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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1343631
審判番号 不服2017-13138  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-05 
確定日 2018-08-30 
事件の表示 特願2015- 81741「感光性エレメント」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日出願公開、特開2015-146038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012(平成24)年12月4日(パリ条約による優先権主張2011(平成23)年12月5日)を国際出願日とする特願2013-516811号の一部を平成25年6月12日に新たな特許出願とした特願2013-123511号について、さらにその一部を平成27年4月13日に新たな特許出願としたものである。
そして、平成27年4月28日に手続補正がなされ、平成28年1月12日付けで拒絶理由が通知され、同年3月18日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年8月24日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成29年5月23日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。これに対し、平成29年9月5日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年9月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、平成28年3月18日付けの手続補正の特許請求の範囲(以下、「本件補正前の特許請求の範囲」という。)
「 【請求項1】
支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた感光層と、を備え、
前記感光層が、酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有し、前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含み、
前記感光層は、365nmにおける吸光度が、0.4以下であり、334nmにおける吸光度が、0.4以上であり、
タッチパネル用基材の金属配線上に樹脂硬化膜パターンを形成して前記金属配線の腐食を防止するために用いられる、感光性エレメント。
【請求項2】
前記感光層の厚みが10μm以下である、請求項1に記載の感光性エレメント。
【請求項3】
前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の含有量は、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の合計量100質量部に対し、前記バインダーポリマーが40?80質量部であり、前記光重合性化合物が20?60質量部である、請求項1又は2に記載の感光性エレメント。
【請求項4】
前記オキシムエステル化合物が、下記一般式(C-1)で表される化合物を含有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【化1】


[一般式(C-1)中、R^(1)は、炭素数1?12のアルキル基、又は炭素数3?20のシクロアルキル基を示す。]
【請求項5】
前記光重合開始剤の含有量が、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の合計量100質量部に対し、2?5質量部である、請求項1?4のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項6】
前記バインダーポリマーの重量平均分子量が、15,000?150,000である、請求項1?5のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項7】
前記バインダーポリマーの酸価が、75?120mgKOH/gである、請求項1?6のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項8】
前記感光層が、紫外線吸収剤を更に含む、請求項1?7のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項9】
前記紫外線吸収剤が360nm以下の波長域に最大吸収波長を有するものである、請求項8に記載の感光性エレメント。
【請求項10】
前記感光層は、400?700nmにおける可視光透過率の最小値が85%以上である、請求項1?9のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項11】
前記感光層は、CIELAB表色系でのb^(*)が-0.2?1.0である、請求項1?10のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項12】
前記感光層の前記支持フィルムとは反対側に設けられた保護フィルムを更に備える、請求項1?11のいずれか一項に記載の感光性エレメント。」を
「 【請求項1】
支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた感光層と、を備え、
前記感光層が、酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有し、前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含み、
前記感光層は、365nmにおける吸光度が、0.4以下であり、334nmにおける吸光度が、0.4以上であり、
前記バインダーポリマーの重量平均分子量が、30,000?150,000であり、
前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の含有量は、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の合計量100質量部に対し、前記バインダーポリマーが55?65質量部であり、前記光重合性化合物が35?45質量部であり、
タッチパネル用基材の金属配線上に樹脂硬化膜パターンを形成して前記金属配線の腐食を防止するために用いられる、感光性エレメント。
【請求項2】
前記感光層の厚みが10μm以下である、請求項1に記載の感光性エレメント。
【請求項3】
前記オキシムエステル化合物が、下記一般式(C-1)で表される化合物を含有する、請求項1又は2に記載の感光性エレメント。
【化1】

[一般式(C-1)中、R^(1)は、炭素数1?12のアルキル基、又は炭素数3?20のシクロアルキル基を示す。]
【請求項4】
前記光重合開始剤の含有量が、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の合計量100質量部に対し、2?5質量部である、請求項1?3のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項5】
前記バインダーポリマーの酸価が、75?120mgKOH/gである、請求項1?4のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項6】
前記感光層が、紫外線吸収剤を更に含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤が360nm以下の波長域に最大吸収波長を有するものである、請求項6に記載の感光性エレメント。
【請求項8】
前記感光層は、400?700nmにおける可視光透過率の最小値が85%以上である、請求項1?7のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項9】
前記感光層は、CIELAB表色系でのb^(*)が-0.2?1.0である、請求項1?8のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項10】
前記感光層の前記支持フィルムとは反対側に設けられた保護フィルムを更に備える、請求項1?9のいずれか一項に記載の感光性エレメント。」
(下線部は補正箇所を示す。また、本件補正後の請求項1に係る発明を以下、「本件補正発明」という。)と補正するものである。

(1)補正事項
本件補正は、以下の補正事項を含んでいる。
ア 補正事項1
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の「バインダーポリマー」について、「重量平均分子量が、30,000?150,000であり」との限定を付す補正事項。

イ 補正事項2
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の「バインダーポリマー」及び「光重合性化合物」について、「前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の含有量は、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の合計量100質量部に対し、前記バインダーポリマーが55?65質量部であり、前記光重合性化合物が35?45質量部であり」とする限定を付す補正事項。

(2)補正の目的
補正事項1及び補正事項2は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の構成要件について限定を付すものであって、本件補正の前後において産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/129210号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。(下線は合議体が付与した。以下同様。)

(ア)「技術分野
[0001] 本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、それを用いた保護膜およびタッチパネル部材に関する。

(中略)

[0005] 近年注目を浴びている静電容量式タッチパネルは、ハードコート材料の用途の一つである。静電容量式タッチパネルはガラス上にITO(Indium Tin Oxide)や金属(銀、モリブデン、アルミニウムなど)で作製したパターンを有する構造を持つ。このITOおよび金属を保護するために高い硬度、透明性、耐湿熱性を持つ膜が求められる。しかしながらこれらの性能を両立することは困難であり、この問題を解決するハードコート材料が求められていた。

(中略)

