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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1343620
審判番号 不服2017-235  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-06 
確定日 2018-08-30 
事件の表示 特願2015-189715「通信システム、情報処理装置、通信装置、通信方法、コンピュータプログラム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日出願公開、特開2016- 15775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年5月20日に出願した特願2011-114039号の一部を平成27年9月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成28年 8月 3日付け:拒絶理由通知書
平成28年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年10月14日付け:拒絶査定
平成28年10月18日 :拒絶査定の謄本の送達
平成29年 1月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 3月29日付け:拒絶理由通知書
平成30年 5月21日 :意見書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成29年1月6日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
なお、A?B5は、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成A」?「構成B5」という。)
「A 処理すべきデータを記憶している情報処理装置と、該情報処理装置とのデータ通信を行う通信装置とを有する通信システムにおいて、
B 前記情報処理装置は、
B1 記憶している記憶データを表す一又は複数の画像を表示する表示部と、
B2 前記表示部の表示面に表示された画像への接触及び接触位置を検出する検出手段と、
B3 前記通信装置と通信を確立する通信確立手段と、
B4 前記接触位置に表示されている表示画像に係る接触点が前記表示画像内で移動した場合と、移動していない場合とを、前記表示画像に対応する対応記憶データに対する異なる制御指示として判定する判定手段とを備え、
B5 前記判定手段の判定結果に基づき、前記表示画像に対応する対応記憶データを制御することを特徴とする
A 通信システム。」

第3 当審が通知した平成30年3月29日付け拒絶理由について
当審が通知した平成30年3月29日付け拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。

この出願の請求項1、7、11-13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2008-236539号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第4 引用文献の記載事項及び引用発明について
当審が通知した拒絶理由で引用された、本願出願前に頒布された特開2008-236539号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

【0032】
デジタル複合機1は、コピー機能、ファクシミリ機能及びスキャナ機能等を利用する際に原稿の読取を行う原稿読取部16と、コピー機能、ファクシミリ機能及びプリンタ機能等を利用する際に印刷用紙へ画像を印刷する印刷部18とを備えている。原稿読取部16は、CCDイメージセンサを有する光学ユニットにて原稿の読み取りを行い、読み取りにより取得した画像を画像メモリ17に記憶する。また、原稿読取部16は、ADFを有しており、複数頁の原稿を自動的に読み取ることができる。

【0035】
更に、本発明に係るデジタル複合機1では、表示部21に原稿読取部16にて読み取った原稿に係る画像を一覧表示することができるようにしてあり、制御部10が画像メモリ17に記憶された画像を表示部21に表示可能な程度のサイズに縮小してタッチパネル19へ与えて、表示部21にて所謂サムネイル表示を行う。
【0036】
タッチパネル19の接触センサ22には、アナログ容量結合方式のセンサを用いることができる。アナログ容量結合方式の接触センサは、表示部21の表面を導電膜で均一にコーティングして電界を張り巡らせ、ユーザの指が触れた場合に生じる電界の変化による容量結合の変化を測定することにより接触位置を特定することができる。よって、接触センサ22を用いることにより、表示部21への接触を検知することができると共に、接触位置を特定して表示部21に表示されてメニュー又はアイコン等のいずれに対する接触であるかを判断することができる。接触センサ22は検知結果を制御部10へ通知する。
【0037】
また、本発明に係るデジタル複合機1では、タッチパネル19の表示部21にユーザが指を接触して離す操作をタッチ操作として検知することができる。更に、ユーザによる表示部21中の略同じ場所への連続したタッチ操作を連続タッチ操作として検知することができる。また、ユーザが表示部21に接触し、接触した状態で指を表示部21中の別の場所へ移動させ、その後に指を離す操作をドラッグ&ドロップ操作として検知することができる。これにより、PCなどに備えられたマウスを用いたクリック操作、ダブルクリック操作、及びドラッグ&ドロップ操作と同じ操作感で、ユーザがデジタル複合機1の操作を行うことができる。なお、タッチパネル19の接触センサ22は表示部21への接触の検知及び接触位置の判断を行うのみであり、これを通知された制御部10が連続タッチ操作及びドラッグ&ドロップ操作が行われたか否かを判定する。ただし、タッチパネル19にて連続タッチ操作及びドラッグ&ドロップ操作が行われたか否かの判定を行う構成としてもよい。

