「上記第2の目的は、機械の動作全体を制御する制御手段と、複写機のモード設定および表示を行なう操作部と、人体検出手段と、複写機を使用しない場合に少なくとも定着部の設定温度を低くし、操作部の表示を消灯する予熱モード手段とを備えた複写機の制御装置において、人体検出手段により、機械にオペレータが近づいてきたことを検出して、予熱モードを解除し、機械からオペレータが離れていくことを検出して予熱モードに設定する予熱モード制御手段を有する第4の手段によって達成される。」(第3頁左上欄第8?18行)

(え)「また、上記第4の手段によれば、予熱モード制御手段を介し、人体検出手段により複写機にオペレータが近づいてきたことを検出して、予熱モードを解除し、複写機からオペレータが離れていくことを検出して予熱モードに設定するので、オペレータが複写機から離れ、複写機の操作を行わないときには少なくとも定着部の設定温度を低くし、操作部の表示を消灯することが可能になる。」(第3頁左下欄第11?18行)

(お)「【複写機の構造およびオペレータとの位置関係】
第1図は複写機とオペレータの相対的な位置関係(距離)と、操作部の表示の点灯/消灯の関係を示す説明図である。
第1図は実施例に係る複写機の使用状態を示す側面から見た説明図、第2図はその平面図である。
同図において、複写機1の上面にはコンタクトガラス上の原稿を押さえる原稿圧板2が設けられ、上面の前面側Fには操作表示部3とオペレータ検出装置の検知部4が配設されている。オペレータ5は複写機1の前面側Fから複写機1の操作をするように設定されており、上記検知部4によってオペレータ5の存在と複写機1に対する相対的な所在範囲が検出されるようになっている。
このオペレータ検出装置の検知部4は、光(例えば赤外線)方式のものと超音波方式のものが一般に知られており、何れの方式のものかが操作表示部3に付設される。第1図および第2図において、例えば、赤外線ビーム6が検知部4によって出射されると、その赤外線6の反射を検出してオペレータ5の存在を検知し、超音波の場合には、外縁7,8の間で垂直方向の、また外縁9,10の間で水平方向の領域がそれぞれ規定され、これらの領域でオペレータ5の複写機1の前面Fに対する距離の測定が可能であり、この範囲で、所定の距離以内に反射物があれば、オペレータ5が存在していると判定する。
赤外線ビーム6を使用する場合には、指向性が強いことから平均的なオペレータ5の胸のあたりを狙ってビームを出射するように設定されている。これは、通常、複写機に向かって操作するとき胸の位置では腕の太さを加えた幅になるので、オペレータ5の立つ位置が少々違っても、検出装置の検出領域から外れる心配がないからである。」(第3頁右下欄第8行?第4頁右上欄第1行)

(か)「第3図は実施例に係る複写機の前面側Fからみた斜視図で、その上面にはコンタクトガラス12が固設され、このコンタクトガラス12上に載置される原稿を押さえる原稿圧板2が上面の後部側に回動自在に取りつけられている。」(第4頁右上欄第8行?第12行)

(き)「第4図は第3図の操作部3の構成を示す正面図である。同図に示すように、操作部3の中央には、各種の表示を行う表示パネル18が設けられ、この表示パネル18の上方に、オペレータ検出装置の検出部4とガイダンス表示部14とが設けられている。」(第4頁左下欄第10行?第15行)

(く)「<光による検出>
複写機1の操作(表示)部♯または原稿台、あるいはその近傍に、赤外線発光ダイオードと発光ダイオードの出力を細いビームにする光学系を、その出力がオペレータ5が複写機1を操作するときに立つ方向に向くように設置する。ビームの発射方向と直交する平面内で、ビーム発射位置から所定距離はなれた位置に、受光レンズを介して反射光を受光する一次元ポジションセンサ(Position Sensitive Device略してPSD)を、その長手方向が、ビーム発射位置からの距離の方向になるように設置する。」(第5頁左下欄第4?15行)

(け)「まず、赤外線を発光するLEDとその反射光によって位置を検知する受光素子(PDS)を用いた光方式のオペレータ検出装置500について説明する。」(第6頁右上欄第13?16行)


