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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63H 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63H |
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管理番号 | 1343739 |
審判番号 | 不服2017-12418 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-22 |
確定日 | 2018-09-18 |
事件の表示 | 特願2014- 98786「ラジオコントロール送信機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日出願公開、特開2015- 91294、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成26年5月12日(優先権主張日:平成25年9月30日)を出願日とする特許出願であって、平成29年3月8日付けで拒絶理由が通知され、平成29年4月28日付けで手続補正がされ、同年6月9日(送達日:同年6月20日)付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年8月22日に拒絶査定不服審判が請求され、これと同時に手続補正がされ、当審で平成30年4月16日付けで拒絶理由を通知し、同年5月10日付けで手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。 本願の請求項1ないし6に係る発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、本願の請求項7に係る発明は、引用文献1、2、3に記載された発明に基づいて、本願の請求項8ないし10に係る発明は、引用文献1、2、3、4に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特公平3-65054号公報 2.特開平9-35584号公報 3.特開2001-62160号公報 4.実願昭59-75215号(実開昭60-187434号)のマイクロフィルム 第3 当審の拒絶理由(平成30年4月16日付)の概要 当審において平成30年4月16日付で通知した拒絶理由(以下、「当審の拒絶理由」という。)の概要は以下のとおりである。(応対記録参照。) 1.請求項1の「機能するスイッチ」の「機能」の意味が不明であり、「スイッチに設定した内容をオン」(【0064】)の意味なのか不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2.請求項2の「擬似的なスイッチ」はオンの機能は持たないから、オンの機能をもつスイッチと同じ請求項で特定するのは、矛盾しており、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3.当初明細書、請求項には、「擬似的なスイッチ」固有の事項と説明されている、請求項6,7の前記発明特定事項は、「擬似的なスイッチ」以外のスイッチも対象とするのか否か明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第4 本願発明 本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成30年5月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 被操縦体の移動速度を制御する引き金形状のトリガーを備え、前記被操縦体に操縦信号を送信するラジオコントロール送信機において、 前記トリガーの一部が当接した状態から更に前記トリガーの押下によって所定の変位が生じて内部接点がオンしたときに、前記被操縦体の特殊な動作を実行する信号を送信するスイッチを備えたことを特徴とするラジオコントロール送信機。 【請求項2】 被操縦体の移動速度を制御する引き金形状のトリガーを備え、前記被操縦体に操縦信号を送信するラジオコントロール送信機において、 前記トリガーが当接しているか操縦者が認識できる程度の弾性を有する弾性部材からなり、前記トリガーの操作により該トリガーの一部が前記弾性部材に当接して前記操縦者の手に伝わる負荷が変化する疑似的なスイッチを備え、 前記トリガーの一部が前記弾性部材に当接して前記操縦者の手に伝わる負荷が変化したときに前記被操縦体の特殊な動作を実行する信号が送信されるように構成したことを特徴とするラジオコントロール送信機。 