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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07B |
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管理番号 | 1343628 |
審判番号 | 不服2017-11982 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-09 |
確定日 | 2018-08-30 |
事件の表示 | 特願2015- 75179「フッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月31日出願公開、特開2016- 41681〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年4月1日(優先権主張 平成26年4月2日、同年8月22日)を出願日とする出願であって、出願後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 平成28年 7月 8日付け 拒絶理由通知 同年11月17日 意見書・手続補正書の提出 平成29年 4月26日付け 拒絶査定 同年 8月 9日 拒絶査定不服審判の請求・手続補正書の提 出 同年12月20日 上申書の提出 平成30年 3月29日付け 当審における拒絶理由通知 同年 6月 4日 意見書・手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1?4に係る発明は、平成30年6月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。 「 フッ素化有機化合物の製造方法であって、有機化合物を、 (1)IF_(5)-ピリジン-HF、及び (2)アミン-フッ化水素塩、 X^(a)F(X^(a)は、水素、カリウム、ナトリウム、又はリチウムを示す。)、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいカテコール、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいヒドロキノン、及び1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいピロガロールからなる群より選択される1種以上の添加剤 と接触させて、フッ素化する工程Aを含む製造方法。」 第3 当審における拒絶理由 当審において平成30年3月29日付けで通知した拒絶理由は理由1?4からなるところ、そのうち、理由2は次のとおりである。 「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。」 そして、具体的な理由として次の事項を指摘している。 「ア 本願発明1について 発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明1の解決しようとする課題は、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法を提供することにあると認められるところ、当該課題を、本願発明1の(2)で特定される添加剤を用いることで解決しようとするものと理解される。」 「してみると、本願発明1の添加剤のうち、Et_(3)N-6HF以外の添加剤については、当業者が本願発明1の課題を解決することができると認識できるとはいえない。 したがって、本願発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が「IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法を提供する」という本願発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 よって、本願発明1は発明の詳細な説明に記載したものということはできない。」 第4 当審の判断 当審は、平成30年3月29日付けの拒絶理由通知で通知したとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものと判断する。 その理由は次のとおりである。 (1)はじめに 特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)発明の詳細な説明の記載 発明の詳細な説明には次の記載がある。 a)「【背景技術】 【0002】 フッ素化合物は、機能性材料、医農薬化合物、電子材料等の各種化学製品、その中間体等として極めて重要な化合物である。 従来から、各種の有機化合物を原料として、これをフッ素化させて目的とするフッ素化合物を得る際に、フッ素化剤として、フッ素、フッ化水素、四フッ化硫黄等が用いられている。しかしながら、これらのフッ素化剤は、毒性、腐食性、反応時における爆発危険性等のために取扱が難しく、そのために特殊な装置や技術が必要である。 近年、フッ化物イオンによる求核置換反応を利用して、有機化合物にフッ素原子を導入する反応およびそのためのフッ素化剤が種々開発されている。 例えば、五フッ化ヨウ素(IF_(5))は、高い酸化力を持つ強力なフッ素化剤として知られているが、空気中では水分と反応して、HFを発生しながら分解する危険な液体状のフッ素化剤である。