(こ)「第1図




(さ)「第2図



(し)「第3図



(す)「第4図



(1-2) 引用文献1に記載の技術的事項
上記(1-1)によれば、引用文献1には、以下(ア)ないし(エ)の技術的事項が記載されているものと認められる。
なお、引用文献1には、「検知部4」及び「検出部4」という一方が誤記と認められる記載が混在しており、以下、「検知部」に記載を統一することとする。

(ア)複写機について、上記(い)、(う)から、「予熱モードの設定と前記予熱モードの解除とを行い省エネルギ化を図る複写機」が記載されている。

(イ)操作部について、上記(う)、(き)、(す)から、「前記複写機のモード設定および表示を行う操作部であって、前記操作部の中央には、各種の表示を行う表示パネルが設けられた前記操作部」が記載されている。

(ウ)オペレータ検出装置の検知部について、上記(お)、(き)、(く)、(け)、(こ)、(さ)、(し)、(す)から、「前記表示パネルの上方に設けられたオペレータ検出装置の検知部であって、オペレータの立つ位置が少々違っても、検出装置の検出領域から外れる心配がないように、オペレータが複写機を前面側から操作するときに立つ方向かつ平均的なオペレータの胸のあたりを狙って赤外線ビームを出射するように設置された赤外線発光ダイオードと、前記赤外線ビームの発射方向と直交する平面内に設置された前記赤外線ビームの反射光を受光する受光素子とを含む前記オペレータ検出装置の検知部」が記載されている。

(エ)予熱モードの制御について、上記(え)、(お)から、「前記オペレータ検出装置の検知部により、前記複写機にオペレータが近づいてきたことを検出して、予熱モードを解除し、前記複写機からオペレータが離れていくことを検出して予熱モードに設定する予熱モード制御手段」が記載されている。

(1-3) 引用発明
以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、各構成の符号(a)ないし(d)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成aないし構成dと称する。

(引用発明)
(a)予熱モードの設定と前記予熱モードの解除とを行い省エネルギ化を図る複写機であって、
(b)前記複写機のモード設定および表示を行う操作部であって、前記操作部の中央に各種の表示を行う表示パネルが設けられた前記操作部と、
(c)前記表示パネルの上方に設けられたオペレータ検出装置の検知部であって、オペレータの立つ位置が少々違っても、検出装置の検出領域から外れる心配がないように、オペレータが複写機を前面側から操作するときに立つ方向かつ平均的なオペレータの胸のあたりを狙って赤外線ビームを出射するように設置された赤外線発光ダイオードと、前記赤外線ビームの発射方向と直交する平面内に設置された前記赤外線ビームの反射光を受光する受光素子とを含む前記オペレータ検出装置の検知部と、
(d)前記オペレータ検出装置により、前記複写機にオペレータが近づいてきたことを検出して、予熱モードを解除し、前記複写機からオペレータが離れていくことを検出して予熱モードに設定する予熱モード制御手段と
を備えることを特徴とする
(a)複写機。

2 引用文献2について
(2-1)引用文献2の記載事項
上記引用文献2には、次の事項が記載されている。

「【0008】
本発明は、省エネ性及び利便性の向上を目的とした負荷の電力供給制御のための情報発信元となり得る移動体検出手段の状況判定能力を本構成を有しない場合よりも高め、装置全体として省エネ性及び利便性の向上を図ることができる電力供給制御装置、画像処理装置、電力供給制御プログラムを得ることが目的である。」

「【0074】
ところで、スリープモード時に使用者が画像処理装置10の前に立ち、その後に節電制御ボタン26を操作して、電力供給を再開した場合、画像処理装置10が立ち上がるまでに時間を要する場合があった。
【0075】
そこで、本実施の形態では、前記節電中監視制御部24に、第1の人感センサ28、第2の人感センサ30を設置すると共に、スリープモードでは、使用者が節電制御ボタン26を操作(押圧等)する前に人感センサ(第1の人感センサ28、第2の人感センサ30)で検知して早期に電力供給を再開して、使用者が、節電制御ボタン26を操作して使用を開始するよりも早く使えるようにした。なお、節電制御ボタン26と第1の人感センサ28、第2の人感センサ30とを併用しているが、第1の人感センサ28、第2の人感センサ30のみで全ての監視を行うことも可能である。」