[0016] 本発明は、パターン加工性に優れ、UV硬化および熱硬化により高硬度、高透明であり、耐湿熱性の優れる硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0017] すなわち、本発明の目的は、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)多官能モノマー、(D)ジルコニウム化合物を含有するネガ型感光性樹脂組成物により達成される。
[0018] また、本発明の目的は、上記のネガ型感光性樹脂組成物を硬化させてなるタッチパネル保護膜により達成される。
[0019] 本発明の目的は、上記のネガ型感光性樹脂組成物を硬化させてなる金属配線保護膜により達成される。
[0020] また、本発明の目的は、上記のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を具備し、該硬化膜によりモリブデン含有金属配線が保護されているタッチパネル部材により達成される。
[0021] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、硬化膜形成用の組成物であることが好ましい。
[0022] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、保護膜形成用の組成物であることが好ましい。
[0023] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂が、エチレン性不飽和結合を有するアクリル樹脂であることが好ましい。
[0024] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂が、エチレン性不飽和結合を有するポリシロキサンであることが好ましい。

(中略)

発明の効果
[0029] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、パターン加工性に優れ、UV硬化および熱硬化により高硬度、高透明であり、耐湿熱性の優れる硬化膜を得ることができる。」

(イ)「発明を実施するための形態
[0031] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)多官能モノマー、(D)ジルコニウム化合物を含有する。」

(ウ)「[0033] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂を含有する。カルボン酸当量とは、カルボキシル基1mol量を得るのに必要な樹脂の重量を表し、単位はg/molである。アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸当量が1,400g/molを越える場合には、ネガ型感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性(現像性)に劣り、良好なパターンを形成することできず、また、現像できても現像後の残さを抑制できないか、現像液種に大きな制限が必要となるなどの問題が生じる。一方、アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸当量が200g/molに満たない場合には、露光部の膜減りを抑えることができず、また、耐湿熱性に劣るほか、解像度も劣る。かかる範囲であることにより、様々な現像条件で良好なパターンを形成することが可能となる。
[0034] また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物に用いる、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合基を有することにより、架橋密度を向上させ、硬化膜の硬度を向上させることができる。カルボン酸当量の好ましい範囲は300g/mol以上1200g/mol以下であり、さらに好ましくは400g/mol以上800g/mol以下である。
[0035] (A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂としては、ポリシロキサン、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリアミド等が挙げられる。(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂においては、少なくとも一部にはエチレン性不飽和二重結合基が導入されていることが、硬化膜の硬度を高くするのに好ましい。これら重合体のうち、エチレン性不飽和二重結合基の導入の容易さから、ポリシロキサン、アクリル樹脂がより好ましい。また、これら重合体を2種以上含有してもよい。
[0036] (A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂として好ましい例を次に挙げるが、これに限定されない。

(中略)

[0048] アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合したものが好ましい。ラジカル重合の触媒に特に制限はなく、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物や過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物など一般的に用いられる。

(中略)

[0053] アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算で、2,000以上200,000以下であることが好ましい。Mwを上記範囲とすることで、良好な塗布特性が得られ、パターン形成する際の現像液への溶解性も良好となる。
[0054] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂の含有量に特に制限はなく、所望の膜厚や用途により任意に選ぶことができるが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分中10wt%以上60wt%以下が一般的である。」

(エ)「[0055] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤を含有する。(B)光重合開始剤は、光(紫外線、電子線を含む)により分解および/または反応し、ラジカルを発生させるものが好ましい。
[0056] 具体例としては、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィンオキサイド、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、

(中略)

、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
[0057] これらのうち、硬化膜の硬度をより高くするためには、α-アミノアルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル化合物、アミノ基を有するベンゾフェノン化合物またはアミノ基を有する安息香酸エステル化合物が好ましい。

(中略)

[0059] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(B)光重合開始剤の含有量の含有量に特に制限はないが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分中0.1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。上記範囲とすることで、硬化を十分に進めることができ、かつ残留した重合開始剤の溶出などを防ぎ耐溶剤性を確保することができる。」

(オ)「[0060] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(C)多官能モノマーを含有する。光照射により上記(B)光重合開始剤によって(C)多官能モノマーの重合が進行し、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の露光部がアルカリ水溶液に対して不溶化し、ネガ型のパターンを形成することができる。多官能モノマーとは、分子中に少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物をいい、特に限定するわけでないが、ラジカル重合のしやすい(メタ)アクリル基を有する多官能モノマーが好ましい。また、(C)多官能モノマーの二重結合当量は80g/mol以上400g/mol以下であることが、感度、硬度の点から好ましい。
[0061] (C)多官能モノマーとしてはたとえばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、

(中略)

、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)-3、5-ジメチルフェニル]フルオレン、などが挙げられる。
中でも、感度向上の観点から、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、などが好ましい。また、疎水性向上の観点から、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが好ましい。
[0062] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(C)多官能モノマーの含有量に特に制限はなく、所望の膜厚や用途により任意に選ぶことができるが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分中10wt%以上60wt%以下が一般的である。」

(カ)「[0063] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(D)ジルコニウム化合物を含有する。(D)ジルコニウム化合物を含有することで、得られる硬化膜の耐湿熱性が向上する。カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基由来の親水性であるため耐湿熱性に乏しいが、(D)ジルコニウム化合物を含有することで硬化膜の耐湿熱性が向上する。これまでに、一部のジルコニウム化合物がポリシロキサンに対して耐湿熱性向上効果を持つことが知られているが(特許文献1参照)、該公知例ではポリシロキサンの側鎖が疎水性基に限られ、結果として得られる硬化膜も疎水性となるため、カルボキシル基などの親水性基を有する場合の効果は明かではなかった。本発明では、ポリシロキサンに限らず、親水性樹脂であるカルボキシル基含有アルカリ可溶性樹脂が、(D)ジルコニウム化合物を含有することで硬化膜の耐湿熱性が向上することを今回初めて見出した。その詳細なメカニズムについては明らかではないが、(D)ジルコニウム化合物が、(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂の複数のカルボキシル基と反応する事によって架橋構造を形成し、膜密度が向上すると同時に、カルボキシル基由来の親水性が低減することにより、得られる硬化膜の耐湿熱性が向上するものと考えられる。(D)ジルコニウム化合物は、ジルコニウム原子を含む化合物であれば特に制限はないが、たとえば平均粒径が100nm以下のジルコニウム酸化物粒子や、一般式(1)で表される化合物が好ましい。ジルコニウム酸化物粒子の平均粒径は、さらに好ましくは、40nm以下である。ジルコニウム酸化物粒子の平均粒径を100nm以下とすることで、得られる硬化膜の白濁を防ぐことができる。
[0064][化2]