【0069】
次に、デジタル複合機1のスキャナモードでの操作方法を説明する。図15は、本発明に係るデジタル複合機1のタッチパネル19の操作手順を説明するための模式図である。本実施の形態に係るデジタル複合機1は、LANを介して複数のPC5、6…と通信を行う。この通信によりデジタル複合機1は、スキャナ機能により読み取った原稿に係る読取画像をあらかじめ登録されたPC5、6…のフォルダに保存する。ユーザはスキャナ機能を利用する場合には、図2(a)にてアイコン32をタッチ操作により選択し、原稿の読み取りを行う。原稿の読み取りを完了した後、デジタル複合機1は、図示は省略するが、登録された複数のフォルダから一又は複数のフォルダを保存先として選択するためのメニューを表示する。次いで、デジタル複合機1は、表示したメニューへのタッチ操作を受け付けて、ユーザによる保存先の選択を受け付ける。
【0070】
ユーザからの保存先の選択を受け付けた後、デジタル複合機1は、原稿読取部16にて読み取った原稿に係る読取画像を表示部21に一覧表示する(図15参照)。このとき、デジタル複合機1は、表示部21の中央から上部にかけて表示された矩形枠による一覧表示部160内に、原稿読取部16が読み取って取得した読取画像を並べて一覧表示する。また、一覧表示部160の上下に設けられた上スクロールアイコン161及び下スクロールアイコン162をユーザがタッチ操作することにより、一覧表示部160内の読取画像の表示を上下にスクロールさせることができる。
【0071】
一覧表示部160の下方には保存先アイコン表示部163が設けてある。デジタル複合機1は選択を受け付けた保存先に係る保存先アイコンを保存先アイコン表示部163に表示する。保存先アイコンは、保存先のフォルダ名を示す文字列と、フォルダの模式的な画像とを組み合わせたものである。図15に示す例では、フォルダa?dの4つを示す保存先アイコンが保存先アイコン表示部163に表示してある。例えば、一の読取画像Iをドラッグして一の保存先アイコンへドロップするドラッグ&ドロップ操作を行うことにより、各読取画像の保存先を個別に設定することができる。また、個別に保存先が設定された場合、デジタル複合機1は一覧表示部160内の各読取画像に、縮小又は簡易化した送信先アイコンを重ねて表示する。重ねて表示した保存先アイコンによりユーザが各読取画像の保存先を確認することができる。

【0074】
図16及び図17は、本発明に係るデジタル複合機1が行うタッチパネル19での操作受付処理の手順を示すフローチャートであり、図5?図7に示す処理の場合(集約コピーを行う場合)を例に手順を示してある。なお、この手順はデジタル複合機1の制御部10にて行われる処理の手順である。デジタル複合機1の制御部10は、タッチパネル19の接触センサ22により表示部21への接触を検知したか否かを調べ(ステップS1)、接触がない場合には(S1:NO)、ユーザによる表示部21への接触を検知するまで待機する。
【0075】
表示部21への接触を検知した場合(S1:YES)、表示部21上の接触位置を接触センサ22より取得し(ステップS2)、表示部21に表示された読取画像に対する接触であるか否かを調べる(ステップS3)。ユーザによる接触が読取画像に対するものでない場合(S3:NO)、更に他のアイコンに対する接触であるか否かを調べる(ステップS4)。他のアイコンに対する接触の場合(S4:YES)、このアイコンに対応付けられた各処理を行って(ステップS5)、処理を終了する。なお、図示のフローは繰り返し行われており、制御部10はステップS5の処理を行って操作受付処理を終了した後に、図示のフローを再度開始し、ステップS1の処理を行う。
【0076】
ユーザによる接触が読取画像に対するものである場合(S3:YES)、この読取画像を選択して(ステップS6)、強調表示し、更にこの読取画像に対する接触操作が連続的なタッチ操作であるか否かを判定する(ステップS7)。連続的なタッチ操作であるか否かは、制御部10に設けられたタイマ(図示は省略する)などにより、前回の接触から今回の接触までの間の時間が所定時間内であるか否かに応じて判定することができる。読取画像に対して連続的なタッチ操作がされた場合(S7:YES)、表示部21に詳細情報ウインドウ100を表示して(ステップS8)、ステップS1へ戻る。
【0077】
読取画像に対する接触操作が連続的なタッチ操作でない場合(S7:NO)、接触センサ22により表示部21に対する接触が解除されたか否かを調べる(ステップS9)。接触が解除されていない場合(S9:NO)、更に表示部21に対する接触位置が移動したか否かを接触センサ22により調べる(ステップS10)。接触位置が移動した場合(S10:YES)、制御部10はドラッグ&ドロップ操作を受け付けるドラッグ&ドロップモード(以下、D&Dモードと記載する)へ移行し(ステップS11)、ステップS9へ戻る。接触位置が移動していない場合(S10:NO)、ステップS9へ戻る。