【請求項3】 前記トリガーにおける前記弾性部材との当接面に突起を設けたことを特徴とする請求項2記載のラジオコントロール送信機。 【請求項4】 前記弾性部材が筐体に着脱可能に設けられることを特徴とする請求項2または3に記載のラジオコントロール送信機。 【請求項5】 前記トリガーはニュートラル位置を中心として二方向に操作可能で、前記スイッチは前記トリガーを一方の方向に操作したときに押下可能な位置に備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のラジオコントロール送信機。 【請求項6】 前記トリガーは前記ラジオコントロール送信機に軸支されており、当該軸を中心として回動して、回動が所定量以上となると前記トリガーの一部が前記スイッチと当接することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のラジオコントロール送信機。」 第5 引用文献 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献1(特公平3-65054号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(以下の下線は、いずれも当審で付した。以下同じ。) (1)「<実施例> この発明のラジコン送信機について、ラジコンカーに適用される場合の実施例を図面に基づいて以下に説明する。 第1図はこの発明の実施例であるラジコン送信機の正面図である。 ラジコン送信機は、略方形で送信機本体1の左右にステイツク2,3と補助トリム4,5とが配設され、中央に電源スイツチ6が設けられている。そして、上面の左右にトリム7,8が配設されるとともに、アンテナ9が設けられている。また、送信機本体1内にはトリム補正手段10、制御手段14および送信回路(図示省略)等が内蔵されていて、被操縦体であるラジコンカーに操縦信号を送信可能となっている。 ステイツク2,3は、ラジコンカーの進行速度および進行方向を制御する操作棒であって、左ステイツク2が速度制御用で上下動可能となっており、この左ステイツク2を左手の親指で上方に上げるとラジコンカーのサーボモータの回転数が増加してスピードアツプする。一方、左ステイツク2を下げると後退しニユートラル位置において停止できるようになっている。また、右ステイツク3は方向操作用で左右動可能となっており、この右ステイツク3を右手の親指で左右動させるとラジコンカーのステアリングが左右に向きを変えてラジコンカーの進行方向が変えられるようになっている。」(2頁右欄1?28行) 前記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認定できる。 「ラジコン送信機は、略方形で送信機本体1の左右にステイツク2,3が配設され、送信機本体1内には制御手段14および送信回路等が内蔵されていて、被操縦体であるラジコンカーに操縦信号を送信可能となっており、ステイツク2,3は、ラジコンカーの進行速度および進行方向を制御する操作棒であって、左ステイツク2が速度制御用で上下動可能となっており、この左ステイツク2を左手の親指で上方に上げるとラジコンカーのサーボモータの回転数が増加してスピードアツプし、左ステイツク2を下げると後退しニユートラル位置において停止できるようになっており、右ステイツク3は方向操作用で左右動可能となっており、この右ステイツク3を右手の親指で左右動させるとラジコンカーのステアリングが左右に向きを変えてラジコンカーの進行方向が変えられるようになっているラジコン送信機。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献2(特開平9-35584号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (1)「【0014】図1は一実施形態としての車両用表示装置を示し、該車両用表示装置は入力装置1と映像装置2とをリード線50で電気的に接続して構成されている。 【0015】先ず、入力装置1について説明する。 【0016】この入力装置1は操作レバー3の上部に取り付けられた第1ジョイスティック4と、該操作レバー3の下部に設けられた第2ジョイスティック5とで構成されている。 【0017】第1ジョイスティック4の一実施形態を図2,図3に示している。ケース6内の上部にガイド板7が、下部にばね受け8が取り付けられている。このガイド板7には放射状に八方向(図1のa1?a8)に向くガイド溝9が形成され、このガイド溝9の基端部にスイッチ10が設けられている。操作棒11はガイド溝9およびばね受け8の孔12を通り前記ケース6の上部の操作孔13より上方に突出している。この操作棒11の下端に球状部11aが形成され、この球状部11aは前記ケース6の底部に取り付けられたプッシュスイッチ14に接している。