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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04F |
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管理番号 | 1343860 |
異議申立番号 | 異議2017-700662 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-06-30 |
確定日 | 2018-07-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6063144号発明「木質床材およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6063144号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4、5〕について訂正することを認める。 特許第6063144号の請求項1、3ないし5に係る特許を維持する。 特許第6063144号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6063144号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成24年4月13日に特許出願され、平成28年12月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年6月30日に特許異議申立人須藤亘(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年10月13日付けで取消理由が通知され、平成29年12月14日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年3月16日に申立人から意見書が提出され、さらに平成30年3月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成30年5月22日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正」という。)がされたものである。 なお、本件訂正の請求がされたことにより、平成29年12月14日にされた訂正の請求は、取り下げたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(10)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「分断されていること」とあるのを、「分断されており、前記分断溝の最大幅が0.1?1.0mmであること」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「厚さ1.0mm以上」とあるのを、「厚さ1.5mm以上」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3についても同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記溝の一部または全部の溝底部において、前記単位化粧板同士が分断溝によって分断されて」とあるのを、「前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を有し、前記単位化粧板同士が前記分断溝によって分断されて」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3についても同様に訂正する。) (4)訂正事項4 明細書の段落0020において、「厚さ1.0mm以上」とあるのを、「厚さ1.5mm以上」に訂正し、「前記溝の一部または全部の溝底部において、前記単位化粧板同士が分断溝によって分断されていること」とあるのを、「前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を有し、前記単位化粧板同士が前記分断溝によって分断されていること」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正をする。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または請求項2」とあるのを、「請求項1」に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落0021を削除し、段落0022において「前記(1)または(2)」とあるのを、「前記(1)」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項4に「厚さ1.0mm以上」とあるのを、「厚さ1.5mm以上」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5についても同様に訂正する。) (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4に「単位化粧板の間に、その表面側から溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを有する」とあるのを、「単位化粧板の間に、その表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを有する」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5についても同様に訂正する。) (10)訂正事項10 明細書の段落0023において、「厚さ1.0mm以上」とあるのを、「厚さ1.5mm以上」に訂正し、「単位化粧板の間に、その表面側から溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを有する」とあるのを、「単位化粧板の間に、その表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを有する」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項1は、「分断溝」について、「最大幅が0.1?1.0mmであること」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項1は、分断溝の最大幅を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 発明の詳細な説明において、段落【0028】に、「・・・図5の13の部分で示される分断溝の最大幅は、0.1?1.0mmとするのが良い。・・・」と記載されていることからみて、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項2は、「単位化粧板」の厚さについて、「1.0mm以上」を「1.5mm以上」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項2は単位化粧板の厚さを限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 発明の詳細な説明において、段落【0026】に、「・・・化粧板2は1.0mm以上の厚さを有する単位化粧板を複数並べて構成したものを用いる。化粧板2は、木質感を向上させる観点からは、1.5mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることがより好ましい。