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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1343632
審判番号 不服2017-17678  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-29 
確定日 2018-08-30 
事件の表示 特願2013-191170「測距端末および測距システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月23日出願公開、特開2015- 55619〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月13日の出願であって、平成29年2月13日付けの拒絶理由通知に対して平成29年3月29日付けで手続補正がなされたが、平成29年8月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年11月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年11月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年11月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「【請求項1】
測定信号を応答端末へ送信し、前記応答端末から測定応答信号を受信する測距端末側通信部と、前記測距端末側通信部が前記測定信号を送信した送信時刻から前記測定応答信号を受信した受信時刻までの時間を算出する距離算出部と、を有する測距端末であって、
前記距離算出部は、所定回数、前記時間を算出した後、算出した時間の内、各時間に基づいて算出した距離が正常でない値となる時間を除外した各時間の平均値に基づき、前記測距端末から前記応答端末までの距離を算出する、測距端末。」
とあったところを、

「【請求項1】
測定信号を応答端末へ送信し、前記応答端末から測定応答信号を受信する測距端末側通信部と、前記測距端末側通信部が前記測定信号を送信した送信時刻から前記測定応答信号を受信した受信時刻までの時間を算出する距離算出部と、を有する測距端末であって、
前記距離算出部は、所定回数、前記時間を算出した後、算出した時間の内、各時間に基づいて算出した距離が正常でない値となる時間を除外した各時間の平均値に基づき、前記測距端末から前記応答端末までの距離を算出し、
前記距離を測定後、所定時間スリープし、前記距離を所定間隔ごとに測定する測距端末。」
とすることを含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

本件補正について検討する。
本件補正は、
本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「測距端末」について、「前記距離を測定後、所定時間スリープし、前記距離を所定間隔ごとに測定する」と限定するものである。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。

2 引用例及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2013/0044612号明細書(2013年2月21日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「[0016] FIG. 1 shows an autonomous ranging system 100, according to an embodiment. The system 100 includes two mobile devices 110 and 120 separated by a distance D. 」
(当審訳:[0016] 図1は、自動測距装置100の実施形態を示す図である。自動測距装置100は、距離Dだけ分離されたモバイル装置110および120を含む。)

「[0020] The first mobile device 110 is configured to calculate the distance D to the second mobile device 120 based on a round trip time (RTT) associated with the system 100. The RTT represents the total time elapsed from the time the data packet 151 is transmitted from mobile device 110 to the time the reply packet 153 is received by mobile device 110. The RTT can also be represented, for example, based on a signal propagation time (tpn) and a processing delay time (tdel) for the ranging system 100:
RTT=tpn+tdel (1)
・・・
The distance D between the first mobile device 110 and the second mobile device 120 can then be expressed as:
D=c*tpn/2=c*(RTT-tdel)/2 (2)
where c is the speed of light. For some embodiments, the value of RTT can be measured by the first mobile device 110 a plurality of times to generate an average round trip time value (RTTav), in which case the value of RTTav is used in Equation (2) instead of a single measured value RTT. In this manner, the first mobile device 110 is able to “autonomously” (i.e., without a Wi-Fi access point) determine the distance D to the second mobile device 120.」
(当審訳:[0020] 第1モバイル装置110は、自動測距装置100に関連するラウンドトリップ時間(RTT)に基づいて第2モバイル装置120までの距離Dを計算するように構成される。RTTは、データパケット151が、モバイル装置110から送信された時刻から、応答パケット153が、モバイル装置110によって受信された時刻までに経過した合計時間を表す。RTTは、例えば、信号伝播時間(tpn)および自動測距装置100のための処理遅延(tdel)に基づくことができる。
RTT=tpn+tdel (1)
・・・
第1モバイル装置110と第2モバイル装置120との間の距離Dは、次のように表すことができる。
D=c*tpn/2=c*(RTT-tdel)/2 (2)
ここで、cは光の速度である。いくつかの実施形態では、RTT値は、平均往復時間値(RTTav)を生成するために、複数回、第1のモバイル装置110によって測定することができ、この場合、RTTavの値は、単一の測定値RTTの代わりに式(2)で使用される。このようにして、第1のモバイル装置110は”自律的”に(すなわち、Wi-Fiアクセスポイントなしで)第2のモバイル装置120までの距離Dを決定することができる。)

「[0022] FIG. 2 shows a more detailed embodiment of the mobile device 110 shown in FIG. 1. The mobile device 110 includes a controller 212, a receiver/transmitter 214, and a range finder 216. The receiver/transmitter 214 includes circuitry for transmitting and receiving wireless data signals according to Wi-Fi or other known wireless protocols.