この様な性質を有するIF_(5)については、近年、ピリジン-HFを混ぜると、空気中で安定な白色固体(IF_(5)-ピリジン-HF)となり、種々のイオウ化合物のフッ素化に有効であることが報告されている(非特許文献1参照)。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 IF_(5)-ピリジン-HFは優れたフッ素化剤であるが、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いたフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できないフッ素化有機化合物が存在し、更なるフッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬の提供が求められている。 従って、本発明は、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬の提供を目的とする。」(下線は当審が付与。) b)「【0005】 本発明者らは、鋭意検討の結果、 フッ素化有機化合物の製造方法であって、有機化合物を、(1)IF_(5)-ピリジン-HF、及び(2)アミン・フッ化水素塩、X^(a)F(X^(a)は、水素原子、リチウム、ナトリウム、又はカリウムを示す。)、酸化剤、及び還元剤からなる群より選択される1種以上の添加剤と接触させて、フッ素化する工程Aを含む製造方法によって、前記課題が解決できることを見出し、更なる研究の結果、本発明を完成するに至った。 【0006】 本発明は、次の態様を含む。 【0007】 項1. フッ素化有機化合物の製造方法であって、有機化合物を、(1)IF_(5)-ピリジン-HF、及び(2)アミン・フッ化水素塩、X^(a)F(X^(a)は、水素、カリウム、ナトリウム、又はリチウムを示す。)、酸化剤、及び還元剤からなる群より選択される1種以上の添加剤と接触させて、フッ素化する工程Aを含む製造方法。 項2. 前記添加剤がEt_(3)N-nHF(nは1?9の実数を示す。)であることを特徴とする項1に記載の製造方法。 項3. (1)IF_(5)-ピリジン-HF、及び(2)アミン・フッ化水素塩、X^(a)F(X^(a)は、水素、カリウム、ナトリウム、又はリチウムを示す。)、酸化剤、及び還元剤からなる群より選択される1種以上の添加剤を含有するフッ素化試薬。 項4. 前記添加剤がEt_(3)N-nHF(nは1?9の実数を示す。)であることを特徴とする項3に記載のフッ素化試薬。 【0008】 以下、本発明のフッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬を詳細に説明する。 【0009】 フッ素化有機化合物の製造方法 本発明のフッ素化有機化合物の製造方法は、有機化合物を、(1)IF_(5)-ピリジン-HF、及び(2)アミン・フッ化水素塩、X^(a)F(X^(a)は、水素、カリウム、ナトリウム、又はリチウムを示す。)、酸化剤、及び還元剤からなる群より選択される1種以上の添加剤と接触させて、フッ素化する工程Aを含む。」 c)「【0054】 本発明の製造方法では、IF_(5)-ピリジン-HFとの組み合わせにおいて、アミン・フッ化水素塩、X^(a)F(X^(a)は、水素原子、ナトリウム、カリウム、又はリチウムを示す。)、酸化剤、及び還元剤からなる群より選択される1種以上の添加剤が用いられる。 当該添加剤は、本発明の製造方法において反応促進剤として機能していると推測されるが、本発明はこれに限定されるものではない。 当該添加剤のうち、還元剤が反応促進剤として機能する機構は、反応系において、IF_(5)-ピリジン-HF中のIF_(5)からIFが発生し、これが基質である有機化合物に付加することに基づくと推測されるが、本発明はこれに限定されるものではない。 当該添加剤は、好ましくは、アミン・フッ化水素塩、又は還元剤である。本発明の製造方法の好適な一態様においては、当該添加剤は還元剤である。 アミン・フッ化水素塩としては、例えば、第一級アミン・フッ化水素塩、第二級アミン・フッ化水素塩、及び第三級アミン・フッ化水素塩が挙げられる。 アミン・フッ化水素塩として、好ましくは、例えば、脂肪族第一級アミン・フッ化水素塩、脂肪族第二級アミン・フッ化水素塩、及び脂肪族第三級アミン・フッ化水素塩が挙げられる。 脂肪族第一級アミン・フッ化水素塩における脂肪族第一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン等が挙げられる。 脂肪族第一級アミン・フッ化水素塩における脂肪族第二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン等が挙げられる。 脂肪族第三級アミン・フッ化水素塩における脂肪族第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。 「脂肪族第一級アミン・フッ化水素塩」、「脂肪族第二級アミン・フッ化水素塩」、及び「脂肪族第三級アミン・フッ化水素塩」の「脂肪族(基)」として、好ましくは、例えば、メチル、エチル、及びブチルが挙げられ、より好ましくは、例えば、エチル、及びブチルが挙げられる。 アミン・フッ化水素塩としては、例えば、第三級アミン・フッ化水素塩が好ましく、脂肪族第三級アミン・フッ化水素塩がより好ましい。 アミン・フッ化水素塩として、特に好ましくは、トリエチルアミン・フッ化水素塩である。 トリエチルアミン・フッ化水素塩としては、例えば、Et_(3)N-nHF(nは1?9の実数を示す。)が挙げられる。 