一方、経済性の観点からは、5mm以下とするのが好ましく、3mm未満とするのがより好ましい。木質基材3の厚さについては特に制限はないが、例えば、厚さ10mmのものを用いることができる。・・・」と記載されていることからみて、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項3は、「分断溝」について、「前記溝とは断面形状が異なる切り込み状」のものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項3は、分断溝の構成を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 発明の詳細な説明において、段落【0017】に、「・・・厚板を用いた化粧板2の表面側に、化粧板の厚さの範囲内で、単位化粧板の間に溝30を形成した後、溝底部から木質基材3に達するように細い切り込み状の溝30a(以下、「分断溝」と呼ぶ。)を形成することにより、化粧板2を完全に分断すると同時に化粧板2特有の無垢材に近い木質感を維持することが可能となる。」と記載され、図2及び図5をみると、分断溝30aの断面形状が溝30の断面形状と異なっていることが示されている。 よって、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項4は、上記訂正事項2及び3に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項4は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項4は、上記アで検討したとおり、上記訂正事項2及び3に係る訂正に伴うものであるところ、上記(2)ウ及び(3)ウで検討したことからみて、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、請求項2を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項6は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であったところ、訂正事項5で請求項2を削除することに伴い、請求項1の記載のみを引用する記載に訂正するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アのとおりであるから、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 上記アのとおりであるから、訂正事項6は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である (7)訂正事項7 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項7は、上記訂正事項5及び6に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項7は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項7は、上記アで検討したとおり、訂正事項5及び6に係る訂正に伴うものであるところ、上記(5)ウ及び(6)ウで検討したことからみて、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項8は、単位化粧板の厚さについて、「1.0mm以上」を「1.5mm」以上に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項8は単位化粧板の厚さを限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 発明の詳細な説明において、段落【0026】に、「・・・化粧板2は1.0mm以上の厚さを有する単位化粧板を複数並べて構成したものを用いる。化粧板2は、木質感を向上させる観点からは、1.5mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることがより好ましい。一方、経済性の観点からは、5mm以下とするのが好ましく、3mm未満とするのがより好ましい。木質基材3の厚さについては特に制限はないが、例えば、厚さ10mmのものを用いることができる。・・・」と記載されていることからみて、訂正事項8は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項9は、「単位化粧板間に、その表面側から」「形成する」「溝」について、「前記化粧板の厚さの範囲内」のものに限定し、「分断溝」について、「前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項9は、溝及び分断溝の構成を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 発明の詳細な説明において、段落【0017】に、「・・・厚板を用いた化粧板2の表面側に、化粧板の厚さの範囲内で、単位化粧板の間に溝30を形成した後、溝底部から木質基材3に達するように細い切り込み状の溝30a(以下、「分断溝」と呼ぶ。)を形成することにより、化粧板2を完全に分断すると同時に化粧板2特有の無垢材に近い木質感を維持することが可能となる。」と記載され、図2及び図5をみると、分断溝30aの断面形状が溝30の断面形状と異なっていることが示されている。 よって、訂正事項9は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (10)訂正事項10 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項10は、上記訂正事項8及び9に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項10は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項10は、上記アで検討したとおり、上記訂正事項8及び9に伴う訂正であるところ、上記(8)ウ及び(9)ウで検討したことからみて、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 3 一群の請求項について 訂正事項1?3、5、6に係る訂正前の請求項1?3について、請求項2及び3はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、上記訂正事項1?3に連動して訂正されるものである。 また、上記訂正事項8及び9に係る訂正前の請求項4及び5について、請求項5は請求項4を引用しているものであって、上記訂正事項8及び9に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1?3に対応する訂正後の請求項1?3、ならびに訂正前の請求項4及び5に対応する訂正後の請求項4及び5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 よって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 4 明細書の訂正と関係する請求項について 請求項1?3ならびに請求項4及び5は、それぞれ一群の請求項であるところ、訂正事項4に係る段落【0020】の訂正、及び訂正事項7に係る段落【0021】、【0022】の訂正は、請求項1?3に関係し、訂正事項10に係る段落【0023】の訂正は、請求項4及び5に関係している。 