(当審訳:[0022] 図2は、図1に示したモバイル装置110のより詳細な実施形態を示している。モバイル装置110は、コントローラ212、受信機/送信機214、測距装置216を備えている。受信機/送信機214は、Wi-Fiまたはその他の既知の無線プロトコルに従って無線データ信号を送信および受信するための回路を含む。)

「[0023] The range finder 216 determines the distance from the mobile device 110 to another mobile device. For example, when the receiver/transmitter 214 transmits a data packet to another mobile device, the range finder 216 can detect and store the time instant at which the data packet 151 is transmitted from the mobile device 110. Similarly, when the receiver/transmitter 214 receives a reply packet from another mobile device, the range finder 216 can also detect and store the time instant at which the reply packet 153 is received at the mobile device 110. The range finder 216 can then calculate the RTT value based on the transmit time of the data packet and the receive time of the reply packet, according to Equation 1, and determine the distance D to the other mobile device based on the RTT value and the processing delay time tdel associated with the other mobile device, according to Equation 2.」
(当審訳:[0023] 測距装置216は、モバイル装置110から他のモバイル装置までの距離を決定する。例えば、受信機/送信機214が、他のモバイル装置にデータパケットを送信すると、測距装置216は、データパケット151が、モバイル装置110から送信された時刻を検出し記憶することができる。同様に、受信機/送信機214が、他のモバイル装置からの応答パケットを受信すると、測距装置216は、応答パケット153が、モバイル装置110において受信される時刻を検出し記憶することができる。測距装置216は、式1に従って、データパケットの送信時刻及び応答パケットの受信時刻に基づいてRTT値を計算し、RTT値及び他のモバイルデバイスと関連付けられた処理遅延時間tdelに基づいて、式2にしたがって他のモバイル装置に対する距離Dを決定する。)

したがって、上記引用例1に記載された事項及び図面の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用例1の記載箇所である。)。
「モバイル装置110は、受信機/送信機214、測距装置216を備えており、
受信機/送信機214は、無線データ信号を送信および受信するための回路を含み([0022])、
測距装置216は、モバイル装置110から他のモバイル装置までの距離を決定し、
距離の決定は、受信機/送信機214が、他のモバイル装置にデータパケットを送信すると、測距装置216は、データパケット151が、モバイル装置110から送信された時刻を検出し記憶することができ、受信機/送信機214が、他のモバイル装置からの応答パケットを受信すると、測距装置216は、応答パケット153が、モバイル装置110において受信される時刻を検出し記憶することができ、測距装置216は、データパケットの送信時刻及び応答パケットの受信時刻に基づいて([0023])、送信時刻から受信時刻までの合計時間であるRTT値を計算し、RTT値に基づいて、他のモバイル装置に対する距離Dを決定することができ([0020]、[0023])、
RTT値は、平均往復時間値(RTTav)を生成するために、複数回、測定することができ、単一の測定値の代わりに使用される([0020])
モバイル装置110。」

(2)原査定の備考欄で周知技術を示す文献として引用され、出願日前に頒布された刊行物である特開2002-267752号公報(平成14年9月18日公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。
「【0098】尚、この処理は、例えば、複数の測距データ(時間)の中心(平均時間)から所定時間以上離れた時間を表す測距データを検索し、その測距データを、不良データとして設定する、といった手順で実行される。つまり、同じ測距ポイントで時間測定を行っても、各測距データは外乱(ノイズ)等によってばらつくことから、ここでは、測距データの中心から大きく外れた測距データを、外乱の影響を受けた不良データとして設定するのである。」

「【0107】一方、CPU2は、各測距ポイントでの距離測定を行う際に、PN符号に対応したレーザ光を発光部14から出射させて、反射光が受光される迄の時間を測定する測距動作を、複数回行い、その測距動作により得られた複数の測距データの平均値(平均時間)から、測定対象物までの距離を演算する。また、CPU2は、複数の測距データの平均値を算出する際には、複数の測距データの中心から大きくずれた測距データを不良データとして削除する。このため、本実施例によれば、このCPU2の動作によっても、耐ノイズ性を向上して、距離測定精度を高くすることができる。」