[0065] (R^(1)は水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基およびその置換体を表し、R^(2)およびR^(3)は水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基およびその置換体を表す。複数のR^(1)、R^(2)およびR^(3)は同じでも異なっても良い。nは0?4の整数を表す。)
ここで、平均粒径とは、コールター法によって測定した粒度分布より求められるメディアン径を意味する。」

(キ)「[0093] さらに、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、高い耐湿熱性を有することから、金属配線保護膜として好適に用いることができる。金属配線上に形成することにより、金属の腐食等による劣化(導電性の低下など)を防ぐことが出来る。保護する金属に特に制限はないが、たとえば、銅、銀、アルミニウム、クロム、モリブデン、チタン、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)、AZO(アルミニウム添加酸化亜鉛)、ZnO_(2)などが挙げられる。特にモリブデンを含有するタッチパネル部材において好適に用いることが出来る。ここでいうタッチパネル部材とは、電極および絶縁膜および/または保護膜を具備する、ガラスまたはフィルム基板であり、タッチパネル用センサー基板として用いることが出来る部材を指す。」

(ク)「実施例
[0095] 以下に本発明をその実施例を用いて説明するが、本発明の様態はこれらの実施例に限定されるものではない。
(合成例1:ポリシロキサン溶液(i)の合成)
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを47.67g(0.35mol)、フェニルトリメトキシシランを39.66g(0.20mol)、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸26.23g(0.10mol)、γ-アクリロイルプロピルトリメトキシシランを82.04g(0.35mol)、ダイアセトンアルコール(以下、DAA)を185.08g仕込み、40℃のオイルバスに漬けて撹拌しながら水55.8gにリン酸0.391g(仕込みモノマーに対して0.2wt%)を溶かしたリン酸水溶液を滴下ロートで10分かけて添加した。40℃で1時間撹拌した後、オイルバス温度を70℃に設定して1時間撹拌し、さらにオイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100?110℃)。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計120g留出した。得られたポリシロキサンのDAA溶液に、ポリマー濃度が40wt%となるようにDAAを加えてポリシロキサン溶液(i)を得た。なお、得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPCにより測定したところ8,000(ポリスチレン換算)であった。また、カルボン酸当量は620g/molであった。

(中略)

(合成例6:アクリル樹脂溶液(a)の合成)
500mlのフラスコに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を3g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を23.0g、ベンジルメタクリレートを31.5g、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを32.8g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを12.7g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、アクリル樹脂溶液(a)を得た。得られたアクリル樹脂溶液(a)に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加えた。アクリル樹脂の重量平均分子量は18,000、カルボン酸当量は560g/molであった。

(中略)

[0096] 合成例1?9の組成をまとめて表1に示す。
[0097]
[表1]

[0098] 各実施例・比較例における評価方法を以下に示す。
(1)透過率の測定
作製したネガ型感光性樹脂組成物を5cm角のテンパックスガラス基板(旭テクノガラス板(株)製)にスピンコーター(ミカサ(株)製「1H-360S(商品名)」)を用いて500rpmで10秒回転した後、1,000rpmで4秒回転してスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW-636(商品名)」)を用いて90℃で2分間プリベークし、膜厚2μmの膜を作製した。作製した膜をパラレルライトマスクアライナー(以下PLAという)(キヤノン(株)製「PLA#501F(商品名)」)を用いて超高圧水銀灯を光源として露光し、オーブン(エスペック(株)製「IHPS-222」)を用いて空気中230℃で1時間キュアして膜厚1.5μmの硬化膜を作製した。
[0099] 得られた硬化膜について、紫外-可視分光光度計「UV-260(商品名)」(島津製作所(株)製)を用いて、400nmの透過率を測定した。なお、膜厚は大日本スクリーン製造(株)製「ラムダエースSTM-602(商品名)」を用いて屈折率1.55で測定した。以下に記載する膜厚も同様である。
(2)硬度の測定
前記(1)記載の方法で得られた膜厚1.5μmの硬化膜について、JIS K 5600-5-4(1999)に準拠して鉛筆硬度を測定した。
(3)耐湿熱性
モリブデンスパッタ膜を具備するガラス上に、前記(1)記載の方法で硬化膜を作製した後、気温85℃、湿度85%のオーブン(エスペック株式会社、「EX-111(商品名)」)内に300時間放置する試験を行った後、モリブデンの変色度合いを評価した。また、モリブデンスパッタ膜のみのガラス基板も同時に試験を行い、試験前後の変色度合いの指標とし、以下のように判定した。
[0100] 5:試験前後で、硬化膜下のモリブデンに変色が見られない。
[0101] 4:試験前後で、硬化膜下のモリブデンが硬化膜に覆われていないものと比較し、1割程度変色した。
[0102] 3:試験前後で、硬化膜下のモリブデンが硬化膜に覆われていないものと比較し、2割程度変色した。
[0103] 2:試験前後で、硬化膜下のモリブデンが硬化膜に覆われていないものと比較し、4割程度変色した。
[0104] 1:試験前後で、硬化膜下のモリブデンが硬化膜に覆われていないものと比較し、6割程度以上変色した。
(4)パターン加工性
(4-1)感度
ネガ型感光性樹脂組成物Aをシリコンウエハにスピンコーター(ミカサ(株)製「1H-360S(商品名)」)を用いて500rpmで10秒回転した後、1,000rpmで4秒回転してスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW-636(商品名)」)を用いて90℃で2分間プリベークし、膜厚2μmのプリベーク膜を作製した。得られたプリベーク膜に、PLAを用いて超高圧水銀灯を光源として、感度測定用のグレースケールマスクを介して100μmのギャップで露光した。その後、自動現像装置(「AD-2000(商品名)」、滝沢産業(株)製)を用いて、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAH)の0.4wt%(または2.38wt%)水溶液で90秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。
[0105] 露光、現像後、30μmのラインアンドスペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(以下、これを最適露光量という)を感度とした。露光量はI線照度計で測定した。
(4-2)解像度
最適露光量における現像後の最小パターン寸法を測定した。
(4-3)現像後残さ
前記(4-1)に記載の方法でシリコンウエハ上にパターン加工した後、未露光部の溶け残り程度により以下のようにして判定した。
[0106] 5:目視では解け残りが無く、顕微鏡の観察においても50μm以下の微細パターンも残渣がない。
[0107] 4:目視では解け残りが無く、顕微鏡観察において50μm以上のパターンには残渣がないが、50μm以下のパターンには残渣がある。
[0108] 3:目視では解け残りが無いが、顕微鏡観察において50μm以上のパターンに残渣がある。
[0109] 2:目視で、基板端部(厚膜部)に解け残りがある。
[0110] 1:目視で、未露光部全体に解け残りがある。
(実施例1)
黄色灯下にて1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)0.277gをDAA2.846g、PGMEA2.317gに溶解させ、ジルコニウムジノルマルブトキシビス(エチルアセトアセテート)(70wt%1-ブタノール溶液)(「オルガチックスZC-580(商品名)」、マツモトファインケミカル製)0.227g、シリコーン系界面活性剤である「BYK-333(商品名)」(ビックケミージャパン(株)製)のPGMEA1wt%溶液0.2000g(濃度100ppmに相当)、4-t-ブチルカテコールのPGMEA1wt%溶液1.661gを加え、撹拌した。そこへ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)のPGMEA50重量%溶液5.538g、ポリシロキサン溶液(i)6.923gを加えて、撹拌した。次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、ネガ型感光性樹脂組成物(S-1)を得た。得られたネガ型感光性樹脂組成物(S-1)について、前記方法で透過率、硬度、耐湿熱性、パターン加工性を評価した。