よって、訂正事項4及び7と、訂正事項10は、それぞれ明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項全てについて行うものである。 5 小括 以上のことから、本件訂正請求による訂正事項1?10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4,5〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の請求項1、3ないし5に係る発明 上記訂正請求により訂正された請求項1、3ないし5に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、3ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 厚さ1.5mm以上の突き板または挽き板からなる単位化粧板を複数並べて構成した化粧板と木質基材とを貼り付けた床材であって、前記単位化粧板の間にその表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で形成した溝を備え、 前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を有し、前記単位化粧板同士が前記分断溝によって分断されており、前記分断溝の最大幅が0.1?1.0mmであることを特徴とする木質床材。」 「【請求項3】 前記分断溝の前記化粧板部分における深さが前記化粧板厚の10?40%に相当することを特徴とする請求項1に記載の木質床材。」 「【請求項4】 厚さ1.5mm以上の単位化粧板を複数並べて構成した化粧板と木質基材とを貼り付ける工程と、単位化粧板の間に、その表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程を有することを特徴とする木質床材の製造方法。」 「【請求項5】 単位化粧板の間に、その表面側から溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを同時に行うことを特徴とする請求項4に記載の木質床材の製造方法。」 第4 特許異議の申立てについて 1 取消理由の概要 (1)訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して、平成29年10月13日付けで送付した取消理由の概要は、以下のとおりである。 「本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。」 (2)また、取り下げられたものとみなされる平成29年12月14日付け訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る特許に対して、平成30年3月30日付け取消理由通知書(決定の予告)の結論は、該訂正請求による訂正を認めると共に、請求項1、3に係る特許を取り消し、同請求項2、4、5に係る特許を維持するものであって、本件発明1及び3に係る特許に対する取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 「本件発明1及び3は、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載されて事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」 (3)引用された刊行物 甲第1号証:特開2002-227390号公報 甲第2号証:実願昭54-162833号(実開昭56-79547号) のマイクロフィルム 甲第3号証:特開2011-94298号公報」 2 刊行物の記載事項 (1) 取消理由通知において引用した甲第1号証には、図面とともに、次の記載がある。 (下線は、決定で付した。以下、同様。) ア 「【0016】本例に示す木質化粧床材では、木質基材1に木質化粧単板2が貼着された床材本体3の表面に、該木質化粧単板2の木質繊維方向と略平行方向に化粧縦溝4が設けられ、該化粧縦溝4と略直交方向に化粧横溝5が設けられている。 【0017】前記化粧縦溝4は、溝方向と直交する方向の断面において曲面を有している。また、前記化粧横溝5は、該溝方向と直交する方向の断面において、溝内部に突出する少なくとも1個以上の屈折点Pを有する多段V字型形状を有し、屈折点Pと上端縁角部Qに挟まれた面取り部Mを有している。」 イ 「【0019】なお、前記化粧縦溝4にあっては、曲面が溝内部へ膨らむ形状の曲面であり、一実施形態としてその溝巾Wは3.0?5.0mm、溝深さHは1.5?4.0mm、曲面の曲率半径Rは2.0?6.0mm、溝巾Wに対する溝深さHの比率は50?80%程度の範囲が好ましい。しかしながら、これらの範囲に制限されるものではない。」 ウ 「【0021】また、前記化粧横溝5にあっては、その溝巾Wは3.0?5.0mm、溝深さHは1.8?4.0mm、溝深さHに対する床材本体3の表面から屈折点Pまでの深さhの比率は10?20%、溝巾Wに対する溝深さHの比率は60?80%、溝の上端部傾斜角αは135?155度程度の範囲が好ましい。しかしながら、これらの範囲に制限されるものではない。」 【0022】これらの数値も、前記化粧横溝5の足裏歩行感、溝上端縁のササクレ発生防止、更に、見た目に溝として立体感による意匠性から求められるものであって、化粧横溝5の溝巾Wを3.0?5.0mmの範囲とすると、意匠性に一層優れたものとなり、好適であり、また、溝深さHに対する床材本体3の表面から屈折点Pまでの深さhの比率を10?20%の範囲とすると、化粧横溝5の上端部分に形成される面取り部Mの寸法が約0.25?1.9mmとなり、この寸法の面取り部Mが足裏歩行感や靴下ストッキング適性に一層優れたものとなる。また、上端部傾斜角αを135?155度とすると、足裏歩行感や靴下ストッキング適性に良好な面取り部Mの傾斜角度として最適であり、足裏歩行感や靴下ストッキング適性に最も優れたものとなる。また、同様にして、溝深さHを1.8?4.0mmとすると、前記面取り部Mの大きさに必要十分な寸法を確保できる。」 エ 「【0023】前記のように構成される本発明の実施にあたっては、先ず床材本体3は従来からの方法で製造する。木質基材1は合板、削片板、繊維板、集成材等が使用できる。木質化粧単板2は例えばナラ材の厚さ0.2?1.0mm程度のものが使用される。木質化粧単板貼着用接着剤はユリア系、メラミン系接着剤が適するが勿論これら以外の木質基材、木質化粧単板、接着剤であってもよい。 【0024】木質基材1への木質化粧単板2の貼着時の製造条件も通常のホットプレス条件でよい。次に、木質基材1へ木質化粧単板2を貼着して形成された床材本体3の4側面に本実加工を施す。続いて、従来からあるカッター又はルーター等を用いて本発明の溝を加工する。」 オ 【図3】を参照すると、屈折点Pは、木質化粧単板2の厚さの範囲内にあることが、看取できる。 カ 上記アないしオからみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「木質基材1に、厚さ0.2?1.0mm程度のナラ材が使用される木質化粧単板2が貼着された床材本体3であって、 床材本体3の表面に、該木質化粧単板2の木質繊維方向と略平行方向に化粧縦溝4が設けられ、該化粧縦溝4と略直交方向に化粧横溝5が設けられ、 前記化粧横溝5は、該溝方向と直交する方向の断面において、溝内部に突出する少なくとも1個以上の屈折点Pを有する多段V字型形状を有し、屈折点Pと上端縁角部Qに挟まれた面取り部Mを有しており、屈折点Pは、木質化粧単板2の厚さの範囲内にあり、 前記化粧横溝5にあっては、その溝巾は3.0?5.0mm、溝深さHは1.8?4.0mm、溝深さHに対する床材本体3の表面から屈折点Pまでの深さhの比率は10?20%、溝巾Wに対する溝深さHの比率は60?80%、溝の上端部傾斜角αは135?155度程度の範囲、面取り部Mの寸法は約0.25?1.9mmとなる、 床材本体3。」 (2)取消理由通知において引用した甲第2号証には、図面とともに、次の記載がある。 「以下この考案の詳細を図示の一実施例に基いて説明すると、1は繊維方向に沿つて長い短冊形のピース木片で、その繊維方向が平行となるよう数本(図示の例では3本)を隣接させて方形の表板単体2が構成されている。この表板単体2は、合板もしくはパーテイクルボードのような木質の基板3に多数縦横に並らべ、且つその繊維方向が交互に縦横となる向きにして(いわゆる市松張りで)張り合わせてある。そしてこれら表板単体2…の表面部には、単体2同士の接合部に沿つて縦横に浅い溝状の凹部4が形成してある。この凹部4は表板単体2の厚みより浅く(1mm程度)、従つて凹部4の底面には表板単体2の木目が現れるようになつている。また表板単体2…全体の周縁にも、前記凹部4と同一深さでその半幅程度の周凹部5が形成されている。6は前記凹部4及び周凹部5に囲まれた凸部である。 これら凹部4、周凹部5及び凸部6の平面形状は適宜変更可能で、第1図乃至第3図に示すように凸部6を表板単体2より一周り小さい方形とするほか、・・・」(明細書2頁8行?3頁11行) (3)取消理由通知において引用した甲第3号証には、図面とともに、次の記載がある。 ア 「【0038】 上記のように各フリッチ材1を精寸処理した後、図3(a)に示すように、フリッチ材1の厚さ面を隣接するフリッチ材1に対面させるようにして集成接着し、フリッチ集成体2を作製する。 本実施形態では、長手方向にそれぞれ4つのフリッチ材1を接合し、短手方向が三列となるように集成接着しており、さらに、長手方向には、集成接着されたフリッチ材1が千鳥状にずれて配置されるように、適宜長さに切断したフリッチ材1を振り分けて集成接着するようにしている。 上記集成接着に使用される接着剤としては、湿潤状態のフリッチ材1の接着が可能な接着剤とすればよく、例えば、湿気硬化型ウレタン接着剤等を採用するようにしてもよい。 【0039】 <スライス加工工程(ステップ103)> 上記のように作製されたフリッチ集成体2を、湿潤状態のままで横突きスライサー機に導入し、所定厚さT(図4(a)参照)となるようスライス加工して、図3(a)に示すように、スライス単板13を作製する。 ここに、湿潤状態とは、上記加熱処理工程の後のスライス加工対象としてのフリッチ集成体2の含水率が所定程度以上の状態を指しており、このフリッチ集成体2の含水率は、30%以上程度とすることがスライス加工性の観点から好ましい。」 イ 「【0041】 上記所定厚さT(図4(a)参照)は、一般的な突板と同様、0.15mm?0.25mm程度としてもよいが、好ましくは、スライス加工性、コスト性、木質板状建材の意匠性及び外観劣化の低減等の観点から、0.30mm以上、2.25mm以下程度、より好ましくは、0.35mm以上、2.00mm以下程度としてもよい。 上記所定厚さが、上記下限厚さ未満であれば、耐摩耗性が低くなる傾向があるとともに、後記するように、所定形状の溝部や面取り部を形成した際に、木質基材の露出度合いが大きくなる傾向があり、意匠性が低下する傾向がある。一方、上記上限厚さを超えれば、高コストになる傾向があるとともに、スライス加工性が悪化する傾向があり、スライス単板の裏面に割れが発生する傾向がある。 上記のような所定厚さのスライス単板13とすることで、0.15mm?0.25mm程度の厚さとされた一般的な突板と比べて、後記する溝部及び面取り部における意匠性をより向上させることができるとともに、磨耗等による木質基材の露出を効果的かつ効率的に低減できる十分な厚さとなり、外観の劣化を効率的に防止できる。」 ウ 「【0043】 <積層工程(ステップ104)> 上記のように作製されたスライス単板13を、図3(b)及び図3(c)に示すように、木質基材12に貼着して積層体11を作製する。 この積層接着に使用される接着剤としては、各種水性接着剤やエマルション接着剤等としてもよく、例えば、酢酸ビニル系接着剤やゴムラテックス系エマルション接着剤としてもよい。 また、接着剤を介して木質基材12とスライス単板13とを積層した後、熱プレス機(ホットプレス機)に導入し、加熱圧締して乾燥硬化させるようにしてもよい。 尚、木質基材12とスライス単板13との間に、熱プレス時における接着剤やスライス 単板等からの水蒸気の放出を促すために、紙材等を介在させて積層接着するようにしてもよい。 また、接着剤の種類に応じて、加熱圧締する態様に代えて、コールドプレスとしてもよく、自然乾燥としてもよい。 【0044】 上記した木質基材12としては、合板やLVL(単板積層材)等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系材料を板状に加工したものが挙げられる。または、合成樹脂系材料に、木粉や無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木粉・プラスチック複合材(WPC)を板状に加工したものとしてもよい。これらは、適宜、組み合わせて積層し、木質基材12を構成するようにしてもよい。例えば、合板やパーティクルボード等の表面に、比較的、表面硬度の高いMDFやWPC等を積層して木質基材12を構成するようにしてもよい。」 エ 「【0045】 <表面加工工程(ステップ105)> 上記のように積層体11を作製した後、図4(a)に示すように、当該積層体11の表面11aに、所定形状の溝部14及び面取り部15を形成する。 本実施形態では、図4(c)に示すように、縦横に複数本の溝部14を形成し、四周の全周に亘って面取り部15を形成している。 【0046】 溝部14は、本実施形態では、図4(a)に示すように、積層体11の表面11aと表面縁部(開口縁14b)側面とのなす角θ1が、積層体11の表面11aと下端部(底部14a)側面とのなす角θ2よりも大きくなるように形成されている。換言すれば、溝部14の底部14a側の開き角(溝部底部側における両内壁面のなす角)よりも開口縁14b側の開き角(溝部開口側における両内壁面のなす角)が大きくなるように、開口側に向けて拡開状に形成するようにしている。また、この溝部14は、図例では、木質基材12の層内に底部14aが達するように切削加工されている。 また、本実施形態では、溝部14の両内壁面の途中部位において角部14c,14cが形成されるように、両内壁面が多面形状(図例では、各二面)に形成されており、上記開き角の関係を換言すれば、これら角部14c,14cを屈折点として、その底部側が、急勾配のテーパ形状とされる一方、その開口側が、緩勾配のテーパ形状とされている。 【0047】 これら角部14c,14cは、図例では、木質基材12の層内に位置するように形成されるとともに、積層体11の表面11aから、溝部14の最深部までの深さの略半分程度の位置となるように形成されている。このような角部14c,14cの位置や個数は、各内壁面の多面数や各部位における開き角、溝部14の開口縁14b,14b間の幅(溝幅)、溝深さなどに応じて、適宜、設計可能である。 【0048】 溝部14の上記溝幅は、製造後の木質板状建材10の施工態様にもよるが、図例のように床材10(図4(c)参照)や内壁材、天井材などの内装材として施工される場合には、意匠性の観点や手触り感等の観点から、2.0mm以上、8.0mm以下程度とすることが好ましい。