上記記載、並びにこの分野における技術常識を考慮し、以下で検討する。

(ア)上記段落0032、0069の記載から、引用文献1には、読み取りにより取得した読取画像を画像メモリに記憶するデジタル複合機と、該デジタル複合機と通信を行うPCとを有する構成が記載されている。

(イ)上記段落0032、0035、0070の記載から、引用文献1のデジタル複合機は、画像メモリに記憶されている読取画像を表示可能な程度のサイズに縮小してサムネイル表示により一覧表示する表示部を備えているものである。

(ウ)上記段落0036、0037の記載から、引用文献1のデジタル複合機の接触センサは、表示部の表面への接触の検知及び接触位置の判断を行うものであり、上記段落0074?0077の記載から、引用文献1のデジタル複合機の接触センサは、集約コピーを行う場合に、表示部の表面への接触を検知した場合、表示部上の接触位置を取得し、表示部に表示された読取画像に対する接触であるか否かを調べ、読取画像に対するものであり、接触位置が移動した場合には、ドラッグ&ドロップモードへ移行するものである。
そして、上記段落0069、0071の記載から、スキャナモードを行う場合には、読取画像をドラッグして保存先アイコンへドロップするドラッグ&ドロップ操作を行うものである。

表示部の表面への接触を検知した場合、表示部上の接触位置を取得し、表示部に表示された読取画像に対する接触であるか否かを調べることは、集約コピーを行う場合に限定される構成でなく、スキャナモード等の集約コピー以外で読取画像を扱う場合における読取画像に対して接触する場合においても、同様に適用されると解されるものである。

したがって、引用文献1のデジタル複合機は、表示部の表面への接触の検知及び接触位置の判断を行い、表示部に表示された読取画像に対する接触であるか否かを調べる接触センサを備えているものである。

(エ)上記段落0069の記載から、引用文献1のデジタル複合機は、PCと通信を行うものである。

(オ)上記段落0037、0074?0077の記載から、引用文献1のデジタル複合機は、集約コピーを行う場合に、接触が読取画像に対するものである場合で、読取画像に対して表示部中の略同じ場所への連続したタッチ操作である連続的なタッチ操作がされた場合は、表示部に詳細情報ウインドウを表示し、接触位置が移動した場合は、ドラッグ&ドロップモードへ移行するものである。
そして、上記段落0069、0071の記載から、一の読取画像をドラッグして一の保存先アイコンへドロップするドラッグ&ドロップ操作を行うことにより、読取画像の保存先を個別に設定し、PCのフォルダに保存し、個別に保存先が設定された場合、各読取画像に、送信先アイコンを重ねて表示するものである。
接触が読取画像に対するものである場合で、読取画像に対して、表示部中の略同じ場所への連続したタッチ操作である連続的なタッチ操作がされた場合は、表示部に詳細情報ウインドウを表示することや、接触位置が移動した場合は、ドラッグ&ドロップモードへ移行することは、集約コピーを行う場合に限定される構成でなく、スキャナモードを行う場合においても、同様に適用されると解されるものである。