「【0079】
本実施の形態では、第1の人感センサ28として熱源を検出する素子を縦横に二次元状に複数個配列した二次元配列型熱源検出手段(赤外線アレイセンサ28IR(図7参照))を適用している。以下、図7に基づき、第1の人感センサ28として適用される、赤外線アレイセンサ28IRの構成について詳述する。なお、図7(B)に示す制御機能系のブロック図はハード構成を限定するものではなく、赤外線アレイセンサ28IRから出力される信号処理を機能別にブロックしたものである。」

「【0080】
図7(A)に示される如く、赤外線アレイセンサ28IRは、検出部28Aと、この検出部28Aが中央に取り付けられた回路基板部28B(以下、「解析部28B」という場合がある)とを備えている。」

「【0085】
図7(B)に示される如く、検出部28Aからの電気信号は、解析部28Bの電気信号受付部50で受け付けられ、画素毎データ格納部52にそれぞれのサーモパイル素子で検出した信号が格納されるようになっている。なお、ここでは、解析部28Bの機能の全てが図4に示す回路基板部28Bに具備することとして説明するが、解析部28Bが当該機能の全てを備える必要はなく、一部が図4に示す監視制御部24の機能であってもよい。
【0086】
この画素毎データ格納部52には、データ抽出部54が接続されており、例えば、1画素単位でデータが抽出され、温度レベル決定部56に送出される。温度レベル決定部56には、電気信号-温度レベル特性テーブル記憶部58が接続されており、受け付けた電気信号に基づく温度レベル(本実施の形態では、図8(C)に示す4段階)の何れかを決定する。」

(2-2) 引用文献2に記載の技術的事項
上記(2-1)によれば、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。

「画像処理装置の電力供給制御において、スリープモードから早期に電力供給を再開するために用いられる人感センサとして、状況判定能力が高い、温度を決定する電気信号を出力する素子を二次元状に複数個配列した赤外線アレイセンサを用いる技術。」

3 引用文献3について
(3-1)引用文献3の記載事項
上記引用文献3には、次の事項が記載されている。

「【0007】
本発明は、画一的な省電力制御に比べて、適宜の処理に適合した省電力制御を行うことができる電力供給制御装置、画像処理装置、電力管理制御プログラムを得ることが目的である。」

「【0094】
(付加装着による検出範囲調整)
ところで、前記図6に示す移動体(使用者)の基本的な移動形態は、画像処理装置10の上面、かつ中央付近にUIタッチパネル216が設けられており、使用者が、まず、このUIタッチパネル216に向かって接近することを前提としている。また、画像処理が終了するときも、このUIタッチパネル216に対峙することを前提としている。
【0095】
このため、図10に示される如く、第2の人感センサ30の検出領域の中心光軸L1は、画像処理装置10の左端(図8のピラー部302)から画像処理装置10の中央に向けられている。以下、この第2の人感センサ30の位置(光軸L1の位置)を基本位置とする。
【0096】
この基本位置では、画像処理装置10の正面に立つ使用者を確実に検出可能であり、言い換えれば、UIタッチパネル216の正面に立つ使用者も同時に検出可能である。

「【図10】(A)



(3-2) 引用文献3に記載の技術的事項
上記(3-1)によれば、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。

「画像処理装置の省電力制御において、使用者は、まずUIタッチパネルに向かって接近することを前提として、人感センサを、画像処理装置の上面かつ中央付近に設けられたUIタッチパネルの左端よりも外側に設けるとともに、前記人感センサの検出領域の中心光軸を画像処理装置の中央に向けるように設置することで、UIタッチパネルの正面に立つ使用者を検出可能とする技術。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明の構成Aについて
引用発明の構成aの「予熱モードの解除」、「予熱モードの設定」、「複写機」は、本願発明の構成Aの「第1電力状態」、「前記第1電力状態より消費電力の少ない第2電力状態」、「画像形成装置」にそれぞれ相当する。よって、引用発明の構成aの「予熱モードの設定と前記予熱モードの解除とを行い省エネルギ化を図る複写機」は、本願発明の構成Aである「第1電力状態と前記第1電力状態より消費電力の少ない第2電力状態とを取り得る画像形成装置」に相当する。