つまり、図4(a)に示すように、溝部14を、底部14aを通る中心線を挟んで左右対称形状としたものでは、平面視した状態における溝部14の開口縁14bから底部14aまでの幅Wが、1.0mm以上、4.0mm以下程度とすることが好ましい。 この幅Wが、下限幅未満であれば、溝部自体が目立たず、立体感が失われ、加工性の観点からも困難となる傾向がある。一方、上限幅を超えれば、溝部が目立ち過ぎる傾向があり、外観上の違和感が生じ、また、特に、床材として施工される場合には、歩行時の違和感等が生じる傾向がある。 尚、スライス単板13の表面13aから、溝部14の底部14aまでの深さ(溝深さ)は、上記溝幅と同様、製造後の木質板状建材10が内装材として施工される場合には、上記溝幅の半分程度から上記溝幅と同程度のものとしてもよい。 【0049】 また、本実施形態では、複数本の溝部14を、上記のように集成接着された各フリッチ材1の接合部(継ぎ目)に沿って形成するようにしている(図3(a)及び図4(c)参照)。 上記のように、所定形状の溝部14を形成することで、溝部14の内壁面において露出するスライス単板13の露出度合いを木質基材12の露出度合いよりも効率的に大きくでき、意匠性を向上させることができる。 また、底部14a側の開き角が開口側の開き角よりも小さくなるので、溝部14において効率的に立体感を表現することができ、無垢材を溝部14において突き合わせたような無垢集成材に近い外観を呈し、より意匠性を向上させることができる。」 オ 「【0052】 尚、溝部14及び面取り部15の形状は、後記するように種々の形状のものが採用可能であるが、上記のように、溝部14を、その底部14aが木質基材12の層内に達するように形成し、かつ、木質基材12が露出するように面取り部15を形成した場合には、これら溝部14及び面取り部15の形成された部位において、スライス単板13の露出面積が、木質基材12の露出面積を上回るように、これら溝部14及び面取り部15を形成することが好ましい。また、このような場合には、木質基材12の地色がスライス単板13の地色に近いものとすることが好ましい。 また、図例では、溝部14と上記目地溝との断面形状を、略同寸同形状としたものを例示しているが、これらが互いに異なる断面形状とされたものとしてもよい。 また、図例では、溝部14及び面取り部15を、これらの形成された部位において木質基材12が露出するように形成した態様を示しているが、上述のように、本実施形態によ れば、スライス単板13を比較的、肉厚のものとできるので、これら溝部14及び面取り部15の下端部14a,15aが、スライス単板13の厚み内に止まるように形成するようにしてもよい。これによれば、これらの部位において木質基材12が露出することなく、木質板状建材の意匠性をより向上させることができる。」 カ 「【0062】 次に、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法を用いて製造された木質板状建材の一変形例について図5に基づいて説明する。 尚、上記した木質板状建材10と主に異なる点は、溝部及び面取り部の形状であり、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略或いは簡略に説明する。」 キ 「【0066】 <第4変形例> 図5(d)に示す第4変形例に係る木質板状建材10Dは、溝部14Dを、上記第1変形例と同様、その両内壁面が、多面形状ではなく、いずれも平面形状とされた断面略V字形状としており、さらに、その底部14Daは断面略矩形状の角溝形状とされている。 この底部14Daの角溝幅は、溝部14D自体の溝幅Wにもよるが、例えば、0.3mm?1.5mm程度の細溝状のものとしてもよい。このような角溝を底部に設けることで、奥まった印象を与えることができるとともに、溝加工時における切削工具等の損傷を防止することができる。 また、本変形例では、スライス単板13の厚さTを他例よりも肉厚のものとし、溝部14Dの底部14Daが、木質基材12の層内に達しないよう、スライス単板13の層内に止まるように形成されている。 また、この溝部14Dの開き角θ3は、図例では、略直角(80度?100度程度)としている。」 【0067】 さらに、この溝部14Dの底部14Daには、当該溝部14Dの長手方向に沿って濃色線19を施すようにしている。 この濃色線19は、上記した塗装工程の前工程或いは後工程において実行するようにしてもよく、また、その色調が、上記所定の着色処理の塗料よりも濃色のものとすればよい。 この濃色線19は、例えば、インクジェット塗装や、レーザーによる焼き処理、細幅ロールによる転写等により施すようにしてもよい。 また、この濃色線19の幅は、溝部14D自体の上記溝幅にもよるが、例えば、0.1mm?1.0mm程度の細線状のものとしてもよい。 【0068】 本変形例のように、溝部14Dの底部14Daに、濃色線19を施すことで、溝部14Dの底部14Daにおいて、より奥まった印象を与えることができ、無垢材を溝部14Dにおいて突き合わせたような無垢集成材に近い外観を呈し、より意匠性を向上させることができる。尚、角溝形状とされた底部14Daに対応する面取り部15Dの下端段部15Daにも、当該面取り部15Dの長手方向に沿って、上記同様の濃色線を施すようにしてもよい。 また、本変形例において説明した底部の角溝、及び濃色線のうちの少なくともいずれか一方を、上記した木質板状建材10の溝部14(面取り部15)、及び各変形例の各溝部、各面取り部に設けるようにしてもよい。」 3 取消理由通知に記載した取消理由(特許法29条第2項)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明において、化粧横溝5は、「該溝方向と直交する方向の断面において、溝内部に突出する少なくとも1個以上の屈折点Pを有する多段V字型形状を有し、屈折点Pと上端縁角部Qに挟まれた面取り部Mを有しており、屈折点Pは、木質化粧単板2の厚さの範囲内にあ」ることから、屈折点Pから上端縁角部Qまでと、屈折点Pから奥までとは、そのV字の断面形状が相違している(V字となる両辺の角度が相違している)ことが理解できる。 よって、化粧横溝5において、屈折点Pから上端縁角部Qまでが、本件発明1の単位化粧板間にその表面側から化粧板の厚さの範囲内で形成した溝に相当し、同じく屈折点Pから奥までが、溝とは断面形状が異なる分断溝に相当する。 よって、本件発明1と甲1発明とは、以下の3点で相違している。 (相違点1)単位化粧板の厚さについて、本件発明1は、1.5mm以上であるのに対し、甲1発明は、0.2?1.0mmである点。 (相違点2)化粧板について、本件発明1は、単位化粧板を複数並べて構成したのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。 (相違点3)単位化粧板の間にその表面から化粧板の厚さの範囲内で形成した溝の一部または全部の溝底部に有した、前記溝とは断面形状が異なる分断溝について、本件発明1は、切り込み状であって、最大幅が0.1?1.0mmであるのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。 イ 判断 まず、上記相違点3について検討する。 (ア)相違点3について 本件発明1の分断溝が切り込み状であることについて、本件特許明細書には、「【0028】・・・分断溝30aの断面形状については特に制限はないが、例えば、長方形、台形、V字形、U字形、R字形または直線と曲線との組み合わせた形状等の断面形状とすることができる。図5には、長方形の断面形状を有する分断溝を示した。