操作棒11はばね受け8との間にかけられた引張りばね15により下方に付勢されている。ガイド板7上にはゴムブッシュ16が取り付けられ、操作棒11を引張りばねと共に起立状態のニュートラル位置に保持している。 【0018】なお、図2の符号18は操作孔13からケース6内に塵埃等の異物の侵入を防ぐための柔軟性カバーである。 【0019】図2のニュートラル位置から、操作棒11を所望の方向に傾けると、操作棒11は球状部11aを支点としてガイド溝9に沿って揺動し、スイッチ10をオンにする。又、操作棒11を下に強く押すと球状部11aがプッシュスイッチ14を押し、これをオンにすることができる。操作棒11を傾けると引張りばね15も同時に傾いて引張られ、このときばね力が操作棒11をニュートラル位置の方向へ復元させるように働く。ゴムブッシュ16は操作棒11の揺動と共に伸縮し、そのときに生じる復元力が操作棒11をニュートラル位置に安定的に保持するようになっている。」 (2)「【0024】このように構成された第2ジョイスティック5は、操作レバー3をガイド溝22に沿って揺動させると、摺動片26もスライド抵抗25に沿って摺動し、その抵抗値を可変させると共に、最終的にリミットスイッチ28に接触してこれをオンさせる。圧縮ばね27により操作レバー3はニュートラル位置に復帰することができる。 【0025】次に、映像装置2について説明する。 【0026】映像装置2は正方体サイコロ状の表示部30を備えている(図1参照)。この表示部30の六面にはスイッチメニューの画面A?Fが三次元表示されるようになっている。前記画面Aはスイッチ選択画面であり、前記第1ジョイスティック4で実際に実行できるスイッチの内容、例えばエアコンの画面であれば、温度、風向、風量等の内容がA0ないしA8に表示されるようになっている。画面B、Cは画面Aと同様にスイッチ内容、例えばラジオ、CD、ナビゲーション等が表示されているが、直接第1ジョイスティック4では動作せず、後述するように前記第2ジョイスティック5を使用して画面Aの位置に画像移動させる必要がある。画面D,EおよびFは画面Aと同様九個のスイッチがあるが、ここでは例えば、エアコン、ラジオ、ナビゲーション等の画面のスイッチ内容を絵や文字で表示するだけであり、スイッチ操作させるためには画面Aに、又、具体的な内容を見る場合は画面B,Cに各々画像移動させる必要がある。このような表示部30は、CRT,ヘッドアップディスプレイ(HUD),ホライズンのいずれでもよい。 【0027】図9、図10において、前記第1ジョイスティック4のプッシュスイッチ14、スイッチ10および第2ジョイスティック5のリミットスイッチ28の出力は入出力制御装置(I/0)31から中央処理ユニット(CPU)32に入力される。第2ジョイスティック5のスライド抵抗25の出力はA/D変換装置(A/D)33でデジタル信号に変換されCPU32に入力される。メモリ34には第1ジョイスティック4、第2ジョイスティック5の内容が記憶され、映像装置2はCPU32の出力で動作する。 【0028】このように構成された車両用表示装置は次のように作動する。 【0029】初期状態は、表示部30の画面Aの中心A0が他のA1?A8とは異なった色で区別されている。第1ジョイスティック4の操作棒11を傾けるとその方向にカーソルが移動する。例えば左斜め(図1のa1方向)に操作棒11を移動させると、A1にカーソルが移動する。この位置で操作棒11を下方に押しプッシュスイッチ14をオンさせることにより、A1の内容を実行できる。 【0030】画面Bを選択するには、図11に示すように入力装置1の操作レバー3を起立状態(図11(a))から左に倒す(図11(b))と、スライド抵抗25の抵抗値が可変し、これに伴って第2ジョイスティック5の出力電圧値V2が図12のようにV2MからV2Lに変化する。この出力をA/D変換装置33でA/D変換し、CPU32に入力し、CPU32はスライド抵抗25の抵抗値(実際は電圧値V2)に応じて映像装置2の表示部30の画面Bが左に画像移動する。リミットスイッチ28がオンになると、表示部30の画像移動は止まり、画面Bが前の画面Aの位置になり(図11(c)),中心のB0(即ちA0)にカーソルが移り点灯する。この位置で例えばB1(移動後はA1)を選択するには、第1ジョイスティック4の操作棒11でカーソルをA1に移動させ、プッシュスイッチ14をオンさせればB1の内容を実行できる。」 前記の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認定できる。 