(中略)

(実施例24)
ポリシロキサン溶液(i)の替わりにアクリル樹脂溶液(a)を用い、DAAの替わりに同量のPGMEAをさらに加える以外は実施例1と同様に行い、ネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を得た。得られたネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用いて、実施例1と同様にして評価を行った。

(中略)

(実施例46)
以下の手順に従い、タッチパネル部材を作製した。
(1)ITOの作製
厚み約1mmのガラス基板にスパッタリング装置HSR-521A((株)島津製作所製)を用いて、RFパワー1.4kW、真空度6.65×10 ^(-1)Paで12.5分間スパッタリングすることにより、膜厚が150nmで、表面抵抗が15Ω/□のITOを成膜し、ポジ型フォトレジスト(東京応化工業(株)製「OFPR-800」)を塗布し、80℃で20分間プリベークして膜厚1.1μmのレジスト膜を得た。PLAを用いて、得られた膜に超高圧水銀灯をマスクを介してパターン露光した後、自動現像装置を用いて2.38wt%TMAH水溶液で90秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。その後、40℃のHCl/HNO_(3)/H_(2)O=18/4.5/77.5(重量比)混合溶液に80秒浸すことでITOをエッチングし、50℃の剥離液(ナガセケムテックス(株)製「N-300」)で120秒処理することでフォトレジストを除去し、膜厚200オングストロームのパターン加工された透明電極を有するガラス基板を作製した。
(2)透明絶縁膜の作製
得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、上述の評価の方法の手順に従い透明絶縁膜を作製した。
(3)モリブデン/アルミニウム/モリブデン積層膜(MAM)配線の作製
得られたガラス基板上に、ターゲットとしてモリブデンおよびアルミニウムを用い、エッチング液としてH_(3)PO_(4)/HNO_(3)/CH_(3)COOH/H_(2)O=65/3/5/27(重量比)混合溶液を用いる以外は(1)と同様の手順によりMAM配線を作製した。
(4)透明保護膜の作製
得られたガラス基板上にネガ型感光性樹脂組成物(A-1)を用い、上述の評価の方法の手順に従い透明保護膜を作製した。

(中略)

[0113]
[表3]



(ケ)「産業上の利用可能性
[0116] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、タッチパネルの保護膜などの各種ハードコート膜の他、タッチパネル用絶縁膜、液晶や有機ELディスプレイのTFT用平坦化膜、金属配線保護膜、絶縁膜、反射防止膜、反射防止フィルム、光学フィルター、カラーフィルター用オーバーコート、柱材などに好適に用いられる。」

(コ)「 請求の範囲
[請求項1] (A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)多官能モノマー、(D)ジルコニウム化合物を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
[請求項2] ネガ型感光性樹脂組成物が、硬化膜形成用の組成物である請求項1記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[請求項3] ネガ型感光性樹脂組成物が、保護膜形成用の組成物である請求項1または2記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[請求項4] (A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂が、エチレン性不飽和結合を有するアクリル樹脂である請求項1?3のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[請求項5] (A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂が、エチレン性不飽和結合を有するポリシロキサンである請求項1?3のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[請求項6] (D)ジルコニウム化合物が、平均粒径が100nm以下のジルコニウム酸化物粒子である請求項1?5のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[請求項7] (D)ジルコニウム化合物が、一般式(1)で表される化合物のいずれか1種類以上である請求項1?5のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[化1]

(R^(1)は水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基およびその置換体を表し、R^(2)およびR^(3)は水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基およびその置換体を表す。複数のR^(1)、R^(2)およびR^(3)は同じでも異なっても良い。nは0?4の整数を表す。)
[請求項8] 請求項1?7のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物を硬化させてなるタッチパネル保護膜。
[請求項9] 請求項1?7のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物を硬化させてなる金属配線保護膜。
[請求項10] 請求項1?7のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を具備し、該硬化膜によりモリブデン含有金属配線が保護されているタッチパネル部材。」