(3)出願日前に頒布された刊行物である特開2010-160017号公報(平成22年7月22日公開、以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)
「【0034】
図5に示すように、車両側装置20において一定時間スリープ状態が続いた後(ステップS501)、質問電波が携帯機30に送信される(ステップS502)。携帯機30において質問電波を受信すると(ステップS551)、質問電波に含まれるID情報と携帯機30とのID情報とが一致するか判定され、これらID情報が一致する場合には応答信号を自車に送信すると判断され(ステップS552:Yes)、応答電波が車両側装置20に対して送信される(ステップS553)。応答信号を送信すると、携帯機30は、応答信号の送信先である車両側装置20との距離を測定するモード(測距モード)に移行する(ステップS554)。
【0035】
次に、携帯機30からの応答信号を受信し(ステップS503)、車両側装置20が設けられた車両11に対応する携帯機30からの応答がある場合(ステップS504:Yes)、当該携帯機30との距離を測定する測距モードに移行する(ステップS505)。なお、自車両11に対応する携帯機30からの応答が無い場合には(ステップS504:No)、間欠的に質問電波の送信が行われる。
【0036】
測距モード(ステップS505、ステップS554)においては、各レーダー回路22により、各アンテナ21から送信信号が送信され、携帯機30から返信される返信信号を受信して自装置が送信した各送信信号及び受信した各返信信号の位相差から各アンテナ21と携帯機30との個別距離情報が測定され、測距部23により、これら個別距離情報に基づいて車両11と携帯機30との距離情報が測定される。車両11と携帯機30との測距処理が完了すると(ステップS506、ステップS555)、測距部23により測距完了信号がCPU24に送られる(ステップS507)。
【0037】
次に、CPU24により、測距部23が測定した距離情報と、GPS装置26から受けた車両11の絶対方位情報及び位置情報とに基づいて、車両11と携帯機30との測位計算が行われ、測位変換される(ステップS508、ステップS509)。そして、車両11と携帯機30との相対方位情報及び距離情報は、携帯機30に送信される(ステップS510)。
【0038】
車両側装置20からの相対方位情報及び距離情報を受信すると(ステップS556)、情報出力部34によりこれら相対方位情報及び距離情報が表示・音声出力される(ステップS557)。そして、相対方位情報及び距離情報に従って、携帯機30を所有するユーザは、車両11に近づきながら車両の位置を探索する。
【0039】
次に、車両11と携帯機30との距離が車両11のドア11aのロックを解除する解除距離にまで近づくと(ステップS511:Yes)、ロック解除システム27により、携帯機30が近付いてくる側のドア11aのロックが解除され(ステップS512)、携帯機30に対してドアロック解除信号が送信される(ステップS513)。そして、携帯機30において、ドアロック解除信号が受信され(ステップS558)、ドアロック解除がされたか否か確認される(ステップS559)。」

ここで、引用例3の「車両側装置20」は、「測距部23により、」「車両11と携帯機30との距離情報が測定される。」(【0036】)ので、測距装置である。
そして、図5の記載を参酌すると、「距離情報が測定され」「車両11と携帯機30との測距処理が完了すると(ステップS506、ステップS555)」(【0036】)、ステップS511へ行き、解除距離(ステップS511)がNOの場合、ステップS501へ行き、「車両側装置20において一定時間スリープ状態が続いた後(ステップS501)」(【0034】)、「測距モードに移行する(ステップS505)」(【0035】)ことが読み取れるので、引用例3には、次の周知技術が記載されている。
「測距装置において、距離情報を測定後、一定時間スリープし、距離情報を一定時間ごとに測定する技術。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「データパケット151」、「他のモバイル装置」、「応答パケット153」、「受信機/送信機214」、「測距装置216」、「モバイル装置110」は、それぞれ、本願補正発明の「測定信号」、「応答端末」、「測定応答信号」、「測距端末側通信部」、「距離算出部」、「測距端末」に相当する。

(2)引用発明の「他のモバイル装置にデータパケットを送信」し、「他のモバイル装置からの応答パケットを受信する」「受信機/送信機214」は、本願補正発明の「測定信号を応答端末へ送信し、前記応答端末から測定応答信号を受信する測距端末側通信部」に相当する。

