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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1343811
審判番号 不服2017-1001  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-24 
確定日 2018-09-07 
事件の表示 特願2015-104073「タイミング・アドバンス・グループおよび/または時間調整タイマーの値を構成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月15日出願公開,特開2015-181271〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年9月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年9月30日 中国)を国際出願日とする出願である特願2014-532494号の一部を,平成27年5月22日に新たな特許出願としたものであって,平成28年3月4日付けで拒絶理由が通知され,同年6月10日に意見書及び手続補正書が提出され,同年9月27日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成29年1月24日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。



第2 平成29年1月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年1月24日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は,
平成28年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1を削除し,
平成28年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2に記載された
「【請求項1】
基地局で,セカンダリ・セルに対して時間調整タイマーの値を構成する方法であって,
- 無線リソース制御メッセージを介してユーザ機器に前記時間調整タイマーの前記値を送信するステップ
を具備する方法。
【請求項2】
- 前記セカンダリ・セルは前記基地局がタイミング・アドバンス・グループを構成する第1のセカンダリ・セルかどうかを決定するステップと,
- 前記セカンダリ・セルは前記基地局が前記タイミング・アドバンス・グループを構成する前記第1のセカンダリ・セルである場合に,前記セカンダリ・セルに対して前記時間調整タイマーの前記値を構成するステップとをさらに具備する請求項1に記載の方法。」
を独立請求項として
「【請求項1】
基地局で,セカンダリ・セルに対して時間調整タイマーの値を構成する方法であって,
- 無線リソース制御メッセージを介してユーザ機器に前記時間調整タイマーの前記値を送信するステップと,
- 前記セカンダリ・セルは前記基地局がタイミング・アドバンス・グループを構成する第1のセカンダリ・セルかどうかを決定するステップと,
- 前記セカンダリ・セルは前記基地局が前記タイミング・アドバンス・グループを構成する前記第1のセカンダリ・セルである場合に,前記セカンダリ・セルに対して前記時間調整タイマーの前記値を構成するステップと,
- セカンダリ・セルは既存のタイミング・アドバンス・グループに追加されるかどうかを決定するステップと,
- 前記ユーザ機器がタイミング・アドバンス・グループの時間調整タイマー値または前記タイミング・アドバンス・グループに属するセカンダリ・セルの時間調整タイマー値を受信し,前記タイミング・アドバンス・グループに対して時間調整タイマー値が構成されている場合,前記時間調整タイマーの前記構成を解放するように前記ユーザ機器に指示するための命令を前記ユーザ機器に送信するステップとを具備する方法。」(下線は,本件補正前の請求項1を引用する請求項2に対して新たに追加された事項を示すものであり,当審が付与した。)
に補正し,
平成28年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2を引用する請求項3を,新たな請求項1を引用する請求項2とし,
平成28年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項3を引用する請求項4を,新たな請求項2を引用する請求項3とするものである。


2 補正の適否
(1)新規事項の有無について
本件補正後の請求項1に新たに追加された「 - 前記ユーザ機器がタイミング・アドバンス・グループの時間調整タイマー値または前記タイミング・アドバンス・グループに属するセカンダリ・セルの時間調整タイマー値を受信し,前記タイミング・アドバンス・グループに対して時間調整タイマー値が構成されている場合,前記時間調整タイマーの前記構成を解放するように前記ユーザ機器に指示するための命令を前記ユーザ機器に送信するステップ」なる事項は,出願当初の明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されていない。

