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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01Q
管理番号 1343792
審判番号 不服2017-11709  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-04 
確定日 2018-09-05 
事件の表示 特願2015-209756「走査型プローブ顕微鏡およびその動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日出願公開、特開2016- 14687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)12月1日(パリ条約による優先権主張 2009年12月1日 米国)を国際出願日として出願した特願2012-542168号の一部を、平成27年10月26日に新たに出願したものであって、平成28年6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月2日に意見書が提出され、平成29年3月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1-15に係る発明は、平成29年8月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
なお、平成29年8月4日付けの手続補正による補正後の請求項1は、拒絶査定時の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項5(本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲における請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項5と同じ)である。

「 【請求項1】
走査型プローブ顕微鏡を動作させる動作方法であって、前記動作方法は、
プローブと試料との間の相対運動を生成することで、前記プローブと前記試料との間の相対振動運動を提供する生成段階と、
前記プローブの運動を検出して検出プローブ運動を得る検出段階と、
前記プローブと試料との間の相互作用に基づき前記検出プローブ運動からプローブ撓みを判定する判定段階であって、前記プローブ撓みは寄生プローブ撓みとは無関係であり、前記寄生プローブ撓みは前記走査型プローブ顕微鏡の動作に関連する背景に起因し、前記判定段階はデジタルコントローラを用いて前記検出プローブ運動から前記背景を減算することを含むことと、
前記判定段階を用いてリアルタイムで前記走査型プローブ顕微鏡を制御することとを備え、
前記動作方法はさらに、前記相互作用に関連する瞬間力を同定する同定段階を備え、
前記瞬間力は、前記相対振動運動の1周期の終了前に同定され、
前記動作方法はさらに、画像化の間に設定値を維持すべく前記瞬間力を用いることを備える、
走査型プローブ顕微鏡の動作方法。」


第3 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由1を含むものである。

「●理由1(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1には、「前記プローブと試料との間の相互作用に基づき前記検出プローブ運動からプローブ撓みを判定する判定段階であって、」との記載があり、上記記載は、「相互作用」と「検出プローブ運動」の2つを用いて、「プローブ撓み」を判定することを意味すると解釈できるが、「相互作用」は現象であって検出値のような具体的な情報ではなく、上記記載が「相互作用」に関する情報をどのように取得し、また取得した「相互作用」を具体的にどのように用いて「検出プローブ運動」から「プローブ撓み」を検出することを意味するのかわからず、意味が不明確である。また、請求項17、18の同様の記載についても、意味が不明確である。
さらに、請求項1には、「判定段階を用いてリアルタイムで前記走査型プローブ顕微鏡を制御する」との記載があるが、上記「判定段階」は「前記プローブの運動を検出して検出プローブ運動を得る」一連の動作の段階を意味するものであり、検出値等の具体的な情報を意味するものではなく、上記記載の「判定段階」が具体的に「判定段階」に関連するどのような値を指し、どのように制御に用いることを指すのかわからず、意味が不明確である。また、上記記載の「制御する」が、走査型プローブ顕微鏡の何を制御することを指すのかわからず、意味が不明確である。また、請求項17、18に記載の「制御する」、及び、請求項18に記載の「前記回収段階を用いて」との記載についても、同様に意味が不明確である。
なお、出願人は、意見書において、明細書の記載を参酌して具体的な技術的事項についての説明をし、その説明を踏まえて請求項1に係る発明は明確である旨の主張をしているが、明細書に記載の技術的事項の意味が明確であったとしても、請求項1の記載はそれ自体で明確である必要があり、上記の通り請求項1に係る発明は意味が不明確であるから、出願人の上記主張は採用できない。

よって、請求項1-18に係る発明は明確でない。」

ここで、当該原査定の理由1は、請求項1の「前記プローブと試料との間の相互作用に基づき前記検出プローブ運動からプローブ撓みを判定する判定段階であって、」との記載及び請求項17、18の同様の記載についての理由と、請求項1の「判定段階を用いてリアルタイムで前記走査型プローブ顕微鏡を制御する」との記載及び請求項17、18の同様の記載についての理由とからなるものである。


第4 当審の判断
1 請求項1の「前記判定段階を用いてリアルタイムで前記走査型プローブ顕微鏡を制御する」との記載について

(1)「判定段階」という動作方法における1つの段階(ステップ)を「用いて」「制御する」との記載では、「判定段階」をどのように「用いて」「制御」するものであるのか明確でない。

(2)請求項1の「プローブ撓みを判定する判定段階であって」との記載から、仮に、「判定段階を用いて」が「判定段階」で「判定」された「プローブ撓み」「を用いて」の意味であったとしても、「走査型プローブ顕微鏡」には、種々の制御すべきパラメータがあることは当業者の技術常識であるから、「判定段階」で「判定」された「プローブ撓み」「を用いて」「走査型プローブ顕微鏡を制御する」とは、走査型プローブ顕微鏡の何を制御することを指すのか明確でない。

また、審判請求書において請求人は、「当該記載は、標準的な原子間力顕微鏡(AFM)の制御に過ぎず、プローブと試料との間の相互作用に関する変数が、チップと試料との間の距離を制御するフィードバックループに用いられることを述べています(本願の図1)。『変数』は、例えば実際のプローブ撓みであり、『プローブ撓み』はプローブのチップと、試料との間の力を示します。詳細にはピーク力タッピングモードでは、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を制御するべく、瞬間力がリアルタイムに用いられます。
このような説明を踏まえ、請求項1の記載は明確であると考えられ、また本願明細書からも読み取ることができます。」と主張している。

しかしながら、本願の請求項1において特定されている「判定段階」は、「前記プローブと試料との間の相互作用に基づき前記検出プローブ運動からプローブ撓みを判定する判定段階であって、前記プローブ撓みは寄生プローブ撓みとは無関係であり、前記寄生プローブ撓みは前記走査型プローブ顕微鏡の動作に関連する背景に起因し、前記判定段階はデジタルコントローラを用いて前記検出プローブ運動から前記背景を減算することを含む」ものであり、そのような「判定段階」が原子間力顕微鏡(AFM)の制御において標準的に用いられているとはいえないから、請求項1の「前記判定段階を用いてリアルタイムで前記走査型プローブ顕微鏡を制御する」との記載が、それ自体で、「標準的な原子間力顕微鏡(AFM)の制御」にすぎないものであって、「プローブと試料との間の相互作用に関する変数が、チップと試料との間の距離を制御するフィードバックループに用いられること」を指すことが、当業者にとって明確であるとはいえない。

(3)小括
したがって、本願の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第5 むすび
以上のとおり、本願は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しておらず、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-04 
結審通知日 2018-04-10 
審決日 2018-04-24 
出願番号 特願2015-209756(P2015-209756)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩田 裕介東松 修太郎  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 松岡 智也
渡戸 正義
発明の名称 走査型プローブ顕微鏡およびその動作方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  

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