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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61K |
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管理番号 | 1343753 |
審判番号 | 不服2017-14113 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-09-25 |
確定日 | 2018-10-01 |
事件の表示 | 特願2013- 38106「整髪料」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 8日出願公開、特開2014-162788、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年2月28日の出願であって、平成28年11月17日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年1月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は、次のとおりである。 本願請求項1?7及び9に係る発明は、以下の引用文献1、2及び5?10に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2005-239557号公報 2.特開2003-342130号公報 5.特開2010-202622号公報(周知技術を示す文献) 6.特開2007-015935号公報(周知技術を示す文献) 7.特開平02-129118号公報(周知技術を示す文献) 8.特開平06-009353号公報(周知技術を示す文献) 9.特開平07-277915号公報(周知技術を示す文献) 10.特表平05-506653号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1?9に係る発明は、平成29年9月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明であると認める(以下、本願請求項1?9に係る発明を、それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。また、これらをまとめて「本願発明」ということもある。)。 「【請求項1】 ケイソウ土、カオリンおよびシリカから選ばれる2種以上の無機粉体、揮発性油、25℃で固体のロウまたは炭化水素、並びに25℃で液体の油が配合されており、上記無機粉体の配合量が5?10質量%であり、 ケイソウ土、カオリンおよびシリカが配合されていることを特徴とする整髪料。 【請求項2】 25℃で固体のロウまたは炭化水素として、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、モクロウ、ラノリン、パラフィン、セレシンおよびマイクロクリスタリンワックスから選ばれる1種または2種以上が配合されている請求項1に記載の整髪料。 【請求項3】 25℃で液体の油として、エステル、シリコーンまたは植物油が配合されている請求項1または2に記載の整髪料。 【請求項4】 揮発性油として、シクロメチコンが配合されている請求項1?3のいずれかに記載の整髪料。 【請求項5】 揮発性油の配合量が1?30質量%である請求項1?4のいずれかに記載の整髪料。 【請求項6】 25℃で固体のロウまたは炭化水素の配合量が3?25質量%である請求項1?5のいずれかに記載の整髪料。 【請求項7】 25℃で液体の油の配合量が3?15質量%である請求項1?6のいずれかに記載の整髪料。 【請求項8】 ケイソウ土の配合量が1?8質量%、カオリンの配合量が0.1?5質量%、シリカの配合量が0.2?2質量%である請求項1?7のいずれかに記載の整髪料。 【請求項9】 クリーム状である請求項1?8のいずれかに記載の整髪料。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている 。 ・記載事項1-1 「【請求項1】下記(A)?(D) (A)下記一般式(I): 【化1】 (上式中、Rは水素または炭素数2?24のアルキル基,アルケニル基またはヒドロキシアルキル基を示し、m及びnは0以上の整数であり、m+nは20以上である)で示される酸化アルキレン付加重合体 (B)無水ケイ酸 (C)体質粉体 (D)20℃において固体または半固体のワックス を含有することを特徴とする毛髪化粧料。」 ・記載事項1-2 「【0016】本発明における(B)成分は、無水ケイ酸であり、天然には石英、メノウ、ケイ藻土として産出たものを機械的粉砕法により製造したもの、或いは工業的には湿式法、乾式法により製造される。無水ケイ酸は通常、平均粒径0.1?10μの球状或いは針状であり、かさ比重としては20?100g/Lである。無水ケイ酸は一般に市販されており、具体的には、日本アエロジル社から販売されているアエロジェル200、アエロジル200V等のアエロジルシリーズ、旭硝子社より販売されているシルデックスシリーズ等の市販品を使用することができる。 【0017】無水ケイ酸の配合量としては、毛髪化粧料の全量に対して0.1?20%が好ましく、1?10%が更に好ましい。0.1%未満では体質顔料の分散性が悪く、使用時ののびが悪くなる場合があり、また20%を超えると化粧料中へ分散できなくなる場合があり好ましくない。」 ・記載事項1-3 「【0018】本発明における(C)成分の体質粉体は、具体例を挙げると、例えば、無機粉体であるカオリン、タルク、セリサイト、マイカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどの粘土鉱物の粉砕品、窒化ホウ素などの合成セラミック、麻セルロース末、小麦デンプン、シルク末、トウモロコシデンプンなどの有機粉体、ポリエチレン末、ナイロン末、メチルシロキサン網状重合体などの合成高分子粉体、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウムなどの金属石けんがあげられる。 これら体質粉体の中でも、カオリン、タルク、セリサイト、マイカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどの粘土鉱物の粉砕品、麻セルロース末、小麦デンプン、シルク末、トウモロコシデンプンなどの有機粉体が好ましい。 【0019】本発明においては、これらの体質粉体の中から一種または二種以上を適宜選択して用いることができ、その配合量としては、毛髪化粧料の全量に対して1?50%が好ましく、5?30%が更に好ましい。1%未満では使用時ののびや感触が悪い場合があり、また50%を超えると化粧料中へ分散できなくなる場合があり好ましくない。」 ・記載事項1-4 「【0038】実施例11(ヘアワックス) 配合量(%) (1)酸化アルキレン付加重合体 25.0 (R=ブチル基、m=40、n=0) (2)無水ケイ酸 4.0 (商品名:アエロジェル200V、日本アエロジル社製) (3)タルク 10.0 (4)セリサイト 5.0 (5)カオリン 5.0 (6)ミツロウ 5.0 (7)マイクロクリスタリンワックス 5.0 (8)ポリエチレン末 3.0 (9)カルナバワックス 5.0 (10)ワセリン 5.0 (11)ジメチルポリシロキサン(100cs) 4.5 (12)イソステアリン酸 1.0 (13)ミリスチン酸2-エチルヘキシル 20.0 (14)ステアリン酸モノグリセライド 1.0 (15)軽質流動パラフィン 残 部 【0039】(製法)(1)、(6)?(15)を85℃で均一に混合溶解し、次いで(2)?(5)をヘンシェル混合機を用いて均一に混合したものを加え、ホモミキサーにより均一混合後、室温まで冷却してヘアワックスを得た。」 (2)引用文献1に記載された発明 記載事項1-4から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「以下の成分が配合されているヘアワックス。 配合量(%) (1)酸化アルキレン付加重合体 25.0 (R=ブチル基、m=40、n=0) (2)無水ケイ酸 4.0 (商品名:アエロジェル200V、日本アエロジル社製) (3)タルク 10.0 (4)セリサイト 5.0 (5)カオリン 5.0 (6)ミツロウ 5.0 (7)マイクロクリスタリンワックス 5.0 (8)ポリエチレン末 3.0 (9)カルナバワックス 5.0 (10)ワセリン 5.0 (11)ジメチルポリシロキサン(100cs) 4.5 (12)イソステアリン酸 1.0 (13)ミリスチン酸2-エチルヘキシル 20.0 (14)ステアリン酸モノグリセライド 1.0 (15)軽質流動パラフィン 残 部」 2.引用文献2について (1)引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている 。 ・記載事項2-1 「【0067】実施例29 ヘアワックス(O/W) 1)流動パラフィン 8.0(質量%) 2)ワセリン 5.0 3)マイクロクリスタリンワックス 5.0 4)ステアリルアルコール 2.0 5)プロピレングリコール 10.0 6)カルナバロウ 3.0 7)イソステアリン酸 1.0 8)ステアリン酸 2.0 9)テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 3.0 10)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5 11)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1.5 12)カオリン 5.0 13)微粒子シリカ(未処理)アエロジル200^(TM) 2.0 14)トリエタノールアミン 0.3 15)パラベン 0.2 16)ベントナイト 1.0 17)精製水 残余 18)香料 0.1 」 (2)引用文献2に記載された発明 記載事項2-1から、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「以下の成分が配合されているヘアワックス。 1)流動パラフィン 8.0(質量%) 2)ワセリン 5.0 3)マイクロクリスタリンワックス 5.0 4)ステアリルアルコール 2.0 5)プロピレングリコール 10.0 6)カルナバロウ 3.0 7)イソステアリン酸 1.0 8)ステアリン酸 2.0 9)テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 3.0 10)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5 11)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1.5 12)カオリン 5.0 13)微粒子シリカ(未処理)アエロジル200^(TM) 2.0 14)トリエタノールアミン 0.3 15)パラベン 0.2 16)ベントナイト 1.0 17)精製水 残余 18)香料 0.1 」 3.その他の引用文献について 原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献5及び6には、ヘアワックスにシクロメチコン等の揮発性油を配合することが記載されている(引用文献5の【0038】、引用文献6の【0037】)。 同じく周知技術を示す文献として引用された引用文献7及び10には、歯磨組成物に含有される研磨剤の例として、ケイソウ土(硅藻土)等のシリカ研磨剤(材)が挙げられている(引用文献7の第5頁右下欄第11?18行、引用文献10の第4頁左上欄第1?7行)。 同じく周知技術を示す文献として引用された引用文献8には、毛髪ブリーチ用粉末組成物に、「シリカ(ケイ藻土)」及び「二酸化シリカ(熱分解性SiO_(2))」を配合することが記載されている(実施例1)。 同じく周知技術を示す文献として引用された引用文献9には、無水ケイ酸を含有するパック化粧料が記載され(請求項1)、当該無水ケイ酸について、「【0006】本明細書でいう無水ケイ酸(SiO2)は、天然に結晶した形では石英として、結晶面の明瞭で無いものでは瑪瑙、玉髄などとして、また無定形構造の物としては珪藻土として産出する。人工的にも物性の異なるものが種々合成されており、これらはいずれも無定形構造である。化粧品に配合されるものとしては、粒子形状が不定型、微粒子、板状のもの、球状のものがあり配合目的に合ったものが用いられている。本発明に用いられる無水ケイ酸としては球状シリカP-1500(触媒化成工業(株))サイロピュア(富士デビソン化学(株))カープレックス#67(塩野義製薬(株))等がある。」と記載されている。 第5 対比・判断 <1>本願発明と引用発明1との対比・判断 1.本願発明1について (1)引用発明1との対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「無水ケイ酸(商品名:アエロジェル200V、日本アエロジル社製)」は、本願発明1の「シリカ」に相当し、引用発明1における当該「無水ケイ酸(商品名:アエロジェル200V、日本アエロジル社製)」及び「カオリン」は、本願発明1の「無機粉体」である。また、引用発明1の「軽質流動パラフィン」は、本願発明1の「揮発性油」に、引用発明1の「ミツロウ」、「マイクロクリスタリンワックス」、「ポリエチレン末」、「カルナバワックス」及び「ワセリン」は、本願発明1の「25℃で固体のロウまたは炭化水素」に、引用発明1の「ジメチルポリシロキサン(100cs)」及び「ミリスチン酸2-エチルヘキシル」は、本願発明1の「25℃で液体の油」に相当し、引用発明1の「ヘアワックス」は、本願発明1の「整髪料」に相当する。 そうしてみれば、本願発明1と引用発明1とは、 「無機粉体、揮発性油、25℃で固体のロウまたは炭化水素、並びに25℃で液体の油が配合されている整髪料。