図5の13の部分で示される分断溝の最大幅は、0.1?1.0mmとするのが良い。・・・」と記載されていることからみて、分断溝が切り込み状であることは、当該分断溝の断面形状を実質的に限定しておらず、そして、断面形状がV字型であることを含んでいる。 これに対し、甲1発明において、「多段V字型形状」である「化粧横溝5」の屈折点Pから奥までの部分は、その断面はV字型といえるから、甲1発明の当該奥までの部分がV字型の断面であることは、本件発明1の断面形状が切り込み状であることに相当するといえる。 しかしながら、分断溝の最大幅を0.1?1.0mmとすることは、甲第2号証ないし甲第3号証にも記載されていない。そして、本件発明1の分断溝の最大幅を0.1?1.0mmとすることにより、本件明細書の段落【0028】に記載される「図5の13の部分で示される分断溝の最大幅は、0.1?1.0mmとするのが良い。0.1mm未満では、横溝が不十分であり、分断により反り防止の効果が得られにくい。一方、1.0mmを超えると、分断溝が目立つようになり、意匠性が悪化するおそれがある。」との作用効果を奏するものである。 したがって、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第3号証に記載された事項に基いて、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (イ)申立人の主張について 申立人は、分断溝の最大幅について、特許異議申立書の7頁の(5-2)において、0.1?1.0mmとすることは、設計事項にすぎないこと、また、甲第3号証に、溝部14Dの底部から形成した角溝14Daの溝幅を0.3?1.5mm程度とすることが記載されており、甲1発明の化粧横溝5の2段V字形状を、甲第3号証で示された横幅0.3?1.5mm程度の角溝14Daのように形状変更することは、当業者が容易に想到し得たことである旨、主張している。 しかしながら、分断溝の最大幅を本件発明1の範囲とすることが設計事項である証拠は提出されておらず、慣用手段であるとも認められない。 また、甲第3号証には、角溝Daについて、「溝部14Dの底部14Daが、木質基材12の層内に達しないよう、スライス単板13の層内に止まるように形成されている」(上記2(3)キ参照)と記載されており、角溝Daは本件発明1でいう分断溝ではないから、角溝Daの溝幅が0.3?1.5mm程度であることを、甲1発明の分断溝に適用する動機付けはないといえる。 よって、申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 上記相違点1及び2が、当業者が容易に想到できるものであったとしても、上記(ア)のとおり、相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たことではないから、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について 上記第2のとおり、本件訂正請求により請求項2は削除された。 その結果、請求項2に係る発明についての特許異議申立ては、その対象を欠くこととなったので、不適法な申立てであり、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の構成を全て備え、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討したことと同じ理由により、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明4及び5について ア 本件発明4及び5と甲1発明を対比すると、少なくとも、甲1発明には、本件発明4及び5の単位化粧板の間に、その表面側から化粧板の厚さの範囲内で溝を形成する工程を備えているかどうか不明である点(以下「相違点4」という。)で相違している。 そして、当該相違点4に係る本件発明4及び5の構成について、甲第2号証及び甲第3号証にも、記載されておらず、示唆する記載もない。 よって、本件発明4及び5は、甲1発明及び甲第2号証及び甲第3号証に記載されて事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 申立人は、甲1発明の化粧横溝5に関し、平成30年3月16日付け意見書において、 「甲第1号証の図3に示される実施形態による床材本体3において、その表面側から形成される化粧横溝5は、木質化粧単板2の厚さ範囲内に形成される緩傾斜の上方溝(表面の上端縁角部Qから屈折点Pまでの部分)と、その溝底部から奥方に形成される急傾斜の下方溝(屈折点Pから木質基材1内の溝先端までの部分)とからなる(段落0018、図3)から、該上方溝は、本件特許発明の『前記単位化粧板の間にその表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で形成した溝』に相当する。」(2頁19?24行)と主張する。 しかしながら、該上方溝の断面形状についてみると、上方溝と下方溝の境目である屈折点Pは、木質化粧単板2の厚さ範囲内に存在するものの、該上方溝の形成時に、表面から屈折点Pの深さまでのみを形成するものではなく、通常、該表面から屈折点Pの深さの部分に加えて、上方溝の緩傾斜のまま、奥方に延長して形成するものであるから、該上方溝の形成する工程において、その表面側から化粧板の厚さの範囲内で形成するかどうかは不明といわざるを得ない。 よって、申立人の主張は採用することができない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1、3、4及び5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、及び取消理由通知で通知した理由によっては取り消すことはできない。 そして、他に本件発明1、3、4及び5に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。 また、本件発明2についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 木質床材およびその製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、建築物用の木質床材およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 戸建住宅、マンションその他の建築物に用いられるフローリングには、無垢の木材からなる無垢床材のほか、合板、MDFなどからなる木質基材の表面、または、これらの木質基材を積層してなる木質基材(以下、積層してなる木質基材も単に「木質基材」と呼ぶ。)の表面に銘木の化粧板を貼り付けた化粧貼床材などがある。 【0003】 化粧貼床材は、無垢材よりも水分に起因する膨張・収縮が少ない合板を基材として用いており、表面には各種の塗装が施され内部への水分の侵入を防止しているため、施工後の使用環境において反りが少なく扱いが容易であるなどの理由から、多くの建築現場で用いられるようになってきている。 【0004】 化粧板は、厚さ0.2?0.6mm程度の場合(通常、このような化粧板を「薄板」と呼ぶ。)と、厚さ0.7?3.0mm程度の場合(通常、このような化粧板を「厚板」と呼ぶ。)に大別されるが、薄板は、複数の化粧材ブロックを組み合わせ接着したブロック積層体をスライサーで切削して製造される。このような製法で製造された化粧板は突き板と呼ばれる。これに対して、厚板としては、突き板のほか、比較的厚いものは木材を帯鋸などで切り出して製造されることが多い。このような製法で製造された化粧板は挽き板と呼ばれる。 