「車両用表示装置は入力装置1と映像装置2とをリード線50で電気的に接続して構成され、入力装置1は操作レバー3の上部に取り付けられた第1ジョイスティック4と、該操作レバー3の下部に設けられた第2ジョイスティック5とで構成され、第1ジョイスティック4のニュートラル位置から、操作棒11を所望の方向に傾けると、操作棒11は球状部11aを支点としてガイド溝9に沿って揺動し、スイッチ10をオンにし、又、操作棒11を下に強く押すと球状部11aがプッシュスイッチ14を押し、これをオンにすることができるものであり、第2ジョイスティック5は、操作レバー3をガイド溝22に沿って揺動させると、摺動片26もスライド抵抗25に沿って摺動し、その抵抗値を可変させると共に、最終的にリミットスイッチ28に接触してこれをオンさせることができるものであり、初期状態は、表示部30の画面Aの中心A0が他のA1?A8とは異なった色で区別され、第1ジョイスティック4の操作棒11を傾けるとその方向にカーソルが移動し、A1にカーソルが移動しこの位置で操作棒11を下方に押しプッシュスイッチ14をオンさせることにより、A1の内容を実行でき、画面Bを選択するには、入力装置1の操作レバー3を起立状態から左に倒すと、スライド抵抗25の抵抗値が可変し、これに伴って第2ジョイスティック5の出力電圧値V2が変化し、この出力をA/D変換装置33でA/D変換し、CPU32に入力し、CPU32はスライド抵抗25の抵抗値(実際は電圧値V2)に応じて映像装置2の表示部30の画面Bが左に画像移動し、リミットスイッチ28がオンになると、表示部30の画像移動は止まり、画面Bが前の画面Aの位置になり中心のB0にカーソルが移り点灯する車両用表示装置。」 3.原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献3(特開2001-62160号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。 「【0016】 【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態にかかるラジコン送信機について詳細に説明する。図1は、この発明の実施形態であるラジコン送信機の右側面図である。ラジコン送信機1は、被制御機であるラジコンカーの速度をコントロールするスロットルトリガ2(以下、単にトリガ2と言う。)、上記ラジコンカーの進行方向をコントロールするステアリングホイール3、ラジコンカーへコントロール信号を送信するためのアンテナ4等を備えている。また、5は操作者が(左手で)握るグリップである。このラジコン送信機1は、周知のホイラー&グリップタイプであり、トリガ2は外力が加わっていないときにニュートラル位置に戻るように構成されている。」 前記の記載事項を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認定できる。 「ラジコン送信機1は、被制御機であるラジコンカーの速度をコントロールするトリガ2、上記ラジコンカーの進行方向をコントロールするステアリングホイール3、ラジコンカーへコントロール信号を送信するためのアンテナ4等を備えているラジコン送信機。」 4.原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献4(実願昭59-75215号(実開昭60-187434号)のマイクロフィルム)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (1)「第1図は本考案に係る多接点レバースイツチの一実施例を示す正面図、第2図は底面図である。この多接点レバースイツチはテレビゲーム機械の操作パネルの裏面(図示せず)に固定されるレバープレート1と、このレバープレート1の裏面側に適宜の間隔を保つて配置されるガイドプレート取付板2と、このガイドプレート取付板2に固定されると共にその中央部に操作レバー4の操作方向を規制する八方向花弁形のガイド孔3aを有するガイドプレート3と、このガイドプレート3のガイド孔3aにその先端部4aを貫通して配設しレバープレート1に固定された軸受5を支点にしガイド孔3a周縁に沿つて前後左右、斜前後左右に傾動自在にかつ回動自在に操作することのできる操作レバー4と、この操作レバー4を傾動操作することによつて操作レバー4のシヤフトに挿着された円筒体4bによりアクチユエータ6bが押圧され選択的に開閉制御される4個のリミツトスイツチ6とによつて構成されている。例えば操作レバー4を第1図において前方に傾動すると操作レバー4の傾動側周面に対向するリミツトスイツチ6(以下前方スイツチと呼ぶ)のアクチユエータ6bが円筒体4bに押圧され前方スイツチがオンするようになつている。同様に操作レバー4を後、左、右に夫々傾動すると傾動側周面に対向するリミツトスイツチ6(以下夫々後スイツチ,左スイツチ,右スイツチと呼ぶ)がオンするようになつている。また、操作レバー4を斜前方左に傾動すると操作レバー4の傾動側周面に対向する前方スイツチと左スイツチがオンするようになつており、同様にして斜前方右、斜後方左右に傾動すると、それに応じて各リミツトスイツチ6が同様にオンするようになつている。