請求人は,審判請求書において,「請求項1の補正内容は,補正前の請求項2および4,ならびに本願明細書の段落[0048]における記載「ユーザ機器がTAグループのTAT値またはTAグループに属するScellのTAT値を受信し,TAグループに対してTAT値が構成されている場合,」に基づくものです。」と釈明している。
しかしながら,
「【0048】
第2の原理では,TATの再構成はR11でサポートされる。Scellが既存のTAグループに追加される場合,TAT値は,必ずしも構成されなくてもよい(もちろん,TAT値における変更は,時間調整タイマーが現在運転中かどうかに関係なく提供することができる)。また,ユーザ機器がTAグループのTAT値またはTAグループに属するScellのTAT値を受信し,TAグループに対してTAT値が構成されている場合,既存のTAT値は,新しいTAT値に置き換えられる。
【0049】
第3の原理では,グループの最後のScellが解放された場合,ユーザ機器および基地局の両方は,明示的または暗黙的なシグナリングを介してTAT構成を解放する。ここで,明示的なシグナリングは,基地局がシグナリングを送信し,次に,基地局から受信されたシグナリングに応じてユーザ機器がTAT構成を解放することを意味する。また,暗黙のシグナリングは,ユーザ機器による自動的な解放を意味する。」
の記載によると,
請求項1の「前記ユーザ機器がタイミング・アドバンス・グループの時間調整タイマー値または前記タイミング・アドバンス・グループに属するセカンダリ・セルの時間調整タイマー値を受信し,前記タイミング・アドバンス・グループに対して時間調整タイマー値が構成されている場合」は,「ユーザ機器がTAグループのTAT値またはTAグループに属するScellのTAT値を受信し,TAグループに対してTAT値が構成されている場合」に対応するということができる。しかしながら,当該場合の動作は,【0048】の記載によると「既存のTAT値は,新しいTAT値に置き換えられる。」であって,請求項1のように「前記時間調整タイマーの前記構成を解放するように前記ユーザ機器に指示するための命令を前記ユーザ機器に送信する」ものではない。そして,新しいTAT値に置き換えられてTATが動作するのであるから,時間調整タイマーの構成(TAT構成)は解放されていないことは明らかである。
また,本件補正前の請求項4は【0049】の記載に対応するものであり,「前記時間調整タイマーの前記構成を解放するように前記ユーザ機器に指示するための命令を前記ユーザ機器に送信するステップ」は,「グループの最後のScellが解放された場合」に為されるものであって,「前記ユーザ機器がタイミング・アドバンス・グループの時間調整タイマー値または前記タイミング・アドバンス・グループに属するセカンダリ・セルの時間調整タイマー値を受信し,前記タイミング・アドバンス・グループに対して時間調整タイマー値が構成されている場合」になされるものではない。

したがって,上記事項を追加する本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)シフト補正の有無,補正の目的要件について
上記(1)のとおりであるが,更に進めてシフト補正の有無,補正の目的要件についても検討する。
本件補正前の請求項1を引用する請求項2に新たに追加された「 - セカンダリ・セルは既存のタイミング・アドバンス・グループに追加されるかどうかを決定するステップ」及び「 - 前記ユーザ機器がタイミング・アドバンス・グループの時間調整タイマー値または前記タイミング・アドバンス・グループに属するセカンダリ・セルの時間調整タイマー値を受信し,前記タイミング・アドバンス・グループに対して時間調整タイマー値が構成されている場合,前記時間調整タイマーの前記構成を解放するように前記ユーザ機器に指示するための命令を前記ユーザ機器に送信するステップ」は,方法の発明として補正前の請求項1を引用する請求項2に係る発明には存在しなかった新たなステップであって,既存のステップを更に限定するものではない。このため,追加される上記ステップは,「第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」に該当しない。したがって,上記ステップを追加する補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮(限定的限縮)を目的とするものではない。また,上記ステップを追加する補正は,特許法第17条の2第5項に規定される他のいずれの事項を目的とするものでもない。
また,上述のとおり,本件補正により,本件補正前の請求項1を引用する請求項2には存在しなかった新たなステップが追加されており,それにより方法の発明として処理動作及び作用効果も変わるから,本件補正前後の発明は特許法第37条の単一性を満たす一群の発明に該当しない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第4項,第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


なお,請求人は,審判請求書にて,本件補正は,請求項1を補正し,補正前の請求項2を削除し,補正前の請求項3及び4をそれぞれ請求項2及び3に再番号付けした旨述べているが,仮にそうであるとしても,その補正の適否は上述の判断のとおりである。


3 結語
以上のとおり,平成29年1月24日にされた手続補正(本件補正)は,特許法第17条の2第3項,第4項,第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年1月24日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?4に係る発明は,平成28年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「基地局で,セカンダリ・セルに対して時間調整タイマーの値を構成する方法であって,
- 無線リソース制御メッセージを介してユーザ機器に前記時間調整タイマーの前記値を送信するステップ
を具備する方法。」


2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1に対しては,以下の引用例1が引用され,周知技術として以下の引用例4が例示されている。