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明1は、「ケイソウ土、カオリンおよびシリカ」が無機粉体として配合され、その「ケイソウ土、カオリンおよびシリカ」の配合量が「5?10質量%」であるのに対し、引用発明1では、無機粉体として、ケイソウ土が含まれず、カオリン5.0質量%及びシリカ4.0質量%が配合されている点 (相違点2) 引用発明1は、酸化アルキレン付加重合体、タルク、セリサイト、イソステアリン酸及びステアリン酸モノグリセライドが配合されるのに対し、本願発明1は、これらの成分が配合されることは特定されていない点 (2)引用発明1との相違点についての判断 まず、相違点2について検討すると、本願発明1は、他の成分を配合することは排除していないから、この点は、実質的な相違点とはいえない。 次に、相違点1について検討する。 引用文献1には、毛髪化粧料に含有される「(B)無水ケイ酸」として、「天然には・・・ケイ藻土として産出たものを機械的粉砕法により製造したもの」も使用できることが記載されているものの(記載事項1-1及び1-2)、「ケイソウ土」と「シリカ」の両者をカオリンと共に配合することの記載や示唆はない。また、引用文献2には、ヘアワックスに「微粒子シリカ(未処理)アエロジル200^(TM)」(シリカ)及び「カオリン」が配合されることは記載されているが(記載事項2-1)、「ケイソウ土」と「シリカ」の両者をカオリンと共に配合することの記載や示唆はない。さらに、出願時の周知技術を示す引用文献5?10をみても、引用文献5及び6には、ヘアワックスにシクロメチコン等の揮発性油が配合されることが記載されているだけであり、また、引用文献7?10には、歯磨組成物、毛髪ブリーチ用粉末組成物、又はパック化粧料に、シリカやケイソウ土が配合されることが記載されているだけであり(第4 3を参照。)、整髪料において、「ケイソウ土」と「シリカ」の両者をカオリンと共に配合することを想起させるような記載はない。それゆえ、引用発明1のカオリン及びシリカの無機粉体を、「ケイソウ土、カオリンおよびシリカ」とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 そして、本願発明1は、上記相違点1に係る点を併せ具備した成分組成とすることにより、本願明細書の表1の実施例1及び4?7に例示されるとおり、スタイリングのしやすさ、毛先のまとまりのよさ、及び毛髪のべたつきのなさについて優れた整髪料を提供するものである。一方、引用文献1には、引用発明1に配合される無水ケイ酸やカオリン等の体質粉体は、その配合量により使用時ののびや感触に影響することは記載されているものの(記載事項1-2及び1-3)、無機粉体として「ケイソウ土、カオリンおよびシリカ」の3成分を特定の配合量で併せて用いることによって、上記優れた効果が奏することについては記載されていない。また、引用文献2及び5?10においても、上記優れた効果が奏すことは記載されていない。それゆえ、本願発明1の上記効果は、引用文献1の記載に、引用文献2及び5?10の記載を併せてみても、当業者の予測を超えるものといえる。 (3)小括 よって、本願発明1は、引用文献1の記載、並びに、引用文献2の記載及び引用文献5?10に記載された本願出願時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 2.本願発明2?9について 本願発明2?4は、それぞれ、本願発明1の「25℃で固体のロウまたは炭化水素」、「25℃で液体の油」及び「揮発性油」の成分をさらに特定したものであり、本願発明5?8は、各成分の配合量をさらに限定したものであり、また、本願発明9は、本願発明1の整髪料をクリーム状に特定したものである。 それゆえ、本願発明2?9は、上記1で述べた理由と同じ理由により、引用文献1の記載、並びに、引用文献2の記載及び引用文献5?10に記載された本願出願時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 <2>本願発明と引用発明2との対比・判断 1.本願発明1について (1)引用発明2との対比 本願発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「微粒子シリカ(未処理)アエロジル200^(TM)」は、本願発明1の「シリカ」に相当し、引用発明2における当該「微粒子シリカ(未処理)アエロジル200^(TM)」及び「カオリン」は、本願発明1の「無機粉体」である。また、引用発明2の「ワセリン」、「マイクロクリスタリンワックス」及び「カルナバロウ」は、本願発明1の「25℃で固体のロウまたは炭化水素」に、引用発明2の「テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット」は、本願発明1の「25℃で液体の油」に相当し、引用発明2の「ヘアワックス」は、本願発明1の「整髪料」に相当する。 