イ 引用発明
引用文献1の実施例1において、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]0.277gを溶解する溶媒として、DAA2.846g及びPGMEA2.317gが用いられているところ、実施例24では、DAAの替わりに同量のPGMEAをさらに加える以外は実施例1と同様に行うとされている。そうすると、実施例24において、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]0.277gを溶解させるために用いられる溶媒は、PGMEA5.163gであるといえる。
したがって、引用文献1の実施例24に係る記載に基づけば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「フラスコに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を3g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を50g仕込み、その後、メタクリル酸を23.0g、ベンジルメタクリレートを31.5g、トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを32.8g仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌し、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを12.7g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加えたアクリル樹脂溶液(a)であって、アクリル樹脂の重量平均分子量は18,000、カルボン酸当量は560g/molであるアクリル樹脂溶液(a)を合成し、
黄色灯下にて1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)0.277gをPGMEA5.163gに溶解させ、ジルコニウムジノルマルブトキシビス(エチルアセトアセテート)(70wt%1-ブタノール溶液)(「オルガチックスZC-580(商品名)」、マツモトファインケミカル製)0.227g、シリコーン系界面活性剤である「BYK-333(商品名)」(ビックケミージャパン(株)製)のPGMEA1wt%溶液0.2000g(濃度100ppmに相当)、4-t-ブチルカテコールのPGMEA1wt%溶液1.661gを加え、撹拌し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)のPGMEA50重量%溶液5.538g、アクリル樹脂溶液(a)6.923gを加えて、撹拌し、次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、得られたネガ型感光性樹脂組成物。」(以下、「引用発明」という。)

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2009-258652号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物、スペーサーおよびその製造方法ならびに液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、液晶表示パネルやタッチパネルなどの表示素子に用いられるスペーサーを形成するための材料として好適な感放射線性樹脂組成物、当該組成物から形成された表示素子用スペーサーおよび当該スペーサーを具備してなる液晶表示素子に関する。」

イ 「【0062】
<表示素子用スペーサーの製造方法>
次に、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて本発明のスペーサーを製造する方法について説明する。
本発明のスペーサーの製造は、少なくとも以下の工程を以下に記載の順序で含むものである。
(イ)本発明の感放射線性樹脂組成物の被膜を形成する工程、
(ロ)該被膜の少なくとも一部を露光する工程、
(ハ)露光後の被膜を現像する工程、および
(ニ)現像後の被膜を加熱する工程。
以下、これらの各工程について順次説明する。
【0063】
[(イ)工程]
透明基板の片面に透明導電膜を形成し、該透明導電膜の上に、本発明の感放射線性樹脂組成物を塗布し、被膜を形成する。
ここで用いられる透明基板としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板などを挙げることができ、より具体的には、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどのガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックからなる樹脂基板を挙げることができる。
透明基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO_(2))からなるNESA膜(米国PPG社の登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In_(2)O_(3)-SnO_(2))からなるITO膜などを挙げることができる。
被膜の形成方法としては、塗布法またはドライフィルム法によることができる。
塗布法により被膜を形成する場合、上記透明導電膜の上に本発明の感放射線性樹脂組成物を塗布した後、塗布面を加熱(プレベーク)して溶媒を除去することにより、被膜を形成することができる。塗布法に用いる感放射線性樹脂組成物の固形分濃度(感放射線性樹脂組成物中の溶媒以外の全成分の合計重量が、感放射線性樹脂組成物の全重量に占める割合(重量%)をいう。以下同じ。)は、好ましくは5?50重量%であり、より好ましくは10?40重量%であり、さらに好ましくは15?35重量%である。塗布方法としては、特に限定されないが、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット塗布法などの適宜の方法を採用することができ、特にスピンコート法またはスリットダイ塗布法が好ましい。
本発明の感放射線性樹脂組成物は、スリットダイ塗布法に特に好適であり、スリットダイの移動速度を150mm/秒とした場合であっても、塗布ムラを発生させることはない。
【0064】
一方、ドライフィルム法により被膜を形成する場合に使用されるドライフィルムは、ベースフィルム、好ましくは可とう性のベースフィルム上に、本発明の感放射線性樹脂組成物からなる感放射線性層を積層してなるもの(以下、「感放射線性ドライフィルム」という。)である。
上記感放射線性ドライフィルムは、ベースフィルム上に、本発明の感放射線性樹脂組成物を好ましくは溶液状の組成物として塗布した後に溶媒を除去することにより、感放射線性層を積層して形成することができる。感放射線性ドライフィルムの感放射線性層を積層するために用いられる組成物溶液の固形分濃度は、好ましくは5?50重量%であり、より好ましくは10?50重量%であり、さらに好ましくは20?50重量%であり、特に30?50重量%であることが好ましい。感放射線性ドライフィルムのベースフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂のフィルムを使用することができる。ベースフィルムの厚さは、15?125μmの範囲が適当である。感放射線性層の厚さは、1?30μm程度が好ましい。
感放射線性ドライフィルムは、未使用時にその感放射線性層上にカバーフィルムを積層して保存することもできる。このカバーフィルムは、未使用時(保存中)には剥がれず、使用時には容易に剥がすことができるように、適度な離型性を有する物であることが好ましい。このような条件を満たすカバーフィルムとしては、例えばPETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルムなどの合成樹脂フィルムの表面にシリコーン系離型剤を塗布しまたは焼き付けたフィルムを使用することができる。カバーフィルムの厚さは、5?30μm程度が好ましい。これらカバーフィルムは、2層または3層を積層した積層型カバーフィルムとしてもよい。
かかるドライフィルムを透明基板の透明導電膜上に、熱圧着法などの適宜の方法でラミネートすることにより、被膜を形成することができる。
このようにして形成された被膜は、次いで好ましくはプレベークされる。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは70?120℃で1?15分間程度である。
被膜のプレベーク後の膜厚は、好ましくは0.5?10μmであり、より好ましくは1.0?7.0μm程度である。」