操作レバー4の先端部4aは第3図にその詳細な一部破断正面図を示す様に操作レバー4のシヤフトを兼ねる内部電極41と、この内部電極41に絶縁ワツシヤ42を挾んで嵌装された円筒状の外部電極43と、内部電極41と外部電極43との間に介在し圧力を加えることによつて抵抗が減少する導電性弾性ゴム等よりなる感圧体44とにより形成され、内部電極41の先端部は外部電極43が抜け落ちない様にワツシヤ45を介してナツト46が螺着されている。そして、内部電極41の先端部と外部電極43の外周とは、感圧体44の抵抗の変化を検出して電圧のオン・オフに変換して端子7cより出力するボルテージコンパレータ回路7の入力端子7a,7bに夫々接続されている。このボルテージコンパレータ回路7は、第4図にその詳細な回路図を示す様に可変抵抗器VR1でそのコンパレートレベルを変化させて設定することができ、感圧体44に加わる圧力が設定された所定圧力を越えると電圧のオン信号として端子7cより出力するようになつている。そして、この出力は第5図の様に図示せぬテレビゲーム機械に設けられたアンドゲート8a?8lよりなるデコーダ部8に端子9より入力されるようになつている。また端子10には各リミツトスイツチ6のうち右方スイツチの出力が、端子11には左方スイツチの出力が、端子12には後方スイツチの出力が、端子13には前方スイツチの出力が夫々入力されるようになつており、操作レバー4を傾動操作することによつて出力端子14?29より後述するように16の状態の情報を得ることができるようになつている。 以下、このように構成された本考案の多接点レバースイツチの動作を説明する。第6図は操作レバー4を傾動操作した時の状態を示す一部破断正面図であり、操作レバー4を傾動操作するとその先端部4aはガイドプレート3のガイド孔3a周縁に接触する。すると各リミツトスイツチ6は操作レバー4の傾動方向に応じてオンし、端子10?13よりデコーダ部8にその信号が入力される。さらに、操作レバー4に圧力を加えるとその先端部4aはガイド孔3a周縁に圧接し、内部電極41と外部電極43の間に介在する感圧体44にも圧力が加わる。そして、操作レバー4に加えた圧力に応じて感圧体44の抵抗値が減少し、その抵抗値に応じた電圧がボルテージコンパレータ回路7に入力され可変抵抗器VR1によつて設定された所定電圧と比較される。そして、感圧体44の抵抗値に応じた電圧が所定電圧を越えると所定圧力を越えたとみなされ、端子7cより電圧のオン信号として出力され端子9を介してデコーダ部8に入力される。」(3頁19行?8頁1行) 前記の記載事項を総合すると、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認定できる。 「多接点レバースイツチは、前後左右、斜前後左右に傾動自在にかつ回動自在に操作することのできる操作レバー4と、この操作レバー4を傾動操作することによつて操作レバー4のシヤフトに挿着された円筒体4bによりアクチユエータ6bが押圧され選択的に開閉制御される4個のリミツトスイツチ6とによつて構成され、操作レバー4の先端部4aは、操作レバー4のシヤフトを兼ねる内部電極41と、この内部電極41に絶縁ワツシヤ42を挾んで嵌装された円筒状の外部電極43と、内部電極41と外部電極43との間に介在し圧力を加えることによつて抵抗が減少する導電性弾性ゴム等よりなる感圧体44とにより形成され、内部電極41の先端部と外部電極43の外周とは、感圧体44の抵抗の変化を検出して電圧のオン・オフに変換して端子7cより出力するボルテージコンパレータ回路7に接続され、操作レバー4を傾動操作すると、各リミツトスイツチ6は操作レバー4の傾動方向に応じてオンし、その信号が入力され、さらに、操作レバー4に圧力を加えると感圧体44にも圧力が加わり、操作レバー4に加えた圧力に応じて感圧体44の抵抗値が減少し、感圧体44の抵抗値に応じた電圧が所定電圧を越えると所定圧力を越えたとみなされ、電圧のオン信号として入力される多接点レバースイツチ。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ラジコン送信機」は、本願発明1の「ラジオコントロール送信機」に相当し、以下同様に「ラジコンカー」は「被操縦体」に、「操縦信号」は「操縦信号」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1は「この左ステイツク2を左手の親指で上方に上げるとラジコンカーのサーボモータの回転数が増加してスピードアツプし、左ステイツク2を下げると後退しニユートラル位置において停止できるようになって」いるから、引用発明1は本願発明1と同様に「被操縦体の移動速度を制御」しているといえる。 