(2)本願発明の構成Bについて
引用発明の構成bの「前記複写機のモード設定および表示を行う操作部であって、前記操作部の中央に各種の表示を行う表示パネルが設けられた前記操作部」は、本願発明の構成Bの「ユーザの操作を受け付け可能であり、表示部を有する操作部」に相当する。

(3)本願発明の構成Cについて
引用発明の構成cの「受光素子」は、オペレータからの赤外線ビームの反射光を受光するから、本願発明の構成Cの「赤外線受信素子」に相当する。
そして、引用発明の構成dにおいて、「前記オペレータ検出装置により、前記複写機にオペレータが近づいてきたことを検出して」いるから、当該「前記複写機にオペレータが近づいてきたこと」を検出するために、受光素子を含む検知部は、赤外線を検知し且つ検知結果を出力する構成を備えている。
以上から、引用発明の構成cの「赤外線ビームを出射する赤外線発光ダイオードと前記赤外線ビームの反射光を受光する受光素子とを含む前記オペレータ検出装置の検知部」は、本願発明の構成Cの「赤外線を検知し且つ検知した赤外線に応じた検知結果を出力する複数の赤外線受信素子を有する赤外線アレイセンサ」と、「赤外線を検知し且つ検知結果を出力する赤外線受信素子を有する赤外線センサ」である点で共通する。
したがって、本願発明の構成Cと、引用発明の構成cは、赤外線を検知し且つ検知結果を出力する赤外線受信素子を有する赤外線センサである点で一致する。
しかしながら、赤外線センサの構成について、本願発明の構成Cは「検知した赤外線に応じた検知結果を出力する複数の赤外線受信素子を有する赤外線アレイセンサ」であるのに対して、引用発明の構成cは「赤外線ビームを出射する赤外線発光ダイオードと、前記赤外線ビームの反射光を受光する受光素子とを含むオペレータ検出装置の検知部」である点で相違する。

また、赤外線センサの設けられる位置及び向きについて、引用発明の構成cは、「前記表示パネルの上方に設けられ」、かつ、「オペレータが複写機を前面側から操作するときに立つ方向かつ平均的なオペレータの胸のあたりを狙って赤外線ビームを出射するように」赤外線発光ダイオードが設置されるとともに、「前記赤外線ビームの発射方向と直交する平面内」に受光素子が設置されるものであるから、本願発明の構成Cの「前記画像形成装置の正面に立つユーザから見て前記操作部の下端より上側に設けられ、前記表示部の上方が検知対象となるように向けられ」ている点で共通する。
したがって、本願発明の構成Cと引用発明の構成cは、「前記画像形成装置の正面に立つユーザから見て前記操作部の下端より上側に設けられ、前記表示部の上方が検知対象となるように向けられた赤外線センサ」である点で一致する。
しかしながら、赤外線センサの設けられる位置及び向きについて、本願発明の構成Cは「前記表示部の左右方向の端部より外側に設けられ、前記表示部の上方が検知対象となるよう内側に向けられ」ているのに対して、引用発明の構成cは、操作部の中央における表示パネルの上方に設けられ、内側には向けられていない点で相違する。

(4)本願発明の構成Dについて
上記(3)に示したとおり、引用発明の「受光素子を含む検知部」は、赤外線を検知し且つ検知結果を出力する構成を備えており、該検出結果は「1又は複数」といえるから、引用発明の構成dは、本願発明の構成Dと、「前記赤外線センサから出力された1又は複数の検知結果に基づいて」いる点で共通する。
また、引用発明の構成dの「前記複写機にオペレータが近づいてきたことを検出して、予熱モードを解除」することは、本願発明の構成Dの「前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行させる」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成dの「予熱モード制御手段」は、上記(3)の「前記赤外線アレイセンサ」に係る相違点を除き、本願発明の構成Dの「制御部」と一致する。