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2007-86565号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、液晶表示パネル用保護膜およびスペーサー、それらを具備してなる液晶表示パネルに関わり、さらに詳しくは、液晶表示パネルやタッチパネルなどの液晶表示パネルに用いられる保護膜、スペーサーを形成するための材料として好適な感光性樹脂組成物、当該組成物から形成された液晶表示パネル用保護膜、スペーサー、および当該保護膜、スペーサーを具備してなる液晶表示パネルに関する。

(中略)

【0004】
これら保護膜およびスペーサーの形成工程において、製造コストの観点から、一品種で、同一プロセス条件で使用できる感光性樹脂組成物が要請されるケースが増えてきた。この場合、保護膜材料に必要とされる密着性、透明性、耐熱性とスペーサー材料に必要とされる解像性、圧縮特性とを十分に併せ持つ感光性樹脂組成物が求められる。」

イ 「【0063】
表示パネル用保護膜および表示パネル用スペーサーの形成方法
本発明における液晶表示パネル用保護膜またはスペーサーの形成方法は、少なくとも以下の工程を以下に記載の順序で含むことを特徴とする。
(イ)本発明の感光性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程
(ロ)該被膜の少なくとも一部に露光する工程
(ハ)露光後の該被膜を現像する工程
(ニ)現像後の該被膜を加熱する工程
【0064】
(イ)工程
透明基板の一面に透明導電膜を形成し、該透明導電膜の上に、感光性樹脂組成物を塗布したのち、塗布面を加熱(プレベーク)することにより、被膜を形成する。
スペーサーの形成に用いられる透明基板としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板などを挙げることができ、より具体的には、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどのガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックからなる樹脂基板を挙げることができる。
透明基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO_(2))からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In_(2)O_(3)-SnO_(2))からなるITO膜などを用いることができる。
また、プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、通常、70?120℃で1?15分程度である。
【0065】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて液晶表示パネル用保護膜およびスペーサーを透明基板、樹脂基板などの基板上に形成する方法としては、例えば(1)塗布法、(2)ドライフィルム法によることができる。
組成物溶液の塗布法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット塗布法などの適宜の方法を採用することができ、特にスピンコート法、スリットダイ塗布法が好ましい。
【0066】
また、本発明の感光性樹脂組成物の被膜を形成する際に、(2)ドライフィルム法を採用する場合、該ドライフィルムは、ベースフィルム、好ましくは可とう性のベースフィルム上に、本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性層を積層してなるもの(以下、「感光性ドライフィルム」という)である。
【0067】
上記感光性ドライフィルムは、ベースフィルム上に、本発明の感光性樹脂組成物を好ましくは液状組成物として塗布したのち乾燥することにより、感光性層を積層して形成することができる。感光性ドライフィルムのベースフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂のフィルムを使用することができる。ベースフィルムの厚さは、15?125μmの範囲が適当である。得られる感光性層の厚さは、1?30μmの程度が好ましい。
【0068】
また、感光性ドライフィルムは、未使用時に、その感光性層上にさらにカバーフィルムを積層して保存することもできる。このカバーフィルムは、未使用時には剥がれず、使用時には容易に剥がすことができるように、適度な離型性を有する必要がある。このような条件を満たすカバーフィルムとしては、例えば、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどの合成樹脂フィルムの表面にシリコーン系離型剤を塗布または焼き付けフィルムを使用することができる。カバーフィルムの厚さは、通常、25μm程度で十分である。
【0069】
基板上に本発明の感光性樹脂組成物の被膜を形成した後、プレベークすることが好ましい。プレベークの条件は、各構成成分の種類、配合割合などによっても異なるが、通常、70?90℃で1?15分間程度である。」

(4)引用文献4
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2009-48170号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の記載事項がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ドライフィルムレジスト、これを用いたプリント配線板、及び、プリント配線板の製造方法に関するものであり、特に、水系現像が可能で、着色により取扱い性が向上し、解像度、難燃性、密着性、耐湿性、及び、電気信頼性に優れた感光性ドライフィルムレジスト、これを用いたプリント配線板、及び、プリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化、小型化、軽量化に伴い、これら電子機器に用いられる電子部品に対しても、さらなる小型化、軽薄化が要求されている。そのため、プリント配線板上での半導体素子などの高密度実装や、配線の微細化、プリント配線板の多層化等を行うことにより、電子部品の高機能化や高性能化を図ることが求められている。また、配線の微細化に対応するためには、配線を保護するためにより高い電気絶縁性を有する絶縁材料が必要である。
【0003】
上記プリント配線板を製造する際には、種々の用途で感光性材料が用いられる。すなわち、プリント配線板の基板上へのパターン化された回路(パターン回路)の形成、プリント配線板表面やパターン回路を保護するための保護層の形成、多層プリント配線板の層間絶縁層の形成等に、感光性材料が使用されている。

(中略)

【0007】
感光性材料として、上述したように、液状の感光性材料や、フィルム状の感光性材料がある。このうち、フィルム状の感光性材料は、液状の感光性材料に比べて、膜厚の均一性や作業性に優れているといった利点を備えている。そのため、パターン回路の形成に用いるパターン回路用レジストフィルム(パターン回路の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト)、上記保護層の形成に用いる感光性カバーレイフィルム、上記層間絶縁層の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト等、その用途に応じて、種々のフィルム状感光性材料が用いられている。」

3 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ネガ型感光性樹脂組成物」と本件補正発明の「感光層」とは、「感光物」である点で共通する。

(2)引用発明の「アクリル樹脂」は、その機能からみて、本件補正発明の「バインダーポリマー」に相当する。
また、引用発明の「アクリル樹脂」は、カルボン酸当量が「560g/mol」である。そして、カルボン酸当量とは、引用文献1の記載事項(ウ)に記載されているように「カルボン酸当量とは、カルボキシル基1mol量を得るのに必要な樹脂の重量を表し、単位はg/molである。」と定義されるものであり、「酸価」は、一般に、樹脂1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(分子量56.1)のmg数として定義されるものである。そうすると、引用発明の「アクリル樹脂」は、樹脂1g中に0.00178mol(=1/560)のカルボキシル基を有し、その酸価は、約100mgKOH/g(=0.00178×56.1×1000)であるといえる。そうすると、引用発明の「アクリル樹脂」は、本件補正発明の「酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有する」とする要件を満たしている。