そうしてみれば、本願発明1と引用発明2とは、 「無機粉体、揮発性油、25℃で固体のロウまたは炭化水素、並びに25℃で液体の油が配合されている整髪料。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3) 本願発明1は、「ケイソウ土、カオリンおよびシリカ」が無機粉体として配合され、その「ケイソウ土、カオリンおよびシリカ」の配合量が「5?10質量%」であるのに対し、引用発明2では、無機粉体として、ケイソウ土が含まれず、カオリン5.0質量%及びシリカ2.0質量%が配合されている点 (相違点4) 本願発明1が、「揮発性油」を含むのに対し、引用発明2ではそのような特定はされていない点 (相違点5) 引用発明2は、流動パラフィン、ステアリルアルコール、プロピレングリコール、イソステアリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、トリエタノールアミン、パラベン、ベントナイト、精製水,及び香料が配合されるのに対し、本願発明1は、これらの成分が配合されることは特定されていない点 (2)引用発明2との相違点についての判断 まず、相違点5について検討すると、本願発明1は、他の成分を配合することは排除していないから、この点は、実質的な相違点とはいえない。 次に、相違点3について検討する。 引用文献2には、「ケイソウ土」と「シリカ」の両者をカオリンと共に配合することの記載や示唆はない。また、引用文献1も前述のとおり、ヘアワックスに「無水ケイ酸(商品名:アエロジェル200V、日本アエロジル社製)」(シリカ)及び「カオリン」を配合すること(記載事項1-4)、毛髪化粧料に含有される「(B)無水ケイ酸」として、「天然には・・・ケイ藻土として産出たものを機械的粉砕法により製造したもの」も使用できることが記載されているだけであり(記載事項1-1及び1-2)、「ケイソウ土」と「シリカ」の両者をカオリンと共に配合することの記載や示唆はない。さらに、出願時の周知技術を示す引用文献5及び6には、ヘアワックスにシクロメチコン等の揮発性油が配合されることが記載されているだけであり、また、引用文献7?10には、歯磨組成物、毛髪ブリーチ用粉末組成物、又はパック化粧料に、シリカやケイソウ土が配合されることが記載されているだけであり(第4 3を参照。)、整髪料において、「ケイソウ土」と「シリカ」の両者をカオリンと共に配合することを想起させるような記載はない。それゆえ、引用発明2のカオリン及びシリカの無機粉体を、「ケイソウ土、カオリンおよびシリカ」とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 そして、本願発明1は、上記相違点3に係る点を併せ具備した成分組成とすることにより、本願明細書の表1の実施例1及び4?7に例示されるとおり、スタイリングのしやすさ、毛先のまとまりのよさ、及び毛髪のべたつきのなさについて優れた整髪料を提供するものである。一方、引用文献2、並びに、引用文献1及び5?10には、上記優れた効果が奏することについては記載されていない。それゆえ、本願発明2の上記効果は、引用文献2の記載に、引用文献1及び5?10の記載を併せてみても、当業者の予測を超えるものといえる。 (3)小括 よって、相違点4について判断するまでもなく、本願発明2は、引用文献2の記載、並びに、引用文献1の記載及び引用文献5?10に記載された本願出願時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 2.本願発明2?9について 本願発明2?9についても、同様に、引用文献2の記載、並びに、引用文献1の記載及び引用文献5?10に記載された本願出願時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 第6 原査定の拒絶理由(適用条文:特許法第29条第2項)について 平成29年1月23日付け手続補正書により、本願発明は、無機粉体として、「ケイソウ土と、カオリンおよびシリカのうちの少なくとも一方」を配合するものから、「ケイソウ土、カオリンおよびシリカ」の3成分を配合するものに補正されたところ、第5で述べたように、本願発明は、引用文献1、2及び5?10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、原査定の理由を維持することはできない。 なお、原査定の文末において、「請求項8には、「ケイソウ土、カオリンおよびシリカが配合され、ケイソウ土の配合量が1?8質量%、カオリンの配合量が0.1?5質量%、シリカの配合量が0.2?2質量%である・・・整髪料。」