酸化剤としては、例えば、ヨウ素、臭素、及び塩素などが挙げられる。 還元剤としては、例えば、ヒドラジン、ギ酸、及びアミン(例:メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン等の第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の第二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルアミン、ジフェニルメチルアミン等の第三級アミン)、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、置換基を有してもよいカテコール(例、カテコール、メチルカテコール等の、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいカテコール)、置換基を有してもよいヒドロキノン(例、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン等の、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいヒドロキノン)、ピロガロール(例、ピロガロール、メチルピロガロール等の、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいピロガロール)、パラジウム-炭素(Pd/C)、スズ(Sn)、トリフェニルホスフィン(PPh_(3))、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などが挙げられ、好ましくは、例えば、ヨウ化カリウム、置換基を有してもよいカテコール(例、カテコール、メチルカテコール等の、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいカテコール)、置換基を有してもよいヒドロキノン(例、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン等の、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいヒドロキノン)、Pd/C、Sn(削り状)、トリフェニルホスフィン(PPh_(3))、マグネシウム(Mg)、及びアルミニウム(Al)が挙げられ、より好ましくは、例えば、ヨウ化カリウム(KI)、置換基を有してもよいカテコール(例、カテコール、メチルカテコール等の、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいカテコール)、及び置換基を有してもよいヒドロキノン(例、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン等の、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいヒドロキノン)が挙げられる。 【0055】 本発明の製造方法で用いられる添加剤は、好ましくは、Et_(3)N-nHF(nは1?9の実数を示す。)である。」(下線は当審が付与。) d)「【発明の効果】 【0065】 本発明の製造方法、又はフッ素化試薬によれば、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られる。」 e)「【0068】 実施例1-1 【化13】 空気中にて、テフロン(商品名)製容器中で、塩化メチレン(2 mL)にIF_(5)-ピリジン-HF (370 mg, 1.15 mmol)、Et_(3)N-6HF(1.15mmol)を加え、室温で化合物1a (ジチオ炭酸O-(4-イソプロピルフェニル)S-メチル)(0.5 mmol)を加え、60℃で6時間攪拌した。反応混合物を水(20 mL)に投入した後、塩化メチレンで3回抽出した(20 mL X 3)。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)で洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮した後、シリカゲルカラム(ヘキサン-エーテル)で生成物2a (トリフルオロメチル4-イソプロピルフェニルエーテル)を収率70%で得た。 【0069】 実施例1-2 【化14】 空気中にて、テフロン(商品名)製容器中で、塩化メチレン (1 mL)にIF_(5)-ピリジン-HF (321 mg, 1.00 mmol)、Et_(3)N-6HF (553 mg, 2.50 mmol)を加え、室温で化合物1a (ジチオ炭酸O-(4-イソプロピルフェニル)S-メチル)(0.5 mmol)を加え、60℃で9時間攪拌した。反応混合物を水 (30 mL)に投入した後、塩化メチレンで3回抽出した(20 mL X 3)。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)で洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮した後、シリカゲルカラム(ヘキサン-エーテル)で生成物2a (トリフルオロメチル4-イソプロピルフェニルエーテル)を収率74%で得た。 【0070】 比較例1 空気中にて、テフロン(商品名)製容器中で、塩化メチレン(1 mL)にIF_(5)-ピリジン-HF (321 mg, 1.00 mmol)を加え、室温で化合物1 (0.5 mmol)を加え、60℃で9時間攪拌した。