【0005】 薄板を使用した化粧貼床材は、水分に起因する形状変化が少ないこと、いわゆる突き板であるため、生産効率が高いこと、節などの欠陥がない部分を選びやすいことなど様々な利点がある。 【0006】 一方、昨今の住宅に関する需要者の好みの変化を反映して、多少欠陥が多いものの、木材としての質感に優れる無垢床材が見直されつつある。しかし、前述のように、無垢床材は、水分に起因する形状変化が大きいというデメリットもある。そのことを背景に、無垢材と同様の木質感を有する厚板の化粧貼床材の需要が高まりつつある。しかし、厚板は、無垢床材ほどではないが、薄板と比較すると水分に起因する形状変化が大きいというデメリットがある。 【0007】 このような形状変化を防止する方法として、特許文献1では木質無垢床材または厚板を使用した木質床材について、押さえ形状と受け形状との二種類の床材を組み合わせ、押さえ形状をビス止めすることにより床材全体の反りを防止する発明が開示されている。 【0008】 また、特許文献2および3では、木質基材の表面に溝を形成し、その上部に厚板を貼り付けることにより、床材の谷反りを小さくする発明が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0009】 【特許文献1】特開2007-239343 【特許文献2】特開平8-144485 【特許文献3】特開2004-197357 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 特許文献1に開示された木質床材では、二種類の部材が必要となり製造コストが上昇するだけでなく、押さえ部材やビス止めの蓋部分が意匠性を悪化させる要因ともなる。 【0011】 特許文献2および3に開示された床材では、基材の化粧板側に溝を入れてあるので、床材表面に凹凸が映るおそれがある。 【0012】 本発明は、このような従来技術の問題を解決するものであり、反りが少なく、意匠性および経済性が良好な木質床材およびその製造方法を提案することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明者は、厚板を化粧材に用いても反りを軽減できる木質床材およびその製造方法につき検討し、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得るに至った。 【0014】 (A)化粧貼床材の製造方法としては、大別すると、(a)複数の化粧材ブロックを接着してブロック積層体を作製し、このブロック積層体から所定厚さの化粧板を作製し、これを基材に貼り付け、圧着する方法、および、(b)化粧材ブロックから所定厚さの単位化粧板を作製し、この単位化粧板を設計デザイン通りに配置し、これら同士をテープで貼りあわせて化粧板を作製し、これを基材に貼り付け、圧着する方法などがある。単位化粧板同士の隙間には、上記(a)の方法ではブロック積層体の作製に用いられる接着剤が、上記(b)の方法では化粧板と基材との貼りあわせに用いられる接着剤がそれぞれ存在する。単位化粧板同士は、これらの接着剤により固着しており、化粧板全体として空気中の水分の影響を受け、厚板を用いた化粧材の場合、これが反りの原因となっている。 【0015】 (B)厚板を用いた化粧板の反りを軽減するためには、単位化粧板同士を分断し応力を分散させる必要がある。ここで、接着した単位化粧板の間には、実用性および意匠性の観点から、断面V形状、R形状などの溝を設けることが多い。このため、その溝によって単位化粧板同士を分断することが考えられる。しかし、溝を化粧板と基材との境界まで正確に入れることは極めて困難である。 【0016】 (C)ここで、単位化粧板の分断を確実にするため、図1に示すように、溝30を木質基材3まで達するように設けると、木質基材3に用いる合板等の断面が露出し、意匠性が著しく悪化する。 【0017】 (D)そこで、図2に示すように、厚板を用いた化粧板2の表面側に、化粧板の厚さの範囲内で、単位化粧板の間に溝30を形成した後、溝底部から木質基材3に達するように細い切り込み状の溝30a(以下、「分断溝」と呼ぶ。)を形成することにより、化粧板2を完全に分断すると同時に化粧板2特有の無垢材に近い木質感を維持することが可能となる。 【0018】 (E)図3に示すように、各単位化粧板の間に設けた本発明に係る溝(分断溝を有する溝)31は、床材を施工した際の床材同士の接合箇所の凹部32と見た目が類似しているため、床材が単位化粧板を別個に貼ったように見えることから、フローリング全体としての意匠性に優れるという利点も有する。 【0019】 本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、下記の(1)?(3)に示す木質床材ならびに(4)および(5)に示す木質床材の製造方法を要旨とする。 【0020】 (1)厚さ1.5mm以上の突き板または挽き板からなる単位化粧板を複数並べて構成した化粧板と木質基材とを貼り付けた床材であって、前記単位化粧板の間にその表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で形成した溝を備え、前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を有し、前記単位化粧板同士が前記分断溝によって分断されていることを特徴とする木質床材。 【0021】(削除) 【0022】 (3)前記分断溝の前記化粧板部分における深さが前記化粧板厚の10?40%に相当することを特徴とする前記(1)に記載の木質床材。 【0023】 (4)厚さ1.5mm以上の単位化粧板を複数並べて構成した化粧板と木質基材とを貼り付ける工程と、単位化粧板の間に、その表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを有することを特徴とする木質床材の製造方法。 (5)単位化粧板の間に、その表面側から溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを同時に行うことを特徴とする上記(4)の木質床材の製造方法。 【発明の効果】 【0024】 本発明によれば、厚さ1.0mm以上の化粧板を用いた床材であっても、水分に起因した反りを軽減させることができるとともに、無垢材と同等の木質感を有し、意匠性に優れる床材を得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【0025】 【図1】V溝により単位化粧板同士を分断した場合の一例を示す断面図である。 【図2】分断溝を有するV溝により単位化粧板同士を分断した場合の一例を示す断面図である。 【図3】本発明に係る溝および床材同士の接合箇所の凹部を示す本発明床材の斜視図である。 【図4】直線と曲線とを組み合わせた溝形状の一例を示す断面図である。 【図5】分断溝を有する直線と曲線とを組み合わせた溝形状の一例を示す断面図である。 【発明を実施するための形態】 【0026】 1.床材 図4および5に、本発明床材の一例の断面図を示す。図4は分断溝を有さない溝を形成した床材の断面を示したものであり、図5は分断溝を有する溝を形成した床材の断面を示したものである。床材1は、化粧板2と木質基材3を貼り付けたものを用いる。化粧板2は1.0mm以上の厚さを有する単位化粧板を複数並べて構成したものを用いる。化粧板2は、木質感を向上させる観点からは、1.5mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることがより好ましい。一方、経済性の観点からは、5mm以下とするのが好ましく、3mm未満とするのがより好ましい。