したがって、両者は、 「被操縦体の移動速度を制御し、前記被操縦体に操縦信号を送信するラジオコントロール送信機」の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1:「被操縦体の移動速度を制御する」事項に関して、本願発明1が「引き金形状のトリガーを備え」ているのに対して、引用発明1の「左スティック2」の形状は、「引き金形状」とはいえない点。 相違点2:本願発明1には、「トリガーの一部が当接した状態から更に前記トリガーの押下によって所定の変位が生じて内部接点がオンしたときに、前記被操縦体の特殊な動作を実行する信号を送信するスイッチ」が備えられているのに対して、引用発明1には、備えられていない点。 (2)判断 次に、前記相違点2についてまず検討する。 ア.本願発明1の発明特定事項である「被操縦体の移動速度を制御する引き金形状のトリガー・・・前記トリガーの一部が当接した状態から更に前記トリガーの押下によって所定の変位が生じて内部接点がオンしたときに、前記被操縦体の特殊な動作を実行する信号を送信するスイッチを備えた」ことに対して、引用発明2の「第1ジョイスティック4」と、「第2ジョイスティック5」は、それぞれ「第1ジョイスティック4のニュートラル位置から、操作棒11を所望の方向に傾けると、操作棒11は球状部11aを支点としてガイド溝9に沿って揺動し、スイッチ10をオンにし、又、操作棒11を下に強く押すと球状部11aがプッシュスイッチ14を押し、これをオンにすることができるもの」、「第2ジョイスティック5は、操作レバー3をガイド溝22に沿って揺動させると、摺動片26もスライド抵抗25に沿って摺動し、その抵抗値を可変させると共に、最終的にリミットスイッチ28に接触してこれをオンさせることができるもの」であるが、前記「プッシュスイッチ14」、「リミットスイッチ28」は、それぞれ「プッシュスイッチ14をオンさせることにより、A1の内容を実行でき」、「リミットスイッチ28がオンになると、表示部30の画像移動は止まり、画面Bが前の画面Aの位置になり中心のB0にカーソルが移り点灯する」ものであって、前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項である「スイッチ」のように「被操縦体の特殊な動作を実行する信号を送信する」ものではない。 イ.引用発明3の「トリガ2」は、前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項である「トリガー」のように「被操縦体の特殊な動作を実行する信号を送信するスイッチを備え」るものではない。 ウ.本願発明1の発明特定事項である「被操縦体の移動速度を制御する引き金形状のトリガー・・・前記トリガーの一部が当接した状態から更に前記トリガーの押下によって所定の変位が生じて内部接点がオンしたときに、前記被操縦体の特殊な動作を実行する信号を送信するスイッチを備えた」ことに対して、引用発明4の「多接点レバースイツチ」の「操作レバー4を傾動操作すると、各リミツトスイツチ6は操作レバー4の傾動方向に応じてオンし、」「さらに、操作レバー4に圧力を加えると・・・電圧のオン信号として入力される」ものであり、前記「操作レバー4に圧力を加えると・・・電圧のオン信号として入力される」ことは、スイッチの機能をもつといえるが、該スイッチの機能がオンすれば「電圧のオン信号として入力される」ものであって、前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項である「スイッチ」のように「被操縦体の特殊な動作を実行する信号を送信する」ものではない。 よって、引用発明2、3、4にも、前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は開示されていないし、これを示唆するものもない。 そして、本願発明1は前記相違点2に係る発明特定事項を備えることによって、「操作部(引き金形状のトリガー)と連動してスイッチを操作することができるので、競技中等の細かな操作が要求される場面でもスイッチに割り当てた機能を容易に実現することができる。」(段落【0018】参照。)という作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明2について (1)対比 本願発明2と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ラジコン送信機」は、本願発明1の「ラジオコントロール送信機」に相当し、以下同様に「ラジコンカー」は「被操縦体」に、「操縦信号」は「操縦信号」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1は「この左スティック2を左手の親指で上方に上げるとラジコンカーのサーボモータの回転数が増加してスピードアップし、一方、左スティック2を下げると後退しニュートラル位置において停止できるようになって」いるから、引用発明1は本願発明1と同様に「被操縦体の移動速度を制御」しているといえる。 