したがって、引用文献1のデジタル複合機は、接触が読取画像に対するものである場合で、読取画像に対して、表示部中の略同じ場所への連続したタッチ操作である連続的なタッチ操作がされた場合は、表示部に詳細情報ウインドウを表示し、接触位置が移動した場合は、ドラッグ&ドロップモードへ移行し、一の読取画像をドラッグして一の保存先アイコンへドロップすることにより、読取画像の保存先を個別に設定し、PCのフォルダに保存し、個別に保存先が設定された場合、各読取画像に、送信先アイコンを重ねて表示するものである。

よって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
なお、a?b4は、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」?「構成b4」という。)

(引用発明)
「a 読み取りにより取得した読取画像を画像メモリに記憶するデジタル複合機と、該デジタル複合機と通信を行うPCとを有する構成において、
b 前記デジタル複合機は、
b1 画像メモリに記憶されている読取画像を表示可能な程度のサイズに縮小してサムネイル表示により一覧表示する表示部と、
b2 前記表示部の表面への接触の検知及び接触位置の判断を行い、表示部に表示された読取画像に対する接触であるか否かを調べる接触センサと、
b3 前記PCと通信を行うことと、
b4 接触が読取画像に対するものである場合で、読取画像に対して、前記表示部中の略同じ場所への連続したタッチ操作である連続的なタッチ操作がされた場合は、前記表示部に詳細情報ウインドウを表示し、接触位置が移動した場合は、ドラッグ&ドロップモードへ移行し、一の読取画像をドラッグして一の保存先アイコンへドロップすることにより、読取画像の保存先を個別に設定し、前記PCのフォルダに保存し、個別に保存先が設定された場合、各読取画像に、送信先アイコンを重ねて表示することを特徴とする
a 構成。」

第5 対比及び一致点について
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(a)構成Aと構成aの対比について
構成aの「読み取りにより取得した読取画像」は、構成b4のように、「読取画像の保存先を個別に設定し、前記PCのフォルダに保存する」ものであり、PCのフォルダに保存するという処理をするためのデータといえるから、構成Aの「処理すべきデータ」に相当する。
構成aの「デジタル複合機」は、読取画像という情報を処理する装置といえるから、構成Aの「情報処理装置」に相当する。

また、構成aの「該デジタル複合機と通信を行うPC」は、構成Aの「該情報処理装置とのデータ通信を行う通信装置」に相当する。

さらに、構成aの「デジタル複合機と、」「PCとを有する構成」の「構成」は、通信をする構成であるから、構成Aの「通信システム」に相当する。

したがって、構成aと構成Aは一致する。

(b)構成Bと構成bについて
上記(a)の検討と同様に、構成bの「デジタル複合機」は、構成Bの「情報処理装置」に相当する。

したがって、構成bと構成Bは一致する。

(c)構成B1と構成b1について
構成b1の「画像メモリに記憶されている読取画像を表示可能な程度のサイズに縮小してサムネイル表示により一覧表示する」こととは、「画像メモリに記憶されている読取画像」を表す「表示可能な程度のサイズに縮小し」た複数の「サムネイル」画像を「表示する」ことといえる。
ここで、構成b1の「画像メモリに記憶されている読取画像」は、構成B1の「記憶している記憶データ」に相当する。
また、「表示可能な程度のサイズに縮小し」た複数の「サムネイル」画像は、構成B1の「一又は複数の画像」に相当する。

したがって、構成b1と構成B1は一致する。

(c)構成B2と構成b2について
構成b2の「前記表示部の表面への接触の検知及び接触位置の判断を行い、表示部に表示された読取画像に対する接触であるか否かを調べる」こととは、表示部の表面に表示された読取画像への接触及び接触位置を検出することであるから、構成B2の「前記表示部の表示面に表示された画像への接触及び接触位置を検出する」ことに相当する。
構成b2の「接触センサ」は、接触及び接触位置を検出する手段といえるので、構成B2の「検出手段」に相当する。