(3)引用発明の「データパケット151が、モバイル装置110から送信された時刻」である「送信時刻から」、「応答パケット153が、モバイル装置110において受信される時刻」である「受信時刻までの合計時間であるRTT値を計算」する「測距装置216」は、本願補正発明の「前記測距端末側通信部が前記測定信号を送信した送信時刻から前記測定応答信号を受信した受信時刻までの時間を算出する距離算出部」に相当する。

(4)引用発明の「受信機/送信機214、測距装置216を備え」る「モバイル装置110」は、本願補正発明の「測距端末側通信部と、」「距離算出部と、を有する測距端末」に相当する。

(5)引用発明の「測距装置216は、」「RTT値は、平均往復時間値(RTTav)を生成するために、複数回、測定することができ、単一の測定値の代わりに使用」し、「RTT値に基づいて、他のモバイル装置に対する距離Dを決定する」と、本願補正発明の「前記距離算出部は、所定回数、前記時間を算出した後、算出した時間の内、各時間に基づいて算出した距離が正常でない値となる時間を除外した各時間の平均値に基づき、前記測距端末から前記応答端末までの距離を算出し」とは、「前記距離算出部は、所定回数、前記時間を算出した後、各時間の平均値に基づき、前記測距端末から前記応答端末までの距離を算出し」の点で共通する。

すると本願補正発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。
(一致点)
「測定信号を応答端末へ送信し、前記応答端末から測定応答信号を受信する測距端末側通信部と、前記測距端末側通信部が前記測定信号を送信した送信時刻から前記測定応答信号を受信した受信時刻までの時間を算出する距離算出部と、を有する測距端末であって、
前記距離算出部は、所定回数、前記時間を算出した後、各時間の平均値に基づき、前記測距端末から前記応答端末までの距離を算出する測距端末。」

(相違点1)
所定回数、時間を算出した後、各時間の平均値に基づき距離を算出する際に、本願補正発明は、「算出した時間の内、各時間に基づいて算出した距離が正常でない値となる時間を除外し」ているのに対して、引用発明は、「平均往復時間値(RTTav)を生成」しているが、距離が正常でない値となる「RTT値」を除外するような、特定がない点。
(相違点2)
本願補正発明は、「前記距離を測定後、所定時間スリープし、前記距離を所定間隔ごとに測定する」のに対して、引用発明には、そのような特定がない点。

4 判断
(1)相違点1について
引用例2には、複数の測距データ(時間)の平均値を算出する際に、複数の測距データ(時間)の中心(平均時間)から大きくずれた測距データ(時間)を不良データとして削除する技術が記載されている。(上記「2 (2)」)
ここで、引用例2に記載された「複数の測距データ(時間)の中心(平均時間)から大きくずれた測距データ(時間)」は、「不良データ」であるので、その値は、「測距データ(時間)」が正常でない値、つまり、本願補正発明の「各時間に基づいて算出した距離が正常でない値となる時間」といえる。
そうすると、例えば、引用例2に記載されているように、複数の測距データ(時間)の平均値を算出する際に、距離が正常でない値となる時間を除外することは周知技術であるといえる。
引用発明は、「平均往復時間値(RTTav)を生成」し、「他のモバイル装置に対する距離Dを決定する」ものであるから、「複数の測距データ(時間)の平均値の算出」に関する上記周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、「平均往復時間値(RTTav)を生成」する際に、距離が正常でない値となる「RTT値」を除外し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
測距装置において、距離情報を測定後、一定時間スリープし、距離情報を一定時間ごとに測定する技術は周知である(引用例3、上記「2 (3)」)。
引用発明の「モバイル装置110」は「測距装置216」を備えるものであるから、上記周知技術を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由]1 本件補正」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である米国特許出願公開第2013/0044612号明細書(引用例1)、特開2002-267752号公報(引用例2)、特開平5-256943号公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例記載の事項
引用例の記載事項及び引用発明は、上記「第2 [理由] 2 引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。

4 判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 [理由] 1 本件補正」で検討した本件補正に係る限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 [理由] 4 判断」に示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-02 
結審通知日 2018-07-03 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2013-191170(P2013-191170)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 575- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中村 説志
須原 宏光
発明の名称 測距端末および測距システム  
代理人 筒井 大和  

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