(3)引用発明の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)」は、その機能からみて、本件補正発明の「光重合性化合物」に相当する。

(4)引用発明の「1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)」は、その機能からみて、本件補正発明の「光重合開始剤」に相当する。
そして、引用発明の「1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)」は、その化学構造からみて、本件補正発明の「前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物」を含むとする要件を満たしている。

(5)引用発明のネガ型感光性樹脂組成物におけるアクリル樹脂の含有量は、アクリル樹脂が固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加えたアクリル樹脂溶液(a)を6.923gを加えていることから、
2.77g(=6.923×40/100)である。
また、引用発明のネガ型感光性樹脂組成物におけるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「“カヤラッド(登録商標)”DPHA(商品名)」、新日本化薬製)の含有量は、PGMEA50重量%溶液5.538gを用いていることから、
2.77g(=5.538×50/100)である。
そうすると、引用発明のネガ型感光性樹脂組成物におけるアクリル樹脂の含有量は、アクリル樹脂とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの合計量100質量部に対し、アクリル樹脂が50質量部であり、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが50質量部である。

(6)以上より、本件補正発明と引用発明とは、
「感光物であって、
前記感光物が、酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有し、前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含む、感光物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件補正発明は、感光性エレメントであって、感光層が支持フィルム上に設けられるのに対し、引用発明は、ネガ型感光性樹脂組成物であって、感光物が層として支持体フィルム上に設けられていない点。
[相違点2]本件補正発明の感光層は、365nmにおける吸光度が、0.4以下であり、334nmにおける吸光度が、0.4以上であるのに対し、引用発明のネガ型感光性樹脂組成物は、365nmにおける吸光度及び334nmにおける吸光度が明らかとされていない点。
[相違点3]本件補正発明のバインダーポリマーの重量平均分子量が、30,000?150,000であるのに対し、引用発明のアクリル樹脂の重量平均分子量が、18,000である点。
[相違点4]本件補正発明は、バインダーポリマー及び光重合性化合物の合計量100質量部に対し、前記バインダーポリマーが55?65質量部であり、前記光重合性化合物が35?45質量部であるのに対し、引用発明は、アクリル樹脂及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの合計量100質量部に対し、アクリル樹脂が50質量部であり、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが50質量部である点。
[相違点5]本件補正発明は、タッチパネル用基材の金属配線上に樹脂硬化膜パターンを形成して前記金属配線の腐食を防止するために用いられるのに対し、引用発明は、用途を限定していない点。