反応混合物を水(30 mL)に投入した後、塩化メチレンで3回抽出した(20 mL X 3)。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)で洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮した後、シリカゲルカラム(ヘキサン-エーテル)で生成物2を収率4%で得た。 実施例1-1と比較例1との対比から明らかなように、実施例1-1では、添加剤Et_(3)N-6HFを用いることで、生成物2の収率が著しく向上した。 【0071】 比較例2 空気中にて、テフロン(商品名)製容器中で、塩化メチレン(1 mL)にIF_(5)(1.00 mmol)、ピリジン-HF(ピリジン1.00 mmol、HF7.00mmol)、Et_(3)N(1.00 mmol)をそれぞれ加え、室温で化合物1 (0.5 mmol)を加え、60℃で9時間攪拌した。反応混合物を水(20 mL)に投入した後、塩化メチレンで3回抽出した(20 mL X 3)。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)で洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮した後、シリカゲルカラム(ヘキサン-エーテル)で生成物2を収率41%で得た。 実施例1-1と比較例2との対比から明らかなように、比較例2では、実施例1-1と同じモル比のIF_(5)、ピリジン、HF、及びトリエチルアミンを用い、同じ反応温度及び同じ反応時間、同じ精製方法を採用したが、十分な収率で生成物2を得ることはできなかった。すなわち、単に、反応系に添加剤としてEt_(3)Nを加えることのみでは、高い収率で生成物2を得ることはできなかった。 【表1】 【0072】 実施例2 実施例1-1の基質(化合物1a)、反応温度、時間、及び反応溶媒を、それぞれ表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして、各生成物を合成した。 なお、表2中、「収率/%」に関して、^(19)F-NMR収率は、基質に基づく。丸括弧内は、単離収率である。 【0073】 【表2】 【0074】 実施例3 アルキルスルフィドのポリフッ素化反応 【化15】 テフロン(商品名)製蓋付き反応容器にIF_(5)-ピリジン-HF(321 mg, 1 mmol)とジクロロエタン(2.0 mL)を入れ、室温で、そこにEt_(3)N-7HF の3滴(54 mg, 0.22 mmol)を加えた。続いて、基質3(122 mg, 0.5 mmol)を加えて、80℃で14時間反応させた。反応混合物をポリ容器中の水(30 mL)にあけ、飽和NaHCO_(3)水で中和した後、エーテル抽出した。硫酸マグネシウムで脱水後、減圧で溶媒を除いた。残渣に内部標準(モノフルオロベンゼン)を加え、^(19)F-NMRで生成物を定量した結果、63%収率で、トリフルオロ体4が生成していることがわかった。 【0075】 実施例4 アルケンへの付加(1) 【化16】 テフロン(商品名)製容器に基質(アルケン5a、0.5 mmol)、塩化メチレン(3 mL)、IF_(5)-ピリジン-HF (161 mg, 0.5 mmol)を入れ、0℃で攪拌しながら、KI(83 mg, 0.5 mmol)を加え、0℃で30分、室温で17時間攪拌した。反応後、生成物6aを塩化メチレン抽出し、シリカゲルカラム(酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、生成物6aを収率78%で得た。 【0076】 実施例5 アルケンへの付加(2) 【化17】 テフロン(商品名)製容器に基質(アルケン5b、0.5 mmol)、塩化メチレン(3 mL)、IF_(5)-ピリジン-HF (161 mg, 0.5 mmol)を入れ、0℃で攪拌しながら、KI(83 mg, 0.5 mmol)を加え、0℃で30分間、及び室温で17時間攪拌した。反応後、生成物6bを塩化メチレン抽出し、シリカゲルカラム(酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、生成物6bを収率60%で得た。^(19)F-NMR収率は、90%であった。 【0077】 実施例6 アルキンへの付加 【化18】 テフロン(商品名)製の容器にアルキン7(0.5 mmol)、IF_(5)-ピリジン-HF (1.0 mmol, 320 mg)、及びジクロロエタン(5 mL)を入れ、0℃で20分撹拌した後、表3の添加剤(ヒドロキノン(1.0 mmol, 110 mg)、又はカテコール(1.0mmol, 110mg)を加え、更に0℃で30分間、及び室温で12時間撹拌した。ジクロロエタン抽出後、シリカゲルカラム(酢酸エチル-ヘキサン)カラムクロマトにより単離精製した。生成物8の収率を表3に示した。 なお、表3中、「収率/%」に関して、^(19)F-NMR収率は、基質に基づく。丸括弧内は、単離収率である。 【0078】 【表3】 【0079】 実施例7 実施例6の基質(化合物7)、IF_(5)-ピリジン-HF量、添加剤、時間、及び反応溶媒を、それぞれ表4のように変更した以外は、実施例6と同様にして、各生成物を合成した。 なお、表4中、「収率/%」に関して、^(19)F-NMR収率は、基質に基づく。丸括弧内は、単離収率である。 