(3-7)一致点、相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
(A)第1電力状態と前記第1電力状態より消費電力の少ない第2電力状態とを取り得る画像形成装置であって、
(B)ユーザの操作を受け付け可能であり、表示部を有する操作部と、
(C’)前記画像形成装置の正面に立つユーザから見て前記操作部の下端より上側に設けられ、前記表示部の上方が検知対象となるように向けられ、赤外線を検知し且つ検知結果を出力する赤外線受信素子を有する赤外線センサと、
(D’)前記赤外線センサから出力された1又は複数の検知結果に基づいて、前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行させる制御部と、
を備える
(A)画像形成装置。

(相違点1)
赤外線センサの構成について、本願発明は「検知した赤外線に応じた検知結果を出力する複数の赤外線受信素子を有する赤外線アレイセンサ」であるのに対して、引用発明は「赤外線ビームを出射する赤外線発光ダイオードと、前記赤外線ビームの反射光を受光する受光素子とを含むオペレータ検出装置の検知部」である点。

(相違点2)
赤外線センサの設けられる位置及び向きについて、本願発明は「前記表示部の左右方向の端部より外側に設けられ、前記表示部の上方が検知対象となるよう内側に向けられ」ているのに対して、引用発明は、操作部の中央における表示パネルの上方に設けられ、内側には向けられていない点。

第6 判断
上記各相違点について、以下に検討する。

(1)相違点1について
画像処理装置の電力供給制御において、スリープモードから早期に電力供給を再開するために用いられる人感センサとして、状況判定能力が高い、温度を決定する電気信号を出力する素子を二次元状に複数個配列した赤外線アレイセンサを用いることは、引用文献2に記載されているように周知技術である。ここで、前記「温度を決定する電気信号」は赤外線センサで検知される赤外線に応じて出力されるものであるから、当該赤外線センサは、検知した赤外線に応じた検知結果を出力するものといえる。
そして、引用発明における赤外線センサに、センサの状況判定能力を高めるために、引用文献2に記載の周知技術を適用して、引用発明の赤外線センサを「検知した赤外線に応じた検知結果を出力する複数の赤外線受信素子を有する赤外線アレイセンサ」とすることは、当業者であれば容易に想到しうるものである。
よって、上記相違点1は、引用発明及び周知技術に基づき当業者が容易に想到しうるものである。

(2)相違点2について
引用発明の赤外線センサは、表示部の上方に設けるとともに、当該赤外線センサにおける赤外線発光ダイオードを、オペレータの立つ位置が少々違っても、検出装置の検出領域から外れる心配がないように、オペレータが複写機を前面側から操作するときに立つ方向かつ平均的なオペレータの胸のあたりを狙って赤外線ビームを出射するように設置し、かつ、当該センサにおける受光素子を、前記赤外線ビームの発射方向と直交する平面内に設置するものである。
ここで、画像処理装置の省電力制御に用いられる人感センサの配置について、引用文献3に記載されているような、使用者は、まずUIタッチパネルに向かって接近することを前提として、人感センサを、画像処理装置の上面かつ中央付近に設けられたUIタッチパネルの左端よりも外側に設けるとともに、前記人感センサの検出領域の中心光軸を画像処理装置の中央に向けるように設置することで、UIタッチパネルの正面に立つ使用者を検出可能とすることは、当業者が適宜行いうる周知技術と認められる。
そして、引用発明及び引用文献3に記載の周知技術は、いずれも画像処理装置のオペレータを検出するために、各位置からオペレータを検出可能な方向にセンサを向ける技術である点で共通するから、引用発明の赤外線センサに、引用文献3に記載の、表示部の左端よりも外側にセンサを配置するとともに、センサの向きを画像処理装置の中央に向けるように設置する周知技術を採用することにより、引用発明の赤外線センサが「前記表示部の左右方向の端部より外側に設けられ、前記表示部の上方が検知対象となるよう内側に向けられ」る構成とすることは、当業者が容易になしうることである。
よって、上記相違点2は、引用発明及び周知技術に基づき当業者が容易に想到しうるものである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-21 
結審通知日 2018-06-26 
審決日 2018-07-09 
出願番号 特願2014-28212(P2014-28212)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 明  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 小池 正彦
樫本 剛
発明の名称 画像形成装置  
代理人 西脇 博志  
代理人 特許業務法人ひのき国際特許事務所  
代理人 水垣 親房  

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