引用例1 Samsung,UL synchronization maintenance for Scell[online],3GPP TSG-RAN WG2#75 R2-114164,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_75/Docs/R2-114164.zip>,2011年8月15日
引用例4 Nokia Siemens Networks, Nokia Corporation,Usage of RRC Parameters[online],3GPP TSG-RAN WG2♯64bis R2-090151,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_64bis/Docs/R2-090151.zip>,2009年1月6日


3 引用発明及び周知技術
原査定の拒絶の理由で引用されたSamsung,UL synchronization maintenance for Scell([当審仮訳]:ScellのためのUL同期の維持),3GPP TSG-RAN WG2#75 R2-114164(引用例1)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

[引用発明]
(1)「1 Introduction
One of the issues discussed in RAN2#74 is whether only one TAT is needed for a UE or one TAT per TA group (TAG) is needed. In our understanding, the following two alternatives are being considered [1][2]:
Alt 1: The UE maintains an independent timeAlignmentTimer per TAG. The timeAlignmentTimer is (re)started by the UE upon receiving the TA Command for the TAG in a MAC CE or in a RAR message. After the expiry of the timeAlignmentTimer, the TAG is assumed to be UL out-of-sync.
Alt 2: The UE does not maintain a separate timeAlignmentTimer per TAG. After receving the TA Command in a RAR message, the UE always assumes the TAG is uplink synchronized if instructed to transmit in the uplink by the eNodeB. The UE still adjusts the uplink timing of the associated SCell(s) according to the TA command for the TAG.
In this contribution, we discuss the advantages and disadvantages of each alternative and present our preference.」
([当審仮訳]:
1 はじめに
RAN2#74で議論された問題点の1つは,UEに1つのTATのみが必要か,又はTAグループ(TAG)当たり1つのTATが必要かどうかである。我々の理解では,以下の2つの選択肢が検討されている[1] [2]。
選択肢1:UEは,TAG毎に独立した時間調整タイマーを保持する。時間調整タイマーは,MAC CE又はRARメッセージ内でTAGのためのTAコマンドを受信すると,UEによって(再)開始される。時間調整タイマーが終了すると,そのTAGはUL同期外れとみなされる。
選択肢2:UEはTAG毎に別々の時間調整タイマーを保持しない。RARメッセージでTAコマンドを受信した後,UEは,eNodeBによってアップリンクで送信するように指示された場合は,TAGがアップリンク同期していると常に仮定する。UEは,TAGのためのTAコマンドに従って関連するSCellのアップリンクタイミングを調整する。
本寄稿では,各選択肢の利点及び欠点を検討し,我々の好みを示す。)

(2)「4 Conclusions
In this contribution, we discussed the issue of UL synchronization maintenance for SCell, in particular whether one TAT per TAG (Alt 1) is needed or only one TAT (Alt 2) is needed for a UE. We examined the implications of each alternative by considering the SCell activation and UL sync states transition diagrams of each alternative (Figure 1, Figure 2 and Figure 3), and compared the advantages and the disadvantages of the alternatives in Table 1.
In our view, implementation of multiple timers by the UE is not difficult. The disadvantages of inflexible transition between State 3 (activated SCell & UL in-sync) and State 2 (activated SCell & UL out-of-sync) for Alt 2 is significant especially for asymmetric DL-UL traffic (SCell needs to be activated for DL transmission but there is no need to maintain UL sync for UL data transmission). We concluded that our preference is Alt 1.
For Alt 1, the SCell activation and UL sync states as shown in Figure 1 should be the baseline since direct transition from deactivated SCell to State 3 is allowed as in Rel-10 SCell.