したがって、両者は、 「被操縦体の移動速度を制御し、前記被操縦体に操縦信号を送信するラジオコントロール送信機」の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1:本願発明1と同様。 相違点3:本願発明2の「前記トリガーが当接しているか操縦者が認識できる程度の弾性を有する弾性部材からなり、前記トリガーの操作により該トリガーの一部が前記弾性部材に当接して前記操縦者の手に伝わる負荷が変化する疑似的なスイッチを備え、 前記トリガーの一部が前記弾性部材に当接して前記操縦者の手に伝わる負荷が変化したときに前記被操縦体の特殊な動作を実行する信号が送信されるように構成した」ことが、引用発明1には備えられていない点。 (2)判断 次に、前記相違点3についてまず検討する。 引用発明2、3、4にも、前記相違点3に係る本願発明2の発明特定事項である「疑似的なスイッチ」は開示されていないし、これを示唆するものもない。 そして、本願発明2は前記相違点3に係る発明特定事項を備えることによって、「このように、実施例8および実施例9の擬似的スイッチ26,36a,36bを用いた構成によれば、電子スイッチや配線の必要が無く、メカニカルな機構のみで構成でき、構成の簡素化を図ることができる。また、操作部材(トリガー、スティック)の操作時に直接手に伝わる負荷の変化により、例えば燃料を重視した走行などでフルスロットルを感触的に確認することができる。」(段落【0079】】参照。)という作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明2は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明3ないし6について 前記「第4」のとおり、本願発明3ないし6は、それぞれ本願発明1、2をさらに限定するものであるから、本願発明1、2についてと同様の理由で、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定について 前記「第6」で検討したとおり、本願発明1ないし6は、引用発明1、2、3、4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由通知について 1.平成30年5月10日付けで手続補正により、請求項1の「機能するスイッチ」は、「スイッチ」と補正された。 よって、請求項1の「機能するスイッチ」の「機能」の意味が明確ではないとの拒絶理由は、前記手続補正前の請求項1の「機能するスイッチ」から「機能する」が削除されて「スイッチ」と補正されたことにより解消された。 2.平成30年5月10日付けで手続補正により、「擬似的なスイッチ」を発明特定事項とする請求項2は、請求項1を引用する従属項から、独立項に補正された。 よって、「擬似的なスイッチ」はオンの機能は持たないから、オンの機能をもつスイッチと同じ請求項で特定するのは、矛盾しているとの拒絶理由は、前記の補正により解消された。 3.平成30年5月10日付けの手続補正により、「トリガーにおける前記弾性部材との当接面に突起を設けたこと」、「弾性部材が筐体に着脱可能に設けられること」をそれぞれ発明特定事項とする拒絶査定時の請求項6、7(平成29年8月22日付け手続補正書)は、「擬似的なスイッチ」を発明特定事項とする独立請求項である請求項2を引用する請求項3、4にそれぞれ補正された。 よって、当初明細書、請求項には、「擬似的なスイッチ」固有の事項と説明されている、請求項6,7の前記発明特定事項は、「擬似的なスイッチ」以外のスイッチも対象とするのか否か明確ではないとの拒絶理由は解消された。 第9 むすび 以上のとおりであるから、本願発明1ないし6は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-08-17 |
出願番号 | 特願2014-98786(P2014-98786) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A63H)
P 1 8・ 537- WY (A63H) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 古川 直樹、古屋野 浩志 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 吉村 尚 |
発明の名称 | ラジオコントロール送信機 |
代理人 | 西村 教光 |
代理人 | 鈴木 典行 |