したがって、構成b2と構成B2は一致する。

(d)構成B3と構成b3について
構成b3は、デジタル複合機がPCと通信を行うことであり、通信を行う場合に、通信を確立する手段を有することは、常套手段であるから、引用発明においても、構成B3に一致する構成を有するものである。

(e)構成B4、B5と構成b4について
構成b4の「接触が読取画像に対するものである場合で、読取画像に対して、前記表示部中の略同じ場所への連続したタッチ操作である連続的なタッチ操作がされた場合」における「読取画像」は、「接触」及び「連続的なタッチ操作」される画像であるから、構成b1のような「表示可能な程度のサイズに縮小してサムネイル表示」されている画像を指すものであり、『接触位置に表示されている画像』といえる。

構成b4の「前記表示部中の略同じ場所への連続したタッチ操作である連続的なタッチ操作がされた場合」とは、『接触位置に表示されている画像において同じ位置を移動することなく連続的にタッチ操作する場合』であるといえる。

構成b4の「接触位置が移動した場合は、ドラッグ&ドロップモードへ移行し、一の読取画像をドラッグして一の保存先アイコンへドロップする」における「ドラッグ&ドロップモード」は、一般に、接触位置の移動とともに、移動した接触位置に、最初の接触位置に表示していた画像(以下、「元の画像」という。)を当該移動に合わせて表示する表示に伴う操作を意味するものであるが、接触位置が移動している最中においても、最初の接触位置には「元の画像」を表示しつつ、「元の画像」を当該移動に合わせて表示するようにすることは、常套手段である。
そして、構成b4の「個別に保存先が設定された場合、各読取画像に、送信先アイコンを重ねて表示する」の記載から、「ドラッグ&ドロップモード」は、個別の保存先を設定した後、すなわち、一の読取画像をドラッグして一の保存先アイコンへドロップした後には、最初に接触した位置に表示していた「元の画像」である各読取画像に、送信先アイコンを重ねて表示するものである。したがって、「ドラッグ&ドロップモード」は、当該接触位置が、最初の接触位置から移動した際に、最初の接触位置に表示されていた「元の画像」を存在しないものとすることは不自然であり、引用発明においては、読取画像(「元の画像」)は、接触位置が移動しても最初の接触位置から移動する表示に加えて、最初の接触位置に表示されていると考えるのが自然である。
そうすると、構成b4の「接触位置が移動した場合」とは、接触位置が移動している場合にも最初の接触位置に表示されている画像に対して、接触位置が当該画像内を移動してから、画像外へ移動した場合と解されるから、『接触位置に表示されている画像において接触位置が前記接触位置に表示されている画像内で移動した場合』といえる。

構成b4においては、「連続的なタッチ操作がされた場合は、前記表示部に詳細情報ウインドウを表示し、接触位置が移動した場合は、」「読取画像の保存先を個別に設定し、前記PCのフォルダに保存する」構成であり、「前記表示部に詳細情報ウインドウを表示」することと、「読取画像の保存先を個別に設定し、前記PCのフォルダに保存する」ことは、異なる制御であるから、「連続的なタッチ操作がされた場合」と「接触位置が移動した場合」で、異なる制御指示と判定し、判定結果に基づき、制御するものといえる。
ここで、異なる制御指示と判定することや、判定結果に基づき、制御するのは、構成b1に示されている「画像メモリに記憶されている読取画像」に対してのことであるから、構成b4は、『画像メモリに記憶されている読取画像に対する異なる制御指示と判定し、判定結果に基づき、画像メモリに記憶されている読取画像を制御する』ものといえる。

以上をまとめると、構成b4は、『接触位置に表示されている画像において接触位置が前記接触位置に表示されている画像内で移動した場合と、同じ位置を移動することなく連続的にタッチ操作する場合とを、画像メモリに記憶されている読取画像に対する異なる制御指示と判定し、判定結果に基づき、画像メモリに記憶されている読取画像を制御する』構成である。