Our proposals are as follows:
Proposal 1: The UE maintains an independent timeAlignmentTimer per TAG. The timeAlignmentTimer is (re)started by the UE upon receiving the TA Command for the TAG in a MAC CE or in a RAR message. After the expiry of the timeAlignmentTimer, the associated SCell is assumed to be UL out-of-sync.
Proposal 2: The TAG timeAlignmentTimer does not expires when the associated SCell is deactivated.」
([当審仮訳]:
4 結論
この寄稿では,SCellのためのUL同期維持の問題点,特に,TAG毎にTATが1つが必要(選択肢1)か,あるいはUEに1つのTATのみが必要(選択肢2)かについて議論した。我々は,各選択肢のSCellのアクティブ化及びUL同期状態遷移図(図1,図2及び図3)を考慮して各選択肢の影響を吟味し,表1にて各選択肢の利点及び欠点を比較した。
我々の見解では,UEによる複数のタイマーの実装は困難ではない。選択肢2にとって,状態3(SCellがアクティブ化されており,ULが同期している)と状態2(SCellがアクティブ化されており,ULが同期外れである)との間の柔軟性のない遷移の欠点は,特に非対称DL-ULトラフィックにとって顕著である(SCellはDL送信のためにアクティブ化されている必要があるが,ULデータ送信のためにUL同期を維持する必要はない)。我々の好みは選択肢1であると結論づけた。
Rel-10のSCellと同様にアクティブ化されていないSCellから状態3への直接遷移が許されているため,選択肢1では,図1に示すようなSCellのアクティブ化とUL同期状態がベースラインになるべきである。

我々の提案は以下の通り:
提案1:UEは,TAG毎に独立した時間調整タイマーを保持する。時間調整タイマーは,MAC CE又はRARメッセージ内でTAGのためのTAコマンドを受信すると,UEによって(再)開始される。時間調整タイマーが終了すると,関連するSCellはUL同期外れとみなさる。
提案2:TAG時間調整タイマーは,関連するSCellが非アクティブ化されても終了しない。)

上記(1),(2)の記載及び当業者の技術常識を考慮すると,
引用例1の「この寄稿では,SCellのためのUL同期維持の問題点,特に,TAG毎にTATが1つが必要(選択肢1)か,あるいはUEに1つのTATのみが必要(選択肢2)かについて議論した。」との記載からも明らかなように,選択肢1は,SCellのためのUL同期維持に関して,UEは,TAG毎に独立したTAT(時間調整タイマー)を保持するといえる。
したがって,引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「SCellのためのUL同期維持に関して,UEは,TAG毎に独立したTAT(時間調整タイマー)を保持する。」

[周知技術]
原査定で周知技術として例示されたNokia Siemens Networks, Nokia Corporation,Usage of RRC Parameters([当審仮訳]:RRCパラメータの使用),3GPP TSG-RAN WG2♯64bis R2-090151は,3GPPの規格である 3GPP TS36.321 V8.4.0のChange Requestであるところ,図面とともに以下の事項が記載されている。

(3)「5.2 Maintenance of Uplink Time Alignment
The Time Alignment Timer is used to control how long the UE is considered uplink time aligned and is configured by RRC: time Alignment Timer [8].」(8ページ)
([当審仮訳]:
5.2 アップリンク時間調整の維持
時間調整タイマーは,UEがアップリンク時間調整されているとみなす期間を制御するために使用され,RRCにより構成される:[8] の時間調整タイマー。)

上記「[8]」は,Change Requestの対象である3GPP TS36.321 V8.4.0におけるReferencesの「[8] 3GPP TS36.331」であることは当業者に自明であるところ,当該3GPP TS36.331は3GPPの無線アクセスにおけるRRCプロトコルの規格である。
その本件の優先日前のバージョンである3GPP TS36.331 V10.2.0(2011-06) 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Radio Resource Control (RRC); Protocol specification (Release 10)には,以下の記載がある。(なお,3GPP TS36.321 V8.4.0に時期的に対応するバージョンである3GPP TS36.331 V8.4.0にもほぼ同様の記載がある。)

(4)「6.1 General
The contents of each RRC message is specified in sub-clause 6.2 using ASN.1 to specify the message syntax and using tables when needed to provide further detailed information about the information elements specified in the message syntax. The syntax of the information elements that are defined as stand-alone abstract types is further specified in a similar manner in sub-clause 6.3.
(中略)
6.2 RRC messages
(中略)
6.3 RRC information elements
(中略)
6.3.2 Radio resource control information elements
(中略)
TimeAlignmentTimer
The IE TimeAlignmentTimer is used to control how long the UE is considered uplink time aligned. Corresponds to the Timer for time alignment in TS 36.321 [6]. Value in number of sub-frames. Value sf500 corresponds to 500 sub-frames, sf750 corresponds to 750 sub-frames and so on. In this release of the specification, uplink time alignment is common for all serving cells.