【表4】 」 (なお、実施例1-1及び1-2では、フッ素化反応に供する化合物として化合物1aを用い、生成物2aを得たとしているのに対して、比較例1及び2では、化合物1を用い、生成物2を得たとされているが、それらの生成物(生成物2)からみて、実施例1-1、1-2と比較例1及び2とはいずれも という、同一のフッ素化反応に関するものと認める。) (3)判断 ア 本願発明1について (ア)【0004】、【0005】及び【0065】(上記(2)a)、b)及びd))等の発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明1の解決しようとする課題は、「IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法を提供すること」にあると認められるところ、当該課題を、本願発明1の(2)で特定される添加剤を用いることで解決しようとするものと理解される。 (イ)そして、実施例1?7において、当該添加剤に該当する物質を用いた方法が具体的に記載されているところ、このうち、添加剤を用いたことによって収率が向上することを具体的に確認できるのは、Et_(3)N-6HFを用いた場合のみである(実施例1-1又は実施例1-2と比較例1との対比)。すなわち、実施例1-1及び実施例1-2以外の実施例では、本願発明1の「添加剤」として、Et_(3)N-7HF、ヒドロキノン又はカテコールを用いること、及びそれらをIF_(5)-ピリジン-HFとともに使用してフッ素化を行った際の収率についての記載はあるものの、添加剤を用いることなくIF_(5)-ピリジン-HFだけでフッ素化を行った場合との比較がされていないため、添加剤を用いない場合と比べて収率が向上したかは不明である(なお、実施例4、5におけるKIは本願発明1の添加剤に該当しない。)。そして、Et_(3)N-6HF、Et_(3)N-7HF、ヒドロキノン及びカテコール以外の本願発明1の添加剤(Et_(3)N-6HF、Et_(3)N-7HF以外のアミン-フッ化水素塩、X^(a)F(X^(a)は、水素、カリウム、ナトリウム、又はリチウムを示す。)、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基で置換されたカテコール、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基で置換されたヒドロキノン、及び1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいピロガロール)については、それを使用した場合の実施例の記載はなく、フッ素化の収率すら不明である。 (ウ)また、その他の発明の詳細な説明には、製造方法の一般的な記載や添加剤の具体例等について、また、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られることが一般的に記載されているが、Et_(3)N-6HF以外の本願発明1の添加剤を用いることで本願発明1における目的物の収率が向上することについての技術的裏付けとなる記載はない。さらに、【0054】に「当該添加剤は、本発明の製造方法において反応促進剤として機能していると推測されるが、本発明はこれに限定されるものではない。」、「当該添加剤のうち、還元剤が反応促進剤として機能する機構は、反応系において、IF_(5)-ピリジン-HF中のIF_(5)からIFが発生し、これが基質である有機化合物に付加することに基づくと推測されるが、本発明はこれに限定されるものではない。」との記載があるが、これらの記載は、単に推測を記載したに過ぎず、技術的な裏付けを伴うものではない。そして、それらの一般的記載によって、当業者が本願発明1の課題が解決できることを認識できる理由とすることはできない。また、それが本願出願時の技術常識であるともいえない。 (エ)してみると、本願発明1の添加剤のうち、Et_(3)N-6HF以外の添加剤については、当業者が本願発明1の課題を解決できると認識できるとはいえない。 したがって、本願発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が「IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法を提供すること」という本願発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 (オ)よって、本願発明1は発明の詳細な説明に記載したものということはできない。 イ 審判請求人の主張について 審判請求人は、平成30年6月4日付けの意見書(第3頁)において、次の2点を主張する。 i)「本発明が解決する課題としての「高い収率」は、必ずしも比較例のみとの対比によって判断又は認識されるものではなく、技術常識に照らして判断又は認識されるものであります。 ここで、一般的には、例えば、本願比較例1の収率4%のような収率は実用的ではなく低収率であり、一方、本願実施例1?7のように収率が50%を超えれば、必ず、主生成物になりますので、一般的には、十分に実用的な反応であり、これは高い収率であるといえます。 すなわち、当業者は、本願発明1の添加剤のうち、実施例のEt_(3)N-6HF以外の添加剤につきましても、高い収率であることを、ひいては本願発明の課題を解決することができることを認識できます。」 