そして、構成b4の『接触位置に表示されている画像』は、構成B4の「前記接触位置に表示されている表示画像」に相当する。

構成b4の『接触位置が前記接触位置に表示されている画像内で移動した場合』は、構成B4の「接触点が前記表示画像内で移動した場合」に相当する。

構成b4の『同じ位置を移動することなく連続的にタッチ操作する場合」は、構成B4の「接触点が前記表示画像内で」「移動していない場合」に相当する。

そして、『画像メモリに記憶されている読取画像』は、構成B4及びB5の「前記表示画像に対応する対応記憶データ」に相当するものであり、『異なる制御指示と判定』するのであれば、そのような判定をする手段を備えるものといえる。

よって、構成b4の「接触が読取画像に対するものである場合で、読取画像に対して連続的なタッチ操作がされた場合は、前記表示部に詳細情報ウインドウを表示し、接触位置が移動した場合は、ドラッグ&ドロップモードへ移行し、一の読取画像をドラッグして一の保存先アイコンへドロップすることにより、読取画像の保存先を個別に設定し、前記PCのフォルダに保存すること」は、構成B4、B5の「前記接触位置に表示されている表示画像に係る接触点が前記表示画像内で移動した場合と、移動していない場合とを、前記表示画像に対応する対応記憶データに対する異なる制御指示として判定する判定手段とを備え、前記判定手段の判定結果に基づき、前記表示画像に対応する対応記憶データを制御すること」と一致する。

2 一致点
以上より、本願発明と引用発明との一致点は次のとおりであり、相違点はない。

「処理すべきデータを記憶している情報処理装置と、該情報処理装置とのデータ通信を行う通信装置とを有する通信システムにおいて、
前記情報処理装置は、
記憶している記憶データを表す一又は複数の画像を表示する表示部と、
前記表示部の表示面に表示された画像への接触及び接触位置を検出する検出手段と、
前記通信装置と通信を確立する通信確立手段と、
前記接触位置に表示されている表示画像に係る接触点が前記表示画像内で移動した場合と、移動していない場合とを、前記表示画像に対応する対応記憶データに対する異なる制御指示として判定する判定手段とを備え、
前記判定手段の判定結果に基づき、前記表示画像に対応する対応記憶データを制御することを特徴とする
通信システム。」

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

第6 審判請求人の主張について
審判請求人は、平成30年5月21日付け意見書にて、『引用文献1の記載における「接触位置が移動した場合」とは、ドラッグ&ドロップモードへの移行を指すものである。即ち、引用文献1においては「接触位置が移動した場合」に、ドラッグ&ドロップ処理が行われる。しかし、文字通りドラッグ&ドロップは、選択(接触)した画像をそのまま引きずって移動させる処理である。つまり、当該画像と選択点(接触点)とは一緒に移動するものであって、斯かる画像が停止したまま接触点だけが当該画像上を移動することではない。してみれば、引用文献1における移動の過程の中には、拒絶理由通知書で指摘されたような読取画像内を移動している過程は含まれていないと言える。』と主張している。

上記第5 1(e)で検討したように、ドラッグ&ドロップは、接触位置の移動とともに、移動した接触位置に、「元の画像」を当該移動に合わせて表示する表示に伴う操作を意味するものであるが、接触位置が移動している最中においても、最初の接触位置には「元の画像」を表示しつつ、「元の画像」を当該移動に合わせて表示するようにすることは、常套手段である。そして、引用発明においては、読取画像(「元の画像」)は、接触位置が移動しても最初の接触位置から移動する表示に加えて、最初の接触位置に表示されていると考えるのが自然である。
したがって、審判請求人の「当該画像と選択点(接触点)とは一緒に移動するものであって、斯かる画像が停止したまま接触点だけが当該画像上を移動する」という主張は、引用文献1の記載に基づく主張でなく、当該主張を採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-29 
結審通知日 2018-07-03 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2015-189715(P2015-189715)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
P 1 8・ 113- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 高行花田 尚樹  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 樫本 剛
渡辺 努
発明の名称 通信システム、情報処理装置、通信装置、通信方法、コンピュータプログラム及び記録媒体  
代理人 河野 英仁  
代理人 河野 登夫  

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