木質基材3の厚さについては特に制限はないが、例えば、厚さ10mmのものを用いることができる。また、化粧板2と木質基材3とを合わせた床材全体としての厚さは、例えば、12、15mmのものを用いるのが良い。床材の大きさについては特に制限はないが、例えば、幅が145、150、300、303mm、長さが909、1818mmのものを用いることができる。 【0027】 2.溝 単位化粧板の間にはその表面側に、縦溝および横溝の両方を設けても良いし、どちらか一方を設けても良い。溝30の断面形状については特に制限はないが、例えば、R溝、V溝または曲線と直線とを組み合わせた形状等、床材に通常採用される溝形状とすることができる。図4および5には、直線と曲線とを組み合わせた溝形状の一例を示した。図4および5では、21と23の部分が直線に、22の部分が曲線になっている。また、図4および5の11の部分で示される溝の深さは、化粧板厚の60?90%に相当する深さとするのが良い。60%未満では溝が浅く、薄板を用いた場合と同程度の意匠性しか得られず、厚板を用いることのメリットが得られにくい。一方、90%を超えると溝が深く、それに伴い溝の幅も大きくなりすぎるため意匠性が悪化するおそれがある。より好ましい下限は70%である。 【0028】 溝30の一部または全部は、溝底部において単位化粧板同士を分断する分断溝30aを有する。溝の一部または全部とは、縦溝の一部または全部、および/または、横溝の一部または全部を意味する。分断溝30aの断面形状については特に制限はないが、例えば、長方形、台形、V字形、U字形、R字形または直線と曲線とを組み合わせた形状等の断面形状とすることができる。図5には、長方形の断面形状を有する分断溝を示した。図5の13の部分で示される分断溝の最大幅は、0.1?1.0mmとするのが良い。0.1mm未満では、溝幅が不十分であり、分断による反り防止の効果が得られにくい。一方、1.0mmを超えると、分断溝が目立つようになり、意匠性が悪化するおそれがある。好ましい上限は、0.5mmである。また、図5の12の部分で示される分断溝の化粧板部分における深さは、化粧板厚の10?40%に相当する深さとするのが良い。10%未満では溝自体の幅を大きくする必要が生じて意匠性が悪化し、40%を超えると溝自体の深さが浅くなり、薄板を用いた場合と同程度の意匠性しか得られなくなるおそれがある。より好ましい上限は30%である。 【0029】 3.製造方法 以下、本発明に係る木質床材の製造方法を例示するが、この製造方法には限定されない。 【0030】 まず、厚さ1.0mm以上の単位化粧板を複数並べて構成した化粧板と木質基材とを貼り付ける。その方法には特に制約がない。例えば、(a)複数の化粧材ブロックを接着してブロック積層体を作製し、このブロック積層体からスライサーなどによって所定厚さの化粧板を作製し、これを基材に貼り付け、圧着する方法、および、(b)化粧材ブロックからスライサーなどによって所定厚さの単位化粧板を作製し、この単位化粧板を化粧層に対応するよう配置したのちテープで貼りあわせて化粧板を作製し、これを基材に貼り付け、圧着する方法などがある。木材の切断加工には公知の装置を用いることができ、スライサーのほか、帯鋸、丸鋸などの切削機を使用してもよい。 【0031】 次に、上述の工程で製造した化粧板を木質基材に貼り付ける。貼り付け方法については特に制限はないが、フェノール樹脂系、メラミン樹脂系、エポキシ樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系などの合成樹脂系接着剤を用いて行うのが好ましい。その後、単位化粧板の間には、その表面側に切削加工により溝が形成される。縦溝および横溝の両方を形成しても良いし、いずれか一方でも良い。 【0032】 続いて、溝の一部または全部の溝底部に分断溝を形成し、単位化粧板同士を分断する。分断溝は、縦溝の一部または全部、および/または、横溝の一部または全部に形成することができる。この時、分断溝は単位化粧板を完全に分断するように、多少余裕を持って木質基材まで達するようにする必要がある。分断溝の形成方法に特に制限はないが、例えば、丸鋸または押し型によって形成することができる。 【0033】 また、分断溝は、上記のように溝を形成した後に溝底部に形成しても良いし、溝と同時に形成しても良い。 【産業上の利用可能性】 【0034】 本発明によれば、厚さ1.0mm以上の化粧板を用いた床材であっても、水分に起因した反りを軽減させることができる。さらに、無垢材と同等の木質感を有し、意匠性に優れる床材を得ることができる。従って、本発明の木質床材は建築物の内装材として用いるのに最適である。 【符号の説明】 【0035】 1.床材 2.化粧板 3.木質基材 11.溝の深さ 12.分断溝の化粧板部分における深さ 13.分断溝の最大幅 21.溝の直線部分 22.溝の曲線部分 23.溝の直線部分 30.溝 30a.分断溝 31.分断溝を有する溝 32.床材同士の接合箇所の凹部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 厚さ1.5mm以上の突き板または挽き板からなる単位化粧板を複数並べて構成した化粧板と木質基材とを貼り付けた床材であって、前記単位化粧板の間にその表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で形成した溝を備え、前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を有し、前記単位化粧板同士が前記分断溝によって分断されており、前記分断溝の最大幅が0.1?1.0mmであることを特徴とする木質床材。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記分断溝の前記化粧板部分における深さが前記化粧板厚の10?40%に相当することを特徴とする請求項1に記載の木質床材。 【請求項4】 厚さ1.5mm以上の単位化粧板を複数並べて構成した化粧板と木質基材とを貼り付ける工程と、単位化粧板の間に、その表面側から前記化粧板の厚さの範囲内で溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に、前記溝とは断面形状が異なる切り込み状の分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを有することを特徴とする木質床材の製造方法。 【請求項5】 単位化粧板の間に、その表面側から溝を形成する工程と、前記溝の一部または全部の溝底部に分断溝を形成して単位化粧板同士を分断する工程とを同時に行うことを特徴とする請求項4に記載の木質床材の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-07-03 |
出願番号 | 特願2012-91511(P2012-91511) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(E04F)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 西村 隆 |
特許庁審判長 |
井上 博之 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 住田 秀弘 |
登録日 | 2016-12-22 |
登録番号 | 特許第6063144号(P6063144) |
権利者 | 朝日ウッドテック株式会社 |
発明の名称 | 木質床材およびその製造方法 |
代理人 | 特許業務法人ブライタス |
代理人 | 特許業務法人ブライタス |