TimeAlignmentTimer information element
-- ASN1START
TimeAlignmentTimer ::= ENUMERATED {sf500, sf750, sf1280, sf1920, sf2560, sf5120,sf10240, infinity}
-- ASN1STOP 」(107,108,147,193ページ)
([当審仮訳]:
6.1 概略
各RRCメッセージの内容は6.2節で特定され,メッセージ構文を特定するのにASN.1を使用し,必要に応じてメッセージ構文で指定された情報要素に関する更に詳細な情報を提供するためにテーブルを使用している。スタンドアロン・アブストラクト・タイプとして定義されている情報要素の構文は,6.3節で同様の方法で更に特定される。
(中略)
6.2 RRCメッセージ
(中略)
6.3 RRC情報要素
(中略)
6.3.2 無線リソース制御情報要素
(中略)
時間調整タイマー
情報要素 時間調整タイマーは,UEがアップリンク時間調整されているとみなす期間を制御するために使用される。TS 36.321 [6]における時間調整のためのタイマーに対応する。値はサブフレームの数である。値sf500は500サブフレームに対応し,sf750は750サブフレームに対応する。規格の本リリース([当審注」:リリース10)では,アップリンク時間調整は全てのサービングセルに共通である。
(以下省略) )

上記(3),(4)の記載によれば,3GPPの少なくともリリース10までのRRC(無線リソース制御)プロトコルのRRCメッセージに係る情報要素として時間調整タイマーの値が規定されており,当該RRCメッセージは基地局からUE(ユーザ機器)に送信されることは技術常識であるから,「基地局が無線リソース制御メッセージを介してユーザ機器に時間調整タイマーの値を送信する。」ことは,技術常識ともいえる周知技術である。


4 対比・判断
引用発明の「SCell」,「UL」,「UE」,「TAG」が,それぞれ「セカンダリ・セル」,「アップリンク」,「ユーザ機器」,「タイミング・アドバンス・グループ」を意味することは当業者に明らかである。また,引用発明の「TAG毎に独立したTAT(時間調整タイマー)」は,SCell(セカンダリ・セル)が属するTAG(タイミング・アドバンス・グループ)に対応するTAT(時間調整タイマー)を含むことは明らかである。そして,UEがセカンダリ・セルに対応するTAT(時間調整タイマー)を保持するにあたり,当該TAT(時間調整タイマー)が「構成(configure)」されることは自明である。
してみると,引用発明は,「セカンダリ・セルに対して時間調整タイマーを構成する方法」といえる点で,本願発明と共通している。

したがって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「セカンダリ・セルに対して時間調整タイマーを構成する方法。」
(相違点)
本願発明は「無線リソース制御メッセージを介してユーザ機器に前記時間調整タイマーの前記値を送信するステップを具備」し,「基地局」がセカンダリ・セルに対して「時間調整タイマーの値」を構成するのに対し,引用発明は時間調整タイマーの値がどのようして構成されるのか明示していない点。

上記相違点について検討する。
「基地局が無線リソース制御メッセージを介してユーザ機器に時間調整タイマーの値を送信する。」ことは,3GPPの少なくともリリース10まで規格に規定されている技術常識ともいえる周知技術である。
ここで,本願明細書の【0002】にも【背景技術】として記載されているように,TAG(タイミング・アドバンス・グループ)の概念は複数のTA値をサポートするためにリリース11で検討されていることであることは当業者における技術常識であるところ,特に支障がない限り既存のリリースの技術が踏襲されることは一般的に行われていることである。
そして,リリース10ではアップリンク時間調整は全てのサービングセルに共通であるものの,リリース10までの上記周知技術をリリース11で検討されているTAGの概念に基づくTAG毎の時間調整タイマーに適用することに阻害要因は見出せない。
してみると,引用発明の各TAG時間調整タイマーの構成に当たり,当該周知技術を用いて,各TAG時間調整タイマーの値を無線リソース制御(RRC)メッセージにて基地局からユーザ機器に送信して,基地局でセカンダリ・セルに対して時間調整タイマーの値を構成することは,格別困難なことではなく,当業者が容易に想到し得ることである。



5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-04-11 
結審通知日 2018-04-12 
審決日 2018-04-27 
出願番号 特願2015-104073(P2015-104073)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04W)
P 1 8・ 57- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 紀之  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 海江田 章裕
菅原 道晴
発明の名称 タイミング・アドバンス・グループおよび/または時間調整タイマーの値を構成する方法  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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