ii)「また、発明の課題は、明細書の発明の課題の記載のみによって、それのみに限定されて解釈されるものではなく、 本発明の課題は、化学分野の技術常識に照らしますと、 “従来法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法を提供すること” のみに限定されるものではなく、 “従来法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物も含めて、フッ素化有機化合物を高い収率で得られる方法” を提供すること(すなわち、従来は、高い収率で目的物を得ることが困難であった反応も含めて、高い収率を可能にすること)であること、が理解されます。 この意味でも、本願実施例1?7は、いずれも、当業者が本願発明1の課題を解決することができると認識できる実施例たるものです。 そして、これらの実施例に照らせば、本願発明1は、その全範囲でフッ素化有機化合物を、高い収率で得られることが、示されています。」(下線は当審が付与。) ここで、i)の主張は、本願発明1が、当業者が本願発明1の課題が解決できると認識できる範囲のものであるか否かに関するものであるから、本願発明1の課題がどのようなものであるかについてのii)の主張について検討した後、i)の主張について検討する。 ii)の主張について 前記のとおり、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 また、発明の詳細な説明の記載は、「発明が解決しようとする課題及びその解決手段」その他当業者が発明の意義を理解するために必要な事項の記載が義務づけられているものである(特許法施行規則第24条の2)。 以上を踏まえれば、サポート要件の適否を判断する前提としての当該発明の課題についても、原則として、技術常識を参酌しつつ、発明の詳細な説明の記載に基づいてこれを認定するのが相当である。 この観点から本願発明1について検討するに、発明の詳細な説明には、背景技術として、近年、フッ化物イオンによる求核置換反応を利用して、有機化合物にフッ素原子を導入する反応およびそのためのフッ素化剤が種々開発されていること、例えば、五フッ化ヨウ素(IF_(5))は、高い酸化力を持つ強力なフッ素化剤として知られているが、空気中では水分と反応して、HFを発生しながら分解する危険な液体状のフッ素化剤であること、この様な性質を有するIF_(5)については、近年、ピリジン-HFを混ぜると、空気中で安定な白色固体(IF_(5)-ピリジン-HF)となり、種々のイオウ化合物のフッ素化に有効であることが報告されていることが記載され(【0002】)、さらに、発明が解決しようとする課題として、IF_(5)-ピリジン-HFは優れたフッ素化剤であるが、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いたフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できないフッ素化有機化合物が存在し、更なるフッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬の提供が求められていること、従って、本発明は、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬の提供を目的とすることが記載されている(【0004】)。 このような、発明の詳細な説明の、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いたフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できないフッ素化有機化合物が存在するという背景技術の問題点についての記載と、本発明は、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬の提供を目的とするという記載に基づけば、本願発明1の課題は、出願時の技術常識を参酌しても、審判請求人の主張する「従来法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物も含めて、フッ素化有機化合物を高い収率で得られる方法を提供すること」という、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤とは無関係に、一般的な収率向上を課題とするものでないことは明らかであり、「IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬の提供すること」が本願発明1の課題であるこということができる。 したがって、上記ii)の主張を採用することはできない。 i)の主張について 本願発明1について、当業者が、その課題を解決できると認識できる範囲のものか否かを、必ずしも比較例のみとの対比によって判断又は認識されるものではなく、出願時の技術常識も考慮して判断することは請求人の主張のとおりである。 そして、本願発明1の課題が「IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法を提供すること」である以上、当業者が、本願発明1が課題を解決できると認識できるというためには、本願発明1の添加剤を用いた場合に、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤と比較して、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られることを当業者が認識できる必要があるといえる。 しかし、発明の詳細な説明には、一般的な記載として、IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるとの記載はある(【0065】)ものの、当該記載はそれ自体で何ら技術的な裏付けを伴うものではなく、従来の方法との具体的な比較がなされているのは、添加剤がEt_(3)N-6HFである場合のみである。