4 判断
(1)まず、[相違点5]について検討すると、引用文献1の記載事項(キ)における「本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、高い耐湿熱性を有することから、金属配線保護膜として好適に用いることができる。金属配線上に形成することにより、金属の腐食等による劣化(導電性の低下など)を防ぐことが出来る。」及び「特にモリブデンを含有するタッチパネル部材において好適に用いることが出来る。ここでいうタッチパネル部材とは、電極および絶縁膜および/または保護膜を具備する、ガラスまたはフィルム基板であり、タッチパネル用センサー基板として用いることが出来る部材を指す。」との記載や、記載事項(ケ)における「本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、タッチパネルの保護膜などの各種ハードコート膜の他、タッチパネル用絶縁膜、液晶や有機ELディスプレイのTFT用平坦化膜、金属配線保護膜、絶縁膜、反射防止膜、反射防止フィルム、光学フィルター、カラーフィルター用オーバーコート、柱材などに好適に用いられる。」との記載に基づけば、引用発明のネガ型感光性樹脂組成物は、タッチパネル用基材の金属配線上に樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられることを予定しており、前記金属配線の腐食を防止するために用いられるものといえる。したがって、上記[相違点5]は実質的な相違点とはいえない。
(2)次に、[相違点2]について検討すると、引用文献1の記載事項(ア)における「本発明は、パターン加工性に優れ、UV硬化および熱硬化により高硬度、高透明であり、耐湿熱性の優れる硬化膜を与える、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。」との記載に基づけば、引用発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる保護膜は、高透明であることが求められている。また、UV硬化により形成されることから、引用発明は、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤「1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE-01(商品名)」チバスペシャリティケミカル製)」により、UV光を吸収するものである。そして、上記引用発明における光重合開始剤は、本願の実施例1における(C)成分と同じ光重合開始剤であり、固形分中における含有割合も同程度(アクリル樹脂及びDPHAの固形分の合計を100重量部とすると、光重合開始剤が5重量部)であるから、引用発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる保護膜も、365nmにおける吸光度が、0.4以下であり、334nmにおける吸光度が、0.4以上である蓋然性が高いといえる。してみると、[相違点2]は、実質的な相違点とはいえない。
また、上記[相違点2]が実質的な相違点であるとしても、高透明であるために、可視光領域である365nmにおける吸光度が小さいこと、UV光を吸収して光重合を行うために、紫外光領域である334nmにおける吸光度が大きいものとすることは、タッチパネル用基材に用いられる硬化膜として当然要求されるものである。そして、それぞれの値をどの程度とするかは、膜厚や要求される視認性等に基づいて当業者が適宜設定し得ることである。したがって、引用発明においても、365nmにおける吸光度が、0.4以下であり、334nmにおける吸光度が、0.4以上であるものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
(3)さらに、[相違点1]について検討すると、基板上に形成する感光性樹脂組成物からなる膜を、支持フィルム上に設けられた感光層を備える感光性エレメントを用い、転写することにより形成することは周知技術である。例えば、引用文献2の記載事項イには、表示素子用スペーサーの製造方法に関し、「被膜の形成方法としては、塗布法またはドライフィルム法によることができる。」及び「ドライフィルム法により被膜を形成する場合に使用されるドライフィルムは、ベースフィルム、好ましくは可とう性のベースフィルム上に、本発明の感放射線性樹脂組成物からなる感放射線性層を積層してなるもの(以下、「感放射線性ドライフィルム」という。)である。」と記載されており、引用文献3の記載事項イにも表示パネル用保護膜および表示パネル用スペーサーの形成方法として、「本発明の感光性樹脂組成物を用いて液晶表示パネル用保護膜およびスペーサーを透明基板、樹脂基板などの基板上に形成する方法としては、例えば(1)塗布法、(2)ドライフィルム法によることができる。」及び「上記感光性ドライフィルムは、ベースフィルム上に、本発明の感光性樹脂組成物を好ましくは液状組成物として塗布したのち乾燥することにより、感光性層を積層して形成することができる。」と記載されている。
ここで、引用文献2に記載された技術事項は、記載事項アの「液晶表示パネルやタッチパネルなどの表示素子に用いられるスペーサーを形成するための材料として好適な感放射線性樹脂組成物、当該組成物から形成された表示素子用スペーサー」との記載から明らかなようにタッチパネルなどの表示素子におけるスペーサーに関するものである。しかし、引用文献3の記載事項アにおける「液晶表示パネルやタッチパネルなどの液晶表示パネルに用いられる保護膜、スペーサーを形成するための材料として好適な感光性樹脂組成物」及び「保護膜材料に必要とされる密着性、透明性、耐熱性とスペーサー材料に必要とされる解像性、圧縮特性とを十分に併せ持つ感光性樹脂組成物が求められる。」との記載や、引用文献4の記載事項における「感光性材料として、上述したように、液状の感光性材料や、フィルム状の感光性材料がある。このうち、フィルム状の感光性材料は、液状の感光性材料に比べて、膜厚の均一性や作業性に優れているといった利点を備えている。そのため、パターン回路の形成に用いるパターン回路用レジストフィルム(パターン回路の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト)、上記保護層の形成に用いる感光性カバーレイフィルム、上記層間絶縁層の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト等、その用途に応じて、種々のフィルム状感光性材料が用いられている。」との記載に基づけば、感光性エレメントは、タッチパネルに用いられる保護フィルムを含む、基板上の様々な感光性膜の形成に用いられる周知技術であるといえる。
したがって、引用発明におけるネガ型感光性樹脂組成物について、転写により基板上に感光性膜を形成することができるように、支持フィルム上に設けられた感光層を備える感光性エレメントとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
(4)そして、[相違点3]及び[相違点4]について検討すると、引用文献1には、アクリル樹脂の重量平均分子量について、記載事項(ウ)の段落[0053]に「アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算で、2,000以上200,000以下であることが好ましい。Mwを上記範囲とすることで、良好な塗布特性が得られ、パターン形成する際の現像液への溶解性も良好となる。」と記載されている。また、バインダーポリマーの含有量についても、記載事項(ウ)の段落[0054]に「(A)カルボン酸当量が200g/mol以上1,400g/mol以下であるアルカリ可溶性樹脂の含有量に特に制限はなく、所望の膜厚や用途により任意に選ぶことができるが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分中10wt%以上60wt%以下が一般的である。」と記載されている。さらに、引用文献1には、多官能モノマーの含有量について、記載事項(オ)の段落[0062]に「(C)多官能モノマーの含有量に特に制限はなく、所望の膜厚や用途により任意に選ぶことができるが、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分中10wt%以上60wt%以下が一般的である。」と記載されている。上記記載に基づけば、アクリル樹脂の重量平均分子量は塗布特性及び現像液の溶解性を考慮して当業者が適宜設定し得ることであり、ネガ型感光性樹脂組成物におけるアクリル樹脂の含有量及び多官能モノマーの含有量も、所望の膜厚や用途に応じて適宜設定し得ることである。そして、アクリル樹脂及び多官能モノマーの含有割合が得られる硬化物の硬度等に影響を及ぼすことも当業者において自明である。そうすると、引用発明のネガ型感光性樹脂組成物を感光性エレメントの感光層とするにあたり、支持フィルム上への塗布特性や感光性エレメントの感光層とする際の膜厚、現像液への溶解性に応じて、アクリル樹脂の重量平均分子量を30,000?150,000の範囲に設定し、アクリル樹脂及び多官能モノマーの含有量を、アクリル樹脂及び多官能モノマーの合計量100質量部に対し、アクリル樹脂が55?65質量部であり、多官能モノマーが35?45質量部とすることは、当業者が適宜最適化し得ることに過ぎない。そして、本願の明細書の段落【0055】には、バインダーポリマーの重量平均分子量について、「10,000?200,000であることが好ましく」との記載もあり、「30,000?150,000」としたことに対する比較実験もなされていない。また、段落【0068】には、(A)成分及び(B)成分の含有量について、「(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、それぞれ(A)成分が35?85質量部、(B)成分が15?65質量部であることが好ましく」との記載もあり、(A)成分を55?65質量部、(B)成分を35?45質量部としたことに対する比較実験もなされていない。したがって、本件補正発明の[相違点3]及び[相違点4]に係る構成としたことにより格別な効果の差異が生じるとする根拠を見いだせない。
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができない。

5 補正却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、前記第2の1に記載した、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。

2 引用刊行物の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、前記第2の2に記載したとおりである。

3 対比・判断
本件発明は、本件補正発明の「重量平均分子量が、30,000?150,000であり」との限定及び「前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の含有量は、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の合計量100質量部に対し、前記バインダーポリマーが55?65質量部であり、前記光重合性化合物が35?45質量部であり」とする限定を省いたものである。
そうすると、本件発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付したものに相当する本件補正発明が、前記第2の4に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-28 
結審通知日 2018-07-03 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2015-81741(P2015-81741)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉本 勝利清水 裕勝  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 川村 大輔
宮澤 浩
発明の名称 感光性エレメント  
代理人 清水 義憲  
代理人 吉住 和之  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 財部 俊正  
代理人 古下 智也  
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