という記載があるが、参考文献2の「けいそうど 珪藻土」の項にも記載があるように、「ケイソウ土」は、(天然に産出する)含水非晶質の「シリカ」でもあると解されるところ、「ケイソウ土」の配合量よりも、「シリカ」の配合量が低いものをも含むとする、上記記載が示すものを当業者が明確に把握できるとは認められない」と記載され、請求項8の記載が明確性要件を満たさない旨述べている。 これは、本願発明の「ケイソウ土」と「シリカ」とが、同一成分又は区別できない成分であることを前提とした指摘と解される。 確かに、「ケイソウ土」については、「化学大辞典3」、縮刷版第9刷、共立出版株式会社、昭和44年8月5日発行、p.318(平成29年1月23日付け意見書に添付された参考文献2)には、「けいそうど 硅藻土・・・単細胞ソウ類であるケイソウの遺ガイから成るケイ質のタイ積物で、粘土、火山灰、有機物などが混じっているのが普通である。性状・組成 純粋なものは白色、一般には黄灰色で、かわいたものは軽く、しばらくは水に浮く。ケイソウの大きさは一様でないが25μ程度が普通で、顕微鏡下でみると沢山のあながあり、これがケイソウ土の特色である物理的化学的特性の原因をなす。その本質はタンパク石と同様な含水非晶質二酸化ケイ素である。」と記載されており、また、「シリカ」については、「化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ株式会社(他2)、平成8年11月1日発行、p.274(平成29年5月13日付け刊行物等提出書において提出された刊行物1)には、「無水ケイ酸・・・天然には石英、メノウ、玉髄、ケイ藻土として産出する。工業的には、乾式法、湿式法により、物性の異なるものが種々合成されている。SiO_(2) 製法 機械的粉砕法、乾式法、湿式法などがあるが、おもに後者の2方法によって製造される。・・・[別名]二酸化ケイ素(silicon dioxide)、シリカ(silica)」と記載されており、これらの記載によれば、ケイソウ土もシリカも二酸化ケイ素(SiO_(2))を成分とし、無水ケイ酸(シリカ)には、ケイソウ土として産出されたものを機械的粉砕法により製造されるものが包含され、両者を区別せずに用いることもあることは理解できる。 しかしながら、本願発明における「ケイソウ土」と「シリカ」については、請求項において、「ケイソウ土、カオリンおよびシリカから選ばれる2種以上の無機粉体・・・ケイソウ土、カオリンおよびシリカが配合されている」(請求項1)と、そもそも別成分として配合することが明記されているものであり、また、本願明細書の実施例も、「ケイソウ土」と「シリカ」は別成分として配合した例のみが示されているものである。そして、実施例3では、ケイソウ土8.0質量%とシリカ0.5質量%を配合した整髪料が、比較例1のケイソウ土のみ8.0質量%を配合した整髪料に比べて、スタイリングのしやすさ、毛先のまとまりのよさ、及び毛髪のべたつきのなさのすべての項目で優れた効果を奏していることが示され、仮に「ケイソウ土」と「シリカ」が同一成分又は区別できない成分であるならば、これらの例の整髪料の性質の違いは説明できない。そして、この点、審判請求人も、平成29年9月25日付け審判請求書において、「「ケイソウ土」は、「種々のケイソウの遺ガイから成るケイ酸質の堆積物」であり、「シリカ」は、「次の化学式で表される無機酸化物である。SiO_(2)」であることから、両者を分類するための定義が異なり・・・本願発明および引用文献1に記載の発明の属する技術分野においては、表示名称が異なる場合、材料として違う物(成分などが異なる物)として認識されることが技術常識」であるから、当該技術分野においては「「ケイソウ土」と「シリカ」とが全く異なる物と認識されている」と述べている。 したがって、本願明細書全体をみれば、本願発明における「ケイソウ土」と「シリカ」は、別の物を意味し、異なった成分として整髪料に配合していることは明らかであるから、平成29年1月23日付け手続補正書により補正された請求項8の記載は、明確であるといえる。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-09-19 |
出願番号 | 特願2013-38106(P2013-38106) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(A61K)
P 1 8・ 121- WY (A61K) P 1 8・ 537- WY (A61K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 俊之 |
特許庁審判長 |
田村 聖子 |
特許庁審判官 |
大久保 元浩 阪野 誠司 |
発明の名称 | 整髪料 |
代理人 | 三輪 英樹 |
代理人 | 三輪 鐵雄 |