そして、Et_(3)N-6HF以外の本願発明1の添加剤について、本願発明1の製造方法において目的化合物の収率が向上することについての技術的な裏付けを伴う理論的な説明は発明の詳細な説明に存在せず、通常、化合物の製造方法は使用する試薬が異なれば、それによって反応性、収率が異なることは技術常識であり、Et_(3)N-6HF以外の本願発明1の添加剤を用いれば収率が向上することが出願時の技術常識であるともいえない。 してみると、出願時の技術常識を考慮しても、Et_(3)N-6HF以外の本願発明1の添加剤を用いることにより、「IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法を提供すること」という本願発明1の課題を、当業者が解決できると認識できるとはいえない。そして、目的化合物の収率が50%を超え、主生成物になったというだけで、「IF_(5)-ピリジン-HFのみからなるフッ素化剤を用いた従来のフッ素化有機化合物の製造方法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物を、高い収率で得られるフッ素化有機化合物の製造方法を提供すること」という本願発明1の課題を、当業者が解決できると認識できるともいえない。 したがって、i)の主張も採用することはできない。 なお、仮に、審判請求人の主張するとおり、本願発明1の課題が「従来法では、十分な収率で製造できなかったフッ素化有機化合物も含めて、フッ素化有機化合物を高い収率で得られる方法を提供すること」であり、「高い収率」とは収率が50%を超える程度のことを意味するとした場合について念のため検討する。 この場合であっても、本願発明1について、発明の詳細な説明において、フッ素化有機化合物の収率が50%を超えていることが具体的に確認できるのは、本願発明1の添加剤のうち、Et_(3)N-6HF、Et_(3)N-7HF、ヒドロキノン及びカテコールを用いた場合のみであり(実施例1-1、1-2、2、3、6、7。)、Et_(3)N-6HF、Et_(3)N-7HF、ヒドロキノン及びカテコール以外の本願発明1の添加剤(Et_(3)N-6HF、Et_(3)N-7HF以外のアミン-フッ化水素塩、X^(a)F(X^(a)は、水素、カリウム、ナトリウム、又はリチウムを示す。)、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基で置換されたカテコール、1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基で置換されたヒドロキノン、及び1個以上のC_(1)?C_(3)アルキル基を有していてもよいピロガロール)については、それを使用した場合の具体的な記載はなく、フッ素化の収率は不明である。そして、発明の詳細な説明には、本願発明1で特定される製造方法において、上記(3)ア(ウ)で示した、本願発明1の添加剤が反応促進剤として機能している等の推測についての記載はあるものの、当該記載はそれ自体で技術的な裏付けを伴うものではなく、上記した具体的な記載のない添加剤が本願発明1で特定される製造方法においてどのような作用を有し、その結果としてどのような収率で目的化合物が得られるかは出願時の技術常識でもないから、それら添加剤を用いた場合にフッ素化有機化合物が高い収率で得られるということはできない。 さらにいえば、本願発明1では、フッ素化される「有機化合物」がどのような化学構造を有するものであるかについての特定は何らされていないから、本願発明1は、本願明細書において例示される化合物(【0010】?【0052】)を含め、化学構造上フッ素化することが可能なあらゆる有機化合物を対象とするものといえるところ、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、本願発明1の方法により、化学構造上フッ素化することが可能なあらゆる有機化合物について常に50%を超える程度の収率でフッ素化できると当業者が認識できるとはいえない。 したがって、仮に審判請求人の主張のとおりの課題であったとしても、本願発明1がサポート要件を満たしているとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願は、本願発明1について、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 したがって、その他の事項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-06-26 |
結審通知日 | 2018-07-03 |
審決日 | 2018-07-17 |
出願番号 | 特願2015-75179(P2015-75179) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(C07B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阿久津 江梨子、井上 典之 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
冨永 保 佐々木 秀次 |
発明の名称 | フッ素化有機化合物の製造方法、及びフッ素化試薬 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |